特許第5939176号(P5939176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939176
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】多気筒エンジンの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/02 20060101AFI20160609BHJP
   F02F 1/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   F01P3/02 A
   F01P3/02 T
   F01P3/02 R
   F02F1/14 D
   F02F1/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-31900(P2013-31900)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-163225(P2014-163225A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】松本 大典
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅博
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−243414(JP,A)
【文献】 特開2005−256685(JP,A)
【文献】 特開2005−113764(JP,A)
【文献】 特開平10−121959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/02
F02F 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配置された複数の気筒のシリンダボアを囲むようにシリンダブロックに設けられたウォータジャケットと、シリンダヘッドに設けられたウォータジャケットとを有し、ウォータポンプにより、これらのウォータジャケットとラジエータとを経由させて冷却液を循環させる冷却液経路が備えられた多気筒エンジンの冷却構造であって、
気筒列の一端側に、シリンダブロックのウォータジャケットへ冷却液を導入する導入部が設けられていると共に、
前記シリンダブロックのウォータジャケットに、前記複数の気筒のシリンダボアを囲む縦壁面を備えたスペーサが挿入され、
該スペーサの縦壁面に、
前記導入部の近傍において前記ウォータジャケットの吸気側部分への冷却液の流れを制限する絞り部と、
前記ウォータジャケットの排気側部分の上部に下部よりも流路断面積の大きな上部流路を形成する段部と、
気筒列の他端側において前記上部流路の冷却液の流れを前記ウォータジャケットの吸気側部分へ指向させると共に前記シリンダヘッド側へ指向させるように案内する案内部と、が設けられ、
前記絞り部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面の上部から外方に突出する上部絞り部と、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部と離間して前記ウォータジャケットの吸気側部分へ冷却液の一部が流れるように前記縦壁面の下部から外方に前記上部絞り部に比して小さく突出する下部絞り部とから構成され、
前記スペーサは、前記下部絞り部に隣接する気筒のシリンダボアを囲む前記縦壁面の下端部に、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面から外方に延びるつば部を備えており、
前記シリンダブロックのウォータジャケットの吸気側部分に接続されて冷却液を気筒列の中央側から排出する排出部が設けられ、該排出部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部における下方側に設けられ、
前記排出部から排出される冷却液が流れる冷却液経路に熱交換器が介設されている、
ことを特徴とする多気筒エンジンの冷却構造。
【請求項2】
前記上部流路は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘って前記スペーサの縦壁面の上部と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間に形成され、前記段部は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘って前記縦壁面の下部が上部に比して外方に突出して形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の多気筒エンジンの冷却構造。
【請求項3】
前記縦壁面は、前記ウォータジャケットの吸気側部分の上部に配置された該縦壁面と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅が前記ウォータジャケットの排気側部分の下部に配置された該縦壁面と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅に比して大きくなるように形成され、前記案内部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面から外方に突出して形成されたリブである、
ことを特徴とする請求項2に記載の多気筒エンジンの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多気筒エンジンの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンを備えた車両では一般に、多気筒エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッドに冷却液が流れるウォータジャケットを形成し、シリンダブロックの気筒列の一端側からシリンダブロック及びシリンダヘッドのウォータジャケットに冷却液を導入してシリンダボアを冷却することが行われている。
【0003】
また、シリンダブロック及びシリンダヘッドのウォータジャケットに導入された冷却液はシリンダボアを冷却することにより温められることとなるが、この温められた冷却液をシリンダヘッドの気筒列の他端側からラジエータに排出し、ラジエータによって冷却した冷却液をウォータポンプによって再びシリンダブロックの気筒列の一端側からシリンダブロックのウォータジャケットに導入して冷却液を循環させることも一般に行われている。
【0004】
このように、シリンダブロックの気筒列の一端側からシリンダブロック及びシリンダヘッドのウォータジャケットに冷却液を導入してシリンダボアを冷却する場合、各気筒について燃焼室近傍のシリンダブロックの上部は下部に比して高温となることからシリンダボアの上下方向に温度差が生じることとなる。シリンダボアの上下方向に温度差が生じると、シリンダボア内面に変形が生じてピストンリングとの局部的な摩擦による該ピストンリングやシリンダボア内面の摩耗が増加することから、シリンダボアの上下方向の温度差を抑制することが望まれる。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1には、シリンダブロックのウォータジャケット内に、複数の気筒のシリンダボアを囲む縦壁面を有するスペーサと該スペーサの上部に結合された流路分離部材とからなる区画部材を挿入し、気筒列の一端側から導入した冷却液を上下方向に分けてシリンダボアの上下方向の温度差を抑制するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4845620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のものは、シリンダボアの上下方向の温度差を抑制することができるものの、各気筒について排気側では吸気側に比して高温となることからシリンダボアの吸気側と排気側について温度差が生じることとなる。シリンダボアの吸気側と排気側についても温度差が生じると、シリンダボア内面に変形が生じてピストンリングとの局部的な摩擦による該ピストンリングやシリンダボア内面の摩耗が増加することから、シリンダボアの吸気側と排気側の温度差を抑制することが望まれる。
【0008】
また、多気筒エンジンにおいて、気筒列の一端側から冷却液を導入する場合、気筒列の一端側に比して気筒列の他端側では冷却液が温められることから冷却性能が低下し、気筒列方向に各シリンダボア間で温度差が生じることとなる。このシリンダボア間の温度差は、気筒ごとにピストンの摺動抵抗やシリンダボア内面の摩耗状況などが不均一となる原因となるので、シリンダボア間の温度差についても抑制することが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、シリンダボアの吸気側と排気側の温度差及び上下方向の温度差、並びにシリンダボア間の温度差を小さくすることができる多気筒エンジンの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に係る発明は、直列に配置された複数の気筒のシリンダボアを囲むようにシリンダブロックに設けられたウォータジャケットと、シリンダヘッドに設けられたウォータジャケットとを有し、ウォータポンプにより、これらのウォータジャケットとラジエータとを経由させて冷却液を循環させる冷却液経路が備えられた多気筒エンジンの冷却構造であって、気筒列の一端側に、シリンダブロックのウォータジャケットへ冷却液を導入する導入部が設けられていると共に、前記シリンダブロックのウォータジャケットに、前記複数の気筒のシリンダボアを囲む縦壁面を備えたスペーサが挿入され、該スペーサの縦壁面に、前記導入部の近傍において前記ウォータジャケットの吸気側部分への冷却液の流れを制限する絞り部と、前記ウォータジャケットの排気側部分の上部に下部よりも流路断面積の大きな上部流路を形成する段部と、気筒列の他端側において前記上部流路の冷却液の流れを前記ウォータジャケットの吸気側部分へ指向させると共に前記シリンダヘッド側へ指向させるように案内する案内部と、が設けられ、前記絞り部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面の上部から外方に突出する上部絞り部と、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部と離間して前記ウォータジャケットの吸気側部分へ冷却液の一部が流れるように前記縦壁面の下部から外方に前記上部絞り部に比して小さく突出する下部絞り部とから構成され、前記スペーサは、前記下部絞り部に隣接する気筒のシリンダボアを囲む前記縦壁面の下端部に、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面から外方に延びるつば部を備えており、前記シリンダブロックのウォータジャケットの吸気側部分に接続されて冷却液を気筒列の中央側から排出する排出部が設けられ、該排出部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部における下方側に設けられ、前記排出部から排出される冷却液が流れる冷却液経路に熱交換器が介設されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記上部流路は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘って前記スペーサの縦壁面の上部と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間に形成され、前記段部は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘って前記縦壁面の下部が上部に比して外方に突出して形成されていることを特徴とする。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記縦壁面は、前記ウォータジャケットの吸気側部分の上部に配置された該縦壁面と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅が前記ウォータジャケットの排気側部分の下部に配置された該縦壁面と前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅に比して大きくなるように形成され、前記案内部は、前記シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように前記縦壁面から外方に突出して形成されたリブであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0018】
まず、本願の請求項1に係る発明によれば、シリンダブロックのウォータジャケットに挿入されたスペーサの縦壁面に、気筒列の一端側に設けられた導入部の近傍においてウォータジャケットの吸気側部分への冷却液の流れを制限する絞り部と、ウォータジャケットの排気側部分の上部に下部よりも流路断面積の大きな上部流路を形成する段部と、気筒列の他端側において上部流路の冷却液の流れをウォータジャケットの吸気側部分へ指向させると共にシリンダヘッド側へ指向させるように案内する案内部とが設けられている。
【0019】
これにより、絞り部によって気筒列の一端側から導入された冷却液をウォータジャケットの吸気側部分に比して排気側部分に多く流すことができるので、シリンダボアの吸気側に比して高温となるシリンダボアの排気側の冷却性能を向上させることができ、シリンダボアの吸気側と排気側の温度差を小さくすることができる。
【0020】
また、段部によって気筒列の一端側から導入された冷却液をウォータジャケットの排気側部分の上部において下部に比して多く流すことができるので、シリンダボアの下部に比して高温となるシリンダボアの上部の冷却性能を向上させることができ、シリンダボアの上下方向の温度差を小さくすることができる。
【0021】
更に、気筒列の一端側から導入されてウォータジャケットの排気側部分の上部を流れる冷却液の冷却性能は気筒列の他端側では低下することとなるが、案内部によってウォータジャケットの排気側部分の上部を流れる冷却液を気筒列の他端側においてウォータジャケットの吸気側部分へUターンして確実に流すことができるので、気筒列の他端側におけるシリンダボアの冷却性能を向上させることができ、気筒列方向においてシリンダボア間の温度差を小さくすることができる。加えて、ウォータジャケットの排気側部分の上部を流れる冷却液をシリンダヘッド側へ確実に流すことができるので、シリンダヘッドについても冷却性能を向上させることができる。
また更に、絞り部は、シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように縦壁面の上部から外方に突出する上部絞り部と、シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部と離間してウォータジャケットの吸気側部分へ冷却液の一部が流れるように縦壁面の下部から外方に突出する下部絞り部とから構成されることにより、気筒列の一端側から導入された冷却液の一部をウォータジャケットの吸気側部分に流すことができるので、気筒列の一端側から導入された冷却液によるシリンダボアの吸気側と排気側の冷却性能を調整することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
また更に、スペーサは、下部絞り部に隣接する気筒のシリンダボアを囲む縦壁面の下端部に、シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように縦壁面から外方に延びるつば部を備えていることにより、気筒列の一端側から導入されてウォータジャケットの吸気側部分に流れる冷却性能の高い冷却液が、スペーサの下方からスペーサの縦壁面とシリンダブロックのウォータジャケットの内壁部との間に流れてシリンダボアの下部が過度に冷却されることを抑制することができ、シリンダボアの上下方向の温度差が大きくなることを抑制することができる。
また更に、シリンダブロックのウォータジャケットの吸気側部分に接続されて冷却液を気筒列の中央側から排出する排出部が設けられていることにより、気筒列の一端側から導入された冷却液を、ウォータジャケットの排気側部分の上部において気筒列の一端側から他端側へ、次いで気筒列の他端側においてウォータジャケットの吸気側部分へ確実に流すことができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0022】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、上部流路は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘ってスペーサの縦壁面の上部とシリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間に形成され、段部は、気筒列の一端側から気筒列の他端側に亘って縦壁面の下部が上部に比して外方に突出して形成されていることにより、比較的簡単な構成によって、シリンダボアの上下方向の温度差を小さくすることができる。
【0023】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、縦壁面は、ウォータジャケットの吸気側部分の上部に配置された縦壁面とシリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅がウォータジャケットの排気側部分の下部に配置された縦壁面とシリンダブロックのウォータジャケットの外壁部との間の幅に比して大きくなるように形成され、案内部は、シリンダブロックのウォータジャケットの外壁部に近接するように縦壁面から外方に突出して形成されたリブであることにより、比較的簡単な構成によって、気筒列方向においてシリンダボア間の温度差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンのシリンダブロック、スペーサ、ガスケットを示す図である。
図3】スペーサが挿入されたシリンダブロックを示す斜視図である。
図4図3におけるY4−Y4線に沿った前記シリンダブロックの断面図である。
図5図3におけるY5−Y5線に沿った前記シリンダブロックの断面図である。
図6図3におけるY6−Y6線に沿った前記シリンダブロックの断面図である。
図7】スペーサを示す斜視図である。
図8図7におけるA方向から見たスペーサの斜視図である。
図9】スペーサの上面図である。
図10】スペーサの正面図である。
図11】スペーサの背面図である。
図12】スペーサの左側面図である。
図13】スペーサの右側面図である。
図14図9におけるY14−Y14線に沿ったスペーサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造を模式的に示す図である。なお、図1及び後述する図2から図6では、シリンダブロック及びシリンダヘッドについて、吸気側をINとして表し、排気側をEXとして表している。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造1は、直列に配置された複数の気筒#1〜#4のシリンダボア21を囲むようにシリンダブロック20に設けられたウォータジャケット22と、シリンダヘッド30に設けられたウォータジャケット32とを有し、ウォータポンプ3により、これらのウォータジャケット22、32と冷却液を冷却するためのラジエータ4とを経由させて冷却液を循環させる冷却液経路Lを備えている。
【0030】
本実施形態では、多気筒エンジン2は、4つの気筒#1、#2、#3、#4が直列に配置された直列4気筒エンジンであり、シリンダブロック20には、4つの気筒#1〜#4のシリンダボア21を囲むようにウォータジャケット22が環状に形成されている。
【0031】
シリンダブロック20には、気筒列の一端側に、具体的には第1気筒#1側にシリンダブロック20のウォータジャケット22へ冷却液を導入する導入部23が形成されている。シリンダブロック20にはまた、ウォータジャケット22の吸気側部分に接続され、冷却液を気筒列の中央側から排出する排出部24が形成されている。
【0032】
シリンダブロック20とシリンダヘッド30とは、後述する図2に示すガスケット50を挟んで結合されている。シリンダブロック20のウォータジャケット22とシリンダヘッド30のウォータジャケット32とは、ガスケット50に形成された連通孔52を通じて連通している。
【0033】
これにより、気筒列の一端側においてシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入された冷却液は、その一部が連通孔52を通じてシリンダヘッド30のウォータジャケット32に流れ、その残部が排出部24を通じてシリンダブロック20のウォータジャケット22から排出される。
【0034】
シリンダヘッド30のウォータジャケット32は、各気筒#1〜#4の吸気ポート、排気ポート及びプラグポート(不図示)などの周囲を覆うようにして気筒列の一端側から他端側まで気筒列全体に亘って形成されている。
【0035】
シリンダヘッド30には、気筒列の他端側に、具体的には第4気筒#4側にシリンダヘッド30のウォータジャケット32から冷却液を排出する第1排出部33及び第2排出部34が形成されている。シリンダヘッド30のウォータジャケット32にシリンダブロック20のウォータジャケット22から導入された冷却液は、気筒列の他端側から排出される。
【0036】
第1排出部33から排出された冷却液は、冷却液の温度を検出する温度検出センサを備えた温度検出ユニット6と、第1排出部33とラジエータ4とを接続する冷却液経路L1とを通じてラジエータ4に流れ、ラジエータ4によって冷却された後に、ラジエータ4とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L2を通じてバルブユニット5に流れるようになっている。
【0037】
バルブユニット5は、第1流量制御弁5a、第2流量制御弁5b、第3流量制御弁5c及びサーモスタット弁5dを備え、第1、第2及び第3流量制御弁5a、5b、5cはそれぞれ、制御装置15によって第1、第2及び第3流量制御弁5a、5b、5cを流れる冷却液の流量が制御される。
【0038】
本実施形態では、第1、第2及び第3流量制御弁5a、5b、5cはそれぞれ、開状態に設定されているが、第1、第2及び第3流量制御弁5a、5b、5cは、温度検出ユニット6の温度検出センサによって検出された冷却液の温度に基づいて開閉制御及び流量制御を行うことが可能である。一方、サーモスタット弁5dは、該サーモスタット弁5dにおける冷却液の温度が所定温度になると開状態となるように構成されている。
【0039】
ラジエータ4とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L2を通じてバルブユニット5に流れた冷却液は、第1流量制御弁5aを通じ、バルブユニット5とウォータポンプ3とを接続する冷却液経路L3を通じてウォータポンプ3に流れ、ウォータポンプ3によってシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入される。
【0040】
第1排出部33から排出された冷却液はまた、温度検出ユニット6と、第1排出部33とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L4とを通じてバルブユニット5に流れる。冷却液経路L4と冷却液経路L3とはサーモスタット弁5dにおいて接続されており、第1排出部33から排出された冷却液はまた、温度検出ユニット6、冷却液経路L4、サーモスタット弁5d及び冷却液経路L3を通じてウォータポンプ3に流れ、ウォータポンプ3によってシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入される。
【0041】
一方、第2排出部34から排出された冷却液は、第2排出部34とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L5を通じてバルブユニット5に流れる。冷却液経路L5にはまた、冷却液を補助的に圧送する補助ウォータポンプ7と、冷却液と空調用の風との間で熱交換するヒータユニット8と、排気ガスの一部を吸気側に還流させるEGRシステムにおける冷却液と吸気側に還流される排気ガスとの間で熱交換するEGRクーラ9及びEGRクーラ9への冷却液の供給量を制御するEGRバルブ10とが介設されている。
【0042】
第2排出部34とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L5とを通じてバルブユニット5に流れた冷却液は、第3流量制御弁5cを通じ、バルブユニット5とウォータポンプ3とを接続する冷却液経路L3を通じてウォータポンプ3に流れ、ウォータポンプ3によってシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入される。
【0043】
なお、第2排出部34とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L5を通じてバルブユニット5に流れる冷却液は、サーモスタット弁5dにも流れるように構成されており、サーモスタット弁5dにおいて冷却液が所定温度以上で開状態にある場合には、サーモスタット弁5dと冷却液経路L3とを通じてウォータポンプ3に流れるようになっている。
【0044】
本実施形態ではまた、シリンダブロック20に排出部24が形成されており、シリンダブロック20の排出部24から排出された冷却液は、シリンダブロック20の排出部24とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L6を通じてバルブユニット5に流れる。冷却液経路L6にはまた、冷却液とエンジンオイルとの間で熱交換するオイルクーラ11と、冷却液と自動変速機用オイルであるATFとの間で熱交換するATFウォーマ12とが介設されている。
【0045】
シリンダブロック20の排出部24とバルブユニット5とを接続する冷却液経路L6を通じてバルブユニット5に流れた冷却液は、第2流量制御弁5bを通じ、冷却液経路L3を通じてウォータポンプ3に流れ、ウォータポンプ3によってシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入される。
【0046】
このように、本実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造1は、シリンダブロック20に設けられたウォータジャケット22と、シリンダヘッド30に設けられたウォータジャケット32とを有し、ウォータポンプ3により、これらのウォータジャケット22、32とラジエータ4とを経由させて冷却液を循環させるようになっている。
【0047】
図2は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンのシリンダブロック、スペーサ、ガスケットを示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る多気筒エンジン2では、シリンダブロック20に設けられたウォータジャケット22に、4つの気筒#1〜#4のシリンダボア21を囲む縦壁面41を備えたスペーサ40が挿入される。
【0048】
そして、シリンダブロック20のウォータジャケット22にスペーサ40が挿入された状態で、ガスケット50がシリンダブロック20に重ね合わせられ、ガスケット50を介してシリンダブロック20とシリンダヘッド30とが図示しない締結ボルトを用いて結合される。
【0049】
ガスケット50には、シリンダボア21と同様に円形状に形成された4つの開口部51が設けられると共に、シリンダブロック20のウォータジャケット22とシリンダヘッド30のウォータジャケット32との間で冷却液が流れることを可能にする連通孔52が設けられている。なお、図2では、シリンダブロック20のウォータジャケット22の形状を二点鎖線で示している
【0050】
ガスケット50には、4つの気筒#1〜#4に対応して形成された4つの開口部51の排気側にそれぞれ1つの連通孔52が設けられると共に、気筒列の中央側の2つの気筒#2、#3に対応して形成された2つの開口部51の吸気側にそれぞれ1つの連通孔52が設けられ、シリンダブロック20の導入部23が形成される気筒列の一端側に、4つの連通孔52が形成されている。
【0051】
図3から図14を参照して、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造について、さらに詳細に説明する。
図3は、スペーサが挿入されたシリンダブロックを示す斜視図、図4は、図3におけるY4−Y4線に沿った前記シリンダブロックの断面図、図5は、図3におけるY5−Y5線に沿った前記シリンダブロックの断面図、図6は、図3におけるY6−Y6線に沿った前記シリンダブロックの断面図である。
【0052】
図3から図6に示すように、シリンダブロック20のウォータジャケット22に挿入されるスペーサ40は、4つの気筒#1〜#4のシリンダボア21を囲む縦壁面41を備え、シリンダブロック20のウォータジャケット22の内壁部25とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間に配置される。なお、図5及び図6に示すように、シリンダブロック20のウォータジャケット22の内壁部25には、耐摩耗性を有するライナー27が一体成形されている。
【0053】
図7は、スペーサを示す斜視図であり、図8は、図7におけるA方向から見たスペーサの斜視図、図9は、スペーサの上面図、図10は、スペーサの正面図、図11は、スペーサの背面図、図12は、スペーサの左側面図、図13は、スペーサの右側面図、図14は、図9におけるY14−Y14線に沿ったスペーサの断面図である。
【0054】
図7から図14に示すように、スペーサ40の縦壁面41は、4つの気筒#1〜#4のシリンダボア21を囲むように環状に形成されると共に上下方向に延びるように形成されている。縦壁面41には、気筒列の一端側において吸気側に、シリンダブロック20の導入部23の近傍においてウォータジャケット22の吸気側部分22bへの冷却液の流れを制限する絞り部42が設けられている。
【0055】
絞り部42は、縦壁面41から外方に平面視で略断面三角形状に突出して形成され、縦壁面42の上部から外方に突出する上部絞り部42aと、縦壁面42の下部から外方に上部絞り部42aに比して小さく突出する下部絞り部42bとから構成されている。
【0056】
上部絞り部42aは、図4に示すように、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26に近接するように設けられ、下部絞り部42bは、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26と離間するように設けられる。
【0057】
縦壁面41にはまた、気筒列の一端側に、シリンダブロック20の導入部23から導入された冷却液をウォータジャケット22の排気側部分22aの上部へ指向させる傾斜部43が設けられている。傾斜部43は、縦壁面41の吸気側の下部から縦壁面41の排気側に向かって上方へ傾斜して延び、縦壁面41から外方に突出するリブによって形成されている。
【0058】
縦壁面41にはまた、ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部に下部よりも流路断面積の大きな上部流路L11を形成する段部44が設けられている。段部44は、ウォータジャケット22の排気側部分22aに配置される縦壁面41の下部が上部に比して外方に突出して形成されている。
【0059】
図5及び図6に示すように、ウォータジャケット22の排気側部分22aに配置される縦壁面41は、該縦壁面41の上部とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅が、該縦壁面41の下部とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅に比して大きく形成されている。
【0060】
これにより、ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部において縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間に形成される冷却液が流れる上部流路L11の流路断面積が、ウォータジャケット22の排気側部分22aの下部において縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の内壁部25との間に形成される冷却液が流れる下部流路L12の流路断面積に比して大きく形成されている。
【0061】
スペーサ40では、縦壁面41の下部に設けられた段部44の内部に上下方向に延びるリブ45が形成されている。リブ45は、縦壁面41から内方に向かって延び、図9に示すように、リブ45の先端が縦壁面41の上部と一致するように形成されている。
【0062】
縦壁面41にはまた、気筒列の他端側において、気筒列の一端側から他端側に向かう上部流路L11の冷却液の流れをウォータジャケット22の吸気側部分22aへ指向させると共にシリンダヘッド30側へ指向させるように案内する案内部46が設けられている。
【0063】
案内部46は、気筒列の他端側において段部44に連続して縦壁面41の排気側から吸気側に向かって上方へ傾斜して延びると共に第4気筒#4のシリンダボア21を囲む縦壁面41の吸気側に水平方向に連続して延び、縦壁面41から外方に突出するリブによって形成されている。
【0064】
縦壁面41はまた、ウォータジャケット22の吸気側部分22bの上部に配置された該縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅がウォータジャケット22の排気側部分22aの下部に配置された該縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅に比して大きくなるように形成されている。
【0065】
スペーサ40の縦壁面41はまた、下部絞り部42bに隣接する気筒、具体的には第1及び第2気筒#1、#2のシリンダボア21を囲む縦壁面41の下端部に、縦壁面41から外方に延びるつば部47を備えている。つば部47は、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26に近接するように、ウォータジャケット22の外壁部26の形状に応じて平面視で略台形状に形成されている。
【0066】
なお、スペーサ40は、ポリアミド系熱可塑性樹脂などの材料を用いて射出成形によって一体的に形成されている。
【0067】
次に、スペーサ40を挿入したシリンダブロック20のウォータジャケット22に導入された冷却液の流れについて説明する。
図7に示すように、気筒列の一端側においてシリンダブロック20に導入された冷却液は、矢印S1で示すように、絞り部42によってウォータジャケット22の吸気側部分22bへの流れが制限されて主にウォータジャケット22の排気側部分22aへ流れ、傾斜部43によってウォータジャケット22の排気側部分22aの上部へ流れる。
【0068】
ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部へ流れた冷却液は、図8に示すように、ウォータジャケット22の排気側部分22aにおいて、矢印S2、S3、S4、S5の順に気筒列の他端側へ、段部44によって主にウォータジャケット22の排気側部分22の上部に形成された下部よりも流路断面積の大きい上部流路L11を流れる。ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部において気筒列の他端側へ流れた冷却液は、案内部46によって、矢印S6に示すように、ウォータジャケット22の吸気側部分22bへ流れると共にシリンダヘッド30側へ流れる。
【0069】
気筒列の他端側においてウォータジャケット22の吸気側部分22bへ流れると共にシリンダヘッド30側へ流れた冷却液は、図7及び図10において矢印S7及びS8に示すように、ウォータジャケット22の吸気側部分22bにおいて気筒列の一端側へ流れると共にシリンダヘッド30側へ流れる。シリンダヘッド30側へ流れた冷却液は、前述したように、ガスケット50の連通孔52を通じてシリンダヘッド30のウォータジャケット32に流れる。
【0070】
本実施形態では、シリンダブロック20の吸気側部分22bに接続される排出部24が気筒列の中央側に形成されているので、ウォータジャケット22の吸気側部分22bにおいて気筒列の他端側から一端側へ流れる冷却液の一部が、矢印S10に示すように、シリンダブロック20の排出部24に向かって下方に流れ、排出部24から排出される。
【0071】
本実施形態ではまた、気筒列の一端側においてシリンダブロック20に導入された冷却液は、絞り部42によってウォータジャケット22の吸気側部分22bへの流れが制限されているものの、絞り部42を構成する下部絞り部42bは、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26と離間するように形成されているので、気筒列の一端側においてシリンダブロック20に導入された冷却液の一部が、図7及び図10において矢印S11、S12に示すように、ウォータジャケット22の吸気側部分22bに流れ、排出部24から排出される。
【0072】
このように、本実施形態に係る多気筒エンジンの冷却構造1では、シリンダブロック20のウォータジャケット22に挿入されたスペーサ40の縦壁面41に、気筒列の一端側に設けられた導入部23の近傍においてウォータジャケット22の吸気側部分22bへの冷却液の流れを制限する絞り部42と、ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部に下部よりも流路断面積の大きな上部流路L11を形成する段部44と、気筒列の他端側において上部流路L11の冷却液の流れをウォータジャケット22の吸気側部分22bへ指向させると共にシリンダヘッド30側へ指向させるように案内する案内部46とが設けられている。
【0073】
これにより、絞り部42によって気筒列の一端側から導入された冷却液をウォータジャケット22の吸気側部分22bに比して排気側部分22aに多く流すことができるので、シリンダボア21の吸気側に比して高温となるシリンダボア21の排気側の冷却性能を向上させることができ、シリンダボア21の吸気側と排気側の温度差を小さくすることができる。
【0074】
また、段部44によって気筒列の一端側から導入された冷却液をウォータジャケット22の排気側部分22aの上部において下部に比して多く流すことができるので、シリンダボア21の下部に比して高温となるシリンダボア21の上部の冷却性能を向上させることができ、シリンダボア21の上下方向の温度差を小さくすることができる。
【0075】
更に、気筒列の一端側から導入されてウォータジャケット22の排気側部分22aの上部を流れる冷却液の冷却性能は気筒列の他端側では低下することとなるが、案内部46によってウォータジャケット22の排気側部分22aの上部を流れる冷却液を気筒列の他端側においてウォータジャケット22の吸気側部分22bへUターンして確実に流すことができるので、気筒列の他端側におけるシリンダボア21の冷却性能を向上させることができ、気筒列方向においてシリンダボア21間の温度差を小さくすることができる。加えて、ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部を流れる冷却液をシリンダヘッド30側へ確実に流すことができるので、シリンダヘッド30についても冷却性能を向上させることができる。
【0076】
また、上部流路L11は、スペーサ40の縦壁面41の上部とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間に形成され、段部44は、縦壁面41の下部が上部に比して外方に突出して形成されていることにより、比較的簡単な構成によって、シリンダボア21の上下方向の温度差を小さくすることができる。
【0077】
更に、縦壁面41は、ウォータジャケット22の吸気側部分22bの上部に配置された縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅がウォータジャケット22の排気側部分22aの下部に配置された縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26との間の幅に比して大きくなるように形成され、案内部46は、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26に近接するように縦壁面41から外方に突出して形成されたリブであることにより、比較的簡単な構成によって、気筒列方向においてシリンダボア21間の温度差を小さくすることができる。
【0078】
また更に、絞り部42は、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26に近接するように縦壁面41の上部から外方に突出する上部絞り部42aと、シリンダブロック20のウォータジャケット22の外壁部26と離間するように縦壁面41の下部から外方に突出する下部絞り部42bとから構成されていることにより、気筒列の一端側から導入された冷却液の一部をウォータジャケット22の吸気側部分22bに流すことができるので、気筒列の一端側から導入された冷却液によるシリンダボア21の吸気側と排気側の冷却性能を調整することができる。
【0079】
また、スペーサ40は、下部絞り部42bに隣接する気筒#1、#2のシリンダボア21を囲む縦壁面41の下端部に縦壁面41から外方に延びるつば部47を備えていることにより、気筒列の一端側から導入されてウォータジャケット22の吸気側部分22bに流れる冷却性能の高い冷却液が、スペーサ40の下方からスペーサ40の縦壁面41とシリンダブロック20のウォータジャケット22の内壁部25との間に流れてシリンダボア21の下部が過度に冷却されることを抑制することができ、シリンダボア21の上下方向の温度差が大きくなることを抑制することができる。
【0080】
また更に、シリンダブロック20のウォータジャケット22の吸気側部分22bに接続され、冷却液を気筒列の中央側から排出する排出部24が設けられていることにより、気筒列の一端側から導入された冷却液を、ウォータジャケット22の排気側部分22aの上部において気筒列の一端側から他端側へ次いで気筒列の他端側においてウォータジャケット22の吸気側部分22bへ確実に流すことができ、気筒列の他端側におけるシリンダボア21の冷却性能を向上させることができ、気筒列方向においてシリンダボア21間の温度差を小さくすることができる。
【0081】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明によれば、多気筒エンジンにおいて、シリンダボアの吸気側と排気側の温度差及び上下方向の温度差、並びにシリンダボア間の温度差を小さくすることが可能となるから、多気筒エンジンを搭載する車両などの製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0083】
2 多気筒エンジン
3 ウォータポンプ
4 ラジエータ
20 シリンダブロック
21 シリンダボア
22 シリンダブロックのウォータジャケット
22a ウォータジャケットの排気側部分
22b ウォータジャケットの吸気側部分
23 導入部
24、33、34 排出部
26 ウォータジャケットの外壁部
30 シリンダヘッド
32 シリンダヘッドのウォータジャケット
40 スペーサ
41 縦壁面
42 絞り部
42a 上部絞り部
42b 下部絞り部
44 段部
46 案内部
47 つば部
L 冷却液経路
L11 上部流路
#1、#2、#3、#4 気筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14