特許第5938837号(P5938837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938837漂白木粉、漂白木粉の製造方法、それを用いた紙及びその製紙方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938837
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】漂白木粉、漂白木粉の製造方法、それを用いた紙及びその製紙方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 9/16 20060101AFI20160609BHJP
   D21H 17/67 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   D21C9/16
   D21H17/67
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-537619(P2013-537619)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-506961(P2014-506961A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】KR2011008430
(87)【国際公開番号】WO2012060672
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0109662
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513112810
【氏名又は名称】ジーバイオテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ファン,クッグ ヒュン
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−184981(JP,A)
【文献】 特開昭59−222305(JP,A)
【文献】 特開平06−228898(JP,A)
【文献】 特表2010−524738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
B23K 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S10:木材を粉砕機で粉砕してウッドパルプにした後、含水量1〜2重量%になるように乾燥するウッドパルプ乾燥過程と、
S20:前記ウッドパルプ乾燥過程において乾燥されたウッドパルプを繊維長0.15mm以下の木粉に分級し且つ選り抜く木粉分級及び選抜過程と、
S30:前記木粉分級及び選抜過程において分級され且つ選び抜かれた木粉を漂白設備に送り込み、5分後にH(過酸化水素)水溶液と塩水を混合して添加し、漂白剤をかけて40分間攪拌しながら漂白する木粉漂白過程と、
S40:前記木粉漂白過程において漂白された木粉にスチームを供給して漂白木粉を乾燥する漂白木粉乾燥過程と、
S50:前記漂白木粉乾燥過程において乾燥された漂白木粉を分級し且つ選り抜く漂白木粉分級及び選抜過程と、
を含むことを特徴とする漂白木粉の製造方法。
【請求項2】
前記製造された漂白木粉5〜20重量%と、天然パルプ80〜95重量%とを混合して抄紙機に送り込んで製紙を行うことを特徴とする請求項1に記載の漂白木粉を用いた製紙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白木粉を天然パルプと混合して製紙を行うことにより、脱水性を向上させる一方で、パルプの使用量を低減して安価で且つ高品質の紙が得られる漂白木粉、漂白木粉の製造方法、それを用いた紙及びその製紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙は、天然パルプから製造するか、あるいは、再生パルプを混合して製造する。なお、天然パルプとしては、木材、麻、カジノキ、稲藁、サトウキビ、パピルスなど種々の材料が挙げられる。
【0003】
一般に、紙は、原料使用の効率化と抄紙工程の脱水性を図るために、多数の層の紙が合紙された形状に製造され、製紙に用いられる原料は、天然パルプと再生パルプとに大別できる。
【0004】
前記再生パルプは、天然パルプに比べて微細粉と灰分の含量が高いため脱水性を低下させるだけではなく、紙のバルク性と強度を減少させ、とりわけ、バルク性の減少は製紙工程におけるパルプの使用量を増大させて生産コストに悪影響を与えてしまう。なお、再生パルプの場合に、再使用回数が増大されるにつれて含水能が高くなって乾燥エネルギーが上昇する。
【0005】
したがって、紙のバルク性を上昇させると、再生パルプの使用量が低減されるだけではなく、乾燥エネルギーの節減にも役立つので、従来には、紙のバルク性を向上させる木粉を再生パルプと混合して製紙を行うことにより、紙のバルク性を向上させてパルプの使用量を低減している(例えば、下記の特許文献1参照)。参考までに、前記特許文献1は、2009年05月12日付けで大韓民国特許庁に登録されており、出願人はハンソル製紙株式会社である。
【0006】
しかしながら、上記の従来の技術に用いられる木粉は、木材を用意し、該木材をグラインダーで粉砕し且つ分級し、さらに選び抜いたものである。この木粉は、天然パルプではなく、再生パルプ(古紙)と混合されて製紙に供されるため、白紙に広範に使用できない他、再生パルプに比べて高価な天然パルプの使用量を低減することができず、これは、製紙コストの高騰化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0898383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製紙に際してバルク性を向上させるために用いられる木粉を、再生パルプではなく、天然パルプと混合して用いることから、天然パルプの使用量を低減することができ、しかも、漂白木粉を用いることから白紙の製造にも活用することのできる漂白木粉、漂白木粉の製造方法、それを用いた紙及びその製紙方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の実施形態に係る漂白木粉の製造方法は、S10:木材を粉砕機で粉砕してウッドパルプにした後、含水量1〜2重量%になるように乾燥するウッドパルプ乾燥過程と、S20:前記ウッドパルプ乾燥過程において乾燥されたウッドパルプを繊維長0.15mm以下の木粉に分級し且つ選り抜く木粉分級及び選抜過程と、S30:前記木粉分級及び選抜過程において分級され且つ選び抜かれた木粉を漂白設備に送り込み、5分後にH(過酸化水素)水溶液と塩水を混合して添加し、漂白剤をかけて40分間攪拌しながら漂白する木粉漂白過程と、S40:前記木粉漂白過程において漂白された木粉にスチームを供給して漂白木粉を乾燥する漂白木粉乾燥過程と、S50:前記漂白木粉乾燥過程において乾燥された漂白木粉を分級し且つ選り抜く漂白木粉分級及び選抜過程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る漂白木粉を用いた製紙方法は、製造された漂白木粉5〜20重量%と、天然パルプ80〜95重量%とを混合して抄紙機に送り込んで製紙を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、再生パルプと天然パルプとを混合して製紙を行う際に、木粉を用意して漂白を行った後に、天然パルプと漂白木粉とを混合して製紙を行うことにより、脱水性を向上させて省エネルギーを図ることができ、漂白木粉を天然パルプに混入して用いることにより、天然パルプの使用量を画期的に低減することができ、しかも、白紙の製紙に広範に用いることができるという効果がある。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る紙及びその製紙方法によれば、木材を粉砕し且つ乾燥した後に、所定の大きさ以下に分級して選び抜き、選び抜かれた木粉を漂白設備に漂白剤とともに送り込んで所定時間攪拌しながら漂白を行い、漂白された木粉を研磨し、分級し且つ選び抜くことにより製造された漂白木粉5〜20重量%を天然パルプ80〜95重量%と混合して製紙を行うので、白紙の製紙に広範に用いることができ、しかも、バルク性を向上させて天然パルプの使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る製紙方法の流れを示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係る漂白木粉の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態に係る漂白木粉、漂白木粉の製造方法、それを用いた紙及びその製紙方法について説明する。
【0015】
(実施形態)
本発明は、製紙に際して、木粉を再生パルプと混合して用いる方式から逸脱して、木粉を漂白した後に天然パルプと混合して製紙を行うことにより、天然パルプの使用量を低減する一方で、バルク性を向上させて脱水性を増大させて省エネルギーを図っている。
【0016】
以下、本発明における木粉漂白過程と、漂白木粉を用いた製紙過程について説明する。
【0017】
先ず、図2に基づき、本発明の実施形態に係る漂白木粉の製造方法について説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る漂白木粉の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0019】
先ず、木材を粉砕機で粉砕してウッドパルプにした後に、含水量1〜2重量%になるように乾燥する(ステップS10)。
【0020】
次いで、乾燥されたウッドパルプを繊維長0.15mm以下の木粉に選び抜き且つ分級する(ステップS20)。
【0021】
次いで、前記ステップS20において分級され且つ選び抜かれた木粉を漂白設備に送り込み、5分後にH(過酸化水素)水溶液と塩水を混合して添加し、漂白剤をかけて40分間攪拌しながら漂白を行う(ステップS30)。このとき、攪拌時間は、H(過酸化水素)水溶液と塩水の量及び混合度に応じて調節する。なお、水を添加した後に概ね40〜70分で木粉に水分が十分に浸透され、本発明者による実験の結果、約50分であれば、木粉に水分が十分に浸透されるということが判明された。
【0022】
このとき、木粉及び木粉を攪拌する攪拌機(図示せず)の内部温度は、60〜80℃に保たれる。
【0023】
次いで、前記ステップS30において漂白された木粉にスチームを供給して乾燥する(ステップS40)。
【0024】
次いで、前記ステップS40において乾燥された漂白木粉を研磨し、分級し且つ選り抜く(ステップS50)。
【0025】
上記の過程を経て本発明の実施形態に係る漂白木粉が製造される。
【0026】
一方、図1に基づき、本発明の実施形態に従い製造された上記の漂白木粉を用いて製紙を行う過程について説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る製紙方法の流れを示すフローチャートである。
【0028】
先ず、本発明の実施形態に従い製造された漂白木粉を分散して送り込み(図1における符号10参照)、該漂白木粉5〜20重量%と天然パルプ80〜95重量%とを混合して抄紙機に送り込んで通常の方法により製紙を行う。
【0029】
すなわち、本発明は、天然パルプだけで製紙を行うのではなく、天然パルプに所定量の漂白木粉を混入して製紙を行うことにより、漂白木粉のバルク性を向上させて天然パルプの使用量を低減させ、脱水性を向上させて製紙に要されるエネルギーを低減している。
【0030】
また、本発明は、木粉をそのまま用いる既存の方式とは異なり、木粉を漂白した後に用いるので、上記のメリットに加えて、白紙の製造に広範に利用することが可能になる。
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る漂白木粉の製造過程について詳述した後、前記漂白木粉を用いて製紙を行う方法について詳述する。
【0032】
本発明においては、製紙を行うために用いる木粉を製造するために、先ず、木材を用意し、用意された木材を粉砕機に送り込んでウッドパルプに粉砕し、得られたウッドパルプを含水量1〜2重量%になるように乾燥する。
【0033】
すなわち、木材を粉砕してウッドパルプにした後に乾燥し、ウッドパルプの含水量が1〜2重量%になるように十分に乾燥する。
【0034】
前記粉砕され且つ乾燥されたウッドパルプは、繊維長0.15mm以下になるように分級し且つ選び抜く。このとき、繊維長0.15mm以下に揃えるために粉砕機を用いるが、分級中に上記の範囲を外れた木粉は再び粉砕機に送り込んで粉砕することにより、製紙に使用可能な繊維長にする。
【0035】
このようにして木粉分級及び選抜過程において分級され且つ選び抜かれて繊維長0.15mm以下に揃えられた木粉は、通常の漂白設備に所定量の水と共に送り込んだ後に、5分が経過するまで待って水分が木粉に十分に浸透されるようにする。ここで、木粉に水分を浸透させる理由は、漂白をスムーズに行うためである。
【0036】
次いで、木粉分級及び選抜過程においては、漂白設備に分級され且つ選び抜かれた木粉と共に水を送り込んだ後に5分が経過して水分が木粉に浸透すれば、H(過酸化水素)水溶液と塩水を混合して漂白設備に添加する。次いで、上述したようにH(過酸化水素)水溶液と塩水を混合して、水分の浸透された木粉が送り込まれている漂白設備に添加した後に、漂白剤をかけて約40分間攪拌を行うことにより木粉の漂白を行う。
【0037】
このとき、木粉及び木粉を攪拌する攪拌機(図示せず)の内部温度は、60〜80℃に保たれ、これにより、均質な攪拌効果が得られる。
【0038】
上述したように漂白設備を用いて木粉を漂白した後には、漂白木粉を漂白設備からスチーム設備に移してスチームを用いて乾燥するが、このとき、乾燥速度は、木粉1トン当たり約1時間かけて乾燥を行う。
【0039】
上記の乾燥過程においてスチームにより乾燥された漂白木粉は、さらに研磨され、分級され且つ選び抜かれる。
【0040】
なお、このようにして漂白木粉が製造されると、これを用いて製紙を行う。
【0041】
製紙は、上記の過程を経て製造された漂白木粉5〜20重量%と天然パルプ80〜95重量%とを混合した後に抄紙機に送り込むことにより行われ、抄紙機に送り込まれた漂白木粉と天然パルプとの混合材料を用いて製紙を行う過程は周知であるため、本発明においてはその詳細な記述を省略する。
【0042】
すなわち、本発明は、天然パルプを用いて通常の方法により製紙を行うに当たって、天然パルプと漂白木粉とを混合して製紙を行うことにより、漂白木粉の送り込み量に見合う分だけ白紙の製造に必要な天然パルプの使用量を画期的に低減することができる。
【0043】
このように、本発明によれば、天然パルプに所定量の漂白木粉を混入して製紙を行うことにより、漂白木粉のバルク性を向上させて天然パルプの使用量を低減させることができ、しかも、脱水性を向上させて製紙に必要なエネルギーを低減することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
10:漂白木粉の分散及び送り込み
S10:ウッドパルプ乾燥過程
S20:分級及び選抜過程
S30:漂白過程
S40:漂白木粉製造過程
S50:漂白木粉分級及び選抜過程


図1
図2