特許第5939142号(P5939142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5939142-燃料電池発電システム 図000002
  • 特許5939142-燃料電池発電システム 図000003
  • 特許5939142-燃料電池発電システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939142
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】燃料電池発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0612 20160101AFI20160609BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20160609BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160609BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   H01M8/04 X
   H01M8/04 J
   H01M8/06 B
   !H01M8/12
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-257571(P2012-257571)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107056(P2014-107056A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 顕二郎
(72)【発明者】
【氏名】櫛 拓人
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−311072(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01571727(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
C01B 3/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むアノード排ガスを発生する燃料電池と、
該燃料電池の前段に配設され、該燃料電池のアノード排ガスに含まれる二酸化炭素を利用して、炭化水素系の原料ガスを二酸化炭素改質し、一酸化炭素と水素を含む合成ガスを生成させる二酸化炭素改質器と
を有する燃料電池システムにおいて、
燃料電池システムの起動時に原料ガスを部分改質して該燃料電池に供給する部分改質器を備えた燃料電池システムであって、
前記部分改質器からのガスが前記二酸化炭素改質器を通って前記燃料電池に供給可能とされており、
原料ガスを部分改質器に供給し、燃料電池システムの起動時に空気を前記部分改質器に供給し、燃料電池のアノード排ガスを二酸化炭素改質器に供給せず、
前記燃料電池のアノード排ガス温度が所定温度以上となり、且つ燃料電池の単位時間当りのCO排出量が、単位時間当りに燃料電池システムに導入される炭化水素ガスの反応当量以上となったときに、部分改質器への空気供給を停止し、アノード排ガスを二酸化炭素改質器に供給することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、
空気の前記部分改質器への供給と供給停止とを切り替えるための空気切替手段と、前記燃料電池のアノード排ガスの該二酸化炭素改質器の供給と供給停止とを切り替えるためのアノード排ガス切替手段と
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスやLPGなどの原料ガスを改質して水素含有ガスを製造し、この水素含有ガスを燃料電池に供給して発電を行う燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスやLPGなどの燃料ガスを改質して水素含有ガスを製造し、この水素を酸素と反応させて発電する燃料電池発電システムは、電気化学反応によって燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、エネルギー変換に伴って発生する損失が少なく、高い発電効率を得ることができる。
【0003】
固体酸化物型燃料電池システムは、主に燃料にメタンを用いるため、その燃料の改質には水蒸気改質法か、部分酸化、更には、この両者を組み合わせたオートサーマル法といった手法が採用されている。
【0004】
水蒸気改質法を用いた場合には、燃料電池システムに水ポンプ、イオン交換樹脂や気化器といった水処理関係の補機設置するため複雑なシステム構成となり、かつ水ポンプなどが故障した場合には改質が不十分となり固体酸化物燃料電池システムに故障を引き起こすおそれがある。
【0005】
部分酸化法を用いた場合には、本来発電に寄与する燃料を燃焼させて、水を生成することから、効率低下を引き起こし、固体酸化物形燃料電池の高効率という特徴を生かすことができない。
【0006】
特許文献1には、原料ガスを二酸化炭素改質器で改質して水素含有合成ガスを生成させ、この水素含有合成ガスを燃料電池に供給する燃料電池システムであって、燃料電池の排ガスを該二酸化炭素改質器に供給し、排ガス中のCOによって原料ガスの二酸化炭素改質を行うようにした燃料電池システムが記載されている。しかしながら、この燃料電池システムでは、システム起動時には燃料電池からCOが得られず、二酸化炭素改質反応を行うことができない。また、特許文献1の燃料電池システムでは、起動当初、燃料電池を純メタンに近い燃料で運転することになるため、定常運転状態に到達するまで著しく長時間を要する;燃料電池スタックを初期のドライメタン燃料に耐えられるものとする必要がある;コーキングのおそれがある;などの短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−15860
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料電池排ガス中の二酸化炭素を利用して原料ガスを二酸化炭素改質して水素含有ガスを製造し、この水素含有ガスを燃料電池に供給するよう構成した燃料電池システムにおいて、起動を容易に行うことができるようにし、高効率運転を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池システムは、二酸化炭素を含むアノード排ガスを発生する燃料電池と、該燃料電池の前段に配設され、該燃料電池のアノード排ガスに含まれる二酸化炭素を利用して、炭化水素系の原料ガスを二酸化炭素改質し、一酸化炭素と水素を含む合成ガスを生成させる二酸化炭素改質器とを有する燃料電池システムにおいて、燃料電池システムの起動時に原料ガスを部分改質して該燃料電池に供給する部分改質器を備えた燃料電池システムであって、前記部分改質器からのガスが前記二酸化炭素改質器を通って前記燃料電池に供給可能とされており、原料ガスを部分改質器に供給し、燃料電池システムの起動時に空気を前記部分改質器に供給し、燃料電池のアノード排ガスを二酸化炭素改質器に供給せず、前記燃料電池のアノード排ガス温度が所定温度以上となり、且つ燃料電池の単位時間当りのCO排出量が、単位時間当りに燃料電池システムに導入される炭化水素ガスの反応当量以上となったときに、部分改質器への空気供給を停止し、アノード排ガスを二酸化炭素改質器に供給することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の燃料電池システムは、空気の前記部分改質器への供給と供給停止とを切り替えるための原料ガス切替手段と、前記燃料電池からのアノード排ガスの該二酸化炭素改質器の供給と供給停止とを切り替えるための排ガス切替手段とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料電池システムにあっては、起動時に原料ガスを部分改質器によって改質して水素含有ガスを製造し、この水素含有ガスを燃料電池に供給し、燃料電池を昇温させる。燃料電池が所定温度以上になったならば、燃料電池のアノード排ガスを二酸化炭素改質器に供給し、原料ガスを二酸化炭素改質して燃料電池に供給する。これにより、起動時間を著しく短縮することができる。
【0014】
本発明においては、燃料電池システムが起動した後は、燃料電池のアノード排ガスに含まれる二酸化炭素を利用して、炭化水素系の原料ガスを二酸化炭素改質して水素含有ガスを生成させ、この水素含有ガスを燃料電池に供給して発電を行うようにしているので、水蒸気改質の場合のような種々の補機が不要であり、構成が簡易で、効率のよい燃料電池システムを構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る燃料電池システムのブロック図である。
図2】実施の形態に係る燃料電池システムのブロック図である。
図3】実施の形態に係る燃料電池システムの作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜3を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る燃料電池システムの概略的なブロック図であり、(a)図は起動時、(b)図は定常運転時を示している。
【0017】
この燃料電池システムは、原料ガスを部分改質するための部分改質器1と、該部分改質器1からのガスが導入可能な二酸化炭素改質器2と、二酸化炭素改質器2からの水素含有ガスが導入可能な燃料電池(この実施の形態では固体酸化物型燃料電池SOFC)3と、燃料電池3のアノード(燃料極)側からの二酸化炭素含有排ガスを冷却して気水分離し、ドライガスとするための気水分離器6と、該ドライガスと、燃料電池3のカソード(空気極)側の排出ガスとが導入される燃焼部4と、該燃焼部4からの燃焼排ガスによって空気を加温するための熱交換器5とを備えており、該熱交換器5で加温された空気が燃料電池3のカソードへ供給可能とされている。
【0018】
図2は燃料電池システムの詳細図であり、燃料電池システムは上記の通り部分改質器1、二酸化炭素改質器2、燃料電池3、燃焼部4、熱交換器5及び気水分離器6を備えている。これらのうち二酸化炭素改質器2、燃料電池3、燃焼部4及び熱交換器5は断熱性を有したケース7内に設置され、燃料電池3及び燃焼部4の熱が二酸化炭素改質器2に伝わるように構成されている。
【0019】
原料ガスライン8は部分改質器1に接続されている。
【0020】
空気供給ライン9は、ライン10,11に分岐しており、ライン10はバルブVを介して部分改質器1に接続され、ライン11はバルブVを介して熱交換器5に接続されている。熱交換器5で加温された空気は、ライン12を介して燃料電池3の空気極(カソード)に導入される。
【0021】
気水分離器6からのドライガスライン13は、ライン14,15に分岐されている。ライン14はバルブVを経て二酸化炭素改質器2に接続され、ライン15はバルブVを経て燃焼部4に接続されている。
【0022】
部分改質器1、二酸化炭素改質器2、燃料電池3にそれぞれ設けられた温度センサT,T,Tの検出温度信号が制御器20に入力される。また、ドライガスライン13に、CO濃度センサ16、流量計17及び温度センサTが設置されており、その検出信号が制御器20に入力される。制御器20には操作盤21から起動信号又は停止信号が与えられる。制御器20は、これらの信号に基づいてバルブV〜Vに制御信号を出力する。
【0023】
図3はこの燃料電池システムの作動を示すフローチャートである。この燃料電池システムを起動させるべく、操作盤21の起動スイッチをONとすると、バルブV,V,Vが開、バルブVが閉とされ、図1(a)の通り、ライン8,10を介して原料ガスと空気が部分改質器1に供給され、部分改質反応により水素含有ガスが生成する。原料ガスがメタンである場合、この部分改質反応は次の通りである。
CH+1/2O → CO+2H
【0024】
この水素含有ガスが二酸化炭素改質器2を通過して燃料電池3に供給される。この場合、バルブVは閉であり、二酸化炭素改質器2に燃料電池3からのアノード排ガスは供給されず、部分改質器1からの水素含有ガスはそのまま(即ち、二酸化炭素改質器2を素通り状に通過して)燃料電池3の燃料極(アノード)に供給される。この起動時には燃料電池3は発電出力を出力させず、燃料電池3はこの部分改質ガスの熱によって加熱される。燃料電池3のアノード排ガスは、気水分離器6からライン13,15を経て燃焼部4に供給される。そして、熱交換器5及び燃料電池3のカソードを経て燃焼部4に供給された空気によってアノード排ガスが燃焼し、CO,HがCO,HOとなる。燃焼部4からの燃焼排ガスは熱交換器5にて空気を加温した後、排ガスとして燃料電池システム外に排出される。
【0025】
この起動運転を継続すると、燃料電池3が次第に昇温し、また二酸化炭素改質器2も次第に昇温する。燃料電池3の温度Tが所定温度(例えば600〜800℃の間から選定された温度)にまで昇温したならば(そして、このときに、部分改質器1の温度Tが700〜800℃の間から設定される所定温度以上であるならば)、燃料電池3から発電電力を出力させる。その後、燃料電池3のアノード排ガスのCO濃度、流量及び温度から算出されるアノードからの単位時間当りのCO排出モル量が、燃料電池システムに供給される単位時間当りのメタン供給モル量以上となったならば、バルブVを閉とし、図1(b)のように、部分改質器1への空気供給を停止する。これにより、原料ガスは部分改質器1を素通りして二酸化炭素改質器2に供給される。これと共に、バルブVを開とし、アノード排ガスの一部を二酸化炭素改質器2に供給し、原料ガスの二酸化炭素改質を行う。この二酸化炭素改質反応は次の通りである。
CH+CO → 2CO+2H
【0026】
この二酸化炭素改質反応ではメタンと二酸化炭素とは等モルで反応するため、アノード排ガスの二酸化炭素改質器への供給量は、二酸化炭素改質器2に導入されるメタンと等モル以上のCOが二酸化炭素改質器2に導入されるように設定する。
【0027】
原料ガスをこの二酸化炭素改質器2で反応させて製造した水素含有ガスを燃料電池3に供給して燃料電池3の運転を続行し、定常運転とする。
【0028】
停止スイッチが操作されたならば、原料ガスの供給を停止し、機器の降温後、空気供給を停止すると共に、冷却ファン等の動作を停止させる。
【0029】
このように、この実施の形態によると、起動時に部分改質器1によって水素含有ガスを生成させて燃料電池3を速やかに起動させるので、起動時間を短くすることができる。また、水蒸気改質設備のような水ポンプ、イオン交換樹脂、気化器等の補機が不要であり、システムが簡易であり、メンテナンスも容易である。さらに、定常運転時には原料ガスに二酸化炭素を使用するので、排ガス温度を高く設定できるため、排熱を有効に利用することが可能である。
【0030】
上記実施の形態では、固体酸化物型燃料電池を用いた燃料電池システムを例にとって説明したが、本発明は、種々のタイプの燃料電池、例えば、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)などを用いる燃料電池システムなどに適用することが可能である。また、原料ガスはメタン以外の炭化水素ガスであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 部分改質器
2 二酸化炭素改質器
3 燃料電池
4 燃焼部
5 熱交換器
6 気水分離器
16 COセンサ
20 制御器
21 制御盤
図1
図2
図3