特許第5938982号(P5938982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938982
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】非水系二次電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-70669(P2012-70669)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206534(P2013-206534A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年7月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 匡広
(72)【発明者】
【氏名】里見 倫明
(72)【発明者】
【氏名】新海 正博
(72)【発明者】
【氏名】南 孝将
(72)【発明者】
【氏名】江元 和敏
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137945(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも一方の面に、耐熱性多孔質層を有する非水系二次電池用セパレータであって、該耐熱性多孔質層は、ポリアミドイミドからなり、該ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)が30200以上42000以下かつZ平均分子量(Mz)が1002000以上5908700以下であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記耐熱性多孔質層が無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記ポリオレフィン多孔質膜の平均貫通孔径が0.005〜1μmであることを特徴とする請求項1乃至に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用セパレータに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
正極にコバルト酸リチウムに代表されるリチウム含有遷移金属酸化物、負極にリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池を代表とする非水系二次電池は、高エネルギー密度を有するという特徴から携帯電話に代表される携帯電子機器の電源として重要なものであり、これら携帯電子機器の急速な普及に伴いその需要は高まる一方である。
【0003】
また、ハイブリッド自動車など、環境対応を意識した自動車が数多く開発されているが、搭載される電源の一つとして、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が大きく注目されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の多くは、正極、電解液を含むセパレータ、負極の積層体から構成されている。セパレータは、主たる機能として正極と負極の短絡防止を担っているが、要求特性として、リチウムイオンの移動度、強度、耐久性などがある。
【0005】
現在、リチウムイオン二次電池用セパレータに適するフィルムとして各種のポリオレフィン多孔質膜が数多く提案されている。ポリオレフィン多孔質膜中でもポリエチレン多孔質膜は、上述にある要求特性を満たし、かつ高温時の安全機能として、高温による孔の閉塞から電流を遮断する事による熱暴走防止機能、いわゆるシャットダウン機能を有している事もあり、リチウムイオン二次電池のセパレータとして幅広く使用されている。
【0006】
しかしながら、温度上昇により多孔質膜の孔が閉塞されて電流が一旦遮断されても、電池温度が多孔質膜を構成するポリエチレンの融点を超えて、ポリエチレンの耐熱性の限界を超えると、多孔質膜自体が溶融してシャットダウン機能が失われる。その結果、電極間の短絡をきっかけとして電池の熱暴走がおこり、リチウムイオン二次電池を組み込んだ装置の破損などを招くおそれがある。このため、さらなる安全性確保のために、高温時でもシャットダウン機能を維持できるセパレータが求められている。
【0007】
そこで、従来、特許文献1、特許文献2にあるようなポリアミドイミド等の耐熱性多孔質層を用いた非水系二次電池用セパレータが提案されている。
【0008】
しかし、耐熱性を重視し耐熱性多孔質層を積層することで、結果としてポリオレフィン多孔質膜単体の時よりも透気性が落ち、結果として電池特性に悪影響を及ぼすという懸念がある。
また、耐熱性多孔質層を塗布により積層する場合、ポリエチレン多孔質膜との密着性を十分に確保できずに剥がれやムラを生じるという可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4364940号
【特許文献2】特開2005−285739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の有する課題に鑑みてなされたものであり、透気性と密着性を向上させた非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも一方の面に、耐熱性多孔質層を有する非水系二次電池用セパレータであって、該耐熱性多孔質層の数平均分子量(Mn)が30200以上かつZ平均分子量(Mz)が1002000以上である。
【0012】
本発明に係る非水系二次電池用セパレータは、良好な透気性と密着性を兼ね備えることができる。
【0013】
本発明に係る非水系二次電池用セパレータに用いられる耐熱性多孔質層がポリアミドイミドからなることにより、さらに良好な透気性と密着性を兼ね備えることができる。
【0014】
本発明に係る非水系二次電池用セパレータに用いられる耐熱性多孔質層が無機フィラーを含有することにより、さらに良好な透気性と密着性を兼ね備えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透気性と密着性を向上させた非水系二次電池用セパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
本実施形態の非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔膜の少なくとも一方の面に、耐熱性多孔質層を有する。
【0017】
1.ポリオレフィン多孔質膜
本実施形態の複合膜の基材として用いられるポリオレフィン多孔質膜は、特に限定されるものではなく、公知のものならば、いかなる材質の、いかなる製法によるものであってもよい。
【0018】
ポリオレフィン多孔質膜に使用されるポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。その際、これらの単独重合体または共重合体は、単独で使用することができるが、2種以上のものを配合して用いてもよい。
【0019】
本実施形態に用いるポリオレフィン多孔質膜としては、通常、空孔率が30〜95%、膜厚25μmでの透気度が2000秒/100cc以下、好ましくは800秒/100cc以下、平均貫通孔径が0.005〜1μm、引張破断強度が80MPa以上、好ましくは100MPa以上、突刺強度が3000mN以上、好ましくは5500mN以上の機械物性を有する多孔質膜が望ましい。
【0020】
なお、ポリオレフィン多孔質膜の厚さは、適宜選択されるが、通常、0.1〜50μm、好ましくは1〜25μm程度である。厚さが0.1μm未満では、膜の機械的強度不足から実用に供することが難しく、50μmを超えると、実効抵抗が大きくなり過ぎて好ましくない。
【0021】
2.耐熱性多孔質層
2−1.耐熱性樹脂
本実施形態の耐熱性多孔質層を構成する樹脂は、例えば、非水系二次電池用セパレータに利用する場合は、電解液に対して親和性を有すると同時に電解液や電池反応に対しても安定である必要があって、ポリオレフィン多孔質膜の透過抵抗に比べて低い透過抵抗であり、十分な耐熱性をもたせる必要がある。
【0022】
このような要求に応えるものとして、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、及びポリフェニレンスルフィドなどを例示できるが、耐熱性と溶媒への溶解性との両方を満足するものとなるとポリアミドイミドが好適である。
【0023】
一般に、ポリアミドイミド樹脂の合成はトリメリット酸クロリドとジアミンを用いる酸クロリド法やトリメリット酸無水物とジイソシアネートを用いるジイソシアネート法等の通常の方法で合成されるが、製造コストの点からジイソシアネート法が好ましい。
【0024】
ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられる酸成分はトリメリット酸無水物(クロリド)であるが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらの中で耐電解液性の点からは1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、シャットダウン特性からダイマー酸、分子量が1000以上のジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)が好ましい。
【0025】
ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられるジアミン(ジイソシアネート)成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネート等が挙げられるが、これらの中では反応性、コストの点からジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0026】
また、ポリアミドイミド樹脂はN,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜230℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属塩等を触媒として用いることもできる。
【0027】
ポリアミドイミドは、合成時の温度、固形分濃度のような反応条件や保存状態などにより分子量が変化し、これらを調整することにより、希望とする分子量範囲のポリアミドイミドを得ることが可能である。一般に、温度を高く、反応時間を長くするほど平均分子量が高くなり、逆に低温度で短時間で合成をすると平均分子量が下がる。これらを利用することで数平均分子量、Z平均分子量の比率を調整することが可能である。
【0028】
本実施形態の耐熱性多孔質層は、数平均分子量(Mn)=30200以上かつZ平均分子量(Mz)1002000以上を満たす必要がある。また、塗布する都合上、有機溶剤に溶解する必要がある。有機溶剤の種類は、基材のポリオレフィン多孔質膜を劣化させないものであれば特に限定しないが、主にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DAMc)、N−2−メチルピロリドン(NMP)等が溶解性の点で用いられる。また、好ましい分子量としては数平均分子量(Mn)=35400以上、Z平均分子量(Mz)が、2895400以上、さらに好ましくは数平均分子量(Mn)42000以上100000未満、Z平均分子量(Mz)5908700以上30000000未満である。MnとMzがこれらを上回ると、合成が困難なだけでなく、溶剤に不溶な成分が増えることで多孔質膜の形成が事実上困難となる。数平均分子量が低くなると、未反応残留物や低分子量樹脂が基材の細孔内への目詰まりが生じることによるセパレータとしての透気度が低下する可能性があり、さらにZ平均分子量(Mz)が低くなると耐熱性多孔質層の膜の強度が下がり、製膜時及び製膜後の耐熱性多孔質層の剥離が起こりやすくなる。
【0029】
2−2.多孔化方法
ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも一方の面に、上記耐熱性多孔質層を形成させる方法としては、分離膜の製法に一般的に用いられる製法である相分離法の他に、抽出法、延伸法、荷電粒子照射法などの利用が考えられるが、その形成過程でポリオレフィン多孔質膜に損傷を与えたり、その形成によりポリオレフィン多孔質膜の特性を阻害したりすることは好ましくない。
そこで、ポリオレフィンの融点を越えるような温度にさらすことなく、化学劣化や放射線劣化を伴わない、ポリオレフィン多孔質膜の機械的特性や物質透過特性を損なわない方法として、例えば、以下に示すような樹脂の相分離による多孔化方法が利用できる。
【0030】
すなわち、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも一方の面に良溶媒に溶解した樹脂を塗布し、貧溶媒を含む凝固液に接触させることにより相分離した後、乾燥することにより多孔性樹脂で少なくとも表面を被覆された多層多孔質膜を製造する方法である。
その際、樹脂の塗布は、通常、慣用の流延または塗布方法、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーターなどにより行われる。
【0031】
上記塗布液の溶媒は、次に示すように、耐熱性樹脂の性状に応じ適宜選択される。例えば、耐熱性樹脂がポリアミドイミドである場合、良溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DAMc)、N−2−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。水分が存在する場合は、加熱・脱水したモレキュラーシーブで処理することで、これを除去しておくことが好ましい。
【0032】
上記塗膜液の耐熱性樹脂の濃度としては製膜上好適な粘度であればよく特に限定されるものではないが、概ね1〜20重量%の範囲が好適である。
【0033】
本実施形態の非水系二次電池用セパレータにおいて、耐熱性樹脂からなる多孔質層の孔構造を適切なものとするために、塗膜液に相分離剤を混合してもよい。相分離剤の濃度としては5〜50重量%が好適である。
【0034】
相分離剤としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、該有機溶媒に可溶であり該耐熱性樹脂に対して貧溶媒となるものであれば用いることが可能である。
【0035】
貧溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ベンゼン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、水等が挙げられ、好ましいのはアルコール類、水である。
【0036】
凝固液は、良溶媒と貧溶媒の混合液からなる。貧溶媒の割合は30〜80重量%が好適である。また、塗膜液に相分離剤を用いた場合は、塗膜液中での良溶媒と相分離剤の量比と同等になるように凝固液にも相分離剤を加えることがプロセス上好ましい。
【0037】
次に耐熱性樹脂のポリアミドイミドを例にとって、塗布層を相分離することによる多孔化方法の概要を説明する。
【0038】
前記のとおり、塗布後の塗膜は、貧溶媒を含む凝固液を用いる方法によって溶液から耐熱性樹脂を相分離させるが、凝固液として例えば水とN−2−メチルピロリドンの混合液などを用い、これを塗膜と接触させる方法である。このとき、塗膜を凝固液と接触させる前に加湿させることで表面の開孔率を大きくすることが出来る。加湿してから凝固液に浸漬させることで、耐熱性樹脂溶液が十分に相分離してから脱溶媒が進行し、表層構造が緻密になりにくくなる。加湿は相対湿度60〜100%で行うことが好ましい。相分離した塗膜は引き続いて水洗した後、乾燥させて多孔化工程を完結させる。
【0039】
本実施形態において、耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、具体的には、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックスや窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等のセラミックスなどが挙げられる。
【0040】
これらを単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。このような無機フィラーは、不純物の溶出や耐久性の観点から結晶性の高いものが好ましい。コストと汎用性を考えると、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ジルコニアがより好ましい。
【0041】
本実施形態において、無機フィラーの平均粒子径は0.1〜2μmの範囲が好ましい。無機フィラーの平均粒子径が2μmを超えると、耐熱性多孔質層の高温時の耐短絡性が低下するため好ましくない。
さらに、耐熱性多孔質層を適切な厚みで成形する上で支障をきたすといった不具合もある。また、無機フィラーの平均粒子径が0.1μm未満であると、塗膜強度が低下し粉落ちの課題が生じるだけでなく、このように小さいものを用いることはコスト上の観点から実質的に困難である。
【0042】
本実施形態において、耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は30〜95重量%であることが好ましい。無機フィラーの含有量が30重量%未満であると、無機フィラーによる耐熱性向上の効果が十分に得られない場合があるため好ましくない。また、無機フィラーの含有量が95重量%を超えると、耐熱性多孔質層が緻密化されすぎてイオン透過性が低下したり、耐熱性多孔質層が脆くなってハンドリング性が低下する場合があるため好ましくない。
【0043】
なお、耐熱性多孔質層中の無機フィラーは、耐熱性多孔質層が多孔質膜状である場合は耐熱性樹脂に捕捉された状態で存在しており、耐熱性多孔質層が不織布等の場合は構成繊維中に存在するか、樹脂などのバインダーにより不織布表面等に固定されていればよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
[測定方法]
本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
【0045】
(1)透気度評価
100×100mmの試験片を採取し、JISL8117に準拠して透気度を測定した。評価は、耐熱性多孔質層が積層されたポリオレフィン多孔質膜された透気度(秒/100cc)から、耐熱性多孔質層が積層されていないポリオレフィン多孔質膜(膜厚16μm、透気度200秒/100cc)の透気度を引いた値で表した。
【0046】
(2)剥離試験
耐熱性多孔質層に対してJISD0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープを指の腹で耐熱性多孔質層に密着させた後、テープをセパレータから剥離した。判定は100マスの内、耐熱性多孔質層が剥離しなかったマス目の数、すなわち、非剥離割合で表し、耐熱性多孔質層が1マス全てで剥離した場合を0、耐熱性多孔質層が100マス全部で剥離しなかった場合を100として表した。
【0047】
(3)分子量の測定
GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)法を用いて数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)を測定した。尚、Mn及びMzについては、例えば、「改訂高分子合成の化学」(発行所:株式会社化学同人、1981)第9頁〜第12頁に説明されており、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)で測定される。具体的には、ポリアミドイミド樹脂にアセトンを添加し、生じた沈殿をろ過して得たろ過物を乾燥させる。得られた乾燥ろ過物を0.01g量り取り、DMF10gに溶解する。このようにして得られた溶液を、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で測定し、示差屈折率計で検出した。主なGPC測定条件は、東ソー(株)製「HLC−82020」を用いた。また、リファレンス側のカラムとしては東ソー(株)製「TSKgel2500」と「TSKgel3000」を組み合わせて用い、サンプル側のカラムには東ソー(株)製「TSKgelGMHHR−M」を2本組み合わせて用い、流速は1ml/分、試料注入量は100μl、カラム温度は50℃とした。
【0048】
また、検量線作成試料としてはポリスチレンを用い、Mn、Mzは本装置を用いて算出される数値をもって測定結果とした。尚、Mn、及びMzは、単位体積中にMiなる分子量のポリマー分子がni個存在するものとすると、それぞれ以下の式(1)、式(2)で定義される。
Mn=ΣniMi/Σni ・・・(1)
Mz=Σni(Mi)/Σni(Mi) ・・・(2)
すなわち、Mnは、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。これに対して、Mzは、高分子量物の寄与を大いに受けることが式より推定できるため、Mzは高分子量体の存在を、より具体的に示す値となる。
【0049】
(4)膜状態の評価
膜状態の評価は以下の方法を用いた。
各実施例、比較例で使用したポリアミドイミドを用いて粘度が1000mPa・sになるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、バーコーターを用いて200mm角、厚さ16μm、ガーレ透気度値200秒/100ccのポリオレフィン多孔質膜上に2μmの厚みで塗布し、60℃の水/N−メチル―2−ピロリドン=50/50中に約30秒静かに浸漬させた後、20℃の水浴に静かに移動させ、5分後に取り出すことでポリオレフィン多孔質膜上に積層された耐熱性多孔質層である多孔質ポリアミドイミド膜を得る工程内において、膜の剥がれ状況を目視で確認し、面積の半分以上に剥がれが見られた時を×、ほとんど剥がれが確認できなかったものを○とした。
【0050】
[実施例1]
窒素雰囲気下中の2Lセパラブルフラスコ中にトリメリット酸無水物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートをそれぞれ同モル量、フッ化カリウムをトリメリット酸無水物に対し0.01mol%、を加え固形分32重量%になるようにN−メチル−2−ピロリドン加えた後、180℃、7時間撹拌させることで、表1の実施例1に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。
このポリアミドイミドを用いて粘度が1000mPa・s,になるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、バーコーターを用いて16μmのポリオレフィン多孔質膜上に塗布し、60℃の水/N−メチル―2−ピロリドン=50/50中に約30秒静かに浸漬させた後、20℃の水浴に静かに移動させ、5分後に取り出すことでポリオレフィン多孔質上に積層された耐熱性多孔質層である多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0051】
[実施例2]
材料は実施例1と同様で、190℃、9.5時間撹拌させることにより表1の実施例2に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0052】
[実施例3]
材料は実施例1と同様で、200℃で10.5時間撹拌させることにより表1の実施例3に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0053】
[実施例4]
材料は実施例1と同様にして、120℃で4時間撹拌後、180℃、24時間撹拌させることで表1の実施例4に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0054】
[実施例5]
材料は実施例1と同様にして、120℃で4時間撹拌後180℃、31時間撹拌させ、その後室温で約2週間撹拌を行うことで表1の実施例5に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0055】
[比較例1]
材料は実施例1と同様に固形分15重量%、反応時間を160℃で2時間撹拌させることで表1の比較例1に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0056】
[比較例2]
材料は実施例1と同様に固形分15重量%、反応時間を180℃で2時間撹拌させることで表1の比較例2に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0057】
[比較例3]
材料は実施例1と同様に、固形分30w%、反応時間を100℃、1時間撹拌後、185℃で6時間撹拌させることで、表1の比較例3に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。
このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質膜上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0058】
[比較例4]
材料は実施例1と同様に固形分25重量%、反応時間を170℃、7時間撹拌させることで表1の比較例4に記載した分子量のポリアミドイミドを合成した。このポリアミドイミドを用いた以外には実施例1と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド膜を得た。
【0059】
[実施例6]
実施例1で作製したポリアミドイミドに一般に市販されている二酸化ケイ素(粒径0.1μm)をポリアミドイミドに対して20w%の重量になるように加えたのち、粘度が1000mPa・sになるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、その後バーコーターを用いて16μmのポリオレフィン多孔質膜上に2μmの厚みで塗布し、60℃の水/N−メチル―2−ピロリドン=50/50中に約30秒静かに浸漬させた後、20℃の水浴に静かに移動させ、5分後に取り出すことで、ポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0060】
[実施例7]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例2で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0061】
[実施例8]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例3で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0062】
[実施例9]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例4で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0063】
[実施例10]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例5で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0064】
[比較例5]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例1で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0065】
[比較例6]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例2で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0066】
[比較例7]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例3で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0067】
[比較例8]
実施例6で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例4で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例6と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−二酸化ケイ素混合膜を得た。
【0068】
[実施例11]
実施例1で作製したポリアミドイミドに一般に市販されている酸化アルミニウム(粒径0.1μm)をポリアミドイミドに対して20w%の重量になるように加えたのち、粘度が1000mPa・sになるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、その後バーコーターを用いて16μmのポリオレフィン多孔質膜上に2μmの厚みで塗布し、60℃の水/N−メチル―2−ピロリドン=50/50中に約30秒静かに浸漬させた後、20℃の水浴に静かに移動させ、5分後に取り出すことで、ポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0069】
[実施例12]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例2で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0070】
[実施例13]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例3で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0071】
[実施例14]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例4で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド―酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0072】
[実施例15]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに実施例5で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0073】
[比較例9]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例1で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド―酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0074】
[比較例10]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例2で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0075】
[比較例11]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例3で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【0076】
[比較例12]
実施例11で使用したポリアミドイミドの代わりに比較例4で作製したポリアミドイミドを用いた以外には実施例11と同様の方法でポリオレフィン多孔質上に積層された多孔質ポリアミドイミド−酸化アルミニウム混合膜を得た。
【表1】

【表2】

【表3】
【0077】
表1、表2、表3に示すように、実施例1〜15においては目詰まり軽減による透気度の向上と密着性の向上が確認されたのに比べて、比較例1〜12においてはこれらの特性が低いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、非水系二次電池用セパレータの特性向上の技術として有効に活用できる。