特許第5939386号(P5939386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939386
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】導電性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20160609BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20160609BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160609BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20160609BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160609BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20160609BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09D11/52
   C09D11/03
   H01B1/22 Z
   H01B5/14 B
   B22F1/00 K
   B22F1/02 B
   H05K1/09 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-92669(P2012-92669)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221058(P2013-221058A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】川村 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】馬越 英明
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−119682(JP,A)
【文献】 特開2010−109334(JP,A)
【文献】 特開2005−248061(JP,A)
【文献】 特開2011−256382(JP,A)
【文献】 特開2008−169242(JP,A)
【文献】 特開2007−332299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/52
B22F 1/00
B22F 1/02
C09D 11/03
H01B 1/22
H01B 5/14
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と、
官能基を有する化合物(B)を含有し、表面張力が29mN/m以下であることを特徴とする導電性インク組成物であって
官能基を有する化合物(B)がアミノ基、イソシアネート基、シアノ基、及びメルカプト基のいずれかの官能基を有する化合物から選択される1種であり、
官能基を有する化合物(B)が、組成物(A)100重量部に対して、4〜8重量部であり、
組成物(A)と官能基を有する化合物(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値が0〜1.7(cal/cm1/2の範囲である。
【請求項2】
前記導電性微粒子(a−1)の全体重量に対して、1nm以上100nm未満の導電性微粒子が50%重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性インク組成物。
【請求項3】
前記導電性微粒子(a−1)が、銀またはその合金である請求項1又は2に記載の導電性インク組成物。
【請求項4】
請求項1〜に記載の導電性インク組成物を用いて形成したフレキシブル回路基板、タッチパネル用基板、又は表示装置用基板用の導電性回路パターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク組成物に関し、より詳しくはPETなどのポリマーフィルム基板、ITOなどの透明導電膜基板上へ導電性パターンを形成する際に、基板の種類や表面状態を問わず高い基板密着性と低い比抵抗を有するパターンの大量生産に適した導電性インク組成物、および当該導電性インク組成物を用いて作製された電子部品実装体、電気回路配線体、電磁波吸収体、光反射体などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器類の中でも携帯情報端末の普及が著しいが、高機能化に伴い機器のサイズの巨大化により重量が増加する傾向にある。この為、市場からは携帯情報端末の軽量化が強く要望されている。また、軽量化および意匠性から携帯情報端末の薄厚化にともなって、ディスプレイやセンサーなどに用いられるガラスが落下時に破損するなど、耐久性面で課題となっている。これらを解決する手段として、携帯情報端末を構成する部品の見直しなどにより、耐衝撃性の高い材料の採用が進んでいるが、根本的な解決には至っていない。そこで、携帯情報端末を構成する材料のうち、従来のプリント基板やガラス基板を柔軟性に優れ、軽量なポリマーフィルムなどへの転換が進められている。
【0003】
携帯情報端末にポリマーフィルム基板を用いる為には、ポリマーフィルム表面上に電気配線を形成することが必要である。ポリマーフィルム表面上に形成される電気配線パターンは、高導電性と基板への密着性、並びに柔軟性に加え、精細な回路パターンを形成できることが要求される。
【0004】
ポリマーフィルム基板上に導電性回路パターンを形成する方法としてめっき・無電解めっき法、スパッタリングなどの蒸着法が挙げられる。しかしながら、めっき・無電解めっき法は溶媒を大量に使用するため、廃液の処理コストが嵩む。また、スパッタリングなどの蒸着法は、大掛かりな装置が必要となるだけでなく、基板全面へ蒸着した後、エッチングにより不要部分の除去を要することから総じて、高コストとなる。
【0005】
その他のパターン形成方法として、焼成タイプまたは加熱硬化タイプの導電性インキやペーストを用いる方法がある。
前者のタイプは、溶剤およびバインダー成分を一般に200℃以上の高温で加熱除去して、導電性微粒子を焼結または接触させることにより導通する硬化機構である。後者のタイプは、バインダー成分に熱硬化性樹脂を使用して硬化物中に留め、導電性微粒子は接触させることにより導通する硬化機構である。前者の方が、硬化物中に導電性粒子成分しか存在しないことから低い比抵抗が達成できる。しかし、同じ理由により、硬化物と基板の界面に化学結合が存在せず、密着性が低くなる傾向にある。とくに、ITOなど表面張力が低い材料については低密着性が顕著となる。
【0006】
界面の密着を向上させる方法として、1)基板表面の改質(紫外線照射、コロナ放電、プラズマ、サンディングの各処理)、2)プライマーのコーティング、3)導電性インキに添加剤を加えて密着効果を出現させる、などの方法がある。
しかし、1)は製造プロセスの増加、2)は有機絶縁層となるため導電性が得られなくなる、といった理由により積極的な採用が避けられている。
【0007】
3)の方法については、さまざまな提案がなされている。例えば、密着付与を担う物質として、ウレタンやエポキシ、フェノールなどの樹脂、酸性基や塩基性基を有する密着付与剤を添加する手法などが挙げられる。それぞれ例えば、エポキシ化合物を配合する手法(特許文献1)、導電性微粒子の分散剤に含まれるカルボン酸によって密着向上させる手法(特許文献2)、などがある。またシランカップリング剤やチタンカップリング剤などを添加する手法(特許文献3)が提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの先行例では、ITOのように表面張力が著しく低い基板について密着したという報告はない。低表面張力基板への密着を達成するには通常、プラズマアッシングなどにより表面を改質してアンカー効果を狙う手法(特許文献4)が提案されている。しかしながら、このような手法は製造プロセスの増加というデメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−168445号
【特許文献2】特開2006−193594号
【特許文献3】特開2006−348160号
【特許文献4】特開2001−281435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、透明フィルム、透明導電膜などの種類を問わず高い密着性と低い比抵抗を可能とする導電性インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する組成物として、
導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と、
官能基を有するモノマー成分(B)を含有し、表面張力が29mN/m以下であることを特徴とする導電性インク組成物であって、
官能基を有するモノマー成分(B)が、組成物(A)100重量部に対して、4〜8重量部であり、
組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値が0〜1.7(cal/cm1/2の範囲、の導電性インク組成物を提供するものである。
【0012】
項1. 導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と、
官能基を有するモノマー成分(B)を含有し、表面張力が29mN/m以下であることを特徴とする導電性インク組成物であって、
官能基を有するモノマー成分(B)が、組成物(A)100重量部に対して、4〜8重量部であり、
組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値が0〜1.7(cal/cm1/2の範囲である。
項2. 前記導電性微粒子(a−1)の全体重量に対して、1nm以上100nm未満の導電性微粒子が50%重量部以上であることを特徴とする項1に記載の導電性インク組成物。
項3. 前記導電性微粒子(a−1)が、銀またはその合金である項1又は2に記載の導電性インク組成物。
項4. 官能基を有するモノマー成分(B)がアミノ基、イソシアネート基、シアノ基、メルカプト基のいずれかの官能基を有する化合物から選択される1種である項1〜3に記載の導電性インク組成物。
項5. 項1〜4に記載の導電性インク組成物を用いて形成したフレキシブル回路基板、タッチパネル用基板、表示装置用基板用の導電性回路パターン。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリマーフィルム、透明導電膜などの種類を問わず高い密着性と低い比抵抗を達成する導電性インク組成物を提供することができる。
導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差を極力小さくすること、及び官能基を有するモノマー成分(B)が、組成物(A)100重量部に対して4〜8重量部とすることにより、導電性インク組成物中の導電性粒子(a−1)と官能基を有するモノマー成分(B)の相溶を高めて両者の結合力を高く維持することができる。
また、導電性インク組成物の表面張力を、用いる基板の表面張力より低くすることで、基板への導電性インク組成物の浸透が進み、基板との密着性を高く維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
(導電性インク組成物)
本発明の導電性インク組成物は、導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と、官能基を有するモノマー成分(B)を含有するものである。
【0016】
具体的には、本発明の導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)と、官能基を有するモノマー成分(B)を含有し、表面張力が29mN/m以下であることを特徴とする導電性インク組成物であって、
官能基を有するモノマー成分(B)が、組成物(A)100重量部に対して、4〜8重量部であり、
組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値が0〜1.7(cal/cm1/2の範囲のものである。
【0017】
本発明の導電性インク組成物は、組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値、以下SP値と称す)をそれぞれδA、δBとするとき、その差の絶対値(Δδ=|δA-δB|)が0〜1.7(cal/cm1/2であることが必要となる。これは、SP値の差の絶対値が大きく、組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性が悪いと、どちらか一方の成分が分離しやすくなり、導電性インク組成物中の導電性微粒子(a−1)とモノマー成分(B)の結合強度の悪化を招き、基板との十分な密着性が得られない。基板との密着性の点で、溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値が0〜1.7(cal/cm1/2の範囲であることが好ましく、0〜0.7(cal/cm1/2の範囲であることがより好ましい。
【0018】
本発明における組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値:δ)の算出は、以下に記載する熱力学的関係を利用することにより求めることができる。
【0019】
例えば、組成物の場合、組成物中の物質の種類と配合比が明らかであり、組成物の表面張力の値を測定することが可能であれば、A.S.Michaels:A.S.T.M.Technical Publications,340,3(1963)に記載されている式1を用いることで、求めることができる。
δ=4.1(γ/V1/30.43 ・・・・・(式1)
(式中、V:モル分子容、γ:表面張力を表す)
【0020】
本発明の導電性インク組成物の表面張力は、用いる基板の表面張力にもよるが、導電性インク組成物の表面張力が基板の表面張力と同等程度かそれよりも小さくすることで、導電性インク組成物中の官能基を有するモノマー(B)が導電性微粒子(a−1)の表面に結合し、基板表面との分子間力を出現させることで、高い密着力を達成できる。
【0021】
本発明の導電性インク組成物における組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の重量比は、上記した溶解性パラメーター(SP値:δ)の差の絶対値の範囲内であればよく、具体的には、組成物(A)100重量部に対して、4〜8重量部の範囲であればよく、5〜7重量部の範囲であることが好ましい。なお、3重量部より少ないと基板との十分な密着性が得られず、9重量部より多いと比抵抗の値が上昇する。
【0022】
本発明の導電性インク組成物は、通常、電子部品実装品、電気回路配線体、電磁波吸収体、光反射体などに用いられる基板への回路形成に用いることができ、例えば、ポリイミド(表面張力50mN/m)ポリエステル(同43mN/m)、ポリエチレンテレフタレート(同43mN/m)、ポリカーボネート(同42mN/m)、アクリル(同38mN/m)、ポリプロピレン(同29mN/m)、ITO(同22mN/m)など基板として用いる場合の導電性インク組成物の表面張力は、29mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以下であることがより好ましい。
【0023】
導電性インク組成物の表面張力は、吊環法などによって簡便に測定することができる。具体的な測定方法としては、金属環を測定物質内に沈めて引き上げた際、金属環に付いていた薄膜が破れて下に落ちる直前の荷重をバネはかりにて測定し、式2を用いることで求めることができる。
γ=F/4πR ・・・・・(式2)
(式中、F:薄膜が破れて下に落ちる直前の荷重、R:金属環の半径、γ:表面張力を表す。)
【0024】
本発明の導電性インク組成物には、必要に応じて添加剤として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、粘度調整剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、乾燥防止剤、密着付与剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤などを添加してもよい。上記添加物のうち、粘度調整剤を用いることによって種々の印刷方法に対応することができ、また、導電助剤を添加することでさらに高い導電性を得ることができる。
【0025】
導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有する組成物(A)
本発明の導電性インク組成物における組成物(A)は、導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)を含有するものである。組成物(A)中における導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)の配合比は、(導電性微粒子:溶剤)で、3:5〜9:1の範囲であればよく、3:2〜6:1の範囲であることが好ましい。上記範囲であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0026】
本発明の組成物(A)には、導電性微粒子(a−1)と溶剤(a−2)以外の添加剤として、例えば、導電性インク組成物に添加する粘度調整剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、乾燥防止剤、密着付与剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤などを予め添加しておいてもよい。添加方法としては、溶剤(a−2)に導電性微粒子(a−1)とその他の添加剤を同時に添加・混合してもよく、溶剤(a−2)にその他の添加剤を添加・混合したものに導電性微粒子(a−1)を添加してもよい。
【0027】
導電性微粒子(a−1)
組成物(A)中の導電性微粒子(a−1)は、平均粒径が1nm以上5μm未満の導電性材料であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、金、銀、銅、白金族金属などの貴金属、又は亜鉛、ニッケル、アルミニウムなど導電性の高い単体の金属粒子、又はこれらの合金の金属粒子を例示することができる。これらの導電性微粒子(a−1)としては、導電性の点で金、銀、銅、白金族金属又はその合金の金属微粒子が好ましく、銀、又はその合金の金属微粒子がより好ましい。
【0028】
導電性微粒子(a−1)の平均粒径は、1nm以上5μm未満の範囲であればよく、5nm以上2μm未満の範囲であることが好ましい。上記範囲の導電性微粒子(a−1)を用いることで、本発明の効果を十分に得ることができる。なお、平均粒径の一般的な測定方法としてレーザー回折法、動的光散乱法などによって測定することができる。
【0029】
組成物(A)中の導電性微粒子(a−1)は、上記の金属微粒子、又は合金の金属微粒子を2種類以上組合せて用いてもよい。2種類以上の金属微粒子を組合せて用いる場合、100℃程度の比較的低温から導電性粒子の拡散焼結を促す目的で、導電性微粒子(a−1)全体重量の50%重量以上を1nm以上100nm未満の導電性微粒子(a−1)とすることが好ましい。
【0030】
組成物(A)中の導電性微粒子(a−1)の含有量は、添加する他の成分に応じて適宜選択すればよい。中でも、導電性パターンにおける導電性、および導電性インク組成物中の分散性の点で、溶剤(a−2)100重量部に対して60重量部以上900重量部未満の範囲であることが好ましく、生産性の点で、150重量部以上600重量部未満の範囲であることがより好ましい。
【0031】
導電性微粒子(a−1)の形状は、目的とする導電性が得られるのであれば、特に限定されないが、例えば、球状、棒状、フレーク状などを例示することができ、これら複数の形状のものを混合して用いてもよい。
【0032】
導電性微粒子(a−1)として、平均粒径100nm未満の導電性微粒子(a−1)を用いる場合、表面エネルギーが大きいことから凝集が起こりやすく、特に、平均粒径1nm以上100nm未満のものについては、導電性インク組成物中での凝集防止のため、導電性微粒子(a−1)の表面が保護層で皮膜されていることが好ましい。なお、粒子表面の保護層は、基板上に塗布した後の乾燥などによって速やかに脱離・除去できるものが好ましい。また、上記導電性微粒子(a−1)の重量には、保護層の重量も含まれる。
【0033】
平均粒径1nm以上100nm未満である導電性微粒子(a−1)の保護層は、本発明の効果に影響を与えない範囲で一般的に導電性微粒子(a−1)の保護層に用いられる化合物を含有させることができる。具体的には、アミノ基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、又はチオール基を有する化合物などを例示することができる。導電性微粒子(a−1)の表面からの脱離が容易に進行する点でアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0034】
保護層に用いるアミノ基を有する化合物として、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、3-ペンチルアミン、アリルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、2-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、N-エチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジブチルアミノプロパン、N,N-ジイソブチル-1,3-ジアミノプロパン、N-ラウリルジアミノプロパンなどを例示することができる。また、導電性粒子(A)の保存安定性を向上させる点でカルボキシル基を有する化合物およびチオール基を有する化合物を適宜用いることが好ましく、臭気の点でカルボキシル基を有する化合物がより好適に用いられる。カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを例示することができる。
【0035】
導電性微粒子(a−1)は、市販品、又は製造したもののいずれを用いてもよい。導電性微粒子(a−1)の具体的な製造方法として、特開2006-118010、又は特開2009-270146に開示されている方法を例示することができる。上記記載の方法によって、製造された導電性微粒子(a−1)を用いることができる。
【0036】
溶剤(a−2)
組成物(A)中の溶媒(a−2)は、導電性インク組成物に含まれる各成分を均一に分散させるものであれば、特に制限無く用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレンモノマー、ミネラルスピリットなどの炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、テルピネオール、ピネン、リモネン、メンタン、シメン、イソホロンなどといった溶媒を例示することができる。中でも導電性インク組成物の表面張力を低くする点から、炭化水素類やケトン類などの非極性溶媒が好ましく、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトンなどがより好ましい。上記溶媒は、導電性インク組成物を用いる環境において液体であればよく、本発明の目的とする相溶性及び表面張力に影響を与えない範囲で、単一、または混合いずれの形態でも用いることができる。
【0037】
官能基を有するモノマー成分(B)
本発明の導電性インク組成物における官能基を有するモノマー成分(B)は、組成物(A)中の導電性微粒子(a−1)と良好な結合を形成するために、その片末端に少なくとも1つ以上の官能基を有していることを必要とする。これは、導電性微粒子(a−1)の表面とモノマー成分の官能基との間に生ずる結合が、導電性インク組成物と基板との密着性において、重要な役割を果たすためである。なお、官能基を有するモノマー成分(B)を重合したポリマーを導電性インク組成物中に添加することは、基板に導電性インク組成物を塗布した後の乾燥時に導電性微粒子(a−1)の接触性や焼結反応を阻害するため、好ましくない。
【0038】
官能基を有するモノマー成分(B)の官能基としては、カルボキシル基、フォスフィノ基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、チオシアネート基を有するモノマー成分を例示することができる。また、グリシナト基、アルキルセレノ基、アルキルテルロ基、シラン基、アルコール基、アルデヒド基を有するモノマー成分でも同様の効果を得ることができる。上記のモノマー成分は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法により合成したものを用いてもよい。
【0039】
カルボキシル基を有するモノマー成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオン酸、ミリストレイン酸、ピルビン酸、リノール酸などを例示することできる。
【0040】
フォスフィノ基を有するモノマー成分としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、アミノトリメチレンホスホン酸、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ヒドロキシエタンジホスホン酸などを例示することできる。
【0041】
イソシアネート基を有するモノマー成分としては、tert-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレートなどを例示することできる。
【0042】
アミノ基を有するモノマー成分としては、トリス(2-アミノエチル)アミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンなどを例示することできる。
【0043】
メルカプト基を有するモノマー成分としては、3-メルカプトプロピオン酸、3-(メチルジメトキシシリル)プロパン-1-チオール、3-メルカプト-1-プロパノール、ジメルカプトコハク酸、2,3-ジメルカプト-1-プロパノールなどを例示することできる。
【0044】
シアノ基を有するモノマー成分としては、ラクトニトリル、ベンゾニトリル、シアノアクリレート、3-シアノプロピオン酸メチル、2-シアノプロピオン酸エチルなどを例示することできる。
【0045】
チオシアネート基を有するモノマー成分としては、アリルイソチオシアネート、スルフォラファン、メチルフェニルイソチオシアネート、4-フルオロフェニルイソチオシアネート、オクタメチレンジイソチオシアネートなどを例示することできる。
【0046】
官能基を有するモノマー成分(B)の具体的な化合物としては、導電性微粒子(a−1)と良好な結合を形成する点で、3-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレート、3-メルカプトプロピオン酸、3-(メチルジメトキシシリル)プロパン-1-チオール、3-メルカプト-1−プロパノール、3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ラクトニトリル、3−シアノプロピオン酸メチルなどが好ましく、3-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレート、3-メルカプトプロピオン酸、3-(メチルジメトキシシリル)プロパン−1−チオール、3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン、シアノアクリレート、3−シアノプロピオン酸メチルがより好ましい。
【0047】
(その他の添加物)
本発明の導電性インク組成物には、必要に応じて添加剤として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、粘度調整剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、乾燥防止剤、密着付与剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤などを添加してもよい。上記の添加剤を含む組成物(A)を用いる場合は、上記の添加物を導電性インク組成物に添加しなくとも、また必要に応じて添加してもよい。上記添加物のうち、粘度調整剤を用いることによって種々の印刷方法に対応することができ、また、導電助剤を添加することでさらに高い導電性を得ることもできる。
【0048】
(粘度調整剤)
本発明に用いる粘度調整剤としては、高粘度化が必要な場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂など各種ポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類、パルミチン酸デキストリンなどの糖脂肪酸エステル、オクチル酸亜鉛などの金属石鹸、スメクタイトなどの膨潤性粘土鉱物、スパイクラベンダーオイル、石油を蒸留した鉱物性のペトロールなどを用いることができる。また、低粘度化が必要な場合には、レベリング剤、表面張力調整剤、レジューサーなどを用いることができる。なお、粘度調整剤は、導電性微粒子(a−1)の焼結反応を阻害するため、乾燥時に揮発できることが望ましい。また、粘度調整剤として高分子量のもの、又は多量に使用する場合、乾燥温度100℃程度では十分な揮発が見込めないため、分子量に応じて、添加量を極力少量に抑える必要がある。そのため、導電性インク組成物中における粘度調整剤の添加量は、溶媒(a−2)100重量部に対して、7重量部以下であればよく、5重量部以下であることが好ましい。
【0049】
(導電性インク組成物の調製方法)
本発明の導電性インク組成物は、導電性微粒子(a−1)と溶媒(a−2)を含有する組成物(A)の調製より行う。この場合、溶媒(a−2)に導電性微粒子(a−1)を添加し、通常用いられる攪拌方法により混合することにより調製することができる。なお、必要に応じて、導電性インク組成物に用いる添加剤を添加してもよい。また、組成物(A)に粘度調整剤を添加する場合は、予め溶媒(a−2)に粘度調整剤を添加・攪拌した後、導電性微粒子(a−1)を添加し、攪拌混合することが好ましい。続いて、調製した組成物(A)に官能基を有するモノマー成分(B)を添加し、攪拌混合することで導電性インク組成物が得られる。
【0050】
導電性インク組成物の各成分の混合方法は、各成分が導電性インク組成物中で均一に分散・混合できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、遊星ミル、ボールミル、三本ロールなどを例示することができる。得られる導電性インク組成物の均一性と作業の簡便さから遊星ミルを用いることが好ましい。なお、混合条件は通常用いられる条件で適宜選択して実施すればよい。
【0051】
(導電性インク組成物の用途)
本発明の導電性インク組成物は粘度を調整することで、特別な機材・技術を用いることなく、一般的な汎用機にて任意の導電性回路パターンを基板上に形成することができる。導電性回路パターンの形成方法としては、吐出法、印刷法などを例示することができる。吐出法としては、インクジェット法、ディスペンス法などを例示することができ、印刷法としては、スクリーン印刷のほか、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などの輪転印刷を例示することができる。上記印刷方法を用いることで、導電性インク組成物を用いて基板上に任意の導電性回路パターンを塗布することができる。また、塗布後に乾燥を行うことで、溶媒(a−2)や導電性微粒子(a−1)表面の保護層などの除去を行う。乾燥温度は、用いる溶媒(a−2)及び基材の耐熱温度に応じて適時選択すればよい。
【0052】
導電性回路パターンの形成方法に用いる基板としては、通常、導電性回路パターンの基板として用いられるものを用いることができる。また、基板表面は、用途に応じて部分的に異なる材料が形成されていてもよい。例えば、銅やアルミニウムなどの金属膜、ITOなどの無機物膜、ハードコートなどの有機物膜などを例示することができる。輪転印刷方法を用いる場合は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンなどからなるポリマーフィルムを好適に用いることができる。
【0053】
基板に塗布した後、導電性微粒子(a−1)の焼結反応を促進するために焼結反応を行う。これは、基板上に塗布した導電性インク組成物中の導電性微粒子(a−1)以外の成分を揮発などで除去する一方、導電性微粒子(a−1)同士を接触させて焼結に至らしめることにより、低い比抵抗を達成するためである。焼結温度は用いる導電性微粒子(a−1)に応じて、導電性微粒子(a−1)以外の成分を揮発し、且つ基板の変形がない温度での実施が必要となる。具体的には60〜120℃の範囲が好ましい。焼結時間は5〜120分が好ましい。上記範囲で乾燥を行なうことで得られた導電性回路パターンは十分な導電性が得られる。
【0054】
本発明の導電性インク組成物を用いることで、基材上に形成した導電性回路パターンは、高い導電性及び基板との密着性が得られる。そのため、耐熱性が低い(耐熱温度150度以下の熱可塑性ポリマーフィルム)基板材料、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリマーフィルム基板への適用可能であり、加熱処理によるフィルム収縮の影響を排除することができる。従って、本発明の導電性インク組成物は、印刷パターンの位置ずれの影響が大きい用途、例えば、フレキシブル回路基板、タッチパネル用基板、表示装置用基板などの導電性回路パターンに適用することが可能である。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(粘度の測定方法)
各組成物の粘度はE型粘度計(BROOKFIELD社製VISCOMETER DV−II+Pro)を用い、回転数10rpmを基準として測定した。
【0057】
導電性インク組成物
実施例及び比較例に用いた成分は以下のとおりである。
【0058】
(組成物A)
以下に記載した各成分を表1に示す配合量に基づいて組成物(A1)〜(A5)を調製した。調製方法は、表1に記載する導電性微粒子(a−1)と溶媒(a−2)を同一容器に添加後、室温下クラボウ製マゼルスターKK−250Sで1分間撹拌することにより、各組成物(A)を作製した。なお、各SP値は、上述した吊環法より測定した表面張力の値と、配合物の種類と比率から算出したモル分子容の値を用いて、式2より導出した。なお、表1に記載の数値は溶剤(a−2)の重量を100として、それぞれの重量を表す。
【0059】
導電性微粒子(a−1)
M1:銀微粒子(平均粒径21nm、スペクトリス ゼータサイザーナノにより測定)特開2009−270146に記載の方法に基づいて製造。導電性微粒子の保護層中に含まれるアミン化合物は、オレイルアミン(保護層の成分中の10重量%)、n-オクチルアミン(保護層の成分中の30重量%)、n-ブチルアミン(保護層の成分中の60重量%)
M2:銀粉末(平均粒径1.2μm、福田金属箔(株)、AgC−104W)
【0060】
溶剤(a−2)
S1:ヘキサン(SP値:7.3)
S2:シクロヘキサン(SP値:8.3)
S3:トルエンとメチルエチルケトンを重量比で50/50に混合(SP値:9.1)
S4:シクロヘキサノン(SP値:9.9)
【0061】
【0062】
官能基を有するモノマー(B)
B1:3−メルカプトプロピオン酸(東京化成工業製、SP値7.8)
B2:3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン(東京化成工業製、SP値8.7)
B3:2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工カレンズ製、SP値9.2)
B4:3−シアノプロピオン酸メチル(東京化成工業製、SP値9.4)
官能基を有するモノマー成分(B)として用いた各成分の表面張力、及びSP値を表2に示す。なお、表面張力からSP値は上述した方法により導出した。
【0063】
【0064】
導電性インク組成物の調製
上記した組成物(A)100重量部と、官能基を有するモノマー成分(B)6重量部を同一容器に添加後、室温下クラボウ製マゼルスターKK−250Sで1分間撹拌することにより、各導電性インク組成物を作製した。組成物(A1)〜(A5)およびモノマー成分(B1)〜(B4)の配合量を表3(実施例)、及び表4(比較例)に示す。なお、表3および4に記載の数値は組成物(A)の重量を100とした時の、それぞれの重量を表す。
【0065】
【0066】
【0067】
なお、調製した各導電性インク組成物中で導電性微粒子が均一に分散し、凝集していないことを確認するため、E型粘度計BROOKFIELD社製VISCOMETER DV−II+Proを用いて、25℃下、回転数0.5rpm−100rpm間を低回転から高回転(行き)、高回転から低回転(帰り)と変化させて、ずり応力値のヒステリシスカーブを描かせた。行きと帰りのずり応力値は各回転数で同じ値で、各導電性インク組成物中で導電性微粒子(a−1)が凝集していないことを確認して、以下の各評価に用いた。
【0068】
(導電性インク組成物の物性)
組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)のSP値をそれぞれδA、δBとして、SP値の差の絶対値を(Δδ=|δA-δB|)の式より求めた。また、各導電性インク組成物の表面張力を上記の吊環法より測定した。結果を表5(実施例)、及び表6(比較例)に示す。
【0069】
(密着性評価)
密着性評価は、基板が50×50mmのサイズのITOスパッタリング処理PETフィルム(帝人化成製 HK188G−AB500H)のものを密着性として用いた。これらの基板表面に各導電性インク組成物をスピンコーターにて全面塗布し、100℃で30分の空気中乾燥を施して、塗布厚1μmとしたサンプルをJIS K5600により試験し、粘着テープを引き剥がした際に剥離せず残存したマス数から判定した。評価基準は以下のように定めた。結果を表5(実施例)、及び表6(比較例)に示す。
○:23/25以上
×:22/25以下
【0070】
(比抵抗評価)
比抵抗評価は、四端子導電率計(三菱化学アナリテック製 ロレスターAX)を用いて、100×100mmの表面易接着処理PETフィルム(帝人化成製 HPE−50)上に導電性インク組成物をスピンコーターにて全面塗布し、100℃で30分の空気中乾燥を施して、塗布厚1μmとしたサンプルの塗膜中央にて測定し、得られた比抵抗の値から判定した。評価基準は以下のように定めた。結果を表5(実施例)、及び表6(比較例)に示す。
○:1×10−5Ω・cm未満
×:1×10−5Ω・cm以上
【0071】
【0072】
【0073】
表5に示すように、実施例1〜12はITOフィルムに密着を示すとともに、比抵抗も10−5Ω・cmより低い値を示した。一方、表6に示すように、比較例1は、Δδが1.9(cal/cm1/2であり、比較的大きな値のためインク相溶性が悪いと考えられ、結果、ITOフィルムへの密着が完全でなく部分的に剥がれる現象が起きた。実施例3、8と比較例3は、ともにΔδが1.7(cal/cm1/2であったが、表面張力が異なっており、それぞれ20、29、33mN/mであった。ITOへの密着性に違いが生じ、表面張力が20、29mN/mの実施例は良好な密着を示したものの、同33mN/mの比較例3では全く密着せず、粘着テープ側に導電性インクがすべて転写した。この結果より導電性インク組成物は、組成物(A)と官能基を有するモノマー成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差の絶対値(Δδ)が1.7(cal/cm1/2以下であり、かつ導電性インク組成物の表面張力が29mN/m以下である時に、基板との十分な密着性が得られ、低い抵抗値が得られる。
また、比較例2〜5に示すように、表面張力が33mN/mの場合にはΔδの大小にかかわらず、テープ側に導電性インクがすべて転写した。表面張力が大きい場合にはITO密着が得られないことが分かる。
【0074】
比較例6に示すように、官能基を有するモノマー(B)の添加量が少ない場合、ITOフィルムへの密着性が達成されない。また、比較例7のように官能基を有するモノマー成分(B)の添加量多い場合、これ自体が導電性粒子の焼結や接触を阻害して比抵抗が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の導電性インク組成物は、導電性の接着剤、電気回路配線、電磁波吸収体、光反射体などの各分野において有効に利用することができる。