(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
作業機械に配索される索状体の中には、例えば運転室内の操作装置と運転室外部のコントロールバルブとを接続する配管用ホースのように、当該運転室の内外にわたって配索されるものがある。このような索状体は、前記運転室の内外を仕切る隔壁に設けられた貫通穴に挿通された状態で配索される。さらに、作業機械の振動などにより前記索状体が動いて前記隔壁の貫通穴の周縁部と擦れるのを防ぐために、当該隔壁において当該索状体を保持するための索状体保持具が用いられる。
【0003】
従来、このような索状体保持具として、
図11に示される保持具80及び
図12に示される保持具90が知られている。これらの保持具80,90は、それぞれ特許文献1及び2に開示されているものであり、いずれも、
図11及び
図12に示される隔壁100に設けられた貫通穴102に挿通されるように配索される索状体110を保持するためのものである。
【0004】
図11に示される保持具80は、仕切板81とグロメット82とを有する。仕切板81は、弾性材からなり、複数の索状体110がそれぞれ挿通可能な複数の貫通穴83を有する。グロメット82は、前記仕切板81を保持する部分84と、隔壁100に装着される基部85と、中間部86と、を有する。基部85は、周溝87を有し、この周溝87内に前記隔壁100の貫通穴83の周縁部が嵌り込むようにして当該隔壁100に装着される。
【0005】
図12に示される保持具90は、グロメット91と固定枠92とを有する。グロメット91は、弾性材からなり、貫通穴93を囲む筒状をなし、かつ、小径の本体94と大径の鍔部95と、を一体に有する。前記貫通穴93は索状体110が隙間なく挿通することが可能な径を有し、前記本体94は隔壁100の貫通穴102に嵌入可能な外径を有し、前記鍔部95は前記貫通穴102の径よりも大きな外径を有する。前記固定枠92は、前記索状体110の外径よりも大きい径の貫通穴96を囲む環状をなす。
【0006】
前記グロメット91は、その貫通穴93に前記索状体110が挿通された状態で前記固定枠92を用いて前記隔壁100に固定される。詳しくは、当該グロメット91の本体94が前記貫通穴102内に嵌入されるとともに、当該グロメット91の鍔部95が前記固定枠92と前記隔壁100における前記貫通穴102の周縁部との間に挟み込まれた状態で当該固定枠92が前記隔壁100にボルト98によって締結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように作業機械の運転室の隔壁に設けられる索状体保持具には、振動などに関わらず索状体を確実に保持することと、前記運転室内に粉塵等が舞い込まないように前記索状体が挿通される隔壁の貫通穴を塞いで高いシール性を確保することと、が要求される。しかしながら、
図11及び
図12に示される索状体保持具では、前記の2つの要求を高いレベルで同時に満たすことは困難である。
【0009】
具体的に、
図11に示される保持具80では、グロメット82の基部85に形成された溝87に隔壁100における貫通穴102の周縁部が嵌り込むことにより当該隔壁100に当該基部85が装着されるものであるから、当該基部85のうち前記溝87の上下に位置する部分と前記隔壁100との間の上下方向の隙間、及び、前記溝87の底部を構成する基部85の外周面と前記貫通穴102を囲む隔壁100の内周面との間の径方向の隙間の発生は避けられない。従って、当該隙間を通じて運転室内に粉塵が入りこむおそれがある。
【0010】
一方、
図12に示される保持具90では、グロメット91が索状体110を確実に保持することを可能にするための貫通穴93の径の設定が難しい。具体的に、当該貫通穴93の径を索状体110の外径よりも大きくすると、当該貫通穴93を囲むグロメット91の内周面と索状体110の外周面との間に隙間が生じ、この隙間を通じて運転室内に粉塵等が入りこむおそれがあるとともに、グロメット91による索状体110の保持が不安定となるおそれがある。この不都合を回避するために貫通穴93の径を索状体110の外径よりも小さくした場合、その寸法差によっては貫通穴93への索状体110の挿通が困難となる。このような貫通穴93の径の寸法を、弾性材からなるグロメット91について高精度で管理することはきわめて難しい。
【0011】
なお、この保持具90では、前記貫通穴93と前記索状体110との嵌め合いはルーズにしながら、隔壁100の貫通穴102に本体91が圧入されるように当該本体91の寸法を設定して当該圧入によるグロメット91の径方向の圧縮にて当該貫通穴93の内周面と索状体110の外周面との密着を図ることも考えられるが、この場合には当該貫通穴102に対する本体91の外径の寸法管理が難しくなる。
【0012】
以上説明した保持具80,90について、前記の不都合を解消するために新たなシール部材や固定部材を追加することは、構造の複雑化及びコストの著しい増大を招くため、好ましくない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、作業機械の運転室の隔壁に設けられた貫通穴に挿通される索状体を保持するための索状体保持具であって、簡素な構造で前記索状体の確実な保持及び前記貫通穴での確実なシールを実現することが可能なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明が提供する索状体保持具は、弾性材からなり、前記索状体が挿通可能な索状体挿通孔を囲む内周面と前記隔壁の前記貫通穴の周縁部分に全周にわたって密着することが可能なシール面とを有するグロメットと、このグロメットを保持しかつ前記シール面を前記隔壁の前記貫通穴の周縁部分に密着させながら当該グロメットを当該隔壁に固定する固定部材と、を備える。固定部材は、前記グロメットを外側からクランプすることにより当該グロメットをその内周面が前記索状体の外周面に密着するように弾性変形させるクランプ部と、このクランプ部と一体に変位するように当該クランプ部とつながり、前記隔壁に対してこれと直交する方向に締結されることにより当該隔壁に前記グロメットを固定する固定部と、を有する。さらに、前記クランプ部は、このクランプ部の前記グロメットに対する相対変位であって当該クランプ部が前記隔壁に近づく向きの相対変位が規制された状態で当該グロメットをクランプするものであり、前記固定部は前記隔壁と直交する方向に当該隔壁と締結されることによって当該方向に前記クランプ部及びこれにクランプされる前記グロメットを変位させて前記シール面を前記隔壁に密着させる。
【0015】
この索状体保持具では、グロメットとこれをクランプしながら隔壁に固定される固定部材とを備えるだけの簡素な構造で、索状体の確実な保持及び前記貫通穴での確実なシールを実現することができる。具体的に、前記固定部材は、そのクランプ部がグロメットをクランプして当該グロメットの内周面すなわち索状体挿通孔を囲む内周面が当該索状体挿通孔に挿通される索状体の外周面に密着するように当該グロメットを弾性変形させることにより、当該グロメットによる当該索状体の保持を確実にすることができる。さらに、当該クランプ部の当該グロメットに対する相対変位であって当該クランプ部が隔壁に近づく向きの相対変位が規制された状態で当該クランプ部とつながる固定部が前記隔壁に当該隔壁と直交する方向に締結されることにより、当該方向に前記グロメットを変位させてそのシール面を前記隔壁の貫通穴の周縁部に密着させることができ、これにより、当該貫通穴を通じて運転室の外部から内部に粉塵等が入り込むのを確実に防ぐことができる。
【0016】
前記グロメットに対する前記クランプ部の相対変位の規制は、例えば当該クランプ部が当該グロメットを弾性変形させながら当該グロメットの外周面に食い込むことによっても、その食い込み度合いによってはある程度達成することが可能であるが、
本発明では、当該グロメットが前記クランプ部によりクランプされる被クランプ部分よりも前記シール面に近い位置で当該被クランプ部分よりも外側に突出する変位規制突出部を有し、この変位規制突出部と前記クランプ部との当接によって当該グロメットに対する当該クランプ部の相対変位が規制され
る。当該変位規制突出部は、当該相対変位の規制をより確実にし、ひいては前記隔壁への前記シール面の密着をより確実にすることができる。
【0017】
前記クランプ部のうち前記隔壁と反対側の面が前記グロメットの索状体挿通孔の端よりも前記隔壁から遠い位置にある場合、前記グロメットは前記索状体挿通孔と前記クランプ部との間の位置で当該索状体挿通孔の端よりも隔壁から離れる向きに突出して前記索状体と前記クランプ部との接触を阻止する接触阻止部を有することが、より好ましい。この接触阻止部、すなわち、弾性材からなるグロメットの一部である部分は、前記索状体が前記クランプ部に接触することによる当該索状体の損傷を有効に防ぐことができる。
【0018】
前記グロメットは、その索状体挿通孔を横断するようにして当該グロメットの少なくとも一部を当該索状体挿通孔の軸方向と直交する方向に分断する切れ目を有し、前記クランプ部は当該切れ目により前記グロメットが分断される方向の両側から前記グロメットをクランプするものであることが、好ましい。前記切れ目は、前記索状体挿通孔を横切る位置で前記グロメットを分断することにより、当該索状体挿通孔への索状体の挿通を容易にすることができる。そして、この分断の方向と平行な方向にクランプ部がグロメットをクランプすることにより、当該分断にかかわらず前記索状体挿通孔を囲むグロメットの内周面を索状体の外周面に確実に密着させることができる。
【0019】
前記クランプ部は、そのクランプの方向について一方の側から前記グロメットに当接する第1クランプ部材と、この第1クランプ部材と反対の側から前記グロメットに当接する第2クランプ部材と、これら第1及び第2クランプ部材が前記グロメットをクランプするようにそのクランプ方向に前記第1及び第2クランプ部材を相互に締結するクランプ用締結具と、を有す
る。このクランプ部の第1クランプ部材と第2クランプ部材との分割により、グロメットの周囲への当該クランプ部の分割を容易にしながら、第1及び第2クランプ部材同士の締結によってグロメットの内周面を索状体の外周面に密着させることができる。
本発明では、前記第1クランプ部材及び前記第2クランプ部材のうちの前記第2クランプ部材が前記グロメットの変位規制突出部に対して前記シール面と反対の側から当接することにより当該グロメットに対する相対変位を規制されながら前記第1クランプ部材とともに前記被クランプ部分をクランプし、前記固定部は前記第1クランプ部材及び前記第2クランプ部材のうちの前記第1クランプ部材のみにつながり、前記変位規制突出部を介することなく前記隔壁と直交する方向に当該隔壁と締結される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、作業機械の運転室の隔壁に設けられた貫通穴に挿通される索状体を保持するための索状体保持具であって、簡素な構造で前記索状体の確実な保持及び前記貫通穴での確実なシールを実現することが可能なものが、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明
の実施の形態に係る索状体保持具が使用される作業機械の要部を示す。この作業機械は、旋回フレーム10と、この旋回フレーム10に搭載される運転室11と、この運転室11の後方の位置で旋回フレーム10に搭載されるコントロールバルブ12と、を備える。前記運転室11は複数の隔壁によって囲まれている。運転室11内には、図示されない運転席と、その側方に位置するコントロールボックス13と、が設けられている。コントロールボックス13は回動操作されることが可能な操作レバー14と、この操作レバー14の操作に応じてパイロット圧を出力するパイロット弁15と、を含む。このパイロット弁15は、それぞれが索状体である複数本のパイロットホース16を介して前記コントロールバルブ12に接続される。
【0024】
前記パイロット弁15は運転室11内にあり、前記コントロールバルブ12は運転室11の後方すなわち外部にあるため、これらを相互に接続する前記パイロットホース16は、前記運転室11の隔壁を横切るように配索される。この実施の形態では、当該隔壁の一つであるフロアプレート17に貫通穴18が設けられ、前記パイロットホース16は当該貫通穴18に挿通されるようにして運転室11の内外にわたり配索される。そして、当該フロアプレート17側で前記パイロットホース16を保持するとともに前記貫通穴18を塞いで運転室11内を密閉するために、前記索状体保持具に相当する保持具HD1が用いられる。
【0025】
本発明に係る索状体保持具が保持する索状体は前記パイロットホースに限られない。当該索状体は、運転室の隔壁を通って配索されるものであればよく、例えば他の油圧配管や配水管、あるいは電気接続用のケーブルであってもよい。また、本発明に係る索状体保持具が固定される隔壁は前記フロアプレート17に限らず、他の隔壁、例えば運転室を側方から囲む側壁であってもよい。
【0026】
前
記実施の形態に係る保持具HD1は、
図2〜
図6に示すようなグロメット20と、固定部材と、を備える。前記固定部材は、第1クランプ部材30Aと、第2クランプ部材30Bと、固定部38と、クランプ用締結具であるボルト40及びナット42と、固
定用締結具であるボルト44及びナット46と、を含む。
【0027】
前記グロメット20は、ゴム等の弾性材により形成されており、ホース保持部22と、シール部23と、接触阻止部24と、位置決め部25と、を一体に有する。
【0028】
前記ホース保持部22は、前記各パイロットホース16と直接接触してこれらを保持する部分であり、全体がブロック状、ここでは略直方体状、をなす。このホース保持部22を上下方向に貫通するように複数のホース挿通孔21が形成されており、よってホース保持部22は各ホース挿通孔21をそれぞれ囲む内周面22aを有する。各ホース挿通孔21にはそれぞれ前記パイロットホース16が挿通可能であり、当該ホース挿通孔21の径は、これに挿通されるべきパイロットホース16の外周面に前記内周面22aが密着可能となるように、当該パイロットホース16の外径と略同等に設定されている。
【0029】
前記ホース挿通孔21の個数及び配列は限定されないが、こ
の実施の形態では、前記ホース挿通孔21が計6箇所にそれぞれ形成されている。詳しくは、前記フロアプレート17に沿う水平方向であって
図4に矢印A1で示される第1方向に並ぶ2つの列にわたって各ホース挿通孔21が配列され、各列は3個のホース挿通孔21を含んでおり、各列のホース挿通孔21は前記第1方向に直交する方向であって
図4に矢印A2で示される第2方向に並んでいる。
【0030】
前記シール部23は、前記ホース保持部22の下側に位置してこれと一体につながる。シール部23は、前記パイロットホース16の配索領域を囲む枠状をなし、その下面は前記フロアプレート17のうちの前記貫通穴18の周縁部の上面と全周にわたり密着可能なシール面23aを構成している。また、このシール部23は前記ホース保持部22の外側面から左右両外側に突出しており、この突出した部分が変位規制突出部23bを構成している。この変位規制突出部23bの役割については後述する。
【0031】
前記接触阻止部24は、前記ホース保持部22に保持される各パイロットホース16が前記第1及び第2クランプ部材30A,30Bに接触するのを阻止する部分である。
図5及び
図6に示すようにホース挿通孔21の端であってフロアプレート17から遠い側の端の高さ位置(この実施の形態ではホース保持部22の上面の高さ位置)がクランプ部材30A,30Bの上面よりも低い位置にある場合、接触阻止部24がないと、各ホース挿通孔21に挿通されるパイロットホース16が撓んだときに当該パイロットホース16が金属製の前記クランプ部材30A,30Bに直接接触して損傷するおそれがあるが、前記接触阻止部24は、前記ホース保持部22の外周部から上向きに突出する枠状をなすことによって、前記パイロットホース16と前記クランプ部材30A,30Bとの接触を確実に阻む。
【0032】
前記位置決め部25は、前記貫通穴18に遊嵌されることによりフロアプレート17に対するグロメット20の大まかな位置決めを行うための部分である。この位置決め部25は、前記シール部23からさらに下方に突出しており、当該シール部23と同じく前記パイロットホース16の配索領域を囲む枠状をなす。
【0033】
さらに、この実施の形態に係るグロメット20には、各ホース挿通孔21へのパイロットホース16の挿通を容易にするための切れ目26が設けられている。この切れ目26は、前記ホース保持部22での前記各列におけるホース挿通孔21を前記第2方向(矢印A2で示される方向)に沿って横切る直線状をなし、その一方の端は前記シール部23及び前記接触阻止部24に跨ってグロメット20の外側面にまで至っている。
【0034】
当該切れ目26は、前記ホース挿通孔21の軸方向と直交する方向に(この第1の実施の形態では当該切れ目26が延びる前記第2方向と直交する第1方向)に前記グロメット20を分断するものであり、この分断は、各ホース挿通孔21に対してパイロットホース16をその分断箇所から、つまり側方から挿入することを可能にする。当該切れ目26は、前記グロメット20を完全に横切るもの、つまり、当該グロメット20を複数の部分に完全に分割するもの、であってもよい。
【0035】
前記第1クランプ部材30A及び第2クランプ部材30Bは、互いに締結されることによって前記グロメット20を外側からクランプするクランプ部を構成する。このクランプ部は、前記第1方向、すなわち、前記グロメット20が前記切れ目26によって分断される方向、の両側から前記グロメット20をクランプする。
【0036】
具体的に、前記第1クランプ部材30Aは、前記第2方向に延びる平板状をなし、前記グロメット20の側面に対して立直状態で前記第1方向(矢印A1の方向)の一方の側から当接可能な形状を有する。この第1クランプ部材30Aの一方の端部には係合孔31が穿設され、他方の端部には前記ボルト40が挿通可能なボルト挿通孔32が穿設されている。前記締結具を構成するナット42は、前記ボルト挿通孔31と合致するように前記第1クランプ部材30Aの外側面(グロメット20に対向する面と反対側の面)に溶接などで固定されている。
【0037】
前記第2クランプ部材30Bは、同じく板状であって、かつ、前記第1クランプ部材30Aと反対の側から前記グロメット20を囲む帯状を有する。具体的に、この第2クランプ部材30Bは、クランプ板部33と、一対の側板部34,35と、係合爪部36と、締結部37と、を一体に有し、その長手方向全域にわたって均一な高さ寸法(前記ホース挿通孔21の軸方向と平行な方向の寸法)を有する。
【0038】
前記クランプ板部33は、前記第1クランプ部材30Aと平行な方向すなわち前記第2方向に延びる部分であって、当該第1クランプ部材30Aと反対の側から立直状態で前記グロメット20の側面に当接可能な形状を有する。前記両側板部34,35は、前記クランプ板部33の両端からグロメット20の両側方を通って、より詳しくは当該グロメット20の両変位規制突出部23bの上方を通って、前記第1クランプ部材30A側に向かって延びる。従って、両変位規制突出部23bは、その上面が前記両側板部34,35の下端面と当接することによって、グロメット20に対する第2クランプ部材30Bの下向きの相対変位(つまり隔壁であるフロアプレート17に近づく向きの相対変位)を規制することができる。
【0039】
換言すれば、両変位規制突出部23bは、前記第1及び第2クランプ部材30A,30Bによりクランプされる被クランプ部分であるホース保持部22の外周面から外向きに突出した部分であって、この変位規制突出部23bと前記第1及び第2クランプ部材30A,30Bとの当接によって、当該第1及び第2クランプ部材30A,30Bのグロメット20に対する位置決めと、当該第1及び第2クランプ部材30A,30Bの当該グロメット20に対する下向きの相対変位の規制と、を実現するものである。
【0040】
前記係合爪部36は、前記第1クランプ部材30Aに係合される部分であって、前記側板部34の端部であって前記クランプ板部33と反対側の端部から外向きに突出する。この係合爪部36は、前記側板部34が前記第1クランプ部材30Aの係合孔36に対して内側(グロメット20側)から挿通された状態で当該第1クランプ部材30Aの外側面に当接することにより、当該第1クランプ部材30Aに係止されることが可能である。
【0041】
前記締結部37は、前記第1クランプ部材30Aに締結される部分であり、前記側板部35の端部であって前記クランプ板部33と反対側の端部から外向きに突出する。この締結部37にはボルト挿通孔37aが穿設され、このボルト挿通孔37a及び前記第1クランプ部材30Aのボルト挿通孔32に前記ボルト40が挿通された状態で当該ボルト40が前記ナット42に螺合され、締め付けられることにより、締結部37が第1クランプ部材30Aに締結されることが可能である。
【0042】
ここにおいて、両側板部34,35の長さ、すなわち前記第1方向の寸法、は、前記係合爪部36が前記係合穴31において前記第1クランプ部材30Aに係止され、かつ、前記締結部37が前記第1クランプ部材30Aに締結されることにより、前記クランプ板部33と前記第1クランプ部材30Aが前記グロメット20を前記第1方向にクランプすることを可能にする寸法であって、前記切れ目26の存在に関わらず前記グロメット20のホース保持部22の各内周面22aが各パイロットホース16の外周面に全周にわたって密着するまで当該グロメット20を圧縮方向に弾性変形させることが可能な寸法に、設定されている。また、前記側板部34,35同士の間の間隔、すなわち前記第2方向の間隔は、当該第2方向のグロメット20の寸法よりも僅かに大きく設定されている。これは、前記第1及び第2クランプ部材30A,30Bによる第1方向のクランプすなわちグロメット20の圧縮が当該グロメット20を第2方向に膨張させるのを許容するための膨張しろを見越したものである。
【0043】
前記固定部38は、前記フロアプレート17に当該フロアプレート17に対して直交する方向に締結される部分であり、こ
の実施の形態では前記第1クランプ部材30Aと一体に形成されている。この固定部38は、第1クランプ部材30Aとともに前記第2方向に延び、かつ当該第1クランプ部材30Aの下端から外側(グロメット20と反対の側)に延びている。すなわち、こ
の実施の形態に係る固定部38は、当該第1クランプ部材30AとともにL字状の断面を構成している。換言すれば、こ
の実施の形態では、L字状の断面を有する単一の板材によって、前記第1クランプ部材30Aと前記固定部38とが構成されている。
【0044】
前記固定部38には、その長手方向に沿って並ぶ複数のボルト挿通孔39が穿設されている。一方、前記フロアプレート17には複数のボルト挿通孔19が前記各ボルト挿通孔39にそれぞれ対応する位置に形成され、これらのボルト挿通孔19にそれぞれ合致する位置で前記フロアプレート17の下面に
図6に示すようなナット46が溶接等で固定されている。そして、前記ボルト挿通孔39及びボルト挿通孔19に締結具であるボルト44が上から挿通され、前記ナット46に螺合されて締め付けられることにより、前記固定部38がその板厚方向すなわち上下方向に沿って前記フロアプレート17に締結される。
【0045】
ここにおいて、前記グロメット20におけるシール部23の高さ寸法、すなわち、当該シール部23における変位規制突出部23bの上面からシール面23aに至るまでの寸法は、当該変位規制突出部23bの上面に前記第2クランプ部材30Bの両側板部34,35の下端面が当接した状態で前記固定部38が前記フロアプレート17に締結されることによって前記グロメット20の弾性圧縮変形を伴いながら前記シール面23aが前記フロアプレート17における貫通穴18の周縁部の上面に押付けられて密着するように、設定されている。具体的には、前記変位規制突出部23bの高さ寸法は、前記両側板部34,35の下端面と前記固定部39の下面との上下方向の間隔よりも僅かに大きく設定されている。
【0046】
なお、本発明において固定部がクランプ部と「一体につながる」とは、両者が単一の部材により構成される態様に限定するものではない。本発明に係る固定部とクランプ部は当該固定部の隔壁への締結によって当該固定部とクランプ部とが一体に相対変位するようにつながっていればよく、例えば固定部とクランプ部とが締結具その他の連結具を用いて相互に固定された態様でもよい。
【0047】
次に、前記保持具HD1の使用要領及び作用を説明する。この保持具HD1は、例えば次の手順によって使用されることができる。
【0048】
1)隔壁であるフロアプレート17の貫通穴18に各パイロットホース16が挿通される。
【0049】
2)グロメット20がその切れ目26に沿って開かれ、各ホース挿通孔21内に各パイロットホース16が側方から、すなわち、当該パイロットホース16の軸方向と直交する方向であって
図4に矢印A2で示される方向から、挿入される。これにより、当該パイロットホース16が各ホース挿通孔21に挿通された状態になる。
【0050】
3)グロメット20に対して第1クランプ部材30Aと第2クランプ部材30Bのクランプ板部33とが前記第1方向と直交する第2方向の両外側からあてがわれる。さらに、第2クランプ部材30Bの係合爪部36が第1クランプ部材30Aの係合孔31を通じて当該第1クランプ部材30Aに係止された状態で第2クランプ部材30Bの締結部37と第1クランプ部材30Aとがクランプ用締結具であるボルト40及びナット42を用いて締結される。この締結により、第1クランプ部材30Aと第2クランプ部材30のクランプ板部33との間隔が縮められ、これらによるグロメット20の第2方向のクランプが実現される。
【0051】
このクランプは、グロメット20を弾性圧縮変形させることにより当該グロメット20の各内周面22aすなわち各ホース挿通孔21を囲む内周面22aを確実に各パイロットホース16の外周面に密着させる。この密着は、グロメット20のホース保持部22による各パイロットホース16の保持を確実にするとともに、当該ホース保持部22と各パイロットホース16との間のシール性を高める。
【0052】
このクランプは、前記第2クランプ部材30Bの両側板部34,35の下面がグロメット20のシール部23の両変位規制突出部23bの上面に当接する位置で行われる。この当接は、グロメット20に対する両クランプ部材30A,30Bの下向きの相対変位の規制、すなわちフロアプレート17に近づく向きの相対変位の規制、をより確実にする。
【0053】
4)グロメット20の位置決め部25が貫通穴18に嵌り込む位置でフロアプレート17の上にグロメット20が載置される。これにより、当該グロメット20のシール部23の下面すなわちシール面23aが前記フロアプレート17における貫通穴18の周縁部の上面に対して全周にわたり接触した状態になる。
【0054】
5)前記の状態で前記第1クランプ部材30Aと一体につながる固定部38が固定用締結具であるボルト44及びナット46を用いて締結される。この締結により前記固定部38と一体に第1及び第2クランプ部材30A,30Bが下向きすなわちフロアプレート17に近づく向きに変位し、当該第2クランプ部材30Bの両側板部34,35がグロメット20のシール部23の変位規制突出部23bを上から押圧することにより当該シール部23のシール面23aをフロアプレート17における貫通穴18の周縁部に密着させる。これにより、当該貫通穴18がグロメット20によって完全に塞がれた状態となり、当該貫通穴18を通じての運転室11内への粉塵等の侵入が防がれる。
【0055】
以上のように、この保持具HD1によれば、クランプ部を構成する第1及び第2クランプ部材30A,30Bと固定部38とを含む固定部材によって、各パイロットホース16の外周面に対するグロメット20の各内周面22aの密着と、フロアプレート17における貫通穴18の周縁部に対するグロメット20のシール面23aの密着との双方を行うことができ、これにより、前記グロメット20による各パイロットホース16の確実な保持と前記貫通穴18を通じての運転室11内への粉塵等の侵入の防止とを簡素な構造で実現することができる。
【0056】
本発明において、前記グロメット20の形状は適宜変更することが可能である。例えば、前記変位規制突出部23bに対して第1及び第2クランプ部材30A,30Bが当接する部位は両側板部34,35に限らず、クランプ板部33であってもよい。あるいは、前記変位規制突出部23bは間欠的に並ぶ複数の位置にそれぞれ形成されていてもよい。
【0057】
さらに、
図5及び
図6に示すようなグロメット20へのクランプ部材30A,30Bの食い込みのみで当該グロメット20に対する当該クランプ部材30A,30Bの相対変位(フロアプレート17に近づく向きへの相対変位)を規制できる場合には、前記変位規制突出部23bは必ずしも要しない。しかし、この変位規制突出部23bの存在は、当該相対変位の規制をより確実にするとともに、グロメット20に対するクランプ部材30A,30Bの位置決めを容易にする。
【0058】
本発明に係るクランプ部の形状及び構造も
、前記実施の形態に係るクランプ部材30A,30Bに限らず、種々の変更が可能である。例えば、第1及び第2クランプ部材は互いに同一の形状を有することが可能であり、これによりその量産性が高まる。その例を
第1参考形態として
図7及び
図8に示す。
【0059】
ここに示される保持具HD2の第1及び第2クランプ部材30C,30Dは、ともに、前
記実施の形態に係る第2クランプ部材30Bに近似する形状、すなわち、クランプ板部33とこのクランプ板部33の両端から相手方のクランプ部材に向かって延びる両側板部34,35とを有する形状をなす。しかし、それぞれの側板部34,35の端部であって前記クランプ板部33と反対側の端部には、両外側に突出する締結部37′が形成されており、これらの締結部37′がそれぞれ相手方のクランプ部材の締結部37′と互いにグロメット20の中間の位置でボルト40及びナット42によって締結されることにより、第1及び第2クランプ部材30C,30Dの両クランプ板部33によるグロメット20の締結が達成される。
【0060】
ここで、両クランプ部材30C,30Dの形状を互いに同一とするには、双方のクランプ部材30C,30Dに例えば
図7及び
図8に示すような固定部38′がつながればよい。図例の固定部38′は、各クランプ部材30C,30Dのクランプ板部33と一体につながっていて、フロアプレート17に締結されることにより両クランプ部材30C,30Dをフロアプレート17に近づく側に変位させる。
【0061】
あるいは、本発明に係るクランプ部は、単一の部材により構成されることも可能である。その例を
第2参考形態として
図9及び
図10に示す。
【0062】
ここに示される保持具HD2は、グロメット50とクランプ部を構成する単一のクランプ部材60と、一対の固定部68と、を備える。
【0063】
前記グロメット50は、円形の外周面を有する本体52を有し、この本体52の下部は他の部分よりも大きな外径を有していて前
記実施の形態に係る変位規制突出部23bと同様の変位規制突出部54を構成している。前記本体52は、複数の索状体挿通孔51をそれぞれ囲む内周面56を有し、グロメット50の下面はフロアプレート17における貫通穴18の周縁部の上面に密着可能なシール面57を構成している。
【0064】
前記クランプ部材60は、クランプ板部62と一対の締結部63,64とを一体に有する。クランプ板部62は、帯状であって、グロメット50をその周方向の一部を除いて包囲する平面視円弧状をなす。前記両締結部63,64は、前記クランプ板部62の両端からグロメット50の径方向の外側に突出する。前記クランプ板部62が前記変位規制突出部54の上面に当接する高さ位置で前記両締結部63,64がクランプ用締結具であるボルト40及びナット42によって互いに締結される、つまり互いに近づく向きに締め付けられる、ことにより、前記クランプ板部62が縮径してグロメット50を径方向の外側からクランプし、当該グロメット50の各内周面56を当該内周面56が囲む索状体挿通孔51に挿通される図略のパイロットホースなどの索状体の外周面に密着させる。
【0065】
前記両固定部68は、前記クランプ板部62の適当な部位、図例では前記両締結部63,64と一体につながっている。具体的に、各固定部68は各締結部63,64の下端から両外側に延び、かつ、固定用締結具であるボルト44が挿通されるボルト挿通孔を有する。これらの固定部68が前記ボルト挿通孔に挿通されるボルト44によってフロアプレート17に締結されることにより、前記グロメット50のシール面57が前記フロアプレート17における貫通穴18の周縁部の上面に密着する。従って、この保持具HD3によっても、前記グロメット50による索状体の確実な保持と貫通穴18の確実な閉塞との双方を実現することができる。