(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、機関分離係合装置、回転電機、及び変速装置が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記変速装置は、少なくとも第一係合装置及び一方向係合装置の係合で形成される一方向変速段と、前記一方向変速段より変速比が低い変速段であって少なくとも前記第一係合装置及び第二係合装置の係合で形成される低変速段とを有し、
前記内燃機関の始動要求があった場合に、前記内燃機関の始動制御を行う始動制御部と、
前記低変速段が形成されている状態で前記始動制御を行う際に、前記第一係合装置又は前記第二係合装置を滑り係合状態に制御して、前記回転電機の回転速度を、前記第一係合装置又は前記第二係合装置が直結係合状態である場合の前記回転電機の回転速度より所定のオフセット速度だけ増加させる変速滑り制御を行う変速滑り制御部と、
前記変速滑り制御において、前記第二係合装置を滑り係合状態に制御して、前記回転電機の回転速度を所定のオフセット速度だけ増加させた場合に、前記一方向係合装置の係合部材間の回転速度差が予め定めた判定速度差未満である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定し、前記一方向係合装置の係合部材間の回転速度差が前記判定速度差以上である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定する一方向係合判定部と、を備え、
前記変速滑り制御部は、前記一方向係合判定部により可能性が低いと判定された場合は、前記第二係合装置を滑り係合状態に制御し、前記一方向係合判定部により可能性が高いと判定された場合は、前記第一係合装置を滑り係合状態に制御する車両用駆動装置の制御装置。
前記一方向係合判定部は、前記変速滑り制御において前記第二係合装置を滑り係合状態に制御した場合に前記一方向係合装置が係合する前記回転電機の回転速度から、前記回転電機の実際の回転速度に前記オフセット速度を加算した回転速度を、減算した回転速度差が、当該回転速度差に対応して予め定めた前記判定速度差以上である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定し、前記回転速度差が、前記判定速度差未満である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定する請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記一方向係合判定部は、前記車輪の回転加速度である車輪加速度が大きくなるに従って前記判定速度差を小さく設定し、前記車輪加速度が小さくなるに従って前記判定速度差を大きく設定する請求項1又は2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記変速滑り制御部は、前記回転電機の実際の回転速度が、前記第一係合装置又は前記第二係合装置が直結係合状態である場合の前記回転電機の回転速度より所定のオフセット速度だけ高く設定した目標回転速度に近づくように前記回転電機の出力トルクを制御する回転速度制御を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部を更に備え、
前記変速滑り制御部は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加された後、滑り係合状態に制御している前記第一係合装置又は前記第二係合装置を直結係合状態に移行させて、前記変速滑り制御を終了する請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、
前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、
前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第一係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記一方向変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定する時期判定部と、
前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より前であると判定された場合は、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させた後、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させ、その後前記第一係合装置を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行し、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より後であると判定された場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させ、その後前記第一係合装置を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備える請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、
前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、
前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第二係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記一方向変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
前記変速装置は、前記一方向変速段より変速比が低く前記低変速段より変速比が高い変速段であって、少なくとも前記第一係合装置及び第三係合装置の係合で形成される中間変速段を更に有し、
前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、
前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、
前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第二係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記中間変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定する時期判定部と、
前記変速滑り制御において、前記第二係合装置に替えて前記第三係合装置を滑り係合状態に制御し、前記回転電機の回転速度を、前記第三係合装置が直結係合状態である場合の回転速度より前記オフセット速度だけ増加させる場合に、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いか低いかを判定する変速係合判定部と、
前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より前であると判定され、且つ、前記変速係合判定部により可能性が低いと判定された場合は、前記第二係合装置に替えて前記第三係合装置を滑り係合状態に制御し、前記回転電機の回転速度を、前記第三係合装置が直結係合状態である場合の回転速度より前記オフセット速度だけ増加させた後、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させ、その後前記第三係合装置を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行し、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より後であると判定された、又は、前記変速係合判定部により可能性が高いと判定された場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放し前記第三係合装置を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備える請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、変速装置が、一方向係合装置の係合により形成される変速段である一方向変速段を有する場合は、一方向変速段以外の変速段が形成されている状態で始動制御を行うときに、当該変速段を形成している係合装置を滑り係合状態に制御し、回転電機の回転速度を上昇させると、一方向係合装置が係合する場合がある。一方向係合装置が係合すると、一方向変速段が形成され、始動制御に伴い駆動力源側で生じたトルク変動が一方向変速段を介して車輪側に伝達され、運転者に違和感を与える恐れがある。また、一方向係合装置が係合すると、一方向変速段が形成され変速比が変化するため、車輪に伝達されるトルクが変動する恐れがある。
【0005】
また、変速段を形成している係合装置を滑り係合状態に制御している間に、変速段を変更する要求があった場合に、変速段の変更をできるだけ容易に行えるように、変速段を形成している複数の係合装置の内、変更される可能性の高い変速段を形成する複数の係合装置と非共通の係合装置を、できるだけ滑り係合状態に制御することが望ましい。
【0006】
そこで、一方向変速段以外の変速段が形成されている状態で始動制御を行うときに、当該変速段を形成している係合装置を滑り係合状態に制御し、回転電機の回転速度を上昇させても、一方向係合装置が係合することを抑制できると共に、変速段を変更する要求があった場合に、変速段の変更をできるだけ容易に行える制御装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、機関分離係合装置、回転電機、及び変速装置が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、前記変速装置は、少なくとも第一係合装置及び一方向係合装置の係合で形成される一方向変速段と、前記一方向変速段より変速比が低い変速段であって少なくとも前記第一係合装置及び第二係合装置の係合で形成される低変速段とを有し、前記内燃機関の始動要求があった場合に、前記内燃機関の始動制御を行う始動制御部と、前記低変速段が形成されている状態で前記始動制御を行う際に、前記第一係合装置又は前記第二係合装置を滑り係合状態に制御して、前記回転電機の回転速度を、前記第一係合装置又は前記第二係合装置が直結係合状態である場合の前記回転電機の回転速度より所定のオフセット速度だけ増加させる変速滑り制御を行う変速滑り制御部と、前記変速滑り制御において、前記第二係合装置を滑り係合状態に制御して、前記回転電機の回転速度を所定のオフセット速度だけ増加させた場合に、前記一方向係合装置の係合部材間の回転速度差が予め定めた判定速度差未満である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定し、前記一方向係合装置の係合部材間の回転速度差が前記判定速度差以上である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定する一方向係合判定部と、を備え、前記変速滑り制御部は、前記一方向係合判定部により可能性が低いと判定された場合は、前記第二係合装置を滑り係合状態に制御し、前記一方向係合判定部により可能性が高いと判定された場合は、前記第一係合装置を滑り係合状態に制御する点にある。
【0008】
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
【0009】
上記の特徴構成によれば、一方向変速段と低変速段とで共通の係合装置は、第一係合装置であり、非共通の係合装置は、一方向係合装置及び第二係合装置である。
変速滑り制御において、非共通の係合装置である第二係合装置を滑り係合状態に制御すると、共通の係合装置である第一係合装置が直結係合状態に維持されるので、変速滑り制御中に変速段を一方向変速段などに変更する場合は、滑り係合状態に制御されている非共通の係合装置である第二係合装置をそのまま解放し、直結係合状態に維持されている共通の係合装置である第一係合装置を直結係合状態のままに維持できるため、変速段の変更を容易に行える。ただし、回転電機の回転速度を上昇させた場合に、条件によっては、同じく非共通の係合装置である一方向係合装置が係合して一方向変速段が形成される場合が生じる。一方向変速段が形成されると、始動制御に伴い駆動力源側で生じたトルク変動が一方向変速段を介して車輪側に伝達され、運転者に違和感を与える恐れがある。また、一方向変速段が形成されると、変速装置の変速比が変化するため、車輪に伝達されるトルクが変動する恐れがある。
【0010】
一方、変速滑り制御において、共通の係合装置である第一係合装置を滑り係合状態に制御すると、非共通の係合装置である第二係合装置が直結係合状態に維持されるので、回転電機の回転速度を上昇させた場合に、同じく非共通の係合装置である一方向係合装置が係合して一方向変速段が形成される場合は生じ難い。ただし、変速滑り制御中に変速段を一方向変速段などに変更する場合は、直結係合状態に維持されている非共通の係合装置である第二係合装置を解放させ、滑り係合状態に制御されている共通の係合装置である第一係合装置を直結係合状態にする必要あるため、変速段の変更が複雑化する。
【0011】
そこで、上記の特徴構成によれば、一方向係合判定部が、非共通の係合装置である第二係合装置を滑り係合状態に制御して、回転電機の回転速度を所定のオフセット速度だけ増加させた場合に、同じく非共通の係合装置である一方向係合装置が係合する可能性が高いか低いかを判定するように構成されている。そして、変速滑り制御部が、一方向係合判定部により可能性が低いと判定された場合は、非共通の係合装置である第二係合装置を滑り係合状態に制御し、一方向係合判定部により可能性が高いと判定された場合は、共通の係合装置である第一係合装置を滑り係合状態に制御するように構成されている。よって、一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定された場合に、共通の係合装置である第一係合装置を滑り係合状態に制御するため、一方向係合装置が係合して一方向変速段が形成されることを効果的に抑制できる。一方、一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定された場合は、非共通の係合装置である第二係合装置を滑り係合状態に制御するため、変速滑り制御中においても変速段の変更を容易に行うことができる。
【0012】
ここで、前記一方向係合判定部は、前記変速滑り制御において前記第二係合装置を滑り係合状態に制御した場合に前記一方向係合装置が係合する前記回転電機の回転速度から、前記回転電機の実際の回転速度に前記オフセット速度を加算した回転速度を、減算した回転速度差が、判定速度差以上である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定し、前記回転速度差が、前記判定速度差未満である場合は、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定すると好適である。
【0013】
第二係合装置を滑り係合状態に制御した場合に一方向係合装置が係合する回転電機の回転速度(係合回転速度と称す)と、オフセット速度だけ上昇させた回転電機の回転速度(上昇回転速度と称す)と、を比較し、上昇回転速度が、係合回転速度を上回る場合は、一方向係合装置が係合する。上記の構成によれば、この場合は、回転速度差が負の値になり判定速度差未満になるため、一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定することができる。
一方、上昇回転速度が、係合回転速度を下回る場合は、一方向係合装置は静的には係合しない。ただし、この場合でも、始動制御に伴うトルク変動により回転電機の回転速度が変動した場合に、一方向係合装置が係合する恐れがある。上記の構成によれば、回転速度差が正の値になり、判定速度差以上になった場合に、一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定するため、回転電機の回転速度の変動を反映させて精度良く判定することができる。
【0014】
ここで、前記一方向係合判定部は、前記車輪の回転加速度である車輪加速度が大きくなるに従って前記判定速度差を小さく設定し、前記車輪加速度が小さくなるに従って前記判定速度差を大きく設定すると好適である。
【0015】
車輪加速度が大きいと、変速滑り制御の実行中に、車速が増加するため、回転速度差が増加する。すなわち、変速滑り制御の開始時点では回転速度差が小さい場合であっても、変速滑り制御の実行中に回転速度差が増加する場合がある。上記の構成によれば、一方向係合判定部は、車輪加速度が大きい場合は、変速滑り制御の実行中に回転速度差が増加することを見越して、判定速度差を小さく設定することができる。すなわち、車輪加速度が大きくなるに従って、可能性が低いと判定されるようにできる。よって、非共通の係合装置である第二係合装置を滑り係合状態に制御する状況をできるだけ多くして、変速滑り制御中においても変速段の変更を容易に行える状況を多くできる。
【0016】
ここで、前記変速滑り制御部は、前記回転電機の実際の回転速度が、前記第一係合装置又は前記第二係合装置が直結係合状態である場合の前記回転電機の回転速度より所定のオフセット速度だけ高く設定した目標回転速度に近づくように前記回転電機の出力トルクを制御する回転速度制御を実行すると好適である。
【0017】
この構成によれば、回転速度制御により、精度良く、第一係合装置又は第二係合装置の回転速度差を制御し、滑り係合状態に維持できる。
【0018】
ここで、前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部を更に備え、前記変速滑り制御部は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加された後、滑り係合状態に制御している前記第一係合装置又は前記第二係合装置を直結係合状態に移行させて、前記変速滑り制御を終了すると好適である。
【0019】
内燃機関の燃焼が開始すると、内燃機関の回転速度が回転電機の回転速度を超えて上昇していく。このとき、上記の構成によれば、機関分離係合装置の伝達トルク容量が低下されているので、回転速度の高くなる内燃機関側から回転速度の低くなる回転電機側に、伝達トルク容量の大きさのスリップトルクが伝達されることを抑制できる。よって、スリップトルクにより、内燃機関の回転速度の上昇が妨げられることを抑制することができ、内燃機関の始動性を向上させることができる。
内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇すると、内燃機関に安定的にトルクを出力させることができる。上記の構成によれば、機機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるので、内燃機関の出力トルクを車輪側に伝達させることができる。
伝達トルク容量の再増加が終了すると、内燃機関の出力トルクを安定的に車輪側に伝達できる状態になり、始動制御に伴うトルク変動が生じる可能性は低下する。よって、上記の構成よれば、伝達トルク容量が再増加された後、滑り係合状態に制御している第一係合装置又は第二係合装置を直結係合状態に移行させて、適切に変速滑り制御を終了することができる。
【0020】
ここで、前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第一係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記一方向変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定する時期判定部と、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より前であると判定された場合は、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させた後、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させ、その後前記第一係合装置を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行し、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より後であると判定された場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させ、その後前記第一係合装置を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備えると好適である。
【0021】
機関分離係合装置の伝達トルク容量の再増加によりトルク変動が生じる。また、ダウンシフトにおける係合装置の係合又は解放によりトルク変動が生じる。
上記の構成によれば、ダウンシフト判定が再増加時期より前である場合は、直結係合状態に維持されている第二係合装置を解放して一方向係合装置を係合させ、低変速段から一方向変速段にダウンシフトを行った後、伝達トルク容量の再増加を行うことができる。一方、ダウンシフト判定が再増加時期より後である場合は、伝達トルク容量の再増加を行った後、第二係合装置を解放して一方向係合装置を係合させ、低変速段から一方向変速段にダウンシフトを行うことができる。
よって、伝達トルク容量の再増加によるトルク変動と、ダウンシフトによるトルク変動が、同時期に生じることを抑制できる。このため、変速滑り制御中にダウンシフトを行う場合でも、トルク変動により滑り係合状態に制御している第一係合装置が直結係合状態になることを抑制でき、始動制御に伴うトルク変動が車輪側に伝達されることを抑制できる。また、変速滑り制御中であっても、できるだけ早期にダウンシフトを実行することができ、運転性能を向上することができる。
そして、上記の構成によれば、ダウンシフト制御及び伝達トルク容量の再増加が実行された後、滑り係合状態に制御している第一係合装置を直結係合状態に移行させて、適切に変速滑り制御を終了することができる。
【0022】
ここで、前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第二係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記一方向変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放して前記一方向係合装置を係合させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備えると好適である。
【0023】
上記の構成によれば、伝達トルク容量の再増加を行った後、滑り係合状態に制御している第二係合装置を解放して一方向係合装置を係合させ、低変速段から一方向変速段にダウンシフトを行うことができる。
よって、伝達トルク容量の再増加によるトルク変動と、ダウンシフトによるトルク変動が、同時期に生じることを抑制できる。このため、変速滑り制御中にダウンシフトを行う場合でも、トルク変動により滑り係合状態に制御している第二係合装置が直結係合状態になることを抑制でき、始動制御に伴うトルク変動が車輪側に伝達されることを抑制できる。
また、上記の構成によれば、伝達トルク容量の再増加が実行された後、滑り係合状態に制御している第二係合装置を直結係合状態に移行させて、適切に変速滑り制御を終了することができる。
【0024】
ここで、前記変速装置は、前記一方向変速段より変速比が低く前記低変速段より変速比が高い変速段であって、少なくとも前記第一係合装置及び第三係合装置の係合で形成される中間変速段を更に有し、前記始動制御中に、前記内燃機関の燃焼が開始したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を低下させ、その後前記内燃機関の回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行う容量増減制御部と、前記変速装置に形成させる変速段を判定する変速段判定部と、前記始動制御中に、前記変速滑り制御部により前記第二係合装置が滑り係合状態に制御されており、前記変速段判定部により前記変速段を前記低変速段から前記中間変速段に変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定する時期判定部と、前記変速滑り制御において、前記第二係合装置に替えて前記第三係合装置を滑り係合状態に制御し、前記回転電機の回転速度を、前記第三係合装置が直結係合状態である場合の回転速度より前記オフセット速度だけ増加させる場合に、前記一方向係合装置が係合する可能性が高いか低いかを判定する変速係合判定部と、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より前であると判定され、且つ、前記変速係合判定部により可能性が低いと判定された場合は、前記第二係合装置に替えて前記第三係合装置を滑り係合状態に制御し、前記回転電機の回転速度を、前記第三係合装置が直結係合状態である場合の回転速度より前記オフセット速度だけ増加させた後、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させ、その後前記第三係合装置を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行し、前記時期判定部により前記ダウンシフト判定が前記再増加時期より後であると判定された、又は、前記変速係合判定部により可能性が高いと判定された場合は、前記容量増減制御部により前記機関分離係合装置の伝達トルク容量を再び増加させた後、前記第二係合装置を解放し前記第三係合装置を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するダウンシフト制御部と、を更に備えると好適である。
【0025】
変速滑り制御中に、低変速段から中間変速段にダウンシフトを行う場合は、中間変速段においても係合装置を滑り係合状態に制御することが望ましい。
上記の構成によれば、変速係合判定部が、中間変速段における非共通の係合装置である第三係合装置を滑り係合状態に制御し、回転電機の回転速度を増加させた場合に、一方向係合装置が係合する可能性が高いか低いかを判定する。そして、一方向係合装置が係合する可能性が低いと判定され、且つ、ダウンシフト判定が伝達トルク容量の再増加時期より前であると判定された場合は、第二係合装置に替えて第三係合装置を滑り係合状態に制御し、回転電機の回転速度を中間変速段に対応する回転速度まで増加させて、ダウンシフトを行った後、伝達トルク容量の再増加を行うことができる。
よって、変速滑り制御中に中間変速段にダウンシフトを行っても、一方向係合装置が係合されて一方向変速段が形成されることを抑制できると共に、変速段を形成する係合装置を滑り係合状態に維持できる。また、伝達トルク容量の再増加によるトルク変動と、ダウンシフトによるトルク変動が、同時期に生じることを抑制できる。
一方、上記の構成によれば、一方向係合装置が係合する可能性が高いと判定された、又はダウンシフト判定が伝達トルク容量の再増加時期より後であると判定された場合は、伝達トルク容量の再増加を行なった後、滑り係合状態に制御している第二係合装置を解放し第三係合装置を直結係合状態に移行させて、ダウンシフトを行うことができる。
よって、ダウンシフトにより一方向係合装置が係合されて一方向変速段が形成されることを抑制できると共に、伝達トルク容量の再増加が終了するまで、第二係合装置を滑り係合状態に維持できる。また、伝達トルク容量の再増加によるトルク変動と、ダウンシフトによるトルク変動が、同時期に生じることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る車両用駆動装置1の制御装置30(以下、単に制御装置30と称す)の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30の概略構成を示す模式図である。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、概略的には、内燃機関ENG及び回転電機MGを駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力を、動力伝達機構を介して車輪Wへ伝達する構成となっている。車両用駆動装置1には、内燃機関ENGと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路2に、内燃機関ENGの側から順に、機関分離クラッチSSC、回転電機MG、及び変速装置TMが設けられている。ここで、機関分離クラッチSSCは、その係合状態に応じて、内燃機関ENGと回転電機MGとの間を選択的に連結した状態又は分離した状態とする。なお、機関分離クラッチSSCが本発明における「機関分離係合装置」に相当する。
【0028】
ハイブリッド車両には、車両用駆動装置1を制御対象とする制御装置30が備えられている。本実施形態に係わる制御装置30は、回転電機MGの制御を行う回転電機制御ユニット32と、変速装置TM、及び機関分離クラッチSSCの制御を行う動力伝達制御ユニット33と、これらの制御装置を統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御ユニット34と、を有している。また、ハイブリッド車両には、内燃機関ENGの制御を行う内燃機関制御装置31も備えられている。
【0029】
制御装置30は、
図2に示すように、始動制御部45、変速滑り制御部46、及び一方向係合判定部47などの機能部を備えている。
始動制御部45は、内燃機関ENGの始動要求があった場合に、内燃機関ENGの回転速度を上昇させる内燃機関ENGの始動制御を行う。
【0030】
変速装置TMは、例えば、
図3に示すように、複数の係合装置OWC、C1、B1・・・を備えており、複数の係合装置OWC、C1、B1・・・の係合の状態に応じて形成される複数の変速段1st、2nd・・・を有している。
変速装置TMは、少なくとも第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEの係合で形成される一方向変速段GOWと、一方向変速段GOWより変速比が低い変速段であって少なくとも第一係合装置E1及び第二係合装置E2の係合で形成される低変速段GLとを有している。本実施形態では、後述する
図4の作動表及び
図7の速度線図などに示すように、一方向係合装置OWEに該当する係合装置はワンウェイブレーキOWCであり、第一係合装置E1に該当する係合装置は第一クラッチC1であり、一方向変速段GOWに該当する変速段は第一段1stである。また、低変速段GLに該当する変速段は、第一段1stより変速比が低い変速段であって少なくとも第一係合装置E1である第一クラッチC1の係合で形成される第二段2nd、第三段3rd、及び第四段4thの中で、始動制御を開始する際に変速装置TMに形成されている変速段である。そして、第二係合装置E2に該当する係合装置は、第二段2ndが低変速段GLに該当する場合は第一ブレーキB1であり、第三段3rdが低変速段GLに該当する場合は第三クラッチC3であり、第四段4thが低変速段GLに該当する場合は第二クラッチC2である。
【0031】
また、変速装置TMは、一方向変速段GOWより変速比が低く低変速段GLより変速比が高い変速段であって、少なくとも第一係合装置E1及び第三係合装置E3の係合で形成される中間変速段GMを更に有している。本実施形態では、
図4の作動表及び
図7の速度線図などに示すように、中間変速段GMに該当する変速段は、第二段2ndが低変速段GLに該当する場合は存在せず、第三段3rdが低変速段GLに該当する場合は第二段2ndであり、第四段4thが低変速段GLに該当する場合は第三段3rd又は第二段2ndである。そして、第三係合装置E3に該当する係合装置は、第二段2ndが中間変速段GMに該当する場合は第一ブレーキB1であり、第三段3rdが中間変速段GMに該当する場合は第三クラッチC3である。
【0032】
変速滑り制御部46は、低変速段GLが形成されている状態で始動制御を行う際に、第一係合装置E1又は第二係合装置E2を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を、第一係合装置E1又は第二係合装置E2が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度より所定のオフセット速度Δωofだけ増加させる変速滑り制御を行う。
【0033】
一方向係合判定部47は、変速滑り制御において、第二係合装置E2を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を所定のオフセット速度Δωofだけ増加させた場合に、一方向係合装置OWEの係合部材間の回転速度差が予め定めた判定速度差未満である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定し、一方向係合装置OWEの係合部材間の回転速度差が判定速度差以上である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定する。
このような構成において、変速滑り制御部46は、一方向係合判定部47により可能性が低いと判定された場合は、第二係合装置E2を滑り係合状態に制御し、一方向係合判定部47により可能性が高いと判定された場合は第一係合装置E1を滑り係合状態に制御する点に特徴を有している。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
【0034】
1.車両用駆動装置1の構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源として内燃機関ENG及び回転電機MGを備え、これらの内燃機関ENGと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速装置TMを備えており、当該変速装置TMにより、入力軸Iに伝達された内燃機関ENG及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
【0035】
内燃機関ENGは、燃料の燃焼により駆動される熱機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関ENGのクランクシャフト等の内燃機関出力軸Eoが、機関分離クラッチSSCを介して、回転電機MGに駆動連結された入力軸Iと選択的に駆動連結される。すなわち、内燃機関ENGは、摩擦係合装置である機関分離クラッチSSCを介して回転電機MGに選択的に駆動連結される。また、内燃機関出力軸Eoには、図示しないダンパが備えられており、内燃機関ENGの間欠的な燃焼による出力トルク及び回転速度の変動を減衰して、車輪W側に伝達可能に構成されている。
【0036】
回転電機MGは、車両用駆動装置1を収容するケースCSに固定されたステータStと、このステータと対応する位置で径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有している(
図3参照)。この回転電機MGのロータRoは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸Iに内燃機関ENG及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、インバータを介してバッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは内燃機関ENGや車輪Wから伝達される回転駆動力により発電し、発電された電力は、インバータを介してバッテリに蓄電される。
【0037】
駆動力源が駆動連結される入力軸Iには、変速装置TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速装置TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の係合装置OWC、C1、B1・・・とを備えている。変速装置TMは、各変速段の変速比で、入力軸Iの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速装置TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右二つの車軸AXに分配されて伝達され、各車軸AXに駆動連結された車輪Wに伝達される。ここで、変速比は、変速装置TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力軸Oの回転速度に対する入力軸Iの回転速度の比であり、本願では入力軸Iの回転速度を出力軸Oの回転速度で除算した値である。すなわち、入力軸Iの回転速度を変速比で除算した回転速度が、出力軸Oの回転速度になる。また、入力軸Iから変速装置TMに伝達されるトルクに、変速比を乗算したトルクが、変速装置TMから出力軸Oに伝達されるトルクになる。
【0038】
本実施形態では、変速装置TMは変速比(減速比)の異なる6つの変速段(第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、及び第六段6th)を前進段として備えている。これらの変速段を構成するため、変速装置TMは、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2を備えてなる歯車機構と、6つの係合装置C1、C2、C3、B1、B2、OWCと、を備えて構成されている。ワンウェイブレーキOWCを除くこれら複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2の各回転要素の回転状態を切り替え、複数の係合装置C1、B1・・・を選択的に係合することにより、6つの変速段が切り替えられる。なお、変速装置TMは、上記6つの変速段のほかに、一段の後進段Revも備えている。
【0039】
本実施形態においては、
図3に示すように、第一遊星歯車機構PG1は、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。すなわち、第一遊星歯車機構PG1は、複数のピニオンギヤP1を支持するキャリアCA1と、ピニオンギヤP1にそれぞれ噛み合うサンギヤS1及びリングギヤR1と、の3つの回転要素を有して構成されている。第一遊星歯車機構PG1が有するこれら3つの回転要素は、回転速度の順にサンギヤS1(第一回転要素)、キャリアCA1(第二回転要素)、及びリングギヤR1(第三回転要素)となっている。
【0040】
また、第二遊星歯車機構PG2は、入力軸Iと同軸上に配置されたラビニヨ型の遊星歯車機構とされている。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、第一サンギヤS2及び第二サンギヤS3の二つのサンギヤと、リングギヤR2と、第二サンギヤS3及びリングギヤR2の双方に噛み合うロングピニオンギヤP2並びにロングピニオンギヤP2及び第一サンギヤS2に噛み合うショートピニオンギヤP3を支持する共通のキャリアCA2と、の四つの回転要素を有して構成されている。第二遊星歯車機構PG2が有するこれら4つの回転要素は、回転速度の順に第二サンギヤS3(第一回転要素)、キャリアCA2(第二回転要素)、リングギヤR2(第三回転要素)、および第一サンギヤS2(第四回転要素)となっている。
【0041】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構PG1、PG2の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構PG1、PG2の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。
【0042】
第一遊星歯車機構PG1のサンギヤS1は、非回転部材としてのケースCSに固定されている。キャリアCA1は、第一クラッチC1を介して第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第三クラッチC3を介して第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3と選択的に一体回転するように駆動連結される。リングギヤR1は、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されているとともに、第二クラッチC2を介して第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2と選択的に一体回転するように駆動連結される。
【0043】
第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3は、第三クラッチC3を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。キャリアCA2は、第二クラッチC2を介して入力軸I及び第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第二ブレーキB2又はワンウェイブレーキOWCを介して非回転部材としてのケースCSに選択的に固定される。リングギヤR2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。第一サンギヤS2は、第一クラッチC1を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。
【0044】
ここで、ワンウェイブレーキOWCなどの一方向係合装置OWEは、一対の係合部材間の相対回転の方向が第一方向の場合は係合し、相対回転の方向が前記第一方向とは反対の第二方向の場合は解放する係合装置である。言い換えると、一方向係合装置OWEは、入力側の係合部材が出力側の係合部材に対して第一方向に回転する場合は直結係合状態になり、係合部材間に回転速度差が生じることを阻止し、入力側の係合部材が出力側の係合部材に対して第一方向とは反対の第二方向に回転する場合は解放状態になり、係合部材間に回転速度差を生じさせる係合装置である。すなわち、一方向係合装置OWEは、係合部材間の相対的な回転速度差において、第一方向の回転速度差が生じる場合は直結係合状態になり、第二方向の回転速度差が生じる場合は解放状態になる。本実施形態では、ワンウェイブレーキOWCは、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に連結された入力側の係合部材が、ケースCSに連結されて回転速度がゼロである出力側の係合部材に対して負回転となるときに直結係合状態となり、正回転となるときに解放状態になるように構成されている。すなわち、ワンウェイブレーキOWCは、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が負方向に回転する(回転速度がゼロ以下になる)ときに直結係合状態になり、キャリアCA2が正方向に回転する(回転速度がゼロより大きくなる)ときに解放状態になるように構成されている。従って、キャリアCA2の回転速度は、ゼロ未満に低下しない。
【0045】
本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイブレーキOWCを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置とされている。本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイブレーキOWCを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、いずれも摩擦係合装置とされている。具体的には、これらは油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキにより構成されている。これらの係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、油圧制御装置PCから供給される油圧により、係合の状態が制御される。なお、機関分離クラッチSSCも摩擦係合装置である。
【0046】
摩擦係合装置は、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合装置は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合装置の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合装置が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、入力側係合部材(摩擦板)と出力側係合部材(摩擦板)とを相互に押し付け合う圧力である。本実施形態では、係合圧は、供給されている油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置に供給されている油圧の大きさに比例して変化する。
【0047】
各摩擦係合装置は、リターンばねを備えており、ばねの反力により解放側に付勢されている。そして、各摩擦係合装置の油圧シリンダに供給される油圧により生じる力がばねの反力を上回ると、各摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じ始め、各摩擦係合装置は、解放状態から係合状態に変化する。この伝達トルク容量が生じ始めるときの油圧を、ストロークエンド圧と称す。各摩擦係合装置は、供給される油圧がストロークエンド圧を上回った後、油圧の増加に比例して、その伝達トルク容量が増加するように構成されている。なお、摩擦係合装置は、リターンばねを備えておらず、油圧シリンダのピストンの両側にかかる油圧の差圧によって制御させる構造でもよい。
【0048】
本実施形態において、係合状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態であり滑り係合状態と直結係合状態とが含まれる。解放状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態である。また、滑り係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態であり、直結係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、非直結係合状態とは、直結係合状態以外の係合状態であり、解放状態と滑り係合状態とが含まれる。
【0049】
なお、摩擦係合装置には、制御装置30により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合でも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。例えば、ピストンにより摩擦部材同士が押圧されていない場合でも、摩擦部材同士が接触し、摩擦部材同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。そこで、「解放状態」には、制御装置30が摩擦係合装置に伝達トルク容量を生じさせる指令を出していない場合に、摩擦部材同士の引き摺りにより、伝達トルク容量が生じている状態も含まれるものとする。
【0050】
次に、変速装置TMにより実現される6つの変速段について説明する。
図4は、各変速段での複数の係合装置OWC、C1、B1・・・の作動状態を示す作動表である。この図において、「○」は各係合装置が係合状態にあることを示しており、「無印」は、各係合装置が解放状態にあることを示している。「(○)」は、エンジンブレーキを行う場合などにおいて、係合装置が係合状態にされることを示している。また、「△」は、第一方向に回転する(キャリアCA2が正方向に回転する)場合には解放状態となり、第二方向に回転する(キャリアCA2が負方向に回転する)場合には直結係合状態になることを示している。
【0051】
図5は、変速装置TMの速度線図である。この速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は回転速度がゼロであることを示しており、上側が正回転(回転速度が正)、下側が負回転(回転速度が負)である。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、第一遊星歯車機構PG1の各回転要素及び第二遊星歯車機構PG2の各回転要素に対応している。すなわち、各縦線の上側に記載されている「R1」、「CA1」、「S1」はそれぞれ第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1、キャリアCA1、サンギヤS1に対応している。また、各縦線の上側に記載されている「S2」、「R2」、「CA2」、「S3」はそれぞれ第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2、リングギヤR2、キャリアCA2、第二サンギヤS3に対応している。また、並列配置された複数本の縦線間の間隔は、各遊星歯車機構PG1、PG2のギヤ比λ(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)に基づいて定まっている。
【0052】
また、「●」は、各回転要素に連結された係合装置が、直結係合状態にあることを示している。それぞれの「●」に隣接して記載された「C1」、「C2」、「C3」、「B1」、「B2」、「OWC」は、直結係合状態にされた係合装置を示している。「☆」は、出力軸Oに連結される回転要素(第二遊星歯車機構PG2のリングギヤR2)の回転速度の状態を示している。なお、それぞれの「☆」に隣接して記載された「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」、「5th」、「6th」、及び「Rev」は、形成される変速段を示している。
【0053】
図4及び
図5に示すように、第一段1stは、第一クラッチC1の係合とワンウェイブレーキOWCとが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態では、入力軸Iから第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1に入力される駆動力源の回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。そして、第一クラッチC1が係合した状態で、入力軸Iから出力軸Oへの回転駆動力が伝達されて第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が負回転する際に、ワンウェイブレーキOWCが係合した状態となってケースCSに固定され、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2に基づいて減速されて出力軸Oに伝達される。なお、出力軸Oから入力軸Iへ回転駆動力が伝達されて第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が正回転する際には、ワンウェイブレーキOWCは解放した状態となる。このようにして実現される第一段は、入力軸Iから出力軸Oへの回転駆動力は伝達し、出力軸Oから入力軸Iへの回転駆動力は伝達しない一方向変速段GOWとなる。
【0054】
また、第一段1stは、第一クラッチC1の係合と第二ブレーキB2の係合とが協働しても実現される。本実施形態では、エンジンブレーキを行うときなどに、第二ブレーキB2が係合されて、ワンウェイブレーキOWCが空転し係合しない状態でも、第一段1stが形成される。具体的には、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第二ブレーキB2が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2に基づいてさらに減速されて出力軸Oに伝達される。
【0055】
第二段2ndは、第一クラッチC1の係合と第一ブレーキB1の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第一ブレーキB1が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2及びλ1に基づいてさらに減速されて出力軸Oに伝達される。
【0056】
第三段3rdは、第一クラッチC1の係合と第三クラッチC3の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第三クラッチC3が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。そして、第二サンギヤS3と第一サンギヤS2とが同速度で回転することで、ギヤ比λ3に基づいて減速された入力軸Iの回転駆動力がそのまま出力軸Oに伝達される。
【0057】
第四段4thは、第一クラッチC1の係合と第二クラッチC2の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第二クラッチC2が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。そして、キャリアCA2及び第一サンギヤS2の回転速度とギヤ比λ2とに基づいて決まる入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される。
【0058】
第五段5thは、第二クラッチC2の係合と第三クラッチC3の係合とが協働して実現される。すなわち、第二クラッチC2が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。また、第三クラッチC3が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。そして、第二サンギヤS3及びキャリアCA2の回転速度とギヤ比λ1とに基づいて決まる入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される。
【0059】
第六段6thは、第二クラッチC2の係合と第一ブレーキB1の係合とが協働して実現される。すなわち、第二クラッチC2が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。また、第一ブレーキB1が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3がケースCSに固定される。そして、キャリアCA2の回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて増速されて出力軸Oに伝達される。
【0060】
後進段Revは、第三クラッチC3の係合と第二ブレーキB2の係合とが協働して実現される。すなわち、第三クラッチC3が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。また、第二ブレーキB2が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されるとともに回転方向が逆転されて出力軸Oに伝達される。
【0061】
本実施形態に係る変速装置TMは、少なくとも第一クラッチC1の係合により実現される変速段として、第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、及び第四段4thを備えている。これらの各変速段は、入力軸Iと出力軸Oとの間の変速比(減速比)が大きい順に、第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、及び第六段6thとなっている。
【0062】
2.油圧制御系の構成
車両用駆動装置1の油圧制御系は、車両の駆動力源や専用のモータによって駆動される油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速装置TMが有する複数の係合装置C1、B1・・・及び機関分離クラッチSSC等に供給される。
【0063】
3.制御装置の構成
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及び内燃機関制御装置31の構成について、
図2を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜51などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜51の機能が実現される。
【0064】
また、車両用駆動装置1は、センサSe1〜Se3を備えており、各センサから出力される電気信号は制御装置30及び内燃機関制御装置31に入力される。制御装置30及び内燃機関制御装置31は、入力された電気信号に基づき各センサの検出情報を算出する。
入力回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するためのセンサである。入力軸Iには回転電機MGのロータが一体的に駆動連結されているので、回転電機制御ユニット32は、入力回転速度センサSe1の入力信号に基づいて回転電機MGの回転速度(角速度)、並びに入力軸Iの回転速度を検出する。出力回転速度センサSe2は、出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて出力軸Oの回転速度(角速度)を検出する。また、出力軸Oの回転速度は車速に比例するため、動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて車速を算出する。機関回転速度センサSe3は、内燃機関出力軸Eo(内燃機関ENG)の回転速度を検出するためのセンサである。内燃機関制御装置31は、機関回転速度センサSe3の入力信号に基づいて内燃機関ENGの回転速度(角速度)を検出する。
【0065】
3−1.内燃機関制御装置31
内燃機関制御装置31は、内燃機関ENGの動作制御を行う内燃機関制御部41を備えている。本実施形態では、内燃機関制御部41は、車両制御ユニット34から内燃機関要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された内燃機関要求トルクを出力トルク指令値に設定し、内燃機関ENGが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。また、内燃機関制御装置31は、内燃機関の燃焼開始要求があった場合は、内燃機関ENGの燃焼開始が指令されたと判定して、内燃機関ENGへの燃料供給及び点火を開始するなどして、内燃機関ENGの燃焼を開始する制御を行う。
【0066】
3−2.動力伝達制御ユニット33
動力伝達制御ユニット33は、変速装置TMの制御を行う変速装置制御部43と、機関分離クラッチSSCの制御を行う機関分離係合装置制御部44と、を備えている。
【0067】
3−2−1.変速装置制御部43
変速装置制御部43は、変速装置TMを制御する機能部である。変速装置制御部43は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速装置TMに形成させる目標変速段を決定する。そして、変速装置制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1・・・に供給される油圧を制御することにより、各係合装置C1、B1・・・を係合又は解放して目標とされた変速段を変速装置TMに形成させる。具体的には、変速装置制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各係合装置に供給する。
【0068】
変速装置制御部43は、変速装置TMに形成させる変速段である目標変速段を判定する変速段判定部を備えている。本実施形態では、変速段判定部は、
図6に示すような、メモリに格納された変速マップを参照し、目標変速段を決定するように構成されている。変速マップは、アクセル開度及び車速と、変速装置TMに形成させる目標変速段との関係を規定したマップである。
変速マップには、
図6に示すように、概略的に車速が大きくなるに従い、アクセル開度も大きくなる線で表される複数のアップシフト線(実線)と複数のダウンシフト線(破線)とが設定されている。例えば、
図6に「1−2」で示されているアップシフト線は、目標変速段が第一段1stから第二段2ndへ変更させる車速及びアクセル開度が設定された線であり、
図6に「2−1」で示されているダウンシフト線は、目標変速段が第二段2ndから第一段1stへ変更させる車速及びアクセル開度が設定された線であり、「3−2」で示されているダウンシフト線は、目標変速段が第三段3rdから第二段2ndへ変更させる車速及びアクセル開度が設定された線である。なお、アップシフトとは変速比の大きい変速段から変速比の小さい変速段への切り替えを意味し、ダウンシフトとは変速比の小さい変速段から変速比の大きい変速段への切り替えを意味する。なお、第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、第六段6thの順に、変速比が小さくなるように設定されている。
【0069】
車速及びアクセル開度が変化して変速マップ上でアップシフト線又はダウンシフト線を跨ぐと、変速段判定部は、変速装置TMにおける新たな目標変速段を決定する。例えば、
図6の矢印1及び矢印2に示すように、目標変速弾が第二段2ndに決定されている状態でアクセル開度の増加により、第二段2ndから第一段1stのダウンシフト線を下から上に跨いだ場合は、変速段判定部は、目標変速段を第二段2ndから第一段1stに変更する。また、
図6の矢印3に示すように、目標変速弾が第三段3rdに決定されている状態でアクセル開度の増加により、第三段3rdから第二段2ndのダウンシフト線を下から上に跨いだ場合は、変速段判定部は、目標変速段を第三段3rdから第二段2ndに変更する。
また、シフト位置の変更があった場合も、目標変速段が変更される場合がある。例えば、セカンドレンジ、又はローレンジに変更されたと検出した場合にも、目標変速段が変更される場合がある。
【0070】
変速装置制御部43は、通常、変速段の切り替え制御(変速制御)を行なう場合は、各係合装置C1、B1・・・の油圧指令を制御して、各係合装置C1、B1・・・の係合又は解放を行い、変速装置TMに形成させる変速段を目標変速段に切り替える。この際、変速装置制御部43は、予め計画された変速制御のシーケンスに従い、変速前において係合している係合装置のうちの一つ(以下、解放側係合装置と称す)を解放させると共に、変速前において解放されている係合装置のうちの一つ(以下、係合側係合装置と称す)を係合させる、いわゆるつなぎ替え変速を行う。例えば、ダウンシフトが行われる場合には、変速装置制御部43は、変速比が小さい高変速段を形成する係合装置の1つである解放側係合装置を解放させるとともに、変速比が大きい低変速段GLを形成する係合装置の1つである係合側係合装置を係合させるダウンシフト制御を行う。また、アップシフトが行われる場合には、変速装置制御部43は、変速比が大きい低変速段GLを形成する係合装置の1つである解放側係合装置を解放させるとともに、変速比が小さい高変速段を形成する係合装置の1つである係合側係合装置を係合させるアップシフト制御を行う。
【0071】
本実施形態では、変速装置制御部43は、後述する始動制御中は、変速装置TMの各係合装置C1、B1・・・の伝達トルク容量が、車両制御ユニット34から指令された各係合装置の目標トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介して各係合装置に供給される油圧を制御する。具体的には、変速装置制御部43は、各係合装置の目標トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各係合装置に供給する。
【0072】
3−2−2.機関分離係合装置制御部44
機関分離係合装置制御部44は、機関分離クラッチSSCの係合状態を制御する。本実施形態では、機関分離係合装置制御部44は、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が、車両制御ユニット34から指令された機関分離クラッチSSCの目標トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介して機関分離クラッチSSCに供給される油圧を制御する。具体的には、機関分離係合装置制御部44は、目標トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を機関分離クラッチSSCに供給する。
【0073】
3−3.回転電機制御ユニット32
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、車両制御ユニット34から回転電機要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された回転電機要求トルクを出力トルク指令値に設定し、回転電機MGが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクを制御する。
【0074】
3−4.車両制御ユニット34
車両制御ユニット34は、内燃機関ENG、回転電機MG、変速装置TM、及び機関分離クラッチSSC等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
【0075】
車両制御ユニット34は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、入力軸I側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクTrqを算出するとともに、内燃機関ENG及び回転電機MGの運転モードを決定する。運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源として走行する電動モードと、少なくとも内燃機関ENGを駆動力源として走行するパラレルモードと、を有する。例えば、アクセル開度が小さく、バッテリの充電量が大きい場合に、運転モードとして電動モードが決定され、それ以外の場合、すなわちアクセル開度が大きい、もしくはバッテリの充電量が小さい場合に、運転モードとしてパラレルモードが決定される。
そして、車両制御ユニット34は、内燃機関ENGに対して要求する出力トルクである内燃機関要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、機関分離クラッチSSCに対して要求する伝達トルク容量である目標トルク容量、及び変速装置TMの各係合装置C1、B1・・・に対して要求する伝達トルク容量である目標トルク容量を算出し、それらを他の制御ユニット32、33及び内燃機関制御装置31に指令して統合制御を行う。
本実施形態では、始動制御部45、変速滑り制御部46、及び一方向係合判定部47などを備えている。以下、各制御部について詳細に説明する。
【0076】
3−4−1.変速滑り制御
始動制御部45は、内燃機関ENGの始動要求があった場合に、内燃機関ENGの始動制御を行う。本実施形態では、始動制御部45は、機関分離クラッチSSCが解放されている状態で、内燃機関ENGの始動要求があった場合に、機関分離クラッチSSCを滑り係合状態に制御して内燃機関ENGの回転速度を上昇させる内燃機関ENGの始動制御を行うように構成されている。
【0077】
始動制御の実施中に、機関分離クラッチSSCの係合の状態が変化することや、内燃機関ENGの出力トルクが変化することなどによりトルク変動が生じやすい。この際、変速段を形成している係合装置の全てが直結係合状態であると、内燃機関ENG側で生じたトルク変動が、変速装置TMを介して車輪Wに伝達され、運転者に違和感を覚えさせる。
そこで、変速滑り制御部46は、変速装置TMに直結係合状態で変速段が形成されている状態で始動制御を行う際に、変速段を形成している係合装置の少なくとも1つを滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を、滑り係合状態に制御する係合装置が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度(同期回転速度とも称す)より所定のオフセット速度Δωofだけ増加させる変速滑り制御を行うように構成されている。
【0078】
このように変速段を形成している係合装置が滑り係合状態に制御されると、滑り係合状態にされた係合装置の係合部材間を伝達するスリップトルクに応じたトルクが、変速装置TMから車輪W側に伝達される。このため、始動制御の実行中に、内燃機関ENG側で生じたトルク変動が変速装置TMを介して車輪W側に伝達されることを抑制できる。この際、回転電機MGの回転速度が、直結係合状態である場合よりオフセット速度Δωofだけ増加されるので、係合装置の係合部材間の回転速度差をオフセット速度Δωofに応じた回転速度差に制御し、滑り係合係合状態に維持できる。ここで、オフセット速度Δωofの大きさは、内燃機関ENG側で生じたトルク変動により、回転電機MGの回転速度が変動しても、直結係合状態になる回転速度まで低下しないような余裕をもって設定される。すなわち、オフセット速度Δωofの大きさは、内燃機関ENG側で生じたトルク変動により生じうる回転電機MGの回転速度の変動量より大きく設定される。
【0079】
変速滑り制御部46は、低変速段GLが形成されている状態で始動制御を行う際には、低変速段GLを形成している第一係合装置E1又は第二係合装置E2を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を、第一係合装置E1又は第二係合装置E2が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度より所定のオフセット速度Δωofだけ増加させる変速滑り制御を行うように構成されている。
【0080】
変速装置TMは、上記のように、少なくとも第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEの係合で形成される一方向変速段GOWと、一方向変速段GOWより変速比が低い変速段であって少なくとも第一係合装置E1及び第二係合装置E2の係合で形成される低変速段GLとを有している。本実施形態では、
図4の作動表に示すように、一方向係合装置OWEに該当する係合装置はワンウェイブレーキOWCであり、第一係合装置E1に該当する係合装置は第一クラッチC1であり、一方向変速段GOWに該当する変速段は第一段1stである。また、低変速段GLに該当する変速段は、第一段1stより変速比が低い変速段であって少なくとも第一クラッチC1の係合で形成される第二段2nd、第三段3rd、及び第四段4thの中で、始動制御を開始する際に変速装置TMに形成されている変速段である。そして、第二係合装置E2に該当する係合装置は、第二段2ndが低変速段GLに該当する場合は第一ブレーキB1であり、第三段3rdが低変速段GLに該当する場合は第三クラッチC3であり、第四段4thが低変速段GLに該当する場合は第二クラッチC2である。
【0081】
3−4−1−1.変速滑り制御の課題
現在の変速段を形成している複数の係合装置の1つを滑り係合状態に制御する際に、現在の変速段を形成する複数の係合装置と、現在の変速段に変速比が近い変速段(近接変速段とも称す)を形成する複数の係合装置と、の間で共通していない係合装置(非共通の係合装置とも称す)を滑り係合状態に制御し、共通している係合装置(共通の係合装置とも称す)を直結係合状態に維持することが望ましい。これは、係合装置を滑り係合状態に制御している間に、目標変速段が現在の変速段から近接変速段に変更されたときに、滑り係合状態に制御している非共通の係合装置を解放させ、近接変速段を形成する非共通の係合装置を係合させるだけで変速段の変更ができるからである。
【0082】
例えば、現在の変速段が低変速段GLである場合は、一方向変速段GOWとの間において、共通の係合装置は第一係合装置E1であり、非共通の係合装置は、第二係合装置E2である。すなわち、第一係合装置E1は、低変速段GLと一方向変速段GOWとの間の共通の係合装置であり、第二係合装置E2及び一方向係合装置OWEは非共通の係合装置である。
本実施形態に係る変速装置TMでは、
図4及び
図7に示すように、低変速段GLに該当する変速段は、第二段2nd、第三段3rd、及び第四段4thであり、共通の係合装置である第一係合装置E1(共通の係合装置E1とも称す)に該当する係合装置は、第一クラッチC1である。非共通の係合装置である第二係合装置E2(非共通の係合装置E2とも称す)に該当する係合装置は、第二段2ndの場合は第一ブレーキB1であり、第三段3rdの場合は第三クラッチC3であり、第四段4thの場合は第二クラッチC2である。
【0083】
また、変速装置TMは、一方向変速段GOWより変速比が低く低変速段GLより変速比が高い変速段であって、少なくとも第一係合装置E1及び第三係合装置E3の係合で形成される中間変速段GMを更に有している。本実施形態では、
図4の作動表に示すように、中間変速段GMに該当する変速段は、第二段2ndが低変速段GLに該当する場合は存在せず、第三段3rdが低変速段GLに該当する場合は第二段2ndであり、第四段4thが低変速段GLに該当する場合は第三段3rd又は第二段2ndである。そして、第三係合装置E3に該当する係合装置は、第二段2ndが中間変速段GMに該当する場合は第一ブレーキB1であり、第三段3rdが中間変速段GMに該当する場合は第三クラッチC3である。
【0084】
図7に、回転電機MGの回転速度が同じで、出力軸Oの回転速度(車速)が異なる条件で、各変速段を形成する係合装置が直結係合状態である場合において、一方向変速段GOWである第一段1st、低変速段GLである第二段2nd、第三段3rd、第四段4thが形成されている場合の速度線図を示す。この状態では、各低変速段GL(2nd、3rd、4th)における第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2の回転速度はゼロより大きく、一方向係合装置OWEであるワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差はゼロより大きい。ここで、一方向変速段GOWである第一段1stに変速比が近い変速段ほど(すなわち、第二段2nd、第三段3rd、第四段4thの順に)、ワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差が小さい。
【0085】
図8に示すように、共通の係合装置E1である第一クラッチC1を直結係合状態に維持し、出力軸Oの回転速度(車速)が変化しない状態で、各低変速段GL(2nd、3rd、4th)における非共通の係合装置E2である第一ブレーキB1、第三クラッチC3、第二クラッチC2を滑り係合状態に制御し、回転電機MGの回転速度をオフセット速度Δωofだけ上昇させると、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2の回転速度が直結係合状態である場合よりも所定速度だけ低下する。そのため、ワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差が減少する。この際、一方向変速段GOWである第一段1stに変速比が近い変速段ほど(すなわち、第二段2nd、第三段3rd、第四段4thの順に)、ワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差が更に小さくなっており、ワンウェイブレーキOWCの直結係合状態との差が小さくなっている。
ここで、「●」は、各回転要素に連結された係合装置が、直結係合状態にあることを示している。「○」は、各回転要素に連結された係合装置が、滑り係合状態にあることを示している。細い実線は、係合装置の係合部材間が直結係合状態でつながれていることを示す。細い破線は、係合装置の係合部材間が滑り係合状態でつながれていることを示す。それぞれの「●」「○」に隣接して記載された「C1(E1)」などは、対応する係合装置を示している。「☆」は、出力軸Oに連結される回転要素(第二遊星歯車機構PG2のリングギヤR2)の回転速度の状態を示している。なお、それぞれの「☆」に隣接して記載された「2nd(GL)」などは、形成される変速段を示している。
【0086】
このようにワンウェイブレーキOWCの回転速度差が減少するのは、出力軸Oに連結される遊星歯車機構である第二遊星歯車機構PG2の速度線図上において、非共通の係合装置E2である第二係合装置E2(B1、C3、C2)並びに一方向係合装置OWE(OWC)に連結された回転要素(キャリアCA2、第二サンギヤS3)が、出力軸O(車輪W)に連結された回転要素(リングギヤR2)に対して、共通の係合装置E1である第一係合装置E1(C1)に連結される回転要素(第一サンギヤS2)に対して左右反対側にある場合に生じる。すなわち、出力軸O(車輪W)に連結された回転要素(リングギヤR2)に対して、共通の係合装置E1に連結された回転要素(第一サンギヤS2)と、非共通の係合装置E2に連結された回転要素(キャリアCA2、第二サンギヤS3)と、が速度線図上で左右反対側に配置されている。言い換えると、回転速度の順が、共通の係合装置E1に連結された回転要素、出力軸Oに連結された回転要素、非共通の係合装置E2に連結された回転要素になるように配置されている。このため、共通の係合装置E1に連結された回転要素の回転速度が上昇すると、出力軸O(車輪W)に連結された回転要素に対して左右反対側に配置された非共通の係合装置E2に連結された回転要素の回転速度が低下する。よって、同じく非共通の係合装置E2であるワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差も減少する。
【0087】
回転電機MGの回転速度の上昇に対する、ワンウェイブレーキOWCの係合部材間の回転速度差の減少量は、出力軸Oの回転速度(車速)の高低に関わらず同じである。一方向変速段GOWである第一段1stに変速比が近い変速段ほど、回転速度の上昇前のワンウェイブレーキOWCの回転速度差が小さいので、回転速度差減少の影響が大きくなる。
また、出力軸Oの回転速度(車速)が低いほど、回転速度の上昇前のワンウェイブレーキOWCの回転速度差が小さいので、回転速度差減少の影響が大きくなる。
よって、
図9に示すように、第二段2ndが形成されており、出力軸Oの回転速度(車速)が低い場合は、回転電機MGの回転速度をオフセット速度Δωofだけ上昇させようとすると、キャリアCA2の回転速度をゼロ未満まで減少させる必要がある。しかし、ワンウェイブレーキOWCの回転速度差がゼロまで減少すると、ワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になり、キャリアCA2の回転速度をゼロ以下に減少させることができない。このため、回転電機MGの回転速度をオフセット速度Δωofだけ増加させることができずに、回転速度の上昇が制限される。
【0088】
この状態になると、第一段1stが形成され、変速装置TMの変速比が増加するため、車輪Wに伝達されるトルクが増幅する。よって、内燃機関の始動中に、車輪Wに伝達されるトルクが増加し、運転者に違和感を覚えさせる。これに対して、回転電機MGの回転速度の上昇量を、キャリアCA2の回転速度がゼロまで減少しないように、オフセット速度Δωofから減少させることも考えられるが、上記のように、始動制御に伴って内燃機関ENG側で生じたトルク変動により、回転電機MGの回転速度が変動した場合の余裕を十分に確保することができない。このため、滑り係合状態に制御している第一ブレーキB1(E2)の回転速度差が減少し直結係合状態になり、トルク変動が生じる恐れがある。また、ワンウェイブレーキOWCの回転速度差も十分に確保できないため、始動制御に伴うトルク変動により、ワンウェイブレーキOWCの回転速度差が減少し直結係合状態になりトルク変動が生じる恐れがある。
【0089】
一方、
図10に示すように、第二段2ndが形成されているが、出力軸Oの回転速度(車速)が
図9に示す場合ほど低くない場合は、回転電機MGの回転速度をオフセット速度Δωofだけ上昇させても、キャリアCA2の回転速度がゼロまで減少しておらず、ゼロに対して余裕がある。このため、ワンウェイブレーキOWCの回転速度差がゼロより大きくなり、ワンウェイブレーキOWCを解放状態に維持できる。よって、第一段1stが形成されることを防止し、第二段2ndが形成された状態を維持できる。よって、始動制御に伴うトルク変動により、滑り係合状態に制御している第一ブレーキB1(E2)又はワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になる恐れは低い。
【0090】
3−4−1−2.一方向係合判定
そこで、本実施形態では、一方向係合判定部47は、低変速段GLが形成されている状態で行う変速滑り制御において、第二係合装置E2を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を所定のオフセット速度Δωofだけ増加させた場合に、一方向係合装置OWEの係合部材間の回転速度差が予め定めた判定速度差未満である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定し、一方向係合装置OWEの係合部材間の回転速度差が判定速度差以上である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定するように構成されている。
そして、変速滑り制御部46は、一方向係合判定部47により、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定された場合は、
図10の例に示すように、非共通の係合装置E2である第二係合装置E2(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を滑り係合状態に制御するように構成されている。一方、変速滑り制御部46は、一方向係合判定部47により一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定された場合は、
図11の例に示すように、共通の係合装置E1である第一係合装置E1(図に示す例では、第二段2ndの第一クラッチC1)を滑り係合状態に制御するように構成されている。
【0091】
このように構成すれば、
図9のようにワンウェイブレーキOWCが係合する可能性が高い場合では、
図11に示すように、共通の係合装置E1である第一クラッチC1を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を、第一クラッチC1が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度よりオフセット速度Δωofだけ増加させ、非共通の係合装置E2である第一ブレーキB1を直結係合状態に維持させる。このため、出力軸Oの回転速度(車速)がゼロにならない限りは、ワンウェイブレーキOWCの回転速度差がゼロになることない。すなわち、始動制御に伴うトルク変動が生じたとしても、ワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になることを防止できる。ただし、この場合は、共通の係合装置E1を滑り係合状態に制御し、非共有の係合装置E2を直結係合状態に維持しているため、後述するように、変速滑り制御中に目標変速段が変更された場合は、非共有の係合装置E2を直結係合状態から解放状態に移行させる必要がある。
【0092】
本実施形態では、一方向係合判定部47は、一方向係合装置OWEの係合部材間の回転速度差として、次式に示すように、変速滑り制御において第二係合装置E2を滑り係合状態に制御した場合に一方向係合装置OWEが係合する回転電機MGの回転速度ωmcn(一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnとも称す)から、第二係合装置E2が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度ωmL(低変速段GLの同期回転速度ωmLとも称す)にオフセット速度Δωofを加算した回転速度ωmof(オフセット加算速度ωmofとも称す)を、減算した回転速度差Δωmg(余裕回転速度差Δωmgとも称す)が、当該余裕回転速度差Δωmgに対応して設定した判定速度差Δωjd以上である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定し、余裕回転速度差Δωmgが、判定速度差Δωjd未満である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定するように構成されている。ここで、低変速段GLの同期回転速度ωmLは、回転電機MGの実際の回転速度ωmであってもよいし、出力軸Oの実際の回転速度ωoに、低変速段GLの変速比KgLを乗算して算出されてもよい。一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnは、出力軸Oの実際の回転速度ωoに、一方向変速段GOWの変速比KgWを乗算して算出される。
【0093】
1)Δωmg=ωmcn−ωmof ≧ Δωjd
可能性が低いと判定
2)Δωmg=ωmcn−ωmof < Δωjd ・・・(1)
可能性が高いと判定
ωmof=ωmL+Δωof
ωmL=ωm or ωmL=ωo×KgL
ωmcn=ωo×KgW
【0094】
ここで、判定速度差Δωjdの値は、オフセット速度Δωofと同様に、始動制御に伴うトルク変動により、回転電機MGの回転速度が変動しても、一方向係合装置OWEの回転速度差が直結係合状態になる回転速度まで低下しないような余裕をもって設定される。すなわち、判定速度差Δωjdの値は、始動制御に伴うトルク変動により生じうる回転電機MGの回転速度の変動量より大きく設定される。判定速度差Δωjdの値は、オフセット速度Δωofと同じ値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。なお、判定速度差Δωjdの値は、一方向係合装置OWEの回転速度差がゼロにならないように、少なくともゼロより大きい正の値に設定される。
【0095】
本実施形態では、一方向係合判定部47による判定は、変速滑り制御の開始時点で実行される。すなわち、一方向係合判定部47による判定は、第一係合装置E1又は第二係合装置E2を滑り係合状態する制御を開始する前に実行される。
【0096】
本実施形態では、一方向係合判定部47は、
図12に示すように、車輪Wの回転加速度である車輪加速度αが大きくなるに従って判定速度差Δωjdを小さく設定し、車輪加速度αが小さくなるに従って判定速度差Δωjdを大きく設定するように構成されている。なお、車輪加速度αを表す指標として車両要求トルクTrqを用いてもよい。
車輪加速度が大きいと、変速滑り制御の実行中(例えば、始動制御によりトルク変動が生じる時点)に、車速(出力軸Oの回転速度)が増加するため、式(1)から余裕回転速度差Δωmgが増加することがわかる。すなわち、変速滑り制御の開始時点では余裕回転速度差Δωmgが小さい場合であっても、変速滑り制御の実行中に余裕回転速度差Δωmgが増加する場合がある。よって、一方向係合判定部47は、変速滑り制御の開始時点において、車輪加速度αが大きい場合は、変速滑り制御の実行中に余裕回転速度差Δωmgが増加することを見越して、予め判定速度差Δωjdを小さく設定するように構成されている。
【0097】
図9に示す例では、一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnは、オフセット加算速度ωmofより低くなっており、同期回転速度ωmcnからオフセット加算速度ωmofを減算した余裕回転速度差Δωmgが負の値となる。このため、余裕回転速度差Δωmgは判定速度差Δωjd未満となり、ワンウェイブレーキOWCが係合する可能性が高いと判定される。
一方、
図10に示す例では、一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnは、オフセット加算速度ωmofより高くなっており、同期回転速度ωmcnからオフセット加算速度ωmofを減算した余裕回転速度差Δωmgが正の値となる。そして、
図10に示す例では、余裕回転速度差Δωmgが判定速度差Δωjd以上となり、ワンウェイブレーキOWCが係合する可能性が低いと判定される。
【0098】
3−4−1−3.回転速度制御
本実施形態では、変速滑り制御部46は、回転電機MGの実際の回転速度が、第一係合装置E1又は第二係合装置E2が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度より所定のオフセット速度Δωofだけ高く設定した目標回転速度に近づくように回転電機MGの出力トルクを制御する回転速度制御を実行するように構成されている。
回転速度制御は、例えば、目標回転速度と回転電機MGの回転速度と偏差に基づいた比例積分制御などのフィードバック制御により回転電機MGの出力トルクを変化させるように構成される。なお、回転速度制御において、機関分離クラッチSSCのスリップトルクなどの変化を予測してフィードフォワード的に、回転電機MGの出力トルクを変化させるように構成されてもよい。
【0099】
3−4−1−4.トルク容量増減制御
本実施形態では、容量増減制御部48は、始動制御中に、内燃機関ENGの燃焼が開始したと判定した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を低下させ、その後内燃機関ENGの回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させるトルク容量増減制御を行うように構成されている。
【0100】
3−4−1−5.変速滑り制御の終了
<Case1−1、2−1>
変速滑り制御部46は、変速滑り制御中にダウンシフト判定が行われない場合は、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が再び増加された後、
図13又は
図17の例に示すように、滑り係合状態に制御している第一係合装置E1(
図13の例では、第一クラッチC1)又は第二係合装置E2(
図17の例では、第一ブレーキB1)を直結係合状態に移行させて、変速滑り制御を終了するように構成されている。
【0101】
3−4−2.ダウンシフト判定があった場合の変速滑り制御
変速滑り制御中に、ダウンシフト判定が行われた場合に、ダウンシフト用の変速滑り制御が実行されるように構成されている。
【0102】
3−4−2−1.第一係合装置E1のスリップ制御中の場合
3−4−2−1−1.ダウンシフト判定時期の判定
時期判定部49は、始動制御中に、変速滑り制御部46により第一係合装置E1が滑り係合状態に制御されており、変速段判定部により目標変速段を低変速段GLから一方向変速段GOWに変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定するように構成されている。
【0103】
3−4−2−1−2.ダウンシフト判定が再増加時期より前の場合
<Case1−2>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より前であると判定された場合は、
図14の例に示すように、直結係合状態に維持していた第二係合装置E2(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を解放して一方向係合装置OWE(図に示す例では、ワンウェイブレーキOWC)を係合させて一方向変速段GOW(図に示す例では、第一段1st)を形成させた後、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させ、その後、
図15の例に示すように、第一係合装置E1(図に示す例では、第一段1stの第一クラッチC1)を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行するように構成されている。
【0104】
3−4−2−1−3.ダウンシフト判定が再増加時期より後の場合
<Case1−3>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より後であると判定された場合は、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させた後、
図16の例に示すように、直結係合状態に維持していた第二係合装置E2(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を解放して一方向係合装置OWE(図に示す例では、ワンウェイブレーキOWC)を係合させて一方向変速段GOW(図に示す例では、第一段1st)を形成させ、その後、
図17の例に示すように、第一係合装置E1(図に示す例では、第一段1stの第一クラッチC1)を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するように構成されている。
【0105】
3−4−2−2.第二係合装置E2のスリップ制御中の場合
3−4−2−2−1.一方向変速段GOWへのダウンシフト判定の場合
<Case2−2>
ダウンシフト制御部50は、始動制御中に、変速滑り制御部46により第二係合装置E2が滑り係合状態に制御されており、変速段判定部により変速段を低変速段GLから一方向変速段GOWに変更するダウンシフト判定が行われた場合は、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させた後、
図18の例に示すように、第二係合装置E2(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を解放して一方向係合装置OWE(図に示す例では、ワンウェイブレーキOWC)を係合させて一方向変速段GOW(図に示す例では、第一段1st)を形成させる変速後置制御を実行するように構成されている。
【0106】
3−4−2−2−2.中間変速段GMへのダウンシフト判定の場合
3−4−2−2−2−1.ダウンシフト判定時期の判定
時期判定部49は、始動制御中に、
図19の例に示すように、変速滑り制御部46により第二係合装置E2(図に示す例では、第三段3rdの第三クラッチC3)が滑り係合状態に制御されており、変速段判定部により変速段を低変速段GL(図に示す例では、第三段3rd)から中間変速段GM(図に示す例では、第二段2nd)に変更するダウンシフト判定が行われた場合に、当該ダウンシフト判定が容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が再び増加され始める時期である再増加時期より前か後かを判定するように構成されている。
変速係合判定部51は、変速滑り制御において、第二係合装置E2に替えて第三係合装置E3を滑り係合状態に制御し、回転電機MGの回転速度を、第三係合装置E3が直結係合状態である場合の回転速度よりオフセット速度Δωofだけ増加させる場合に、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いか低いかを判定するように構成されている。
【0107】
本実施形態では、変速係合判定部51は、次式に示すように、変速滑り制御において第二係合装置E2に替えて第三係合装置E3を滑り係合状態に制御した場合に一方向係合装置OWEが係合する回転電機MGの回転速度ωmcn(一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnとも称す)から、第三係合装置E3が直結係合状態である場合の回転電機MGの回転速度ωmM(中間変速段GMの同期回転速度ωmMとも称す)にオフセット速度Δωofを加算した回転速度ωmof(オフセット加算速度ωmofとも称す)を、減算した回転速度差Δωmg(余裕回転速度差Δωmgとも称す)が、判定速度差Δωjd以上である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定し、余裕回転速度差Δωmgが、判定速度差Δωjd未満である場合は、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定するように構成されている。ここで、中間変速段GMの同期回転速度ωmMは、出力軸Oの実際の回転速度ωoに、中間変速段GMの変速比Kgmを乗算して算出される。一方向変速段GOWの同期回転速度ωmcnは、出力軸Oの実際の回転速度ωoに、一方向変速段GOWの変速比KgWを乗算して算出される。
【0108】
1)Δωmg=ωmcn−ωmof ≧ Δωjd
可能性が低いと判定
2)Δωmg=ωmcn−ωmof < Δωjd ・・・(2)
可能性が高いと判定
ωmof=ωmM+Δωof
ωmM=ωo×Kgm
ωmcn=ωo×KgW
【0109】
ここで、判定速度差Δωjdの値は、オフセット速度Δωofと同様に、始動制御に伴うトルク変動により、回転電機MGの回転速度が変動しても、一方向係合装置OWEの回転速度差が直結係合状態になる回転速度まで低下しないような余裕をもって設定される。すなわち、判定速度差Δωjdの値は、始動制御に伴うトルク変動により生じうる回転電機MGの回転速度の変動量より大きく設定される。判定速度差Δωjdの値は、オフセット速度Δωofと同じ値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。なお、判定速度差Δωjdの値は、一方向係合装置OWEの回転速度差がゼロにならないように、少なくともゼロより大きい正の値に設定される。
【0110】
3−4−2−2−2−2.ダウンシフト判定が再増加時期より前の場合
<Case2−3>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より前であると判定され、且つ、変速係合判定部51により可能性が低いと判定された場合は、
図20の例に示すように、第二係合装置E2(図に示す例では、第三段3rdの第三クラッチC3)に替えて第三係合装置E3(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を滑り係合状態に制御し、回転電機MGの回転速度を、第三係合装置E3が直結係合状態である場合の回転速度よりオフセット速度Δωofだけ増加させた後、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させ、その後、
図21の例に示すように、第三係合装置E3を直結係合状態に移行させる変速前置制御を実行するように構成されている。
【0111】
3−4−2−2−2−3.ダウンシフト判定が再増加時期より後の場合
<Case2−4>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より後であると判定された、又は、変速係合判定部51により可能性が高いと判定された場合は、容量増減制御部48により機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させた後、
図22の例に示すように、第二係合装置E2(図に示す例では、第三段3rdの第三クラッチC3)を解放し第三係合装置E3(図に示す例では、第二段2ndの第一ブレーキB1)を直結係合状態に移行させる変速後置制御を実行するように構成されている。
【0112】
3−4−3.フローチャート
以上で説明した本実施形態に係る変速滑り制御、及びトルク容量増減制御などを
図23から
図27に示すフローチャートの例に示すように構成することができる。
3−4−3−1.トルク容量増減制御
図23に示すように、始動制御部45は、機関分離クラッチSSCが解放されている状態で、内燃機関ENGの始動要求があった場合(ステップ♯60:Yes)に、内燃機関ENGの始動制御を開始する。始動制御部45は、機関分離クラッチSSCを滑り係合状態に制御するために機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を増加させる(ステップ♯61)。容量増減制御部48は、内燃機関ENGの燃焼が開始したと判定した場合(ステップ♯62:Yes)に、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を低下させる(ステップ♯63)。容量増減制御部48は、内燃機関ENGの回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した場合(ステップ♯64:Yes)に、ダウンシフト制御部50により再増加が禁止されていないか判定する(ステップ♯65)。容量増減制御部48は、ダウンシフト制御部50により再増加が禁止されていない場合(ステップ♯65:No)に、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を再び増加させる(ステップ♯66)。
【0113】
3−4−3−2.変速滑り制御
図24に示すように、変速滑り制御部46は、内燃機関ENGの始動要求があり始動制御が開始した場合に、一連の変速滑り制御を開始する(ステップ♯01:Yes)。そして、変速滑り制御部46は、現在、変速装置TMに形成されている変速段が、低変速段GLであるか判定する(ステップ♯02)。低変速段GLであると判定された場合(ステップ♯02:Yes)は、一方向係合判定部47は、変速滑り制御において、第二係合装置E2を滑り係合状態に制御して、回転電機MGの回転速度を所定のオフセット速度Δωofだけ増加させた場合に一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いか低いかを判定する(ステップ♯03)。そして、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いと判定された場合(ステップ♯04:Yes)は、変速滑り制御部46は、第一係合装置E1を滑り係合状態に制御するスリップ制御を開始する(ステップ♯05)。また、変速装置TMに形成されている変速段が一方向変速段GOWであると判定された場合(ステップ♯02:No)も、第一係合装置E1を滑り係合状態に制御するスリップ制御を開始する(ステップ♯05)。これは、回転電機MGの回転速度を増加させるために、一方向係合装置OWEを滑り係合状態に制御できないため、第一係合装置E1を滑り係合状態に制御する必要があるためである。
一方、一方向係合装置OWEが係合する可能性が低いと判定された場合(ステップ♯04:No)は、変速滑り制御部46は、第二係合装置E2を滑り係合状態に制御するスリップ制御を開始する(ステップ♯11)。
【0114】
<ダウンシフト判定がない場合>
<Case1−1>
ステップ♯05で第一係合装置E1のスリップ制御を開始した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加が終了する(ステップ♯09:Yes)までの間に、ダウンシフト判定がなかった場合(ステップ♯06:No、ステップ♯08:No)は、変速滑り制御部46は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯09:Yes)、滑り係合状態に制御している第一係合装置E1を直結係合状態に移行させて(ステップ♯10)、変速滑り制御を終了する。
【0115】
<Case2−1>
同様に、ステップ♯11で第二係合装置E2のスリップ制御を開始した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加が終了する(ステップ♯13:Yes)までの間に、ダウンシフト判定がなかった場合(ステップ♯12:No)は、変速滑り制御部46は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯13:Yes)、滑り係合状態に制御している第二係合装置E2を直結係合状態に移行させて(ステップ♯14)、変速滑り制御を終了する。
【0116】
<ダウンシフト判定がある場合>
<Case1−2>
ステップ♯05で第一係合装置E1のスリップ制御を開始した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加を開始する(ステップ♯07:Yes)までの間に、低変速段GLから一方向変速段GOWに変更するダウンシフト判定があった場合(ステップ♯06:Yes)は、時期判定部49は、ダウンシフト判定が再増加時期より前であると判定する。
そして、ダウンシフト制御部50は、
図25に示すように、第二係合装置E2を解放して一方向係合装置OWEを係合させるまで、容量増減制御部48による伝達トルク容量の再増加を禁止する(ステップ♯20)。ダウンシフト制御部50は、直結係合状態に維持していた第二係合装置E2を解放し一方向係合装置OWEを係合させて、低変速段GLから一方向変速段GOWへのダウンシフトを実行する(ステップ♯21)。そして、ダウンシフトの終了後、ダウンシフト制御部50は、容量増減制御部48による伝達トルク容量の再増加を許可する(ステップ♯22)。
ダウンシフト制御部50は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯23:Yes)、滑り係合状態に制御している第一係合装置E1を直結係合状態に移行させて(ステップ♯24)、変速滑り制御を終了する。
【0117】
<Case1−3>
ステップ♯05で第一係合装置E1のスリップ制御を開始し、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加を開始した後(ステップ♯07:Yes)、再増加が終了する(ステップ♯09:Yes)までの間に、低変速段GLから一方向変速段GOWに変更するダウンシフト判定があった場合(ステップ♯08:Yes)は、時期判定部49は、ダウンシフト判定が再増加時期より後であると判定する。
そして、ダウンシフト制御部50は、
図26に示すように、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯30:Yes)、直結係合状態に維持していた第二係合装置E2を解放し一方向係合装置OWEを係合させて、低変速段GLから一方向変速段GOWへのダウンシフトを実行する(ステップ♯31)。ダウンシフトの終了後、変速滑り制御部46は、滑り係合状態に制御している第一係合装置E1を直結係合状態に移行させて(ステップ♯32)、変速滑り制御を終了する。
【0118】
ステップ♯11で第二係合装置E2のスリップ制御を開始し、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加が終了する(ステップ♯13:Yes)までの間に、ダウンシフト判定があった場合(ステップ♯12:Yes)は、ダウンシフト用の変速滑り制御が実行される。
ダウンシフト制御部50は、
図27に示すように、ダウンシフト判定が、低変速段GLから一方向変速段GOWへのダウンシフト判定であるか、低変速段GLから中間変速段GMへのダウンシフト判定であるか、を判定する。
<Case2−2>
ダウンシフト制御部50は、一方向変速段GOWへのダウンシフト判定であると判定した場合(ステップ♯40:Yes)は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯41:Yes)、第二係合装置E2を解放し一方向係合装置OWEを係合させて、低変速段GLから一方向変速段GOWへのダウンシフトを実行し(ステップ♯42)、変速滑り制御を終了する。
【0119】
中間変速段GMへのダウンシフト判定であると判定された場合(ステップ♯40:No)は、時期判定部49は、ダウンシフト判定が機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の再増加時期より前か後かを判定する(ステップ♯43)。また、変速係合判定部51は、第二係合装置E2に替えて第三係合装置E3を滑り係合状態に制御し、回転電機MGの回転速度を、第三係合装置E3が直結係合状態である場合の回転速度よりオフセット速度Δωofだけ増加させる場合に、一方向係合装置OWEが係合する可能性が高いか低いかを判定する(ステップ♯44)。
【0120】
<Case2−3>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より前であると判定され、且つ、変速係合判定部51により可能性が低いと判定された場合(ステップ♯45:Yes)は、ダウンシフトが実行されるまで、容量増減制御部48による伝達トルク容量の再増加を禁止する(ステップ♯46)。ダウンシフト制御部50は、第二係合装置E2に替えて第三係合装置E3を滑り係合状態に制御し、回転電機MGの回転速度を、第三係合装置E3が直結係合状態である場合の回転速度よりオフセット速度Δωofだけ増加させて、低変速段GLから中間変速段GMへのダウンシフトを実行する(ステップ♯47)。そして、ダウンシフトの終了後、ダウンシフト制御部50は、容量増減制御部48による伝達トルク容量の再増加を許可する(ステップ♯48)。
ダウンシフト制御部50は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯49:Yes)、滑り係合状態に制御している第三係合装置E3を直結係合状態に移行させて(ステップ♯50)、変速滑り制御を終了する。
【0121】
<Case2−4>
ダウンシフト制御部50は、時期判定部49によりダウンシフト判定が再増加時期より後であると判定された、又は、変速係合判定部51により可能性が高いと判定された場合(ステップ♯45:No)は、伝達トルク容量の再増加が終了した後(ステップ♯51:Yes)、第二係合装置E2を解放し第三係合装置E3を直結係合状態に移行させて、低変速段GLから中間変速段GMへのダウンシフトを実行し(ステップ♯52)、変速滑り制御を終了する。
【0122】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0123】
(1)上記の実施形態においては、回転電機MGと変速装置TMとの間の動力伝達経路2に係合装置が備えられていない場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両用駆動装置1は、
図28に示すように、回転電機MGと変速装置TMと間の動力伝達経路2に更に係合装置SSC2を備えるように構成されてもよい。
【0124】
或いは、車両用駆動装置1は、
図29に示すように、回転電機MGと変速装置TMと間の動力伝達経路2に更にトルクコンバータTCを備え、トルクコンバータTCの入出力部材間を直結係合状態にするロックアップクラッチSSC2を備えるように構成されてもよい。
【0125】
(2)上記の実施形態においては、機関分離クラッチSSC及び変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・が油圧により制御される係合装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、機関分離クラッチSSC及び変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の一方又は双方は、油圧以外の駆動力、例えば、電磁石の駆動力、サーボモータの駆動力など、により制御される係合装置であってもよい。
【0126】
(3)上記の実施形態において、制御装置30は、複数の制御ユニット32〜34を備え、これら複数の制御ユニット32〜34が分担して複数の機能部41〜51を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30は、上述した複数の制御ユニット32〜34を任意の組み合わせで統合又は分離した制御装置として備えるようにしてもよく、複数の機能部41〜51の分担も任意に設定することができる。
【0127】
(4)上記の実施形態においては、変速装置TMは、2つの遊星歯車機構を有し、6つの係合装置を有し、6つの前進変速段を有し、各変速段は2つの係合要素が係合されることにより形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMは、少なくとも第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEの係合で形成される一方向変速段GOWと、一方向変速段GOWより変速比が低い変速段であって少なくとも第一係合装置E1及び第二係合装置E2の係合で形成される低変速段GLとを有していれば、どのような構成であってもよい。すなわち、変速装置TMは、2つ以上又は1つの遊星歯車機構を有してもよく、2つ以上の係合装置を有してもよく、2つ以上の前進変速段を有してもよく、各変速段は2つ以上又は1つの係合装置が係合されることにより形成されてもよい。
【0128】
(5)上記の実施形態においては、一方向変速段GOWが、第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEの係合で形成され、低変速段GLが、第一係合装置E1及び第二係合装置E2の係合で形成され、中間変速段GMが、第一係合装置E1及び第三係合装置E3の係合で形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、一方向変速段GOWは、少なくとも第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEの係合で形成されればよく、一方向変速段GOWは、第一係合装置E1及び一方向係合装置OWEに加えて1又は2以上の他の係合装置の係合で形成されてもよい。また、低変速段GLは、少なくとも第一係合装置E1及び第二係合装置E2の係合で形成されればよく、低変速段GLは、第一係合装置E1及び第二係合装置E2に加えて1又は2以上の他の係合装置の係合で形成されてもよい。中間変速段GMは、少なくとも第一係合装置E1及び第三係合装置E3の係合で形成されればよく、中間変速段GMは、第一係合装置E1及び第三係合装置E3に加えて1又は2以上の他の係合装置の係合で形成されてもよい。
【0129】
(6)上記の実施形態においては、一方向変速段GOWが、変速比の最も大きい第一段1stである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、一方向変速段GOWは、変速比の最も大きい第一段1st以外の変速段、例えば第二段2ndであってもよい。
【0130】
(7)上記の実施形態においては、始動制御部45が、機関分離クラッチSSCが解放されている状態で、内燃機関ENGの始動要求があった場合に、機関分離クラッチSSCを滑り係合状態に制御して内燃機関ENGの回転速度を上昇させる内燃機関ENGの始動制御を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両用駆動装置1は、内燃機関ENGを始動させるためのスタータ(モータ)を備えており、始動制御部45は、機関分離クラッチSSCが解放されている状態で、内燃機関ENGの始動要求があった場合に、スタータを駆動制御して内燃機関ENGの回転速度を上昇させる内燃機関ENGの始動制御を行うように構成されてもよい。この場合は、スタータによる始動制御中は、機関分離クラッチSSCは解放された状態に維持されるように構成される。そして、容量増減制御部48は、内燃機関ENGの回転速度が自律運転可能な回転速度まで上昇したと判定した後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を増加させて、係合状態に移行させるように構成される。