(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939277
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】冷凍方法及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25D 13/00 20060101AFI20160609BHJP
F25D 13/06 20060101ALI20160609BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
F25D13/00 A
F25D13/06
A23L3/36 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-116192(P2014-116192)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-230124(P2015-230124A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(72)【発明者】
【氏名】二宮 達
(72)【発明者】
【氏名】松尾 理子
【審査官】
柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−120243(JP,A)
【文献】
特開2009−044981(JP,A)
【文献】
特開2003−106726(JP,A)
【文献】
特開2010−060186(JP,A)
【文献】
実開平05−053491(JP,U)
【文献】
特開平05−010643(JP,A)
【文献】
特開2010−230307(JP,A)
【文献】
特開2006−170566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 13/00
A23L 3/36
F25D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に導入移送される被冷却物を複数の冷却工程により過冷却状態を生じさせずに冷却凍結処理する冷凍方法において、
前記冷却工程は、少なくとも初期段階の第1冷却工程と該第1冷却工程以降の第2冷却工程からなり、前記各冷却工程で使用される冷風温度はそれぞれ一定温度に設定されており、
第1冷風温度を用いる前記第1冷却工程は、連続的に導入移送される被冷却物の温度が凍結温度近傍到達時まで継続し、前記第1冷風温度より低い第2冷風温度を用いる前記第2冷却工程に移行することを特徴とする冷凍方法。
【請求項2】
前記冷却工程における前記被冷却物を冷却する冷風温度が段階的に低下するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍方法。
【請求項3】
凍結装置内に設けられ少なくとも前記第1冷却工程を行う第1冷却エリア及び前記第2冷却工程を行う第2冷却エリアと、前記各冷却エリアにそれぞれ配置され冷風を供給制御可能とする冷凍機と、被冷却物を前記冷却エリアのそれぞれに連続的に導入移送するコンベアと、を備える冷凍装置を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍方法。
【請求項4】
前記第1冷風温度は−15±5℃の範囲に設定され、前記第2冷風温度は−44℃以下に設定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷凍方法。
【請求項5】
凍結装置内に設けられ少なくとも第1冷却エリア及び該第1冷却エリア以降の第2冷却エリアと、前記凍結装置内の各冷却エリアにそれぞれ配置され冷風を供給制御可能とする冷凍機と、被冷却物を前記冷却エリアのそれぞれに連続的に導入移送するコンベアと、を備え、前記各エリアで使用される冷風温度はそれぞれ一定温度に設定され、過冷却状態を生じさせずに被冷却物を冷却凍結する冷凍装置であって、
前記第1冷却エリアの冷凍機は、該第1冷却エリアに第1冷風温度の冷風を供給し、前記コンベアは、前記被冷却物の温度が凍結温度近傍到達時に該被冷却物を前記第1冷却エリアから前記第2冷却エリアに連続的に導入移送し、前記第2冷却エリアの冷凍機は、前記第1冷風温度より低い第2冷風温度の冷風を該第2冷却エリアに供給することを特徴とする冷凍装置。
【請求項6】
前記第1冷風温度は−15±5℃の範囲に設定され、前記第2冷風温度は−44℃以下に設定されることを特徴とする請求項5に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物組織、食品素材や加工品並びに生鮮食料品等、種々の被冷却物の冷凍方法及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生物組織、種々の素材や加工品並びに生鮮食料品等を冷凍または冷蔵の手段によって保存することが行われており、特に生物組織や生鮮素材、生鮮食料品等の鮮度を保持したまま長期保存を可能にする方法として、冷凍方式が多用されている。このような生物組織や生鮮素材、生鮮食料品等の冷凍方式として、連結式凍結装置などが用いられ、被冷却物(食品)を連結式凍結装置内のベルトコンベアやネットコンベア上に載置し、装置内の冷却帯域に連続的に導入移送し、生物組織や生鮮素材、生鮮食料品等を冷却する冷凍方式が採られている(例えば、特許文献1)。一般には、連続式凍結装置を用いて−45〜−35℃程度の一定温度の冷風が製品に吹き付けられることにより、被冷却物の凍結が行われている。
生鮮食料品の中でも水分が特に多い被冷却物にあっては、上記のように−45〜−35℃程度の一定温度の冷風を吹き付けて被冷却物を凍結させた場合、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結が速過ぎることになり、被冷却物の中心付近において生じる含有水分の相変化に起因した体積増加を吸収できなくなり、既にほぼ完全に凍結した被冷却物の外表面側が強い内部からの応力を受け、被冷却物に割れなどの破損が生じることがある。水分が特に多く破壊を伴う生鮮食料品の代表例が生帆立であり、冷凍時に内部から外側に向けて凸状の変形や割れを生じることがある。生鮮食料品に変形や割れを生じると商品価値が著しく低下することになるため、−45〜−35℃程度の冷風を冷却初期において風速を遅くして生帆立に当て、凍結を緩慢にするといった冷凍工程が用いられることがある。
【0003】
一方、食材、食品や生体等の被冷却物には、それらの構成分子に拘束された結合水や、分子に拘束されずに被冷却物内を自由に移動することができる自由水等が含まれており、冷凍時においてこの自由水が凍結することにより、氷晶の成長を招くことになる。被冷凍物の組織内における氷晶の成長はその細胞や組織の破壊を助長し、細胞や組織が破壊されると、食材や食品等の食感、食味の悪化を招き、商品価値は著しく低下することになる。このような氷晶の粗大化は、冷凍時に氷晶生成温度域を通過する時間が緩慢である場合に発生することが明らかになってきている。
これら氷晶の成長にかかる問題に対して、種々の生鮮素材等を冷凍または冷蔵等の方法で保持するに際し、その低温保持対象物に例えばゲル化剤と氷点降下作用をする等の物質を混入して、組織内の氷晶の成長を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。この方法は、低温保持対象物に種々の物質を添加してゲル化せしめた後に低温に保存し、組織内の氷晶の成長を抑制し、細胞や組織の破壊を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−120243号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開平5−76332号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、組織内の氷晶の成長を抑制する手段として特許文献2の方法を用いた場合、組織内の氷晶の成長を抑制することは可能となるものの、食材、食品や生体等の被冷凍物に適した作用をする種々の物質の混入作業が必要になり、冷凍処理作業が煩雑化するものであり、実際には利用しにくいものである。そこで、被冷凍物に対して冷風温度を例えば−55℃〜−50℃に低下させて、より冷却速度(凍結速度)を速くして氷晶の粗大化を抑制する方法が考えられる。しかし、被冷凍物によっては、−55℃〜−50℃に低下させた冷風を吹き付けて急速冷却する方法では、内部に存在する水分が表面の氷となって、内部への熱伝達が阻害され冷却が遅れるため、表面近くの氷層の粗大化が進行する弊害に加え、冷凍機等の大きなエネルギーロスを招き冷却効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
また、前述したように、冷凍時に内部から外側に向けて凸状の変形や割れを生じる危険性のある生鮮食料品に対しては、−45〜−35℃程度の冷風を冷却初期において風速を遅くして生鮮食料品に当て、凍結を緩慢にして凍結過程での体積変化を外側に逃がし易くする対策があるが、平均冷却速度が遅くなるために、生産性は著しく低下することになる。
【0007】
本発明は、上記した被冷却物の相反する特性及び冷却段階の特性によって適宜選択される温度管理、および温度管理から派生する冷却効率の問題点に着目してなされたもので、生物組織、種々の素材や加工品並びに生鮮食料品等、種々の被冷却物の冷凍に際し、これら被冷却物の変形や割れを防止するとともに被冷却物に本来備わる組織や細胞等の破壊を極力防止し、かつ従来よりも生産性及びエネルギー効率を低下させることなく冷凍できるようにした冷凍方法及び冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の冷凍方法は、
連続的に導入移送される被冷却物を複数の冷却工程により
過冷却状態を生じさせずに冷却凍結処理する冷凍方法において、
前記冷却工程は、少なくとも初期段階の第1冷却工程と該第1冷却工程以降の第2冷却工程からなり、
前記各冷却工程で使用される冷風温度はそれぞれ一定温度に設定されており、
第1冷風温度を用いる前記第1冷却工程は、連続的に導入移送される被冷却物の温度が凍結温度近傍到達時まで継続し、前記第1冷風温度より低い第2冷風温度を用いる前記第2冷却工程に移行することを特徴としている。
この特徴によれば、初期段階の冷却工程で使用される冷却温度を比較的高くすると、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結を遅らせることが可能となり、被冷却物の中心付近における体積増加を吸収、すなわち凍結過程での体積変化が外側に逃げ易くなり、被冷却物に割れなどの破損を防止できる。その後の冷却工程において、より低い冷風温度での被冷却物の冷却により、凍結速度を速めることで氷晶の粗大化を確実に抑制できる。このような温度管理を適用することにより、被冷却物の変形や割れを防止するとともに被冷却物に本来備わる組織や細胞等の破壊を極力防止でき、冷却工程における初期段階での冷却エネルギーのロスが少ない分、後の冷却工程で冷風温度を低下させても、全行程トータルとして冷凍機等の大きなエネルギーロスを招くことがなく、従来よりも生産性を低下させることなく効率的な冷凍処理が可能となる。さらに、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結を十分遅らせることが可能となり、凍結過程における体積変化が外側に逃げる時間を確保できる。
【0009】
前記冷却工程における前記被冷却物を冷却する冷風温度が段階的に低下するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、各種被冷却物は本来備わる組織や細胞の性質がそれぞれ異なり、各種被冷却物の特性及び冷却段階の特性によって適切な冷却速度がそれぞれ異なり、それぞれの最適な温度管理が要求される
が、各工程における時間の調節により最適な温度管理が可能となる。
【0010】
本発明の冷凍方法は、
凍結装置内に設けられ少なくとも前記第1冷却工程を行う第1冷却エリア及び前記第2冷却工程を行う第2冷却エリアと、前記各冷却エリアにそれぞれ配置され冷風を供給制御可能とする冷凍機と、被冷却物を前記冷却エリアのそれぞれに連続的に導入移送するコンベアと、を備える冷凍装置を用いることを特徴としている。
この特徴によれば、冷凍装置を用いて、変形や割れのない被冷却物を効率よく大量に製造することができる。
【0011】
本発明の冷凍方法は、
前記第1冷風温度は−15±5℃の範囲に設定され、前記第2冷風温度は−44℃以下に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、第1冷風温度が−15±5℃に設定される第1冷却工程により、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結を十分遅らせ、氷晶の粗大化を招く虞のある氷晶生成温度域の通過時間を短縮できるので、第2冷却工程での冷風温度を−44℃よりさらに低い温度に低下させても大きなエネルギーロスを招くことなく、一連の冷凍処理が可能となる。
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の冷凍装置は、
凍結装置内に設けられ少なくとも第1冷却エリア及び該第1冷却エリア以降の第2冷却エリアと、前記凍結装置内の各冷却エリアにそれぞれ配置され冷風を供給制御可能とする冷凍機と、被冷却物を前記冷却エリアのそれぞれに連続的に導入移送するコンベアと、を備え
、前記各エリアで使用される冷風温度はそれぞれ一定温度に設定され、過冷却状態を生じさせずに被冷却物を冷却凍結する冷凍装置であって、
前記第1冷却エリアの冷凍機は、該第1冷却エリアに第1冷風温度の冷風を供給し、前記コンベアは、前記被冷却物の温度が凍結温度近傍到達時に該被冷却物を前記第1冷却エリアから前記第2冷却エリアに連続的に導入移送し、前記第2冷却エリアの冷凍機は、前記第1冷風温度より低い第2冷風温度の冷風を該第2冷却エリアに供給することを特徴としている。
この特徴によれば、コンベアが、被冷却物の温度が凍結温度近傍到達時に該被冷却物を第1冷風温度に設定される第1冷却エリアから、前記第1冷風温度より低い第2冷風温度に設定される第2冷却エリアに連続的に導入移送するので、変形や割れのない被冷却物を効率よく大量に製造することができる。
【0013】
本発明の冷凍装置は、
前記第1冷風温度は−15±5℃の範囲に設定され、前記第2冷風温度は−44℃以下に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、−15±5℃に設定される第1冷風温度により被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結を十分遅らせ、氷晶の粗大化を招く虞のある氷晶生成温度域の通過時間を短縮できるので、−44℃より低い第2冷風温度により冷却しても大きなエネルギーロスを招くことがなく、一連の冷凍処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は実施例における冷凍装置を示す概略図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【
図2】同じく実施例における冷風温度による被冷却物の温度変化を示すグラフである。
【
図3】従来の冷凍方法における冷風温度による被冷却物の温度変化を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る冷凍方法及び冷凍装置について、その実施形態を図面に基づいて、以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
本実施例で対象とする被凍結物たる食品としては、農産物(例:野菜、果物)、畜産物(例:牛肉、豚肉、鶏肉)、水産物(例:魚介類)などの生鮮食品、または、これらが加工処理されたもの(例えば:乳製品、加工食品、加工穀物、調理品、冷菓を含む各種の菓子、)等である。
【0017】
図1に示されるように、本実施例における冷凍装置を構成する連結式凍結装置1は、食品を矢印方向に移送するコンベア2を設けたトンネル3が2つのゾーンに分割され、食品導入方向に沿って上流より下流に向け食品を運搬する第1冷却エリア4と第2冷却エリア5とが順次配設されている。第1冷却エリア4と第2冷却エリア5にそれぞれ別々に冷風を供給制御するために、冷凍機6,7がそれぞれ配置されている。また第1冷却エリア4と第2冷却エリア5との間には温度差があるため、隔壁が設けられている。
【0018】
冷凍機6は、蒸発器8とモ−タに連結された第1冷却エリア冷凍用の圧縮機9を有し、圧縮側より吐出された圧縮ガスは、凝縮器10にて液化され、液化後の冷媒は所定に開度調整された膨張弁11により膨張され、第1冷却エリア4では、冷媒によって冷却された−15℃前後の冷気が吹出されるようになっている。また、冷凍機7は、蒸発器12とモ−タに連結された第2冷却エリア冷凍用の圧縮機13を有し、圧縮側より吐出された圧縮ガスは、凝縮器14にて液化され、液化後の冷媒は所定に開度調整された膨張弁15により膨張され、第2冷却エリアでは、冷媒によって冷却された−45℃前後の冷気が吹出されるようになっている。
【0019】
コンベア上に載置された食品はコンベア2の移動にしたがって第1冷却エリア4内に侵入する。第1冷却エリア4ではコンベア2上方に配設された還流ファン16の送風により、連結式凍結装置1上方に位置する空気が冷媒によって冷却されて冷気通路17のスリットを通り、高速化されるとともに−15℃前後の冷気としてコンベア2上の食品に向けて吹出されている。
【0020】
食品は隔壁を通り、次段の急速冷凍用の第2冷却エリア5内に侵入する。第2冷却エリア5ではコンベア2上方に配設された還流ファン18の送風により、連結式凍結装置1上方に位置する空気が冷媒によって冷却されて冷気通路19のスリットを通り、高速化されるとともに−45℃前後の冷気としてコンベア2上の食品に向けて吹出されている。そしてコンベア2により連結式凍結装置1外に食品が排出される。
【0021】
このように、連結式凍結装置1内に少なくとも第1冷却エリア4と第2冷却エリア5とが連続して設けられ、連結式凍結装置1内の各冷却エリア4,5に冷風を供給可能とする冷凍機6,7がそれぞれ配置されているため、連結式凍結装置1内の各冷却エリア4,5を別々に独立して温度調節できることになる。そのため、それぞれの冷却エリア4,5内の温度を調節することで、各種被冷却物の特性及び冷却段階の特性に合わせた最適な温度管理が可能となる。
【0022】
尚、本実施例では第1冷却エリア4と第2冷却エリア5の2つのエリアのみを有する連結式凍結装置1について説明したが、3個以上のエリアを備えた連結式凍結装置も対象であり、例えば、より高精度に冷却速度を制御するための第3冷却エリアを設けることも可能であり、被凍結物たる食品の種類に応じて冷却エリアを追加して最適な温度管理を行うことは自由である。少なくとも2つの冷却工程で使用される冷風温度がそれぞれ一定温度に設定されており、冷却工程における被冷却物を冷却する冷風温度が段階的に例えば10℃以上極端に低下させる冷却エリアを備えていればよい。
【0023】
図2は、冷風温度による被冷却物の温度変化を示したグラフであり、−15℃の冷風温度に対して第1冷却工程の時間(凍結温度近傍到達時までの時間)を調節することで氷晶の粗大化を招く虞のある氷晶生成温度域の通過時間に影響を与えることがない。尚、上記実施例においては、初期の第1冷却工程における第1冷風温度を−15℃にした例を示したが、各種被冷却物の特性に合わせた最適な温度管理として第1冷風温度を−15±5℃のいずれかの温度としてもよい。第1冷却工程における第1冷風温度を−15±5℃の範囲内であれば、この範囲内で選択した冷風温度に対して第1冷却工程の時間を調節することで氷晶の粗大化を招く虞のある氷晶生成温度域の通過時間に影響を与えることがない。また前述したように、第1冷却工程における第1冷風温度を−15±5℃の範囲内であれば被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結は十分遅れることになる。
【0024】
すなわち水分の多い被冷却物を冷却する際に、例えば
図3に示されるように冷風温度が一定の低い温度(ここでは−40℃)である場合、外表面側から始まる被冷却物の凍結が速過ぎ、中心付近において含有水分の相変化に起因した体積増加を吸収できなくなり、その結果既に完全に凍結した外側の部分への強い応力がかかり、割れなどの破損を生じさせる現象が発生する。しかし、前述したように本実施例の冷凍方法によれば、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結の遅れが、凍結過程における体積変化が外側に逃げる時間を確保するのに貢献する。特に生鮮食料品である生帆立に対して、第1冷却工程における第1冷風温度を−15±5℃の範囲内としたことで、冷凍時に内部から外側に向けて凸状の変形や割れを生じる危険性が低減することが実証された。
【0025】
また
図2に示されるように、本実施例においては第2冷却工程で−45℃前後の冷気をコンベア2上の食品に吹き付けているが、初期の第1冷却工程において、従来における一定の冷風温度帯域である−35℃よりも高い温度を用いることにより、後の第2冷却工程での冷風温度を−44℃よりさらに低い温度(例えば、−55℃など)に低下させても全工程トータルでは大きなエネルギーロスを招くことがなく、一連の冷凍処理が可能となる。
【0026】
すなわち、これら本実施例の冷凍方法によれば、冷却工程を複数工程に分けるとともに、各冷却工程における初期段階の冷却工程で使用される冷却温度が、少なくともそれ以降の冷却工程で使用される冷却温度よりも高い温度に設定されて冷却凍結処理に供されるようになっている。そのため、初期段階の冷却工程で使用される冷却温度を比較的高くすると、被冷却物の外表面側から始まる被冷却物の凍結を遅らせることが可能となり、被冷却物の中心付近における体積増加を吸収、すなわち凍結過程での体積変化が外側に逃げ易くなり、被冷却物に割れなどの破損を防止できる。その後の冷却工程において、より低い冷風温度での被冷却物の冷却により、凍結速度を速めることで氷晶が生成されやすい最大氷結晶生成帯(凍結温度周辺)の時間を短縮し、氷晶の粗大化を確実に抑制できる。このような温度管理を適用することにより、被冷却物の変形や割れを防止するとともに被冷却物に本来備わる組織や細胞等の破壊を極力防止でき、冷却工程における初期段階での冷却エネルギーのロスが少ない分、後の冷却工程で冷風温度を低下させても、全行程トータルとして冷凍機等の大きなエネルギーロスを招くことがなく、従来よりも生産性を低下させることなく効率的な冷凍処理が可能となる。
【0027】
また、各冷却工程で使用される冷風温度がそれぞれ一定温度に設定されており、冷却工程における被冷却物を冷却するための冷風温度が段階的に低下するようになっているので、各種被冷却物は本来備わる組織や細胞の性質がそれぞれ異なり、各種被冷却物の特性及び冷却段階の特性によって適切な冷却速度がそれぞれ異なり、それぞれの最適な温度管理が要求されるが、冷風温度が各工程で一定温度に設定されているため、各工程における時間の調節により最適な温度管理が可能となる。
【0028】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 連結式凍結装置
2 コンベア
3 トンネル
4 第1冷却エリア
5 第2冷却エリア
6,7 冷凍機
8,12 蒸発器
9,13 圧縮機
10,14 凝縮器
11,15 膨張弁
16,18 還流ファン
17,19 冷気通路