特許第5939295号(P5939295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939295
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】樹脂充填装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20160609BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H02K15/03 Z
   H02K15/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-237266(P2014-237266)
(22)【出願日】2014年11月25日
(62)【分割の表示】特願2012-195834(P2012-195834)の分割
【原出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2015-39296(P2015-39296A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛
(72)【発明者】
【氏名】大浦 卓也
(72)【発明者】
【氏名】郡 智基
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−017075(JP,A)
【文献】 特開2007−306726(JP,A)
【文献】 特開2007−325368(JP,A)
【文献】 特開2006−211748(JP,A)
【文献】 特開昭58−172958(JP,A)
【文献】 米国特許第05794326(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機用ロータの積層鉄心に設けられた磁石挿入穴に磁石固定用の溶融樹脂を充填する際に用いる樹脂充填装置であって、
上記磁石挿入穴の開口部を開口させた上記積層鉄心の一方の端面に当接し、上記磁石挿入穴に上記溶融樹脂を送り出す樹脂送出型と、
該樹脂送出型が当接する上記積層鉄心の上記一方の端面とは反対側に位置する他方の端面に当接する対向型と、
上記樹脂送出型と上記対向型との間に上記積層鉄心を挟持した状態で圧縮力を付与する押圧機構部とを有し、
上記樹脂送出型は、
上記磁石挿入穴の上記開口部に対向する位置において該開口部に向けて上記溶融樹脂を吐出するための1又は複数の吐出口が設けられ、かつ上記積層鉄心の上記一方の端面に当接する板状のゲートプレートと、上記吐出口に向けて上記溶融樹脂を送り出す送出機構部が設けられ、かつ上記ゲートプレートを分離できる状態で該ゲートプレートに対して上記積層鉄心とは反対側から当接する型本体部と、を有しており、
上記送出機構部は、上記型本体部内に埋設された複数の内筒部と、該各内筒部内をそれぞれ進退可能な複数のプランジャとを有しており、
上記ゲートプレート上記型本体部側の面における、上記各内筒部及び上記各プランジャと対応する位置には、円筒形の凹部と該凹部から上記吐出口につながる凹溝とが、上記各内筒部と上記吐出口との間の流路となる樹脂流路として形成されていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層鉄心への樹脂充填装置において、上記凹溝は、上記凹部から分岐して形成されていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層鉄心への樹脂充填装置において、上記吐出口は、上記磁石挿入穴の上記開口部に対して2つ設けられていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心への樹脂充填装置において、上記ゲートプレートは、上記積層鉄心を搬送するパレットとして利用可能に構成されていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心への樹脂充填装置において、上記樹脂送出型の表面には、上記吐出口の周囲を突出させた突出部が設けられており、該突出部の内部には、溶融樹脂の吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部が設けられていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機用ロータの溶融樹脂を充填する際に用いる樹脂充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機用ロータの製造においては、所望形状に形成された複数の鉄心片を積層して積層鉄心を形成し、該積層鉄心の磁石挿入穴に永久磁石を挿入した後、積層鉄心を加熱し樹脂充填装置を用いて、磁石挿入穴に溶融樹脂を充填することで永久磁石の固定が行われる。磁石挿入穴に充填した樹脂が硬化した後、樹脂充填装置と積層鉄心とを分離するとき、樹脂充填装置の吐出口の内部に残留した樹脂が積層鉄心側に残り、バリを形成する場合がある。
【0003】
バリが残ったままの積層鉄心を用いて電動機を製造した場合、電動機の内部において積層鉄心の周辺に配される部品とバリとが接触し、部品を損傷したり、バリが脱落することにより電動機に異常が発生するといった不具合が生じるおそれがある。このような不具合の発生を防止するために、電動機用ロータの生産ラインにおいてバリの除去を行ったり、特許文献1に示されているバリの発生を防止する樹脂充填方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−54376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機用ロータの生産ラインにおいてバリの除去を行うためには、バリ除去工程を追加し、バリ除去専用の装置を設けたり、手作業でバリの除去を行う作業者を配する必要がある。このように、バリ除去工程を追加することによる作業の増加により生産効率が低下するおそれがある。また、バリ除去専用の装置や作業者を配置することにより、設備費や人件費等が増大するため、生産コストが増大することとなる。
【0006】
また、特許文献1の方法においては、上型と積層鉄心の間に、溶融樹脂の吐出口をなす穴部を設けたダミー板を設けてある。積層鉄心の磁石挿入穴に溶融樹脂を充填し樹脂が硬化した後、積層鉄心からダミー板を分離することにより吐出口内に残留した樹脂を積層鉄心から除去しようとするものであるが、硬化した樹脂の分割位置をコントロール出来ないため、積層鉄心側にバリが形成される場合もあり、確実にバリを除去することは困難である。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂充填におけるバリの発生を確実に防止することにより、生産効率を向上することができる電動機用ロータの樹脂充填装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電動機用ロータの積層鉄心に設けられた磁石挿入穴に磁石固定用の溶融樹脂を充填する際に用いる樹脂充填装置であって、
上記磁石挿入穴の開口部を開口させた上記積層鉄心の一方の端面に当接し、上記磁石挿入穴に上記溶融樹脂を送り出す樹脂送出型と、
該樹脂送出型が当接する上記積層鉄心の上記一方の端面とは反対側に位置する他方の端面に当接する対向型と、
上記樹脂送出型と上記対向型との間に上記積層鉄心を挟持した状態で圧縮力を付与する押圧機構部とを有し、
上記樹脂送出型は、
上記磁石挿入穴の上記開口部に対向する位置において該開口部に向けて上記溶融樹脂を吐出するための1又は複数の吐出口が設けられ、かつ上記積層鉄心の上記一方の端面に当接する板状のゲートプレートと、上記吐出口に向けて上記溶融樹脂を送り出す送出機構部が設けられ、かつ上記ゲートプレートを分離できる状態で該ゲートプレートに対して上記積層鉄心とは反対側から当接する型本体部と、を有しており、
上記送出機構部は、上記型本体部内に埋設された複数の内筒部と、該各内筒部内をそれぞれ進退可能な複数のプランジャとを有しており、
上記ゲートプレート上記型本体部側の面における、上記各内筒部及び上記各プランジャと対応する位置には、円筒形の凹部と該凹部から上記吐出口につながる凹溝とが、上記各内筒部と上記吐出口との間の流路となる樹脂流路として形成されていることを特徴とする積層鉄心への樹脂充填装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂充填装置は、上記溶融樹脂の吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された上記縮径部を設けた上記吐出口を有している。そのため、該吐出口の内側に残留し、硬化した樹脂を破断分離する際には、上記縮径部の先端の最も径の小さい部位に応力を集中させて破断分離することができる。これにより、破断分離面の発生位置の制御が容易であると共に、バリの生じにくい比較的平滑な破断面を得ることができ、上記積層鉄心の端面にバリが発生することを抑制することができる。したがって、電動機用ロータの製造において、バリ除去工程を設ける必要がなくなる。それゆえ、電動機用ロータの生産効率を向上させ、設備費用及び生産コストを低減することができる。
【0010】
本発明によれば、樹脂充填におけるバリの発生を確実に防止することにより、生産効率を向上することができる電動機用ロータの樹脂充填装置を提供することができる。
【0011】
また、上記積層鉄心の上記磁石挿入穴への樹脂充填が完了した後、上記樹脂送出型と上記ゲートプレートとを分離し、該ゲートプレートと上記積層鉄心を上記樹脂充填装置から移動することで、次の樹脂充填を行うことができる。そのため、上記樹脂充填装置の停止時間を短縮し、効率よく樹脂充填を行うことができる。また、上記樹脂充填装置から移動し溶融樹脂が硬化した後に、最適なタイミングで上記ゲートプレートを上記積層鉄心から分離することにより、不要な樹脂部材を除去し、より確実にバリの発生を防止することができる。また、上記ゲートプレートにより除去した不要な樹脂部材を、上記ゲートプレートから容易に取り除く事ができる。したがって、作業効率及び整備性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における、樹脂充填装置を示す説明図。
図2】実施例1における、ゲートプレートの平面図。
図3】実施例1において、積層鉄心をゲートプレート上に載置した状態における図2のA−A線矢視相当の断面図。
図4】実施例1において、積層鉄心をゲートプレート上に載置した状態における図2のB−B線矢視相当の部分拡大断面図。
図5】実施例1における、電動機用ロータの製造方法を実行する生産ラインを示す説明図。
図6】実施例1における、積層鉄心を示す平面図。
図7】実施例1における、回転軸組付け工程を示す断面図。
図8】比較例1における、発明例の樹脂充填工程及び回転軸組付け工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
図9】比較例1における、比較例の樹脂充填工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
図10】比較例1における、比較例の回転軸組付け工程の加熱及び冷却条件を示す時間−温度グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、上記縮径部と上記吐出口の軸線とがなす内角の角度(以下、適宜、縮径角度αという。)は、15°〜60°の範囲内にあることが好ましい。この場合には、上記吐出口内に残留し硬化した樹脂を、上記縮径部において確実に分割することができる。上記縮径角度αが15°未満の場合には上記縮径部の効果が得られにくい。また、上記縮径角度αが60°を超える場合には、上記吐出口の先端部における強度が低下し、上記吐出口が破損するおそれがある。
【0014】
また、上記凹溝は、上記凹部から分岐して形成されていることが好ましい(請求項2)。また、上記吐出口は、上記磁石挿入穴の上記開口部に対して2つ設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
また、上記ゲートプレートは、上記積層鉄心を搬送するパレットとして利用可能に構成されていることが好ましい(請求項4)。この場合には、搬送コンベアや搬送レールを設けることにより、連続搬送を行うことができる。そのため、搬送効率を向上することができる。
【0016】
また、上記樹脂送出型の表面には、上記吐出口の周囲を突出させた突出部が設けられており、該突出部の内部に上記縮径部が設けられていることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記吐出口の内側に残留した樹脂が上記積層鉄心側に残り、たとえ若干のバリが生じたとしても積層鉄心の端面よりも内側の範囲に収まるため、バリによる悪影響を生じない。それゆえ、バリにより生じうる不具合の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
本発明にかかる実施例1を図1図7を用いて説明する。
本例の樹脂充填装置1は、図1に示すごとく、電動機用ロータの積層鉄心3に設けられた磁石挿入穴33に磁石固定用の溶融樹脂34を充填する際に用いられるものである。樹脂充填装置1は、磁石挿入穴33の開口部331を開口させた積層鉄心3の端面に当接させる樹脂送出型11と、該樹脂送出型11を当接させる積層鉄心3の上記端面の反対側の端面に当接させる対向型12とを有している。また、樹脂充填装置1は、樹脂送出型11と対向型12との間に積層鉄心3を挟持した状態で圧縮力を付与する押圧機構部13とを有している。樹脂送出型11は、磁石挿入穴33の開口部331と対面するよう配置された2つの吐出口22と、該吐出口22に向けて溶融樹脂34を送り出す送出機構部111とを有している。また、吐出口22は、溶融樹脂34の吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部221を有している。
【0018】
以下詳説する。
本例に示す樹脂充填装置1は、図1に示すごとく、積層鉄心3の下方に配置され磁石挿入穴33に溶融樹脂34を送出する樹脂送出型11と、積層鉄心3の上方に配置され上下方向に移動可能に構成された対向型12とを有している。
【0019】
樹脂送出型11は、図1に示すごとく、上述したように積層鉄心3を載置するパレットの役割をも果たすゲートプレート2を、型本体部110と一体化することにより構成され、ゲートプレート2は、その下面を型本体部110の上面と当接させるように連結される。同図に示すごとく、型本体部110において、ゲートプレート2が有する吐出口22と対応する位置には、該吐出口22に向けて溶融樹脂34を送り出す送出機構部111が設けてある。送出機構部111は、上下方向に配された円筒上の内筒部112と、該内筒部112内をその軸線方向に進退可能に構成されたプランジャ113とからなる。内筒部112には、図示しない溶融樹脂供給装置により、溶融樹脂を供給するように構成されており、プランジャ113を上昇させることにより、内筒部112から吐出口22に向かって溶融樹脂を送出するように構成されている。
【0020】
対向型12は、図1に示すごとく、樹脂送出型を支持するベース部14から立設させたガイドポール15を介して、積層鉄心3の上方に昇降可能に配設されている。該対向型12は、押圧機構部13によって、ガイドポール15に沿って昇降可能であると共に、樹脂送出型11との間に積層鉄心3を挟持した状態で圧縮力を付与可能に構成されている。
【0021】
ゲートプレート2は、図2及び図3に示すごとく、矩形形状の平板からなり、該ゲートプレート2の上面に鉄心位置決め部24を有している。該鉄心位置決め部24を積層鉄心3の内周部に収容する状態で、ゲートプレート2の上面に積層鉄心3を載置可能に構成されている。また、ゲートプレート2の下面には、装置位置決め部25を有し、樹脂送出型11の型本体部110の上面の所定位置に連結可能に構成されている。
【0022】
ゲートプレート2には、その上面に載置した積層鉄心3の磁石挿入穴33の開口部331に対面するように配置された吐出口22を設けてある。本例においては、図4に示すごとく、1つの磁石挿入穴33の開口部331に対して2つの吐出口22を設けた。吐出口22は、ゲートプレート2の下面から上面に貫通して形成されており、その内周面には、吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部221を有している。また、ゲートプレート2の上面においては、吐出口22の周囲を突出させた突出部222が設けられている。吐出口22の内周面に設けられた縮径部221は、突出部222先端の内部において内径が最小となるように形成してある。また、突出部222の外周面は、先端に行くほど縮径するテーパ面よりなる。
尚、本例では、吐出口22先端の開口径は、φ1mmとし、突出部222の突出高さHは、0.5mmとした。また、縮径角度αは、30°とし、テーパ角度βは、60°とした。
【0023】
また、ゲートプレート2の下面には、型本体部110と連結した際に、該型本体部110が有する送出機構部111と対応する位置に、該送出機構部と吐出口22との間の流路となる樹脂流路23を形成してある。該樹脂流路23は、略円筒形の凹部からなる流入部231と、該流入部231に流入した溶融樹脂34を隣接する2つの磁石挿入穴33の開口部331に対応して形成された吐出口22に分岐する2本の凹溝である分岐部232によって構成されている。
【0024】
ゲートプレート2の上面に設けられた鉄心位置決め部24は、略円筒形状をなしており、積層鉄心3が有する回転軸挿入穴32に挿通することにより、ゲートプレート2に載置した積層鉄心3の位置決めが行われるように構成されている。鉄心位置決め部24の外周面には、積層鉄心3の回転軸挿入穴32の内周面に形成された凸部321と対応した位置に、位置決め凹溝部241が形成してある。
【0025】
ゲートプレート2の下面に設けられた装置位置決め部25は、4つの略長方形の平板からなり、型本体部110におけるゲートプレート2と当接する面の輪郭に沿って形成された4つの段部114に対応する位置にそれぞれ設けてある。
そして、ゲートプレート2と型本体部110との連結は、ゲートプレート2を相対的に上昇させた状態で、型本体部110の上方へと移動し、ゲートプレート2を相対的に下降させることにより、ゲートプレート2の下面に設けた装置位置決め部25を、型本体部110の上面に設けた段部114に嵌合させることで実施できるよう構成されている。逆に、ゲートプレート2と型本体部110との連結を解除するには、ゲートプレート2を相対的に上昇させ、装置位置決め部25と型本体部110の嵌合を解除することで実施できる。
【0026】
次に本例の樹脂充填装置1を用いた電動機用ロータの製造方法について説明する。
本例の電動機用ロータの製造方法は、図5に示すごとく、所望形状に形成した鉄心片31を複数積層して積層鉄心3を形成する積層工程4と、積層鉄心3に設けられた磁石挿入穴33に永久磁石36を挿入する磁石挿入工程5と、積層鉄心3を加熱し磁石挿入穴33に磁石固定用の溶融樹脂34を充填する樹脂充填工程6と、該樹脂充填工程6における積層鉄心3の加熱による余熱を利用し、積層鉄心3の回転軸挿入穴32に回転軸35を温間嵌めする回転軸組付け工程7とを有している。上記電動機用ロータの製造方法を実施する生産ラインにおいて、少なくとも積層工程4の末端部から回転軸組付け工程7の起端部の間には搬送レールが配されており、該搬送レール上を後述のゲートプレート2が移動可能に構成されている。
【0027】
積層工程4は、図6に示す形状の鉄心片31を帯状鋼板から連続的に打ち抜き、複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心3を形成する工程であり、図示しないプレス装置を用いて行う。積層鉄心3は、図6に示すごとく、回転軸35(図7)を挿入する1つの回転軸挿入穴32と永久磁石36を挿入する16個の磁石挿入穴33とが軸線方向に貫通して形成してある。回転軸挿入穴32の内周面には、凸部321が互いに対向する位置に形成してある。該凸部321は、回転軸35のキー溝(図示略)との嵌め合いのために設けられたものであり、後述のゲートプレート2との位置決めに流用される。
磁石挿入工程5を実施する装置は、積層鉄心3の磁石挿入穴33に永久磁石36を挿入する作業を自動で行う図示しない磁石挿入ロボットを備えている。
【0028】
樹脂充填工程6には、積層鉄心3を予備加熱する加熱装置(図示略)と、磁石挿入穴33に磁石固定用の溶融樹脂34を充填して熱硬化させる樹脂充填装置1とを備えている。尚、本例の溶融樹脂34は、熱硬化性樹脂を加熱して液状に状態変化させたものである。該熱硬化性樹脂は、液状状態において、加熱することにより硬化し、硬化した後は加熱しても液状にならない。
本例において用いる加熱装置は、トンネル型をなしており、その内側には電熱ヒータが設けられている。また、加熱装置内部においても、搬送レールが配してあり、積層鉄心3を載置した後述するゲートプレート2を移動可能に構成してある。
【0029】
回転軸組付け工程7には、図7に示すごとく、積層鉄心3を把持し、回転軸35に自動で組付ける鉄心組付けロボット(図示略)と、回転軸35を起立させた状態で保持する回転軸保持冶具71とが配してある。
【0030】
次に、各製造工程の内容についてさらに詳しく説明する。
積層工程4においては、図6に示す形状の鉄心片31を帯状鋼板から連続的に打ち抜き、複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心3が形成される。該積層鉄心3は、積層工程4の末端部に位置する搬送始点において、ゲートプレート2上に載置される。このとき、積層鉄心3は、図2図3に示すごとく、ゲートプレート2の上面に配された鉄心位置決め部24を回転軸挿入穴32に挿通し、回転軸挿入穴32内面に設けた凸部321と鉄心位置決め部24の外面に設けた位置決め凹溝部241とを嵌め合わせることで積層鉄心3の磁石挿入穴33とゲートプレート2の吐出口22との位置合わせが行われる。次いで、積層鉄心3を載置したゲートプレート2は、搬送レール上を移動し、磁石挿入工程5へと搬送される。尚、積層鉄心3は、樹脂充填工程6の末端部に位置する搬送終点までの間、ゲートプレート2上に載置された状態で搬送レール上を移動する。
【0031】
積層鉄心3は、図5に示す磁石挿入工程5において、磁石挿入ロボットにより各磁石挿入穴33に永久磁石36を挿入された後、樹脂充填工程6へと移動する。
樹脂充填工程6に配されたトンネル型の加熱装置内を通過することによって、積層鉄心3及びゲートプレート2は、150℃〜200℃の加熱温度の温度範囲に加熱され、樹脂充填装置1内へと搬送される。樹脂充填装置1内において、積層鉄心3を載置したゲートプレート2は、図1に示すごとく、型本体部110と連結される。このとき、型本体部110内の送出機構部111の内筒部112と、ゲートプレート2の樹脂流路23とにおいても連結されており、積層鉄心3の磁石挿入穴33までの間における溶融樹脂34の流路が形成される。
【0032】
積層鉄心3を載置したゲートプレート2が型本体部110上に配され、ゲートプレート2と樹脂送出型11との連結が完了した後、対向型12が下降し、積層鉄心3の上面に圧縮力を付与する。これにより、積み重なるように順次配された対向型12、積層鉄心3、樹脂送出型11における、それぞれ当接する面を密着させる。
【0033】
次いで、図1に示す送出機構部111のプランジャ113を上昇させることにより、内筒部112において溶融された溶融樹脂34を、ゲートプレート2の樹脂流路23の流入部231へ向けて送出する。樹脂流路23に流入した溶融樹脂34は、分岐部232を介して2つの吐出口22へと送出され、積層鉄心3の磁石挿入穴33へと吐出される。プランジャ113は、磁石挿入穴33の内部に溶融樹脂34が満たされるまで上昇し続ける。そして、磁石挿入穴33の内部に溶融樹脂34が満たされた後、プランジャ113の上昇は停止するが、溶融樹脂34に対して圧力を与え続け保圧状態とする。該保圧状態を所定の時間、維持する間に溶融樹脂34が加熱され硬化する。樹脂が硬化した後、送出機構部111のプランジャ113の位置を初期位置へ戻し樹脂充填工程6における作業が完了する。次いで、積層鉄心3は、ゲートプレート2と共に型本体部110から分離され、樹脂充填工程4から回転軸組付け工程7へと搬送される。
【0034】
積層鉄心3は、回転軸組付け工程7の起端部に配された搬送終点において、鉄心組付けロボットによってゲートプレート2と分離される。このとき、吐出口22に設けた縮径部221において、硬化した樹脂が破断分離されるため、吐出口22にはバリが生じない。
回転軸組付け工程7においては、回転軸35を回転軸保持冶具71上に起立して配置してあり、鉄心組付けロボットによって、積層鉄心3を回転軸35へと取り付ける。このとき、積層鉄心3は、樹脂充填工程6に配した樹脂充填装置1から回転軸保持冶具71上に移動する間に140℃〜180℃の余熱温度の温度範囲に自然冷却される。この温度範囲においても、積層鉄心3の回転軸挿入穴32の内径は拡径されており、回転軸35の外径よりも大きい状態にある。そして、積層鉄心3を冷却することで回転軸挿入穴32の内径が縮径し、積層鉄心3と回転軸35とが温間嵌めにより固定される。
【0035】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例においては、樹脂充填装置1の溶融樹脂34の吐出方向に沿って徐々に内径が縮径された縮径部221を設けた吐出口22を有している。そのため、該吐出口22の内側に残留し、硬化した樹脂を破断分離する際には、縮径部221の先端の最も径の小さい部位に応力を集中させて破断分離することができる。これにより、破断分離面の発生位置の制御が容易であると共に、バリの生じにくい比較的平滑な破断面を得ることができ、積層鉄心3の端面にバリが発生することを抑制することができる。したがって、電動機用ロータの製造において、バリ除去工程を設ける必要がなくなる。それゆえ、電動機用ロータの生産効率を向上させ、設備費用及び生産コストを低減することができる
【0036】
また、樹脂送出型11の表面には、吐出口22の周囲を突出させた突出部222が設けられており、該突出部222の内部に縮径部221が設けられている。そのため、吐出口22の内側に残留した樹脂が積層鉄心3側に残り、たとえ若干のバリが生じたとしても積層鉄心3の端面よりも内側の範囲に収まるため、バリによる悪影響を生じない。それゆえ、バリにより生じうる不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
このように、バリの発生を確実に防止することができるため、電動機用ロータの生産ラインにバリ除去工程を設ける必要がない。これにより、樹脂充填工程6の直後の工程に回転軸組付け工程7を配することができる。それゆえ、樹脂充填工程6の余熱を利用して、積層鉄心3と回転軸35とを温間嵌めを行う回転軸組付け工程7を比較的容易に実現することができる。
【0038】
また、樹脂送出型11の表面には、吐出口22の周囲を突出させた突出部222が設けられており、該突出部222の内部に縮径部221が設けられている。そのため、積層鉄心3の端面より、積層鉄心3側に入り込んだ位置に縮径部221が設けられる。したがって、縮径部221において分割された樹脂が微小なバリを形成したとしても、積層鉄心3の端面より内部に位置する。これにより、電動機用ロータを電動機として組み上げた際に、積層鉄心3の周辺に配される部品と、バリとが接触することがない。それゆえ、上記部品の損傷や、バリが脱落することで生じる不具合の発生を防止することができる。
【0039】
また、樹脂送出型11は、積層鉄心3の上記端面に当接する側の表面に板状のゲートプレート2を着脱可能に有しており、該ゲートプレート2に吐出口22を設けてある。そのため、積層鉄心3の磁石挿入穴33への樹脂充填が完了した後、樹脂送出型11とゲートプレート2とを分離し、該ゲートプレート2と積層鉄心3を樹脂充填装置1から移動することで、次の樹脂充填を行うことができる。そのため、樹脂充填装置1の停止時間を短縮し、効率よく樹脂充填を行うことができる。また、樹脂充填装置1から移動し溶融樹脂が硬化した後に、最適なタイミングでゲートプレート2を積層鉄心3から分離することにより、不要な樹脂部材を除去し、より確実にバリの発生を防止することができる。また、ゲートプレート2により除去した不要な樹脂部材を、ゲートプレート2から容易に取り除く事ができる。したがって、作業効率及び整備性を向上することができる。
【0040】
また、ゲートプレート2は、積層鉄心3を搬送するパレットとして利用可能に構成されている。そのため、搬送レールを設けることにより、連続搬送を行うことができ、搬送効率を向上することができる。
【0041】
(比較例1)
本例においては、実施例1に示す樹脂充填装置1を用いて、樹脂充填工程6の余熱により回転軸組付け工程7において温間嵌めを行う電動機用ロータの製造方法を発明例とし、樹脂充填工程6及び回転軸組付け工程7にそれぞれ専用の加熱装置を設けた場合を比較例として、加熱及び冷却に係る時間と消費されるエネルギーについて比較を行った。
図8には、発明例の樹脂充填工程6及び回転軸組付け工程7における、積層鉄心3の温度及び時間の変移を実線Aによって示す。尚、図8は縦軸に積層鉄心3の温度を示し、横軸に時間を示したグラフである。また、図9には、比較例の樹脂充填工程6における、積層鉄心3の温度及び時間の変移を実線Xによって示し、図10には、比較例の回転軸組付け工程7における積層鉄心3の温度及び時間の変移を実線Yによって示す。
【0042】
発明例においては、図8に示すごとく、樹脂充填工程6及び回転軸組付け工程7の2つの工程に対して、加熱及び冷却の回数が1回である。そのため、加熱時間A1及び冷却時間A2がかかることとなる。また、発明例においては、樹脂充填温度aに加熱するエネルギーが消費されることとなる。尚、冷却時間A2は、同図中に示すA2’から、回転軸組付け工程7における温間嵌めの作業時間tを除いた時間である。
【0043】
一方、比較例は、樹脂充填工程6及び回転軸組付け工程7において、それぞれ加熱及び冷却が行われる。そのため、図9に示すごとく、樹脂充填工程6において、加熱時間X1及び冷却時間X2がかかり、さらに図10に示すごとく、回転軸組付け工程7において、加熱時間Y1及び冷却時間Y2がかかる。また、比較例においては、発明例と同様の樹脂充填温度aに加熱するエネルギーが消費され、さらに温間嵌め温度bに加熱するエネルギーが消費される。尚、発明例における加熱時間A1と、比較例における樹脂充填工程6の加熱時間X1とは、略同一の時間を示し、発明例における冷却時間A2と、比較例における樹脂充填工程6の冷却時間X2とは、略同一の時間を示すものである。
【0044】
したがって、発明例においては、比較例に対して、回転軸組付け工程7における加熱時間Y1及び冷却時間Y2を短縮すると共に、温間嵌め温度bに加熱するために必要なエネルギー消費を低減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 樹脂充填装置
11 樹脂送出型
110 型本体部
111 送出機構部
112 内筒部
113 プランジャ
114 段部
12 対向型
2 ゲートプレート
22 吐出口
221 縮径部
222 突出部
23 樹脂流路
231 流入部
232 分岐部
24 鉄心位置決め部
241 位置決め凹溝部
25 装置位置決め部
3 積層鉄心
31 鉄心片
32 回転軸挿入穴
321 凸部
33 磁石挿入穴
331 開口部
34 溶融樹脂
35 回転軸
36 永久磁石
4 積層工程
5 磁石挿入工程
6 樹脂充填工程
7 回転軸組付け工程
71 回転軸保持冶具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10