(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷重演算装置は、前記ロープが掛け回される前記シーブの形態毎に異なった前記過渡期間の前記移動量指標値と前記補正値との相関関係を示す複数パターンの移動量補正値相関関係を記憶しており、前記複数パターンの前記移動量補正値相関関係から前記ロープが現在掛け回されている前記シーブの形態に応じた前記移動量補正値相関関係を選択し、その選択した移動量補正値相関関係を用いて前記過渡期間の前記第1張力値を補正するための前記補正値を導出する、請求項1又は2に記載のクレーンの荷重導出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された荷重演算装置及び上記特許文献2に開示された荷重演算装置では、いずれもオペレータ等に違和感を与える荷重表示がされる虞がある。その理由は、以下の通りである。
【0008】
上記特許文献1に開示された荷重演算装置では、起伏操作レバーの停止前の操作方向と逆の操作方向に起伏操作レバーが操作され且つその操作に対応する方向に起伏ロープが動いた時点で、荷重検出値の補正に用いる荷重データを停止前の操作方向に対応する荷重データから逆の操作方向に対応する荷重データに切り換えているが、シーブの回転抵抗が作用する方向は、起伏ロープが動き始めた時点で瞬間的に切り換わらない。すなわち、シーブの回転抵抗が作用する方向は、起伏ロープの移動に伴ってシーブが回転し始めてから徐々に変化し、その変化の過渡期間が経過した後に、回転抵抗が切換後の操作方向に対応した方向に作用する一定値となる。従って、上記特許文献1での荷重検出値の補正に用いる荷重データの切り換えは、実際のシーブの回転抵抗の変化形態と対応しておらず、補正に用いる荷重データの切り換えが行われた時点では、荷重検出値が実際のシーブの回転抵抗とかけ離れた補正値によって補正されることになる。その結果、このような補正がなされた後の荷重検出値から算出される吊荷重には、その補正に起因した値の急変箇所が生じることになり、その算出された吊荷重の値が表示されると違和感を与えることになる。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された荷重演算装置では、シーブの回転方向が切り換わった時点で荷重検出値を補正する補正値が切り換わることになるため、この補正も上記過渡期間におけるシーブの回転抵抗の変化形態に対応していない。従って、上記特許文献2の荷重演算装置によっても、算出した吊荷重において補正に起因した値の急変箇所が生じる虞があり、その算出した吊荷重の値が表示されると違和感を与えることになる。
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、違和感を与えない荷重表示を実現可能なクレーンの荷重導出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によるクレーンの荷重導出装置は、シーブに掛け回されたロープ
が巻かれるドラムを回転させることにより前記ロープを介して対象物の巻き上げ及び巻き下げを行うウインチを備えていて前記対象物の巻き上げ及び巻き下げにより吊作業を行うクレーンに設けられ、そのクレーンの吊荷重を導出する荷重導出装置であって、前記ロープに掛かる荷重を検出する荷重検出器と、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの移動方向を表す方向指標信号を出力する方向出力部と、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの移動量を表す移動量指標値を出力する移動量出力部と、前記荷重検出器によって検出された荷重値から前記ロープの第1張力値を導出し、その導出した第1張力値に含まれる前記シーブの回転抵抗に起因した誤差を低減するための補正を行い、その補正後の第1張力値である第2張力値から前記吊荷重を求める荷重演算装置とを備え、
前記移動量出力部は、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの移動量に対応する前記ドラムの回転量を検出してその検出した回転量のデータを前記移動量指標値として出力するドラム回転検出器であり、前記荷重演算装置は、前記方向指標信号が表す前記ロープの移動方向に対応した補正値により前記第1張力値を補正するとともに、前記対象物の巻上時及び巻下時に前記シーブの回転抵抗が一定になるまでの過渡期間において前記第1張力値を増加させる方向の増加補正と前記第1張力値を減少させる方向の減少補正との間での補正形態の移行を
前記ドラム回転検出器から出力される前記移動量指標値
としての前記ドラムの回転量の増加に従って段階的に行うように前記補正値を段階的に変化させる(請求項1)。
【0012】
また、本発明によるクレーンの荷重導出装置は、シーブに掛け回されたロープを介して対象物の巻き上げ及び巻き下げを行うウインチを備えていて前記対象物の巻き上げ及び巻き下げにより吊作業を行うクレーンに設けられ、そのクレーンの吊荷重を導出する荷重導出装置であって、前記ロープに掛かる荷重を検出する荷重検出器と、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの移動方向を表す方向指標信号を出力する方向出力部と、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの移動量を表す移動量指標値を出力する移動量出力部と、前記荷重検出器によって検出された荷重値から前記ロープの第1張力値を導出し、その導出した第1張力値に含まれる前記シーブの回転抵抗に起因した誤差を低減するための補正を行い、その補正後の第1張力値である第2張力値から前記吊荷重を求める荷重演算装置とを備え、前記移動量出力部は、前記対象物の巻上側又は巻下側への前記ロープの実際の移動量を検出してその検出したロープの実際の移動量のデータを前記移動量指標値として出力する移動量検出器であり、前記荷重演算装置は、前記方向指標信号が表す前記ロープの移動方向に対応した補正値により前記第1張力値を補正するとともに、前記対象物の巻上時及び巻下時に前記シーブの回転抵抗が一定になるまでの過渡期間において前記第1張力値を増加させる方向の増加補正と前記第1張力値を減少させる方向の減少補正との間での補正形態の移行を前記移動量検出器から出力される前記移動量指標値としての前記ロープの実際の移動量の増加に従って段階的に行うように前記補正値を段階的に変化させる(請求項2)。
【0013】
以上の荷重導出装置では、荷重演算装置が、対象物の巻上時及び巻下時の前記過渡期間において前記増加補正と前記減少補正との間での補正形態の移行をロープの移動量を表す移動量指標値の増加に従って段階的に行うように補正値を段階的に変化させるため、前記過渡期間の第1張力値の補正によって補正後の第1張力値に急激に値が変化する箇所が生じるのを防ぐことができる。このため、補正後の第1張力値である第2張力値から算出される吊荷重の値にその値が急変する箇所が生じるのを防ぐことができ、その算出された吊荷重の値に基づいて、違和感を与えない荷重表示を実現できる。
【0014】
上記荷重導出装置において、前記荷重演算装置は、前記ロープが掛け回される前記シーブの形態毎に異なった前記過渡期間の前記移動量指標値と前記補正値との相関関係を示す複数パターンの移動量補正値相関関係を記憶しており、前記複数パターンの前記移動量補正値相関関係から前記ロープが現在掛け回されている前記シーブの形態に応じた前記移動量補正値相関関係を選択し、その選択した移動量補正値相関関係を用いて前記過渡期間の前記第1張力値を補正するための前記補正値を導出することが好ましい(請求項
3)。
【0015】
シーブの回転抵抗に起因する第1張力値の誤差は、ロープが掛け回されているシーブの形態毎に異なるが、この構成によれば、ロープが現在掛け回されているシーブの形態に応じたパターンの移動量補正値相関関係に基づいてその現在のシーブの形態に対応する第1張力値の誤差を正確に補正可能な補正値を導出することができる。このため、ロープが現在掛け回されているシーブの形態に応じて前記過渡期間の第1張力値を適切に補正することができる。
【0016】
この場合において、前記シーブの形態は、前記ロープが掛け回される前記シーブの数であってもよい(請求項
4)。
【0017】
この構成によれば、ロープが掛け回されているシーブの数に応じて異なる回転抵抗に起因した前記過渡期間の第1張力値の誤差を適切に補正することができる。
【0018】
上記荷重導出装置において、前記対象物は、前記クレーンにおいて起伏自在となるように設けられた起伏部材であり、前記ウインチは、前記ロープを介して前記起伏部材の巻き上げ及び巻き下げを行う起伏ウインチであってもよい(請求項
5)。
【0019】
この構成によれば、起伏ロープに掛かる荷重値からその起伏ロープの第1張力値を算出し、その算出した第1張力値に基づいてクレーンの吊荷重を導出する荷重導出装置において、前記過渡期間における起伏ロープの第1張力値の誤差を適切に補正して違和感を与えない荷重表示を実現することができる。
【0020】
上記荷重導出装置において、前記対象物は、吊荷を吊るためのフック装置であり、前記ウインチは、前記ロープを介して前記フック装置の巻き上げ及び巻き下げを行う巻上ウインチであってもよい(請求項
6)。
【0021】
この構成によれば、フック装置に接続される巻上ロープに掛かる荷重値からその巻上ロープの第1張力値を算出し、その算出した第1張力値に基づいてクレーンの吊荷重を導出する荷重導出装置において、前記過渡期間における巻上ロープの第1張力値の誤差を適切に補正して違和感を与えない荷重表示を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、違和感を与えない荷重表示を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態による荷重導出装置が設けられるクレーンの全体構成について説明する。
【0026】
クレーンは、
図1に示すように、自走可能な下部走行体2と、その下部走行体2上に旋回可能となるように搭載された上部旋回体4とを備える。
【0027】
上部旋回体4には、ブーム6が起伏自在となるように設けられている。ブーム6は、本発明の対象物の一例であり、また、本発明の起伏部材の一例である。ブーム6の先端から主フック装置8及び補フック装置9が吊り下げられている。主フック装置8は、主巻ロープ10を介してブーム6の先端から吊り下げられており、補フック装置9は、補巻ロープ11を介してブーム6の先端から吊り下げられている。
【0028】
また、上部旋回体4には、主巻ロープ10の巻き取り/繰り出しを行うことにより主フック装置8及びその主フック装置8に吊られた図略の吊荷の巻き上げ/巻き下げを行う主巻ウインチ12と、補巻ロープ11の巻き取り/繰り出しを行うことにより補フック装置9及びその補フック装置9に吊られた図略の吊荷の巻き上げ/巻き下げを行う補巻ウインチ13とが設けられている。
【0029】
上部旋回体4にはガントリ16が立設されており、そのガントリ16の上端部に2つのガントリピークシーブ18(
図2参照)が同軸に設けられている。ガントリピークシーブ18は、水平方向に延びる回転軸18aによりその軸回りに回転自在となるように支持されている。ガントリ16の上端部の前部には、
図1に示すように、下部スプレッダ20が設けられている。下部スプレッダ20は、複数の下部シーブ20a(
図2参照)を有する。これらの下部シーブ20aは、対応する回転軸20bによりその軸回りにそれぞれ回転自在となるように支持されている。
【0030】
下部スプレッダ20から前方へ離間して上部スプレッダ22が設けられている。上部スプレッダ22は、複数の上部シーブ22a(
図2参照)を有する。これらの上部シーブ22aは、対応する回転軸22bによりその軸回りにそれぞれ回転自在となるように支持されている。上部スプレッダ22は、
図1に示すように、ガイケーブル24を介してブーム6の先端部に接続されている。
【0031】
また、上部旋回体4には、起伏ウインチ26が設けられている。起伏ウインチ26のドラム26aから引き出された起伏ロープ28は、
図2に示すように、一方のガントリピークシーブ18に掛けられ、その後、複数の上部シーブ22aと複数の下部シーブ20aとに掛け回され、さらに、もう一方のガントリピークシーブ18に掛けられた後、荷重検出器42に接続されている。すなわち、起伏ロープ28のうち起伏ウインチ26と反対側の端部が荷重検出器42に接続されている。
【0032】
起伏ウインチ26は、ドラム26aを回転させて起伏ロープ28の巻き取り/繰り出しを行うことにより下部スプレッダ20に対する上部スプレッダ22の離間距離を変化させ、それによってブーム6の巻き上げ/巻き下げ、すなわちブーム6の起伏を行うようになっている。ブーム6の巻き上げ/巻き下げのために起伏ウインチ26が起伏ロープ28の巻き取り/繰り出しを行うときには、起伏ロープ28が移動し、その起伏ロープ28の移動に伴って各シーブ18,20a,22aが各々の対応する回転軸18a,20b,22b回りに回転されるようになっている。
【0033】
上部旋回体4には、運転室32(
図1参照)が設けられており、その運転室32内には、起伏ウインチ26を操作するための起伏操作装置34(
図3参照)が設けられている。起伏操作装置34は、オペレータによって操作されるレバー34aを有する。レバー34aは、起伏ウインチ26の巻上動作及び巻下動作の停止(ドラム26aの回転停止)を指示する中立位置から一方側であって起伏ウインチ26によるブーム6の巻上動作(起伏ロープ28の巻取動作)を指示する巻上側と、前記中立位置から巻上側と反対側であって起伏ウインチ26によるブーム6の巻下動作(起伏ロープ28の繰出動作)を指示する巻下側とに操作可能となっている。このレバー34aが中立位置から巻上側又は巻下側へ操作されることによって、起伏ウインチ26にそのレバー34aの操作に応じた動作が指示され、その結果、起伏ウインチ26がレバー34aの操作に応じた巻上動作又は巻下動作を行うようになっている。
【0034】
本実施形態による荷重導出装置40は、以上のような構成を有するクレーンに設けられてそのクレーンの吊荷重を導出するものである。本実施形態におけるクレーンの吊荷重は、吊荷の重量と、その吊荷を吊っているフック装置(主フック装置8又は補フック装置9)の重量と、そのフック装置用の巻上ロープ(主巻ロープ10又は補巻ロープ11)のうちブーム6の先端から垂下している部分の重量との合計の重量に相当する。以下、本実施形態の荷重導出装置40の具体的な構成について説明する。
【0035】
本実施形態の荷重導出装置40は、
図3に示すように、荷重検出器42と、操作検出器44と、ドラム回転検出器46と、角度検出器48と、荷重演算装置50とを備える。
【0036】
荷重検出器42は、例えばロードセルであり、上部旋回体4に固定されている。荷重検出器42には上述のように起伏ロープ28が接続されており、当該荷重検出器42は、起伏ロープ28に掛かる荷重を逐次検出する。そして、荷重検出器42は、検出した荷重値のデータを荷重演算装置50へ逐次出力する。
【0037】
操作検出器44は、起伏操作装置34のレバー34aの操作状態を検出するものである。操作検出器44は、レバー34aが中立位置にあるか、中立位置から巻上側又は巻下側に操作されているかを逐次検出し、その検出したレバー34aの操作状態を表す信号を荷重演算装置50へ逐次出力する。この操作検出器44は、本発明の方向出力部の概念に含まれるものであり、当該操作検出器44が出力する信号は、本発明の方向指標信号の概念に含まれるものである。
【0038】
具体的に、レバー34aが巻上側へ操作された場合には、起伏ウインチ26の巻上動作が行われ、起伏ロープ28はドラム26aに巻き取られてブーム6を巻き上げる側へ移動することになる。一方、レバー34aが巻下側へ操作された場合には、起伏ウインチ26の巻下動作が行われ、起伏ロープ28はドラム26aから繰り出されてブーム6を巻き下げる側へ移動することになる。従って、操作検出器44の出力信号がレバー34aの巻上側への操作を表すものである場合には、その出力信号はブーム6の巻上側への起伏ロープ28の移動を表す移動方向指標信号に相当し、操作検出器44の出力信号がレバー34aの巻下側への操作を表すものである場合には、その出力信号はブーム6の巻下側への起伏ロープ28の移動を表す移動方向指標信号に相当する。
【0039】
ドラム回転検出器46は、起伏ウインチ26に設けられており、その起伏ウインチ26から出力されるドラム26aの回転パルス数を検出するものである。ドラム回転検出器46は、回転パルス数を逐次検出し、その検出した回転パルス数のデータを荷重演算装置50へ逐次出力する。このドラム回転検出器46は、本発明の移動量出力部の概念に含まれるものであり、当該ドラム回転検出器46が出力する回転パルス数のデータは、本発明の移動量指標値の概念に含まれるものである。具体的に、ドラム26aの回転パルス数は、ドラム26aの回転量を表し、ドラム26aの回転量は、そのドラム26aによって巻き取り又は繰り出される起伏ロープ28の移動量に対応する。従って、ドラム回転検出器46が出力する回転パルス数のデータは、ブーム6の巻上側又は巻下側への起伏ロープ28の移動量を表す移動量指標値に相当する。
【0040】
角度検出器48は、ブーム6の起伏角度を検出するものである。角度検出器48は、ブーム6の起伏角度を逐次検出し、その検出した起伏角度のデータを荷重演算装置50へ逐次出力する。
【0041】
荷重演算装置50は、荷重検出器42から出力される荷重値のデータから起伏ロープ28の張力の値である第1張力値を導出し、その導出した第1張力値に含まれるシーブ18,20a,22aの回転抵抗(シーブ18,20a,22aと対応する回転軸18a,20b,22bとの間の摩擦力)に起因した誤差を低減するための補正を行い、その補正後の第1張力値である第2張力値からクレーンの吊荷重を算出する。また、荷重演算装置50は、操作検出器44から出力される信号が表すレバー34aの操作方向、すなわち起伏ロープ28の移動方向に対応した補正係数により第1張力値を補正するとともに、ブーム6の巻上時及び巻下時にシーブ18,20a,22aの回転抵抗が一定になるまでの過渡期間において第1張力値を増加させる方向の増加補正と第1張力値を減少させる方向の減少補正との間での補正形態の移行をドラム26aの回転パルス数の累積値(以下、累積回転パルス数という)の増加に従って段階的に行うように補正係数を段階的に変化させる。以下、この荷重演算装置50の詳細な構成について説明する。
【0042】
荷重演算装置50は、メモリ52と、機能ブロックとしての張力導出部53、補正値導出部54及び荷重演算部56とを有する。
【0043】
張力導出部53は、荷重検出器42から出力されて荷重演算装置50に入力される荷重値のデータから起伏ロープ28の第1張力値を導出する。本実施形態では、起伏ロープ28の端部に接続された荷重検出器42が起伏ロープ28に掛かる荷重を検出するため、張力導出部53は、荷重検出器42から出力される荷重値をそのまま起伏ロープ28の第1張力値として導出する。
【0044】
メモリ52は、張力導出部53によって導出された起伏ロープ28の第1張力値を補正するための補正係数を記憶している。この補正係数は、本発明の補正値の概念に含まれるものである。メモリ52は、起伏ロープ28の移動方向に対応するレバー34aの操作方向に応じて第1張力値の補正に用いられる異なった補正係数を記憶している。具体的に、レバー34aが巻下側へ操作されて起伏ウインチ26がブーム6の巻下動作を行うときに第1張力値を補正するための補正係数と、レバー34aが巻上側へ操作されて起伏ウインチ26がブーム6の巻上動作を行うときに第1張力値を補正するための補正係数とが、それぞれ、起伏ロープ28の移動量を表すドラム26aの累積回転パルス数(回転量)と対応付けされた状態で記憶されている。例えば、巻上時における累積回転パルス数と補正係数との相関関係を示す関数又はマップ状のデータと、巻下時における累積回転パルス数と補正係数との相関関係を示す関数又はマップ状のデータとがメモリ52に記憶されている。
【0045】
メモリ52に記憶されている累積回転パルス数と補正係数との相関関係のうち前記過渡期間に対応する部分は、補正係数を第1張力値に乗算することにより第1補正値を増加させる方向の増加補正と補正係数を第1張力値に乗算することにより第1補正値を減少させる方向の減少補正との間で補正形態を移行させ、且つ、その補正形態の移行を累積回転パルス数の増加に従って段階的に行わせるように設定されている。具体的に、巻下時の過渡期間における累積回転パルス数と補正係数との相関関係は、補正係数が増加補正を行わせる補正係数から減少補正を行わせる補正係数へ過渡期間の途中で変化し、且つ、その変化が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われるように設定されている。また、巻上時の過渡期間における累積回転パルス数と補正係数との相関関係は、補正係数が減少補正を行わせる補正係数から増加補正を行わせる補正係数へ過渡期間の途中で変化し、且つ、その変化が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われるように設定されている。
【0046】
また、メモリ52は、ブーム6の起伏角度と自重成分との相関関係と、荷重係数を記憶している。自重成分は、起伏ロープ28の張力(第1張力値)に含まれる吊荷重以外の荷重成分のことである。例えば、主フック装置8により吊荷を吊っている場合には、ブーム6の重量とブーム6に付属する部材のうち起伏ロープ28の張力に寄与する主フック装置8以外の部材の重量との合計の重量が自重成分に相当する。また、補フック装置9により吊荷を吊っている場合には、ブーム6の重量とブーム6に付属する部材のうち起伏ロープ28の張力に寄与する補フック装置9以外の部材の重量との合計の重量が自重成分に相当する。また、メモリ52は、後述する吊荷重の算出プロセスにおいて、ドラム26aの累積回転パルス数を記憶するとともに、操作検出器44によって検出されるレバー34aの操作状態を記憶する。また、メモリ52は、繰り返し行われる吊荷重の算出プロセスの各回で張力値の補正に用いられた補正係数の値を記憶する。
【0047】
補正値導出部54は、第1張力値を補正するために用いる補正係数を導出するものである。具体的に、補正値導出部54は、操作検出器44から出力された信号が表すレバー34aの操作状態に対応した補正係数をメモリ52に記憶された補正係数に基づいて導出する。また、補正値導出部54は、ブーム6の巻上時及び巻下時の過渡期間にドラム回転検出器46から出力される回転パルス数を累積して累積回転パルス数を導出するとともに、その累積回転パルス数の増加に応じて変化する段階的な補正係数をメモリ52に記憶された累積回転パルス数と補正係数との相関関係から導出する。
【0048】
荷重演算部56は、張力導出部53によって導出された第1張力値に補正値導出部54によって導出された補正係数を乗算することにより第1張力値を補正する。また、荷重演算部56は、角度検出器48から出力されて荷重演算装置50に入力されるブーム6の起伏角度のデータに応じた前記自重成分をメモリ52に記憶された起伏角度と自重成分との相関関係に基づいて算出する。そして、荷重演算部56は、第1張力値を補正することによって得た第2張力値と、算出した前記自重成分と、メモリ52に記憶されている荷重係数とを用いて、クレーンの吊荷重の値を算出する。具体的には、荷重演算部56は、算出した自重成分を第2張力値から減算し、その減算によって得た値に荷重係数を乗算することによって吊荷重の値を求める。荷重演算部56は、算出した吊荷重の値を運転室32内に設けられた表示装置60へ出力してその表示装置60に表示させる。
【0049】
次に、
図4に示したフローチャートに従って、本実施形態の荷重導出装置40による吊荷重の導出プロセスについて説明する。
【0050】
まず、荷重演算装置50が操作検出器44から入力される信号からレバー34aの操作状態を読み取り、補正値導出部54がドラム回転検出器46から入力されるデータからドラム26aの回転パルス数を読み取り、張力導出部53が荷重検出器42から入力される荷重値のデータから起伏ロープ28の第1張力値を読み取り、荷重演算部56が角度検出器48から入力されるデータからブーム6の起伏角度を読み取る(ステップS1)。
【0051】
次に、荷重演算装置50は、読み取ったレバー34aの操作状態に基づいて、レバー34aが中立位置にあるか否かを判断する(ステップS2)。
【0052】
荷重演算装置50がレバー34aは中立位置にあると判断した場合には、荷重演算部56がメモリ52に記憶されている前回の導出プロセスで用いられた補正係数を読み取る(ステップS3)。一方、荷重演算装置50がレバー34aは中立位置にないと判断した場合には、次に、荷重演算装置50は、レバー34aの中立位置からの操作方向(巻上側又は巻下側)がメモリ52に記憶されている前回の導出プロセスでのレバー34aの操作方向(操作状態)と同じであるか否かを判断する(ステップS4)。
【0053】
荷重演算装置50が、レバー34aの操作方向は前回の導出プロセスでのレバー34aの操作方向と同じであると判断した場合には、次に、補正値導出部54が補正係数を導出する(ステップS5)。この時、補正値導出部54は、レバー34aの操作方向(巻上側又は巻下側)に応じた補正係数をメモリ52に記憶された補正係数から導出するとともに、ステップS1で読み取った回転パルス数をメモリ52に記憶されている累積回転パルス数に加算してその加算後の累積回転パルス数に応じた補正係数をメモリ52に記憶された累積回転パルス数と補正係数との相関関係に基づいて導出する。
【0054】
一方、ステップS4で荷重演算装置50がレバー34aの操作方向は前回のレバー34aの操作方向と同じではないと判断した場合には、メモリ52に記憶されている累積回転パルス数が0にリセットされ(ステップS6)、その後、ステップS5の処理が行われる。
【0055】
ステップS5の処理の後、荷重演算部56が、ステップS1で張力導出部53によって導出された第1張力値を補正する(ステップS7)。この時、上記ステップS2でレバー34aが中立位置にないと判断されている場合には、荷重演算部56は、ステップS5で導出された補正係数を用いて第1張力値を補正する一方、上記ステップS2でレバー34aが中立位置にあると判断されている場合には、荷重演算部56は、ステップS3で読み取った補正係数を用いて第1張力値を補正する。具体的には、荷重演算部56は、第1張力値に補正係数を乗算することによって第1張力値を補正する。
【0056】
その後、荷重演算部56は、上記ステップS1で読み取ったブーム6の起伏角度に応じた前記自重成分をメモリ52に記憶されている起伏角度と自重成分との相関関係に基づいて導出するとともに、メモリ52に記憶されている荷重係数を読み取り、導出した自重成分と読み取った荷重係数を用いて補正後の第1張力値である第2張力値から吊荷重の値を算出する(ステップS8)。
【0057】
最後に、新たな累積回転パルス数と、今回の導出プロセスにおけるレバー34aの操作状態(中立位置、巻上側又は巻下側)と、今回の導出プロセスで用いた補正係数とがメモリ52に記憶される(ステップS9)。具体的には、メモリ52に記憶されている累積回転パルス数がステップS5で補正値導出部54が求めた加算後の累積パルス数に更新され、メモリ52に記憶されているレバー34aの操作状態が今回の導出プロセスのステップS1で荷重演算装置50が読み取った操作状態に更新され、また、今回の導出プロセスのステップS7で荷重演算部56が第1張力値の補正に用いた補正係数がメモリ52に記憶される。
【0058】
以上のような吊荷重の導出プロセスが繰り返し行われ、荷重演算部56によって算出された吊荷重の値が表示装置60に表示される。
【0059】
次に、本実施形態による吊荷重の導出時の第1張力値の補正の一例及びその補正によって得られる効果について説明する。なお、以下の説明において第1張力値の補正に用いられる補正係数の値は一例であり、この値に限定されるものではない。
【0060】
図5には、レバー34aを中立位置から巻下側へ操作して起伏ウインチ26によるブーム6の巻下動作を実施させた後、レバー34aを中立位置に戻して起伏ウインチ26の巻下動作を停止させ、その後、レバー34aを中立位置から巻上側へ操作して起伏ウインチ26によるブーム6の巻上動作を実施させ、さらにその後、レバー34aを中立位置に戻して起伏ウインチ26の巻上動作を停止させるという手順で起伏ウインチ26を動作させる場合の起伏ロープ28の第1張力値、起伏ロープ28の張力の理論値、レバー34aの操作状態及び表示装置60による荷重表示の経時変化が示されている。なお、起伏ロープ28の張力の理論値とは、シーブ18,20a,22aの回転抵抗が0であると仮定した場合の起伏ロープ28の張力値を意味し、実際の吊荷重と対応する張力値である。
【0061】
本実施形態では、最初にレバー34aが中立位置にあるとき(時刻t1よりも前の期間)には、第1張力値が理論値よりも小さい。このとき、補正値導出部54により補正係数1.1が導出され、荷重演算部56がその補正係数1.1を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に増加補正する。
【0062】
この後、レバー34aが時刻t1において巻下側へ操作されるが、起伏ロープ28の張力は即変化せず、わずかなタイムラグの後、時刻t2から変化し始める。時刻t2までは補正値導出部54により時刻t1以前と同じ補正係数1.1が導出され、荷重演算部56が上記と同様に第1張力値を理論値に等しい値に増加補正する。
【0063】
時刻t2以降、起伏ウインチ26によるブーム6の巻き下げが行われて第1張力値が漸増する。時刻t2から時刻t3までの期間は、シーブ18,20a,22aの回転が安定せず、その回転抵抗の作用する方向が巻上側から巻下側へ変化するとともにその回転抵抗の大きさが変化する過渡期間である。この過渡期間では、補正値導出部54により、起伏ロープ28の移動量を表すドラム26aの累積回転パルス数(回転量)の増加に応じて補正係数が1.1から0.9へ漸減するように導出され、荷重演算部56がその導出された補正係数を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に補正する。これにより、過渡期間の途中で補正形態が増加補正から減少補正へ移行するとともに、その移行が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われる。過渡期間には、第1張力値がシーブ18,20a,22aの回転抵抗の変化に起因して理論値よりも小さい値から理論値よりも大きい値へ徐々に変化するが、増加補正から減少補正への段階的な移行により、その第1張力値の変化に対応した適切な補正が行え、第1張力値の誤差を適切に排除できる。
【0064】
過渡期間の経過後、巻き下げが停止されるまでの期間(時刻t3〜t4の期間)は、シーブ18,20a,22aの回転が安定し、回転抵抗が一定となる。この期間は、補正値導出部54により一定の補正係数0.9が導出され、荷重演算部56がその導出された補正係数0.9を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に減少補正する。
【0065】
時刻t4においてレバー34aが中立位置へ戻されると、起伏ウインチ26の巻下動作が停止され、第1張力値の増加が停止する。このレバー34aが中立位置に配置されている期間(時刻t4〜t5の期間)は、第1張力値が理論値よりも大きい一定値となり、補正値導出部54は、この期間において時刻t3から時刻t4までの期間と同じ補正係数0.9を導出する。荷重演算部56は、その導出された補正係数0.9を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に減少補正する。
【0066】
その後、時刻t5においてレバー34aが巻上側へ操作されるが、起伏ロープ28の張力は即変化せず、わずかなタイムラグの後、時刻t6から変化し始める。このタイムラグの間(時刻t5〜t6の期間)は、レバー34aが中立位置にあった期間(時刻t4〜t5の期間)と同じ補正係数0.9が補正値導出部54により導出され、荷重演算部56がその補正係数0.9を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に減少補正する。
【0067】
そして、時刻t6以降、起伏ウインチ26によるブーム6の巻き上げが行われて第1張力値が漸減する。時刻t6から時刻t7までの期間は、シーブ18,20a,22aの回転が安定せず、その回転抵抗の作用する方向が巻下側から巻上側へ変化するとともにその回転抵抗の大きさが変化する過渡期間である。この過渡期間では、補正値導出部54により、起伏ロープ28の移動量を表すドラム26aの累積回転パルス数(回転量)の増加に応じて補正係数が0.9から1.1へ漸増するように導出され、荷重演算部56がその導出された補正係数を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に補正する。これにより、過渡期間の途中で補正形態が減少補正から増加補正へ移行するとともに、その移行が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われる。過渡期間には、第1張力値がシーブ18,20a,22aの回転抵抗の変化に起因して理論値よりも大きい値から理論値よりも小さい値へ変化するが、減少補正から増加補正への段階的な移行により、その第1張力値の変化に対応した適切な補正が行え、第1張力値の誤差を適切に排除できる。
【0068】
過渡期間の経過後、巻き上げが停止されるまでの期間(時刻t7〜t8の期間)は、シーブ18,20a,22aの回転が安定し、回転抵抗が一定となる。この期間は、補正値導出部54により一定の補正係数1.1が導出され、荷重演算部56がその導出された補正係数1.1を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に増加補正する。
【0069】
時刻t8においてレバー34aが中立位置へ戻されると、起伏ウインチ26の巻上動作が停止され、第1張力値の減少が停止する。このレバー34aが中立位置に配置されている期間(時刻t8以降の期間)は、第1張力値が理論値よりも小さい一定値となり、補正値導出部54は、この期間において時刻t7から時刻t8までの期間と同じ補正係数1.1を導出する。荷重演算部56は、その導出された補正係数1.1を第1張力値に乗算して第1張力値を理論値に等しい値に増加補正する。
【0070】
以上のように、第1張力値が全期間において理論値に等しい値に補正されるため、荷重演算部56が補正後の第1張力値である第2張力値から算出し、表示装置60に表示される吊荷重の値は、全期間において実際の吊荷重に対して誤差がない一定値となる。
【0071】
図6には、全く補正しない第1張力値から吊荷重を算出して表示装置に表示する場合の
図5相当図が示されている。また、
図7には、起伏操作装置のレバーが中立位置から巻下側へ操作された瞬間に補正形態を増加補正から巻き下げに対応した一定の補正係数による減少補正に切り換えるとともに、レバーが中立位置から巻上側へ操作された瞬間に補正形態を減少補正から巻き上げに対応した一定の補正係数による増加補正に切り換える場合の
図5相当図が示されている。また、
図8には、起伏操作装置のレバーが中立位置から巻下側へ操作された後、第1張力値が変化した瞬間に補正形態を増加補正から巻き下げに対応した一定の補正係数による減少補正に切り換えるとともに、レバーが中立位置から巻上側へ操作された後、第1張力値が変化した瞬間に補正形態を減少補正から巻き上げに対応した一定の補正係数による増加補正に切り換える場合の
図5相当図が示されている。
【0072】
全く補正しない第1張力値から吊荷重を算出して表示する場合には、
図6から判るように、ほぼ全期間において実際の吊荷重に対して誤差を有する吊荷重の値が表示されるとともに、巻下時の過渡期間(時刻t2〜t3の期間)及び巻上時の過渡期間(時刻t6〜t7の期間)において表示される吊荷重の値が変動する。
【0073】
また、レバー操作の瞬間に補正形態をそのレバーの操作側に対応した補正形態に切り換える場合には、
図7から判るように、レバー操作の瞬間(時刻t1及び時刻t5)に荷重表示が実際の吊荷重からかけ離れた値に急変し、その後、過渡期間の終了までの期間(時刻t1〜t3の期間及び時刻t5〜t7の期間)に実際の吊荷重に対して誤差を有する吊荷重値が表示される。
【0074】
また、レバーの操作後、第1張力値が変化した瞬間に補正形態をそのレバーの操作側に対応した補正形態に切り換える場合には、
図8から判るように、第1張力値の変化の瞬間(時刻t2及び時刻t6)に荷重表示が実際の吊荷重からかけ離れた値に急変し、その後の過渡期間(時刻t2〜t3の期間及び時刻t6〜t7の期間)に実際の吊荷重に対して誤差を有する吊荷重値が表示される。
【0075】
一方、本実施形態では、上述したように過渡期間において段階的な補正形態の移行が行われることから、レバー操作後、過渡期間が終了するまでの期間に実際の吊荷重に対して誤差のない吊荷重の値が算出されて表示され、また、それ以外の期間も誤差のない吊荷重の値が算出されて表示される。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、荷重演算装置50の荷重演算部56が、巻上時及び巻下時の前記過渡期間において起伏ロープ28の第1張力値を増加させる方向の増加補正と起伏ロープ28の第1張力値を減少させる方向の減少補正との間での補正形態の移行を起伏ロープ28の移動量を表すドラム26aの累積回転パルス数の増加に従って段階的に行うように段階的に変化する補正係数で第1張力値を補正するため、前記過渡期間の第1張力値の補正によって補正後の第1張力値に急激に値が変化する箇所が生じるのを防ぐことができる。このため、補正後の第1張力値である第2張力値から算出される吊荷重にその値が急変する箇所が生じるのを防ぐことができ、その算出された吊荷重の値に基づいて、オペレータに違和感を与えない荷重表示を実現できる。
【0077】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0078】
例えば、本発明は、必ずしも起伏ロープの第1張力値から吊荷重を導出する荷重導出装置のみに適用されるものではなく、フック装置に接続される巻上ロープの第1張力値から吊荷重を導出する荷重導出装置にも適用可能である。
【0079】
図9〜
図11は、巻上ロープの一例である主巻ロープ10の第1張力値から吊荷重を導出する、本発明の変形例による荷重導出装置40の構成を説明するための図である。なお、この変形例における吊荷重は、吊荷の重量と、その吊荷を吊っている主フック装置8の重量と、主巻ロープ10のうちブーム6の先端から垂下している部分の重量との合計の重量に相当する。
【0080】
巻き上げ及び巻き下げの対象物である主フック装置8は、複数のフックシーブ8a(
図9参照)を備えており、この複数のフックシーブ8aは、回転軸8bによってその軸回りに回転自在となるように支持されている。ブーム6の先端部には、複数のブームポイントシーブ62と、ブームトップシーブ64とが設けられている。複数のブームポイントシーブ62は、回転軸62aによって回転自在となるように支持されており、ブームトップシーブ64は、図略の対応する回転軸によって回転自在となるように支持されている。
【0081】
上部旋回体4(
図1参照)に設けられた主巻ウインチ12のドラム12aから引き出された主巻ロープ10は、
図9に示すように、ブームトップシーブ64に掛けられた後、複数のブームポイントシーブ62と複数のフックシーブ8aとに掛け回されている。また、ブーム6の先端部には、ブームトップシーブ64とブームポイントシーブ62との間の位置において主巻ロープ10が掛けられ、その主巻ロープ10に掛かる荷重を検出する荷重検出器66が設けられている。荷重検出器66は、主巻ロープ10に掛かる荷重に起因してその主巻ロープ10から当該荷重検出器66に下方へ向かって作用する荷重F’(
図10参照)を検出する。荷重演算装置50の張力導出部53は、荷重検出器66によって検出された荷重値F’から主巻ロープ10の第1張力値Fを次式(1)によって算出する。
【0082】
F=2×cosθ×F’・・・(1)
運転室32(
図1参照)内には、主巻ウインチ12を操作するための巻上操作装置70(
図11参照)が設けられている。巻上操作装置70のレバー70aは、主巻ウインチ12の巻上動作及び巻下動作の停止(ドラム12aの回転停止)を指示する中立位置から主巻ウインチ12による主フック装置8の巻上動作(主巻ロープ10の巻取動作)を指示する巻上側と、中立位置から巻上側と反対側であって主巻ウインチ12による主フック装置8の巻下動作(主巻ロープ10の繰出動作)を指示する巻下側とに操作可能となっている。
【0083】
操作検出器44は、レバー70aが中立位置にあるか、中立位置から巻上側又は巻下側に操作されているかを逐次検出し、その検出したレバー70aの操作状態を表す信号を荷重演算装置50へ逐次出力する。この操作検出器44が出力する信号は、主巻ロープ10の移動方向を表す方向指標信号の概念に含まれるものである。
【0084】
ドラム回転検出器46は、主巻ウインチ12から出力されるドラム12aの回転パルス数を逐次検出し、その検出した回転パルス数のデータを荷重演算装置50へ逐次出力する。このドラム回転検出器46が出力する回転パルス数は、主巻ロープ10の移動量を表す移動量指標値の概念に含まれるものである。
【0085】
荷重演算装置50は、操作検出器44から出力される信号が表すレバー70aの操作方向、すなわち主巻ロープ10の移動方向に対応した補正係数により主巻ロープ10の第1張力値を補正するとともに、主フック装置8の巻上時及び巻下時にシーブ64,62,8aの回転抵抗が一定になるまでの過渡期間において主巻ロープ10の第1張力値を増加させる方向の増加補正とその第1張力値を減少させる方向の減少補正との間での補正形態の移行をドラム12aの累積回転パルス数の増加に従って段階的に行うように補正係数を段階的に変化させる。
【0086】
また、メモリ52には、主フック装置8の巻上時の主巻ロープ10の第1張力値を補正するための補正係数と、主フック装置8の巻下時の主巻ロープ10の第1張力値を補正するための補正係数とが、それぞれ、主巻ロープ10の移動量を表すドラム12aの累積回転パルス数(回転量)と対応付けされた状態で記憶されている。この補正係数は、本発明の補正値の概念に含まれるものである。
【0087】
また、メモリ52に記憶されている累積回転パルス数と主巻ロープ10の第1張力値の補正係数との相関関係のうち過渡期間に対応する部分は、補正係数を第1張力値に乗算することにより第1補正値を増加させる方向の増加補正と補正係数を第1張力値に乗算することにより第1補正値を減少させる方向の減少補正との間で補正形態を移行させ、且つ、その補正形態の移行累積回転パルス数の増加に従って段階的に行わせるように設定されている。具体的に、巻下時の過渡期間における累積回転パルス数と主巻ロープ10の補正係数との相関関係は、補正係数が減少補正を行わせる補正係数から増加補正を行わせる補正係数へ過渡期間の途中で変化し、且つ、その変化が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われるように設定されている。また、巻上時の過渡期間における累積回転パルス数と補正係数との相関関係は、補正係数が増加補正を行わせる補正係数から減少補正を行わせる補正係数へ過渡期間の途中で変化し、且つ、その変化が累積回転パルス数の増加に従って段階的に行われるように設定されている。
【0088】
この変形例における補正値導出部54の機能は、上記実施形態の補正値導出部54の機能と基本的に同様であり、操作検出器44から出力される信号が表すレバー70aの操作状態に対応した補正係数を導出するとともに、主フック装置8の巻上時及び巻下時の過渡期間にドラム回転検出器46から出力される回転パルス数の累積値(累積回転パルス数)に応じた段階的な補正係数を導出する。
【0089】
また、この変形例における荷重演算部56は、張力導出部53によって導出された主巻ロープ10の第1張力値を補正値導出部54によって導出された補正係数により補正し、その補正後の第1張力値である第2張力値からクレーンの吊荷重を求める。具体的には、荷重演算部56は、第2張力値をそのままクレーンの吊荷重の値として導出する。この変形例における荷重演算部56の上記以外の機能は、上記実施形態の荷重演算部56の機能と同様である。
【0090】
図12には、
図5で示した上記実施形態の一連のレバー操作と同様のレバー操作を行う場合に当該変形例で行われる主巻ロープ10の第1張力値の補正の態様と表示装置60に表示される吊荷重の値の経時変化が示されている。
【0091】
主巻ロープ10の張力の理論値は、一連のレバー操作の全期間に亘って一定値となる。それに対して、張力導出部53によって導出される主巻ロープ10の第1張力値は、シーブ64,62,8aの回転抵抗に起因して理論値に対して誤差を持つ。
【0092】
具体的に、最初にレバー70aが中立位置にある期間(時刻t1以前の期間)及びその後、レバー70aが巻下側に操作されてから所定のタイムラグの期間(時刻t1〜t2の期間)には、主巻ロープ10の第1張力値が理論値よりも大きい一定値となる。主フック装置8の巻下時の過渡期間(時刻t2〜t3の期間)には、シーブ64,62,8aの回転抵抗の変化により、主巻ロープ10の第1張力値が理論値よりも大きい値から理論値よりも小さい値へ徐々に変化する。巻下時の過渡期間後の期間(時刻t3〜t4の期間)には、主巻ロープ10の第1張力値は、理論値よりも小さい一定値となり、その後にレバー70aが中立位置に配置される期間(時刻t4〜t5の期間)も同様の一定値となる。
【0093】
その後、レバー70aが巻上側に操作されてから所定のタイムラグの期間(時刻t5〜t6の期間)は、主巻ロープ10の第1張力値は、その前のレバー70aが中立位置に配置されていた期間と同様の一定値となる。主フック装置8の巻上時の過渡期間(時刻t6〜t7の期間)には、シーブ64,62,8aの回転抵抗の変化により、主巻ロープ10の第1張力値が理論値よりも小さい値から理論値よりも大きい値へ徐々に変化する。巻上時の過渡期間後の期間(時刻t7〜t8の期間)には、主巻ロープ10の第1張力値は、理論値よりも大きい一定値となり、その後にレバー70aが中立位置に配置される期間(時刻t8以降の期間)も同様の一定値となる。
【0094】
補正値導出部54は、各期間における主巻ロープ10の第1張力値の理論値に対する誤差を適切に補正可能な補正係数を、上記実施形態での手法と同様の手法によって導出する。特に、巻下時の過渡期間(時刻t2〜t3の期間)には、補正値導出部54は、減少補正から増加補正へ補正形態をドラム12aの累積回転パルス数の増加に従って段階的に移行させるための段階的に変化する補正係数を導出し、巻上時の過渡期間(時刻t6〜t7の期間)には、補正値導出部54は、増加補正から減少補正へ補正形態をドラム12aの累積回転パルス数の増加に従って段階的に移行させるための段階的に変化する補正係数を導出する。荷重演算部56は、補正値導出部54によって導出された補正係数を主巻ロープ10の第1張力値に乗算することにより、各期間の主巻ロープ10の第1張力値を理論値に等しい値に補正し、その補正後の第1張力値である第2張力値からクレーンの吊荷重を算出する。その結果、荷重演算部56によって算出されて表示装置60に表示される吊荷重の値は、全期間において実際の吊荷重に対して誤差のない一定値となり、違和感のない荷重表示が実現される。
【0095】
この変形例において上記されていない構成には、上記実施形態におけるブーム6、起伏ロープ28及び起伏ウインチ26に係る構成が当該変形例の主フック装置8、主巻ロープ10及び主巻ウインチ12に係る構成に置き換えて適用される。
【0096】
また、上記変形例の構成と同様の構成を、補フック装置9に接続される補巻ロープ11の第1張力値から吊荷重を導出する荷重導出装置に適用してもよい。なお、この場合の吊荷重は、吊荷の重量と、その吊荷を吊っている補フック装置9の重量と、補巻ロープ11のうちブーム6の先端から垂下している部分の重量との合計の重量に相当する。
【0097】
また、荷重演算装置50のメモリ52は、起伏ロープ28が掛け回されるシーブの形態毎に異なった過渡期間のドラム26aの累積回転パルス数と補正係数との相関関係を示す複数パターンの相関関係を記憶していてもよい。そして、荷重演算装置50の補正値導出部54が、補正係数を導出するために、メモリ52に記憶された複数パターンの相関関係から起伏ロープ28が現在掛け回されているシーブの形態に応じた相関関係を選択して用いてもよい。
【0098】
この構成によれば、補正値導出部54が導出する補正係数により、起伏ロープ28が現在掛け回されているシーブの形態に応じた過渡期間の起伏ロープの第1張力値の誤差を適切に補正することができる。なお、シーブの形態とは、起伏ロープ28が掛け回されているシーブの数や種類、形状、配置等のことである。また、この構成と同様の構成を、主巻ロープ10の第1張力値から吊荷重を導出する場合において過渡期間の主巻ロープ10の第1張力値を補正するための補正係数の導出に適用してもよい。また、同様の構成を補巻ロープ11の第1張力値から吊荷重を導出する場合において過渡期間の補巻ロープ11の第1張力値を補正するための補正係数の導出に適用してもよい。
【0099】
また、本発明の方向出力部として、レバーの操作状態を検出してその操作状態を示す信号を出力する操作検出器の代わりに、ロープの実際の動きを検出してそのロープの移動方向を示す信号を出力する移動方向検出器を用い、その移動方向検出器が出力する信号を本発明の方向指標信号としてもよい。
【0100】
また、本発明の移動量出力部として、ドラムの回転パルス数を検出してその検出した回転パルス数のデータを出力するドラム回転検出器の代わりに、ロープの実際の移動量を検出してその移動量のデータを出力する移動量検出器を用い、その移動量検出器が出力するデータを本発明の移動量指標値としてもよい。
【0101】
また、荷重演算部が第1張力値を補正する方法は、必ずしも補正係数を第1張力値に乗算する方法に限定されるものではない。例えば、補正値導出部は、第1張力値と理論値との差に相当する補正値を導出し、荷重演算部は、その補正値導出部によって導出された補正値を第1張力値に加算もしくは第1張力値から減算することによって第1張力値を補正してもよい。この場合には、ロープの移動方向を表す方向指標値及びロープの移動量を表す移動量指標値と理論値に対する第1張力値の誤差との相関関係を予め調べ、その調べた相関関係から、方向指標値及び移動量指標値と第1張力値の誤差に対応する補正値との相関関係を設定してメモリに記憶させておけばよい。そして、補正値導出部は、そのメモリに記憶されている相関関係に基づいて、現在のロープの移動方向及び移動量に応じた補正値を導出すればよい。
【0102】
また、本発明の荷重導出装置は、必ずしも
図1で示した種類のクレーンのみに適用されるものではなく、それ以外の各種クレーンに適用可能である。また、本発明の起伏部材は、
図1で示した種類のブーム(ラチスブーム)に限定されず、他の種類のブームであってもよく、また、ブームの先端に接続されるジブ等であってもよい。