特許第5939283号(P5939283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939283クロロプロペンの製造方法及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939283
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】クロロプロペンの製造方法及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/383 20060101AFI20160609BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20160609BHJP
   C07C 17/20 20060101ALI20160609BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20160609BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C07C17/383
   C07C21/18
   C07C17/20
   C07C17/25
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-145424(P2014-145424)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-20319(P2016-20319A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高桑 達哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一博
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】茶木 勇博
(72)【発明者】
【氏名】岸本 誠之
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄三
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/114015(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/015068(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/040969(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/025065(WO,A1)
【文献】 特表2010−534680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/383
C07C 17/20
C07C 17/25
C07C 21/18
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ia)CXCClYCHY(式(Ia)中、XはCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよく、YはH,F又はClであって、各Yは同一又は異なっていてもよい)で表されるクロロプロパン、及び/又は、
一般式(Ib)CYCCl=CZ(式(Ib)中、YはH又はClであって、各Yは同一又は異なっていてよく、ZはH,F又はClであって、各Zは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペン、の出発原料から、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンを製造する方法であって、
下記(a)〜(c);
(a)前記出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程aと、
(b)前記工程aで得た反応混合物を蒸留に付して、前記一般式(II)のクロロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程bと、
(c)前記工程bで分離させた第2ストリームを工程aの反応にリサイクルする工程c、
を有し、
前記工程bの蒸留を、未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とするクロロプロペンの製造方法。
【請求項2】
反応器へ供給する前記フッ化水素の供給量は、前記反応器に供給する前記出発原料1モルに対して15モル以上であり、前記工程bの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力が0MPa以上、1MPa以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンから2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法であって、
下記(d)〜(f);
(d)前記一般式(II)のクロロプロペンを、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程dと、
(e)前記工程dで得た反応混合物を蒸留に付して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程eと、
(f)前記工程eで分離させた第2ストリームを工程dの反応にリサイクルする工程f、
を有し、
前記工程eの蒸留を、未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項4】
一般式(Ia)CXCClYCHY(式(Ia)中、XはCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよく、YはH,F又はClであって、各Yは同一又は異なっていてもよい)で表されるクロロプロパン、及び/又は、
一般式(Ib)CYCCl=CZ(式(Ib)中、YはH又はClであって、各Yは同一又は異なっていてよく、ZはH,F又はClであって、各Zは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペン、の出発原料から、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンを得る第1段階と、前記一般式(II)のクロロプロペンから2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る第2段階とで構成される2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、
前記第1段階は、下記(a)〜(c);
(a)前記出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程aと、
(b)前記工程aで得た反応混合物を蒸留に付して、前記一般式(II)のクロロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程bと、
(c)前記工程bで分離させた第2ストリームを工程aの反応にリサイクルする工程c、
を有し、
前記第2段階は、下記(d)〜(f);
(d)前記一般式(II)のクロロプロペンを、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程dと、
(e)前記工程dで得た反応混合物を蒸留に付して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程eと、
(f)前記工程eで分離させた第2ストリームを工程dの反応にリサイクルする工程f、
を有し、
前記工程bの蒸留を、未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とが分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出し、及び/又は
前記工程eの蒸留を、未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とが分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記出発原料が1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであり、
反応器へ供給する前記フッ化水素の供給量は、前記反応器に供給する前記出発原料1モルに対して15モル以上であり、前記工程bの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力が0MPa以上、1MPa以下である、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒用途等として使用することができる2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法、及びこの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造に使用できるクロロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC−125(CHF)やHFC−32(CH)などの代替冷媒は、オゾン層を破壊するCFC、HCFCなどに替わる重要な物質として広く用いられている。しかしながら、これらは強力な温暖化物質であり、その拡散によって地球温暖化に影響を及ぼすことが懸念されている。その対策として使用後の回収が行われているが、すべてを回収できるわけではなく、漏洩などによる拡散も無視できない。COや炭化水素系物質による代替も検討されているが、CO冷媒は効率が悪く、機器が大きくなることから消費エネルギーを含めた総合的な温暖化ガス排出量の削減には課題が多く、炭化水素系物質はその燃焼性の高さから安全性の面で問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する物質として最近、温暖化係数の低いオレフィンのHFCであるHFO−1234yf(CFCF=CH)が注目されている。HFO−1234yfはそれ自身単独で、または他のヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)などの混合物として、冷媒用途はもちろん、その他発泡剤、噴射剤、消火剤などへの応用が期待されている。
【0004】
HFO−1234yfの製造方法としては各種の方法が知られている。例えば、出発原料としてCClCFCHを用い、これに対して化学量論量を上回るフッ化水素(HF)を反応させる方法(特許文献1)、あるいは、CFCFHCFHで表されるフルオロカーボンに脱フッ化水素処理を施す方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2996555号
【特許文献2】国際公開2008/002499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示の製造方法では、HCFO−1233xfのHFO−1234yfへの転化率が20%以下と低いものである。また、反応器からの流出物は、目的生成物であるHFO−1234yfの他、未反応HCFO−1233xf及びこれに対して当モル以上のHFを含む混合物も含まれる。このため、蒸留処理により、目的物のHFO−1234yfを蒸留塔トップから、その他のHFとHCFO−1233xfを蒸留塔ボトムから抜き出して、HFとHCFO−1233xfを再び反応器へと送り込むことでリサイクルすることも行われている。ところが、HFとHCFO−1233xfとのモル比率、あるいはスチル温度によっては、HFとHCFO−1233xfとがスチルにて分液を起こしてしまう場合があり、その結果、下相側の高濃度の有機相が反応器へ送り込まれる。そして、このように高濃度の有機相が反応器へ送り込まれると、有機物の作用により触媒が失活するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するにあたり、未反応物を分液させずに蒸留して再利用することで触媒の失活を抑制し、長時間にわたって安定して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するためのクロロプロペンを製造するにあたり、上記2,3,3,3−テトラフルオロプロペン製造方法同様に、未反応物を分液させずに蒸留して再利用することで触媒の失活を抑制し、長時間にわたって安定してクロロプロペンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フッ化水素とHCFO−1233xf等の有機物とを主成分とする未反応物を、分液が起こらない条件で蒸留することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のクロロプロペンの製造方法及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペン2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。
1.一般式(Ia)CXCClYCHY(式(Ia)中、XはCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよく、YはH,F又はClであって、各Yは同一又は異なっていてもよい)で表されるクロロプロパン、及び/又は、
一般式(Ib)CYCCl=CZ(式(Ib)中、YはH又はClであって、各Yは同一又は異なっていてよく、ZはH,F又はClであって、各Zは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペン、の出発原料から、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンを製造する方法であって、
下記(a)〜(c);
(a)前記出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程aと、
(b)前記工程aで得た反応混合物を蒸留に付して、前記一般式(II)のクロロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程bと、
(c)前記工程bで分離させた第2ストリームを工程aの反応にリサイクルする工程c、
を有し、
前記工程bの蒸留を、未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とするクロロプロペンの製造方法。
2.反応器へ供給する前記フッ化水素の供給量は、前記反応器に供給する前記出発原料1モルに対して15モル以上であり、、前記工程bの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力が0MPa以上、1MPa以下である、上記項1に記載の製造方法。
3.一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンから2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法であって、
下記(d)〜(f);
(d)前記一般式(II)のクロロプロペンを、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程dと、
(e)前記工程dで得た反応混合物を蒸留に付して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程eと、
(f)前記工程eで分離させた第2ストリームを工程dの反応にリサイクルする工程f、
を有し、
前記工程eの蒸留を、未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方
法。
4.一般式(Ia)CXCClYCHY(式(Ia)中、XはCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよく、YはH,F又はClであって、各Yは同一又は異なっていてもよい)で表されるクロロプロパン、及び/又は、
一般式(Ib)CYCCl=CZ(式(Ib)中、YはH又はClであって、各Yは同一又は異なっていてよく、ZはH,F又はClであって、各Zは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペン、の出発原料から、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンを得る第1段階と、前記一般式(II)のクロロプロペンから2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る第2段階とで構成される2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、
前記第1段階は、下記(a)〜(c);
(a)前記出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程aと、
(b)前記工程aで得た反応混合物を蒸留に付して、前記一般式(II)のクロロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程bと、
(c)前記工程bで分離させた第2ストリームを工程aの反応にリサイクルする工程c、
を有し、
前記第2段階は、下記(d)〜(f);
(d)前記一般式(II)のクロロプロペンを、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程dと、
(e)前記工程dで得た反応混合物を蒸留に付して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程eと、
(f)前記工程eで分離させた第2ストリームを工程dの反応にリサイクルする工程f、
を有し、
前記工程bの蒸留を、未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とが分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出し、及び/又は
前記工程eの蒸留を、未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とが分液を起こさない条件で行い、前記第2ストリームの抜き出し部分を33℃以上に加熱して前記第2ストリームを抜き出すことを特徴とする製造方法。
5.前記出発原料が1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであり、
反応器へ供給する前記フッ化水素の供給量は、前記反応器に供給する前記出発原料1モルに対して15モル以上であり、前記工程bの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力が0MPa以上、1MPa以下である、上記項4に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、クロロプロペンを製造するにあたって、原料を反応させた後に残る未反応物原料及び未反応フッ化水素を含む混合物を、両者が互いに分液しない条件で蒸留し、得られた蒸留物を再度、反応に利用している。そのため、反応系における触媒の失活を抑制することが可能となり、その結果、長時間にわたって安定してクロロプロペンを製造することができる。
【0011】
また、本発明では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するにあたって、原料を反応させた後に残る未反応物原料及び未反応フッ化水素を含む混合物を、分液しない条件で蒸留し、得られた蒸留物を再度、反応に利用している。そのため、反応系における触媒の失活を抑制することが可能となり、その結果、長時間にわたって安定して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】フッ化水素/クロロプロペン中間体モル比に対する蒸留塔内の圧力との関係をプロットした分液曲線である。
図3】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法の一例を示すフロー図であり、蒸留塔から反応器へのリサイクル工程を示す概略フロー図である。
図4】反応時間と1233xfの転化率との関係をプロットしたグラフである。
図5】反応時間と1234yfの反応収率との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<クロロプロペンの製造方法>
クロロプロペンは、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表される。このクロロプロペンは、一般式(Ia)CXCClYCHY(式(Ia)中、XはCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよく、YはH,F又はClであって、各Yは同一又は異なっていてもよい)で表されるクロロプロパン、及び/又は、一般式(Ib)CYCCl=CZ(式(Ib)中、YはH又はClであって、各Yは同一又は異なっていてよく、ZはH,F又はClであって、各Zは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペンを含む出発原料から製造される。
【0015】
尚、以下では、一般式(Ia)で表されるクロロプロパンを「原料クロロプロパン」と、一般式(Ib)で表されるクロロプロペンを「原料クロロプロペン」と、一般式(II)で表されるクロロプロペンを「クロロプロペン中間体」と略記することがある。また、「原料クロロプロパン」及び「原料クロロプロペン」をまとめて「出発原料」と略記する。この「出発原料」は、「原料クロロプロパン」及び「原料クロロプロペン」のいずれか一方又は両方であることを意味する。
【0016】
以下、上記出発原料から一般式(II)で表されるクロロプロペン(クロロプロペン中間体)を製造する段階を「第1段階」と表記する。
【0017】
一般式(Ia)の原料クロロプロパンの具体例としては、CClCHClCHCl(以下、「240db」と記載することもある)、CFCHClCHCl(以下、「243db」と記載することもある)、CFCClFCH(以下、「244bb」と記載することもある)、CFCHClCHF(以下、「244db」と記載することもある)、CFClCHClCHCl(以下、「241db」と記載することもある)、CFClCHClCHCl(以下、「242dc」と記載することもある)等が例示される。これらの中でも特に、240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)、243db(2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン)、244bb(2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン)であることが好ましい。尚、原料クロロプロパンは、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0018】
一般式(Ib)の原料クロロプロペンの具体例としては、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(CCl=CClCHCl、以下、「1230xa」と記載することもある)、2,3,3,3−テトラクロロプロペン(CH=CClCCl、以下、「1230xf」と記載することもある)が例示される。
【0019】
一般式(II)のクロロプロペン中間体の具体例としては、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCCl=CH、以下、「1233xf」と記載することもある)、1,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロ−3−プロペン(CClFCCl=CH、以下、「1232xf」と記載することもある)、1,1,2−トリクロロ−1−フルオロ−3−プロペン(CClFCCl=CH、以下、「1231xf」と記載することもある)が例示される。
【0020】
第1段階は、下記の(a)〜(c)のような工程a、工程b及び工程cを含む。
(a)前記出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程aと、
(b)前記工程aで得た反応混合物を蒸留に付して、前記一般式(II)のクロロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記出発原料と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程bと、
(c)前記工程bで分離させた第2ストリームを工程aの反応にリサイクルする工程c。
【0021】
特に、本発明では、上記の工程bの蒸留を、未反応の出発原料と、未反応のフッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行う。
【0022】
工程aにおいて、出発原料をフッ化水素と反応させることによって、クロロプロペン中間体を含む生成物を得ることができる。このクロロプロペン中間体を含む生成物は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する際の中間体となる化合物である。
【0023】
出発原料を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる方法については特に限定されない。具体的な実施態様の一例としては、管型の流通型反応器を用い、そこに触媒を充填し、出発原料と、フッ化水素とを反応器に導入する方法を挙げることができる。
【0024】
出発原料とフッ化水素とは、気相状態で反応させることができるが、後述する反応温度領域において、出発原料とフッ化水素が気体状態で接触できればよい。また、出発原料が常温、常圧で液状である場合には、あらかじめ気化器で気化させて工程aの反応が行われる反応器内に供給することができる。
【0025】
フッ化水素は、通常、出発原料と共に、気相状態で反応器に供給することができる。フッ化水素の供給量については、通常、出発原料1モルに対して、1〜100モル程度とすることが適当であり、5〜50モル程度とすることが好ましく、15〜40モル程度とすることがより好ましい。これらの使用量の範囲とすることによって、出発原料の転化率を良好な範囲内に維持することができる。また、フッ化水素の供給量が出発原料1モルに対して、15モル以上であれば、触媒の失活を抑制することができる点で、特に好ましい。
【0026】
フッ化水素と出発原料とのモル比は、両者の反応器への供給量によって調節することができる。そのため、リサイクルではなく反応器への主要な原料供給のためのストリームや第二ストリームについては、フッ化水素や出発原料を追加で供給したり、これらを反応器から抜き出したりすることによっても、各々の流量を調節することができる。
【0027】
フッ化水素と出発原料とを反応器に供給するにあたっては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の原料や触媒に対して不活性なガスを共存させてもよい。不活性ガスの濃度は、反応器に導入される出発原料及びフッ化水素を含む原料と不活性ガスの総量、更に、後述の酸素ガスを添加する場合にはこれを加えた合計量を基準として、0〜10mol%程度とすることができる。
【0028】
また、上記出発原料に酸素又は塩素を同伴させて、工程aの反応器に供給してもよい。この場合、酸素又は塩素の供給量は、上記原料と酸素との総量又は上記原料と塩素との総量に、更に、不活性ガスを用いる場合にはこれを加えた合計量を基準として、0.1〜50mol%程度とすることができる。ただし、酸素又は塩素の供給量が大きくなると、酸化反応のような副反応が起こり、選択率が低下するので好ましくない。
【0029】
触媒は、従来からこの反応に使用されている公知の材料を使用することができ、その種類は特に限定されない。例えば、脱ハロゲン化水素反応に使用できる公知の触媒を用いることができ、遷移金属、14族元素、15族元素などのハロゲン化物、酸化物などが例示される。遷移元素の具体例としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ta、W等を挙げることができる。14族元素の具体例としては、Sn、Pb等を挙げることができる。15族元素の具体例としては、Sb、Bi等を挙げることができる。これらの元素のハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物などを挙げることができる。これらの触媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、担体に担持されていてもよい。担体としては、特に限定的ではないが、例えば、ゼオライトに代表される多孔性アルミナシリケート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、フッ化アルミニウム等が挙げられ、これらのうち一種または二種以上を混合したもの、または構造上複合化したものも用いることができる。
【0030】
反応器としては、管型反応器が好ましく、また、触媒との接触方式としては、固定層型が好ましい。反応器は、ハステロイ(HASTELLOY;登録商標)、インコネル(INCONEL;登録商標)、モネル(MONEL;登録商標)等のフッ化水素の腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものが好ましい。
【0031】
上記工程aにおける反応の反応温度は特に限定的ではなく、通常、200℃〜550℃程度とすることが好ましい。この温度範囲であれば、出発原料の転化率が良好となり、また、原料の分解による副生成物の発生を抑制することができる。より好ましい反応温度は、300℃〜450℃程度である。
【0032】
上記工程aにおける反応時の圧力については、特に限定されるものではなく、減圧、常圧又は加圧下に反応を行うことができる。通常は、大気圧(0.1MPa)近傍の圧力下で実施すればよいが、0.1MPa未満の減圧下においても円滑に反応を進行させることができる。更に、原料が液化しない程度の加圧下で反応を行っても良い。
【0033】
反応時間については限定的ではないが、例えば、反応系に流すガス成分の全流量F0(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率:W/F0で表される接触時間を0.1〜90g・sec/cc程度とすることが好ましく、1〜50g・sec/cc程度とすることが好ましい。尚、この場合のガス成分の全流量とは、出発原料とフッ化水素の合計流量に、更に、不活性ガス、酸素などを用いる場合には、これらの流量を加えた合計流量である。
【0034】
以上のような工程aを経ることによって、生成物であるクロロプロペン中間体を含む主成分の他、未反応の出発原料及び未反応のフッ化水素を含む反応混合物が得られる。
【0035】
工程bでは、工程aで得た上記の反応混合物の蒸留を行う。この蒸留により、クロロプロペン中間体を主成分とする第1ストリームと、未反応の出発原料及び前記フッ化水素を主成分とする第2ストリームとに分離することができる。蒸留塔から第2ストリーム抜き出すにあたって、その抜き出し部分は、蒸留塔スチル又は蒸留塔中間の何れでも良い。蒸留は、一般的に使用されている蒸留塔などによって行うことができる。
【0036】
上記の蒸留を行うにあたっては、第2ストリームとなる未反応の出発原料及び未反応のフッ化水素とが分液しない条件で行う。尚、本明細書でいう分液とは、二以上の液体が単一の液相となって混合されている状態ではなく、二以上の液体(例えばクロロプロパンの液相とフッ化水素の液相)とが二相に分離した状態になっていることをいう。
【0037】
分液が起こらない条件で蒸留する方法としては、例えば、蒸留塔内に存在する未反応の出発原料に対するフッ化水素のモル比、すなわち[フッ化水素のモル数]/[未反応の出発原料のモル数]の値を調節する方法が挙げられる。このモル比の調節は、蒸留塔内あるいはその他のラインに追加的に出発原料やフッ化水素を供給したり抜き出したりすることで可能である。尚、本明細書でいう「蒸留塔内の圧力」とは、特に明記した場合を除き、ゲージ圧(すなわち、大気圧を0とした圧力表記)のことを言う。
【0038】
分液が起こらない条件で蒸留する他の方法としては、蒸留塔内の圧力の調節が挙げられる。例えば、蒸留塔内の温度を変えることで蒸留塔内の圧力を調節できる他、反応混合物、出発原料、フッ化水素及びその他不活性ガス等を蒸留塔内へ供給又は排出することで蒸留塔内の圧力を調節できる。
【0039】
蒸留塔内での分液の発生の有無は、蒸留塔から抜き出したときのストリームの液密度から判断することが可能である。すなわち、蒸留塔の第二ストリーム抜き出し部分において分液が発生した場合は、蒸留塔から下層の有機層(出発原料を含む層)が主に抜き出されることになるので、蒸留塔から抜き出されるストリームの液密度は分液していない場合より上昇して出発原料単体の液密度に近い数値となる。このような液密度の変化が観測されれば、分液が発生したと判断することができる。
【0040】
蒸留塔内の圧力は特に制限はないが、例えば、0〜1MPaとすることができる。
【0041】
上記のように、未反応の出発原料と前記フッ化水素とを分液させない条件で蒸留を行って、未反応の出発原料及び未反応のフッ化水素の第2ストリームを蒸留塔から抜き出すようにする。第2ストリームを蒸留塔のスチルから抜き出すのであれば、スチルの温度は、例えば1233xf−HFの液−液分離曲線において圧力が0.34MPa(絶対圧)の場合は33℃以上に加熱することができ、この場合、より分液を起こしにくくできる。上記温度は特に50℃以上であることが好ましい。
【0042】
工程cでは、蒸留塔から抜き出した第2ストリームを、工程aの反応が行われる反応器内へ送流する。これにより、未反応の出発原料及びフッ化水素を、工程aの反応に再利用することができる。第2ストリームは例えば、ポンプや圧縮機等によって加圧しながら反応器内へ送流することも可能である。
【0043】
上記の蒸留する条件については、さらに具体的には以下のように設定することができる。
【0044】
まず、工程bの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力をY(MPa;ゲージ圧)、未反応の出発原料に対するフッ化水素のモル比(すなわち、[フッ化水素のモル数]/[未反応の出発原料のモル数]をXとし、XとYとの関係をプロットする。例えば、Yを0〜1MPaの範囲、Xを5〜25の範囲内においてXとYとの関係を10〜50点プロットする。このようにプロットすることでX−Y曲線が描かれるので、この曲線からYをXの関数で表した関係式を算出する。この関係式の算出には自動計算ソフトを使用してもよい。
【0045】
上記関係式をf(X)と表した場合、Y≧f(X)の関係を満たす限りは、分液が起こらない条件で蒸留が行える条件となる。従って、上記関係を満たすように、モル比Xと蒸留塔内の圧力Yを調節して蒸留を行えばよい。
【0046】
上記のように、工程bの蒸留で、分液させないで第2ストリームを抜き出すようにすることで、第2ストリームにおける未反応の出発原料の濃度が高くなることを防止することができ、結果として、工程aの反応で使用する触媒の失活を抑制できる。仮に分液が生じて二相に分離した状態である場合、下相は、比重の大きい未反応の出発原料であるため、分液した状態で第2ストリームを抜き出すと、未反応の出発原料が高濃度の状態で反応器へリサイクルされてしまう。このような有機物(未反応の出発原料)が反応系で多くなりすぎると、触媒を被覆しやすくなり、これにより触媒を失活させてしまう。しかし、工程bで分液させないで第2ストリームを抜き出すようにすれば、上述のように、高濃度の未反応の出発原料が反応器へ送り込まれてしまうことを防止することができ、その結果、触媒の失活を起こりにくくすることができる。これにより、長時間にわたって安定してクロロプロペン中間体を製造することが可能となる。
【0047】
<2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法>
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、「HFO−1234yf」又は「1234yf」と記載することもある)は、一般式(II)CXCCl=CH(式(II)中、各Xの少なくとも一つはF、他はCl又はFであって、各Xは同一又は異なっていてよい)で表されるクロロプロペン(すなわち、第1段階のクロロプロペン中間体に相当)を原料として用いることで製造される。
【0048】
以下、クロロプロペン中間体からHFO−1234yfを製造する段階を「第2段階」と表記する。
【0049】
第2段階は、下記の(d)〜(f)のような工程d、工程e及び工程fを含む。
(d)前記一般式(II)のクロロプロペンを、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる工程dと、
(e)前記工程dで得た反応混合物を蒸留に付して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とする第1ストリーム及び未反応の前記一般式(II)で表されるクロロプロペンを含む有機物と未反応の前記フッ化水素とを主成分とする第2ストリームに分離する工程eと、
(f)前記工程eで分離させた第2ストリームを工程dの反応にリサイクルする工程f。
【0050】
特に、本発明では、上記の工程eの蒸留を、未反応のクロロプロペン中間体と、未反応のフッ化水素とが蒸留塔の前記第2ストリーム抜き出し部分で分液を起こさない条件で行う。
【0051】
工程dにおいて、クロロプロペン中間体をフッ化水素と反応させることによって、目的物であるHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を得ることができる。
【0052】
クロロプロペン中間体を、触媒の存在下、フッ化水素と反応させる方法については特に限定されない。具体的な実施態様の一例としては、管型の流通型反応器を用い、そこに触媒を充填し、原料として用いるクロロプロペン中間体と、フッ化水素とを反応器に導入する方法を挙げることができる。
【0053】
クロロプロペン中間体とフッ化水素とは、気相状態で反応させることができるが、後述する反応温度領域において、クロロプロペン中間体とフッ化水素が気体状態で接触できればよい。また、クロロプロペン中間体が常温、常圧で液状である場合には、あらかじめ気化器で気化させて工程dの反応が行われる反応器内に供給することができる。
【0054】
フッ化水素は、例えば、工程aと同様の方法で反応器に供給することができ、その方法は特に限定されない。フッ化水素の供給量については、通常、クロロプロペン中間体1モルに対して、1〜100モル程度とすることが適当であり、5〜50モル程度とすることが好ましい。これらの使用量の範囲とすることによって、クロロプロペン中間体の転化率を良好な範囲内に維持することができる。また、フッ化水素の供給量がクロロプロペン中間体1モルに対して、10モル以上であれば、触媒の失活を抑制することができる点で、特に好ましい。
【0055】
フッ化水素とクロロプロペン中間体とのモル比は、両者の反応器への供給量によって調節することできる。そのため、リサイクルではなく反応器への主要な原料供給のためのストリームや第二ストリームについては、フッ化水素や出発原料を追加で供給したり、これらを反応器から抜き出したりすることによっても各々の流量を調節することができる。
【0056】
フッ化水素とクロロプロペン中間体とを反応器に供給するにあたっては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の原料や触媒に対して不活性なガスを共存させてもよい。不活性ガスの濃度は、反応器に導入されるクロロプロペン中間体及びフッ化水素を含む原料と不活性ガスの総量、更に、後述の酸素ガスを添加する場合にはこれを加えた合計量を基準として、0〜80mol%程度とすることができる。
【0057】
また、上記クロロプロペン中間体に酸素を同伴させて、工程dの反応器に供給してもよい。この場合、酸素の供給量は、上記原料と酸素の総量に、更に、不活性ガスを用いる場合にはこれを加えた合計量を基準として、0.1〜50mol%程度とすることができる。ただし、酸素の供給量が大きくなると、酸化反応のような副反応が起こり、選択率が低下するので好ましくない。
【0058】
触媒は、従来からこの反応に使用されている公知の材料を使用することができ、その種類は特に限定されない。例えば、上述した工程aで使用できる触媒を工程dでも使用することができる。
【0059】
反応器としては、管型反応器が好ましく、また、触媒との接触方式としては、固定層型が好ましい。反応器は、ハステロイ(HASTELLOY;登録商標)、インコネル(INCONEL;登録商標)、モネル(MONEL;登録商標)等のフッ化水素の腐食作用に抵抗性がある材料によって構成されるものが好ましい。
【0060】
上記工程dにおける反応の反応温度は特に限定的ではなく、通常、200℃〜550℃程度とすることが好ましい。この温度範囲であれば、クロロプロペン中間体の目的物への転化率が良好となり、また、原料の分解による副生成物の発生を抑制することができる。より好ましい反応温度は、300℃〜450℃程度である。
【0061】
上記工程aにおける反応時の圧力については、特に限定されるものではなく、減圧、常圧又は加圧下に反応を行うことができる。通常は、大気圧(0.1MPa)近傍の圧力下で実施すればよいが、0.1MPa未満の減圧下においても円滑に反応を進行させることができる。更に、原料が液化しない程度の加圧下で反応を行っても良い。
【0062】
反応時間については限定的ではないが、例えば、反応系に流すガス成分の全流量F0(0℃、0.1MPaでの流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率:W/F0で表される接触時間を0.1〜90g・sec/cc程度とすることが好ましく、1〜50g・sec/cc程度とすることが好ましい。尚、この場合のガス成分の全流量とは、クロロプロペン中間体とフッ化水素の合計流量に、更に、不活性ガス、酸素などを用いる場合には、これらの流量を加えた合計流量である。
【0063】
工程dでは、第1段階で得られた生成物をそのまま、工程dの反応器に供給してもよいが、該生成物に含まれる塩化水素を除去してから供給することが好ましい。これにより、工程dには不要な塩化水素を取り扱うことによるエネルギーロスを削減したり、目的のHFO−1234yfの選択率を向上させたりする効果が期待できる。第1段階の生成物から塩化水素を除去する方法については、特に限定はないが、例えば、工程dの後の工程eの蒸留によれば、塔頂成分として塩化水素を容易に除去することができる。
【0064】
以上のような工程dを経ることによって、目的生成物であるHFO−1234yfを含む主成分の他、未反応のクロロプロペン中間体及び未反応のフッ化水素を含む反応混合物が得られる。この反応混合物には、HFO−1234yf等の他、反応で副生した塩化水素(HCl)も含まれている。
【0065】
工程eでは、工程dで得た上記の反応混合物の蒸留を行う。蒸留は、一般的に使用されている蒸留塔などによって行うことができる。この蒸留により、HFO−1234yfを主成分とする第1ストリームと、少なくとも未反応のクロロプロペン中間体を含む有機物及び未反応のフッ化水素を主成分とする第2ストリームとに分離することができる。蒸留塔から第2ストリーム抜き出すにあたって、その抜き出し部分は、蒸留塔スチル又は蒸留塔中間の何れでも良い。第2ストリームに含まれる「クロロプロペン中間体を含む有機物」とは、通常、クロロプロペン中間体が90%以上であり、その他、10%未満ではあるが他の有機化合物も含まれる。前記他の有機化合物としては、例えば、1233zd(1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)、1223xd(1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)等が例示される。
【0066】
第1ストリームは、目的物であるHFO−1234yfが主成分であり、その他、塩化水素や、工程dの反応で副生した1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(以下、「245cb」と略記する)などが含まれる。得られたHFO−1234yfは、更に、粗製工程、及び精製工程を経て、最終製品とすることができる。粗製工程、及び精製工程の具体的な方法については、特に限定はないが、例えば、それぞれ、水洗、脱水(乾燥)、蒸留、分液等の手段を適用できる。
【0067】
上記の蒸留を行うにあたっては、第2ストリームとなる未反応クロロプロペン中間体を含む有機物及び未反応のフッ化水素とが分液しない条件で行う。
【0068】
分液が起こらない条件で蒸留する方法としては、例えば、蒸留塔内に存在する有機物1モルに対するフッ化水素のモル比、すなわち[フッ化水素のモル数]/[有機物のモル数]、具体的には「[フッ化水素のモル数]/[未反応クロロプロペン中間体のモル数]」の値を調節する方法が挙げられる。このモル比の調節は、蒸留塔内あるいはその他のラインに追加的にクロロプロペン中間体やフッ化水素を供給したり抜き出したりすることで可能である。この場合の蒸留塔内の圧力は特に制限はないが、例えば、0〜1MPaとすることができる。
【0069】
分液が起こらない条件で蒸留する他の方法としては、蒸留塔内の圧力の調節が挙げられる。例えば、蒸留塔内の温度を変えることで蒸留塔内の圧力を調節できる他、反応混合物、フッ化水素、その他不活性ガス等を蒸留塔内へ供給又は排出することで蒸留塔内の圧力を調節できる。
【0070】
蒸留塔内での分液の発生の有無は、蒸留塔のスチルから抜き出したときのストリームの液密度から判断することが可能である。すなわち、蒸留塔の第二ストリーム抜き出し部分において分液が発生した場合は、蒸留塔から下層の有機層(出発原料を含む層)が主に抜き出されることになるので、蒸留塔から抜き出されるストリームの液密度は分液していない場合より上昇して出発原料単体の液密度に近い数値となる。このような液密度の変化が観測されれば、分液が発生したと判断することができる。
【0071】
上記のように、クロロプロペン中間体とフッ化水素とを分液させない条件で蒸留を行って、クロロプロペン中間体及びフッ化水素の第2ストリームを蒸留塔から抜き出すようにする。第2ストリームを蒸留塔のスチルから抜き出すのであれば、スチルの温度は、より分液を起こしにくいという観点から、例えば、33℃以上に加熱することができ、50℃以上であることが好ましい。
【0072】
上記の蒸留する条件については、さらに具体的には以下のように設定することができる。
【0073】
まず、工程eの蒸留が行われる蒸留塔内の圧力をY(MPa;ゲージ圧)、有機物1モルに対するフッ化水素のモル比(すなわち、[フッ化水素のモル数]/[有機物のモル数]をXとし、XとYとの関係をプロットする。尚、ここでいう有機物はクロロプロペン中間体のことである。第1段階における蒸留のときと同様の範囲で、XとYとの関係を10〜50点プロットすることでX−Y曲線が描かれるので、YをXの関数で表した関係式を算出する。この算出には自動計算ソフトを使用してもよい。
【0074】
上記関係式をf(X)と表した場合、Y≧f(X)の関係を満たす限りは、分液が起こらない条件で蒸留が行える条件となる。従って、上記関係を満たすように、モル比Xと蒸留塔内の圧力Yを調節して蒸留を行えばよい。
【0075】
図2は、クロロプロペン中間体が2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである場合に、上記の方法でYとXとの関係により導かれた曲線(分液曲線)である
【0076】
クロロプロペン中間体が2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである場合は、上記式の関係を満たすように、XとYを決定して蒸留を行えば、クロロプロペン中間体とを含む有機物とフッ化水素との分液を防止することができる。特に、図2において、X≧10の領域であって、Y≧f(X)の領域であれば、触媒の失活がより抑制される。
【0077】
工程fでは、蒸留塔から抜き出した第2ストリームを、工程dの反応が行われる反応器内へ送流する。これにより、クロロプロペン中間体及びフッ化水素を、工程dの反応に再利用することができる。第2ストリームは例えば、ポンプや圧縮機等によって加圧しながら反応器内へ送流することも可能である。
【0078】
上記のように、工程eの蒸留で分液させないで第2ストリームを抜き出すようにすることで、第2ストリームにおけるクロロプロペン中間体の濃度が高くなることを防止することができ、結果として、工程dの反応で使用する触媒の失活を抑制できる。仮に分液が生じて二相に分離した状態である場合、下相は、比重の大きいクロロプロペン中間体であるため、分液した状態で第2ストリームを抜き出すと、クロロプロペン中間体が高濃度の状態で反応器へ送り込まれてしまう。クロロプロペン中間体のような有機物が反応系で多くなりすぎると、触媒を被覆しやすくなり、これにより触媒を失活させてしまう。しかし、工程eで分液させないで第2ストリームを抜き出すようにすれば、高濃度のクロロプロペン中間体が反応器へ送り込まれてしまうことを防止することができ、その結果、触媒の失活を起こりにくくすることができる。これにより、長時間にわたって安定してHFO−1234yfを製造することが可能となる。
【0079】
HFO−1234yfは、第1段階と、第2段階とを組み合わせて製造することも可能である。すなわち、まず第1段階にて一般式(Ia)及び/又は一般式(Ib)を含む出発原料から一般式(II)のクロロプロペン中間体を製造し、次いで、第2段階にて前記第1段階で得られたクロロプロペン中間体からHFO−1234yfを製造することもできる。
【0080】
上記のように第1段階と第2段階とを組み合わせてHFO−1234yfを製造する場合であっても、第1段階では、上述の工程a、工程b及び工程c、第2段階では、上述の工程d、工程e及び工程fを有する。
【0081】
そして、工程bの蒸留を、未反応の出発原料と未反応のフッ化水素とが分液を起こさない条件で行うか、あるいは、工程eの蒸留を、未反応のクロロプロペン中間体を含む有機物と未反応のフッ化水素とが分液を起こさない条件で行う。もしくは、工程bの蒸留を、未反応の出発原料と未反応のフッ化水素とが分液を起こさない条件で行い、かつ、工程eの蒸留を、未反応のクロロプロペン中間体を含む有機物と未反応のフッ化水素とが分液を起こさない条件で行う。その結果、第1段階及び/又は第2段階で触媒の失活を起こりにくくすることができ、長時間にわたって安定して第1段階のクロロプロペン中間体、第2段階のHFO−1234yfを製造することが可能となる。
【0082】
図1は、HFO−1234yfの製造フローの一例を説明する概略フロー図を示している。図1の製造フローでは、第1反応器1a、第2反応器1b、第1蒸留塔2a及び第2蒸留塔2b等を備えた製造ラインでHFO−1234yfが製造される。第1反応器1aでは第1段階における工程aの反応を、第2反応器1bでは2段階における工程dの反応を行うことができる。
【0083】
具体的には、出発原料を、フッ化水素と共に第1反応器1aの入口側10aから供給し、触媒の存在下で反応させる。次いで、第1反応器1aの出口側11aから反応物を抜き出し、生成物であるクロロプロペン中間体と、未反応の原料クロロプロパン及びフッ化水素とを含む反応混合物を、工程bが行われる第1蒸留塔2aへ供給させる。
【0084】
第1蒸留塔2aでは、生成物であるクロロプロペン中間体を第1蒸留塔2aの塔頂20aから第1ストリームとして抜き出して、第2反応器1bへ供給する。一方、未反応の原料クロロプロパン及び未反応のフッ化水素は、第2ストリームとして第1蒸留塔2aのスチル21aから抜き出して、再度、第1反応器1aに供給させて工程aの反応に用いる。上記蒸留を行うにあたっては、上述のように、未反応の出発原料及び未反応のフッ化水素が分液しない条件で行う。
【0085】
第2反応器1bへ供給されたクロロプロペン中間体は、触媒の存在下、フッ化水素との反応が行われる。ここで使用されるフッ化水素は、別途、第2反応器1bへ供給すればよい。次いで、第2反応器1bの出口側11bから反応物を抜き出し、目的物であるHFO−1234yfを含む主成分の他、未反応のクロロプロペン中間体及びフッ化水素を含む反応混合物を、工程eが行われる第2蒸留塔2bへ供給させる。
【0086】
第2蒸留塔2bに供給されたHFO−1234yfを蒸留によって第2蒸留塔2bの塔頂20bから抜き出し、その後精製等の処理により塩化水素等が除去される。一方、クロロプロペン中間体及び未反応のフッ化水素は第2蒸留塔2bのスチル21bから抜き出して、再度、第2反応器1bに供給させて工程dの反応に用いる。上記蒸留を行うにあたっては、上述のように、未反応のクロロプロペン中間体及び未反応のフッ化水素が分液しない条件で行う。尚、上記製造フローは、HFO−1234yfを製造するための一例であり、図1以外の製造ラインによって製造されるものであってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
図1の製造フローに従い、HFO−1234yfの製造を行った。反応器は、材質がハステロイC22、形状は寸胴式とし、蒸留塔は、材質をハステロイC22として寸胴式の充填塔を適用し、充填物はCMRNo2.5、塔径は500A、充填長は10000mm×2とした。
【0089】
第1段階の工程aにおける出発原料として、240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)を使用した。この240db及びフッ化水素の混合ガスを7000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で第1反応器1aに連続的に供給した。第1反応器1aの内部温度は300℃、圧力は0.75MPa(ゲージ圧)とし、さらに、この反応において、240dbに対するフッ化水素のモル比を20とした。また、第1反応器1aには、触媒としてあらかじめCr酸化物触媒(Cr)24.8tを供給しておいた。
【0090】
反応後、第1反応器1aから反応物を抜き出して、第1蒸留塔2aへ送流させ、蒸留に付した。第1蒸留塔2aのスチルからは、未反応の240db及び未反応のフッ化水素を抜き出し、これらを再度、第1反応器1aへ送り込んで反応用の原料として再利用した。一方、第1蒸留塔2aの塔頂から、生成物である1233xf(2−クロロ−3,3,3‐トリフルオロプロペン)を抜き出し、次の第2段階の反応が行われる第2反応器1bへ送流した。上記反応において、240dbから1233xfへの転化率は50〜99%であった。
【0091】
図3は、反応から蒸留までの工程を詳細に説明するための概略フロー図である。本実施例では、図3における気化器3及び冷却器4の材質はハステロイC22である。
【0092】
上述の第1蒸留塔2aから送流される1233xfは図3のS1のラインを通じて送流させ、また、フッ化水素はS2のラインから供給させて、S3のラインで合流させるようにした。このS3のラインを通じて1233xfと、フッ化水素の混合ガスを、21000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1へ連続的に供給させた。反応器1では、触媒であるCr酸化物触媒(Cr)49.6tの存在下、1233xfとフッ化水素とを反応させた。反応器1の内部温度は365℃、圧力は0.75MPa(ゲージ圧)とし、さらに、この反応において、1233xfに対するフッ化水素のモル比を10とした。反応後、得られた反応混合物を反応器1から蒸留塔2へ送流した。尚、上記の反応器1における反応では、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(245cb)が副生していることがわかった。
【0093】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を33℃、塔底温度70℃、圧力0.75MPa、還流比3.4の条件で行った。尚、ここでいう還流比とは、還流液と留出液のモル流量比(還流液/留出液)をいう。そして、塔頂部からはHCl及び目的生成物のHFO−1234yfを含む混合物を抜き出し、スチル(塔底部)からは未反応のフッ化水素及び未反応の1233xfを含む混合物を抜き出した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2内にてフッ化水素と1233xfとが分液せずに単一相の状態が維持されるように、図3のS1、S2及びS7にてのラインを流れるフッ化水素と1233xfのモル比、流量及び圧力を調整した。スチルから抜き出した未反応のフッ化水素及び未反応の1233xfの混合物は、再度、第2反応器へリサイクルさせた。
【0094】
表1には、図3におけるS1からS8の各ラインのガスの流量を示している。
【0095】
【表1】
【0096】
(実施例2)
図3に示す製造フローに従って、240dbから1233xfを製造した。まず、S1ラインを通じて240dbを、S2ラインを通じてフッ化水素を送流してS3ラインで合流させ、この240db及びフッ化水素の混合ガスを7000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1に連続的に供給した。反応器1の内部温度は300℃、圧力は0.75MPa(ゲージ圧)とし、さらに、この反応において、240dbに対するフッ化水素のモル比を20とした。また、反応器1には、触媒としてあらかじめCr酸化物触媒(Cr)24.8tを供給しておいた。反応後、反応器1から反応混合物を抜き出して、蒸留塔2へ送流させ、蒸留に付した。尚、使用した反応器1、蒸留塔2、気化器3及び冷却器4は実施例1と同様とした。
【0097】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を6.63℃、塔底温度93.6℃、圧力0.75MPa、還流比5の条件で行った。そして、塔頂部からは1233xfを含む混合物を抜き出し、スチル(塔底部)からは未反応のフッ化水素及び240dbの混合物を抜き出した。スチルから抜き出した未反応の240db及びフッ化水素は再度、反応器1へ送り込んで反応用の原料として再利用した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2にてフッ化水素と240dbとが分液せずに単一相の状態が維持されるように、図3のS1、S2及びS7のラインを流れるフッ化水素と240dbのモル比、流量及び圧力を調整した。
【0098】
表2には、図3におけるS1からS8の各ラインのガスの流量を示している。
【0099】
【表2】
【0100】
(実施例3)
図3に示す製造フローに従って、1230xa(1,1,2,3−テトラクロロプロペン)から1233xfを製造した。まず、S1ラインを通じて1230xaを、S2ラインを通じてフッ化水素を送流してS3ラインで合流させ、この1230xa及びフッ化水素の混合ガスを7000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1に連続的に供給した。反応器1の内部温度は300℃、圧力は0.75MPaとし、さらに、この反応において、1230xaに対するフッ化水素のモル比を20とした。また、反応器1には、触媒としてあらかじめCr酸化物触媒(Cr)24.8tを供給しておいた。反応後、反応器1から反応混合物を抜き出して、蒸留塔2へ送流させ、蒸留に付した。蒸留塔2のスチルからは、未反応の1230xa及び未反応のフッ化水素を抜き出し、これらを再度、反応器1へ送り込んで反応用の原料として再利用した。尚、使用した反応器1、蒸留塔2、気化器3及び冷却器4は実施例1と同様とした。
【0101】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を−13.2℃、塔底温度89.6℃、圧力0.75MPa、還流比4の条件で行った。そして、塔頂部からは1233xfを含む混合物を抜き出し、スチル(塔底部)からは未反応のフッ化水素及び1230xaの混合物を抜き出した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2にてフッ化水素と1230xaとが分液せずに一相の状態が維持されるように、図3のS1、S2及びS7のラインを流れるフッ化水素と1230xaのモル比、流量及び圧力を調整した。
【0102】
表3には、図3におけるS1からS8の各ラインのガスの流量を示している。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例4)
図3に示す製造フローに従って、243db(2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン)から1233xfを製造した。まず、S1ラインを通じて243dbを、S2ラインを通じてフッ化水素を送流してS3ラインで合流させ、この243db及びフッ化水素の混合ガスを7000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1に連続的に供給した。反応器1の内部温度は300℃、圧力は0.75MPaとし、さらに、この反応において、243dbに対するフッ化水素のモル比を20とした。また、反応器1には、触媒としてあらかじめCr酸化物触媒(Cr)24.8tを供給しておいた。反応後、反応器1から反応混合物を抜き出して、蒸留塔2へ送流させ、蒸留に付した。尚、使用した反応器1、蒸留塔2、気化器3及び冷却器4は実施例1と同様とした。
【0105】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を1.24℃、塔底温度81.1℃、圧力0.75MPa、還流比5の条件で行った。そして、塔頂部からは1233xfを含む混合物を抜き出し、スチル(塔底部)からは未反応のフッ化水素及び未反応の243dbの混合物を抜き出した。スチルから抜き出した未反応の243db及びフッ化水素は再度、反応器1へ送り込んで反応用の原料として再利用した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2にてフッ化水素と243dbとが分液せずに単一相の状態が維持されるように、図3のS1、S2及びS7のラインを流れるフッ化水素と243dbのモル比、流量及び圧力を調整した。
【0106】
表4には、図3におけるS1からS8の各ラインのガスの流量を示している。
【0107】
【表4】
【0108】
(実施例5)
図3に示す製造フローに従って、244bb(2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン)から1233xfを製造した。まず、S1ラインを通じて244bbを送流し、この244bb及びフッ化水素の混合ガスを7000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1に連続的に供給した。尚、この反応では、原料の244bbからフッ化水素が放出されるので、S2ラインからフッ化水素の供給は行っていない。反応器1の内部温度は300℃、圧力は0.75MPaとし、さらに、この反応において、244bbに対するフッ化水素のモル比を20とした。また、反応器1には、触媒としてあらかじめ0.75MPa24.8tを供給しておいた。反応後、反応器1から反応混合物を抜き出して、蒸留塔2へ送流させ、蒸留に付した。尚、使用した反応器1、蒸留塔2、気化器3及び冷却器4は実施例1と同様とした。
【0109】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を6.63℃、塔底温度93.6℃、圧力0.75MPa、還流比4の条件で行った。そして、塔頂部からは1233xfを含む混合物を抜き出し、スチル(塔底部)からは未反応のフッ化水素及び未反応の244bbの混合物を抜き出した。スチルから抜き出した未反応の244bb及びフッ化水素は再度、反応器1へ送り込んで反応用の原料として使用した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2にてフッ化水素と244bbとが分液せずに単一相の状態を維持するように、図3のS1、S2及びS7のラインを流れるフッ化水素と244bbのモル比、流量及び圧力を調整した。
【0110】
表5には、図3におけるS1からS8の各ラインのガスの流量を示している。
【0111】
【表5】
【0112】
(比較例)
実施例1と同様の条件で、第1段階での反応により、240dbから1233xfを製造した。次いで、この得られた1233xfを第1蒸留塔2aの塔頂から抜き出し、第2段階の反応が行われる第2反応器1bへ送流した。具体的には、図3に示す製造フローに従い、1233xfをS1のラインを通じて送流させ、また、フッ化水素はS2のラインから供給させて、S3のラインで合流させるようにした。このS3のラインを通じて1233xfと、フッ化水素の混合ガスを、21000m/hr(気体の標準状態換算)の流量で反応器1へ連続的に供給させた。反応器1では、触媒であるCr酸化物触媒(Cr)49.6tの存在下、1233xfとフッ化水素とを反応させた。反応器1の内部温度は365℃、圧力は0.1MPa(ゲージ圧)とし、さらに、この反応において、1233xfに対するフッ化水素のモル比を10、W/F0を10とした。反応後、得られた反応混合物を反応器1から蒸留塔2へ送流した。
【0113】
蒸留塔2における蒸留は、塔頂温度を33℃、塔底温度70℃、圧力0.1MPa、還流比3.4の条件で行った。そして、塔頂部からはHCl及び目的性生物のHFO−1234yfからなる混合物を抜き出し、スチルからは未反応のフッ化水素及び未反応の1233xfの混合物を抜き出した。この蒸留を行うにあたっては、蒸留塔2内にてフッ化水素と1233xfとが分液する条件となるように、図3のS1、S2及びS7にてのラインを流れるフッ化水素と1233xfのモル比、流量及び圧力を調整した。スチルから抜き出した未反応のフッ化水素及び未反応の1233xfの混合物は、再度、第2反応器へリサイクルさせた。
【0114】
(触媒の失活)
図4は、実施例1において、1233xfから1234yfへの転化率(Conversion)と反応時間との関係をプロットした図であり、また、実施例1の第2段階の反応において、1233xfに対するフッ化水素のモル比を6.4及び16に変更した場合(蒸留塔内の圧力はいずれも0.75MPa)のそれぞれの結果も併せて示している。この図において、モル比が6.4の場合は、上述の(1)式を満たさない条件であるため(図2も参照)、触媒が失活したことで転化率が低くなっており、反応時間と共にさらに転化率の低下が起こっている。一方、モル比が10及び16の場合は、(1)式を満たす条件であるため(図2も参照)、触媒の失活が抑制されているので転化率が高く、反応時間が経過しても転化率の低下の度合いが、モル比6.4の場合に比べて抑制されていることがわかる。
【0115】
図5は、実施例1の第2段階での反応における反応時間とHFO−1234yfの反応収率との関係及び、比較例の反応における反応時間とHFO−1234yfの反応収率との関係をプロットしたグラフである。比較例では、反応時間が経過するにつれて、反応収率が低下しているのに対し、実施例1では、反応開始から200時間経過しても、反応収率の低下は見られなかった。比較例1では、フッ化水素と1233xfとが分液する条件で蒸留を行っているため、還流の際に多量の有機物が反応器内へ戻される。そのため、有機物の作用により触媒が失活し、これが原因で、反応収率の低下が起こっている。それに対し、実施例1ではフッ化水素と1233xfとが分液を起こさない条件で蒸留をしたことにより、還流をしたとしても触媒の失活が起こりにくく、結果として、長期間にわたって安定して反応が行うことが可能となっている。
【符号の説明】
【0116】
1 反応器
1a 第1反応器
1b 第2反応器
2 蒸留塔
2a 第1蒸留塔
2b 第2蒸留塔
3 気化器
4 冷却器
図1
図2
図3
図4
図5