(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記円筒状部材の端面の内径寸法を、この円筒状部材のうち、前記本体部分の端面を形成する部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくし、前記金型に軽合金の溶湯を送り込んで、前記本体部分を成形した後に、少なくとも前記円筒状部材の端部の内径側部分に切削加工を施して、この円筒状部材の端部寄り部分の内径寸法を、前記本体部分のうち、この円筒状部材との結合部である端部から軸方向に外れた部分の内径寸法以上とする、請求項1に記載のステアリングコラムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する為のステアリング装置として、例えば
図8に示す様な構造が、広く知られている。このステアリング装置は、車体1に支持された円筒状のステアリングコラム2の内径側にステアリングシャフト3を、回転可能に支持している。そして、このステアリングコラム2の後端開口よりも後方に突出した、前記ステアリングシャフト3の後端部分に、ステアリングホイール4を固定している。このステアリングホイール4を回転させると、この回転が、前記ステアリングシャフト3、自在継手5a、中間シャフト6、自在継手5bを介して、ステアリングギヤユニット7の入力軸8に伝達される。この入力軸8が回転すると、このステアリングギヤユニット7の両側に配置された1対のタイロッド9、9が押し引きされて左右1対の操舵輪に、前記ステアリングホイール4の操作量に応じた舵角を付与する。尚、
図8に示した構造の場合、このステアリングホイール4の前後位置の調節を可能にすべく、前記ステアリングコラム2及び前記ステアリングシャフト3として、伸縮式のものを使用している。
【0003】
前記ステアリングコラム2及び前記ステアリングシャフト3は、衝突事故の際に、衝撃エネルギを吸収しつつ、ステアリングホイール4を前方に変位させる構造としている。即ち、衝突事故の際には、自動車が他の自動車等にぶつかる一次衝突に続いて、運転者の身体がステアリングホイール4に衝突する二次衝突が発生する。この二次衝突の際に、運転者の身体に加わる衝撃を緩和して、運転者の保護を図る為に、前記ステアリングホイール4を支持したステアリングシャフト3を車体1に対して、二次衝突に伴う前方への衝撃荷重により前方に変位可能に支持する必要がある。この為に、前記ステアリングコラム2は、二次衝突の衝撃荷重により、アウタコラム10がこのステアリングコラム2の全長を、前記ステアリングシャフト3は、アウタチューブ11がこのステアリングシャフト3の全長を、それぞれ縮めながら前方に変位する事で、前記ステアリングホイール4に衝突した運転者の身体に大きな衝撃が加わる事を防止する。
【0004】
一方、近年、自動車の盗難が増えており、各種盗難防止装置を自動車に備える事が行われている。その一種として、正規の鍵を使用しない限りステアリングホイールの操作を不能にするステアリングロック装置が、広く実施されている。
図9は、特許文献1に記載のステアリングロック装置の1例を示している。ステアリングロック装置12は、ステアリングコラム2aの一部にロックユニット13を設けると共に、ステアリングシャフト3aの一部で、このロックユニット13と軸方向に関する位相が一致する位置に、周方向の少なくとも1箇所に係合凹部14を形成した、キーロックカラー15を外嵌固定している。そして、作動時(キーロック時)に前記ロックユニット13を構成するロックピン16の先端部を、前記ステアリングコラム2aの軸方向中間部に形成されたロック用透孔17を通じて、このステアリングコラム2aの内径側に向けて変位させ、前記係合凹部14と係合させる事で、前記ステアリングシャフト3aの回転を実質的に不能にする。
【0005】
上述の様なステアリングロック装置12を、ステアリング装置に組み込む場合には、前記ステアリングコラム2aの外径側に前記ロックユニット13を、このステアリングコラム2aの内径側に前記キーロックカラー15を、それぞれ設ける。従って、このキーロックカラー15を前記ステアリングコラム2aの内径側に回転可能に配置すると共に、前記ロックピン16のストロークを過大にする事なく、このロックピン16と前記キーロックカラー15とを確実に係脱させる為に、前記ステアリング装置のうち、少なくともステアリングロック装置12を組み込んだ部分のステアリングコラム2aの外径は小さく、内径は大きくする(当該部分のステアリングコラム2aの厚さを薄くする)必要がある。
【0006】
図10は、特許文献2に記載された、ステアリングコラムを構成するアウタコラム10aを示している。このアウタコラム10aは、軸方向端部(
図10の左端部)に円筒状のインナコラムの端部を、軸方向に相対変位可能な状態で内嵌する。前記アウタコラム10aは、アルミニウム系合金或いはマグネシウム系合金等の軽合金製で、鋳造により一体に形成されており、軸方向中間部に、ステアリングロック装置12(
図9参照)を組み込む為の、ロック用透孔17aを設けている。この様なステアリングコラムのアウタコラム10aの厚さを薄くした場合、ステアリングロック装置12を作動した状態で必要とされる、このアウタコラム10aの強度を十分に確保できない可能性がある。即ち、前記ロック用透孔17aを通じて前記アウタコラム10aの内径側に突出させたロックピン16をキーロックカラー15の係合凹部14(
図9参照)に係合させた状態で、ステアリングホイール4を大きな力で回転させようとした場合に、前記ロック用透孔17aの周縁部に、過度に大きな力が加わり、この周縁部が変形する可能性がある。これに対して、前記アウタコラム10aを鉄系材料により形成する事も考えられるが、ステアリングコラム全体の重量が増大する等の問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、中空円管状のステアリングコラムの一部の厚さを薄くしつつ、このステアリングコラムの強度確保を図れる、
ステアリングコラムの製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の
対象となるステアリングコラムは、全体が
中空円筒状であり、このステアリングコラムを構成するコラム用部材は、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金等の軽合金製の本体部分の端部に、その端面の内径寸法を、軸方向中間部の内径寸法よりも小さくした、炭素鋼やその他の鉄系合金等の鉄系材料製の円筒状部材の端部を内嵌固定する事により軸方向に結合している。
【0010】
上述の様な本発明の
対象となるステアリングコラムを実施する場合に
好ましくは、前記円筒状部材の端面の内径寸法を、この円筒状部材のうち、前記本体部分の端面の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくする。そして、これら本体部分と円筒状部材とを軸方向に結合した後に、少なくともこの円筒状部材の端部の内径側部分に切削加工を施して、この円筒状部材の端部寄り部分の内径寸法を、前記本体部分
のうち、この円筒状部材との結合部である端部から軸方向に外れた部分の内径寸法以上とする。
【0011】
又、
好ましくは、前記円筒状部材の端部外周面の1乃至複数箇所に設けた凹部と、前記本体部分の端部内周面の1乃至複数箇所に設けた凸部とを係合し、この本体部分と前記円筒状部材とを軸方向に結合する。
或いは、前記円筒状部材の端部外周面の1乃至複数箇所に設けた凸部と、前記本体部分の端部内周面の1乃至複数箇所に設けた凹部とを係合し、この本体部分と前記円筒状部材とを軸方向に結合する。
【0012】
又、
本発明のステアリングコラムの製造方法によれば、
前記円筒状部材の端面の内径寸法を軸方向中間部の内径寸法よりも小さくする為の絞り加工と、この円筒状部材の端部外周面に1乃至複数箇所の周方向溝及び複数箇所の軸方向溝を設ける為の転造加工とを同時に行う。その後、円筒状部材の端面の内径寸法を、この円筒状部材の軸方向中間部の内径寸法よりも小さくした状態で、この円筒状部材の端部を、金型の端面に設けた挿入孔に挿通
し、この円筒状部材の端部をこの金型内に突出させる。そして、この円筒状部材の端部に中子の端部を挿通し、この中子の軸方向中間部に設けた段差部をこの円筒状部材の端面に突き当てた状態で、前記金型に軽合金の溶湯を送り込み、前記本体部分を成形する
と共に、この時、この溶湯の一部を前記各周方向溝及び前記各軸方向溝に入り込ませる事で、前記本体部分の端部内周面に凸部を形成する事により、この本体部分と前記円筒状部材とを軸方向に結合する。
【0013】
上述の様な
本発明のステアリングコラムの製造方法を実施する場合に好ましくは、
請求項2に記載した発明の様に、前記円筒状部材の端面の内径寸法を、この円筒状部材のうち、前記本体部分の端面を形成する部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくする。そして、前記金型に軽合金の溶湯を送り込んで、前記本体部分を成形した後に、少なくとも前記円筒状部材の端部の内径側部分に切削加工を施して、この円筒状部材の端部寄り部分の内径寸法を
、前記本体部分
のうち、この円筒状部材との結合部である端部から軸方向に外れた部分の内径寸法以上とする。
【発明の効果】
【0014】
上述の様に構成する本発明の
対象となるステアリングコラムによれば、ステアリングコラムの一部の厚さを薄くしつつ、このステアリングコラムの強度を確保する事ができる。即ち、このステアリングコラムを構成するコラム用部材の片半部は、鉄系材料製の円筒状部材により構成されている為、この片半部の厚さを薄くしても、この片半部の強度を確保する事ができる。一方、前記コラム用部材の他半部に就いては、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金等の軽合金製の本体部分により構成されている為、前記ステアリングコラム全体の重量が過度に増大する事はない。
【0015】
又、
前記本体部分と前記円筒状部材とを軸方向に結合した後に、少なくとも円筒状部材の端部の内径側部分に切削加工を施せば、前記ステアリングコラムを構成するコラム用部材のうち、前記円筒状部材の端部寄り部分の内径寸法を
、前記本体部分
のうち、この円筒状部材との結合部である端部から軸方向に外れた部分の内径寸法以下とする事ができる。又、厚さの薄い円筒状部材の内径側部分のうち、この本体部分の端面の内径側に位置する部分を切削する事がない為、これら本体部分と円筒状部材との結合強度及びこの円筒状部材の捩り強度や曲げ強度が低下するのを防止できる。
【0016】
又、
この円筒状部材の端部外周面と前記本体部分の端部内周面とのうち、一方の周面の1乃至複数箇所に設けた凹部と、他方の周面の1乃至複箇所に設けた凸部とを係合すれば、前記本体部分と前記円筒状部材との軸方向及び周方向に関する結合強度を向上させる事ができる。
【0017】
本発明のステアリングコラムの製造方法によれば、
上述した様なステアリングコラムを、工業的に能率良く製造する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、
請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例を含めて、本発明の
ステアリングコラムの製造方法の特徴は、ステアリングコラムを構成するコラム用部材である、アウタコラム10bの後端寄り部分(
図1の右側)の厚さを薄くしても、強度の確保を図れる
、ステアリングコラムの製造方法を実現する点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の
図10に示した構造を含め、従来から知られているステアリングコラムと同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0020】
本例の場合、前記アウタコラム10bは、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金等の軽合金製である本体部分18と、炭素鋼やその他の鉄系合金等の鉄系材料製の円筒状部材19とを軸方向に結合して構成する。即ち、この円筒状部材19の前端部(車体への組み付け状態で進行方向前側の端部、
図1〜2の左端部)に絞り加工を施す事により、この円筒状部材19の前端面の内径寸法を、この円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面(車体への組み付け状態で進行方向後側の端面、
図1の
右端面)が形成される部分{後述する鋳造の際に、金型21の内側端面(
図1の左側面)が位置する部分}の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくする。ここで、本体部分18に対する円筒状部材19の抜け防止回転防止のために、円筒状部材19の前端部の外周に凹部または凸部を形成する。具体的には、この円筒状部材19の前端部の外周面に1乃至複数箇所の周方向溝20aと複数箇所の軸方向溝20bを設ける。周方向溝20aと軸方向溝20bは転造加工により同時成形されるため安価である。円筒状部材19の前端部には絞り加工が施され、径方向の剛性が高いため、1乃至複数箇所の周方向溝20a、複数箇所の軸方向溝20bを加工する際に被加工部位が撓むことが無いため容易かつ正確に加工出来る。また、前端部の絞り成形は、周方向溝20aと軸方向溝20bの転造加工と同時に行って
いる為、前端部絞り部と
、周方向溝20a
及び軸方向溝20bとの同芯精度が向上するのと同時に
、工程集約により一層コストが低減出来る。そして、前記円筒状部材19の前端寄り部分を、
図1の(A)に示す様に、金型21の端面22に開口した挿入孔23に挿通し、この前端寄り部分を、この金型21内に突出させる。
【0021】
そして、中子24の先端部25を前記円筒状部材19の前端部に挿通し、この中子24の先端部25と基端部26との間に設けた段差面27を、前記円筒状部材19の前端面に突き当てる。本例の場合、この円筒状部材19の前端面を、前記中子24の段差面27を突き当てる相手面とする為、
図2の(A)に示した様に、前記円筒状部材19の前端部に絞り加工を施す以前の状態で、この円筒状部材19の前端面外周縁に、前端に向かう程外径寸法が小さくなる方向に傾斜したテーパ面部28を設けている。この様なテーパ面部28を設けた円筒状部材19の前端部に絞り加工を施す事で、
図2の(B)に示した様に、この円筒状部材19の前端面を前記段差面27に平行な面とすると共に、前端部内周縁を径方向内方に突出させる(この前端面の内径寸法を、前記円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくする)。
【0022】
そして、前記円筒状部材19の前端面に前記中子24の段差面27を突き当てた状態で、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金等の軽合金の溶湯を、前記金型21内に送り込む事により、前記本体部分18を成形する。この時、前記円筒状部材19の前端部の外周面に形成された1乃至複数箇所の周方向溝20aと複数箇所の軸方向溝20bに前記溶湯の一部を入り込ませる事で、この本体部分18の後端部内周面に凸部29を形成する。そして、前記金型21から取り出した後に、前記円筒状部材19のうちで、前記本体部分18の内周面よりも径方向内方に突出した前端部内周縁に切削加工を施して、前記円筒状部材19の少なくとも前端寄り部分{前記アウタコラム10bの内径側にインナコラム30を回転自在に挿通する為の、転がり軸受31(
図9参照)の外輪を内嵌固定する為に形成した小径部32を除いた部分}の内径を、前記本体部分18
のうち、前記円筒状部材19との結合部である後端部から軸方向に外れた部分の内径以上とする。この際、必要に応じて、この本体部分18の内周面後端寄り部分にも、切削加工を施す。この様な切削加工により、インナコラム30を挿通するこの本体部分18の内周面と前記円筒状部材19の前端縁との間に、前方に向いた段差面が存在しない様にして、二次衝突時に前記アウタコラム10bの前方への変位を円滑に行える様にし、衝突事故の際に於ける運転者の保護充実を図る事ができる。尚、前記筒状部材19の前端部内周面で、前記周方向溝20aの溝底と軸方向溝20bの溝底を頂点とする内接円の直径は、前記本体部分18
のうち、前記円筒状部材19との結合部である後端部から軸方向に外れた部分の内径以上として、
当該部分の内周面よりも前記各凸部29の先端が径方向内方に突出しない様にする。
【0023】
上述の様に構成する本例のステアリングコラムの製造方法の場合には、ステアリングコラムを構成するアウタコラム10bのうち、例えばステアリングロック装置12(
図9参照)を組み込む、後端寄り部分の厚さを薄くしつつ、強度を確保できるアウタコラム10bを、工業的に能率良く製造できる。即ち、前記アウタコラム10bの後端寄り部分は、強度を確保し易い、鉄系材料製の円筒状部材19により構成されている。この為、ロックユニット13やキーロックカラー15を取り付ける為に、当該部分の厚さを薄くしたり、ロックピン16を挿通する為に、ロック用透孔17を設けても、前記後端寄り部分を含め、前記アウタコラム10bの強度を確保できる。
【0024】
又、前記円筒状部材19の前端部外周面においては、周方向溝20a及び軸方向溝20bが形成されていることにより前記円筒状部材19と前記本体部分18とが係合する面積が増大されていて、周方向溝20a及び軸方向溝20bと、前記本体部分18の後端部内周面に形成された凸部29とが係合されている為、この本体部分18と前記円筒状部材19との軸方向の結合強度を、より十分に確保できる。又、周方向に関しても、前記ロックピン16をキーロックカラー15の係合凹部14に係合させた状態で、ステアリングホイール4を大きな力で回転させようとした場合にも、前記周方向溝20a及び軸方向溝20bと、
前記凸部29との係合により、前記本体部分18と前記円筒状部材19との結合部の捩り剛性を高くできる。
【0025】
又、前記円筒状部材19の前端部に絞り加工を施し、この円筒状部材19の前端面の内径寸法を、この円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくした状態で、この本体部分18を鋳造により形成している。この為、この本体部分18と前記円筒状部材19との結合部の強度確保を有効に図れる。この円筒状部材19の前端面の内径寸法を、この円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくした状態で前記本体部分18を形成する事による利点を、
図1に加えて
図3を用いて説明する。この
図3は、円筒状部材19aの前端面の内径寸法を、この円筒状部材19aのうち、本体部分18aの後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくする事なく、これら本体部分18aと円筒状部材19aとを軸方向に結合し、更にこの円筒状部材19aの内径寸法をこの本体部分18aの内径寸法以上にして、アウタコラム10cを製造する方法を示している。前述した
図1で説明した様に、本体部分18、18aと鋳造する際に、溶湯が漏れ出すのを防止する為には、中子24の段差面27を突き当てる為の相手面が必要となる。本発明の場合、この相手面である円筒状部材19の前端面の内径寸法を、この円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくしている。
【0026】
これに対して、
図3に示した参考例の場合には、前記円筒状部材19aの前端面の内径を、この円筒状部材19aのうち、前記本体部分18aの後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法と同じとしている。この様な条件の下で、
図3の(A)に示す様に、前記円筒状部材19aの前端寄り部分の外周面に、前記本体部分18aの後端寄り部分の内周面を係合させつつ、この本体部分18aを鋳造により成形する。次いで、前記円筒状部材19aの内径をこの本体部分18aの内径以上とする為、
図3の(B)に示す様に、これら本体部分18aと円筒状部材19aとの結合部に於いて、この円筒状部材19aの前端部の内径側部分に切削加工を施す。この時、この円筒状部材19aの前端面の内径寸法を、この円筒状部材19aのうち、前記本体部分18aの後端面が形成される部分の内径側に位置する部分の内径寸法よりも小さくしていない為、前記円筒状部材19aのうち、前記結合部(前記本体部分18aの後端面が形成される部分)よりも後端側に位置する部分の内径側部分も削られてしまう。この円筒状部材19aの厚さは薄いので、この内径側部分が削られてしまうと、前記結合部及びこの結合部よりも後端側に位置する部分に於いて、前記円筒状部材19aの厚さが過度に薄くなってしまい、前記結合部の結合強度及びこの結合部よりも後端側に位置する部分の捩り強度や曲げ強度を確保する事ができない。
【0027】
一方、本例の構造の場合、前記本体部分18と前記円筒状部材19との結合部の内径側部分に切削加工を施す場合に、この切削加工を施す部分は、この円筒状部材19の前端部内周縁と、前記本体部分18の内径側部分のうちで、この前端部内周縁に隣設する部分のみで済む。前記円筒状部材19のうち、前記結合部よりも後端側に位置する部分は勿論、この結合部のうちで前端部を除く部分を削る必要はない。この為、
図1の(C)に示した様に、前記円筒状部材19の前端部内周縁を切削した状態でも、前記本体部分18とこの円筒状部材19との結合部の強度及びこの円筒状部材19の捩り強度や曲げ強度を十分に確保できる。
【0028】
又、前記円筒状部材19の前端部内周縁に切削加工を施し、この円筒状部材19の前端寄り部分の内径寸法を、前記本体部分18
のうち、前記円筒状部材19との結合部である後端部から軸方向に外れた部分の内径寸法以上としている。この様な前記アウタコラム10bの前端部(
図1の左端部)には、円筒状のインナコラム30を軸方向に変位可能な状態で内嵌して、伸縮式のステアリングコラムを構成する。前記アウタコラム10bの内径は、前側(
図1の左側)から、前記本体部分18、前記円筒状部材19の順に大きくなっているので、ステアリングホイールの前後位置調節や二次衝突に伴い、前記アウタコラム10bが前記インナコラム30に対して軸方向前方に相対変位する際に、このインナコラム30の後端縁が、前記アウタコラム10bの内周面から突出した部分と干渉して、ステアリングホイールの前方への変位が阻害される可能性を抑える事ができる。尚、前記小径部32の軸方向位置は、前記二次衝突が進行した状態でも、前記インナコラム30の後端縁がこの小径部32の内周面と干渉しない様にしている。
【0029】
又、前記円筒状部材19の前端面の内径寸法を、この円筒状部材19のうち、前記本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分よりも小さくしている為、前記金型21に軽合金の溶湯を送り込んで前記本体部分18を成形する際に、この溶湯が前記円筒状部材19の内周面側に入り込む事がなく、この円筒状部材19の内周面が、軽合金の付着により粗面となる事を防止できる。
【0030】
[実施の形態の第2〜4例]
図4も、
請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第2〜4例を示している。これら各例の場合には、円筒状部材19b〜19dの形状が、上述した実施の形態の第1例の場合と異なっている。先ず、(a)に示した第2例の場合には、円筒状部材19bの前端部に絞り加工を施す以前の状態で、上述した実施の形態の第1例の様にテーパ面部28(
図2参照)を設けていない。この為、前記円筒状部材19bの前端部に絞り加工を施すと、この円筒状部材19bの前端縁が、径方向中間部が前方に向けて尖った形状となるが、中子24の段差面27(
図1参照)の径方向寸法が十分に大きい場合は特に問題は生じない。或いは、前記円筒状部材19bの前端部に絞り加工を施した後に、前端縁に切削加工を施す事により、この円筒状部材19bの前端面を前記段差面27に平行な面としても良い。
【0031】
又、(b)に示した第3例の場合には、円筒状部材19cの前端部に絞り加工を施す事により、この前端部に、この円筒状部材19cのうち、本体部分18の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分よりも内径寸法の小さい、小径部33を設けている。又、(c)に示した第3例の場合には、円筒状部材19dの前端部に
絞り成形を施す事により、この円筒状部材19dの前端面に内向きフランジ状の円輪部34を設けている。円筒状は、部材19b〜19dの前端部の形状が異なる点以外の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。ここで、(a)における円筒状部材19bの前端部の絞り成形、(b)における小径部33の絞り成形、(c)における円輪部34の絞り成形は、周方向溝20a及び軸方向溝20bの転造加工と同時に行って
いるので、その際には同芯精度が向上するのと同時に工程集約によりコストが低減できる。
【0032】
[
参考例の1例]
図5は、本発明に関連する参考例の1例を示している。
本参考例の場合には、円筒状部材19eの前端縁を全周に亙り断面円弧状に曲げ成形する事で、この円筒状部材19eの前端部に、この円筒状部材19eのうち、本体部分18(
図1参照)の後端面が形成される部分の内径側に位置する部分よりも内径寸法が小さく、外径寸法が大きい突片部35を設けている。又、この突片部35の外径寄り部分の1乃至複数箇所に切り欠き部41を設けている。前記本体部分18を鋳造する際には、この突片部35の前端面に中子24の段差面27(
図1参照)を突き当てる。この突片部35の内径側半部は、前記本体部分18の鋳造後に削り取る。この本体部分18を鋳造した後の状態では、前記突片部35の外径側半部とこの本体部分18との係合により軸方向の結合強度を確保できる。又、この外径側半部のうちで前記切り欠き部41と、この切り欠き部41内に進入した前記本体部分18との係合により、周方向の結合強度を確保できる。
【0033】
上述の様に構成する円筒状部材19eの内径側に、インナシャフトを回転自在に挿通する為に、この円筒状部材19eの後端部に転がり軸受31(
図9参照)を設ける。この転がり軸受31を構成する外輪を設置する為に、前述した実施の形態の第1例の場合には、円筒状部材19(
図1参照)の後端部に絞り加工を施す事で小径部32とし、この小径部32の内径側部分に切削加工を施す事で段差部36を設け、この段差部36に前記転がり軸受31を構成する外輪を内嵌固定する。一方、
本参考例の場合には、前記円筒状部材19eの後端部の周方向複数箇所にプレス加工を施す事により、この円筒状部材19eの内周面に突出した係止部37、37を設け、これら各係止部37、37に前記転がり軸受31を構成する外輪を係止する(この外輪が前端側に進入しない様にする)。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。