【実施例】
【0047】
(実施例1)
本発明例1及び従来例2を用いて、二番取り面の形状に違いによる寿命の比較テストを行った。
【0048】
本発明例1及び従来例2の共通仕様として、工具本体を通してクーラントを供給するためのオイルホールを有し、刃径dが6.0mm、溝5を工具軸の方向で測定したときの長さである溝長Lが198mm(L/d=33倍)、全長が250mm、溝5のねじれ角を20°、心厚d1を2.4mm、シャンク径Dを6.0mm、
図3及び
図6に示すようにランドの切れ刃側マージンの幅w1を0.5mm、ヒール側マージンの幅w2を0.5mmに設けたドリルにおいて、最大二番取り深さhmaxを、刃径dの4.0%すなわち0.24mmとした。
【0049】
本発明例1における共通仕様以外の仕様として、
図3及び
図4に示すように、工具軸に垂直方向で切断したときの断面において、切れ刃側のマージン6の回転後方側の端部及びヒール側のマージン7の回転前方側の端部を接続する円弧形状の二番取り面8を形成することにより、切れ刃側のマージンからヒール側のマージンに向かって二番取り深さhが徐々に深くなり、最大二番取り深さhmaxに達してからヒール側のマージンに向かって二番取り深さhが徐々に浅くなるドリルを制作した。前述した通り、本発明例1における最大二番取り深さhmaxは刃径dの4.0%すなわち0.24mmとした。
【0050】
従来例2における共通仕様以外の仕様として、
図6及び
図7に示すように、工具軸に垂直方向で切断したときの断面において、刃径dよりも小さく、直径の円弧12と同心円状に設けられた円弧形状の二番取り面8を形成することにより、切れ刃側マージン6から段差をつけて急に最大二番取り深さhmaxに達し、ヒール側マージン7に向って急に段差をつけて二番取り深さhが浅くなるように二番取り面8を施したドリルを制作した。前述した通り、従来例2における最大二番取り深さhmaxは刃径dの4.0%すなわち0.24mmとした。
【0051】
試験条件は、被削材には材質がSKD61で、硬さがHRC50であり、幅50mm、奥行き200mm、高さ150mmの板材を用いた。横型マシニングセンターにて、切削条件を回転数が1600min−1(切削速度約30.2m/min)、一回転当たり送り量が0.06mm/回転、穴あけ深さが180mm(刃径dの30倍)の止まり穴の加工を奥行き方向に行った。クーラントは、水溶性切削液をオイルホールを通して供給した。
【0052】
評価方法として、加工穴数が25穴および75穴加工後の切れ刃の逃げ面最大摩耗幅を光学顕微鏡で100倍に拡大して測定し、評価を行った。切削途中で欠けやチッピングが発生した場合は、その時点で加工を中止としそのときの加工穴数を記入した。
【0053】
評価基準として、75穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ75穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.30mm以下であるものを良好とした。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
その結果、本発明例1は75穴まで加工でき、なおかつ75穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.30mm以下であったため良好な結果であった。高硬度材の穴あけを行う場合大きな切削抵抗にともない振動が発生するが、本発明のドリルであれば、切れ刃側のマージンからヒール側のマージンに向かって二番取り深さが徐々に深くなり、最大二番取り深さに達してからヒール側のマージンに向かって二番取り深さが徐々に浅くなる形状により工具の剛性が増し、振動の発生を抑制できるため、加工中にチッピングが発生することなく工具寿命は良好であった。従来例2は15穴加工後に切れ刃にチッピングが発生しており試験を中止した。従来例2における二番取り面は、急に最大二番取り深さhmaxに達するような形状していることにより工具剛性が小さくなるため振動によって切れ刃にチッピングが発生したと考えられる。
【0056】
(実施例2)
次に、最大二番取り深さを1.0%〜7.0%に変化させた本発明例3〜13を製作し、最大二番取り深さの違いによる寿命の比較テストを行った。
【0057】
本発明例3〜13の共通仕様として、工具本体を通してクーラントを供給するためのオイルホールを有し、刃径dが6.0mm、溝5を工具軸の方向で測定したときの長さである溝長Lが198mm(L/d=33倍)、全長が250mm、溝5のねじれ角を20°、心厚d1を2.4mm、シャンク径Dを6.0mm、
図3及び
図6に示すようにランドの切れ刃側マージンの幅w1を0.5mm、ヒール側マージンの幅w2を0.5mmに設け、二番取り面8の形状は切れ刃側のマージン6の回転後方側の端部及びヒール側のマージン7の回転前方側の端部を接続する円弧形状とした。
【0058】
本発明例3において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの1.0%すなわち0.06mmとした。
本発明例4において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの1.5%すなわち0.09mmとした。
本発明例5において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの2.0%すなわち0.12mmとした。
本発明例6において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの2.5%すなわち0.15mmとした。
本発明例7において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの3.0%すなわち0.18mmとした。
本発明例8において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの4.0%すなわち0.24mmとした。
本発明例9において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの5.0%すなわち0.30mmとした。
本発明例10において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの5.5%すなわち0.33mmとした。
本発明例11において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの6.0%すなわち0.36mmとした。
本発明例12において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの6.5%すなわち0.39mmとした。
本発明例13において、最大二番取り深さhmaxは刃径dの7.0%すなわち0.42mmとした。
【0059】
試験条件、評価方法及び評価基準は実施例1と同様とした。評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
本発明例3〜13のものは、75穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ75穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.30mm以下と良好であった。最大二番取り深さhmaxがこの範囲であれば、工具の剛性が確保されるので振動の発生を抑制できると考えられる。
【0062】
(実施例3)
第1二番取り面の幅w3を刃径の10%以上30%以下の範囲に変化させた本発明例14〜18を製作し、第1二番取り面の幅w3の違いによる寿命の比較テストを行った。
【0063】
本発明例14〜18の共通仕様として、工具本体を通してクーラントを供給するためのオイルホールを有し、刃径dが10.0mm、溝5を工具軸の方向で測定したときの長さである溝長Lが330mm(L/d=33倍)、全長が390mm、溝5のねじれ角を20°、心厚d1を4.0mm、シャンク径Dを10.0mm、
図3に示すようにランドの切れ刃側マージンの幅w1を0.8mm、ヒール側マージンの幅w2を0.8mmに設けた。
【0064】
また、その他の本発明例14〜18の共通仕様として、二番取り面8の形状は、切れ刃側のマージンの回転後方側の端部からドリルの回転後方側に向かって形成された直線状の第1二番取り面16と、ヒール側のマージンの回転前方側の端部からドリルの回転前方側に向かって形成された直線状の第2二番取り面17と、前記第1二番取り面16及び前記第2二番取り面17を接続する曲面状の第3二番取り面18とから構成された形状とした。さらに、本発明例14〜18において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの20%すなわち2.00mmとし、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの95%すなわち9.50mmとした。
【0065】
それぞれの本発明例の仕様として、本発明例14において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの10%すなわち1.00mmとした。
本発明例15において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの15%すなわち1.50mmとした。
本発明例16において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの20%すなわち2.00mmとした。
本発明例17において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの25%すなわち2.50mmとした。
本発明例18において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの30%すなわち3.00mmとした。
【0066】
試験条件は、被削材には材質がSKD61で、硬さがHRC50であり、幅50mm、奥行き320mm、高さ150mmの板材を用いた。横型マシニングセンターにて、切削条件を回転数が1,000min−1(切削速度約31.4m/min)、一回転当たり送り量が0.10mm/回転、穴あけ深さが300mm(刃径dの30倍)の止まり穴の加工を奥行き方向に行った。クーラントは、水溶性切削液をオイルホールを通して供給した。
【0067】
評価方法として、加工穴数が15穴および50穴加工後の切れ刃の逃げ面最大摩耗幅を光学顕微鏡で100倍に拡大して測定し、評価を行った。切削途中で欠けやチッピングが発生した場合は、その時点で加工を中止としそのときの加工穴数を記入した。
【0068】
評価基準として、50穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.50mm以下であるものを良好とした。評価結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示す通り、本発明例14〜18は50穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.50mm以下であり、良好な結果であった。特に、第1二番取り面の幅w3が、軸直角断面において第1二番取り面及び第2二番取り面に対し平行となる方向で測定したときに、刃径の15%以上25%以下の範囲となる本発明例15〜17は、50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.40mm以下であり、さらに良好な結果を示した。
【0071】
(実施例4)
第2二番取り面の幅w4を刃径の10%以上30%以下の範囲に変化させた本発明例19〜23を製作し、第2二番取り面の幅w4の違いによる寿命の比較テストを行った。
【0072】
本発明例19〜23の共通仕様として、工具本体を通してクーラントを供給するためのオイルホールを有し、刃径dが10.0mm、溝5を工具軸の方向で測定したときの長さである溝長Lが330mm(L/d=33倍)、全長が390mm、溝5のねじれ角を20°、心厚d1を4.0mm、シャンク径Dを10.0mm、
図3に示すようにランドの切れ刃側マージンの幅w1を0.8mm、ヒール側マージンの幅w2を0.8mmに設けた。
【0073】
また、その他の本発明例19〜23の共通仕様として、二番取り面8の形状は、切れ刃側のマージンの回転後方側の端部からドリルの回転後方側に向かって形成された直線状の第1二番取り面16と、ヒール側のマージンの回転前方側の端部からドリルの回転前方側に向かって形成された直線状の第2二番取り面17と、前記第1二番取り面16及び前記第2二番取り面17を接続する曲面状の第3二番取り面18とから構成された形状とした。さらに、本発明例19〜23において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの20%すなわち2.00mmとし、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの95%すなわち9.50mmとした。
【0074】
それぞれの本発明例の仕様として、本発明例19において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの10%すなわち1.00mmとした。
本発明例20において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの15%すなわち1.50mmとした。
本発明例21において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの20%すなわち2.00mmとした。
本発明例22において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの25%すなわち2.50mmとした。
本発明例23において、第2二番取り面の幅w4は刃径dの30%すなわち3.00mmとした。
【0075】
試験条件、評価方法及び評価基準は実施例3と同様とした。評価結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
表4に示す通り、本発明例19〜23は50穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.50mm以下であり、良好な結果であった。特に、第2二番取り面の幅w4が、軸直角断面において第1二番取り面及び第2二番取り面に対し平行となる方向で測定したときに、刃径の15%以上25%以下の範囲となる本発明例20〜22は、50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.40mm以下であり、さらに良好な結果を示した。
【0078】
(実施例5)
第3二番取り面の曲率半径Rを刃径の65%以上135%以下の範囲に変化させた本発明例24〜31を製作し、第3二番取り面の曲率半径Rの違いによる寿命の比較テストを行った。
【0079】
本発明例24〜31の共通仕様として、工具本体を通してクーラントを供給するためのオイルホールを有し、刃径dが10.0mm、溝5を工具軸の方向で測定したときの長さである溝長Lが330mm(L/d=33倍)、全長が390mm、溝5のねじれ角を20°、心厚d1を4.0mm、シャンク径Dを10.0mm、
図3に示すようにランドの切れ刃側マージンの幅w1を0.8mm、ヒール側マージンの幅w2を0.8mmに設けた。
【0080】
また、その他の本発明例24〜31の共通仕様として、二番取り面8の形状は、切れ刃側のマージンの回転後方側の端部からドリルの回転後方側に向かって形成された直線状の第1二番取り面16と、ヒール側のマージンの回転前方側の端部からドリルの回転前方側に向かって形成された直線状の第2二番取り面17と、前記第1二番取り面16及び前記第2二番取り面17を接続する曲面状の第3二番取り面18とから構成された形状とした。さらに、本発明例24〜31において、第1二番取り面の幅w3は刃径dの20%すなわち2.00mmとし、第2二番取り面の幅w4は刃径dの20%すなわち2.00mmとした。
【0081】
それぞれの本発明例の仕様として、本発明例24において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの65%すなわち6.50mmとした。
本発明例25において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの75%すなわち7.50mmとした。
本発明例26において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの85%すなわち8.50mmとした。
本発明例27において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの95%すなわち9.50mmとした。
本発明例28において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの105%すなわち10.50mmとした。
本発明例29において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの115%すなわち11.50mmとした。
本発明例30において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの125%すなわち12.50mmとした。
本発明例31において、第3二番取り面の曲率半径Rは刃径dの135%すなわち13.50mmとした。
【0082】
試験条件、評価方法及び評価基準は実施例3と同様とした。評価結果を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
表5に示す通り、本発明例24〜31は50穴加工後において欠けやチッピングが生じず、なおかつ50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.50mm以下であり、良好な結果であった。特に、軸直角断面における第3二番取り面の曲率半径Rを、刃径の75%以上125%以下の範囲とした本発明例25〜30は、50穴加工後における逃げ面最大摩耗幅が0.40mm以下であり、さらに良好な結果を示した。