特許第5939006号(P5939006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939006
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20160609BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H02K3/18 J
   H02K3/50 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-92187(P2012-92187)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-223297(P2013-223297A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−237068(JP,A)
【文献】 特開2007−330035(JP,A)
【文献】 特開2005−012883(JP,A)
【文献】 特開平06−284615(JP,A)
【文献】 特開平06−233483(JP,A)
【文献】 特開2009−055668(JP,A)
【文献】 特開2010−200400(JP,A)
【文献】 特開2005−312182(JP,A)
【文献】 特開2005−312278(JP,A)
【文献】 特開平04−008140(JP,A)
【文献】 特開2005−045987(JP,A)
【文献】 特開2013−223296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に並ぶ複数のコイルを有する筒状のステータと、当該ステータに対して同心をなして相対回転するロータと、を備え、
前記環状に並ぶ複数のコイルを、連続して並ぶ複数のコイルを1つのグループとする複数のグルーブに分け、前記複数のグループのそれぞれに別系統で供給される三相交流電力を各グループの前記複数のコイルに分配するバスバー群を、前記グループごとに、かつ前記ステータの円周方向に沿って設け、
前記グルーブごとに設けられた前記バスバー群のそれぞれは、前記三相交流電力の各相に対応するバスバーを有し、
前記グループを構成する複数のコイルの一部は、当該コイルの両端を互いに交差させて前記バスバーに接続された調節用コイルとして構成され、
さらに前記グルーブごとに設けられた前記バスバー群のそれぞれでは、前記三相交流電力の同相に対応するバスバーの形状を互いに同一としたうえで、前記調節用コイルの両端を、当該両端が接続される2つのバスバーの並ぶ方向に交差させることにより、各コイルの各バスバー群に対する接続位置を調節してなる回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
各グループのコイルは、グループごとに設けられるバスバー群を介してスターデルタ結線されている回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記バスバー群が有する各バスバーは、前記ステータの中心軸を中心とする径の異なる複数の同心円の上に並設されており、
前記調節用コイルは、当該調節用コイルの両端を互いに180度以上交差させて前記各バスバーに接続されてなる回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記各バスバー群における前記三相交流電力の同相に対応するバスバーは、それぞれ前記複数の同心円のうちの同列に設けられてなる回転電機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の回転電機において、
前記三相交流電力の各相に対応するバスバーのうちいずれか2相に対応するバスバーは、前記複数の同心円のうちの同列に設けられてなる回転電機。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の回転電機において、
前記調節用コイルの両端は、前記複数の同心円のうちの異なる列に設けられたバスバーのそれぞれに接続されてなる回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータなどの回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、複数のバスバーを介して各コイルに三相交流電力を供給するモータが知られている。各相(U相,V相,W相)のバスバーは、それぞれ帯状の金属部材がらせん状に湾曲されてなる。各相のバスバーは、モータの半径方向において並べられるとともに、モータの円周方向において異なる位置に設けられている。各バスバーは、モータの円周方向において互いの一部分が重なることにより、モータの半径方向において最大で3列をなしている。中性点用のバスバーを含めると、各バスバーは、モータの半径方向において最大で4列となる。
【0003】
モータは、たとえば電動パワーステアリング装置の駆動源として使用される。当該装置は、モータの回転力を利用して操舵補助力を車両の操舵系に付与する。モータが失陥した場合には、操舵補助力を発生させることが困難になる。このため、特許文献2に示されるようなモータが従来提案されている。このモータは2系統のコイルを有し、これらコイルに対して系統ごとに給電される。この構成によれば、一方系統のコイルが失陥した場合であれ、他方系統のコイルへの給電を通じてモータを回転させることができる。操舵系に付与される操舵補助力は通常時の半分程度になるものの、操舵補助動作を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−239772号公報
【特許文献2】特開2004−010024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、モータに2系統のコイルを設ける場合には、つぎのような問題がある。すなわち、バスバーも2系統分設ける必要があるので、バスバーの個数が増大する。また、各バスバーは互いに干渉しないように設ける必要があるので、モータの半径方向におけるバスバーの列数も増大する。バスバーの列数が増大すると、モータの外径、ひいてはモータの体格の大型化が懸念される。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数系統のコイルを設ける場合であれ、各系統のコイルを結線するバスバーの列数を低減することができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、環状に並ぶ複数のコイルを有する筒状のステータと、当該ステータに対して同心をなして相対回転するロータと、を備え、前記環状に並ぶ複数のコイルを、連続して並ぶ複数のコイルを1つのグループとする複数のグルーブに分け、前記複数のグループのそれぞれに別系統で供給される三相交流電力を各グループの前記複数のコイルに分配するバスバー群を、前記グループごとに、かつ前記ステータの円周方向に沿って設け、前記グルーブごとに設けられた前記バスバー群のそれぞれは、前記三相交流電力の各相に対応するバスバーを有し、前記グループを構成する複数のコイルの一部は、当該コイルの両端を互いに交差させて前記バスバーに接続された調節用コイルとして構成され、さらに前記グルーブごとに設けられた前記バスバー群のそれぞれでは、前記三相交流電力の同相に対応するバスバーの形状を互いに同一としたうえで、前記調節用コイルの両端を、当該両端が接続される2つのバスバーの並ぶ方向に交差させることにより、各コイルの各バスバー群に対する接続位置を調節してなる回転電機が提供される。
【0008】
この構成によれば、ステータの円周方向において連続して並ぶ複数のコイルを1グループとする複数グループに属するコイルが同一の円周上において異なる部分に偏在する。このため、各グループのバスバー群をステータの円周方向において互いに分離して設けることができるので、互いに隣接するグループのバスバー同士が重なることはない。したがって、複数系統分のコイルを設けたにもかかわらず、各バスバーの長さ、および配置などの調節を通じて、たとえば異なる2つの相のバスバーを同一円周上に設けることも可能となる。すなわち、各相のバスバーをすべて異なる円周上に設ける場合に比べて、バスバーの列数を低減させることができる。また、各グループにおける同相のバスバーの形状を互いに同一とすることも可能である。
【0009】
しかし、バスバーの列数は少なくなったとしても、あるいは各グループにおける同相のバスバーの形状を互いに同一とすることができたとしても、各コイルのバスバーに対する接続位置が合わないことが考えられる。この点、各バスバー群に接続されるコイルのうち複数のコイルの両端を互いに交差させることにより、各コイルの各バスバーに対する接続位置を調節することができる。これにより、バスバーの列数を低減させた状態を維持しつつ、各コイルと各バスバーとを好適に接続することができる。
【0010】
<2>上記回転電機において、各グループのコイルは、グループごとに設けられるバスバー群を介してスターデルタ結線されることが好ましい。
スターデルタ結線を採用する場合には、三相各相のバスバーに加えて中性点用のバスバーが必要になる。このため、バスバーの列数を少なくすることの意義は大きい。
上記回転電機において、前記バスバー群が有する各バスバーは、前記ステータの中心軸を中心とする径の異なる複数の同心円の上に並設されており、前記調節用コイルは、当該調節用コイルの両端を互いに180度以上交差させて前記各バスバーに接続されてなることが好ましい。
上記回転電機において、前記各バスバー群における前記三相交流電力の同相に対応するバスバーは、それぞれ前記複数の同心円のうちの同列に設けられてなることが好ましい。
上記回転電機において、前記三相交流電力の各相に対応するバスバーのうちいずれか2相に対応するバスバーは、前記複数の同心円のうちの同列に設けられてなることが好ましい。
上記回転電機において、前記調節用コイルの両端は、前記複数の同心円のうちの異なる列に設けられたバスバーのそれぞれに接続されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数系統のコイルを設ける場合であれ、各系統のコイルを結線するバスバーの列数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態におけるモータの縦断面図。
図2図1の1−1線断面図。
図3】バスバーとコイルとの接続関係を示す結線図。
図4】(a)は、Y−Δ結線されたコイルの回路図、(b)は同じくコイルの結線図。
図5】同じくバスバーとコイルとの他の接続関係を示す結線図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
以下、本発明をインナーロータ型のブラシレスモータに具体化した一実施の形態を図1図5に基づいて説明する。
【0014】
<全体構成>
図1に示すように、モータ11は、有底円筒状のケース12、およびケース12の開口を塞ぐ蓋13を備えている。ケース12の内周面には円筒状のステータ14が固定されている。ステータ14は、円筒状のコア15と、コア15の両端にそれぞれ設けられた2つのインシュレータ16,17と、これらインシュレータ16,17を介してコア15に巻回された複数のコイル18とを備えている。
【0015】
ステータ14には、円柱状のロータ19が挿通されている。ロータ19は、段付き円柱状の回転軸20、および回転軸20の外周面に固定された円筒状のロータマグネット21を有している。回転軸20は、ケース12の内底部および蓋13の内面にそれぞれ設けられた2つの軸受22,23を介して回転可能に支持されている。
【0016】
ステータ14の蓋13側の端部には、樹脂成型品である円板状のホルダ24が設けられている。ホルダ24には、複数のバスバー25が保持されている。各コイル18の両端は、各バスバー25に適宜接続される。各コイル18には、各バスバー25を介して三相交流電力が供給される。
【0017】
<ロータマグネットおよびコア>
図2に示すように、ロータマグネット21は、14個の永久磁石21aが回転軸20の外周面に沿って隙間なく並べられてなる。各永久磁石21aは、回転軸20の半径方向に沿って着磁されるとともに、互いに隣り合う2つの永久磁石21aの着磁の向きが互いに反対になるように設けられる。
【0018】
コア15は、12個の分割コア31がケース12の内周面に沿って隙間なく並べられてなる。ここでは、図2に丸数字で示されるように、各分割コア31は、1番〜12番の番号を付すことにより区別する。12個の分割コア31は、コア15の半径方向へ延びる直線PLを境として、系統A,Bの2つのグループに分けられている。系統Aのクループは同一円周上に設けられた12個の分割コア31のうちの半周分の6個の分割コア31(1番〜6番)を、系統Bのグループは残る半周分の6個の分割コア31(7番〜12番)を含む。各分割コア31には、コイル18が巻回されている。
【0019】
<バスバー>
モータ11は、図3に示すように、8個のバスバー25を有している。各バスバー25は、所定の形状に打ち抜いた金属板を適宜屈曲させることにより形成される。各バスバー25は、3つの接続端子Tを有している。接続端子Tはコイル18の端部(リード部分)が接続される部分である。
【0020】
また、各バスバー25も直線PLを境として系統A,Bの2つのグループに分けられている。両グループはそれぞれ4個のバスバー25、具体的にはU相バスバー25u、V相バスバー25v、W相バスバー25w、および中性点バスバー25nを含んでいる。系統Aの各バスバー25は、1番〜6番の分割コア31に対応するコア15の半周以内の範囲に、系統Bの各バスバー25は、7番〜12番の分割コア31に対応するコア15の残りの半周以内の範囲に設けられている。このため、系統Aの各バスバー25と、系統Bの各バスバー25とが、コア15の円周方向において互いに重なることはない。
【0021】
系統Aの各バスバー25は、つぎのように設けられている。すなわち、U相バスバー25uは1番〜6番の分割コア31に、V相バスバー25vは4番〜6番の分割コア31に、W相バスバー25wは2番〜4番の分割コア31に、それぞれ対応するように延設されている。中性点バスバー25nは、1番〜5番の分割コア31に対応するよう延設されている。
【0022】
系統Bの各バスバー25は、つぎのように設けられている。すなわち、U相バスバー25uは7番〜12番の分割コア31に、V相バスバー25vは10番〜12番の分割コア31に、W相バスバー25wは8番〜10番の分割コア31に、それぞれ対応するように延設されている。中性点バスバー25nは、7番〜11番の分割コア31に対応するよう延設されている。
【0023】
系統A,Bそれぞれにおいて、各バスバー25は、コア15の中心軸を中心とする3つの同心円上に設けられる。具体的には、コア15の中心軸に近い同心円から順に第1列、第2列および第3列としたとき、中性点バスバー25nは第1列に設けられている。また、V相バスバー25vおよびW相バスバー25wはそれぞれ第2列に、U相バスバー25uは第3列に設けられている。
【0024】
なお、系統AのV相バスバー25vとW相バスバー25wとは同一形状である。系統BのV相バスバー25vとW相バスバー25wとについても同一形状である。また、系統A,Bにおいて、互いに同相のバスバーは同一形状である。具体的には、系統AのU相バスバー25uと系統BのU相バスバー25u、系統AのV相バスバー25vと系統BのV相バスバー25v、系統AのW相バスバー25wと系統BのW相バスバー25wとは、互いに同一の形状である。
【0025】
また、両系統のグループにおける三相各相のバスバー25は、図示しないECU(電子制御装置)に結線される。このECUは、系統A,Bに対応する2つの駆動回路を含み、これら駆動回路を通じて各バスバー25、ひいては各コイル18に対する通電制御を系統別に行う。
【0026】
すなわち、分割コア31の系統A,Bの2つのグループに対応して、各バスバー25および駆動回路も別系統とされている。このため、一方の系統が失陥した場合、たとえば一方の系統のコイル18が断線あるいは短絡したり、駆動回路が故障したりした場合であれ、他方の系統の動作によりロータ19を回転させることができる。モータ11により発生するトルクは減少するものの、モータ11の駆動を継続することが可能になる。
【0027】
<コイルの結線方法>
つぎに、各コイルの結線方法について説明する。各コイル18は、これらが設けられる分割コア31の番号(1番〜12番)で区別する。図4(a),(b)に示すように、系統Aの1番〜6番のコイル18は系統Aの各バスバー25を介して、スターデルタ結線(Y−Δ結線)されている。同様に、系統Bの7番〜12番のコイル18も系統Bの各バスバー25を介してY−Δ結線されている。
【0028】
具体的には、図4(a)に示すように、系統A,Bのコイル18のうち奇数番目のコイル18はスター結線(Y結線)されている。また、偶数番目のコイル18はデルタ結線(Δ結線)されている。さらにY結線された奇数番目のコイル群とΔ結線された偶数番目のコイル群とは並列に接続されている。
【0029】
図4(b)に示すように、1番,7番コイル18はU相コイル(U−,U+)として、5番,11番コイル18はV相コイル(V−,V+)として、3番,9番コイル18はW相コイル(W+,W−)としてそれぞれ機能する。また、6番,12番コイル18はX相コイル(X−,X+)として、4番,10番コイル18はY相巻線(Y+,Y−)として、2番,8番コイル18はZ相コイル(Z−,Z+)としてそれぞれ機能する。なお、図4(b)において、各コイル18に付した位相記号(U,V,W)の符号「+」,「−」は、各コイル18に供給される電流の位相が互いに180°(電気角)だけずれることを示す。
【0030】
<系統Aのコイル結線>
図3に示すように、A系統の1番,3番,4番コイル18の両端(リード部分)は、それぞれコア15の軸線方向(図中の上方)へ向けてまっすぐ引き出されている。残りの2番,5番,6番コイル18の両端は、互いに交差されている。
【0031】
まずは両端が交差されていないコイル18の結線状態を説明する。1番コイル18の第1端はU相バスバー25uに、同じく第2端は中性点バスバー25nに接続されている。3番コイル18の第1端は中性点バスバー25nに、同じく第2端はW相バスバー25wに接続されている。4番コイル18の第1端はW相バスバー25wに、同じく第2端はV相バスバー25vに接続されている。
【0032】
つぎに、両端が交差されているコイル18の結線状態を説明する。2番コイル18の両端は互いに交差されることにより、コア15の円周方向において、1番コイル18に近い位置にある第1端は1番コイル18から遠くなる位置へ、同じく1番コイル18に対して遠い位置にある第2端は1番コイル18に近接する位置へ至る。すなわち、2番コイル18の第1端と第2端との位置が入れ替えられている。その結果、コア15の軸線方向において、2番コイル18の第1端はW相バスバー25wの接続端子Tに、第2端はU相バスバー25uの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。この状態を前提として、2番コイル18の第1端はW相バスバー25wに、同じく第2端はU相バスバー25uにそれぞれ接続されている。
【0033】
5番,6番コイル18についても同様である。すなわち、コア15の軸線方向において、5番コイル18の第1端はV相バスバー25vの接続端子Tに、第2端は中性点バスバー25nの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。5番コイル18の第1端はV相バスバー25vに、同じく第2端は中性点バスバー25nにそれぞれ接続されている。また、コア15の軸線方向において、6番コイル18の第1端はU相バスバー25uの接続端子Tに、第2端はV相バスバー25vの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。6番コイル18の第1端はU相バスバー25uに、同じく第2端はV相バスバー25vにそれぞれ接続されている。
【0034】
<系統Bのコイル結線>
図3に示すように、B系統の8番,11番,12番コイル18の両端(リード部分)は、それぞれコア15の軸線方向(図中の上方)へ向けてまっすぐ引き出されている。残りの7番,番,9番,10番コイル18の両端は、互いに交差されている。
【0035】
まずは両端が交差されていないコイル18の結線状態を説明する。8番コイル18の第1端はU相バスバー25uに、同じく第2端はW相バスバー25wに接続されている。11番コイル18の第1端は中性点バスバー25nに、同じく第2端はV相バスバー25vに接続されている。12番コイル18の第1端はV相バスバー25vに、同じく第2端はU相バスバー25uに接続されている。
【0036】
つぎに、両端が交差されているコイル18の結線状態を説明する。コア15の軸線方向において、7番コイル18の第1端は中性点バスバー25nの接続端子Tに、同じく第2端はU相バスバー25uの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。7番コイル18の第1端は中性点バスバー25nに、同じく第2端はU相バスバー25uにそれぞれ接続されている。
【0037】
また、コア15の軸線方向において、9番コイル18の第1端はW相バスバー25wの接続端子Tに、第2端は中性点バスバー25nの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。9番コイル18の第1端はW相バスバー25wに、同じく第2端は中性点バスバー25nにそれぞれ接続されている。
【0038】
また、コア15の軸線方向において、10番コイル18の第1端はV相バスバー25vの接続端子Tに、第2端はW相バスバー25wの接続端子Tにそれぞれ対応して位置する。10番コイル18の第1端はV相バスバー25vに、同じく第2端はW相バスバー25wにそれぞれ接続されている。
【0039】
<系統A,Bの結線による作用>
系統Aの各バスバー25と、系統Bの各バスバー25とが、コア15の円周方向において互いに重なることはない。このため、先の図3に示されるように、各バスバー25の長さを調節することにより、たとえばV相バスバー25vおよびW相バスバー25wを同一円周上、すなわち同一の列に設けることができる。しかし、各バスバー25の列数を3列にすることはできたとしても、各バスバー25の接続端子Tと各コイル18の両端とのコア15の円周方向における位置が必ずしも一致しない。図3の例では、各コイル18の両端をコア15の軸線方向に沿って引き出すとしたとき、A系統の2番、5番,6番コイル18、およびB系統の7番,9番,10番コイル18がそれぞれの接続対象となるバスバー25の接続端子Tに対応しない。
【0040】
ここで、コア15の円周方向において、たとえば2番コイル18の第1端と、その接続対象であるW相バスバー25wの接続端子Tとの位置ずれ量、ならびに2番コイル18の第2端と、その接続対象であるU相バスバー25uの接続端子Tとの位置ずれ量は、ちょうど2番コイル18の両端をコア15の軸先方向に沿って延ばしたときのコア15の円周方向における第1端と第2端との間の距離に等しい。
【0041】
したがって、前述したように、2番コイル18の第1端および第2端の位置をコア15の円周方向において入れ替える、すなわち2番コイル18の両端を交差させることにより、2番コイル18の第1端は接続対象であるW相バスバー25wの接続端子Tに、同じく第2端は接続対象であるU相バスバー25uの接続端子Tに対応する。なお、残りの5番,6番コイル18、および7番,9番,10番コイル18についても同様である。
【0042】
このように、図3の例では、A系統の2番、5番,6番コイル18、およびB系統の7番,9番,10番コイル18の両端を交差させることにより、接続対象であるバスバー25との接続位置が調節されている。
【0043】
ちなみに、各バスバー25を系統A,Bのグループごとに単に分離して設けるだけでは、必ずしもバスバー25の列数を3列にすることができない。
たとえば、図5に示すように、各コイル18の両端をそれぞれコア15の軸線方向へ向けてまっすぐ引き出し、これら引き出した端部を接続対象のバスバー25に接続することも考えられる。しかしこの場合、各コイル18の両端に対応する位置にバスバー25を存在させる必要がある。このため、各相のバスバー25の長さを一定程度だけ確保する必要がある。その結果、コア15の半周以内の範囲において、異なる相のバスバー25を同一の円周上に設けることが困難になる。各相のバスバー25を互いに干渉させずに設けるためには、各相のバスバー25をコア15の半径方向において互いに異なる位置に設けることにより、バスバー25の列数を4列とせざるをえない。
【0044】
本例のように各バスバー25の長さおよび配置などを適宜設定することに加えて、両端を交差させるコイル18と両端を交差させないコイル18とを適宜混在させることにより、各バスバー25の列数を3列にすることが可能となる。
【0045】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)円筒状に並ぶ12個の分割コア31を、連続する6個を1組とする2組(系統A,B)に分けた。また、バスバー25も系統ごとに設け、両系統の各バスバーはそれぞれステータ14の半周以内の範囲に設けた。このため、系統A,Bの各バスバー25が互いに重なることがない。したがって、2系統分のコイル18を設けたにもかかわらず、各バスバー25の長さ、および配置などの調節を通じて、バスバー25の列数を従来の1系統のモータの4列よりも少ない3列にすることができる。たとえばV相,W相バスバー25v,25wを同一円周上に、かつコア15の半周以内に設けることにより、各バスバー25の列数は3列となる。
【0046】
さらに本例では、系統A,Bのそれぞれのグループにおいて、両端を交差させるコイル18と、交差させないコイル18とを適宜混在させることにより、各バスバー25との接続位置を調節している。このため、各バスバー25の長さを短縮した場合であれ、各バスバー25の長さ、あるいはコア15に対する位置に合わせて、各バスバー25に対する接続位置を一定の自由度でもって調節することが可能である。したがって、バスバー25の列数を3列に維持した状態で、各コイル18と各バスバー25とを好適に接続することが可能になる。
【0047】
(2)また、交差させるコイル18の数が多いほど、各バスバー25に対する接続位置の調節の自由度が増す。このため、系統A,Bの各バスバー25のうち、互いに同相のバスバー25の形状を同一とすることができる。また、同一系統のV相バスバー25vおよびW相バスバー25wの形状を同一とすることもできる。したがって、部品の種類を少なくすることができる。
【0048】
(3)バスバー25の列数が少なくなる分だけ、モータ11の外径あるいは体格を小さくすることが可能である。このため、電動パワーステアリング装置などのように、搭載スペースが限られる装置の駆動源として本例のモータ11は好適である。また、電動ポンプ、あるいは自動車のギヤ比可変ステアリング(VGRS)の駆動源として本例のモータ11を採用してもよい。VGRSは、車速および舵角に応じてステアリングのギヤ比を無段階に変化させる装置である。
【0049】
(4)円筒状のステータ14を系統A,Bに対応する半筒状の2つの部分に分けた。また、バスバー25も系統ごとに設けた。すなわち、モータ11に対する給電系統を、系統A,Bの2系統に分割した。このため、一方の系統が失陥した場合であれ、他方の系統によりモータ11の動作を継続させることができる。このため、モータ11の信頼性を確保することができる。
【0050】
<他の実施の形態>
なお、前記各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・本例では、系統A,Bのそれぞれにおいて、各コイル18の結線方法としてY−Δ結線を採用したが、Δ結線あるいはY結線としてもよい。この場合、各バスバー25の長さおよび形状、または各コイル18の末端処理形状(交差させるかどうか)などは適宜調節する。ちなみに、Δ結線の場合は、中性点用のバスバー25が不要である。このため、バスバー25の列数を2列とすることも可能である。
【0051】
・本例では、複数の永久磁石21aからなるロータマグネット21を採用したが、単一の円筒状磁石を採用してもよい。
・本例では、複数の分割コア31からなるコア15を採用したが、単一のコアを採用してもよい。この場合であれ、各コイル18を系統A,Bの2つのグループに分けることができる。
【0052】
・本例では、いわゆる14極12コイルのブラシレスモータを一例として挙げたが、コイル18の個数およびロータマグネット21の磁極数は適宜変更してもよい。この場合、コイル18の個数は12の自然数倍に、またロータマグネット21の磁極数は2、10または14の自然数倍に設定することが好ましい。
【0053】
・本例では、モータ11に対する給電系統を系統A,Bの2系統としたが、3系統、4系統あるいはそれ以上としてもよい。この場合も、各系統はステータ14の円周方向において等角度範囲となるように設定することが好ましい。
【0054】
・本例では、インナーロータ型のブラシレスモータを一例に挙げたが、アウターロータ型のブラシレスモータとしてもよい。同型のモータでは、円筒状のロータの内部にステータが設けられる。
【0055】
・本例では、本発明をブラシレスモータに具体化したが、発電機(回転電機)に本発明を適用してもよい。
<他の技術的思想>
つぎに、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0056】
(イ)請求項1または請求項2に記載の回転電機において、前記ステータは、コイルを有する複数の分割コアが環状に並べられていること。
(ロ)電動パワーステアリング装置などの電動装置において、請求項1、請求項2または(イ)の回転電機を駆動源として有すること。
【符号の説明】
【0057】
11…モータ(回転電機)、14…ステータ、18…コイル、19…ロータ、25…バスバー。
図1
図2
図3
図4
図5