(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーと、前記第2の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーとを2領域に分割できる仮想の境界直線を設定可能にこれらの光ファイバーが設置された請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載のプローブ。
前記第1の光ファイバー系に属する光ファイバーと、前記第2の光ファイバー系に属する光ファイバーと、これら両系の光ファイバーに接する第3の光ファイバーとを含む一塊に束ねられた光ファイバー束を有し、
前記仮想の境界直線上に設置される光ファイバーが前記第3の光ファイバーとされた請求項4に記載のプローブ。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡による体内管腔の観察・診断は、現在広く普及している診断方法である。この診断方法は、体内組織を直接観察するため、病変部を切除する必要がなく、被験者の負担が小さいとう利点を有する。一方で、このように体内管腔を直接観察する方法は、生検後の病理検査に比べて確度や精度が低いと考えられており、撮像画質の向上の努力が継続的に行われている。
また、最近ではいわゆるビデオスコープ以外に、様々な光学原理を活用した診断装置や、超音波診断装置といったものが提案され、一部は実用化されている。これらの分野でも、その診断確度の改善のために、新しい測定原理を導入したり、複数の測定原理を組み合わせたりすることが行われている。
特に、組織から放射される蛍光や組織に塗布された蛍光物質からの蛍光を観察、測定することで、単に組織の画像を見るだけでは得られない情報を得られることが知られている。蛍光画像を取得し、通常の可視画像にオーバーラップさせて表示するといった蛍光画像内視鏡システムも提案されている。このようなシステムは、悪性腫瘍の早期発見につながるため、非常に期待されている。
また、蛍光画像を構成せずとも、蛍光の強度情報を取得することで組織の状態を判断する方法も知られている。このような方法においては、電子内視鏡に搭載されている撮像素子を使用せずに蛍光を取得するものもある。
このような蛍光診断をするための診断子、すなわちプローブは、内視鏡の鉗子チャンネル経由で体内にいたるもの、あるいは内視鏡と一体になっているものなどがある。特許文献1、2に記載の蛍光観察用プローブにあっては、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入されることで、体内に導かれる。
また、プローブを用いて体内の組織の情報を得るための分光法としては、蛍光分光以外に例えばラマン分光法が挙げられる。
【0003】
両者に共通した特徴として、測定の際に、比較的狭帯域の励起光を生体組織に照射し、励起光とは異なる波長領域に現れる蛍光やラマン散乱光といった測定光を受光する点である。このような測定においては、高強度の励起光と低強度の測定光を分離し、測定光のみを検出する必要がある。そのために、一般的に光学フィルターを用いて、測定光と励起光とを分離する。この際、特許文献3に示すように、光学フィルターはプローブ自体にではなく、付属の装置内に組み込まれ、プローブが導光した測定光を、プローブの後段階で光学的に分離することが多い。
しかし、この構成において励起光が高強度の場合、プローブ内の光ファイバーから蛍光やラマン散乱光が発生する。光ファイバーとして、例えば数メートル程の長さのものが用いられるため、光ファイバーで生じた蛍光やラマン散乱光が、生体からのそれと同等または強くなってしまうという問題がある。
この問題への一つの対策として、例えば特許文献4にも示されるように、異なる透過帯域の光学フィルターを励起光導光ファイバーの出射端前方と、受光ファイバーの入射端前方とに設置することが有効である。
励起光導光ファイバーの出射端前方に設置された光学フィルターによって励起光を透過させ、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を遮断することで、励起光導光ファイバー内で発生した蛍光やラマン散乱光が生体組織に照射されることを回避することができる。
また、受光ファイバーの入射端面前方に設置された光学フィルターによって励起光を遮断し、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を透過させることで、受光ファイバーに励起光の一部が入射し同ファイバー内で蛍光やラマン散乱光が発生することを回避することができる。
かかる光学フィルターは、必要に応じて一方のみの設置でもよい。
特許文献4に記載のプローブにおいては、同心円状に励起光導光ファイバーの周囲を囲むように複数の受光ファイバーが配置されている。そのために、受光ファイバーの入射端面前方に設置される光学フィルターが円環形状に形成され、励起光導光ファイバーの出射端面前方に設置される光学フィルターが、その円環形状の中心の中空部に納まる比較的小断面積のものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明したプローブにあっては、測定性能を低下させることなく、患者の負担軽減等の観点からの更なる細径化や、感染防止等を目的とするプローブのディスポーザブル化のための製造容易性の向上が、今後要請されるものと予測される。
特許文献4で示されているように、異なる透過帯域の光学フィルターを円環形状の部材とその中空部に収まる部材とで構成する場合、精度良く微小径の孔をあけてその中空部を形成したり、その中空部に収まるフィルターを精度良く形成したりすることに高度な加工技術を要し、プローブの細径化が進行するに従って益々フィルターの加工が困難となり、プローブ細径化の障害となるおそれがある。また、加工の難易度が高い部品が用いられると、ディスポーザブル化のための製造容易性を向上させられなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、生体組織の測定対象部位に励起光を照射して、測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブにおいて、形成容易性の高い形状の光学フィルターを設置可能にすることを課題とし、ひいては、細径化や製造容易性の向上に有利なプローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、生体組織の測定対象部位に励起光を照射して、測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブであって、
"前記光学系として、
前記励起光を導光する励起導光路を構成する第1の光ファイバー系と、"
前記プローブの先端部に設けられ、前記第1の光ファイバー系から出射した前記励起光が照射され、かつ、前記測定光を集光する正のパワーを有する集光レンズ系と、
前記集光レンズ系が集光した前記測定光を受光して導光する受光導光路を構成する第2の光ファイバー系と、
前記第1の光ファイバー系の出射端と前記集光レンズ系との間の光路、又は/及び前記集光レンズ系
と前記第2の光ファイバー系の受光端との間の光路に介在して、これら両光路の光学透過特性を異ならしめる光学フィルターとを有し、
前記第1の光ファイバー系の出射端の中心は、前記集光レンズ系の光軸から離れて設置され、
前記第2の光ファイバー系の受光端の少なくとも一部は、前記光軸までの距離が前記第1の光ファイバー系の出射端から前記集光レンズの光軸までの最長距離より小さく、かつ、前記光軸と前記第1の光ファイバー系の出射端の中心とを通る座標軸及びこれに垂直な前記集光レンズの光軸とで表される座標系において、前記光軸より前記第1の光ファイバー系に近い座標域に配置されることを特徴とするプローブである。
【0008】
請求項2記載の発明は、
前記光学フィルター
は、前記第2の光ファイバー系の受光端との間の光路に介在する光学フィルター
であって、種数が0の形状であることを特徴とする
請求項1に記載のプローブである。
なお、種数とは、位相幾何学的な性質であって、一般的に、曲面に開いている穴の数を指すが、本明細書においては、光学フィルターの形状を定義するための用語として用いており、光学フィルターの平面部に設けられている貫通穴の数を指すものとする。
【0011】
請求項
3記載の発明は、前記第1の光ファイバー系は、各個別で複数本の光ファイバー又は各一塊に束ねられた複数束の光ファイバー束で構成された請求項
1又は請求項2に記載のプローブである。
【0012】
請求項
4記載の発明は、前記第1の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーと、前記第2の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーとを2領域に分割できる仮想の境界直線を設定可能にこれらの光ファイバーが設置された請求項
1から請求項3のうちいずれか一に記載のプローブである。
【0013】
請求項
5記載の発明は、前記光学フィルターの少なくとも一つは直線状の外形線を有し、当該外形線が、前記仮想の境界直線上に設置された請求項
4に記載のプローブである。
【0014】
請求項
6記載の発明は、前記光学フィルターの少なくとも一つは、前記光軸に垂直な断面の外形が矩形であることを特徴とする請求項
5に記載のプローブである。
【0015】
請求項
7記載の発明は、前記光学フィルターの少なくとも一つは、前記光軸に垂直な断面の外形がD字形であることを特徴とする請求項
5に記載のプローブである。
【0016】
請求項
8記載の発明は、前記第1の光ファイバー系に属する光ファイバーと、前記第2の光ファイバー系に属する光ファイバーと、これら両系の光ファイバーに接する第3の光ファイバーとを含む一塊に束ねられた光ファイバー束を有し、
前記仮想の境界直線上に設置される光ファイバーが前記第3の光ファイバーとされた請求項
4に記載のプローブである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、種数が1以上の複雑な形状の光学フィルターを適用する必要がなくなり、形成容易性の高い形状の光学フィルターを設置することができるという効果があり、ひいてはプローブの細径化や製造容易性の向上を推進することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプローブが適用されたシステムの概要を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプローブが挿通された内視鏡の先端部の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプローブの先端部縦断面図である。
【
図4】比較計算を行うための主要な条件が示される光学系の斜視図である。
【
図5A】計算例1に係る反射光分布の計算結果を示す2次元分布図であり、集光レンズの光軸と光ファイバーの出射端の中心とが一致している場合のものである。
【
図5B】計算例1に係る反射光分布の計算結果を示す2次元分布図であり、集光レンズの光軸と光ファイバーの出射端の中心とが離れている場合のものである。
【
図6A】従来の典型例に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6C】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6D】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6E】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6F】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6G】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6H】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図6I】本発明の実施形態に係る光ファイバー配置を示す斜視図である。
【
図7A】本発明実施形態における光ファイバーの配置条件を説明するための図であって、光軸Oと励起光を出射する第1の光ファイバー系とを描いた斜視図である。
【
図7B】本発明実施形態における光ファイバーの配置条件を説明するための図であって、光軸Oに垂直な面における配置図である。
【
図8A】集光レンズの光軸と光ファイバーの出射端中心とをずらし反射光分布に合わせて受光端が配置されるようにした場合の一例に係る光ファイバー配置を示す平面図である。
【
図8B】
図8Aに示す例に関する受光量の計算結果を示す表である。
【
図9A】光ファイバーの受光端が同心円状の配置をとる場合の一例に係る光ファイバー配置を示す平面図である。
【
図9B】
図9Aに示す例に関する受光量の計算結果を示す表である。
【
図10A】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10B】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10C】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10D】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10E】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10F】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図10G】本発明の実施形態に係る光学フィルターの形状と配置を示す平面図である。
【
図11A】本発明の実施形態に係り、2つの光学フィルター同士を位置決めるためのフィルター構造を示す平面図である。
【
図11B】
図11Aに示す2つの光学フィルターのみを取り出し分離して描いた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0020】
図1に示すように本実施形態のプローブ1は、その基端がベースユニット2に接続される。ベースユニット2には、生体の測定対象部位に照射される励起光を発生するための光源、及び、励起光照射により測定対象部位から放射される光を測定光として検出するための分光器などからなる検出器等が備えられている。
一方、内視鏡本体3が、内視鏡本体に内蔵されるカメラ部や照明などの各部の制御やこれら各部とのデータのやり取りを行うための内視鏡プロセッサ4に接続されている。内視鏡本体3は、体内への挿入部3aと、挿入部3aの曲げ操作等を行うための操作部3bとを有する。内視鏡本体3には、操作部3bに設けられた挿入口から挿入部3aの先端面の開口まで連通するチャネル3cが形成されている。プローブ1はチャネル3cに挿通され、
図2に示すようにプローブ1の先端が内視鏡先端に対して進退可能に配置されている。
図2に示すように、内視鏡本体3の挿入部3aの先端部には、撮像素子や対物レンズ等で構成されるカメラ部3d、内視鏡照明の発光部となるライトガイド3e、気体、液体等の流動物を噴射するための送気送水ノズル3f、チャネル3cの先端開口が設けられ、プローブ1の先端部がチャネル3cから必要に応じて延出される。
但し、以上説明した内視鏡の形態、プローブ1が内視鏡のチャネル3cに挿通される形態は説明上の具体的例示に過ぎない。特に、プローブ1の体内に導かれる形態は、内視鏡のチャネル3cを経由する形態のほか、単独で体内に挿入される形態であってもよい。また、プローブ1の構成が内視鏡本体3に一体化された形態であっても、本発明を実施することが可能である。
【0021】
図3に示すようにプローブ1は、プローブチューブ9の内部に、第1の光ファイバー系10と、集光レンズ系(集光レンズ11)と、第2の光ファイバー系12と、光学フィルター13,14と、フェルール15とを備える。
第1の光ファイバー系10は、基端がベースユニット2の光源の励起光出力面に接続又は近接するように設けられ、先端が
図3に示すようにプローブ先端部に及んでおり、励起光を導光する励起導光路を構成する。
集光レンズ系は、第1の光ファイバー系10から出射した励起光が照射され、かつ、測定対象部位から放射される測定光を集光する正のパワーを有するレンズ又はレンズ群である。
第2の光ファイバー系12は、基端がベースユニット2の検出器への入力端に接続され、先端が
図3に示すようにプローブ先端に及んでおり、集光レンズ系が集光した測定光を受光して導光する受光導光路を構成する。
第1及び第2の光ファイバー系10,12は、一塊に束ねられた光ファイバー束(ファイバーバンドル)の一束又は複数束により構成されたり、互いに束ねられていない個別の光ファイバーの一本又は複数本により構成されたり、その組合せも含めて様々な形態が適用し得る。
第1及び第2の光ファイバー系10,12は、フェルール15によって所定の相対的位置に保持される。
【0022】
集光レンズ系は、1個又は複数個のレンズから構成されるが、1個の場合はそれが集光レンズ11であり、複数個のレンズから構成されるときには、光ファイバー系10、12に最も近い位置に配置されるレンズを集光レンズ11とする。
図3においては、1つの集光レンズ11のみを図示するが、集光レンズ11の光ファイバー系10、12に対する反対側に集光レンズ系を構成する他のレンズを配置してもよい。集光レンズ11に対向する第1の光ファイバー系10の先端が出射端、集光レンズ11に対向する第2の光ファイバー系12の先端が受光端である。
【0023】
ベースユニット2の光源からの励起光は第1の光ファイバー系10によってプローブ1の先端部に導光される。第1の光ファイバー系10の出射端から出射した励起光は、集光レンズ系で集光されてプローブ1から出射し、生体組織表面の測定対象部位へ照射される。測定対象部位に照射された励起光により、病変状態に従って蛍光が発生する。発生した蛍光と生体組織表面での反射光が含まれる測定対象部位からの測定光がプローブ1に入射して集光レンズ系で集光され、第2の光ファイバー系12の受光端に入射する。さらに測定光が第2の光ファイバー系12によって導光される。
【0024】
第2の光ファイバー系12で導光された測定光は、ベースユニット2の検出器に入力される。蛍光は、広義には、X線や紫外線、可視光線が照射された被照射物が、そのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するものである。ここでは、励起光によって、その波長とは異なった波長の蛍光が戻り光として生じるので、これを測定光として受光し、第2の光ファイバー系12を介してベースユニット2の検出器に導光し、スペクトル分布を分析することで、測定対象の病変状態を検知する。
なお、蛍光の測定に代えて、励起光に起因して生じるラマン散乱光を受光し測定することとしてもよい。
【0025】
光学フィルター13は、励起光を透過させ励起光以外の帯域の光を遮断する励起光透過フィルターである。光学フィルター13は、第1の光ファイバー系10の出射端と集光レンズ11との間の光路に介在する。第1の光ファイバー系10の出射端から出射した光は、光学フィルター13に入射する。
したがって、光学フィルター13によって励起光を透過させ、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を遮断することで、第1の光ファイバー系10内で発生した蛍光やラマン散乱光が生体組織に照射されることを回避することができる。
【0026】
光学フィルター14は、励起光を遮断し励起光以外の帯域の光を透過させる励起光遮断フィルターである。光学フィルター14は、集光レンズ11と第2の光ファイバー系12の受光端との間の光路に介在する。光学フィルター14を通過した光が第2の光ファイバー系12の受光端に入射する。
したがって、光学フィルター14によって励起光を遮断し、励起光以外の帯域の蛍光やラマン散乱光が含まれる光を透過させることで、第2の光ファイバー系12に励起光の一部が入射し第2の光ファイバー系12内で蛍光やラマン散乱光が発生することを回避することができる。
【0027】
光学フィルター13,14の固定方法としては、例えば、光学フィルター13,14の片面の一部をフェルール15の端面に接着したり、光学フィルター13,14の外周縁をプローブチューブ9の内面に接着したりすることで固定することができる。また、光学フィルター13,14、さらには集光レンズ11を保持し、フェルールに連結固定される保持部品を適用して固定してもよい。
【0028】
なお、光学フィルターの目的は、以上説明したことにも、如何なる目的にも限定されるものではない。第1の光ファイバー系10の出射端と集光レンズ11との間と、集光レンズ11
と第2の光ファイバー系12の受光端との間の両光路の光学透過特性を異ならしめるために、少なくともいずれか一方の光路に光学フィルターが設置される場合に、後述する構成を採用することにより、形成容易性の高い形状の光学フィルターを設置可能にすることができる。
【0029】
プローブ1にあっては、形成容易性の高い形状の光学フィルターを設置可能にするために、第1の光ファイバー系10の出射端の中心は、集光レンズ11の光軸から離れて設置される(条件aとする。)。以下これについて計算例を交えつつ詳細に説明する。なお、第1の光ファイバー系10の出射端の中心軸及び第2の光ファイバー系12の受光端の中心軸は集光レンズ11の光軸に平行である。
【0030】
まず、以下の計算例1を開示する。
計算例1においては、第1の光ファイバー系10に相当するコア径が0.10〔mm〕、開口数(NA)が0.22の1本の光ファイバーから光を出射した時の反射光の分布を計算により求める。
図4に示すように集光レンズLを備える光学系を想定する。集光レンズLは、
図3の集光レンズ11に相当するもので、nd=1.51633、νd=64.1の硝材よりなり、S1面の曲率半径が0.83〔mm〕、S2面が平面の、正のパワーを有するレンズである。
集光レンズLを挟んだ両側に、集光レンズLの光軸に垂直な面を想定する。一つは、S1面側に配置される面Aである。光ファイバーの出射端は面Aに含まれるものとする。もう一つはS2面側に配置される面Bである。面Bは生体組織表面として想定されるもので完全拡散反射性を有する面とする。計算例1では、面Bから集光レンズLを経て面Aに達する光の分布を計算対象とする。集光レンズLの光軸上で、面AとS1面との間の距離を1.37〔mm〕とし、面BとS2面との間の距離を1.7〔mm〕と設定する。
図5A,
図5Bは、面Aでの反射光分布を計算結果に基づき描画したものである。
図5A,
図5Bのそれぞれにおいて、縦横座標の交点が光軸の位置に相当し、「×」印は、光ファイバーの出射端の中心位置である。
図5Aにおいては、光軸と光ファイバーの出射端の中心とは一致している。これに対し
図5Bにおいては、光軸と光ファイバーの出射端の中心とは離れている。上述した条件aに従って、第1の光ファイバー系10の出射端の中心が集光レンズ11の光軸から離れて設置される場合を調べるためである。
なお、計算例1においては、計算対象の光として励起光を想定している。実際には測定光として蛍光やラマン散乱光を第2の光ファイバー系12に取り込むことが重要となる。しかし、面Aでの蛍光やラマン散乱光の分布は、励起光が面Bで反射される場合の面Aにおける反射光分布と同様の傾向を示すので、励起光のみでの計算とした。
【0031】
図5Aに示すように、光軸と光ファイバーの出射端の中心とが一致している場合(例1−1)には、反射光分布R1も光軸を中心として分布する。
これに対し、
図5Bに示すように、集光レンズLの光軸と光ファイバーの出射端の中心とが離れている場合(例1−2)には、反射光分布R2の中心は、光軸より光ファイバーの中心(「×」印)の方向へ移動していることがわかる。光ファイバーの中心(「×」印)を基準にすると、反射光分布R2の中心は光軸側に偏在する。反射光分布R2の中心は、光軸に対しては光ファイバーの中心(「×」印)寄り、光ファイバーの中心(「×」印)に対しては光軸寄りであり、すなわち、光軸と光ファイバーの中心(「×」印)との間に位置する。なお、
図4に示される光路L1、L2は、光軸と光ファイバーの出射端の中心とが離れている場合における面Aから面Bまでの光路を示すものである。
【0032】
以上の計算例1により、以下の知見を得ることができる。
励起光を出射する光ファイバーの中心がレンズの光軸上にある例1−1の場合(
図5A)は、測定光は、励起光を出射する光ファイバーの中心及びレンズの光軸を中心として円対称に分布する。
したがって、測定光をより多く受光するためには例えば
図6Aに示すように、測定光を受光する第2の光ファイバー系12を、励起光を出射する第1の光ファイバー系10の周りを取り囲むように環状に配置する必要がある。そのため、第1の光ファイバー系10内で発生した不要光を遮断するための光学フィルターや、第2の光ファイバー系20に入射する励起光を遮断するための光学フィルターとして、円環形状の部材とその中空部に収まる部材とで構成する必要性が生じる。
【0033】
一方、励起光を出射する光ファイバーがレンズの光軸から外れた位置にある例1−2の場合(
図5B)には、測定光の分布中心は、励起光を出射する光ファイバーの中心に対してレンズ光軸側に偏在する。
したがって、励起光を出射する第1の光ファイバー系10をレンズの光軸からずらした場合には、第1の光ファイバー系10を取り囲むように第2の光ファイバー系12を設置する必要がなく、例えば
図6Bから
図6Iに示すように測定光が主に分布する領域のみに測定光を受光する第2の光ファイバー系12を設置すればよい。
すなわち、条件1として、第2の光ファイバー系12の受光端の少なくとも一部は、集光レンズ11の光軸までの距離が、第1の光ファイバー系10の出射端から集光レンズ11の光軸までの最長距離(すなわち、第1の光ファイバー系10の出射端の、集光レンズLの光軸から最も遠い部位と集光レンズLの光軸との距離)より小さくなるように配置されている。
測定光の分布中心は、第1の光ファイバー系10に対して集光レンズ11の光軸側に寄る。そのため、第2の光ファイバー系12の受光端の総面積に対して測定光の受光効率を上げる観点及びプローブの小径化の観点において、光軸に対して第1の光ファイバー系10より遠くなる領域は、第2の光ファイバー系12の設置領域として好ましくないからである。したがって、「第2の光ファイバー系12の受光端のすべては、集光レンズ11の光軸までの距離が第1の光ファイバー系10の出射端から集光レンズまでの最長距離より小さくなるように配置されている(条件1−1とする)」との条件が好ましい。
図6Bから
図6Iに例示の構成は、この条件1−1を満たす。
【0034】
また、条件2として、第2の光ファイバー系12の受光端の少なくとも一部は、集光レンズ11の光軸と第1の光ファイバー系10の出射端の中心とを通る座標軸とこれに垂直な光軸とで表される座標系において、光軸より第1の光ファイバー系10に近い座標域に配置される。
測定光の分布中心は、集光レンズ11の光軸に対して第1の光ファイバー系10の出射端の中心側に寄る。そのため、第2の光ファイバー系12の受光端の総面積に対して測定光の受光効率を上げる観点において、第1の光ファイバー系10に対して光軸より近い座標域が、第2の光ファイバー系12の設置領域として相応しい。このような理由により条件2を規定している。
【0035】
以上の条件1−1,及び条件2について、
図7A,
図7Bを参照しながらさらに補足して説明する。
図7Aは、集光レンズの光軸Oと、第1の光ファイバー系10とを描いた斜視図である。光軸Oに垂直な面における第1の光ファイバー系10の出射端及び第2の光ファイバー系12の受光端の配置例を
図7Bに示した。
図7Bにおいて円Cは、光軸Oを中心とし、第1の光ファイバー系10に内側で接する円である。条件1−1は、この円C内に第2の光ファイバー系12を配置することと言い換えることができる。円C内に第2の光ファイバー系12が設置されれば、光ファイバー系12は第1の光ファイバー系10より外側にはみ出ることはなく、光ファイバー系10を納める以上に設置空間が大径化することを抑えることができる。また、円C内に第2の光ファイバー系12が設置されれば、光ファイバー系12の受光端は、光軸Oまでの距離が第1の光ファイバー系10の出射端のそれ以下となり、条件1−1を充たす。
【0036】
図7Bにおいて座標X−Yは、光軸Oを原点とする直交2軸座標である。座標軸Xは、光軸Oと、第1の光ファイバー系10の出射端の中心とを通る。座標軸Yを境界としたXの正の領域をX1とし、負の領域をX2とする。正の領域X1に光ファイバー系10の出射端が存在する。
条件2は、「第2の光ファイバー系12の受光端の少なくとも一部は、正の領域X1にある」と言い換えることができる。条件1−1に従った円C内であっても、測定光の分布は上記計算例1で確認したように、正の領域X1に主に分布するからである。
本実施形態においては、条件aに加え、条件1−1及び条件2を満たすことを最低限必要な条件とする。
図6Bから
図6Iに例示の構成は、条件a、条件1−1及び条件2を満たす。なお、
図6A〜
図6I及び
図7Aにおいて二点鎖線で描いた円柱の中心軸がレンズ光軸に相当する。
図7Bに示す第2の光ファイバー系12の受光端12a及び12bは、条件1−1及び条件2を満たす。受光端12aはその全部が円C内かつ正の領域X1にあり、受光端12bはその全部が円C内にあり、かつ、その一部が正の領域X1にある。
受光量を増大するために、円C内かつ負の領域X2に第2の光ファイバー系12の光ファイバーを配置することも有効である。円C内であれば大径化の原因とならない。
以上の説明から明らかなように、
図6B,
図6H,
図6D,
図6Cに示す光ファイバー配置は、他の
図6A,
図6E,
図6F,
図6G,
図6Iに示す配置例に比べて、光ファイバーの本数が少なく、細径化や製造容易性の向上に有利である。特に、
図6Bは光ファイバーの本数が最も少なく、細径化や製造容易性の向上に最も有利である。また、
図6I,
図6G,
図6Fに示す光ファイバー配置は、受光用の光ファイバーの本数が多く受光面積が大きいため、他の
図6A,
図6B,
図6C,
図6D,
図6E,
図6Hに示す配置例に比べて、測定光をより確実に捕えるのに有利である。さらに、
図6E、
図6G,
図6Hに示す光ファイバー配置は、励起光照射用の光ファイバーの本数が多く、出射面の面積が大きいため、他の
図6A,
図6B,
図6C,
図6D,
図6F,
図6Iに示す配置例に比べて、受光用の光ファイバーの本数や受光端の面積を減らすのに有利である。
【0037】
もちろん、受光効率を向上するためには、条件3として「光軸Oと第1の光ファイバー系10の出射端との間に現れる測定光の集光スポットの強度中心に、第2の光ファイバー系12の受光端が重なるように設置されること」が有効である。ここで、測定光の集光スポットの強度中心は、最も測定光の光強度が高い点である。
測定光の集光スポットの強度中心が光軸Oと第1の光ファイバー系10の出射端との間(同出射端に重なる領域を除く)に現れるようにすることは、集光レンズ系の光学特性、集光レンズ系と第1の光ファイバー系10との相対位置などの光学系の設計によって実現することができる。そして、測定光の集光スポットの強度中心が第1の光ファイバー系10に重ならない限り、例えば、
図6B,
図6C,
図6E,
図6F,
図6G,
図6H,
図6Iに例示の構成によって、当該強度中心に第2の光ファイバー系12の受光端が重なるように設置することが有効である。第2の光ファイバー系12の受光端の中心が測定光の集光スポットの強度中心に近づくほど受光効率が向上する。
【0038】
ここで、計算例2を開示する。計算例2においては、光ファイバーの受光端が同心円状の配置をとる例2−1と、集光レンズの光軸と光ファイバーの出射端中心とをずらし、反射光分布に合わせて光ファイバーの受光端が配置されるようにした例2−2との受光効率を計算により比較する。
例2−1、例2−2ともに、1本の光ファイバーにより励起光を出射し、6本の光ファイバーにより受光する条件とする。励起光を出射する光ファイバーのコア径を0.20〔mm〕、開口数(NA)を0.22、受光する各光ファイバーのコア径を0.20〔mm〕、開口数(NA)を0.22とする。
上記計算例1と同様に、
図4に示すように集光レンズLを備える光学系を想定する。集光レンズLは、
図3の集光レンズ11に相当するもので、nd=1.51633、νd=64.1の硝材よりなり、S1面の曲率半径が0.83〔mm〕、S2面が平面の正のパワーを有するレンズである。
集光レンズLを挟んだ両側に、集光レンズLの光軸に垂直な面を想定する。一つは、S1面側に配置される面Aである。励起光を出射する光ファイバーの出射端及び受光する各光ファイバーの受光端は、面Aに含まれるものとする。もう一つはS2面側に配置される面Bである。面Bは生体組織表面として想定されるもので完全拡散反射性を有する面とする。集光レンズLの光軸上で、面AとS1面との間の距離を1.37〔mm〕とし、面BとS2面との間の距離を1.7〔mm〕と設定する。
以上の条件は、例2−1と例2−2とで共通である。
例2−2にあっては、
図8Aに示す光ファイバー配置を、例2−1にあっては
図9Aに示す光ファイバー配置をとり、このように配置のみが異なる条件で比較を行う。
図8Aに示す番号1〜6が付された白抜きの丸部分が受光する光ファイバーの受光端である。受光端番号1に隣接する白線の円が励起光を出射する光ファイバーの出射端の外形である。例2−2において、励起光を出射する光ファイバーの出射端の中心と集光レンズLの光軸との距離は、0.25〔mm〕である。例2−1においては、励起光を出射する光ファイバーの出射端の中心と集光レンズLの光軸との距離を0〔mm〕として、
図9Aに示すように励起光を出射する光ファイバーの周りに6本の受光する光ファイバーを配置した。
例2−2において、励起光の光量を1としときの受光する各光ファイバーの受光量及びその合計を
図8Bに表形式で示した。例2−1において、励起光の光量を1としたときの受光する各光ファイバーの受光量の合計を
図9Bに示した。なお、例2−1においては、各光ファイバーの受光量は均等である。
【0039】
図8B及び
図9Bに記載した計算結果から、受光する光ファイバーの本数が同数の場合、例2−2の配置を採用しても、例2−1に対して同等以上の受光効率を達成することができることがわかった。また、例2−2の配置(
図6Iに示す配置にも相当する)では受光する番号1,2,3の光ファイバーに測定光が集中しているため、受光する光ファイバーの本数を減らした場合にも、受光量の減少は、例2−1の同心円状の配置と比べて小さくできることがわかる。すなわち、例2−1において、例えば、受光する光ファイバーの本数を3本減らせば、受光量は必ず半分になるが、同様に3本減らす場合に例2−2に準じた配置では、番号4,5,6の光ファイバーを排して、番号1,2,3の3本にすれば、受光量は半分より大きいこととなる。また、1本にする場合は番号1の光ファイバーを、5本にする場合は番号1,2,3,5,6の光ファイバーを残せば受光量を最も大きく残せる。
以上述べたように、第1の光ファイバー系10の出射端の中心が、集光レンズ11の光軸から離れて設置されることで、受光する光ファイバーを円環状に配置することなく、同等の受光効率を達成できる。また、そのためには、上記条件1、さらには条件1−1、条件2、条件3が有効である。
【0040】
さて、以上の条件に加え、光学フィルターの設置領域を直線によって分離し、ひいては形成容易性の高い形状の光学フィルターを設置可能とするために、次の条件4を満たすことが好ましい。
すなわち、条件4として、「第1の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーと、第2の光ファイバー系に属するすべての光ファイバーとを2領域に分割できる仮想の境界直線(
図7Bの直線D)を設定可能にこれらの光ファイバーが設置される」という条件である。境界直線Dは座標軸Xと直交してもよいし、しなくてもよい。
図7Bにおいては、境界直線Dを座標軸Xと垂直に描いているが、座標軸Xに対して斜めに交わるように描くことも可能である。境界直線Dは、少なくとも1本設定できればよいが、複数本設定できれば、さらに光学フィルターの形状や設置の自由度が増す。
上述した条件aを充たすことで、
図5A,
図5Bを使って説明したように、面Aにおける反射光分布の中心は集光レンズの光軸と光ファイバーの出射端との間に位置することになるので、光ファイバーの受光端を光ファイバーの出射端とをある直線を境にして分離することが可能となる。従って、光学フィルター14を円環状に形成する必要がなくなる。
また、上述の条件1−1を満たすことで、第2の光ファイバー系12は第1の光ファイバー系10の周りに円環状に配置されることはないから、光学フィルター14を円環状に形成する必要はなく、光学フィルター13とともに、種数が0の単純な形状に形成することができる。これにより、光学フィルターの加工が容易になる。
さらに、条件4を満たすことで、光学フィルター13と光学フィルター14とを境界直線Dで分離して配置することができ、境界付近で入り組んだ複雑な外形を光学フィルター13,14に形成する必要はなくなる。これにより、さらに光学フィルターの加工が容易になる。
【0041】
図10A〜
図10Gに光軸に垂直な面における光学フィルターの形状と配置の構成例を示す。
図10A〜
図10Gに示す構成は、条件1−1及び条件4を満たすものである。
図10A〜
図10Gに形状や配置が様々である形態を示すが、簡便のため符号は
図3と共通のものを示す。
図10A,
図10Cに示す光学フィルター13及び光学フィルター14の外形、並びに
図10Dに示す光学フィルター14の外形は矩形である。矩形であれば、各辺を直線形状に加工すればよいので、ダイシング加工等によって容易に精度良く加工することができる。また、境界直線D上に直線状の一辺を配置することができる。
図10Bに示す光学フィルター13及び光学フィルター14の外形、並びに
図10Dに示す光学フィルター13の外形は円形である。
図10E,
図10F,
図10Gに示す光学フィルター13及び光学フィルター14の外形はD字形である。D字形であれば、その一辺を直線形状に容易に精度良く加工することができ、境界直線D上に直線状の一辺を配置することができる。
図10A,
図10C,
図10D,
図10E,
図10F,
図10Gに示すように、光学フィルター13,14が直線状の外形線を有する場合には、当該外形線が上述した仮想の境界直線D上に設置される。
図10E,F,Gに示すように、従来の同心円状の配置と異なるので、第1の光ファイバー系10を、複数本の光ファイバー又は各束が一塊に束ねられた複数束の光ファイバー束にすることも容易である。
【0042】
上述した従来技術で、光学フィルターを円環形状の部材とその中空部に収まる部材とで構成する場合は、その中空部の内径や、中空部に収まる部材の外径を、励起光を出射する光ファイバーの外径に対応させて精度良く加工する必要がある。
本実施形態においては、
図10A〜
図10Gに示すように、対応する光ファイバーの端面外形より大きな寸法の光学フィルターを適用することができ、対応する光ファイバーが複数の光ファイバーからなる場合も、それらの配置領域より大きな寸法の光学フィルターを適用することができる。したがって、比較的大きな形状を加工するので、加工の容易性が増す。
【0043】
図10Gに示す一塊に束ねられた光ファイバー束(ファイバーバンドル)20は、第1の光ファイバー系10に属する複数の光ファイバーと、第2の光ファイバー系12に属する複数の光ファイバーと、これら両系の光ファイバーに接する第3の光ファイバー16,16とを含む。そして、上述した仮想の境界直線D上に設置される光ファイバーが第3の光ファイバー16,16とされることで、第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12との直線境界による分離性を確保することができる。また、ファイバーバンドル20を用いることで、ファイバーの1本1本を位置決め固定する煩雑さから解消され、組立て容易性が向上する。
第3の光ファイバー16は、第1の光ファイバー系10にも、第2の光ファイバー系12にも属さない、すなわち、励起光の導光にも、測定光の受光にも使用されない。第3の光ファイバー16は、光学要素として他の目的に使用しても良いが、光学要素として使用目的が無い場合は、プローブ1がベースユニット2に接続されても、ベースユニット2に構成されるシステムに対して非接続を保つように構成する。例えば、第3の光ファイバー16の基端部を、第1の光ファイバー系10及び第2の光ファイバー系12から分けて、プローブ1の基端のコネクタ部から乖離した箇所に保持してプローブ1を構成する。
【0044】
ここで、光学フィルターの製造方法の一例について説明する。
光学フィルター13,14は、基板上に蒸着又はスパッタリングを行って作製したフィルター素材を所望の形状に加工して作製する。これを上述したように接着等によって光ファイバーに対する所定の位置に固定する。
また、第1、第2の光ファイバー系10,12の端面上に、直接に蒸着又はスパッタリングを行って光学フィルター13,14を構成する材料を積層することで作製する。光学フィルターを構成する材料が複数の光ファイバーの端面や、フェルールの端面に跨って一体の層状に形成される。このとき、光学フィルター13の形成工程においては、第2の光ファイバー系12の端面をマスキングする。光学フィルター14の形成工程においては、第1の光ファイバー系10の端面をマスキングする。この製造方法にあっては、上述した光学フィルターの形状、大きさによる加工容易性が、そのままマスキング部材の形成容易性に反映された過程を経て、結果として光学フィルターの形成容易性が達成される。
【0045】
なお、2つの光学フィルター13,14を用いる場合において、光学フィルター13,14に、それぞれ互いを位置決めし合うような形状を設けることもできる。例えば
図11に示すように、一方の光学フィルターに凹形状を設け他方の光学フィルターに凸形状を設けて、これらの凹凸形状を嵌め合わせることで、光学フィルター13,14同士の位置決めを確保するフィルター構造を実施することも可能である。かかる構造により、微細な光学フィルターの取り扱いが容易となり、プローブ1の組立容易性が向上する。
また、上述した説明は、励起光導光用の光ファイバーの出射端と、測定光受光用の光ファイバーの受光端とが同一面内に存在するものとして説明したが、両者は必ずしも同一面に存在する必要はない。但し、集光レンズの光軸方向に対する両者の位置の違いが大きくなると、光学系の設計が難しくなる恐れがあるため、両者を同一面内もしくは実質的に同一面内に存在するものとみなせる位置に配置することが好ましい。