【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
環状カテコール含有モノマーの合成
(合成例1)1,2,3−トリヒドロキシベンゼンアセトナイドの合成
攪拌装置、温度計、ジムロート冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、ピロガロール300g、2,2−ジメトキシプロパン250g、トルエン1Lを仕込み、100℃まで加熱した。100℃で9時間攪拌後、2,2−ジメトキシプロパン250gを加え、6時間加熱還流させた。室温まで冷却後、トルエンをエバポレーターにて減圧留去し、得られた固体を再結晶(シクロヘキサン)により精製し、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンアセトナイドの無色透明結晶を308g(収率78%)得た。構造は
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より確認した(C
H3(ケタール)(6H) 1.85ppm、C
H(ベンゼン環)(1H) 6.18ppm、C
H(ベンゼン環)(1H) 6.22ppm、C
H(ベンゼン環)(1H) 6.54ppm、O
H(1H)5.52ppm)。
【0020】
(合成例2)1,3,4−トリヒドロキシベンゼンアセトナイドの合成
攪拌装置、温度計、ジムロート冷却管を取り付けた四つ口フラスコに、1,3,4−トリヒドロキシベンゼン300g、2,2−ジメトキシプロパン250g、トルエン1Lを仕込み、100℃まで加熱した。100℃で9時間攪拌後、2,2−ジメトキシプロパン250gを加え、6時間加熱還流させた。室温まで冷却後、トルエンをエバポレーターにて減圧留去し、得られた固体を再結晶(シクロヘキサン)により精製し、1,3,4−トリヒドロキシベンゼンアセトナイドの無色透明結晶を316g(収率80%)得た。構造は
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より確認した(C
H3(ケタール)(6H)1.86ppm、C
H(ベンゼン環)(1H) 6.13ppm、C
H(ベンゼン環)(1H)6.18ppm、C
H(ベンゼン環)(1H)6.49ppm、O
H(1H)5.58ppm)。
【0021】
(合成例3)環状カテコール含有モノマーAの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、ヒドロキシエチルメタクリレート26.0g、1,2,3-トリヒドロキシベンゼンアセトナイド39.2g、p−トルエンスルホン酸0.02g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、トルエン500gを仕込み、空気を導入しながら90℃に昇温した。90℃で10時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた環状カテコール含有モノマーのトルエン溶液をエバポレーターにて減圧留去し、再結晶(エタノール)により精製し、環状カテコール含有モノマーAを52.0g(収率80%)得た。反応の進行は、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より、ヒドロキシエチルメタクリレートの−C
H2−OH部位のケミカルシフトの変化(3.85→3.98ppm)と、ケタール基のケミカルシフト(C
H3(6H) 1.85ppm)から確認した。
【0022】
(合成例4)環状カテコール含有モノマーBの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、ポリエチレングリコール(n=4)メタクリレート(日油(株)製、ブレンマーPME−200)40.0g、1,2,3-トリヒドロキシベンゼンアセトナイド39.2g、p−トルエンスルホン酸0.02g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、トルエン500gを仕込み、空気を導入しながら90℃に昇温した。90℃で10時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた環状カテコール含有モノマーのトルエン溶液をエバポレーターにて減圧留去し、再結晶(エタノール)により精製し、環状カテコール含有モノマーBを47.4g(収率60%)得た。反応の進行は、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より、ポリエチレングリコールメタクリレートの−C
H2−OH部位のケミカルシフト(3.88→4.00ppm)とケタール基のケミカルシフト(C
H3(6H)1.84ppm)から確認した。
【0023】
(合成例5)環状カテコール含有モノマーCの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、ヒドロキシエチルメタクリレート26.0g、1,3,4−トリヒドロキシベンゼンアセトナイド39.2g、p−トルエンスルホン酸0.02g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、トルエン500gを仕込み、空気を導入しながら90℃に昇温した。90℃で10時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた環状カテコール含有モノマーのトルエン溶液をエバポレーターにて減圧留去し、再結晶(エタノール)により精製し、環状カテコール含有モノマーCを50.0g(収率79%)得た。反応の進行は、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より、ヒドロキシエチルメタクリレートの−C
H2−OH部位のケミカルシフト(3.85→3.95ppm)とケタール基のケミカルシフト(C
H3(6H)1.85ppm)から確認した。
【0024】
(合成例6)環状カテコール含有モノマーDの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製 カレンズMOI)31.0g、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンアセトナイド39.2g、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.02g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、トルエン500gを仕込み、空気を導入しながら90℃に昇温した。90℃で5時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた環状カテコール含有モノマーのトルエン溶液をエバポレーターにて減圧留去し、再結晶(イソプロパノール)により精製し、環状カテコール含有モノマーDを54.7g(収率78%)得た。反応の進行は、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの−C
H2−O部位のケミカルシフト(3.36→3.49ppm)とケタール基のケミカルシフト(C
H3 (6H)1.86ppm)から確認した。
【0025】
(合成例7)環状カテコール含有モノマーEの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製 カレンズMOI)31.0g、1,3,4−トリヒドロキシベンゼンアセトナイド39.2g、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.02g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、トルエン500gを仕込み、空気を導入しながら90℃に昇温した。90℃で5時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた環状カテコール含有モノマーのトルエン溶液をエバポレーターにて減圧留去し、再結晶(イソプロパノール)により精製し、環状カテコール含有モノマーEを49.1g(収率70%)得た。反応の進行は、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの-C
H2-O部位のケミカルシフト(3.36→3.51ppm)とケタール基のケミカルシフト(C
H3 (6H) 1.85ppm)から確認した。
環状カテコールAないしEの化学構造式を、表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
共重合体の合成
(実施例1)共重合体Aの合成
50mLのねじ口試験管に、環状カテコール含有モノマーA4.62g、メタクリル酸メチル(MMA)3.50g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)0.066g、トルエン8.31gを仕込み、窒素置換し、75℃に加熱した。75℃で6時間攪拌後、室温まで冷却し、環状カテコール含有重合体のトルエン溶液を得た。得られたトルエン溶液をヘキサン100mLに滴下し、生成した沈殿をヘキサンで3回洗浄したのち、60℃で真空乾燥させ、環状カテコール含有ポリマーを得た(収率92%)。
環状カテコール含有ポリマー5.0gをイソプロパノール(IPA)10gに溶かしたのち、0.1M塩酸10gを仕込み、60℃に加熱した。60℃で3時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた共重合体のIPA溶液をイオン交換水100gに滴下し、生成した沈殿をイオン交換水で3回洗浄した後、40℃、24時間減圧下で乾燥させ、共重合体Aを6.1g(収率80%)得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は21200であった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、32:68(カテコール含有モノマーA:MMA)であった。比率は4.35ppm(カテコール含有モノマーAのN−C
H2−部位)と3.75ppm(MMAのCOOC
H3部位)の積分比より算出した。
【0028】
(実施例2)共重合体Bの合成
環状カテコール含有モノマーAの代わりに環状カテコール含有モノマーB 5.05g、メタクリル酸メチルの代わりにメトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート(日油(株)製、ブレンマーPME−400)14.0gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、収量10.4g(収率55%)の共重合体Bを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は17600であった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、38:62(カテコール含有モノマーB:PME−400)であった。比率は4.32ppm(カテコール含有モノマーBのN−C
H2−部位)と3.65ppm(PME−400のC
H3−O−部位)の積分比より算出した。
【0029】
(実施例3)共重合体Cの合成
環状カテコール含有モノマーAの代わりに環状カテコール含有モノマーC 4.62gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、収量5.9g(収率78%)で共重合体Cを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は23700であった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、28:72(カテコール含有モノマーC:MMA)であった。比率は4.35ppm(カテコール含有モノマーCのN−C
H2−部位)と3.75ppm(MMAのCOOC
H3部位)の積分比より算出した。
【0030】
(実施例4)共重合体Dの合成
環状カテコール含有モノマーAの代わりに環状カテコール含有モノマーD 4.81gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、収量6.7g(収率88%)の共重合体Dを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は21200であった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、32:68(カテコール含有モノマー:MMA)であった。比率は4.35ppm(カテコール含有モノマーDのN−C
H2−部位)と3.75ppm(MMAのCOOC
H3部位)の積分比より算出した。
【0031】
(実施例5)共重合体Eの合成
メタクリル酸メチルの代わりにラウリルメタクリレート(日油(株)製、ブレンマーLMA)8.89gを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、収量10.7g(収率82%)の共重合体Eを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は18900であった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解し、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、35:65(カテコール含有モノマー:ラウリルメタクリレート)であった。比率は4.30ppm(カテコール含有モノマーDのN−C
H2−部位)と4.10ppm(ラウリルメタクリレートの末端)の積分比より算出した。
【0032】
(実施例6)共重合体Fの合成
メタクリル酸メチルの代わりにメトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート(日油(株)製、ブレンマーPME−400)14.0gを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、収量8.2g(収率45%)の共重合体Fを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は18500あった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、31:69(カテコール含有モノマー:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)であった。比率は4.30ppm(カテコール含有モノマーDのN−C
H2−部位)と3.40ppm(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートのC
H3−O−部位)の積分比より算出した。
【0033】
(実施例7)共重合体Gの合成
環状カテコール含有モノマーDの代わりに環状カテコール含有モノマーE 4.81gを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、収量7.07g(収率90%)の共重合体Gを得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は22800あった。得られた共重合体を、5質量%の濃度で重水素化メタノールに溶解させ、
1H NMR(日本電子(株)製、AL−400)より共重合比を算出した結果、30:70(カテコール含有モノマーE:MMA)であった。比率は4.35ppm(カテコール含有モノマーEのN−C
H2−部位)と3.75ppm(MMAのCOOC
H3部位)の積分比より算出した。
【0034】
(比較例1)共重合体Hの合成
攪拌装置、温度計、空気導入管を取り付けた四つ口フラスコに、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンアセトナイド7.84g、トリエチルアミン4.77g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.008g、ジクロロメタン100gを仕込み、空気を導入しながら0℃に冷却した。メタクリル酸クロライド4.81gを30分かけて滴下し、0℃で2時間攪拌後、ジクロロメタンをエバポレーターにて減圧留去し、環状カテコール含有モノマーを54.7g(収率78%)得た。
50mLのねじ口試験管に、環状カテコール含有モノマー2.91g、メタクリル酸メチル3.50g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)0.066g、トルエン8.31gを仕込み、窒素置換し、75℃に加熱した。75℃で6時間攪拌後、室温まで冷却し、環状カテコール含有重合体のトルエン溶液を得た。得られたトルエン溶液をヘキサン100mLに滴下し、生成した沈殿をヘキサンで3回洗浄したのち、60℃で真空乾燥させ、環状カテコール含有ポリマーを得た(収率98%)。
環状カテコール含有ポリマー5.0gをIPA10gに溶かしたのち、0.1M塩酸10gを仕込み、60℃に加熱した。60℃で3時間攪拌後、室温まで冷却した。得られた共重合体のIPA溶液をイオン交換水100gに滴下し、生成した沈殿をイオン交換水で3回洗浄した後、40℃、24時間減圧下で乾燥させ、共重合体Hを6.1g(収率80%)得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は21200であった。
【0035】
(比較例2)共重合体Iの合成
50mLのねじ口試験管に、フェノキシポリエチレン(n=2)グリコールメタクリレート(日油(株)製、ブレンマーPAE−100)3.75g、メタクリル酸メチル3.50g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)0.066g、トルエン8.31gを仕込み、窒素置換し、75℃に加熱した。75℃で6時間攪拌後、室温まで冷却し、ヘキサン100mLに滴下し、生成した沈殿をヘキサンで3回洗浄したのち、60℃で真空乾燥させ、共重合体Iを6.52g(収率90%)得た。GPC(カラム:shodex GPC KF−805L、溶媒:テトラヒドロフラン、基準物質:ポリスチレン)により求めた重量平均分子量は25200であった。
表2に、実施例及び比較例の共重合体の構成を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
分散性の評価
(1)評価用サンプル調製
(評価1〜9)
銀粉体(Ferro Corporation製、D50:2.0μm)5gと、分散剤としての共重合体A〜I 0.05gを、50mLのスクリュー管に量りとり、粉体濃度が10質量%になるように分散媒を加え混合した。
(評価10)
分散剤として、高分子型ポリカルボン酸ナトリウム塩(日油(株)製、ポリスターOMP(無水マレイン酸/ジイソブチレン=50/50モル%共重合体を水酸化ナトリウムにより開環、重量平均分子量:30000))を用いた以外は、評価1〜9と同様の操作を行った。
(2)分散性評価結果
(1)で調製したサンプルを静置し、1時間、6時間、24時間後の沈降状態を目視で観察し、スクリュー管の底面から液面までの高さL
1と、底面から上澄み界面までの高さ(分散層の高さ)L
2の比(L
2/L
1×100%)から、分散安定性を評価した。
各分散剤の分散安定性の評価結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3の結果から、本発明に係る共重合体AないしGは、いずれも、当初から優れた分散性を呈し、その優れた分散性が、長時間にわたって安定に維持されることがわかる。これに対し、カテコール基を有していても、エチレンオキシ鎖がない共重合体H(特許文献1のポリマーに相当。)、カテコール基を有していない共重合体I、及び既存の分散剤(ポリスターOMP)は、初期分散性、及び分散安定性ともに、満足のいくものではなかった。