【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)〈無機粒子充填層と熱可塑性樹脂保護層との接着性〉
JIS L1096 8.14項 引張強さに準拠し、シート1インチ幅×20cm長の短冊試験片の無機粒子充填層と熱可塑性樹脂保護層とを2cm剥がし、剥がし部分を掴み部分として、剥離速度50mm/minで剥離強度を求め、これを無機粒子充填層と熱可塑性樹脂保護層との接着力とした。
(2)〈シートの耐屈曲性〉
JIS L1096 8.19項 摩耗強さB法(スコット法)により、1kgf荷重100回、300回、500回での、無機粒子充填層と熱可塑性樹脂保護層の剥離の有無を評価した。
1:剥離なし
2:剥離を認める
(3)遮熱性の評価
JIS K5602「塗膜の日射反射率の求め方」に準拠し、日射反射率(%)=[塗膜からの反射光の総量]×100/[塗膜表面に入射した太陽光の総量]を求め、数値が高いほど遮熱性に優れるものと判定した。
(4)防音性(音響減衰性)の評価
JIS A1416「実験室における音響透過損失測定法」による、中心周波数500Hz,1000Hz,2000Hzの音響透過損失により評価した。
(5)電磁波遮蔽の評価
100MHzの電磁波に対するシールド効果、及び10
18Hzの電磁波に対するシールド効果をKEC法(関西電子工業振興センター法)によって測定した。シールド効果(SE)は、SE(dB)=20logE1−20logE2で表され、式中、E1は試料が存在しないときの電界強度、E2は試料が存在するときの電界強度である。
【0035】
[実施例1]
1).ポリエステル(PET)製555dtexのマルチフィラメントを用いた平織物(比重:タテ(経糸)23本/インチ×ヨコ(緯糸)25本/インチ:質量105g/m
2:目抜度24%)を基布として、この平織物の表面と裏面それぞれに、下記の軟質塩化ビニル配合組成物〈配合1〉からなる厚さ0.25mmの無機粒子充填層用シート(170℃の熱条件でカレンダー成形)を170℃設定のラミネート加工機で熱圧着してブリッジ積層し、厚さ0.6mm、質量1773g/m
2の白色の繊維基布複合シートを得た。無機粒子充填層には無機粒子として硫酸バリウムを65質量%含有するものである。
〈配合1:軟質塩化ビニル樹脂配合組成物〉
塩化ビニル樹脂(重合度1050) 100質量部
硫酸バリウム(比重4.45、平均粒子径0.8μm) 350質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 15質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn(安定剤) 2質量部
ステアリン酸カルシウム(滑剤) 0.2質量部
2).次に、熱可塑性樹脂保護層として下記の軟質塩化ビニル樹脂配合組成物〈配合2〉からなる厚さ0.1mmで白色の熱可塑性樹脂保護層用シートを170℃の熱条件でカレンダー成形した。
〈配合2:軟質塩化ビニル樹脂配合組成物〉
塩化ビニル樹脂(重合度1050) 100質量部
二酸化チタン(比重4.29、平均粒子径1μm) 20質量部
DOP(可塑剤) 50質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 15質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn(安定剤) 2質量部
ステアリン酸カルシウム(滑剤) 0.2質量部
3).次に、目付量55g/m
2のナイロン製起毛不織布を、1)で得た繊維基布複合シートの表面と裏面に配置し、さらに表裏に配置した起毛不織布上に、2)で得た熱可塑性樹脂保護層用シートが覆うように配置し、この配置状態で170℃設定のラミネート機を通過させ、熱圧着積層して、厚さ0.92mm、質量2550g/m
2の白色の可撓性複合シートを得た。
【0036】
[実施例2]
実施例1の1)において、無機粒子充填層用シートを下記のポリエチレンゲル配合組成物〈配合3〉に変更した以外は実施例1の1)〜3)の手順と同様にして厚さ0.92mm、質量2727g/m
2の白色の可撓性複合シートを得た。
〈配合3:ポリエチレンゲル配合組成物〉
ポリエチレンゲルとして、商品名:コスモスーパーゲル(品番:HC04N:エチレン−スチレン共重合体樹脂100質量部と流動パラフィン10〜20質量部の混合物:日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度4〜5:反発弾性率21%:伸び率1300%〜:コスモ計器株式会社製)100質量部に対し、硫酸バリウム(比重4.45、平均粒子径0.8μm)500質量部を155℃でカレンダー成形し、厚さ0.25mmのポリエチレンゲルシートを得た。無機粒子充填層となるポリエチレンゲルシートには無機粒子として硫酸バリウムを83質量%含有するもので、その質量は923g/m
2である。
【0037】
[参考例1]
1).ポリエステル(PET)製555dtexのマルチフィラメントを用いた平織物(比重:タテ(経糸)23本/インチ×ヨコ(緯糸)25本/インチ:質量105g/m
2:目抜度24%)を基布として、この平織物の表面と裏面それぞれに、下記の低密度ポリエチレン樹脂配合組成物〈配合4〉からなる厚さ0.25mmの無機粒子充填層用シート(130℃の熱条件でカレンダー成形)を140℃設定のラミネート加工機で熱圧着してブリッジ積層し、厚さ0.6mm、質量1840g/m2の白色の繊維基布複合シートを得た。無機粒子充填層には無機粒子として硫酸バリウムを78質量%含有するものである。
〈配合4:低密度ポリエチレン樹脂配合組成物〉
低密度ポリエチレン樹脂(密度0.9) 100質量部
硫酸バリウム(比重4.45、平均粒子径0.8μm) 350質量部
エルカ酸アマイド(滑剤) 0.2質量部
2).次に、熱可塑性樹脂保護層として下記の配合組成物〈配合5〉からなる厚さ0.1mmで白色の熱可塑性樹脂保護層用シートを140℃の熱条件でカレンダー成形した。
〈配合5:エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂配合組成物〉
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(VA=25) 100質量部
二酸化チタン(比重4.29、平均粒子径1μm) 20質量部
エルカ酸アマイド(滑剤) 0.2質量部
3).次に、目付量50g/m
2の芯鞘不織布(芯:ポリエステル,鞘:低密度ポリエチレン)を、1)で得た繊維基布複合シートの表面と裏面に配置し、さらに表裏に配置した芯鞘不織布上に、2)で得た熱可塑性樹脂保護層用シートが覆うように配置し、この配置状態で140℃設定のラミネート機を通過させ、熱圧着積層して、厚さ0.92mm、質量2473g/m
2の白色の可撓性複合シートを得た。
【0038】
[実施例4]
実施例1の1)において、無機粒子充填層用シートを下記のシリコーンゲル配合組成物〈配合6〉に変更した以外は実施例1の1)〜3)の手順と同様にして厚さ0.92mm、質量5693g/m
2の黒色の可撓性複合シートを得た。
〈配合6:シリコーンゲル組成物〉
シリコーンゲルとして、商品名:アルファゲル:(ポリシロキサン樹脂100質量部とシリコーンオイル10〜20質量部の混合物:日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度10〜12:JIS K2207 針侵入硬度150/10mm:伸び率340%:株式会社タイカ製)100質量部に対し、タングステン(比重19.25、平均粒子径0.8μm)100質量部を155℃でカレンダー成形し、厚さ0.25mmのシリコーンゲルシートを得た。無機粒子充填層となるシリコーンゲルシートには無機粒子としてタングステンを50質量%含有するもので、その質量は2406g/m
2である。
【0039】
[実施例5]
実施例1において、ポリエステル(PET)製基布(実施例1に記載)をボロン繊維(タングステン線を芯材にホウ素による化学蒸着したモノフィラメント)を含む基布(タテ糸:ポリエステル繊維137dtex90本/1インチ、ヨコ糸:ボロン繊維200本/1インチ:質量340g/m
2:SPECIALTY MATERIALS,INC.製)に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ0.92mm、質量2785g/m
2の白色の可撓性複合シートを得た。
【0040】
実施例1〜5のシート構成は、「熱可塑性樹脂保護層/接着性不織布層/無機粒子充填層/繊維織物(基布)/無機粒子充填層/接着性不織布層/熱可塑性樹脂保護層」とする7層構造とするように、特に無機粒子充填層と熱可塑性樹脂保護層との間に不織布を接着介在層として設けることによって、屈曲や折り曲げストレスによる層間剥離を起し難く、さらにはシート本体の亀裂や断裂破壊を生じ難い、繰り返しの実用耐久性に優れたフレキシブルシートを得ることを可能とした。特にJIS L1096 8.14項の引張強さに準拠した熱可塑性樹脂保護層と無機粒子充填層との剥離試験は、すべてが不織布層の凝集破壊であり、従って十分な破壊強度を伴い、JIS L1096 8.19項の摩耗強さB法(スコット法)での屈曲試験においても十分な実用耐久性を示した。また、実施例1〜5のシートはシート同士の高周波溶着が可能であり、良好な遮熱性と防音性(音響減衰性)を兼備し、さらに電磁波シールド性も具備することが各種試験により明らかとなった。
【0041】
【表1】
【0042】
[比較例1]
実施例1において、2)と3)の手順を省略し、「無機粒子充填層/繊維織物(基布)/無機粒子充填層」の構成とし、厚さ0.6mm、質量1773g/m
2のシートを得た。
【0043】
[比較例2]
実施例1において、接着性不織布層を省略して「熱可塑性樹脂保護層/無機粒子充填層/繊維織物(基布)/無機粒子充填層/熱可塑性樹脂保護層」とし、厚さ0.90mm、質量2440g/m
2のシートを得た。
【0044】
比較例1のシートは熱可塑性樹脂保護層を有さないため、JIS L1096 8.19項の摩耗強さB法(スコット法)での屈曲試験300回で、無機粒子充填層(硫酸バリウム65質量%含有)表面に細かな亀裂が全体に入り、さらにシート表面同士の摩擦で無機粒子充填層から摩耗した白粉が試験機にこぼれ落ちるなど、外見で判別できる程のダメージを露呈した。また、比較例2のシートは熱可塑性樹脂保護層を有するが、熱可塑性樹脂保護層と無機粒子充填層の間に接着性不織布層を有さないため、JIS L1096 8.19項の摩耗強さB法(スコット法)での屈曲試験100回に満たない段階で、熱可塑性樹脂保護層と無機粒子充填層とが剥離し、剥がれた0.1mm厚の熱可塑性樹脂保護層フィルムは屈曲試験300回に満たない段階で千切れ、また無機粒子充填層(硫酸バリウム65質量%含有)表面に細かな亀裂が全体に入り、さらにシート表面同士の摩擦で無機粒子充填層から摩耗した白粉が試験機にこぼれ落ちるなど、外見で判別できる程のダメージを露呈した。
【0045】
【表2】