特許第5938798号(P5938798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938798
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】植物苗の固定化装置及び固定化方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20160609BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20160609BHJP
   A01N 63/00 20060101ALI20160609BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A01G7/00 604Z
   A01G7/06 A
   A01N63/00 F
   A01P1/00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-127843(P2012-127843)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-252060(P2013-252060A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願。
(73)【特許権者】
【識別番号】591193370
【氏名又は名称】株式会社微生物化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】梁 宝成
(72)【発明者】
【氏名】大石 英司
(72)【発明者】
【氏名】安原 壽雄
(72)【発明者】
【氏名】片桐 伸行
(72)【発明者】
【氏名】大石 純也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−130712(JP,A)
【文献】 特開2009−082043(JP,A)
【文献】 特開平07−327512(JP,A)
【文献】 特開平08−037941(JP,A)
【文献】 特開2010−088402(JP,A)
【文献】 特開2010−259410(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0096587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 − 7/06
A01N 63/00
A01P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗成型トレイ又はポット苗を収容可能な上部が開放された筐体であって、該筐体が苗の葉を下方から支えるための水平状に並列した複数の支持棒からなる支持手段と苗の葉を上方から包み込むためのネットを備えることを特徴とする植物苗の固定化装置。
【請求項2】
筐体側面の縦方向に設置又は挿入した複数の支持棒及び横方向から挿入した複数の支持棒によって形成される格子状の枠を支持手段とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
さらに苗の葉と支持手段を近接させる手段を有する請求項1〜2に記載の装置。
【請求項4】
育苗成型トレイまたはポット苗を収容する筐体の床面を昇降して苗の葉と支持手段との距離を調節することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
床面を4点で支えるカムの駆動により筐体の床面を昇降させることを特徴とする請求項3〜4に記載の装置。
【請求項6】
ネットの素材が柔軟な繊維であり、ネットの網目サイズが苗の葉より小さいことを特徴とする請求項1〜5に記載の装置。
【請求項7】
植物ワクチン接種を目的とする請求項1〜6に記載の装置。
【請求項8】
筐体の床面に収容した育苗成型トレイまたはポット苗の葉を上方からネットで包み込み支持棒に圧着させることを特徴とする苗の葉の固定化方法。
【請求項9】
請求項1〜6に記載の装置によって苗の葉を固定化し、ネットの上から植物ワクチンを噴霧あるいはブラシまたはローラーによって擦過することを特徴とする植物ワクチンの接種方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ウイルスなどを接種、感染させるための植物苗の固定化装置及び固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルスを用いたウイルス病防除ワクチン及びその接種法を開発してきた(特許文献1参照)。弱毒ウイルスを主剤とする植物ワクチンは、そのまま塗ったり噴霧するだけではほとんど植物に取り込まれない。苗の葉を指で挾み植物ワクチンを綿棒等で擦り込めば、確実な感染結果が得られるが、多大な労力と時間を要求される。
【0003】
そこで、植物体の表面に植物ウイルスと研磨剤を介在させて、ローラーを圧接回転させ、当該植物体を被傷すると共に植物ウイルスの接種を行う植物ウイルスの接種方法(特許文献2参照)や、セルトレイを用いるトレイ育苗法において、植物体表面にブラシを当て、当該植物体表面を被傷させるとともに植物ウイルスの接種を行う接種方法(特許文献3参照)が開発されてきた。しかしながら、ローラー・ブラシの圧接による接種は、圧接によって苗が倒れて傷つく、またトマトやピーマンなど茎が柔らかい植物には適しているがキュウリやカボチャなど茎が硬い植物では圧接で茎が折れることがある等の問題があり、作業効率も噴霧より劣る。
【0004】
上記の研磨剤(特にカーボランダム)を含ませたウイルス液は、噴霧においてもウイルス感染率の向上をもたらす。しかしながら、ウイルス液を噴霧する際に葉が垂れ下がり、その角度もさまざまであることから、全苗に均一にウイルス液を処理することはできない。また、育苗トレイからの培土が噴霧圧によって捲き上がって葉や茎へ不要に付着し苗を傷つけるなどの問題があった。この問題の解決法として植物の苗の転倒及び葉の反転、下垂防止のための板状支持手段を1列備えた噴霧装置(特許文献4参照)が開発された。大量連続処理に適するが、設置場所が限定されるため殆ど普及していない。さらに、苗の高さには個体間でばらつきがあり、葉の下方のアームだけでは全苗の葉を十分に支えることができず、噴霧圧で葉が押し下げられるまたは苗が倒れることでウイルスの感染率が安定しないという問題が解決されていない。
【0005】
また杉などの苗木の転倒防止を目的として苗木をネットの網目に挿通するための張設装置がある(特許文献5参照)。この装置のネットは苗木を側面から支持するものであり、苗の葉の下垂や遊動の防止を目的とせず、また防止効果も有していない。まっすぐ上に伸びる苗木以外への適用は困難であり、汎用性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4045358号公報
【特許文献2】特許第2908594号公報
【特許文献3】特許第3759560号公報
【特許文献4】特許第4362584号公報
【特許文献5】特開2003−289724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高さにばらつきがある苗を傷つけずに固定し、苗の転倒及び噴霧圧や圧接による葉の下垂を防止する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、葉に植物ウイルスを処理するための植物苗の固定化装置及び固定化方法であって、市販育苗成型トレイ又は複数の苗ポット(以下、セルトレイという。)を収容可能な筐体、列方向にて一列に等間隔で並ぶ複数の支持棒を備える苗及び苗の葉の支持手段、行方向にて一列に等間隔で並ぶ複数の支持棒を備える苗及び苗の葉の支持手段、各支持手段が苗の葉の裏側に当接するよう高さを調節する手段、さらに葉の上からネットを被せる手段を含む。
【0009】
支持手段は、等間隔に並列させた複数の支持棒からなり、挿通孔を通じて装置内に導入された支持棒は、苗の葉を下から支える。支持棒を装置の縦横から挿入し、格子状の枠を形成すれば、支持力は一層高まり、苗の転倒が防止される。セルトレイを設置する床板は、上下に可動であり、設置した苗と支持棒の間隔を調節できる。床板は4個のカムに支えられており、カムの同期回転によって昇降する。苗の葉は、近接した支持棒に支えられて下垂せず、苗の転倒も防止される。上方からネットで苗を覆い、ネットを伸張して係止することにより、苗は傷つくことなくサンドイッチ状に固定される。ワクチンをネットの網目から、噴霧し又はローラーを圧着して苗の葉に接種することにより、接種作業の省力化と効率化の飛躍的向上がもたらされる。
【0010】
この装置により植物ウイルスを処理できる苗は、育苗箱またはセルトレイにおいて育苗するもののいずれも対象としているが、作業効率を考慮するとセルトレイが好ましい。対象となる植物の種類に制限はないが、苗のサイズはウイルスの感受性と作業効率を考慮すると幼苗が好ましい。対象となる植物ウイルスの種類も特に限定されない。植物ウイルス以外では、有用微生物となる糸状菌類や細菌類などにも効果的に利用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、苗の高さのばらつきに関係なく葉を上下方向より固定できるため、噴霧圧や圧接で葉が押し下げられること、苗が倒れてしまうことまたは接種で苗が損傷してしまうことがなく、確実に植物ウイルスを処理できる。ウイルス病の防除率が向上し、作物の収穫量の増大に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本装置の模式的正面図である。
図2】本装置の模式的側面図である。
図3】本装置の模式的平面図である。
図4】従来法の列方向の支持棒で葉の下部を支えている、噴霧接種直前の苗の写真である。
図5】本発明の支持棒で格子状に葉の下部を支えている、噴霧接種直前の苗の写真である。
図6】本発明の葉の下部は列方向の支持棒で、葉の上部はネットを被せて葉を上下で固定している噴霧接種直前の苗の写真である。
図7】本発明の葉の下部は格子状の支持棒で、葉の上部はネットを被せて葉を上下で固定している噴霧接種直前の苗の写真である。
図8】ウイルス接種後の無傷苗の写真である。
図9】ウイルス接種後に損傷した苗の写真である。
図10】従来法の列方向の支持棒で葉の下部を支えて噴霧接種した後の苗の写真である。葉におけるカーボランダムの痕跡(灰色の斑点、染み)から、葉に付着したウイルスの液量はわずかであることがわかる。
図11】本発明の支持棒で格子状に葉の下部を支えて噴霧接種した後の苗の写真である。葉におけるカーボランダムの痕跡(灰色の斑点、染み)から、葉に付着したウイルスの液量はわずかであることがわかる。
図12】本発明の葉の下部は列方向の支持棒で、葉の上部はネットをかぶせて葉を上下で固定して噴霧接種した後の苗の写真である。葉におけるカーボランダムの痕跡(灰色の斑点、染み)から、葉には着実にウイルス液が付着している。
図13】本発明の葉の下部は格子状の支持棒で、葉の上部はネットをかぶせて葉を上下で固定して噴霧接種した後の苗の写真である。葉におけるカーボランダムの痕跡(灰色の斑点、染み)から、葉には着実にウイルス液が付着している。
【符号の説明】
【0013】
1.本体
2.床板
3.セルトレイ
4.支持棒
5.固定枠
6.挿通孔
7.摺動枠
8.蝶番
9.サイドテーブル
10.折りたたみ式棚受け金具
11.ストッパー
12.基底支持棒
13.基底支持棒受け
14.カム
15.カム軸
16.昇降レバー
17.連結線
18.張線
19.固定ストッパー
20.三角ストッパー
21.ネット
22.ネット止め具
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の装置を図によって詳細に説明する
【0015】
図1は、本発明の装置の正面図、図2はその平面図、図3は側面図である。本体1は、上方が開放され側面に段差がある筐体であり、昇降可能な床板2にセルトレイ3を収容する。セルトレイ3の苗を下方から支える支持手段は、基本的に複数の支持棒4、支持棒4を等間隔に埋設する固定枠5及び支持棒が摺動可能な挿通孔6が開孔された摺動枠7からなる。摺動枠7は、本体1の高段部の側面2箇所と背面に設置され、これを通じて支持棒4が本体内へ導かれる。側面の摺動枠7は、本体と蝶番8で結ばれた可倒式のサイドテーブル9に設置してもよい。サイドテーブル9は、折りたたみ式棚受け金具10により固定される。
【0016】
サイドテーブル9に置かれた支持棒4は、自ずと背面の支持棒4と高低差を有することとなり、しかも支持棒4の水平が保持されるため、本体1内への挿入が容易となる。サイドテーブル9の折りたたみ時に支持棒4が落下するのを防ぐため、ストッパー11を支持棒4の先端に打ち込んであればなお良い。背面の支持棒4の長さは、セルトレイ3の列方向の長さを少し超える程度、また側面の支持棒4の長さは、セルトレイの行方向の長さの1/2を少し超える程度が目安となる。
【0017】
同様に支持棒4の間隔は、背面がセルトレイ3の列方向のセルの間隔、側面が行方向のセル間隔に等しくなるよう決定される。支持棒4の形状は、摺動性の点から丸棒が好ましく、径は、苗の間の進退させるため5〜15mmの範囲にあることが好ましい。挿入孔6の径は、支持棒4の摺動が容易で且つ支持棒4の先端が過度に不安定にならない大きさ、具体的には支持棒4の径より1〜2mm大きく開孔する。さらに支持棒4の先端は、丸め加工又はテーパー加工することにより苗の間の進退が容易となる。これらの加工やストッパーの取り付けにはプラスチック素材が最適であるが、これに限定されない。側面の支持棒4の長さを倍にして片側から挿入するだけとしてもよい。
【0018】
支持手段は、1)背面の支持棒4(列方向)を本体に挿入する、2)セルトレイ3をスライドして支持棒4の間に苗を位置させる、3)側面の支持棒4(行方向)を挿入する、4)基底支持棒12を基底支持棒受け13に設置し背面の支持棒4の先端部の荷重を支える、の工程によって形成される。側面の支持棒4は、セルトレイ3をスライドさせた後に苗の間に挿入せざるを得ないが、背面の支持棒4は、摺動枠7を省いて本体に固定しておくことができる。また苗の葉が大きければ、背面の支持棒4だけで十分な支持力が保てるため、側面の支持棒4の挿入を省略してもよい。背面の支持棒4の間隔を狭める、あるいは支持棒4の径を太くすることによって支持力を向上させ、側面の支持棒4の設置を省略することも可能である。
【0019】
苗の葉を支える支持棒4は、苗の葉の直下に近接させなければ支持効果が得られない。本発明においては、セルトレイ3を載せた床板2を昇降させる手段によって苗の葉と支持棒4を近接させることによって、多様な植物苗への適応性を高めている。床板2は4個のカム14で均等に支えられており、カム14の駆動により上下する。カム14は厚さ1cm未満の円盤であり、2本のカム軸15の端部近くににそれぞれ2枚を偏芯して取り付ける。カム14に半径5cmの円盤を用いて、カム14の中心から約3cmの位置にカム軸15を通せば、床板2の高低差は約6cmとなって種々の苗に対応できる。カム14の形状は円盤に限らず楕円や巴型も使用可能であり、カム14の素材も特に限定はない。
【0020】
2本のカム軸15は、それぞれ本体1の側面を貫通して、回転可能に取り付けられる。カム軸15の先端の一方には、昇降レバー16が取り付けられ、手動で床板の昇降を操作する。2本のカム軸15は、連結線17で結ばれ同期回転する。図2の連結線17はクロスに結ばれ、カム14は互いに逆方向に対称的に回転するが、連結線17を平行に結んだ非対称的回転でも特に支障はない。連結線17の素材は、伸び縮みの少ない釣り用PEラインが最適であるが、琴糸、ベルト、チェーンも使用できる。カム軸15に伸縮性の張線18を巻きつけカム軸15を上昇方向に回転モーメントを与えることにより、無負荷時の床板2は、常に最上位に位置して、セルトレイ3の設置を容易にする。カム軸15の過回転は、昇降レバー16の直近に設置された固定ストッパー19により防止される。苗の高さを調整後、昇降レバー16は可動の三角ストッパー20によって固定される。また床板2には指を差し込む穴が開けられており、取り外して内部を点検又は清掃することができる。ここに記した昇降手段は、1例であってこの仕組に限定されるものではない。
【0021】
続いて、本体背面の外壁に設置されたネット21を伸張し、先端をネット止め具22に掛けて係止し、苗をネット21で覆う。ネット21の端部に取り付けた伸縮性素材によって、ネット21は苗を適度な圧力で包みこみ、苗の葉を固定化する。苗は、柔軟なネット21と剛性のある支持体4とのサンドイッチ構造に守られ、傷つくことなく噴霧の圧力に抗することができる。ネット21の網目は、苗の葉がはみ出さないサイズ、即ち5〜15mmの範囲が好ましく、ネット21の素材は苗の葉を傷めない柔軟性と適度な強度と耐久性を備えていることが好ましい。市販の合成繊維製ネットの多くは、この目的に適合する。またネット止め具22にはL型ネジが使用できる。
【0022】
以下の実施例において、キュウリの場合は品種「つや太郎」を162穴セルトレイにて育苗し、カボチャまたはズッキーニの場合は品種「えびす」または「ダイナー」を72穴セルトレイにて育苗し供試した。苗の第1本葉が出始めの時期に接種した。また、接種ウイルスは各凍結乾燥製剤を供し、5%のカーボランダムを添加した液状を使用した。接種は綿棒で擦る方法を除いてスプレーガンを用い、葉から上方に5cmの高さから吐出圧力0.4MPa、1苗あたり0.3mLを噴霧した。ウイルスの感染率は接種14日後にELISA法で調査した。
【実施例1】
【0023】
ズッキーニ黄斑モザイクウイルス弱毒株の凍結乾燥製剤を供して、以下1〜3の従来の各方法、1.綿棒を使って葉の表皮を擦る方法、2.茎を指間で挟みつつ掌で葉の下部から葉を支えて噴霧する方法、3.列方向(背面)の支持棒4のみで葉の下部を支えて噴霧する方法(図4)、4.列と行の支持棒4を用い格子状に葉の下部を支えて噴霧する方法(図5)そして3及び4にさらに葉の上部にネット21をかぶせて葉を上下で固定して噴霧する接種方法をそれぞれ5(図6参照)と6(図7参照)とした。表1に各接種法における感染率の結果を示した。検定には40株を供試した。また、各接種方法によって葉または茎が受けた損傷の有無(図8と9を参照)を表2に示した。調査には81株を供試した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【実施例2】
【0026】
カボチャモザイクウイルス(WMV)弱毒株とパパイア輪点ウイルス(PRSV)弱毒株の凍結乾燥製剤を供して、綿棒を使って葉の表皮を擦る方法1と本発明装置を使った方法6にて30株キュウリに接種した。感染率を表3に示す。
【0027】
【表3】
【実施例3】
【0028】
実施例2と同じ方法により、WMVの凍結乾燥製剤をカボチャまたはズッキーニ30株に接種した。その感染率を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
表1の結果より、スプレーガンで噴霧接種する場合、葉の下部からの支えだけでは安定した感染率が得られなかった。しかし、本発明の装置を用いた接種方法5及び6では葉を上部と下部で挟み込むようにして確実に苗を固定しているため、高圧で噴霧し葉に付着したウイルスの液量は従来法と比べて明らかに多く、感染率が高位安定化した(図10、11、12及び13)。また、表2から苗の損傷も方法5では軽微で方法6では全く確認されなかった。
【0031】
これらの結果から、ネット21の追加は、弱毒ウイルスの感染率の上昇、苗の損傷率の低下に極めて有効であることが確認された。また、表3と表4の結果より、方法6ではキュウリ苗、カボチャ苗またはズッキーニ苗において、いずれのウイルスでも高い感染率の得られることが認められた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13