(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端面及び前記第2端面の一方における前記非切削交差稜線領域(2C、2D、3C、3D)は、前記第1端面及び前記第2端面のもう一方における前記切れ刃セクションの前記コーナ切れ刃及び前記主切れ刃からなる部分の少なくとも一部の前記インサート厚さ方向裏側に延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート(1,10,11,12)。
前記複数の切れ刃セクションは、前記第1端面及び前記第2端面を貫通するように前記インサート厚さ方向に延びるように定められる第1軸線(5a)に関して回転対称性を有するように配置形成されていて、かつ、該第1軸線(5a)に直交すると共に前記周側面(4)を通過するように定められる第2軸線(5b、5c)に関して回転対称性を有するように配置形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
前記第1端面及び前記第2端面の一方における前記非切削交差稜線領域は、前記第1端面及び前記第2端面のもう一方における前記切れ刃セクションの前記主切れ刃の一部から前記コーナ切れ刃を介して前記副切れ刃の一部までの部分と前記インサート厚さ方向において隣り合う、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート(1)。
前記第1端面及び前記第2端面の一方における前記非切削交差稜線領域は、前記第1端面及び前記第2端面のもう一方における前記切れ刃セクションの前記主切れ刃の一部及び前記コーナ切れ刃と前記インサート厚さ方向において隣り合う、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート(10)。
前記第1端面及び前記第2端面の一方における前記非切削交差稜線領域は、前記第1端面及び前記第2端面のもう一方における前記切れ刃セクションの前記コーナ切れ刃のみと前記インサート厚さ方向において隣り合う、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート(11)。
少なくとも1つのインサート座(22)が形成された工具ボデー(21)を備え、該インサート座(22)に切削インサートが着脱自在に装着される、刃先交換式切削工具(20,27,28,29)において、
前記切削インサートは、請求項1から9のいずれか一項に記載された切削インサート(1,10,11,12)であり、
前記インサート座は、前記切削インサートの前記着座面に当接する底壁面を有し、
前記第1端面及び前記第2端面の一方における1つの前記切れ刃セクションを使用するように前記切削インサートを前記インサート座に取り付けるとき、該切れ刃セクションに隣り合う、該切削インサートの前記第1端面及び前記第2端面のもう一方における非切削交差稜線領域は該インサート座により支持される、
刃先交換式切削工具(20,27,28,29)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の切削インサート及び切削工具の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明の実施形態に係る切削インサートについて説明し、その後本発明の実施形態に係る切削工具を説明する。
【0017】
最初に、本発明の第1実施形態に係る切削インサート1について、
図1、
図2A〜
図2Dを参照しながら説明する。本第1実施形態の切削インサート1は、2つの対向する端面2、3と、これらの間に延在する周側面4とを備え、これらから基本的に構成されている。端面2、3は一方が第1端面であり、他方が第2端面である。切削インサート1では、端面2、3のそれぞれの略中央に開口部を有する貫通孔5が形成されている。貫通孔5は締め付けネジを挿入するために設けられ、切削インサートの厚さ方向(端面2、3をつなぐ方向)に延びる。なお、この切削インサートの厚さ方向は以下ではインサート厚さ方向と称され、貫通孔5の軸線(第1軸線)5aに平行な方向である。以下の説明では、
図1において表されている、2つの端面のうちの一方の端面2を上面と称し、2つの端面のうち他方の端面3を下面と称する。以下の説明では、上面2及び下面3の相対的位置関係に従い、「上」、「下」という用語を用いるが、これら用語は説明又は理解を容易にするべく用いられる又は定められるに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。
【0018】
上面2は略四角形形状の輪郭を有する。下面3も略四角形形状の輪郭を有し、上面2と略同一の形状を有する。上面2及び下面3の主要部は、それぞれ、取付孔5の軸線5a周りに回転対称を有して構成されている。ここでは、上下面2,3は共に略四角形形状であるので、上下面2,3の各々は軸線5aの周りに2回対称の回転対称性を有する。上面2及び下面3は、軸線5aに直交すると共に周側面を通過するように定められる第2軸線としての軸線5b又は軸線5cの周りに(2回対称性の)回転対称性を有して主に構成されている。上下面2、3が略四角形形状を有するので、周側面4は4つの側面部分4a、4bと、4つのコーナ面部分4cとを含む。4つの側面部分は第1側面部分4a、4aと第2側面部分4b、4bとからなり、第1側面部分4aは第2側面部分4bに比べて大きい。各コーナ面部分4cは隣り合う第1側面部分4aと第2側面部分4bとをつなぐ。
【0019】
ここで、上面2の平面視(
図2A)にて、交差する2つの対角線(不図示)上にある各々のコーナをコーナA、コーナB、コーナC、コーナDとする。なお、コーナA〜Dはそれぞれ対応するコーナ面部分4cと関係付けられている。コーナAとコーナBとが同じ対角線上にある一つの組であり、コーナCとコーナDとが同じ対角線上にある一つの組である。したがって、コーナA〜Dは、
図2Aにおいて時計回りに、コーナA、C、B、Dの順に配置されている。同様に、下面3の平面視(
図2C)にて、交差する2つの対角線(不図示)上にある各々のコーナをコーナE、コーナF、コーナG、コーナHとする。コーナEとコーナFとが同じ対角線上にある一つの組であり、コーナGとコーナHとが同じ対角線上にある一つの組である。したがって、コーナE〜Hは、
図2Cにおいて時計回りに、コーナE、G、F、Hの順に配置されている。切削インサート1において、上面2のコーナAと上下方向(インサート厚さ方向)に対向する位置には、つまりコーナAの裏側(すなわち、軸線5a方向に隣り合う位置)には、下面3のコーナGがある。上面2のコーナBと上下方向に対向する位置には、つまりコーナBの裏側には、下面3のコーナHがある。上面2のコーナCと上下方向に対向する位置には、つまりコーナCの裏側には、下面3のコーナEがある。上面2のコーナDと上下方向に対向する位置には、つまりコーナDの裏側には、下面3のコーナFがある。
【0020】
本実施形態においては、上面2と周側面4との交差稜線部の一部に切れ刃(切れ刃セクション)2A、2Bが形成されている。まず、コーナAに位置する交差稜線部には、コーナ切れ刃6が形成されている。コーナ切れ刃6は、上面2の平面視において、コーナAの頂点を含む一定の範囲にわたって湾曲して延びている切れ刃である。コーナ切れ刃6の一端には、コーナ切れ刃6と接続するように主切れ刃7が形成されている。コーナ切れ刃6の他端には、コーナ切れ刃6と接続するように副切れ刃8が形成されている。同様に、コーナAの対角線上にあるコーナBにも、コーナ切れ刃6と、主切れ刃7と、副切れ刃8とが形成されている。このように、上面2において交差する2つの対角線のうち、一方の対角線上にある一組のコーナA及びコーナBのみに切れ刃セクション2A、2Bが形成され、つまりコーナ切れ刃6が形成されている。なお、ここでは、主切れ刃7は副切れ刃8よりも長い。このようにコーナ切れ刃6、主切れ刃7及び副切れ刃8は、1つの切れ刃セクションを構成するように連続し、切れ刃セクション2A、2Bの各々は、コーナ切れ刃6、主切れ刃7及び副切れ刃8から構成される。なお、切れ刃セクション2A、2Bは、取付孔5の軸線5a周りに2回対称の回転対称性を有するように配置されている。
【0021】
ここで、コーナ切れ刃6、主切れ刃7、副切れ刃8は、上面2の着座面9に比べて、インサート厚さ方向につまり軸線5a方向に突出するように形成されている。着座面9とは、上面2上又は下面3上に形成されている、後述される工具ボデー21に設けられたインサート座22の底壁面23と接触する当接面のことを意味する。本実施形態のように両面使用が可能な切削インサートでは上面2及び下面3をともに取付面として使用するので、上面2及び下面3の各々に当接部分としてこのような着座面9が設けられている。なお、両面における着座面9はそれぞれ取付孔5の周囲に主に延在している。
【0022】
また、切削インサートの平面視(
図2A)にてコーナ切れ刃6の頂点にあたる部分が第1軸線5a方向において着座面9から最も離れるように、コーナ切れ刃6及び切れ刃セクションは形成されている。ここでは、切削インサートの平面視にてコーナ切れ刃6の頂点にあたる部分は、図示しないが、
図2AにおいてコーナA、Bをつなぐように第1軸線5aを通過するように定められる線上に位置するが、この線からずれてもよい。例えば、コーナ切れ刃6の頂点にあたる部分は、平面視において当該コーナの二等分線上にあってもよい。
【0023】
そして、コーナ切れ刃6の頂点部分から主切れ刃7側又は副切れ刃8側に離間するにつれて、主切れ刃7又は副切れ刃8は第1軸線5a方向において着座面9に近づき、つまり着座面9に対する切れ刃の高さは漸次低くなる。コーナ切れ刃6から一定の距離離れた箇所において主切れ刃7及び副切れ刃8はそれぞれ終端する。コーナ切れ刃6から主切れ刃7側又は副切れ刃8側にそれぞれ一定距離の位置において、インサート厚さ方向に突出した主切れ刃7及び副切れ刃8がなくなり、それらに隣り合う交差稜線部にまで着座面9が延長する。本実施形態においては、上面2において、主切れ刃7は、一方のコーナA又はBから始まって他方のコーナD又はCのコーナ領域の手前側端部で終端している。すなわち、着座面9を基準に軸線5a方向に突出した主切れ刃7は、一方のコーナA又はBと他方のコーナD又はCとの間の途中でなくなっている。また、副切れ刃8は、一方のコーナA又はBから始まって他方のコーナC又はDのコーナ領域の手前側端部で終端している。すなわち、着座面9を基準に軸線5a方向に突出した副切れ刃8は、一方のコーナA又はBと他方のコーナC又はDとの間の途中でなくなっている。上で述べたように、着座面9は、切れ刃セクション2A、2Bの間にまで延在し、周側面4との間に交差稜線部9a、9bを形成する。なお、交差稜線部9a、9bは、切れ刃として構成されていないので、非切削交差稜線部と称され得る。この非切削交差稜線部を含む上面2の外縁側領域を非切削交差稜線領域2C、2Dと称する。
【0024】
さらに、下面3においても、上面2と同様に、下面3と周側面4との交差稜線部の一部に切れ刃(切れ刃セクション)3A、3Bが形成されている。2つの切れ刃セクション3A、3Bは取付孔5の軸線5A周りに2回対称の回転対称性を有するように配置されている。各切れ刃セクション3A、3Bは、上面2の各切れ刃セクション2A、2Bと同じ構成を有し、コーナ切れ刃6、主切れ刃7及び副切れ刃8を備えて形成されている。そして、上面2の切れ刃セクション2A、2Bは、下面3の切れ刃セクション3A、3Bと、軸線5B周りに、かつ、軸線5C周りに(2回対称の)回転対称性を有するように関係付けられている。
【0025】
具体的には、下面3において、コーナEに位置する交差稜線部にコーナ切れ刃6が形成されている。コーナ切れ刃6は、切削インサートの平面視(
図2C)において、コーナEの頂点から一定の範囲にわたって湾曲して延びている切れ刃である。コーナ切れ刃6の一端には、コーナ切れ刃6と接続するように主切れ刃7が形成されている。一方、コーナ切れ刃6の他端には、コーナ切れ刃6と接続するように副切れ刃8が形成されている。また、コーナEの対角線上にあるコーナFにも、同様にしてコーナ切れ刃6、主切れ刃7、副切れ刃8が形成されている。すなわち、下面3において互いに交差した2つの対角線のうち、一方の対角線上にあるコーナのみに切れ刃セクションつまりコーナ切れ刃6が形成されている。このとき、主切れ刃7は副切れ刃8よりも長い。下面3のコーナ切れ刃6、主切れ刃7及び副切れ刃8も、上面2の各々の切れ刃と同様に、着座面9を基準にして、インサート厚さ方向に突出している。そして、主切れ刃7又は副切れ刃8は、コーナ切れ刃6の頂点部分から離間するにつれ軸線5a方向において着座面9に近づき、コーナ切れ刃6から一定の距離においてなくなる(すなわち、着座面9からの突出部分が存在しなくなり、交差稜線部の高さは着座面9と同じになる)。また、上面2と同様に、着座面9を基準に軸線5a方向に突出した主切れ刃7は、一方のコーナE又はFと他方のコーナH又はGとの間の途中でなくなっており、着座面9を基準に軸線5a方向に突出した副切れ刃8は、一方のコーナE又はFと他方のコーナG又はHとの間の途中でなくなっている。そして、下面3においても、着座面9は、切れ刃セクション3A、3Bの間にまで延在し、周側面4との間に交差稜線部(非切削交差稜線部)9c、9dを形成する。したがって、下面3においても、上面2と同様に、隣り合う切れ刃セクション3A、3Bの間に延在する非切削交差稜線領域3C、3Dが延在する。
【0026】
このとき、上面2のコーナAに対してインサート厚さ方向つまり第1軸線5A方向に周側面4を介して隣り合っている下面3側のコーナ(すなわち、
図2Aにおいて上面2のコーナAの直下にある下面3側のコーナ)は、突出した切れ刃が形成されていないコーナGである。上面2のコーナB側についても同様のことが言え、上面2のコーナBとインサート厚さ方向に周側面4を介して隣り合っている下面3側のコーナ(すなわち、
図2Aにおいて上面2のコーナBの直下にある下面3側のコーナ)は、着座面9から突出した切れ刃が形成されていないコーナHである。すなわち、上面2において一つの対角線上に、コーナ切れ刃6が形成されているコーナA及びBが配されているとき、下面3においては、上面2におけるその対角線と平面視にて交差する方向に伸長している対角線上に、コーナ切れ刃6が形成されているコーナE及びFが配されている。したがって、上面2のコーナAに対向する下面3のコーナGには下面3の着座面9が連続し、上面2のコーナBに対向する下面3のコーナHには下面3の着座面9が連続し、下面3のコーナEに対向する上面2のコーナCには上面2の着座面9が連続し、下面3のコーナFに対向する上面2のコーナDには上面2の着座面9が連続する。
【0027】
したがって、上下面の一方の1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部からコーナ切れ刃を介して副切れ刃の一部までの部分は、その(軸線5a方向)裏側に、非切削交差稜線領域を有する。ここで、上面2の1つのコーナBに着目する。コーナBに関連した切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6から離れた主切れ刃7の1つのポイントpを通るように軸線5aに平行な線αを
図2Bに描く。同様に、切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6から離れた副切れ刃8の1つのポイントqを通るように軸線5aに平行な線βを
図2Dに描く。ポイントpを通る線αは
図2Bにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの端部rに達する。また、ポイントqを通る線βは
図2Dにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの別の端部sに達する。他の切れ刃セクションにおいても同様である。当該説明から明らかなように、切削インサート1では、上下面の一方の1つの非切削交差稜線領域の(軸線5a方向)裏側に、上下面のもう一方の1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部からコーナ切れ刃を介して副切れ刃の一部までの連続した部分が延在する。
【0028】
なお、各切れ刃セクションは、軸線5a方向に突出するように形成され、特にここでは軸線5aの方向にのみ突出するように形成されている。そして、
図1〜
図2Dから明らかなように、上面2及び下面3には各切れ刃セクションに対するすくい面が形成され、周側面4には逃げ面が形成されている。したがって、各切れ刃セクションが軸線5a方向に突出することに伴い、すくい面2e、3eはそれぞれ、軸線5aに直交するように定められる平面に対して傾くように延在し、正のすくい角の形成に寄与するように形成されている。また、本実施形態では、着座面9は平坦面であり、非切削交差稜線領域も着座面9の他の部分と同様に平坦な面として形成されている。しかし、着座面9及び/又は非切削交差稜線領域は平坦な面であることに限定されず、種々の形状を有してもよい。後述されるインサート座は、着座面や非切削交差稜線領域の形状に応じて設計される。
【0029】
以上述べたように、本第1実施形態の切削インサートでは、主切れ刃7は上下面2,3の各々と周側面4の第1側面部分4aとの間の交差稜線部の一部、具体的には約過半の部分に沿って延在する。また副切れ刃8は上下面2,3の各々と周側面4の第2側面部分4bとの間の交差稜線部の一部、具体的には約過半の部分に沿って延在する。そして、上下面2、3の一方における非切削交差稜線部9a、9b、9c、9dは、それぞれ、上下面2、3のもう一方における切れ刃セクション3A、3B、2A、2Bの主切れ刃7の一部からコーナ切れ刃6を介して副切れ刃8の一部までの部分と関係付けられている。したがって、切削インサート1では、各切れ刃セクションの主切れ刃の一部、コーナ切れ刃、副切れ刃の一部の第1軸線方向裏側に、非切削交差稜線部及び非切削交差稜線領域があり、そこまで着座面9が延在している。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態の切削インサート10について、
図3、
図4A〜
図4Dを参照しながら説明する。本第2実施形態の切削インサート10は、基本的に第1実施形態の切削インサート1と同様の構成を有しているので、異なる構成部分についてのみ以下で説明する。また、第1実施形態の切削インサート1と同様の、切削インサート10の構成(要素)については同様の用語又は参照番号を用いる。
【0031】
本第2実施形態の切削インサート10においては、上面2と周側面4との交差稜線部上又は下面3と周側面4との交差稜線部上に形成されている切れ刃セクションの範囲が第1実施形態の切削インサート1とは異なっている。具体的には、上面2又は下面3において、コーナA、B、E又はFのコーナ切れ刃6に接続している副切れ刃8が形成されている範囲が、第1実施形態とは異なっている。副切れ刃8が一方のコーナA、B、E又はFから他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域の手前側端部まで途切れることなく連続的に形成されている。第1実施形態の切削インサート1では、副切れ刃8は他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域に至る前に消滅していたが、本実施形態では他方のコーナC、D,G又はHのコーナ領域の端部にまで副切れ刃8が突出して形成されている。
【0032】
したがって、1つの非切削交差稜線部は関連する1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部とコーナ切れ刃のみと隣り合う。ここで、上面2の1つのコーナBに着目する。コーナBに関連した切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6から離れた主切れ刃の1つのポイントpを通るように軸線5aに平行な線αを
図4Bに描く。同様に、切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6の副切れ刃側の端部ポイントqを通るように軸線5aに平行な線βを
図4Dに描く。ポイントpを通る線αは
図4Bにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの端部rに達する。また、ポイントqを通る線βは
図4Dにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの別の端部sに達する。他の切れ刃セクションにおいても同様である。したがって、切削インサート10では、上下面の一方の1つの非切削交差稜線領域の(軸線5a方向)裏側に、上下面のもう一方の1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部からコーナ切れ刃までの連続した部分が延在する。
【0033】
以上述べたように、本第2実施形態の切削インサート10では、副切れ刃8は上下面2,3の各々と周側面4の第2側面部分4bとの間の交差稜線部の実質的に全体に亘って延在する。したがって、切削インサート10では、各切れ刃セクションの主切れ刃の一部及びコーナ切れ刃の第1軸線方向裏側にのみ、非切削交差稜線部9a、9b、9c、9d及び非切削交差稜線領域2A,2B、3C、3Dがある。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態に係る切削インサート11について、
図5、
図6A〜
図6Dを参照しながら説明する。本実施形態の切削インサート11も、基本的には第1実施形態の切削インサート1と同様の構成を有しているので、異なる構成部分についてのみ以下で説明する。また、第1実施形態の切削インサート1と同様の、切削インサート11の構成(要素)については同様の用語又は参照番号を用いる。
【0035】
本第3実施形態の切削インサート11においては、上面2と周側面4との交差稜線部上又は下面3と周側面4との交差稜線上に形成されている切れ刃セクションの範囲が第1実施形態の切削インサート1とは異なっている。具体的には、上面2又は下面3において、コーナA、B、E又はFのコーナ切れ刃6に接続している主切れ刃7及び副切れ刃8が形成されている範囲の点で、切削インサート11は第1実施形態1の切削インサート1と異なっている。主切れ刃7は一方のコーナA、B、E又はFから他方のコーナD、C、H又はGのコーナ領域の手前側端部まで途切れることなく連続的に形成されている。つまり、他方のコーナD、C、H又はGのコーナ領域の端部まで主切れ刃7が突出して形成されている。さらに、副切れ刃8は一方のコーナA、B、E又はFから他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域の手前側端部まで、途切れることなく連続的に形成されている。つまり、他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域の端部まで副切れ刃8が突出して形成されている。このように、本実施形態においては、上下面2,3と周側面4との交差稜線部のうち、切れ刃が形成されていない部分は、上面2ではコーナC及びコーナDのみであり、下面3ではコーナG及びHのみである。
【0036】
したがって、1つの非切削交差稜線部は関連する1つの切れ刃セクションのコーナ切れ刃のみと隣り合う。ここで、上面2の1つのコーナBに着目する。コーナBに関連した切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6の主切れ刃側の端部ポイントpを通るように軸線5aに平行な線αを
図6Bに描く。同様に、切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6の副切れ刃側の端部ポイントqを通るように軸線5aに平行な線βを
図6Dに描く。ポイントpを通る線αは
図6Bにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの端部rに達する。また、ポイントqを通る線βは
図6Dにおいて下面3のコーナH周囲に延在する非切削交差稜線領域3Dの別の端部sに達する。他の切れ刃セクションにおいても同様である。したがって、切削インサート11では、上下面の一方の1つの非切削交差稜線領域の(軸線5a方向)裏側に、上下面のもう一方の1つの切れ刃セクションのコーナ切れ刃が延在する。
【0037】
以上述べたように、本第3実施形態の切削インサート11では、主切れ刃7は上下面2,3の各々と周側面4の第1側面部分4aとの間の交差稜線部の実質的に全体に亘って延在し、副切れ刃8は上下面2,3の各々と周側面4の第2側面部分4bとの間の交差稜線部の実質的に全体に亘って延在する。したがって、切削インサート10では、各切れ刃セクションのコーナ切れ刃の第1軸線方向裏側にのみ、非切削交差稜線部9a、9b、9c、9d及び非切削交差稜線領域2A,2B、3C、3Dがある。
【0038】
次に、本発明の第4実施形態の切削インサート12について、
図7、
図8A〜
図8Dを参照しながら説明する。本第4実施形態の切削インサート12も、基本的には第1実施形態の切削インサート1と同様の構成を有しているので、異なる構成部分についてのみ説明する。また、第1実施形態の切削インサート1と同様の、切削インサート12の構成(要素)については同様の用語又は参照番号を用いる。
【0039】
本第4実施形態の切削インサート12においては、上面2と周側面4との交差稜線部上又は下面3と周側面4との交差稜線部上に形成されている切れ刃セクションの範囲が第1実施形態の切削インサートとは異なっている。具体的には、コーナA、B、E又はFのコーナ切れ刃6に接続している副切れ刃8が形成されている範囲と、コーナC、D、G又はHにもコーナ切れ刃6Bが形成されている点とにより、切削インサート12は、第1実施形態の切削インサート1と大きく異なっている。副切れ刃8が一方のコーナA、B、E又はFから他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域の端部まで、途切れることなく連続的に形成されている。つまり、他方のコーナC、D、G又はHのコーナ領域の端部まで副切れ刃8が突出して形成されている。さらに、第1実施形態の切削インサート1とは異なり、上面2のコーナC及びDと下面3のコーナG及びHにも、突出するコーナ切れ刃(第2コーナ切れ刃)6Bが形成されている。このように、本実施形態の切削インサート12においては、上下面2,3全てのコーナにコーナ切れ刃6、6Bが形成されており、切れ刃が形成されていない部分は、上下面2,3それぞれの主切れ刃7が部分的に形成されている4つの交差稜線部(第1側面部分4aと上下面2,3の各々との交差稜線部)の一部分のみとなっている。
【0040】
したがって、1つの非切削交差稜線部は関連する1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部のみと隣り合う。ここで、上面2の1つのコーナBに着目する。コーナBに関連した切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6から離れた主切れ刃の1つのポイントpを通るように軸線5aに平行な線αを
図8Bに描く。同様に、切れ刃セクション2Bにおける、コーナ切れ刃6の主切れ刃側の端部ポイントq(ポイントpよりコーナ切れ刃側のポイント)を通るように軸線5aに平行な線βを
図8Bに描く。ポイントpを通る線αは
図8Bにおいて下面3のコーナH近傍に延在する非切削交差稜線領域3Dの端部rに達する。また、ポイントqを通る線βは
図8Bにおいて下面3のコーナH近傍に延在する非切削交差稜線領域3Dの別の端部sに達する。他の切れ刃セクションにおいても同様である。したがって、切削インサート12では、上下面の一方の1つの非切削交差稜線領域の(軸線5a方向)裏側に、上下面のもう一方の1つの切れ刃セクションの主切れ刃の一部が延在する。
【0041】
以上述べたように、本第4実施形態の切削インサート12では、主切れ刃7は上下面2,3の各々と周側面4の第1側面部分4aとの間の交差稜線部の一部に沿って延在し、副切れ刃8は上下面2,3の各々と周側面4の第2側面部分4bとの間の交差稜線部の実質的に全体に亘って延在する。さらに各切れ刃セクションは第1コーナ切れ刃であるコーナ切れ刃6に加えて、副切れ刃8につながるさらなる第2コーナ切れ刃6Bを含む。したがって、切削インサート12では、各切れ刃セクションの主切れ刃の一部の第1軸線方向裏側にのみ、非切削交差稜線部9a、9b、9c、9d及び非切削交差稜線領域2A,2B、3C、3Dがある。
【0042】
以上説明した本発明の第1から第4実施形態の切削インサート1,10,11,12において重要なことは、上面2及び下面3の両方に切れ刃が形成された切削インサートにおいて、上面2又は下面3の一方の面と周側面4との交差稜線部上に形成されているコーナ切れ刃6又は主切れ刃7のいずれか又は両方に対してインサート厚さ方向に隣り合っている他方の面の交差稜線部には、着座面9から突出する切れ刃が形成されていない部分すなわち非切削交差稜線部(非切削交差稜線領域)が少なくとも1か所設けられているということである。すなわち、両面使いの切削インサートにおいて、上面2及び下面3に形成されたコーナ切れ刃6及び主切れ刃7のいずれか又は両方の直下(又は裏側)には、切れ刃が形成されていない交差稜線部が少なくとも1か所設けられている。この構成が採用されているならば、上面2及び下面3の形状は略四角形に限定されることはない。例えば、略三角形や略五角形といった他の略多角形の端面を有する切削インサートに本発明は適用することも可能である。なお、これら第1から第4実施形態では、非切削交差稜線領域は着座面9と同一面上にある。しかし、非切削交差稜線領域は、着座面9と同一面上にあることに限定されず、種々の形状を有することができ、好ましくは着座面9の一部として機能するように構成されている。
【0043】
本発明の切削インサートは、好ましくは、超硬合金、サーメット、セラミック、又はダイヤモンドあるいは立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体といった硬質材料、又はコーティングされたそれらの硬質材料から作られる。
【0044】
これより、本発明の実施形態に係る刃先交換式回転切削工具について説明する。上記説明した第1実施形態の切削インサート1を着脱自在に装着する、第1実施形態の刃先交換式回転切削工具20が
図9〜
図13Bに基づいて説明される。また第2実施形態の切削インサート10が着脱自在に装着された第2実施形態の刃先交換式回転切削工具27が
図14に表され、第3実施形態の切削インサート11が着脱自在に装着された第3実施形態の刃先交換式回転切削工具28が
図15に表され、第4実施形態の切削インサート12が着脱自在に装着された第4実施形態の刃先交換式回転切削工具29が
図16に表されている。
【0045】
刃先交換式回転切削工具20は、工具ボデー21を備え、そこに第1実施形態の切削インサート1が複数、具体的には4つ装着されている。工具ボデー21は、略円筒の全体形状を有しており、その先端側21Aから基端側21Bに延びる回転軸線21Cを有し、その先端面には外周側から切り欠くようにして複数個、具体的には4つインサート座22が設けられている。インサート座22は、工具回転方向K前方を向いた略四角形状の底壁面23と、その底壁面23に対して略直角に配置された2つの側壁面24a、24bと、から基本的に構成されている。底壁面23の略中央部には固定ネジを挿入するための取付ネジ穴25が設けられている。ただし、ここでは切削インサートはネジを用いてインサート座に固定されるが、それ以外の機械的手段によって固定されてもよく、この場合貫通孔5及び取付ネジ穴25は省略されることも可能である。切削インサート1がインサート座22上に配置されたときに、上面2又は下面3の着座面9に比べて軸線5a方向に突出する切れ刃がインサート座22の底壁面23と接触しないように、底壁面23の周縁部にはぬすみ部が設けられている(
図10参照)。工具ボデー21の底壁面23の先端側及び外周側の各縁部及びその近傍には、切削インサート1の非切削交差稜線部及び非切削交差稜線領域に適合した形状を有する支持当接部23aが形成されている。この支持当接部23aは明確に底壁面23の他の部分から識別可能に構成されてもよいが、ここではそれと一体的に融合している。
【0046】
また、本実施形態において、インサート座22は、工具ボデー21の外周を均等に4分割するように定められた4箇所に設けられているが、これに限定されることはない。すなわち、インサート座22の数は、例えば1つ、2つ、3つ、5つなど、4つより少なく又は多くてもよい。複数のインサート座22は外周を不均等に分割するように定められた位置に配置されていてもよい。それぞれのインサート座22の工具回転方向K前方には、切りくずを排出するための切りくずポケット26が設けられている。
【0047】
第1実施形態の切削インサート1は、その上面2又は下面3のいずれかがインサート座22の底壁面23と対向するようにインサート座22に配置される。すなわち、上面2に形成されている切れ刃を切削に用いるときには下面3が底壁面23と対向するように切削インサートは配置される。これに対して、下面3に形成されている切れ刃を切削に用いるときには上面2が底壁面23と対向するように切削インサートは配置される。前述したように突出した切れ刃がインサート座22と接触しない構造をインサート座22が採用しているため、使用していない切れ刃、特に未使用の切れ刃がインサート座22の接触により傷つくおそれはない。
【0048】
当然ながら、第2から第4実施形態の切削インサート10,11,12を装着する回転切削工具27、28、29の各場合においても、インサート座22の底壁面23はそれぞれの実施形態の切削インサート10,11,12の着座面9に合わせた形状を有している。第2から第4実施形態の回転切削工具でも、工具ボデー21の底壁面23の先端側及び/又は外周側の各縁部及びその近傍には、切削インサートの非切削交差稜線部及び非切削交差稜線領域に適合した形状を有する支持当接部23aが形成されている。第2から第4実施形態の回転切削工具でも、この支持当接部23aは、明確に底壁面23の他の部分から識別可能に構成されてもよいが、ここではそれと一体的に融合している。また、第2から第4実施形態の回転切削工具のインサート座も、使用しない切れ刃とインサート座との干渉を防ぎそれを保護するためにぬすみ部を備える。それ故、使用しない切れ刃がインサート座との衝突又は干渉で傷つくおそれはない。
【0049】
以下、本発明の切削インサート1,10,11,12とそれらを装着した刃先交換式回転切削工具21,27,28,29の作用・効果について説明する。
【0050】
まず、本実施形態に対する比較例としての切削インサート100及び切削工具110を
図17A〜
図21Bに基づいて説明する。なお、
図21Bにおいて紙面裏側に位置する切削インサートは省略されている。切削インサート100は、それぞれ略四角形形状を有する上面101及び下面102と、それらを接続する周側面103と、から基本的に構成されている。上面101において、対角にある1組のコーナにはそれぞれコーナ切れ刃104が形成され、コーナから延在する長手稜線部に主切れ刃105が形成され、長手稜線部と異なる方向にコーナから延在する短手稜線部に副切れ刃106が形成されている。下面102においても同様にコーナ切れ刃104、主切れ刃105、副切れ刃106が形成されている。そして、切削インサート100では、下面102の対角にあるコーナ切れ刃104間を結ぶ対角線は、上面101のコーナ切れ刃104間を結んだ対角線と交差するように、4つのコーナ切れ刃は上下面に配置されている。したがって、この切削インサート100では、その厚さ方向において上面のコーナ切れ刃と下面のコーナ切れ刃とが並ばないように、各々が切削に使用可能である4つのコーナは配置されている。
【0051】
また、切削インサート100では、
図17A〜
図17Dに示されているように、インサート座の底壁面と接触する上面101及び下面102の各々において、着座面107は、その面の中央部付近に形成され、当該面の縁部から全体的に離れて設けられている。したがって、この切削インサート100では、インサート座の底壁面と接触する着座面107が上面101又は下面102と周側面103との交差稜線部を離れてインサート内方に設けられているために、この切削インサート100は上下面の取付孔周囲の中央部分でのみインサート座の底壁面によって支持される。よって、
図19、
図20B、
図21Bの各断面図に示されているように、切削インサートの取付孔周囲の中央部分においてのみ切削インサートはインサート座の底壁面により支持されるので、切削インサート100及び切削工具110では、切れ刃に大きな力がかかるとき、切れ刃の搖動に起因するびびりやチッピングといった問題が生じる可能性がある。
【0052】
一方、本発明の切削インサート1,10,11,12は、前述したように、上面2又は下面3の一方の面の交差稜線部上に形成されているコーナ切れ刃6及び主切れ刃7のいずれか又は両方に対してインサート厚さ方向に隣り合っている他方の面の交差稜線部には、切れ刃が形成されていない部分つまり非切削交差稜線部が少なくとも1か所設けられている。そしてこの非切削交差稜線部は着座面9と周側面4との間に形成されている。このような構成を備えることによって、切削において大きな負荷がかかるコーナ切れ刃6又は主切れ刃7の直下において切削インサートをインサート座でしっかりと支持することができる。したがって、切れ刃全体にかかる切削力を効果的に受け止めることが可能となる。このため、切削インサートの固定性が高められ、切削力を受けることに起因する切れ刃の搖動が顕著に抑制される。したがって、びびりやチッピングの発生が大きく低減され、切削インサートの寿命の向上や被削物の加工表面品位の向上といった効果が得られる。
【0053】
上面2又は下面3と周側面4との交差稜線部のうち、着座面につながる非切削交差稜線部が形成されている領域に応じて、さらに独特の効果が生じ得る。以下、第1実施形態の切削インサート1から第4実施形態の切削インサート12まで、それぞれの形態における効果について説明する。
【0054】
第1実施形態の切削インサート1では、
図9、10に示されているように、コーナAが切削に関与しているとき、その直下においてはコーナG全領域とその両端に接続する主切れ刃7側及び副切れ刃8側の交差稜線部の一部までが接触面部分つまり非切削交差稜線領域となっている。
図11AのXIB−XIB線に沿った
図11Bの断面図では、コーナAにおけるコーナ切れ刃6の直下の非切削交差稜線領域3Cがインサート座22の底壁面23の支持当接部23aにしっかりと支持されている様子が示されている。また、
図12AのXIIB−XIIB線に沿った
図12Bの断面図では、主切れ刃7の直下の非切削交差稜線領域がインサート座22の底壁面23の支持当接部23aにしっかりと支持されている様子が示されている。また、
図13AのXIIIB−XIIIB線に沿った
図13Bの断面図では、副切れ刃8の直下の非切削交差稜線領域がインサート座22の底壁面23の支持当接部23aにしっかりと支持されている様子が示されている。このように、コーナG及びその周辺の非切削交差稜線領域が、切削に関与する切れ刃セクション(コーナ切れ刃6、主切れ刃7、副切れ刃8)の直下をカバーするほど広範に着座面9と一体的に形成されているため、切れ刃全体をその裏側からより確実に支持することが可能である。すなわち、本第1実施形態では、切削力がかかるコーナ切れ刃6、主切れ刃7、副切れ刃8のほぼ全域に対応するインサート裏側の非切削交差稜線領域がインサート座22の底壁面23と当接する接触部又は接触面となっているため、上記効果を最大に達成することができる。
【0055】
また、ここでは切削コーナとしてコーナAに設けられたコーナ切れ刃が使用される場合を説明したが、当然ながら、それ以外のコーナの切れ刃セクションが切削に使用されるときにおいても同様の効果を達成することができる。このことは、以下に説明する第2から第4の実施形態においても同様である。
【0056】
第2実施形態の切削インサート10では、
図14に示されているように、コーナAが切削に関与するとき、その直下において、コーナG全領域とその一端に接続する第1側面部分4aと下面3との交差稜線部の一部までが非切削交差稜線領域となっている。すなわち、本第2実施形態は、切削に関与する切れ刃のうちコーナ切れ刃6と主切れ刃7にかかる切削力を主にその直下の支持で受けとめる構成を採用する。そのため、副切れ刃8は第2側面部分4bの縁部全体に亘って延在し、コーナAからコーナCまで連続して形成されている。通常、切れ刃として、コーナ切れ刃6、主切れ刃7、副切れ刃8を切削に使用する転削加工において、切削力を相対的に強く受けるのは、応力が集中しやすいコーナ切れ刃6及び主切れ刃7である。したがって、コーナ切れ刃6と主切れ刃7の直下を重点的に支持する構成を採用することでも、十分に切削インサート10のびびりやチッピングを抑制する効果を得ることが可能である。一方、本第2実施形態の切削インサートでは、上記第1実施形態の切削インサートに比べて、副切れ刃7を長くできるため、より高能率な加工を行うことができるという利点がある。
【0057】
第3実施形態の切削インサート11では、
図15に示されているように、コーナAが切削に関与しているとき、その直下において、コーナG領域のみがインサート座に接触する接触面部分つまり非切削交差稜線領域となっている。そのため、主切れ刃7及び副切れ刃8はそれぞれ対応する側面部分4a、4bの縁部の全長に亘って延在し、コーナAからコーナD及びCまで連続して形成されている。コーナ切れ刃6は主切れ刃7にも副切れ刃8にも接続する先端部に位置するため、コーナ切れ刃6の直下に非切削交差稜線部を含む着座面つまり非切削交差稜線領域があることで、主切れ刃7及び副切れ刃8の両方向においても使用切れ刃の着座面からのオーバーハング量が大幅に抑制され、それのみで十分に切削インサート11のびびりやチッピングを大きく抑制する効果を得ることが可能である。さらに、本実施形態の切削インサート11では、主切れ刃6及び副切れ刃7がそれぞれ側面部分の縁部全体に沿って延在するため、第1及び第2実施形態の切削インサート1,10よりも高能率な加工を行うことができるという利点がある。
【0058】
第4実施形態の切削インサート12では、
図16に示されているように、コーナAの切れ刃が切削に関与しているとき、その直下において、コーナGの一端に接続する第1側面部分4aの縁部つまり交差稜線部の一部のみが非切削交差稜線部となっている。すなわち、本第4実施形態は、切削に関与する切れ刃のうち主切れ刃7にかかる切削力を重点的に直下で受けとめることができるように上記構成を採用する。そのため、副切れ刃8は第2側面部分4bの全体に亘って延在し、コーナAからコーナCまで連続して形成されている。前述したように、切削力を強く受けるのはコーナ切れ刃6と主切れ刃7であるため、主切れ刃7の直下のみに非切削交差稜線領域がある、つまり支持当接面があることでも、切削力の大部分を適切に受けることできる。そのため、十分に切削インサート12のびびりやチッピングを抑制する効果を得ることが可能である。一方、本実施形態では、副切れ刃8は第2側面部分4bの縁部全体に亘って延在するため、第1実施形態の切削インサート1よりも高能率な加工を行うことができるという利点がある。
【0059】
さらに、本発明の切削インサート1,10,11,12のそれぞれにおいては、切れ刃が着座面9を基準にそれよりもインサート厚さ方向に突出するように形成されている。そのため、大きなすくい角を容易に確保することができ、結果として、切削力を大きく減少させることが可能である。また、切りくずが強く拘束されるような壁部が上下面に存在しないため、切りくずをスムーズに排出することができ、さらに切削力を減少させることが可能となっている。このように切削力を大幅に低下させることによって、切削インサートのびびりやチッピングがより好適に抑制される。したがって、本発明では、切れ刃を着座面9から突出するように形成することによって得られるびびり抑制効果と、前述した切れ刃を少なくとも部分的に直下で支持することによって得られるびびり抑制効果と、が相乗的に働くことによって、比較例と比較して顕著に効果的なびびり及びチッピング抑制効果を発揮することができるのである。
【0060】
本発明の切削インサートは、転削用の回転切削工具(フライスやエンドミル)のみに限られず、旋削用の切削工具(バイト)や穴あけ用の回転切削工具(ドリル)においても使用することが可能である。より一般的に言えば、上下面ともに切削に使用する切削インサートであるならば、どのような用途のものにも本発明は適用することが可能である。
【0061】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はそれら実施形態に限定されず、種々の変更が可能であり、本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、置換、変更が可能である。