【実施例1】
【0023】
図1は本発明の一実施例の太陽光パネル設置構造1の側面図、
図2は
図1の太陽光パネル設置構造1のA矢視による平面図、
図3は
図2のB−B断面図、
図4は
図3のa部拡大図、
図5は
図3のb部拡大図、
図6は
図2のC−C断面図、
図7は
図6のc部拡大図である。
本発明は
図1の通り、河川沿いの土手や盛土された道路の側部法面などの斜面Sに太陽光パネル2を設置するための太陽光パネル設置構造である。
この太陽光パネル設置構造1は、斜面Sに設けられた基礎部3と、この基礎部3上に設けられて斜面の傾斜方向及び斜面の傾斜方向と直交する横方向に隣り合うように配される複数の太陽光パネル2を設置する太陽光パネル設置架台5とを備えている。
この実施例では前記基礎部3が、斜面Sの斜面傾斜方向及び斜面横方向に間隔をあけた4箇所に打設された四角形状配置の4本の杭である。実施例の太陽光パネル設置架台5はこの4本の杭3上に設置されて、斜面横方向に3つ、斜面傾斜方向に3つで合計9つの太陽光パネル2を設置している。
【0024】
前記太陽光パネル設置架台5は、斜面の傾斜方向と直交する横方向に延長する態様で斜面上側と斜面下側とに間隔をあけて互いに平行に配されて前記基礎部3上に取り付けられる、平坦な上面及び側面を有する水平材4と、斜面の傾斜方向をなすとともに横方向に間隔をあけて配されて、斜面の傾斜方向に並ぶ図示例では3つの太陽光パネル2のそれぞれの
取付部を受けるパネル受け材6と、前記パネル受け材6の斜面上側及び斜面下側の端部にそれぞれ上部が固定されるスライド金具7とを備えている。
この実施例では、水平材4、パネル受け材6として軽量溝形鋼、スライド金具7として軽量山形鋼を用いている。
【0025】
実施例の基礎部3は、
図4、
図7に示すようにラセン状部3aの上端に溶接固定した円板3bの上面にボルト3cを垂直に溶接固定したラセン状の杭であり、斜面上に立てて円板3bにボルト3cより長い鋼管等の筒状体をボルト3cが内側になるように載せて、ラセン軸方向に鋼管等の筒状体を打撃することで、基礎部3は回転しながら地中に打設される。
基礎部3の打設後には、打設のために用いた鋼管等の筒状体は取り外される。
前記水平材4は、当該水平材4の下側のフランジ4aにあけたボルト挿通孔に前記ボルト3cを挿通させて、杭3の上端の円板3bに載せ、ナット3dを締め付けて、杭3の上端に固定している。
太陽光パネル2は、太陽電池モジュールの周囲を矩形の枠材で保持した構成である。
図2では1つの太陽光パネル2についてのみ枠材を示したが、太陽光パネル2の矩形の枠材の
図2で横方向両側(水平方向両側)の短い枠材を短辺枠材2a、縦方向両側(斜面傾斜方向両側)の長い枠材を長辺枠材2bとして示す。
【0026】
太陽光パネル2の斜面傾斜方向両側の長辺枠材2b上の2箇所の取り付け孔の位置に合せて横方向に間隔をあけた2本のパネル受け材6の上側のフランジ6aに、太陽光パネル2の長辺枠材2bがボルト13で固定されている。
前記斜面上側のスライド金具7(7
1)及び斜面下側のスライド金具7(7
2)は、いずれもその上部(水平なフランジ7a)がパネル受け材6の下面(下側のフランジ6b)にボルト11で固定されている。
前記斜面上側のスライド金具7(7
1)及び斜面下側のスライド金具7(7
2)はそれぞれ、その下部(下方に延びる垂直なフランジ7b)が前記斜面上側の水平材4(4
1)又は前記斜面下側の水平材4(4
2)の斜面傾斜方向の側面に対し側面から接するように配されてそれぞれ水平材4の側面(ウエブ4b)にボルト9で固定されている。
この実施例では、
図7に示すように、斜面上側のスライド金具7(7
1)が水平材4(4
1)の斜面上側の側面に接している。なお、斜面上側又は斜面下側の少なくとも一方のスライド金具は、水平材4の斜面上側の側面に接する構成とする。
なお、上述の説明で、ボルト9、11、13について、ボルトで固定していると記載した部分は、詳しくはボルトとナットで固定しているのであるが、それを略して記載したものである。
【0027】
この実施例では、軽量溝形鋼である斜面上側及び下側の水平材4がいずれもその開口が内側に向いた態様(すなわち、それぞれの開口は斜面上側の水平材4
1は斜面傾斜方向の下側向き、斜面下側の水平材4
2は斜面傾斜方向の上側向き)で杭3にボルト3cで固定されている。
この実施例では、前記の通りスライド金具7の下方に延びるフランジ7bが斜面上側及び下側の水平材4のそれぞれ外側面に接しており、したがって、斜面上側のスライド金具7
1が斜面上側の水平材4
1の斜面上側の側面に接していることで、パネル受け材6及びこれと一体の太陽光パネル2は、傾斜して状態で置かれても斜面上側の支持金具7
1によって滑落することを有効に防止される。
【実施例2】
【0028】
上述の太陽光パネル設置構造1を採用して斜面に太陽光パネル2を設置する太陽光パネル設置施工方法の一例を、
図8〜
図15を参照して説明する。
図8〜
図15における(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のf−f断面図(いずれも同じ記号で示す)である。
図9〜
図15における(ハ)は(ロ)中の円で示した部分の拡大図である。
図14、
図15における(ニ)は(イ)のg−g断面図(いずれも同じ記号で示す)である。
図14における(ホ)は(ニ)の未完成パネルユニット20’を所定位置までスライドさせた段階を示している。
図1〜
図7では、斜面傾斜方向に3つの太陽光パネル2を設置しているが、以下の説明の太陽光パネル設置架台は、斜面傾斜方向に2つの太陽光パネル2を設置している場合である。
【0029】
(1)
図8に示す工程。
まず、斜面Sに基礎部として、図示例ではラセン状の杭3を、斜面上側及び下側の各水平材4にそれぞれ対応する2箇所、合計4箇所に打設する。
次いで、2本の水平材4をそれぞれ、斜面上側の2本の杭3、及び斜面下側の2本の杭3上に固定する。すなわち、斜面上側となる水平材4
1と斜面下側となる水平材4
2との一対の水平材4を、斜面の傾斜方向と直交する横方向に延長する態様で斜面上側と斜面下側とに間隔をあけて互いに平行に取り付ける。
この場合、先に
図4、
図7について説明したように、水平材4のボルト挿通孔に杭3の上端のボルト3cを挿通させて、水平材4を杭3の上端の円板3bに載せ、ナット3dを締め付けて、杭3の上端に固定する。
(2)予め、2本のパネル受け材6の斜面上側となる端部及び斜面下側となる端部の下側のフランジ6bにそれぞれ、スライド金具7の上部(水平のフランジ7a)を固定して、2本のスライド金具付きパネル受け材6A(
図9参照)を形成しておく。
(3)
図9に示す工程。
前記2本のスライド金具付きパネル受け材6Aの斜面傾斜方向の上端部及び下端部をそれぞれ、斜面傾斜方向上側及び下側の水平材4上に載せる。その際、斜面上側のスライド金具7
1及び斜面下側のスライド金具7
2がそれぞれ、その下部(下向きのフランジ7b)が斜面上側の水平材4
1又は斜面下側の水平材4
2の斜面傾斜方向の側面(ウエブ4b)に対し側面から接するように、かつ、斜面上側又は斜面下側の少なくとも一方のスライド金具7が水平材4の斜面上側の側面に接するように配して水平材4上に載せる。
この実施例では、スライド金具7のフランジ7bが、斜面傾斜方向上下のいずれも開口が内向きである水平材(溝形鋼)4の外側の面(ウエブ4b)に接しており、斜面上側のスライド金具7
1が斜面上側の水平材4
1の斜面上側の面(ウエブ4b)に接している(
図9(ハ)参照)。
【0030】
(4)
図10に示す工程。
前記2本のスライド金具付きパネル受け材6Aの横方向の間隔を太陽光パネル2の取り付け孔の位置に合せる。そして、斜面傾斜方向に並ぶ図示例では2つの太陽光パネル2のそれぞれ斜面傾斜方向の上側及び下側の長辺枠材2bを前記2本のスライド金具付きパネル受け材6Aの各パネル受け材6の上側のフランジ6aにそれぞれボルト13で固定する(
図4、
図5、
図7参照)。
前記2つの太陽光パネル2と、その2つの太陽光パネル2を固定した2本のスライド金具付きパネル受け材6Aとからなるものをパネルユニット20と呼ぶ。
(5)
図11に示す工程。
前記パネルユニット20を、横方向の所定の位置まで水平材4上をスライドさせ、パネル受け材6の両端のスライド金具7の下部(下向きのフランジ7b)を水平材4の側面(ウエブ4b)にボルト9で固定する(
図11(ハ)、
図7参照)。
(6)
図12及び
図13に示す工程。
前記パネルユニット20に横方向に隣接する次のパネルユニットを形成するための作業、すなわち、前記(2)〜(5)の工程を行う。
図12は前記(2)〜(4)の工程(
図9、
図10に対応する工程)、
図13は前記(5)の工程(
図11に対応する工程)を示す。
(7)先に形成したパネルユニットに隣接するパネルユニットを形成するための、前記(2)〜(6)の工程を所定のパネルユニットの数に対応して行う。ただし、この実施例では横方向に隣接して設置する太陽光パネルの数は3つであるから、前記(6)の工程で、最後に設置する太陽光パネルを除くすべての太陽光パネルの設置を終えている(したがって、別の図としては示されない)。
【0031】
(8)
図14に示す工程。
最後に設置する太陽光パネルについては、次の(8−1)〜(8−5)の工程により行なう。
(8−1)前記(2)及び(3)の工程(
図9に対応する工程)を行なう。
(8−2)2本のスライド金具付きパネル受け材6Aを水平材4上に置く。この場合、2本のスライド金具付きパネル受け材6Aのうちのスライド方向前方側(
図14で右側)のスライド金具付きパネル受け材6A
1を設定位置(矢印Pで示す位置)より手前側(
図14で左側)に位置させて置く。スライド方向後方側のスライド金具付きパネル受け材6A
2は、水平材4の端部に置く。
この状態で、斜面傾斜方向に並ぶ2つの太陽光パネル2のそれぞれにおける斜面傾斜方向両側の長辺枠材2bのスライド方向前方側の取付部を、前記前方側のスライド金具付きパネル受け材6A
1のパネル受け材6にそれぞれボルト13(
図4等参照)で固定する(すなわち、最後に設置する太陽光パネル2が水平材4の端からはみ出した状態で固定する)。
前記2つの太陽光パネル2と前記前方側のスライド金具付きパネル受け材6Aとからなるものを、未完成パネルユニット20’と呼ぶ。
(8−3)前記未完成パネルユニット20’を、先に設置したパネルユニット20に隣接する所定の位置まで水平材4上をスライドさせる(
図14(ホ)に示される位置)。
(8−4)斜面傾斜方向に並ぶ2つの太陽光パネル2のそれぞれにおける斜面傾斜方向両側の長辺枠材2bのスライド方向後方側の取付部を、後方側のスライド金具付きパネル受け材6A
2のパネル受け材6にそれぞれボルト13で固定する。
(8−5)2本のスライド金具付きパネル受け材6Aの各スライド金具7の下部を水平材の側面にボルト9で固定する。
以上により、
図15に示すように、斜面傾斜方向に2つ、横方向に3つの合計6つの太陽光パネル2の設置が完了する。
【0032】
図1〜
図7で表された太陽光パネル設置構造1を、パネル受け材6を水平材4に固定した後に、そのパネル受け材6上に太陽光パネル2をボルト固定する従来手順で施工するとした場合の不都合を
図16を参照して説明する。
図16において、最初に設置する斜面傾斜方向に並ぶ2つの太陽光パネル2
0を除けば、2番目の以降の、斜面傾斜方向に並ぶ2つの太陽光パネルを設置する際に、斜面傾斜方向に並ぶ2つの太陽光パネル2の一方の太陽光パネル2
1をパネル受け材6にボルト固定すると、他方の太陽光パネル2
2については、パネル受け材6の中間位置における角部Qをパネル受け材6にボルトで固定する作業は、パネル受け材6上に置いた状態の太陽光パネル2
2の下に潜り込まないとできない。
しかし、上述した本発明の施工方法では、パネルユニット20を形成した後にスライドさせるので、パネルユニット20を形成する段階(すなわち太陽光パネル2をパネル受け材6に固定する段階)では、ボルト接合作業をするスペースを容易に確保でき、太陽光パネルの下に潜り込む必要は生じない。
また、最後の太陽光パネルを設置する場合は、上述した(8−1)〜(8−5)の手順を採用することで、やはり、太陽光パネルの下に潜り込む必要は生じない。
【0033】
上述した本発明の施工方法では、太陽光パネル2の下に潜り込んでする作業を全く必要としないので、太陽光パネル設置作業の作業性が向上し、また、ケガなどする恐れも少なく、また、太陽光パネルと斜面との間の高さ空間を最小限にとどめることが可能で架台を支持する脚部ないし基礎部を低くし材料コストを安くすることができる。
また、太陽光パネルを搭載して斜面上下の水平材間に架け渡した状態のパネル受け材が滑落する恐れもない。
また、複数設置された太陽光パネルの任意の1枚を容易に取り外すことが可能でメンテナンスなどの作業が容易である。
土手などの横方向に延びる斜面に設置する際に横方向に多数設置することが可能であり、かつ斜面傾斜方向の複数の太陽光パネルを隙間なく設置できるので、決められた敷地面積に設置可能な太陽光パネル数が多くて、敷地面積に対する発電効率は良好である。また、斜面傾斜方向に隣接する太陽光パネル間の隙間もなくすことができるので、隙間から成長した雑草が太陽光パネルの上面に影を作って発電効率を低下させる不都合も防止できる。ただし、必要に応じて、斜面傾斜方向あるいは斜面傾斜方向と直交する横方向に隣接する太陽光パネル間に隙間を設けることを妨げるものではない。