特許第5939082号(P5939082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5939082-ヒートポンプ式空気調和装置の運転方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939082
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式空気調和装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   F24F11/02 101D
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-177160(P2012-177160)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35147(P2014-35147A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 岳人
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−276240(JP,A)
【文献】 特開平06−241529(JP,A)
【文献】 特開2008−249267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機(3)と、熱交換器(1)と、この熱交換器(1)の下流側に配設された加湿器(2)と、を備えており、前記加湿器(2)の凍結を防止するために機内吸込空気の温度を検出する第1温度センサ(5)が前記熱交換器(1)の上流側に配設されるとともに、機外吹出空気の温度を検出する第2温度センサ(7)が前記熱交換器(1)の下流側に配設されてなり、通常運転とデフロスト運転とを行うヒートポンプ式空気調和装置(A)の運転方法であって、
通常運転時には、前記第1温度センサ(5)の検出温度が所定の設定値より小さい場合に装置(A)の運転を停止させ、
デフロスト運転終了時には、前記第1温度センサ(5)及び第2温度センサ(7)の少なくとも一方の検出温度が前記所定の設定値を超えている場合に装置(A)を通常運転させることを特徴とする、ヒートポンプ式空気調和装置(A)の運転方法。
【請求項2】
前記第1温度センサ(5)が、前記熱交換器(1)の上流側に配設された送風機(3)の吸込側に配設されており、前記第2温度センサ(7)が、前記加湿器(2)の下流側に配設されている、請求項1に記載のヒートポンプ式空気調和装置(A)の運転方法。
【請求項3】
前記ヒートポンプ式空気調和装置(A)が全外気方式である、請求項1又は請求項2に記載のヒートポンプ式空気調和装置(A)の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプ式空気調和装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に冬季における室内の空気が乾燥しすぎるのを防止するために、熱交換器で加熱された空気に湿分を与える加湿器を備えた空気調和装置がある。かかる空気調和装置において、厳寒期における低温の外気によって加湿用の水が凍結して加湿器などが破損するのを防止するために種々の対策が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
特許文献1には、給気と排気との間で熱交換する全熱交換型の熱交換器を備えた空気調和装置が開示されており、この熱交換器内で結露した水滴の凍結、及び当該熱交換器の室内側に配設されている加湿エレメントの凍結を防止するために、機内に吸引する外気の温度を検出する温度センサの検出値に応じて排気風量を給気風量よりも多くする風量制御や、加湿エレメントから水を抜く給排水制御処理を行うことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、外調機を備えた空気調和装置が開示されており、建物内に配設された加湿装置で噴霧される水又は蒸気の結露や凍結を防止するために、建物内で発生した熱で昇温された循環空気を当該加湿装置に流すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−304206号公報
【特許文献2】特開2002−156148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ヒートポンプ式の空気調和装置では、冬季運転時に室外機の熱交換器に付着した霜によって運転効率が低下するのを防止するために、通常運転とともに定期的にデフロスト運転が行われるが、加湿器の凍結防止のために外気温度に応じて装置の運転を制御する方式において、デフロスト運転後に装置を再起動して通常運転させることができないことがあった。
【0007】
図2は、全外気方式のヒートポンプ式空気調和装置の断面説明図であり、図2において、熱交換器11の下流側に加湿器12が配設されており、送風機13の吸込側にダクト14を介して機内に導入された外気の温度を検出する吸込温度センサ15が配設されている。なお、図2において、符号16及び17は、それぞれエアフィルター及び吹出温度センサである。通常運転時には、前記吸込温度センサ15の検出値が所定の設定値(例えば、−5℃)よりも低くなったときに、加湿器12内の水の凍結を防止するために装置の運転が停止される。
【0008】
図2に示される空気調和装置において、送風機13を停止させてデフロスト運転を行った場合、デフロスト運転中に陽圧の居室から空気が逆流することがある(白抜きの矢印参照)。この空気が熱交換器11を通過することで冷却され、冷却されて前記所定の温度よりも低くなった空気を前記吸込温度センサ15が検出すると、デフロスト運転終了後に装置を運転させようとしても、起動直後に凍結防止制御に入ってしまい、装置を通常運転させることができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、陽圧の居室からの空気の逆流に起因してデフロスト運転後の装置の通常運転が誤って禁止されるのを防止することができるヒートポンプ式空気調和装置の運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のヒートポンプ式空気調和装置の運転方法(以下、単に「運転方法」ともいう)は、送風機と、熱交換器と、この熱交換器の下流側に配設された加湿器と、を備えており、前記加湿器の凍結を防止するために機内吸込空気の温度を検出する第1温度センサが前記熱交換器の上流側に配設されるとともに、機外吹出空気の温度を検出する第2温度センサが前記熱交換器の下流側に配設されてなり、通常運転とデフロスト運転とを行うヒートポンプ式空気調和装置の運転方法であって、
通常運転時には、前記第1温度センサの検出温度が所定の設定値より小さい場合に装置の運転を停止させ、
デフロスト運転終了時には、前記第1温度センサ及び第2温度センサの少なくとも一方の検出温度が前記所定の設定値を超えている場合に装置を通常運転させることを特徴としている。
【0011】
本発明の運転方法では、機内吸込空気の温度を検出する第1温度センサ、及び機外吹出空気の温度を検出する第2温度センサ両方の検出値に基づいて、加湿器の凍結防止のために装置の運転を停止させるか否かの判断を行っており、両温度センサの少なくとも一方の検出温度が所定の設定値を超えている場合には装置を通常運転させることにしている。したがって、従来の運転方法では、第1温度センサの検出値だけに基づいて凍結防止の制御を行っていたので、デフロスト運転終了後に陽圧の居室からの空気の逆流に起因して当該第1温度センサが前記所定の設定値より低くなり、装置が通常運転できないことがあったが、本発明では、第2温度センサの検出値(熱交換器を通過する前の居室の空気温であるので、通常は、前記所定の設定値よりも高い)も判断材料としており、この検出値が前記所定の設定値を超えているときは、加湿器の凍結の恐れはないとして装置を通常運転させる。これにより、陽圧の居室からの空気の逆流に起因してデフロスト運転後の装置の通常運転が誤って禁止されるのを防止することができる。
【0012】
(2)上記(1)の運転方法において、前記第1温度センサを、前記熱交換器の上流側に配設された送風機の吸込側に配設し、前記第2温度センサを、前記加湿器の下流側に配設することができる。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)の運転方法において、前記ヒートポンプ式空気調和装置を全外気方式とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の運転方法によれば、陽圧の居室からの空気の逆流に起因してデフロスト運転終了後の装置の通常運転が誤って禁止されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の運転方法により運転される空気調和装置の一例の断面説明図である。
図2】居室からの空気の逆流を示す空気調和装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の運転方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の運転方法により運転される空気調和装置Aの一例の断面説明図である。この空気調和装置Aは、居室からのリターンエアを循環利用せずに外気だけを加熱、冷却して居室に供給する全外気方式の空調システムにおける室内機である。空気調和装置AのケーシングC内には、通常運転時における空気の流れの上流側(外気の吸込口側を上流側とする)から、送風機3、熱交換器1及び加湿器2が、この順に配設されている。加湿器2としては、水噴霧式や蒸発式など適宜の方式のものを採用することができる。
【0017】
熱交換器1の上流側、より詳細には送風機3の上流側のケーシングCの壁部に、機内吸込空気の温度を検出する吸込温度センサ(第1温度センサ)5が配設されている。また、熱交換器1の下流側、より詳細には加湿器2の下流側のケーシングCの壁部に、機外吹出空気の温度を検出する吹出温度センサ(第2温度センサ)7が配設されている。なお、簡単のために図示していないが、ケーシングC内には、熱交換器1から滴下するドレンを溜めるためのドレンパンや、当該ドレンパンに溜まったドレンを機外に排出するドレンポンプなどが配設されている。
【0018】
前述した構成の空気調和装置Aの冬季の通常運転時では、吸込側ダクト4内に配設されたエアフィルター6で除塵された外気は、熱交換器1で加熱され、必要に応じて加湿器2で加湿され、吹出側ダクト8を経由して居室に供給される。この冬季の通常運転時において、前記吸込温度センサ5が所定の設定値(例えば、−5℃)より低い温度を検出すると、加湿器2の凍結、すなわち加湿器2内の水分の凍結を防止するために空気調和装置Aの運転が停止される。
【0019】
空気調和装置Aのデフロスト運転時には、冷媒サイクルが切り替えられ、熱交換器1が蒸発器として機能するため、居室へ冷風が流れ込むのを防ぐべく送風機3の運転が停止される。この場合に、居室が陽圧であると、図2の白抜き矢印で示されるように、当該居室からの空気がケーシングC内に逆流することがある。そして、逆流した空気が熱交換器1で冷却され、この冷却された空気が吸込温度センサ5付近にまで達すると、当該吸込温度センサ5は、この冷風の温度を検出する。
【0020】
従来の運転方法では、吸込温度センサ5の検出値だけに基づいて加湿器2の凍結防止の制御を行っていたので、前記冷風の温度が凍結防止のために設定されている所定の設定値(例えば、−5℃)よりも低いと、起動直後に凍結防止制御に入ってしまい、装置を通常運転させることができない。
【0021】
これに対し、本実施の形態では、吸込温度センサ5の検出値だけでなく、吹出温度センサ7の検出値(熱交換器1を通過する前の居室の空気温であるので、通常は、前記所定の設定値よりも高い)も判断材料としており、少なくとも一方の検出値が前記所定の設定値を超えているときは、加湿器2の凍結の恐れはないとして装置を起動して通常運転させる。これにより、陽圧の居室からの空気の逆流に起因してデフロスト後の装置の起動が誤って禁止されるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 熱交換器
2 加湿器
3 送風機
5 吸込温度センサ(第1温度センサ)
7 吹出温度センサ(第2温度センサ)
A 空気調和装置
C ケーシング
図1
図2