特許第5938900号(P5938900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938900
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】口腔関連圧力測定用プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20160609BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61B5/00 101M
   G01L5/00 Z
   A61B5/22 Z
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-287500(P2011-287500)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-135728(P2013-135728A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−090054(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/029769(WO,A1)
【文献】 特開2001−275994(JP,A)
【文献】 特開2008−237366(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/026488(WO,A1)
【文献】 特開2005−296281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0121224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
A61B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張部を備えたバルーンと、前記バルーンの内部と連通するように一方の開口端部が前記バルーンに接続された中空管部と、を含み、前記中空管部は可撓性を有しており、さらに中空管部には、摺動部材が中空管部の長手方向に摺動可能であり、かつ中空管部上の所望の位置に固定可能であるように装着されていることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項2】
前記中空管部は、予め湾曲した形状で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項3】
前記摺動部材が環状を特徴とする、請求項1に記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項4】
前記摺動部材につき、その摺動方向に沿って見たときの外径形状は偏平状であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項5】
前記外径形状が楕円形である、請求項4に記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項6】
前記中空管部には、前記中空管部の前記バルーン側先端からの距離を示す目盛りが付与されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項7】
前記摺動部材を、前記中空管部上の所望の位置に係止するための係止機構が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項8】
前記係止機構は、前記中空管部の表面と前記摺動部材の中空管部と対向する面のいずれか一方に突起を設け、他方に該突起と嵌合する溝を設けたものであることを特徴とする、請求項7に記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項9】
前記溝または前記突起の少なくとも一方が環状に形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかの項に記載の口腔関連圧力測定用プローブと、前記バルーンの内部と連通してその空気圧を検出する圧力検知部とを含むことを特徴とする口腔関連圧力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力の測定の際に使用する口腔関連圧力測定用プローブおよびこれを用いた口腔関連圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者のQOL(Quality of Life)の向上のために摂食・嚥下機能の維持・回復が求められており、その機能の解明が必要になってきている。摂食・嚥下機能には舌の動きが深く関与しており、食塊の形成および咽頭への送り込みには所定の舌圧が必要となる。このため、舌圧の測定とその解析は重要な意味を持つ。
【0003】
舌圧測定方法としては、例えばバルーン式プローブを用いる方法が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1に開示された測定装置では、バルーンが設けられたプローブを用いている。口腔内にバルーンが挿入され舌でバルーンが押圧されると、バルーンと連通した圧力検知部においてバルーン内の空気圧変化が検出され、それを電気信号に変換することで舌圧を測定することができる。特許文献1に開示された測定装置においては、プローブに装着された硬質リングが唇または歯の位置になるようにプローブの位置決めが行なわれる。
【0004】
特許文献2に開示された口腔関連圧力測定用プローブにおいては、バルーンが取付けられたプローブのバルーンよりも後方側にバンパーを設けることで、プローブを口腔内に挿入した際の位置決めを容易にし、さらにプローブの過挿入や誤飲を防ぐことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−275994号公報
【特許文献2】特開2007−90054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、摂食・嚥下における重要な動作として、口腔内に取り込んだ食物の咀嚼および食塊の形成、そして形成した食塊を咽頭に移動させる動作がある。このとき、食物の咀嚼および食塊の形成においては舌の先端側の動きが重要となり、また食塊の咽頭への移動においては舌の基端側(以下、「奥舌」ともいう)の動きが重要となる。食物の咀嚼および食塊の形成、そして食塊の咽頭への移動のうちの一つでも十分に実行できない場合、摂食・嚥下障害が惹起されることとなる。よって、摂食・嚥下機能の評価を行なう際には、舌の先端側の圧力を測定するとともに奥舌の圧力を測定することも重要となる。
【0007】
特許文献1および2に開示されている口腔関連圧力測定装置では主に舌の先端側の圧力を測定することを想定しており、奥舌の圧力を測定するためにはプローブをより深く口腔内に挿入しなくてはならない。プローブをより長く形成すれば口腔内の深い位置にプローブを挿入することも可能ではあるが、口唇から奥舌までの距離には頭の大きさや発育具合などによって個人差があるため、奥舌の圧力を正確に測定するためには様々な長さのプローブを用意し、被験者の口唇から奥舌までの距離に応じたプローブを適宜選択して用いる必要がある。この場合、膨大な種類のプローブを予め準備しなければならず、コストが高くなり製造上も不都合がある。
【0008】
また、舌の形状は上方に弧を描くような形状となっている。そのため、直線状のプローブを奥舌まで挿入した場合、舌を圧迫するような形となり、さらにプローブ先端に設けられた圧力測定用のバルーンを奥舌の所望の位置に配置しにくいという問題がある。このため、圧力を測定した際にその精度が低下するおそれがある。前述のように、口腔内の形状や舌の形状は頭の大きさや発育具合などによって異なるものであるため、種々の形状のプローブを用意したとしてもその規格が膨大な量となる。そのため、コストが高くなり製造上も不都合がある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は舌の先端側の圧力および奥舌の圧力を、同一規格のプローブによってより正確に測定することが可能な口腔関連圧力測定用プローブおよびそれを用いた口腔関連圧力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の口腔関連圧力測定用プローブは、膨張部を備えたバルーンと、前記バルーンの内部と連通するように一方の開口端部が前記バルーンに接続された中空管部と、を含み、前記中空管部は可撓性を有しており、さらに中空管部には、摺動部材が中空管部の長手方向に摺動可能であり、かつ中空管部上の所望の位置に固定可能であるように装着されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の口腔関連圧力測定装置は、本発明の口腔関連圧力測定用プローブと、前記バルーンの内部と連通してその空気圧を検出する圧力検知部とを含むことを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書においては、口腔関連圧力測定用プローブのバルーン側へ向かう方向を前方とし、バルーンから離れた側へ向かう方向を後方とする。
【発明の効果】
【0013】
中空管部を可撓性を有する材料で構成することで、プローブを口腔内に挿入してバルーンを奥舌に配置しようとした際、口腔内および舌の形状に応じて中空管部が容易に変形する。そのため、バルーンを測定に適した位置に配置しやすくなる。
【0014】
また、歯や唇でプローブを把持するために設けられた摺動部材は中空管部の長手方向に摺動可能であるため、口腔内にプローブを挿入する前に摺動部材を摺動させて予め所望の位置に配置することにより、プローブの挿入長を容易に設定することができる。すなわち、圧力を測定する舌の部位や被測定者の頭の大きさなどに応じてバルーンの挿入長の設定を容易に変更することができるため、どのような対象であってもより正確な口腔関連圧力の測定を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のプローブにおいて、摺動部材がバルーンに近い位置に位置する態様を示した図である。
図2】本発明のプローブにおいて、摺動部材がバルーンより離間した位置に位置する態様を示した図である。
図3図1のA−A断面図の一例を示した図である。
図4図1のA−A断面図の、図3に示す態様とは異なる一例を示した図である。
図5図1のA−A断面図の、図3に示す態様とは異なる一例を示した図である。
図6】本発明のプローブに硬質管部を設けた例を示した図である。
図7】本発明のプローブにおいて、中空管部に目盛りを設けた例を示した図である。
図8】本発明のプローブにおいて、摺動部材の位置決め機構を備えた例を示す模式図である。
図9】本発明のプローブにおいて、摺動部材の位置決め機構を備えた例を示す模式図である。
図10】本発明のプローブにバンパーを設けた例を示した図である。
図11】本発明のプローブを用いた口腔関連圧力測定装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプローブにおいては、中空管部が予め湾曲した形状で形成されていることが望ましい。前述のように舌の形状は上方に弧を描くような形状となっているため、中空管部を予め湾曲した形状で形成することにより、プローブをより口腔内の形状に沿った形となるよう形成できる。そのため、測定時の違和感を低減することができ、かつ正確な測定を行なうことが可能となる。
【0017】
本発明のプローブにおいては、摺動部材を環状とすることが望ましい。この構成により、上下の唇や上下の歯で摺動部材を加えたときに中空管部に力が加わらないため、中空管部が閉塞して正確な測定が行なえないというリスクを低減できる。
【0018】
本発明のプローブにおいては、摺動部材につき、摺動方向に沿って見たときの摺動部材の外径形状が偏平状であってもよく、その形状は楕円形であることが好ましい。この構成により、例えば摺動部材が略真円筒状である場合よりも唇や歯によって把持しやすくなり、安定した圧力測定を行なうことができる。
【0019】
本発明のプローブにおいては、前記中空管部に前記バルーン側先端からの距離を示す目盛りが付与されていてもよい。この構成により、摺動部材の位置合わせやそれによるプローブの口腔内への挿入長の設定を容易に行なうことができる。
【0020】
本発明のプローブにおいて、摺動部材を中空管部状の所定の位置に係止するための係止機構を設けてもよい。係止機構は、たとえば中空管部の表面および摺動部材の中空管部と対向する面のいずれか一方に突起を設け、他方に該突起と嵌合する溝を設けたものであってもよい。この構成により、摺動部材の位置合わせやそれによるプローブの口腔内への挿入長の設定を容易に行なうことができ、かつ事前に設定した摺動部材の位置を変えることなくプローブを口腔内に挿入することができる。このとき、該溝または該突起の少なくとも一方が環状に形成されていると、より係止しやすくなるために好ましい。
【0021】
以下、本発明の一例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1および図2は、本発明のプローブの実施態様を示したものである。本発明のプローブ1は、膨張部21を備えたバルーン2と、バルーン2の内部と連通するように一方の開口端部がバルーン2に接続された中空管部3、そして中空管部3に装着され、中空管部3の長手方向に摺動可能であり、かつ中空管部上の所望の位置に固定可能である摺動部材4を備えている。本実施形態のプローブにおいては、バルーン2に設けられた取付部22に中空管部3の一端が挿入され、それらの上に熱収縮チューブを外嵌させている。この熱収縮チューブの収縮によってバルーンの取付部22が中空管部3に締め付けられており、バルーン2と中空管部3とが気密に接続されている。バルーン2と中空管部3とを気密に接続するにあたっては、上記の方法以外にも接着剤で接着する方法や熱によって溶着する方法、硬質部材からなる嵌合部材を用いてバルーンを締め付ける方法を用いてもよい。
【0023】
中空管部3は、バルーンの取付部22の径と略同等、もしくはそれよりも細く形成されており、可撓性を有する材質によって構成されている。口腔内に挿入して舌でバルーン2を押圧したときにバルーン2内と圧力測定装置11との連通が断絶しないよう、中空管部3には可撓性と同時にある程度の剛性がある材料を用いることが望ましい。このとき、中空管部3をバルーン2の取付部よりも細い径となるよう形成してもよい。この構成により、中空管部3がより変形しやすくなる。そのため、口腔内にプローブ1を挿入したとき、口腔内の形状に合わせて中空管部3が変形し、バルーン2を適切な位置に配置しやすくなる。また、中空管部3を細く形成することで、プローブ1を口腔内に挿入したときに邪魔になりにくく
【0024】
中空管部3の長さにつき、中空管部3が長すぎると取扱いが難しくなる上、バルーン2から圧力検知部までの距離が長くなるために測定の精度が下がるおそれがある。また、中空管部3が短すぎると奥舌にバルーン2を配置しにくくなり、圧力測定を行えなくなるおそれがある。よって、中空管部3の長さは8cmないし20cm、好ましくは10cmないし15cm程度であることが望ましい。
【0025】
中空管部3は直線状に形成されていてもよいが、予め湾曲させた形状で形成されていることが望ましい。前述のように、舌や口腔蓋の断面形状は上方に向かって弧を描くような形となっているため、予め中空管部3を湾曲させておけば、プローブ1を口腔内に挿入したときに舌や口腔蓋にフィットしやすくなる。また、直線状に形成した場合と比べて口腔内に挿入したときの中空管部3の変形を抑制することができるので、中空管部3が折れ曲がることでバルーン1内の空気が圧力検知器に伝わりにくくなることを防ぐことができる。
【0026】
中空管部3には、摺動部材4が中空管部3の長手方向に摺動可能であるように外嵌されている。プローブ1を口腔内に挿入したときに、摺動部材4を歯や歯茎、唇などで噛んでプローブ1を把持する。このとき、口唇圧や切歯圧によって中空管部3が直接圧迫されないよう摺動部材は硬質であることが望ましい。この構成により、圧力測定の結果に悪影響が及ぶことを防ぐことができる。また、摺動部材4は前記のような長さのある中空管部3の長手方向に摺動可能であるとともに、中空管部上の所望の位置に固定可能であるように装着されているので、バルーン2を舌の先端側・基端側のいずれに配置する場合でも、摺動部材4を中空管部3の長手方向に沿って摺動させるだけでその位置決めを容易に行なうことができるので、バルーン2を圧力の測定に適した位置に配置しやすくなる。摺動部材4を中空管部3上の所望の位置に固定するため、摺動部材4の内径と中空管部3の外径を実質的に同じ大きさとなるよう形成してもよく、また中空管部3の表面にナシジ加工を施すなどし、中空管部3と摺動部材4との間に摩擦が生じるよう形成してもよい。
【0027】
摺動部材4の硬さは、口唇圧や切歯圧によって変形しない程度であればよく、その材料としては、たとえばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを用いることができる。摺動部材4の長さは唇や歯によって把持しやすい長さであることが好ましい。また、後述するように、中空管部3に目盛りを設け、それに摺動部材4の位置を合わせることでプローブ2の挿入長を調節する場合、摺動部材4は透明であることも好適である。
【0028】
図3ないし図5に示すように、摺動部材4について、その摺動方向に沿って見たときの摺動部材4の外径形状は偏平状であることが好ましく、たとえば図4に示すような楕円形状や図5に示すような上下面が平行である変形楕円形状であることが好ましい。このような形状とすることで、摺動部材4が略真円筒状である場合と比較して唇や歯で把持しやすくなり、安定した圧力測定を行なうことができる。このとき、摺動部材4の上下辺、すなわち、プローブ1を口腔内に挿入した際に歯、歯茎または唇などで噛まれる部分が平面状であれば、歯や歯茎、唇などによる摺動部材4の把持をより容易かつ安定して行なうことができる。
【0029】
図6に示すように、中空管部3のバルーン2とは反対側の端部側に、中空管部3よりも剛性の高い硬質管部6を設けてもよい。硬質管部6を設けることで、プローブ1を口腔内に挿入する際、プローブ1をより把持しやすくなる。
【0030】
図7に示すように、中空管部3には、バルーン2の先端からの距離を示す目盛り7を設けてもよい。プローブ1を口腔内に挿入したときに、目盛り7を観察することによってプローブ1の口腔内への挿入長を把握することができ、測定に適した位置にバルーン2を配置しやすくなる。また、所望する挿入長の位置に摺動部材4を位置させた上でプローブ1を口腔内に挿入することで、被測定者自身がプローブ1を使用するときでも容易に挿入長を調節することができる。また、被測定者以外の者(被測定者を介護する者など)が被測定者の口腔内にプローブ1を挿入する際にも、予め挿入長を設定した上で挿入することができるため、容易に測定を行なうことができる。
【0031】
中空管部3上の摺動部材4の位置をより設定しやすくするために、摺動部材4を中空管部3上の所定の位置に係止するための係止機構を設けることも望ましい。機構の例としては、中空管部3の表面と摺動部材4の中空管部3に対向する面のいずれか一方に突起を設け、他方に該突起と嵌合する溝を設ける構成が考えられる。たとえば図8に示すように摺動部材4の内面に突起82を設け、中空管部3上に突起82に対応する溝81を設ける構成としてもよい。この構成により、摺動部材4を中空管部3上で摺動させたときに溝81と突起82との位置が合うことで摺動部材4が中空管部3上で係止される。このことで、摺動部材4の位置を合わせやすくなり、プローブ1の挿入長をより設定しやすくなる。溝81は所定の間隔をもって複数設けてもよく、前記目盛り7に対応するように設けてもよい。また、図9に示すように摺動部材4の内面に溝84を設け、中空管部3上には該溝84に対応する突起83を設ける構成としても、上記と同様の効果を得ることができる。また、上記の溝81,84と突起82,83のうち、少なくとも一方を環状に形成することも好ましい。この構成により、溝と突起をより係合させやすくなるので、摺動部材4を中空管部3上に係止させやすくなる。
【0032】
また、中空管部3の表面と摺動部材4の中空管部3と対向する面のそれぞれに中空管部3の周方向に断続的に延びる突起を設け、摺動部材4を回転させて中空管部3に設けた突起と摺動部材4に設けた突起が当接するときに摺動部材4が中空管部3上に係止され、当接しないときは摺動部材4が摺動自在である構成としてもよい。
【0033】
図10に示すように、摺動部材4の外周上には、その径方向に張り出す形状のバンパー9を設けてもよい。バンパー9の形状としては、摺動部材4の長手方向と直交する平面を含んだ形状であることが好ましい。バンパー9を設けることで、プローブ1を口腔内に挿入したときの挿入長をより調整しやすくなり、またプローブ1を誤飲する危険を低減することができる。万が一バンパー9を誤飲した場合でも気道を確保することができるよう、バンパー9に開口部(図示せず)を設けることも好ましい。バンパー9は唇などが押し当てられることがあるため、弾性材料や可撓性材料を用いて構成することが望ましい。バンパー9は摺動部材4と一体で成形してもよく、また独立した別個の部品としてもよい。
【0034】
本発明のプローブにおいては、図11に示すように中空管部3のバルーン2とは反対側の端部には圧力検知器11に接続されたチューブが接続される。そのため、中空管部3のバルーン2とは反対側の端部には、該チューブと接続できる圧力検知側接続部5が設けられている。具体的には、摩擦力によって接続状態を維持する方法や摩擦力と螺旋止めとを併用して接続状態を維持するルアーロック式、摩擦力と螺合によって接続状態を維持する方法などが考えられる。また、中空管部3のバルーン2とは反対側の端部にセプタムを用いた弁を設け、プローブ1と前記チューブとが接続されていない時にプローブ1の内部の気密を保つことができるように構成することで、プローブ1が圧力検知器と接続されていない状態でもバルーン2内に空気を充填し、プローブ1を口腔内に挿入してバルーン2を舌で押しつぶす動作を行なうことで、舌の筋力のトレーニングを行なうこともできる。
【0035】
図11は、本発明のプローブを用いた口腔関連圧力測定装置を示す概略図である。プローブ1は、本体チューブ14を介して圧力検知部11と接続されている。本体チューブ14と圧力検知部11との間には弁13が設けられ、弁13を介して加圧部10が接続されている。圧力検知部11は空気圧を電気信号に変換する圧力変換器およびその電気信号を増幅するアンプを含み、その出力は表示部12に供給される。プローブ1と本体チューブ14はルアー式による嵌合やロック式による嵌合、またはその併用による嵌合などによって着脱自在に嵌合される。
【0036】
舌圧を測定するにあたっては、弁13を開放して加圧部10によってバルーン2内が所定の圧力となるよう加圧し、バルーン2内が所定の圧力になった時点で加圧を止める。そしてバルーン2を舌上に配置した際に歯や唇が当接する部分に摺動部材4を摺動させた状態でプローブ1を口腔内に挿入し、バルーン2を舌上の所定の位置に配置する。摺動部材4を摺動させる操作は被測定者自身が行ってもよく、介助者が行なった上で被測定者の口腔内にプローブ1を挿入してもよい。そしてバルーン2を噛み、舌と硬口蓋によってバルーン2に圧力を加える。このとき、バルーン2内の空気が本体チューブ14を経て圧力検知部11に達する。そして、圧力検知部11で検知された空気圧によって舌圧を測定する。バルーン2内に予め与えられる圧力は特に限定されるものではないが、10kPa〜30kPa程度が好ましい。なお、弁13は、加圧部10の構造によっては必ずしも必要ではなく、加圧部10を本体チューブ14に直結した構造も可能である。このとき、摺動部材4を噛んで口腔内でのプローブ1の位置を固定させることで、プローブ1内の空気の流路を遮ることなくバルーン2を噛む事ができ、舌圧の検査を行なうことができる。よって、より正確な舌圧の検査を行なうことが可能となる。
【0037】
舌の奥部の舌圧を測定する場合は、摺動部材4を摺動させ、バルーン2を奥舌に配置した際に歯や唇が当接する部分に摺動部材4を配置させ、その上でプローブ1を口腔内に挿入してバルーン2を舌の奥部に配置する。このとき、中空管部3が可撓性を有しているため、中空管部3が舌や硬口蓋の形状に応じて変形する。このため、プローブ1を口腔内に深く挿入した場合でも、被験者が違和感を感じることなくバルーン2を舌の奥部に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の口腔関連圧力測定用プローブは、口腔内でのバルーンの位置決めを容易かつ確実に行なうことができ、さらにバルーンの位置の設定をより広い範囲で行なうことができる。そのため、本発明の口腔関連圧力測定用プローブを用いた口腔関連圧力測定装置は、舌や舌下筋肉、唇、頬などの機能の測定やその解析などにおいて有用であり、特に舌に関してはその先端部ならびに基端部など、広い範囲でその機能の測定や解析を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 プローブ
2 バルーン
21 膨張部
22 取付部
3 中空管部
4 摺動部材
5 圧力検知側接続部
6 硬質管部
7 目盛り
81 中空管部側溝
82 摺動部材側突起
83 中空管部側突起
84 摺動部材側溝
9 バンパー
10 加圧部
11 圧力検知部
12 表示部
13 弁
14 本体チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11