特許第5939114号(P5939114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939114活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939114
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20160609BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20160609BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20160609BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160609BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09D11/38
   C09D11/36
   C09D11/40
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-216734(P2012-216734)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70135(P2014-70135A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真由子
(72)【発明者】
【氏名】亀山 雄司
(72)【発明者】
【氏名】城内 一博
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/160954(WO,A1)
【文献】 特表2011−502188(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/039081(WO,A1)
【文献】 特開2012−149206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/36
C09D 11/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、モノマー、および開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物であって、
前記モノマーとして、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルをインキ組成物中35〜65重量%、ジプロピレングリコールジアクリレートをインキ組成物中35〜65重量%含有し、
顔料をインキ組成物中1〜10重量%含有し、
前記開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、及び、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
のいずれかを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項2】
前記開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項3】
前記モノマーとして、N−ビニル−ε−カプロラクタムをインキ組成物中0.1〜10重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項4】
前記モノマーとして、ベンゼン環、シクロヘキサン環ないしはジオキサンを骨格として含有する単官能モノマーをインキ組成物中1〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項5】
前記モノマーとして、5官能以上の多官能モノマーをインキ組成物中1〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項6】
前記モノマーが、分子量400以下のモノマーを、モノマー全量を基準として90重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項7】
1Pass硬化型であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物。
【請求項8】
シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキ及びホワイトインキから選択される2色以上のカラーインキを含むインキセットであって、
カラーインキの少なくとも1つが請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物であるインキセット。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物を硬化させてなる硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型着色インクジェットインキ組成物に関する。特に食品・化粧品用ラベルとして多岐に使用可能な、低粘度で色再現性に優れ、かつ硬化膜中の残留成分量が少ない、特に1Pass硬化型のインキの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、その溶剤タイプと比較し、乾燥性の速さから高速印字型のサイネージプリンタに、または基材密着性に優れる面から、多種基材対応のフラットベット型プリンタに搭載され、用途に応じた配合の開発が進められてきた。
【0003】
これらプリンタは、ヘッドをスキャンさせることで、大型化、厚膜化、高濃度化に対応させることができた。近年、ヘッドの技術進展により、高周波数で微小の液滴を射出することのできるヘッド技術が確立されてきた。この技術の実現により、生産性、画質の面で劣っていたインクジェット印刷が、デジタル化のメリットを併せて既存の印刷方式を代替する可能性が高まった。さらには少なくとも2個以上インクジェットヘッドで吐出された後、それらを同時に硬化させる1Passタイプのプリンターの登場により、装置の低コスト化、高生産性が可能となり、さらに既存の印刷方式の代替を加速させている。
【0004】
しかし、この技術革新の実現には、従来にも増して低粘度、かつ高感度のインキの開発が必要であった。低粘度化は、着弾精度の向上に寄与し、高精細な画質を得るためにインキに求められる仕様である。それに加え、インクジェット印刷を従来のオフセット印刷などの代替として使用するにあたり、色再現性の向上も求められている。特に食品や化粧品などの分野においては、ラベルによってその内容物をいかに魅力的にみせるかが、その商品の売り上げに大きく関わってくるため、色再現性は一つの重要な品質となりうる。しかしながら、特に活性エネルギー線硬化型インクジェットインキにおいては、画像の色再現性、硬化性、吐出安定性などの要求される全ての特性を満足することは非常に難しい。
広い色再現性を得ようとして、インク組成物液滴付与量を増やしたりした場合は、マットな画像になってしまい、食品・化粧品ラベルとして不適である。また、広い色再現性を得ようとして、顔料濃度を上げてインク組成物を作製した場合、インク組成物が高粘度になったり、また、塗膜内部まで硬化が進まず硬化膜中の残留成分が食品や化粧品内部に侵入し問題となる場合がある。特に活性エネルギー線硬化型インクジェットインキにおいては、インキの原料に臭気をもつものや人体に有害な成分が多く含まれることから、これら残留成分が硬化膜中に存在し食品や化粧品などの内容物中に侵入してしまうと大きな問題となってしまう。この内容物中への侵入を防ぐためには、硬化膜中の残留成分量を低減させることが最も効果的である。つまり、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを食品・化粧品ラベルとして使用するためには、広い色再現性と硬化膜中の残留成分量を低減させることが重要なポイントとなるのである。
【0005】
ここで硬化膜中の残留成分量を把握するためには、メチルエチエルケトンのような溶解性の高い溶剤に硬化膜を浸漬し、溶剤中に溶出した化合物の量を定量することにより判断することができる。
【0006】
文献1では、おもちゃ及び食品包装用途のためのインクを提供する方法が提案されている。しかし、この方法では硬化時に窒素封入を前提としており、ランニングコストが非常に高くなってしまう。またコンベア速度は10m/minであり、生産性も非常に悪い。さらにこの方法で顔料を1%以上含有するインクを作製すると、硬化が不十分であり、メチルエチルケトンで溶出した際の硬化膜中の残留成分量は200ppbを超える高い値を示すことがわかった。そのためこの方法をそのまま食品用ラベルに使用することはできない。
【0007】
文献2では、食品用途に使用する新しいタイプの開始剤が提案されている。しかし、この方法で顔料を1%以上含有するインクを作製すると、硬化が不十分であり、メチルエチルケトンで溶出した際の硬化膜中の残留成分量は200ppbを超える高い値を示すことがわかった。そのためこの方法をそのまま食品用ラベルに使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2011-502188号公報
【特許文献2】EP公開第2161264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、低粘度で色再現性に優れ、かつ硬化膜中の残留成分量が少ないインキを提供することにより、食品・化粧品用ラベルとして多岐に使用可能な、高生産性かつ低コストのデジタル印刷物提供の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、全インキ組成物中アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが30〜65重量%、ジプロピレングリコールジアクリレートが30〜65重量%ならびに着色剤として顔料を1〜10重量%必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物に関するものである。
また、本発明は、N−ビニル−ε−カプロラクタムを全インキ組成物中0.1〜10重量%含有することを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物に関するものである。
また、本発明は、1Pass硬化型であることを特徴とする上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1Pass硬化型インクジェット印刷法)
本発明の1Pass硬化型インクジェット印刷法とは、印刷したいメディアに対して1回で印字(印刷)を完成させる印刷方法であり、印刷スピードが要求される業務用印刷に向いている。近年、従来のオフセット印刷の代替としてインクジェット印刷を使用するにあたり、生産性は非常に重要な要素であり、1Pass硬化型インクジェット印刷は期待されている。さらには1Pass硬化型インクジェット印刷の中でも、25m/M、さらには50m/Mなどの高速印刷が可能となれば、オフセット印刷代替としての使用拡大へ繋がると言われている。
【0012】
(活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ組成物は、顔料、および特定のモノマーを併用することを特徴とする。
本発明でいう活性エネルギー線とは、電子線、α線、γ線、X線、中性子線または、紫外線のごとき、電離放射線や光などを総称するものである。中でも人体への危険性が少なく、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。
【0013】
本発明のインクジェットインキ組成物は、モノマー、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造された顔料分散体にモノマー、その他添加剤を添加して作製される。この方法により、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。顔料分散体作製時の条件としては、微小ヒ゛ース゛を使用することが好ましく、具体的には0.1mm〜2mmの微小ヒ゛ース゛を用いることが低粘度で安定な分散体を作製するために好ましく、さらには0.1mm〜1mmの微小ヒ゛ース゛を用いることが生産性向上と吐出性良好な分散体を作製するために好ましい。インク組成物は分散後、孔径3μm以下さらには、1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0014】
(モノマー)
本発明のインクジェットインキ組成物は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレートとを必須成分として含有することを特徴とする。
硬化膜中にモノマーや開始剤などが残留する仕組みとしては、UV硬化により硬化膜が形成されていく段階で開始剤とモノマー(重合成分)の消費に偏りが生じたり、特定の開始剤ないしはモノマーが反応しない場合に硬化膜中に取り残されることとなる。この硬化膜形成過程において、反応が遅いモノマーや硬化膜中での流動性の低い開始剤・モノマーに関しては、残留しやすい傾向にある。上記アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレートは分子の流動性が高いために、開始剤から発生したラジカルと反応した後、その他モノマーを一定量組み込みながら分子鎖をのばしていき、途中でラジカルが不活性化することなく重合が効率良く進む性質をもっていることから、開始剤、モノマーと高効率で反応し、硬化膜中の残留成分を最小限にすることができる。
中でも顔料濃度が1重量%以上である場合、ランプのエネルギーが顔料に一部吸収されてしまい、また顔料がモノマーの重合を阻害するため、開始剤を多くしてモノマーの反応点を増やさなければモノマーの消費は一定以上進まないが、開始剤量を多くしてしまうとモノマーと反応せず硬化膜中に残留する開始剤量が増える結果となり、硬化膜全体の残留成分量を減らすことはできない。ところが本発明においては、全インキ組成中アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが30〜65重量%、ジプロピレングリコールジアクリレートが30〜65重量%の範囲にコントロールすることで、これらモノマーが開始剤のところまで流動して反応を開始し、開始剤の残留量を減らしつつ、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレートがその他モノマーを一定量組み込みながら分子鎖をのばして重合していくため、硬化膜中の残留成分を最小限にすることができる。この現象は、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレート単体もしくはどちらかが過剰な条件では発現せず、上記一定割合のアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル/ジプロピレングリコールジアクリレート量において発現することがわかった。
【0015】
本発明に用いるモノマーとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレート以外にも、目的を妨げない限り、自由に選択することができる。本発明で定義するモノマーとは、活性エネルギー線が照射された後、直接、または光重合開始剤を介して、重合反応を起こす化合物を示す。具体的には、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマーなどが挙げられる。
【0016】
本発明に用いる単官能モノマーの具体例としては、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、トリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N-ヒ゛ニル-ε-カフ゜ロラクタム、ヒドロキシフェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、アクリル酸4−tert-ブチルシクロヘキシル、β-カルボキシルエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、イソフォリルアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明では、N−ビニル−ε−カプロラクタムを添加することで、さらにモノマー同士の硬化速度があがり高速印刷においても残留成分を低減することができるため好ましい。ところが多量に添加するとN−ビニル−ε−カプロラクタムは硬化膜中に残留しやすく残留成分量が増えてしまうことから、N−ビニル−ε−カプロラクタムの添加量はインキ組成物中0.1〜10重量%、さらには1〜10重量%であることが好ましい。この添加量以上に添加すると、同時にインキの経時安定性悪化と吐出安定性の悪化を引き起こしてしまう。
【0018】
また本発明では、ベンゼン環、シクロヘキサン環ないしはジオキサンを骨格として含有する単官能モノマーを添加することにより、UV硬化途中における硬化膜形成段階での硬化膜の架橋密度が低下し、未反応成分の流動性があがり、未反応成分が開始剤と反応しやすくなり最終的な残留成分が低減することができるため好ましい。ただしこの単官能モノマー自体の反応性はあまり高くないため、ベンゼン環、シクロヘキサン環ないしはジオキサンを骨格として含有する単官能モノマーの添加量はインキ組成物中1〜30重量%であることが残留成分低減のためには好ましい。この単官能の具体例としては、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸4−tert-ブチルシクロヘキシル、ベンジルアクリレート、トリメチロールプロパンフォーマルアクリレート、イソフォリルアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明に用いる2官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートエトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0020】
本発明における多官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明では、5官能以上の多官能モノマーを添加することにより、モノマーの反応確率を上げ、残留成分を低減することができることから好ましい。5官能以上の多官能モノマーは高粘度であることから、5官能以上の多官能モノマーの添加量はインキ組成物中30重量%以下であることが安定吐出粘度でインキを作製するために好ましい。より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは1〜8重量%であると残留成分量がより少なくなる。
【0022】
これらモノマーは一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0023】
本発明のインキ組成物は、吐出安定性の点から低粘度である必要があり、分子量が400以下のモノマーをモノマー全量中90重量%以上含有することが好ましい。
【0024】
本発明のインク組成物には、上記モノマー以外にもオリゴマー、プレポリマーを使用できる。
【0025】
(顔料)
本発明のインクジェットインキ組成物に用いられる顔料としては、一般的に印刷用途、塗料用途のインク組成物に使用される顔料を用いることができ、発色性、耐光性などの必要用途に応じて選択することができる。顔料成分としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料または有彩色の有機顔料が使用できる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、ローダミンレーキ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、ナフトール系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット、レーキ顔料等が挙げられる。
【0026】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64,71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、81、81:1、81:2、81:4、81:5、97、122、123、149、168、169、177、180、185、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、269、C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0027】
上記有機顔料の中で、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ローダミンレーキ系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料等は耐光性と色域のバランスが良く実使用に向いているため好ましい。
【0028】
特に好ましい例としては、C.I.ピグメントイエロー150、155、180、185、C.I.ピグメントレッド81、81:1、81:2、81:4、81:5、122、169、185、202、C.I.ピグメントバイオレット1、19、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、15:6が所望の添加量でジャパンカラー2007およびFOGRA39を再現しうることから好ましい。また特色を使用する場合には、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントオレンジ64、71が好ましい。
【0029】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」等が挙げられる。
【0030】
酸化チタンの具体例としては、石原産業社製「タイペークCR−50、50−2、57、80、90、93、95、953、97、60、60−2、63、67、58、58−2、85」「タイペークR−820,830、930、550、630、680、670、580、780、780−2、850、855」「タイペークA−100、220」「タイペークW−10」「タイペークPF−740、744」「TTO−55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、55(S)、55(N)、51(A)、51(C)」「TTO−S−1、2」「TTO−M−1、2」、テイカ社製「チタニックスJR−301、403、405、600A、605、600E、603、805、806、701、800、808」「チタニックスJA−1、C、3、4、5」、クロノス社製「クロノス2220、クロノス2230、クロノス2233」、デュポン社製「タイピュアR−900、902、960、706、931」、Tioxide社製「TIOXIDE RTC 30、TR-28、TR-52」等が挙げられる。
【0031】
顔料の添加量は、所望の色域を確保する上で任意に選択される。良好な硬化性と十分な色域を確保するためには、顔料の添加量はインキ組成物中1〜10重量%であることが好ましい。
【0032】
(顔料分散剤)
本発明に用いる顔料分散剤としては、大きく分けて顔料分散助剤と樹脂型顔料分散剤があげられる。
【0033】
本発明に用いることができる顔料分散助剤は、有機顔料を母体骨格とし側鎖にスルホン酸、スルホンアミド基、アミノメチル基、フタルイミドメチル基等の置換基を導入して得られる化合物である。
【0034】
顔料分散助剤の添加量は、所望の安定性を確保する上で任意に選択される。インキの流動特性に優れるのは、顔料100部に対し顔料分散助剤の有効成分が3〜12部の場合であった。この範囲内ではインキの分散安定性が良好となり、長期経時後も初期と同等の品質を示すため、好適に用いることができる。
【0035】
本発明に用いる樹脂型顔料分散剤の主鎖骨格は、特に制限はないが、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、インク組成物の保存安定性の点で、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格が好ましい。また、高分子分散剤の構造に関しても特に制限はないが、ランダム構造、ブロック構造、くし型構造、星型構造等が挙げられ、同様に保存安定性の点で、ブロック構造又はくし型構造が好ましい。
【0036】
樹脂型顔料分散剤の具体例としては、ビックケミー社より市販されている湿潤分散剤DISPER BYKシリーズの101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、BYKJETシリーズの9130、9131、9132、9133、9150、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より市販されているEFKAシリーズの4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5244、
ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの3000、5000、11200、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、36000、36600、37500、38500、39000、41000、53000、53095、54000、55000、56000、71000、76400、76500、J100、楠本化成(株)より市販されているDISPARLONシリーズの1210、1220、1831、1850、1860、2100、2150、2200、7004、KS−260、KS−273N、KS−860、KS−873N、PW−36、DN−900、DA−234、DA−325、DA−375、DA−550、DA−1200、DA−1401、DA−7301、味の素ファインテクノ(株)より市販されているアジスパーシリーズのPB−711、PB−821、PB−822、PB−824、PB−827、PB−711、PN−411、PA−111、エアープロダクツ社より市販されているサーフィノールシリーズの104A、104C、104E、104H、104S、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、DF110D、DF110L、DF37、DF58、DF75、DF210、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、TG、TGE、日信化学工業(株)より市販されているオルフィンシリーズのSTG、E1004、サンノプコ(株)製SNスパースシリーズの70、2120、2190、(株)ADEKAより市販されているアデカコール及びアデカトールシリーズ、三洋化成工業(株)より市販されているサンノニックシリーズ、ナロアクティーCLシリーズ、エマルミンシリーズ、ニューポールPEシリーズ、イオネットMシリーズ、イオネットDシリーズ、イオネットSシリーズ、イオネットTシリーズ、サンセパラー100、共栄社化学社より市販されているフローノンSH−290、SP−1000、ポリフローNo.50E、No.300、日光ケミカル社より市販されているニッコール T106、MYS−IEX、Hexagline 4−0が挙げられる。
中でも、ブロック構造又はくし型構造の塩基性分散樹脂が、本発明の顔料の分散を安定化し、インキ経時粘度安定性および吐出安定性が良好になるため、好ましい。
【0037】
樹脂型顔料分散剤の添加量は、所望の安定性を確保する上で任意に選択される。インキの流動特性に優れるのは、顔料100部に対し樹脂型顔料分散剤の有効成分が20〜150部の場合であった。この範囲内ではインキの分散安定性が良好となり、長期経時後も初期と同等の品質を示すため、好適に用いることができる。さらに顔料100部に対し樹脂型顔料分散剤の有効成分が30部〜100部の場合、分散が非常に安定となり、かつ20kHz以上の高周波数領域でも安定した吐出性を示すため高精度・高生産性を実現することができることからより好ましい。
【0038】
(添加剤)
本発明のインクジェットインキ組成物には、上記顔料、顔料分散剤、モノマーの他に、添加剤を含んでも良い。本発明に用いる添加剤としては、開始剤、禁止剤、表面張力調整剤、有機溶剤などがあげられる。
【0039】
(開始剤)
本発明の開始剤とは、光照射により重合反応を開始するラジカル活性種を発生させる化合物全般を示し、光ラジカル重合開始剤に加え、増感剤も含まれる。開始剤としては、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料により自由に選択することができる。
【0040】
本発明では、開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−[4−(メチルチオベンゾイル)]−2−(4−モルホリニル)プロパン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[4−[4−メチルフェニル]チオ]フェニル〕フェニルメタノン、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、4,4‘−ビス−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルフォニル]プロパン−1−オン、(メチルイミノ)ジエタン−2,1−ジイル(4−ジメチルアミノベンゾエート)に良好な硬化性を示す。
【0041】
中でも本発明のモノマー/顔料配合量下では、アシルフォスフィンオキサイド系ないしはαアミノアセトフェノン系の開始剤を含有することにより、開始剤が発生するラジカルを効率よくモノマーの重合に使用でき、残留成分を低減できることからより好ましい。
【0042】
さらに、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドや2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系開始剤を使用すると、硬化膜内部まで硬化が効率良く進行するため、2色以上の色を重ねて印字した際の硬化膜の残留成分量も低減できることからより好ましい。中でもビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを用いた場合、メチルエチルケトンなどの溶解性の高い溶媒にも溶出されにくくなるため最も好ましい。
【0043】
上記開始剤は、インキ組成物中0.5〜15重量%で使用されるのが好ましい。0.5〜15重量%である場合、優れた硬化性および残留成分の低減と、吐出に適した粘度を両立することができる。
【0044】
(禁止剤)
本発明では、インキの経時での粘度安定性、経時後の吐出性、記録装置内での機上の粘度安定性を高めるため、禁止剤を使用することが好ましい。
禁止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。
具体的に例示すると、ヒンダードフェノール系化合物として、BASF社製「IRGANOX 1010、1010FF、1035、1035FF、1076、1076FD、1076DWJ、1098、1135、1330、245、245FF、245DWJ、259、3114、565、565DD、295」、精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ、MBP、EBP、CBP、BB」「TBH」、ADEKA社製「AO−20、30、50、50F、70、80、330」、本州化学社製「H−BHT」、エーピーアイ社「ヨシノックス BB、425、930」、
フェノチアジン系化合物として、精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」「2−メトキシフェノチアジン」、「2−シアノフェノチアジン」、
ヒンダードアミン系化合物として、BASF社製「IRGANOX 5067」「TINUVIN 144、765、770DF、622LD」、精工化学社「ノンフレックス H、F、OD−3、DCD、LAS−P」「ステアラー STAR」「ジフェニルアミン」「4−アミノジフェニルアミン」「4−オキシジフェニルアミン」、エボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、日立化成社「ファンクリル 711MM、712HM」、
リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」「IRGAFOS 168、168FF」、精工化学社「ノンフレックス TNP」、
その他の化合物として、BASF社製「IRGASTAB UV−10、22」、精工化学社製「ハイドロキノン」「メトキノン」「トルキノン」「MH」「PBQ」「TBQ」「2,5−ジフェニルーp−ベンゾキノン」、和光純薬社「Q−1300、1301」、RAHN社製「GENORAD 16、18、20」を挙げることができる。
このうち、インキへの溶解性や、禁止剤自身の色味の点で、ヒンダードフェノール系化合物として精工化学社「BHTスワノックス」「ノンフレックス アルバ」、本州化学社製「H−BHT」、フェノチアジン系化合物として精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」、ヒンダードアミン系化合物としてエボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、リン系化合物として、BASF社製「トリフェニルホスフィン」が好適に選択される。中でも本発明に使用するアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジアクリレートは反応性が高く、インキ保管時に活性酸素を介して重合をおこす可能性があるため、酸化防止剤でもあるヒンダードフェノール系化合物やフェノチアジン系化合物が最も好ましい。
【0045】
これら禁止剤は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0046】
上記禁止剤は、インキ組成物中0.001〜1重量%で使用されるのが、インキ安定性と1Passでの硬化性を両立させ、さらには2色以上の色を重ねて印字した際の硬化膜の残留成分量を低減させるために好ましい。さらに好ましくは、インキ組成物中0.001〜0.5重量%であると、反応に寄与しない禁止剤の残留成分量が低減できるため最も好ましい。
【0047】
(表面張力調整剤)
本発明では、基材への濡れ広がり性を向上させるために表面張力調整剤を加えることが好ましい。本発明における表面調整剤とは、インキに1重量%添加した際に、インキ表面張力を0.5mN/m以上下げる樹脂のことである。
【0048】
表面張力調整剤の具体例としては、ビックケミー社製「BYK−350、352、354、355、358N、361N、381N、381、392、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、348、370、375、377、378、355、356、357、390、UV3500、UV3510、UV3570」テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」エボニックデグサ社製「TEGO(登録商標) Glide 100、110、130、403、406、410、411、415、432、435、440、450、482」等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これら表面張力調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。二種類以上を併用することにより、インキを経時促進させた場合でも良好な相溶性を保つため十分にインキが基材上で広がり、本発明の顔料の特徴である広い色再現性を保つことができるため好ましい。
【0049】
本発明に使用する表面張力調整剤は、シリコーン系であることが、相溶性によるはじき防止の点から好ましい。
【0050】
また、本発明に使用する表面張力調整剤は分子内に炭素−炭素二重結合をもつ反応性表面張力調整剤であることが、硬化により硬化膜中に取り込まれることから残留成分量低減のために好ましい。
【0051】
表面張力調整剤はインキ組成物中に、0.01〜5重量%含まれることが好ましい。0.01重量%未満では濡れ広がりが悪くなり、5重量%より多い場合、硬化を阻害してしまうと同時に残留成分量が多くなってしまう。
【0052】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類があげられる。この中でも、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
上記有機溶剤の多量の配合は硬化性が阻害され、また非架橋成分であるため残留成分量が多くなるため、添加量はインキに対し10重量%以下が好ましい。さらに好ましくは、5重量%以下が好ましい。
【0053】
これら有機溶剤は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0054】
また本発明で用いられるインキには、上記以外にも既存の消泡剤、流動性改質剤、蛍光増白剤、酸化防止剤などを所望の品質を満たす限り用いることができる。
【0055】
本発明のインキ組成物は、25℃での粘度が5〜14mPa secであることが好ましい。5mPa sec未満では、低粘度すぎるため吐出が安定せず、14mPa secを超えるインキ粘度では、粘度が高すぎるため吐出精度が低下し、画質が著しく低下してしまう。さらに高速・高周波数で吐出するためには8〜12 mPa secが好ましい。
【0056】
(インキセット)
本発明のインキセットとは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトから選択される2色以上のカラーインキを含む。
特にブラックは活性エネルギー線のエネルギーを吸収しやすく、硬化膜内部までエネルギーが届きにくいことから、2色以上重ねて印刷した際に硬化膜内部までの硬化は難しい。またホワイトは一般的に100%ベタで使用されることが一般的であることから、2色以上重ねて印刷した際に硬化膜内部までの硬化は難しい。そのためブラックやホワイトともう1色以上のインキセットとして使用することが、本発明が特に大きな効果を示すことから好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0058】
(顔料分散体の作成)
実施例1〜30、比較例1〜11では、表1記載の顔料/顔料分散剤の割合で混合し、
さらに顔料と顔料分散剤、分散モノマーを顔料濃度30%になるように全量で100g混合した。顔料分散モノマーとして、実施例1〜30、比較例2〜6、8〜10ではジプロピレングリコールジアクリレートを使用し、比較例1、7ではアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを使用し、比較例11ではフェノキシエチルアクリレートを使用した。
その後、マイクロビーズ型分散機(DCPミル)にて1時間分散し、顔料分散物を得た。分散にはZrビーズの0.5mm径タイプを体積充填率75%にて実施した。
【0059】
(インキの作成)
表1記載の配合量の通りになるように、上記顔料分散物にモノマーをゆっくりと添加し撹拌した。その後、開始剤、禁止剤、添加剤をそれぞれ添加し、シェーカーにて6時間振盪し溶解した。得られた液体をポア径0.5ミクロンのPTFEフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去し、評価インキを作成した。
<原料説明>
VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
VCAP:N−ヒ゛ニル-ε-カフ゜ロラクタム
PEA:フェノキシエチルアクリレート
TBCH:アクリル酸4-tert-フ゛チルシクロヘキシル
SR531:トリメチロールプロパンフォーマルアクリレート
TPGDA:トリフ゜ロヒ゜レンク゛リコールシ゛アクリレート
DDDA:1,10−テ゛カンシ゛オールシ゛アクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
Irg819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
Lucirin TPO: 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル-フォスフィンオキサイド
Irg369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
Irg379:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン
ESACURE ONE:オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)
UV3510:BYK−UV3510
【0060】
(粘度)
作成したインキの粘度は、東機産業社製E型粘度計を用いた。測定条件は、25℃の循環チラー環境にて、適宜測定に適する回転数に合わせた後、3分後の測定値を粘度として用いた。
○:8≦粘度≦12mPa・s
×:8>粘度、12<粘度
(インキ経時安定性)
60℃1週間で促進経時後の粘度変化率を確認した。粘度変化率とは、{(60℃1週間保管後の粘度値)−(初期粘度値)}/(初期粘度値)×100であり、インキの保存安定性の目安となる。○以上をインキ安定性実用レベルと判断した。
◎:粘度変化率が5%未満。
○:5%以上10%未満。
×:10%以上
【0061】
(残留成分量)
これら調整されたインキは、京セラ社製(KJ4A)ヘッドを搭載した吐出機構、着弾した基材を所望の速度で搬送するコンベア部で搬送する機構、続けてUVランプで照射される機構を有する1Pass硬化型のインクジェットプリンター(トライテック社製)を用いて、インキ液滴量14plで単色の場合は100%ベタの条件で、また2色の重ねの場合は200%ベタの条件で、3色の重ねの場合は300%ベタの条件で印字評価を行った。UVランプは、ノードソン社製、140W/cmのメタルハライドランプで評価した。吐出時のヘッド温度は一律40℃に設定した。印字基材はOKトップコートN(王子製紙社製)を用いた。コンベア速度を50m/min、25m/minにし、1Pass印刷にて印字物を得た。
印字物を10cm×10cmのサイズに切り取り、密閉した容器に入ったメチルエチルケトン1000gに2日間25℃で浸漬することにより、硬化膜中の残留成分を溶出させた。2日後、攪拌して均一化させたメチルエチルケトンを容器内から取り出し、GCMSおよびHPLCにて定量し、残留成分量を以下の基準で判断した。○以上を残留成分量実用レベルと判断した。
◎:各化合物の残留成分量のうち最も多いものが10ppb>であり、残留成分量の合計が100ppb以下
である
○:各化合物の残留成分量のうち最も多いものが10ppb〜100ppbであり、残留成分量の合計が50〜200
ppbである
×:各化合物の残留成分量のうち最も多いものが100ppb<であり、残留成分量の合計が200ppb以上で
ある
【0062】
評価結果を表1、2に示した。
実施例1〜30までは、粘度、インキ経時安定性、残留成分量(50m/min 1Pass)、残留成分量(25m/min 1Pass)ともに良好であり、食品・化粧品用ラベルなどへの使用に好ましい1Pass硬化型のインキとすることができた。さらには実施例1〜8、10〜21、23〜30では、25m/minで印字した際の残留成分量がさらに少なくなり、より安心・安全なラベルを作成可能なインキとなった。中でも実施例19〜21、23、24では、50m/minの高速印刷下においても残留成分量の少ないインキとなった。さらには、実施例31〜33までは、2色以上の色を重ねて印字したが、いずれも硬化膜の残留成分量は十分少なく、食品・化粧品用ラベルなどへの使用に好ましい1Pass硬化型のインキセットとすることができた。さらには実施例31、32では、25m/minで印字した際の残留成分量がさらに少なくなり、より安心・安全なラベルを作成可能なインキセットとなった。中でも実施例31では、50m/minの高速印刷下においても残留成分量の少ないインキセットとなった。
一方、比較例1〜12では、表面硬化性評価による硬化は十分であり、一見硬化膜の硬化は十分であるように感じるが、残留成分量はいずれも100ppbを超える値で検出されており、食品・化粧品用ラベルに安心して使用可能な1Pass硬化型インキおよびインキセットはできなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】