特許第5939290号(P5939290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939290
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】スクライブ方法及びスクライブ装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/027 20060101AFI20160609BHJP
   C03B 33/037 20060101ALI20160609BHJP
   C03B 33/04 20060101ALI20160609BHJP
   B26D 1/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C03B33/027
   C03B33/037
   C03B33/04
   B26D1/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-211273(P2014-211273)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-79062(P2016-79062A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174220
【氏名又は名称】坂東機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】島村 宗量
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−25134(JP,A)
【文献】 特開2007−254261(JP,A)
【文献】 特開平9−278474(JP,A)
【文献】 特開平11−263632(JP,A)
【文献】 特開平9−85734(JP,A)
【文献】 特開平11−151634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/02−33/04
B26D 1/14
B28D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタホイールとガラス板とを相対的に又はカッタホイールを平面座標系において輪郭線移動させながらカッタホイールを平面座標系に直交する軸線の回りに角度制御してカッタホイールの刃面を、常に輪郭線の法線方向に向けてガラス板にスクライブを行うスクライブ方法において、スクライブ移動中にカッタホイールをガラス板面に垂直に立てた姿勢とガラス板面に対して傾斜させた姿勢とに切り換えるスクライブ方法。
【請求項2】
カッタホイールとガラス板とを相対的に又はカッタホイールを平面座標系において輪郭線移動させながらカッタホイールを平面座標系に直交する軸線の回りに角度制御してカッタホイールの刃面を、常に輪郭線の法線方向に向けてガラス板にスクライブを行うスクライブ装置において、カッタホイールをガラス板面に垂直に立てた姿勢とガラス板面に対して傾斜させる姿勢とに切り換えられるようにしたスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板面又は硬質脆性材料板面にカッタホイールによりスクライブ線を形成するスクライブ方法及びスクライブ装置に関する。
【0002】
また、本発明は、ガラス板面に形成した閉曲線のスクライブ線の内方域を製品とし、スクライブ線の外側域をカレットとして除去するスクライブ線通りの折割作業に適したスクライブ方法及びスクライブ装置に係る。
【0003】
更に、本発明は、外周の一部には鋭い凸カーブ部を、また他の一部には内方に深く入り込んだ湾曲カーブ部を有する自動車窓ガラスのようなガラス板を製造する場合に、ガラス板面に外周形状線をスクライブしてスクライブ線を形成し、そのスクライブ線の通り折割したとき、鋭い凸コーナカーブ部及び湾曲カーブ部等を良質に折割し得るスクライブ方法及びスクライブ装置に係る。
【背景技術】
【0004】
従来、カッタホイールを用いた自動車窓ガラスのスクライブ折割生産において、そのスクライブ線の形成は、特許文献1に開示されているように、外周全周に渡ってカッタホイールをガラス板面に対して垂直に立てた姿勢で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−265244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、特許文献1が示すように、カッタホイールをガラス板面に対して垂直に立てた姿勢で自動車窓ガラスの形状に対応してガラス板面をスクライブしたとき、鋭い凸コーナカーブ部においては、スクライブ線下の垂直クラックの進行が十分に発生されず、ここに曲げ折割を作用させると、製品側の折割面にソゲ、カケ等が発生したり、スクライブ線に沿った折割が行われない場合もある。
【0007】
また、湾曲カーブ部の曲げ折割においては、スクライブ線外側の折割除去カレットに外方向への離れ力が働かず、折割除去カレットと製品側のガラス板の外周部とが軋り合い、製品側のガラス板の外周部にハマカケ、ソゲが発生したり、折割後に折割り面に研削加工を施しても、カケ、ソゲが残り、正常な最終製品を得られないこともある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、鋭い凸コーナーカーブ部及び湾曲カーブ部のうちの少なくとも一方を有するガラス板をスクライブするとき、ガラス板面に対してカッタホイールの姿勢を変化(切り換え)させてスクライブし、鋭い凸コーナーカーブ部及び湾曲カーブ部を含め、全周に渡って良質な折割を行い得るスクライブ方法及びスクライブ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カッタホイールとガラス板とを相対的に又はカッタホイールを平面座標系において輪郭線移動させながらカッタホイールを当該平面座標系に直交する軸線の回りに角度制御してカッタホイールの刃面を、常に輪郭線の法線方向に向けてガラス板にスクライブ線を形成するスクライブ方法において、スクライブ移動中に、カッタホイールをガラス板面に垂直に立てた姿勢とガラス板面に対して傾斜させた姿勢、好ましくは、スクライブ線の外側域に向って下り傾斜させた姿勢との切り換えを行うようにしたスクライブ方法である。
【0010】
また、本発明は、カッタホイールとガラス板とを相対的に又はカッタホイールを平面座標系において輪郭線移動させながらカッタホイールを当該平面座標系に直交する軸線の回りに角度制御してカッタホイールの刃面を、常に輪郭線の法線方向に向けてガラス板にスクライブ線を形成するスクライブ装置において、カッタホイールをガラス板面に垂直に立てた姿勢と傾斜した姿勢とに切り換えられるようにしたスクライブ装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋭い凸コーナーカーブ部及び湾曲カーブ部のうちの少なくとも一方を有するガラス板をスクライブするとき、スクライブ中において、ガラス板面に対してカッタホイールの姿勢を変化(切り換え)させてスクライブし、鋭い凸コーナーカーブ部及び湾曲カーブ部を含め、全周に渡って良質な折割を行い得るスクライブ方法及びスクライブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ガラス板に自動車窓ガラス板のスクライブ線を形成した平面説明図である。
図2図2は、図1におけるスクライブ中のカッタホイールの姿勢の説明図であり、(a)は、ガラス板面に対してカッタホイールを傾斜させた姿勢の説明図であり、(b)は、ガラス板面に対してカッタホイールを垂直に立てた姿勢の説明図である。
図3図3は、傾斜スクライブ溝において折割した製品側の端面説明図である。
図4図4は、スクライブ装置の正面説明図である。
図5図5は、スクライブ装置の横断面説明図である。
図6図6は、カッタホイールの姿勢を切り換えたときのスクライブ装置の横断面説明図である。
図7図7は、スクライブ装置におけるスクラブヘッドの姿勢切り換え装置部の側面説明図である。
図8図8は、図7に示す姿勢切り換え装置の側断面説明図である。
図9図9は、スクライブヘッド及び姿勢切り換え装置部の拡大正面説明図である。
図10図10は、スクラブヘッドの姿勢を切り換えたときの姿勢切り換え装置の拡大正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例であるスクライブ装置及びスクライブ方法を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1から図10において、スクライブ装置1は、NC制御でガラス板2の面3に閉曲線のスクライブ線4を形成するようになっており、スクライブ装置1は、カッタホイール5とガラス板2とをX−Yの平面座標系において輪郭線移動させながら、カッタホイール5を平面座標系に直交する軸線37の回りに角度制御して、カッタホイール5の刃面9を常に輪郭線10の法線方向8に向けてガラス板2の面3に閉曲線のスクライブ線4を形成すると共にスクライブ線4の形成の移動中において、カッタホイール5を法線方向8において、ガラス板2の面3に対して垂直に立てた姿勢11(図2(b))、図4図5及び図7から図9参照)とガラス板2の面3に傾斜させた姿勢12(図2(a)、図3図6及び図10参照)とに切り換えるようになっている。
【0015】
スクライブ装置1は、下端にカッタホイール5を備えて方向Xに移動(X軸移動)するスクライブヘッド6と、上面にガラス板2を平面支持して方向Yに移動(Y軸移動)するワークテーブル7とを備える。
【0016】
スクライブヘッド6は、図4及び図5に示すように、上方位置においてX軸に平行して枠体19に架設された架台13の前面に設けられたX軸移動手段14のX軸移動台15に角度制御装置16を介して取付けられている。
【0017】
スクライブヘッド6は、カッタホイール5を備えたスプラインシャフト46と、スプラインシャフト46を回転させないで往復直動自在に保持するヘッド本体45と、ヘッド本体45の上部に取り付けられ、スプラインシャフト46を昇降させ、ガラス板2の面3にスクライブするとき、カッタホイール5をガラス板2に弾性押圧するエアシリンダ装置41とを具備しており、ヘッド本体45のベース板43において、スライドブロック40の前面に取付けられている。
【0018】
X軸移動手段14は、架台13の前面に並列してX軸方向に沿って配設された一対のガイドレール20のそれぞれに方向Xにスライド直動自在に組付けされた二対のブロック21に取付けられたX軸移動台15と、一対のガイドレール20間に配設され、一方端ではX軸移動台15に連結され、他方端ではX軸制御モータ22に連結された送りネジ23とを具備しており、X軸移動台15は、送りネジ23を介してX軸制御モータ22によりX軸移動するようになっている。
【0019】
ワークテーブル7は、架台13の下の基台18の上面においてX軸と直交する方向Y、即ち、Y軸に沿って設けられていると共にY軸移動手段24に取付けられてY軸移動するようになっている。
【0020】
Y軸移動手段24は、基台18の上面に並列され、Y軸に沿って配設された一対のガイドレール25とこれらガイドレール25の各々に方向Yにスライド直動自在に組付けされた二対のスライドブロック26に取付けられたY軸移動台27と、一対のガイドレール25間に配設され、一方端でY軸移動台27に連結され、他方端でY軸制御モータ28に連結された送りネジ29とを具備しており、ワークテーブル7は、Y軸移動台27の上部に取付けられ、送りネジ29を介してY軸制御モータ28によりY軸移動するようになっている。
【0021】
角度制御装置16は、ワークテーブル7に対応してX軸移動台15の前面に上下方向に沿って取付けられた軸受装置30と、軸受装置30を上下に貫いて組込みされている回転軸31と、軸受装置30から上側に突出した回転軸31の上部に平歯車列を介して連結していると共にブラケット48を介してX軸移動台15に支持された角度制御モータ32と、軸受装置30から下側に突出した回転軸31の下部に取付けられたブラケット体33とを具備している。
【0022】
ブラケット体33は、軸受装置30から下方に突出した回転軸31を横からクランプして回転軸31に取付け固定されたクランプブラケット34に下向きに取付けられており、ブラケット体33は、回転軸31の外側に位置して回転軸31から下向に突設され、回転軸31と一体となって回動するようになっている。
【0023】
スクライブヘッド6は、回転軸31の直下において、ブラケット体33の内側壁面36に姿勢切り換え装置35を介して取付けられている。
【0024】
スクライブヘッド6は、カッタホイール5が回転軸31の軸線37上に位置するように姿勢切り換え装置35のスライドブロック40の前面に、具体的には、カッタホイール5とガラス板2の面3との接点であるスクラブポイント38を通るように取付けられている。
【0025】
カッタホイール5がガラス板2に対してX−Yの平面座標系移動し、スクライブポイント38が輪郭線移動中のとき、回転軸31の角度制御回動によって、姿勢入り換え装置35とスクライブヘッド6とは一体となって角度制御回動し、カッタホイール5は刃面9側が、常に、輪郭線の法線方向8に向けられる。
【0026】
姿勢切り換え装置35は、角度制御回動中、スクライブヘッド6、延いては、カッタホイール6を、更に法線方向8において、ガラス板2の面3に対しての姿勢を切り換えるように取付けられている。
【0027】
姿勢切り換え装置35は、ブラケット体33の内側壁面36に取付けられた円弧形状の曲線レール39と、曲線レール39に円弧移動自在に組付け保持されたスライドブロック40と、ブラケット体33に支持部材49を介して回転自在に連結され、スライドブロック40を曲線レール39に沿って円弧移動させるエアシリンダ装置41とを具備しており、スライドブロック40の前面にスクライブヘッド6が取付けられており、スクライブヘッド6は、下端に備えるカッタホイール5が回転軸31の軸線37上に位置するように、即ち、カッタホイール5とガラス板2の面3との接点であるスクライブポイント38を軸線37が通るように取付けられている。
【0028】
カッタホイール5は、カッタホイール5とガラス板2とのX−Yの平面座標系における相対的な移動で、スクラブポイント38を輪郭線移動させるとき、カッタホイール5の刃面9が、常に輪郭線10の法線方向8に向けられるように、スクライブポイント38を通る軸線37の周りにおいて角度制御される。
【0029】
姿勢切り換え装置35は、曲線レール39の半径中心42がガラス板2の面3上に位置するように取付けられており、曲線レール39に保持され、曲線レール39に沿って移動するスライドブロック40は、曲線レール39の半径中心42を中心にして、円弧移動しながら、半径中心42を中心として、ガラス板2の面3に対して姿勢を変えるようになっており、スライドブロック40の前面にスクライブヘッド6が取付けられているため、エアーシリンダ装置41の押し引き動作によってスライドブロック40の円弧移動によって、スクライブヘッド6、延いては、カッタホイール5は、半径中心42、即ちスクライブポイント38を支点にして、ガラス板2の面3に対しての角度を変える、即ち、カッタホイール5は、輪郭線移動中、刃面9側を輪郭線10の法線方向8に向けて輪郭線移動しながら、更に法線方向8において、ガラス板2の面3に対して垂直した立ち姿勢11に、また、スクライブ線4の外側域Cに向って下り傾斜した姿勢12に切り換えされてスクライブ移動を行うようになっている。
【0030】
スクライブ装置1は、図1に示すスクライブ形状において、スクライブ線4が直線又は緩やかな箇所では、カッタホイール5を立ち姿勢11とし、スピードを上げてスクライブし、鋭い凸コーナカーブ部50及び深い湾曲カーブ部51では、カッタホイール5をスクライブ線4の外側域に向って下り傾斜に切り換え、ややスピードを落としてスクライブを行うようになっている。
【0031】
スライドブロック40に取付けられたスクライブヘッド6、延いては、カッタホイール5は、エアシリンダ装置41によるスライドブロック40の移動によって、半径中心42、即ち、スクライブポイント38において、ガラス板2の面3に対してその角度が変わるように、 即ち、ガラス板2の面3に対して垂直した立て姿勢から傾斜姿勢に切り換えられるようになっている。
【0032】
以上のスクライブ装置1は、例えば、スクライブ線4の形成において、直線部又は緩やかなカーブ部52(B−B)では、カッタホイール5をガラス板2の面3に対して垂直に立てた姿勢11として高速でスクライブ移動させ、鋭い凸コーナカーブ部50及び湾曲カーブ部51(A−A)では、カッタホイール5をスクライブ線4の外側域Cに向って下り傾斜した姿勢12に切り換えてスクライブを行うようになっており、これにより、スクライブ装置1では、鋭い凸コーナカーブ部50及び湾曲カーブ部51(A−A)において、スクライブ線4の溝及びスクライブ線4の溝直下のクラックを下方に向って下り傾斜して進行発生させることができ、図4に示すように、ガラス板2の外側域Cを下方に折割する場合において、製品側の折割面Dの下部を上部に対して出っ張り、即ち、下部に向って抜き勾配θを形成できると同時に、ガラス板2の製品側とカレットとなる外側域Cとの間の上側を大きく開くようにできるため、スクライブ線4の外側域Cの折割除去カレットを外方向に離し易くなり、製品側の折割面D及びその近傍にカケ、ソゲの発生をなくし得、また、仮令、折割面Dの下方の張り出部にソゲ、カケが発生しても、後工程のエッヂ研削仕上げによってソゲ、カケを除去でき、従って、図1に示すような鋭い凸コーナカーブ部50、湾曲カーブ部51を有する形状の自動車ガラスにおいても良好に加工仕上げを得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 スクライブ装置
2 ガラス板
3 面
4 スクライブ線
5 カッタホイール
6 スクライブヘッド
7 ワークテーブル
8 法線方向
9 刃面
10 輪郭線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10