(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、蓄電装置では、繰り返し充電時の放電容量の維持率の向上を図ることが望まれている。複数の蓄電装置で構成される蓄電モジュールにおいても、放電容量の維持率の低下を抑制し、寿命を向上することが求められている。
【0005】
本発明は、放電容量の維持率の低下を抑制できる蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電装置が接続された蓄電モジュールであって、複数の蓄電装置は、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置と、を備え、第1及び第2の蓄電装置は、ケースと、ケースに収容され、正極、負極、及び正極と負極との間に配置されたセパレータを有する電極組立体と、をそれぞれ備え、第1の蓄電装置は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少し、第2の蓄電装置は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する。充放電を繰り返す前の初期状態とは、初期充電後の状態を示している。
【0007】
この蓄電モジュールでは、第1の蓄電装置は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少し、第2の蓄電装置は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する。したがって、蓄電モジュールでは、充放電を繰り返した場合でも、放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、第1の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPaよりも低く、第2の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPa以上であることが好ましい。蓄電装置のケース内の圧力は、ケース内のガスの含有量に依存する。ガスは、負極とセパレータとの間で発生し、負極とセパレータとの間に存在すると、その部分において電池反応を生じ難くし得る。これにより、蓄電装置では、負極とセパレータとの間にガスが存在すると、放電容量が小さくなる。また、ガスは、蓄電装置において充放電が繰り返されることにより、負極とセパレータとの間から抜けていく。したがって、蓄電装置では、初期状態でのガスの含有量を多くする、すなわちケース内の圧力を0.15MPa以上とすると、充放電を繰り返すことにより、放電容量が増大する。そのため、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する第2の蓄電装置が実現できる。また、蓄電装置は、充放電を繰り返すことにより、放電容量が減少する。そのため、ケース内の圧力を0.15MPaよりも少なくすると、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少する第1の蓄電装置を実現できる。
【0009】
一実施形態においては、第1の蓄電装置は、初期状態での放電容量が第2の蓄電装置よりも大きいことが好ましい。第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とを同じ構成とした場合には、第1の蓄電装置は、第2の蓄電装置よりも初期容量が大きくなる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電装置が接続された蓄電モジュールであって、複数の蓄電装置は、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置と、を備え、第1及び第2の蓄電装置は、ケースと、ケースに収容され、正極、負極、及び正極と負極との間に配置されたセパレータを有する電極組立体と、をそれぞれ備え、第1の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPaよりも低く、第2の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPa以上である。
【0011】
この蓄電モジュールでは、第1の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPaよりも低く、第2の蓄電装置のケース内の圧力は、0.15MPa以上である。蓄電装置のケース内の圧力は、ケース内のガスの含有量に依存する。ガスは、負極とセパレータとの間で発生し、負極とセパレータとの間に存在すると、その部分において電池反応を生じ難くし得る。これにより、蓄電装置では、負極とセパレータとの間にガスが存在すると、放電容量が低くなる。また、ガスは、蓄電装置において充放電が繰り返されることにより、負極とセパレータとの間から抜けていく。したがって、第2の蓄電装置では、初期状態でのガスの含有量を多くする、すなわちケース内の圧力を0.15MPa以上とすると、充放電を繰り返すことにより、放電容量が増大する。そのため、第2の蓄電装置では、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する。一方、第1の蓄電装置では、ケース内の圧力が0.15MPaよりも少ないため、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少する。その結果、蓄電モジュールでは、充放電を繰り返した場合でも、放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とは、並列に接続されていることが好ましい。第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とを並列に接続することにより、充放電後の放電容量の維持率の低下を良好に抑制できる。
【0013】
一実施形態においては、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とは、直列に接続されていてもよい。第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とを直列に接続した場合であっても、充放電後の放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法は、ケースと、ケースに収容され、正極、負極、及び正極と負極との間に配置されたセパレータを有する電極組立体と、をそれぞれ備えた第1及び第2の蓄電装置が接続された蓄電モジュールの製造方法であって、ケース内にガスが発生する工程の後にケース内のガス抜きを行った第1の蓄電装置を準備し、ケース内にガスが発生する工程の後にケース内のガス抜きを行わない第2の蓄電装置を準備し、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とを接続する。
【0015】
この蓄電モジュールの製造方法では、ケース内にガスが発生する工程の後にケース内のガス抜きを行った第1の蓄電装置を準備し、ケース内にガスが発生する工程の後にケース内のガス抜きを行わない第2の蓄電装置を準備し、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置とを接続する。ガスは、負極とセパレータとの間で発生し、負極とセパレータとの間に存在すると、その部分において電池反応を生じ難くし得る。これにより、蓄電装置では、負極とセパレータとの間にガスが存在すると、放電容量が低くなる。また、ガスは、蓄電装置において充放電が繰り返されることにより、負極とセパレータとの間から抜けていく。そのため、ガス抜きを行わない第2の蓄電装置では、充放電を繰り返すことにより放電容量が増大するため、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する。一方、第1の蓄電装置では、ガス抜きを行うためケース内にガスの含有が少なく、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少する。その結果、蓄電モジュールの製造方法では、充放電を繰り返した場合でも、放電容量の維持率の低下を抑制できる蓄電モジュールが得られる。
【0016】
一実施形態においては、ケース内にガスが発生する工程は、蓄電装置に初期充電を行う工程、及び、蓄電装置にエージングを行う工程の少なくともいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを示す図である。
図2は、蓄電装置を示す斜視図である。
図3は、蓄電装置の断面構成を示す図である。
【0021】
図1に示すように、蓄電モジュール1は、複数の二次電池3を備えている。蓄電モジュール1は、ケース2内に二次電池3が収容されている。ケース2は、金属製、樹脂製、その他の材料製であってよい。複数の二次電池3は、例えば、正極端子PE同士、また、負極端子NE同士が端子接続部材(バスバー等、図示しない)で接続され、並列に接続されている。
【0022】
二次電池3について説明する。
図2は、二次電池の分解斜視図である。
図3は、二次電池の断面構成を示す図である。
図2及び
図3に示される蓄電装置としての二次電池3は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解二次電池である。
図2及び
図3に示すように、二次電池3は、ケースCと、ケースCに収容された電極組立体5と、短絡部7と、を備える。
図2では、電極組立体5と短絡部7とが一体化され、その周囲に絶縁シート8が設けられている(
図3では、絶縁シート8の図示を省略している)。ケースCは、電極組立体5を収容する空間を画成しており、例えばアルミニウム等の金属からなる。
【0023】
図3に示すように、電極組立体5は、正極10と、負極12と、正極10と負極12との間に配置されたセパレータ14と、を備える。本実施形態では、電極組立体5は、最外部に負極12が配置されている。正極10及び負極12は、例えばシート状である。セパレータ14は、例えば袋状であるが、シート状であってもよい。袋状のセパレータ14内には、例えば正極10が収容される。複数の正極10及び複数の負極12が、セパレータ14を介して交互に積層されてもよい。ケースC内には電解液Eが充填されている。電解液Eとしては、例えば有機溶媒系又は非水系の電解液等が挙げられる。
【0024】
正極10は、正極金属箔16と、正極金属箔16の両面に設けられた正極活物質層18と、を備える。正極金属箔16は、例えばアルミニウム箔である。正極金属箔16の厚みは、特に限定されないが、例えば5〜25μmとすることができる。また、正極活物質層18の厚みは、特に限定されないが、例えば40〜100μmとすることができる。
【0025】
正極活物質層18は、正極活物質とバインダとを含んでもよく、必要に応じて導電助剤を含むことができる。正極活物質は、リチウム二次電池用の正極活物質であれば特に限定されない。正極活物質は、例えばリチウム化合物である。リチウム化合物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのリチウム金属複合酸化物などを用いることができる。
【0026】
また、正極活物質としては、他の金属化合物、あるいは高分子材料を用いることもできる。他の金属化合物としては、例えば酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、又は、硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物が挙げられる。高分子材料としては、例えばポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子が挙げられる。
【0027】
特に、正極活物質は、一般式:LiCo
pNiqMn
rO
2(p+q+r=1、0<p≦1、0≦q<1、0≦r<1)で表されるリチウム金属複合酸化物を含むことが好ましい。上記複合金属酸化物として、例えばLiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2、LiNi
0.5CO
0.2Mn
0.3O
2、LiCoO
2、LiNi
0.8Co
0.2O
2、LiCoMnO
2を用いることができる。中でも、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2は、熱安定性の点で好ましい。
【0028】
また、正極活物質は、一般式:LiCo
pNiqMn
rD
sO
2(p+q+r=1、0<p≦1、0≦q<1、0≦r<1、0<s<1)で表されるリチウム金属複合酸化物を含むことも好ましい。Dは、Al,Mg,Ti,Sn,Zn,W,Zr,Mo,Fe,Naから成る群から選択される少なくとも1つの元素である。
【0029】
バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリノレ基含有樹脂等である。バインダの量は、活物質100質量部に対して、1〜30質量部とすることができる。
【0030】
導電助剤は、例えばカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等の炭素系粒子である。これらは、単独で、又は二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定されないが、例えば、100質量部の活物質に対して、1〜30質量部とすることができる。
【0031】
図2に示すように、正極10は、縁に形成されたタブ20を有している。タブ20には、正極活物質が担持されていない。
図2では、タブ20は、各正極10の複数のタブ20が集約されて折り曲げられている。正極10は、タブ20を介して導電部材22に接続されている。タブ20と導電部材22とは、例えば超音波溶接により接合されている。導電部材22は、正極端子PEに接続される。正極端子PEは、絶縁リングを介してケースCに取り付けられている。
【0032】
負極12は、負極金属箔30と、負極金属箔30の両面に設けられた負極活物質層32と、を備える。負極金属箔30は、例えば銅箔である。負極金属箔30の厚みは、特に限定されないが、例えば5〜25μmとすることができる。また、負極活物質層32の厚みは、特に限定されないが、例えば40〜100μmとすることができる。
【0033】
負極活物質層32は、負極活物質と上記バインダとを含んでもよく、必要に応じて上記の導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物、あるいは高分子材料である。
【0034】
炭素系材料は、例えば難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類である。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
【0035】
リチウムと合金化可能な元素は、例えば、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、1n、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biである。中でも、リチウムと合金化可能な元素は、珪素(Si)又は錫(Sn)であるとよい。
【0036】
リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物は、例えばZnLiAl、AlSb、SiB
4、SiB
6、Mg
2Si、Mg
2Sn、Ni
2Si、TiSi
2、MoSi
2、CoSi
2、NiSi
2、CaSi
2、CrSi
2、Cu
5Si、FeSi
2、MnSi
2、NbSi
2、TaSi
2、VSi
2、WSi
2、ZnSi
2、SiC、Si
3N
4、Si
2N
2O、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0<w≦2)、SnSiO
3、LiSiOあるいはLiSnOである。リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物の例は、珪素化合物又は錫化合物であることがよい。珪素化合物は、SiOx(0.5≦x≦1.5)であることがよい。錫化合物は、例えば、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)などが使用できる。高分子材料は、例えばポリアセチレン、ポリピロールである。
【0037】
図2に示すように、負極12は、縁に形成されたタブ34を有している。タブ34には、負極活物質が担持されていない。
図2では、タブ34は、各負極12の複数のタブ34が集約されて折り曲げられている。負極12は、タブ34を介して導電部材36に接続されている。タブ34と導電部材36とは、例えば超音波溶接により接合されている。導電部材36は、負極端子NEに接続される。負極端子NEは、絶縁リングを介してケースCに取り付けられている。
【0038】
セパレータ14としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ14の厚みは、例えば10〜50μmとすることができる。
【0039】
図3に示すように、短絡部7は、電極組立体5の正極10、負極12及びセパレータ14の配置方向において、電極組立体5の外側で且つケースCとの間に、電極組立体5を両側から挟んで一対配置されている。短絡部7は、正極金属箔40と、負極金属箔42と、絶縁層44と、を有している。短絡部7では、正極金属箔40、絶縁層44及び負極金属箔42がこの順に積層されている。
【0040】
正極金属箔40は、例えばアルミニウム箔であり、タブ41(
図2参照)を有している。タブ41は、電極組立体5のタブ20と共に集約され、導電部材22に接合されている。正極金属箔40は、タブ41及び導電部材22を介して正極端子PEに接続されている。
【0041】
負極金属箔42は、例えば銅箔であり、タブ43(
図2参照)を有している。タブ43は、電極組立体5のタブ34と共に集約され、導電部材36に接合されている。負極金属箔42は、タブ43及び導電部材36を介して負極端子NEに接続されている。
【0042】
短絡部7は、釘刺しや圧壊など外部から力が加えられたときに、電極組立体5に先んじて短絡部4の正極金属箔40と負極金属箔42とが短絡することにより、二次電池3の安全性を確保している。
【0043】
続いて、蓄電モジュール1の製造方法について説明する。蓄電モジュール1は、特性の異なる第1及び第2の二次電池(第1の蓄電装置、第2の蓄電装置)3により構成されている。蓄電モジュール1は、第1及び第2の二次電池3がそれぞれ同じ個数設けられている。蓄電モジュール1の製造方法では、第1及び第2の二次電池3を準備する。
【0044】
第1の二次電池3は、充放電を繰り返した後の放電容量が初期状態の放電容量よりも減少する。ここで、初期状態とは、第1の二次電池3において充放電が繰り返される前の状態を示す。初期状態は、例えば、二次電池3に初期充電が実施された後の状態である(0サイクルの状態)。
【0045】
第1の二次電池3は、ケースC内の圧力が0.15MPaよりも低く設定されている。この第1の二次電池3の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず上記の構成を有する二次電池を作製する(ステップS01)。続いて、二次電池に電解液を注液する(ステップS02)。電解液は、ケースCに設けられた注入口(図示しない)から注入する。
【0046】
次に、二次電池に初期充電を行う(ステップS03)。初期充電は、例えば、電流:1.0[CA]程度、電圧:4.0[V]程度、時間:4[h]、温度:25[℃]の条件で実施する。続いて、二次電池のエージングを行う(ステップS04)。エージングは、温度:40[℃]以上、時間:20[h]の条件で実施する。初期充電及びエージングは、蓄電モジュール1を製造する工程において、二次電池3のケースC内にガス(例えば、メタンガス、一酸化炭素ガス、水素ガス等)が発生する工程である。ガスの発生量は、エージングの時間等に依存する。
【0047】
最後に、ケースCの注入口に設けられたキャップ(図示しない)を外し、ケースC内のガスを抜く(ステップS05)。これにより、第1の二次電池3は、ケースC内のガスの圧力が0.15MPaよりも低くなる。なお、ガスを抜く工程は、ケースC内のガスの圧力が0.15MPaよりも低くなればよく、エージングにおいて発生するガスの量によっては、初期充電の後に実施されてもよい。
【0048】
第2の二次電池3は、充放電を繰り返した後の放電容量が初期状態の放電容量よりも増大する。第2の二次電池3は、ケースC内の圧力が0.15MPa以上に設定されている。第2の二次電池3は、第1の二次電池3の製造方法において、ガス抜きの工程(ステップS05)を実施しないことにより製造される。これにより、第2の二次電池3は、ケースC内のガスの圧力が0.15MPa以上(例えば、0.20MPa程度)に設定される。圧力は、例えば内圧計により測定される。
【0049】
なお、第2の二次電池3のケースC内のガスの圧力を0.15MPa以上とする方法としては、初期充電の後にガス抜きを実施し、エージングの後にガス抜きを実施しないようにしてもよい。また、第2の二次電池3のケースC内の圧力は、0.15MPa以上であると共に、例えば0.30MPa以下であることが好ましい。第2の二次電池3のケースC内の圧力の上限は、二次電池3の構成により適宜設定されればよいが、例えば破裂を防止し得る程度に設定される。
【0050】
図5に示すように、ケースC内のガスGは、充電時などに負極12の表面で発生する。ガスGは、負極12とセパレータ14と間に存在する。このとき、第2の二次電池3では、正極10から負極12へのイオンの移動がガスGにより阻害されて電池反応が生じないため、その分容量が小さくなる。これにより、第2の二次電池3では、第1の二次電池3に比べて、初期容量が小さくなる。ガスGは、第2の二次電池3の充電時には負極12とセパレータ14とが膨張し、第2の二次電池3の放電時にはその間隔が元に戻るため、充放電を繰り返すことにより、負極12とセパレータ14との間から徐々に抜けていく。そのため、第2の二次電池3は、充放電を繰り返した後の放電容量が初期状態の放電容量に比べて増大する。
【0051】
蓄電モジュール1は、第1の二次電池3及び第2の二次電池3を準備してケース2内に配置し、第1の二次電池3と第2の二次電池3とを並列に接続して製造する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の蓄電モジュール1は、第1の二次電池3と第2の二次電池3とを備えている。第1の二次電池3は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少し、第2の二次電池3は、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する。したがって、蓄電モジュール1では、充放電を繰り返した場合でも、蓄電モジュール1における放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【0053】
本実施形態の蓄電モジュール1では、第1の二次電池3は、ケースC内の圧力が0.15MPaよりも低く、第2の二次電池3は、ケースC内の圧力が0.15MPa以上である。二次電池3のケースC内の圧力は、ケースC内のガスの含有量に依存する。ガスは、負極12とセパレータ14との間で発生し、負極12とセパレータ14との間に存在すると、その部分において電池反応を生じ難くし得る。これにより、二次電池3では、負極12とセパレータ14との間にガスが存在すると、放電容量が低くなる。また、ガスは、二次電池3において充放電が繰り返されることにより、負極12とセパレータ14との間から抜けていく。
【0054】
したがって、第2の二次電池3では、初期状態でのガスの含有量を多くする、すなわちケースC内の圧力を0.15MPa以上とすると、初期容量は小さくなるものの、充放電を繰り返すことにより放電容量が増大する。そのため、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも増大する第2の二次電池3が実現できる。一方で、ケースC内の圧力を0.15MPaよりも少なくすると、充放電を繰り返した後の放電容量が充放電を繰り返す前の初期状態の放電容量よりも減少する第1の二次電池3を実現できる。
【0055】
図6は、充放電のサイクル数と放電容量の維持率との関係を示すグラフである。
図6では、横軸は充放電のサイクル数[回]、縦軸は各セルの容量[mAh]、及び、モジュール容量維持率[%]を示している。
図6では、第1の二次電池3を「A」、「B」で示し、第2の二次電池3を「C」、「D」で示している。また、
図6では、A〜Dについては図示左側の縦軸の目盛(各セルの容量)で示し、全体については図示右側の縦軸の目盛(モジュール容量維持率)で示している。
【0056】
図6に示すように、第1の二次電池3(A,B)は、充放電のサイクル数の増加により、放電容量の維持率が初期状態よりも低下する。第2の二次電池3(C,D)は、充放電のサイクル数の増加により、放電容量の維持率が初期状態よりも増大する。蓄電モジュール1では、特性の異なる第1の二次電池3と第2の二次電池3とを備えることにより、充放電を繰り返した場合であっても、蓄電モジュール1における放電容量の維持率の低下を抑制できる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1の二次電池3と第2の二次電池3とを並列に接続しているが、第1の二次電池3と第2の二次電池3とは直列に接続されてもよい。
【0058】
上記実施形態では、蓄電モジュール1において第1の二次電池3と第2の二次電池3とを同じ数設けているが、蓄電モジュール1を構成する第1及び第2の二次電池3の個数は異なっていてもよい。第1及び第2の二次電池3の個数は、設計(所望する放電容量)に応じて適宜設定されればよい。
【0059】
また、積層型の電極組立体5に代えて巻回型の電極組立体が用いられてもよい。巻回型の電極組立体は、帯状の正極10、負極12及びセパレータ14を軸線の周りに巻回することによって作製される。