(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939492
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】インジウムを含有する酸化膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20160609BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/455
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-554669(P2014-554669)
(86)(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公表番号】特表2015-506416(P2015-506416A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】KR2013000678
(87)【国際公開番号】WO2013112026
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0008340
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0125552
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0009168
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コ、ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョンス
(72)【発明者】
【氏名】マ、ドン ファン
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−254298(JP,A)
【文献】
特表2008−513601(JP,A)
【文献】
特開平08−264021(JP,A)
【文献】
特開平04−276078(JP,A)
【文献】
国際公開第00/063956(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0206846(US,A1)
【文献】
特開2009−108420(JP,A)
【文献】
特表平11−514706(JP,A)
【文献】
特開2003−252878(JP,A)
【文献】
特開2000−150938(JP,A)
【文献】
特開平01−175227(JP,A)
【文献】
特開平07−278791(JP,A)
【文献】
特開平09−050711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素−含有気体及び気体状態のインジウム化合物を基材に供給して反応させることを含む、インジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法であって、
前記インジウム化合物は、常温で液体であり、ビス(トリメチルシリル)ジエチルインジウム[(CH3CH2)2InN(Si(CH3)3)2;Et2InN(TMS)2]、ジメチル(3−ジメチルアミノプロピル)インジウム[(CH3)2In(CH2)3N(CH3)2;Me2In(CH2)3NMe2]、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものである、
インジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項2】
前記インジウムを含有する酸化物の膜がインジウム、酸素及び1原子%未満の炭素以外の他の原子を含まないものである、請求項1に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項3】
前記基材は、常温〜500℃の温度で維持されるものである、請求項1または2に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項4】
前記基材は、175℃〜300℃の温度で維持されるものである、請求項1または2に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項5】
前記基材は、225℃〜300℃の温度で維持されるものである、請求項1または2に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項6】
前記インジウムを含有する酸化物の膜は、化学蒸着法(chemical vapor deposition)または原子層蒸着法(atomic layer deposition)によって形成されるものである、請求項1から5の何れか1項に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項7】
前記酸素−含有気体は、H2O、H2O2、O2、O3、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された気体を含むものである、請求項1から6の何れか1項に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項8】
前記基材は、ガラス、シリコン、酸化シリコン、または高分子を含むものである、請求項1から7の何れか1項に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法。
【請求項9】
常温で液体であるインジウム化合物の気体と酸素−含有気体とを化学蒸着法(chemical vapor deposition)または原子層蒸着法(atomic layer deposition)によって反応させて形成され、
前記インジウム化合物がビス(トリメチルシリル)ジエチルインジウム[(CH3CH2)2InN(Si(CH3)3)2;Et2InN(TMS)2]、ジメチル(3−ジメチルアミノプロピル)インジウム[(CH3)2In(CH2)3N(CH3)2;Me2In(CH2)3NMe2]、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものであり、
比抵抗が2×10−5Ω・cm以下である、インジウムを含有する酸化物の膜。
【請求項10】
前記インジウムを含有する酸化物の膜がインジウム、酸素及び1原子%未満の炭素以外の他の原子を含まないものである、請求項9に記載のインジウムを含有する酸化物の膜。
【請求項11】
前記インジウムを含有する酸化物の膜は、ガラス、シリコン、酸化シリコン、または高分子を含む基材上に形成されたものである、請求項9または10に記載のインジウムを含有する酸化物の膜。
【請求項12】
請求項9から11の何れか1項に記載のインジウムを含有する酸化物の膜を含み、前記膜の比抵抗が2×10−5Ω・cm以下である基材。
【請求項13】
インジウム化合物の気体と酸素−含有気体を化学蒸着法(chemical vapor deposition)または原子層蒸着法(atomic layer deposition)によって反応させて形成され、
比抵抗が2×10−5Ω・cm以下である、インジウム酸化物からなる膜。
【請求項14】
前記インジウム酸化物の比抵抗が1×10−5Ω・cm以下である、請求項13に記載のインジウム酸化物からなる膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、インジウムを含む酸化物の膜、及びこれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウムを含有する酸化物は、透明であり、電気を通じるため、産業に広く利用される。伝導度がもっと高いか、他の長所があるため、インジウムのみを含んだインジウム酸化物の膜よりは、インジウム及びその他の金属を含んだ複合インジウム酸化物の膜、またはフルオロなどの他の元素によってドーピングされたインジウム酸化物の膜がよく利用される。例えば、インジウム錫酸化物(indium tin oxide、ITO)は液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)の電極として昔から利用されてきた。最近は、インジウム、ガリウム、亜鉛を含んだ酸化物(In−Ga−Zn−O、IGZO)を透明薄膜トランジスターに利用しようとする研究が活発である。前記Sn、Ga、Zn以外に、Al、Mgなどの他の金属も、インジウムを含んだ複合酸化膜に利用されることもある。現在、産業に利用されるITO膜は、大半がスパッタリング法により製造されている。国際特許出願公開公報WO2010/024279(韓国特許公開公報10−2011−0028393)でのように、IGZO膜もスパッタリング法により製造することが一般的である。
【0003】
化学気象蒸着法(chemical vapor deposition、CVD)や原料気体が相互に基材(substrate)に接触する原子層蒸着法(atomic layer deposition)は、凹凸のある表面にも均一な厚さの膜を形成できるという長所がある。
【0004】
Elamなどは、常温で固体であるシクロペンタジエニルインジウム(CpIn)を用いた原子層蒸着法によりIn
2O
3、ITO膜を形成する方法を報告した[J.W.Elamなど、「Atomic Layer Deposition of In
2O
3 Using Cyclopentadienyl Indium:A New Synthetic Route to Transparent Conducting Oxide Films」 Chemistry of Materials,Volume 18,p3571(2006);J.W.Elamなど、「Atomic Layer Deposition of Indium Tin Oxide Thin Films Using Nonhalogenated Precursors」 Journal of Physical Chemistry C、volume 112、p1938(2008)]。固体化合物を気化させ、大面積の基材に均一な濃度で供給することは非常に難しいため、CpInをインジウム原料として使って、大面積の基材にIn
2O
3、ITO膜を形成する方法は産業的に適用するのは難い。
【0005】
CpIn以外の他のインジウム化合物を原料として使って、化学蒸着法や原子層蒸着法により、インジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成する方法が知られている。Ritalaなどは、InCl
3、SnCl
4を用いてインジウム酸化物の膜またはITO膜を原子層蒸着法により形成する方法を報告した[M.Ritalaなど、「Enhanced Growth Rate in Atomic Layer Epitaxy of Indium Oxide and Indium−Tin Oxide Thin Films」 Electrochemical and Solid−State Letters、volume 1、p156(1998)]。InCl
3は、常温で固体であり、気体状態で供給するためには、原料供給部を285℃の高温で加熱しなければならないという問題がある。Ritalaなどは、また常温で固体であるIn(hfac)
3、In(thd)
3、In(acac)
3を用いて伝導性のインジウム酸化物の膜、ITO、フルオロがドーピングされたインジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した(hfac=hexafluoropentadionate;thd=2,2,6,6−tetramethyl−3,5−heptanedionate;acac=2,4−pentanedionate)[M.Ritalaなど、「ALE Growth of Transparent Conductors」、Material Research Society Symposium Proceedings、volume 426、p513(1996)]。NielsenなどもIn(acac)
3を用いて原子層蒸着法により、インジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した[O.Nielsenなど、「Thin films of In
2O
3 by atomic layer deposition using In(acac)
3」 Thin Solid Films、volume 517、p6320(2009)]。Ottなどは、常温で固体であるIn(CH
3)
3を用いてインジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した[A.W.Ottなど、「Surface chemistry of In
2O
3 deposition using In(CH
3)
3 and H
2O in a binary reaction sequence」 Applied Surface Science、volume 112、p205(1997)]。パク・ジンホなどは、常温で固体である[(CH
3)
2In(acac)]
2を用いてインジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した[J.−H.Parkなど、「The X−ray single crystal structure of [Me
2In(acac)]
2 and its use as a single−source precursor for the deposition of indium oxide thin films」 Journal of Materials Chemistry、volume 11、p2346(2001)]。GaskellとSheelも[(CH
3)
2In(acac)]
2を用いてフルオロがドーピングされたインジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した[D.W.Sheel and J.M.Gaskell,「Deposition of fluorine doped indium oxide by atmospheric pressure chemical vapour deposition」 Thin Solid Films,volume 520,p1242(2011)]。Barryなどは、常温で固体であるIn[(N
iPr)
2CN(CH
3)
2]
3を原料として使った化学蒸着法によりインジウム酸化物の膜を形成する方法を報告した[S.T.Barryなど、「Chemical vapour deposition of In
2O
3 thin films from a tris−guanidinate indium precursor」 Dalton Transactions、volume 40、p9425(2011)]。
【0006】
このように、今までインジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成するために使われたインジウム原料は、何れも常温で固体である。常温で液体であるインジウム化合物を用いた化学蒸着法または原子層蒸着法により、インジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成する方法は知られていない。また、スパッタリング法によって形成され、透明電極として使われるインジウムを含んだ酸化物の膜ほど伝導度の高いインジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を化学蒸着法または原子層蒸着法により形成した例は知られていない。
【0007】
IGZOを用いた薄膜トランジスターは、非晶質シリコンを用いた薄膜トランジスターより速度が速いため、TVなどの大面積のLCDパネルに応用するための研究が活発である。IGZO酸化膜の造成を制御するために、化学蒸着法や原子層蒸着法によりIGZOを形成する必要があるが、常温で固体である原料を用いて横縦が1mよりもずっと大きいディスプレイガラス基材に、インジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成することは非常に難しい。
【0008】
大面積の基材、特に、TVなどで応用されることができる大面積のディスプレイ基材にIGZO膜を形成するために、液体インジウム化合物を用いた化学蒸着法または原子層蒸着法により、インジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成する必要がある。特に、ガラス基材を用いる場合は、200℃以下の温度で液体インジウム化合物を用いた化学蒸着法または原子層蒸着法により、インジウム酸化物の膜またはインジウムを含んだ酸化物の膜を形成する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、本願の目的は、基材にインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法を提供するのである。
【0010】
本願のさらに他の目的は、大面積の基材にインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法を提供するのである。
【0011】
本願のさらに他の目的は、大面積の透明基材にインジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法を提供するのである。
【0012】
本願のさらに他の目的は、常温で液体であるインジウム化合物の気体と酸素−含有気体から形成された、インジウムを含有する酸化物の膜または前記インジウムを含有する酸化物の膜が形成された基材を提供するのである。
【0013】
本願のさらに他の目的は、伝導性の高い、インジウムを含有する酸化物の膜または前記インジウムを含有する酸化物の膜が形成された基材を提供するのである。
【0014】
しかし、本願が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解されることができるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の第1の側面は、常温で液体であるインジウム化合物の気体及び酸素−含有気体を基材に供給して反応させることを含む、インジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法を提供する。
【0016】
本願の第2の側面は、常温で液体であるインジウム化合物の気体と酸素−含有気体の反応から形成される、インジウムを含有する酸化物の膜を提供する。
【0017】
本願の第3の側面は、前記第2の側面に係るインジウムを含有する酸化物の膜を含む基材を提供する。
【発明の効果】
【0018】
インジウムを含有する酸化物の膜を製造するために使われた従来のインジウム化合物は常温で固体状態であるため、膜を製造する際に、気体状態で供給するためには高温で加熱すべきであり、また固体を気化させて大面積の基材に均一な濃度で供給するのが非常に難しかったが、インジウムを含有する酸化物の膜を製造するための本願のインジウム化合物は常温で液体であって、気化が容易であり、大面積の基材に均一な濃度で供給されることができる。
【0019】
本願の方法を用いて、基材上にインジウムを含有する酸化物の膜を容易に形成できる。特に、本願の方法を用いて、比抵抗の小さい、すなわち、伝導性の高いインジウムを含む酸化物の膜を容易に形成できる。インジウム、ガリウム、亜鉛を含有する酸化膜であるIGZO膜は、ディスプレイ装置に透明薄膜トランジスターを製造するのに用いられることができ、このように形成したITOは透明伝導性膜として用いられることができる。また、本願の方法によって、大面積の基材、例えば、大面積のガラスまたは高分子の基材上にインジウムを含む酸化物の膜を形成することができる。前記高分子の基材は柔軟性の基材であることができ、ロール形態として使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願の一実施の形態に係るインジウム酸化物の膜のホール
移動度(Hall mobility)とキャリア濃度を示す図である。
【
図2】本願の一実施の形態に係るインジウム酸化物の膜の比抵抗(resistivity)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、添付した図面を参照しながら、本願が属する技術分野で通常の知識を持った者が容易に実施できるように本願の実施の形態を詳しく説明する。しかし、本願は様々な異形態に具現されることができ、ここで説明する実施の形態に限定されない。さらに、図面において、本願を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略し、明細書の全体を通じて類似した部分に対しては類似した図面符号を付けた。
【0022】
本願の明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結」されていると言う場合、これは「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を介して「電気的に連結」されている場合も含む。
【0023】
本願の明細書の全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置していると言う場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけではなく、両部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0024】
本願の明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言う場合、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。本願の明細書の全体において使われている程度の用語「約」、「実質的に」などは言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される時、その数値で、またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために、正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。本願の明細書の全体において使われている程度の用語「〜(する)段階」または「〜の段階」は、「〜のための段階」を意味しない。
【0025】
本願の明細書の全体において、マクシ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語は、マクシ形式の表現に基材された構成要素からなる群から選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される一つ以上を含むものを意味する。
【0026】
以下、本願のインジウム酸化膜の製造方法について、具現例及び実施の形態と図面を参照して具体的に説明する。しかし、本願は、このような具現例及び実施の形態と図面に制限されない。
【0027】
本願の第1の側面は、インジウム化合物の気体及び酸素−含有気体を基材に供給して反応させることを含む、インジウムを含有する酸化物の膜を形成する方法を提供する。
【0028】
本願の一具現例において、前記インジウム化合物は常温で液体状態であり、容易に気化させることができるビストリメチルシリルジエチルインジウム[(CH
3CH
2)
2InN[Si(CH
3)
2]
2;Et
2InN(TMS)
2;ここで、TMSは、Si(CH
3)
3を意味する]、ジメチル(3−ジメチルアミノプロピル)インジウム[(CH
3)
2In(CH
2)
3N(CH
3)
2;Me
2In(CH
2)
3NMe
2]、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むものであることができるが、これに制限されない。例えば、前記Et
2InN(TMS)
2は蒸気圧が約100℃で約4.5torrであり、Me
2In(CH
2)
3NMe
2は約50℃で約2.7torrであるため、化学蒸着法や原子層蒸着法に利用するのに適当である。前記インジウム化合物は、常温で液体状態であるため、比較的低温で容易に気化が可能であり、基材に均一な濃度で提供されることができ、大面積の基材にも使用可能である。
【0029】
本願の一具現例において、前記酸素−含有気体は、H
2、H
2O
2、O
2、O
3、及びこれらの組み合わからなる群から選択された気体を含むものであることができるが、これに制限されない。
【0030】
本願の一具現例において、前記基材は、大面積の基材、例えば、横及び縦の長さがそれぞれ約1m以上であることができるが、これに制限されない。例えば、前記大面積の基材は横及び縦の長さがそれぞれ約1m以上、約2m以上、約3m以上、約4m以上、約5m以上、約6m以上、約7m以上、約8m以上、約9m以上、または約10m以上であることができるが、これに制限されない。
【0031】
本願の一具現例において、前記基材は、当業界で基材として使われるものであれば特別な制限なしに使われることができる。例えば、前記基材は、ガラス、シリコン、酸化シリコン、または高分子を含むことができるが、これに制限されない。
【0032】
本願の一具現例において、前記基材は、大面積のガラスの基材であることができるが、これに制限されない。また、前記基材は、高分子を含む基材であることができるが、これに制限されない。例えば、前記高分子の基材は柔軟性の基材としてロール形態で巻かれた形態を有することができるが、これに制限されない。
【0033】
本願の一具現例において、前記高分子の基材は耐熱性の高分子を含む基材であることができるが、これに制限されない。例えば、前記高分子は、ポリエステル(Polyester、PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylenenapthalate、PEN)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、ポリエーテルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketon、PEEK)、及びポリイミド(Polyimide)からなる群から選択される高分子を含むものであることができるが、これに制限されない。
【0034】
本願の一具現例において、前記基材の温度は、常温〜約500℃の温度、例えば、常温〜約450℃、常温〜約400℃、常温〜約350℃、常温〜約300℃、常温〜約250℃、常温〜約200℃、約50℃〜約500℃、約50℃〜約450℃、約50℃〜約400℃、約50℃〜約350℃、約50℃〜約300℃、約50℃〜約250℃、約50℃〜約200℃、約50℃〜約150℃、約100℃〜約500℃、約100℃〜約450℃、約100℃〜約400℃、約100℃〜約350℃、約100℃〜約300℃、約100℃〜約250℃、約100℃〜約200℃、約100℃〜約150℃、約150℃〜約500℃、約150℃〜約450℃、約150℃〜約400℃、約150℃〜約350℃、約150℃〜約300℃、約150℃〜約250℃、約150℃〜約200℃、約175℃〜約500℃、約175℃〜約450℃、約175℃〜約400℃、約175℃〜約350℃、約175℃〜約300℃、約175℃〜約250℃、約175℃〜約200℃、約200℃〜約500℃、約200℃〜約450℃、約200℃〜約400℃、約200℃〜約350℃、約200℃〜約300℃、約200℃〜約250℃、約225℃〜約500℃、約225℃〜約450℃、約225℃〜約400℃、約225℃〜約350℃、約225℃〜約300℃、または約225℃〜約250℃で維持されることができるが、これに制限されない。
【0035】
例えば、Et
2InN(TMS)
2をインジウム化合物として使用する際、前記基材の温度は約175℃〜約300℃を維持することができるが、これに制限されない。例えば、Me
2In(CH
2)
3NMe
2をインジウム化合物として使用する際、前記基材の温度は約225℃〜約300℃を維持することができるが、これに制限されない。
【0036】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗が約1×10
−4Ω・cm以下または未満、例えば、約8×10
−5Ω・cm以下または未満、約6×10
−5Ω・cm以下または未満、約4×10
−5Ω・cm以下または未満、約2×10
−5Ω・cm以下または未満、約1×10
−5Ω・cm以下または未満、約8×10
−6Ω・cm以下または未満、約6×10
−6Ω・cm以下または未満、約4×10
−6Ω・cm以下または未満、約2×10
−6Ω・cm以下または未満、または約1×10
−6Ω・cm以下または未満であることができるが、これに制限されない。本願の一具現例において、Et
2InN(TMS)
2をインジウム化合物として使用する際、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗は約1.6×10
−5Ω・cmであることができ、Me
2In(CH
2)
3NMe
2をインジウム化合物として使用する際、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗は9.2×10
−5Ω・cmであることができるが、これに制限されない。
【0037】
上記の本願の一具現に係るインジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗値は、従来のインジウム化合物を用いて製造されたインジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗に比べて約50倍、約100倍、約500倍、約1000倍、または約5000倍以上減少されたものであって、前記本願の一具現例に係るインジウムを含有する酸化物の膜の伝導度が一層改善されたことを現わす。
【0038】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜が、インジウム、酸素、及び炭素以外の他の元素を含まないか、または実質的に含まないことができるが、これに制限されない。
【0039】
本願の他の具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜が、インジウム、酸素、及び1原子%未満の炭素以外の他の元素を含まないか、または実質的に含まないことができるが、これに制限されない。
【0040】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜は、化学蒸着法(chemical vapor deposition;CVD)または原子層蒸着法(atomic layer deposition;ALD)によって形成されることができるが、これに制限されない。前記化学蒸着法または原子層蒸着法は、原料を気体状態で基材に供給することで、凹凸のある表面にも均質な厚さの膜を形成することができ、大面積の基材またはロール形態の基材にも原料気体を均質な濃度で供給し、均質な膜を形成できる。原子層蒸着法を用いる場合、各原料気体を順次に供給する通常の時分割の原子層蒸着装置を使うことができる。また、原子層蒸着に必要な一つの原料の気体が満たされている空間と、他の原料気体が満たされている空間を基材が往復する方式の空間分割の原子層蒸着装置を使うこともできる。前記基材がロール形態の高分子の基材である場合、ロールを解いて基材の表面を露出させ、膜が形成された基材をまたロール形態に巻くロールツーロール(roll−to−roll)化学蒸着装置またはロールツーロール原子層蒸着装置を使うこともできる。前記化学蒸着法または原子層蒸着法は、プラズマを使うプラズマ化学蒸着法(PECVD)、またはプラズマ原子層蒸着法(PEALD)であることもできるが、これに制限されない。プラズマ化学蒸着法またはプラズマ原子層蒸着法は、一般的にプラズマを使わない方法に比べて、更に低い膜の形成温度でも良質の膜を形成することができるという長所がある。
【0041】
本願の第2の側面は、常温で液体であるインジウム化合物の気体と酸素−含有気体を反応させて形成される、インジウムを含有する酸化物の膜を提供する。
【0042】
本願の一具現例において、前記インジウム化合物がEt
2InN(TMS)
2、Me
2In(CH
2)
3NMe
2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができるが、これに制限されない。
【0043】
本願の一具現例において、前記酸素−含有気体は、H
2O、H
2O
2、O
2、O
3、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された気体を含むことができるが、これに制限されない。
【0044】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗が約1×10
−4Ω・cm以下または未満、例えば、約8×10
−5Ω・cm以下または未満、約6×10
−5Ω・cm以下または未満、約4×10
−5Ω・cm以下または未満、約2×10
−5Ω・cm以下または未満、約1×10
−5Ω・cm以下または未満、約8×10
−6Ω・cm以下または未満、約6×10
−6Ω・cm以下または未満、約4×10
−6Ω・cm以下または未満、約2×10
−6Ω・cm以下または未満、または約1×10
−6Ω・cm以下または未満であることができるが、これに制限されない。
【0045】
本願の一具現例において、Et
2InN(TMS)
2をインジウム化合物として使用する際、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗は約1.6×10
−5Ω・cmであることができ、Me
2In(CH
2)
3NMe
2をインジウム化合物として使用する際、前記インジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗は9.2×10
−5Ω・cmであることができるが、これに制限されない。
【0046】
前記本願の一具現例に係るインジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗値は、従来のインジウム化合物を用いて製造されたインジウムを含有する酸化物の膜の比抵抗に比べて約50倍、約100倍、約500倍、約1000倍、または約5000倍以上減少されたものであって、前記本願の一具現例に係るインジウムを含有する酸化物の膜の伝導度が一層改善されたものであることを現わす。
【0047】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜が、インジウム、酸素、及び炭素以外の他の元素を含まないか、または実質的に含まないことができるが、これに制限されない。
【0048】
本願の他の具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜が、インジウム、酸素、及び1原子%未満の炭素以外の他の元素を含まないか、または実質的に含まないことができるが、これに制限されない。
【0049】
本願の一具現例において、前記インジウムを含有する酸化物の膜は化学蒸着法(chemical vapor deposition)または原子層蒸着法(atomic layer deposition)によって形成されることができるが、これに制限されない。
【0050】
本願の一具現例において、前記基材は、ガラス、シリコン、酸化シリコン、または高分子を含むものであることができるが、これに制限されない。
【0051】
本願の第2の側面に係るインジウムを含有する酸化物の膜は、前記第1の側面に係るインジウムを含有する酸化物の膜の製造方法について記載された全ての内容を含むことができるが、便宜上これは省略した。
【0052】
本願の第3の側面は、前記第2の側面のインジウムを含有する酸化物の膜を含む、基材を提供する。
[発明を実施するための形態]
【0053】
以下、実施の形態を用いて、本願について具体的に説明する。しかし、本願はこれに制限されない。
【0054】
[第1の実施の形態]
(Et
2InN(TMS)
2を用いた原子層蒸着法によるインジウム酸化物の膜の形成)
【0055】
常温で液体であるEt
2InN(TMS)
2の気体とH
2O気体を相互に基材に接触させた。この実施の形態において、シリコン基材とシリコン酸化膜が形成されたシリコン基材をそれぞれ使い、両基材で原子層蒸着気体の供給周期当たり膜の成長速度は同一であった。前記基材の温度を100℃〜275℃で維持した。Et
2InN(TMS)
2は30℃〜60℃の温度で気化させた。通常的な時間分割原子層蒸着装置を用いて、前記基材が置かれた空間にEt
2InN(TMS)
2気体、不活性気体、H
2O気体、不活性気体を次第にそれぞれ1秒、10秒、1秒、10秒ずつ繰り返して供給した。不活性気体として、N
2、Ar、Heの気体、またはこれらの混合気体など、当業界で知られたものを使うことができる。この実施の形態において、前記不活性気体としてAr気体を用いた。前記基材温度175℃〜225℃の区間では、Et
2InN(TMS)
2の供給量を増やしても原子層蒸着気体の供給周期当たり膜の成長(growth−per−cycle、GPC)が0.067〜0.069nm/cycleで一定に現われた。175℃、200℃、225℃、250℃、及び275℃の温度で加熱されたシリコン酸化膜基材の上に、約30nm〜約35nmの厚さでインジウム酸化物の膜を形成し、ホール効果(Hall effect)を測定して求めたホール移動度(Hall mobility)とキャリア密度、比抵抗(resistivity)を
図1及び
図2に示した。この実施の形態において、前記275℃で形成されたインジウム酸化膜の比抵抗は1.6×10
−5Ω・cmであって、従来のスパッタリング法によって形成された常用の透明電極だけ伝導度が高かった。X−線光電子分光法(XPS)により分析した結果、175℃で形成された前記インジウム酸化物の膜からは、インジウムと酸素以外に4.3原子%の炭素が検出され、200℃で形成されたインジウム酸化物の膜からは、インジウムと酸素以外に0.3原子%の炭素が検出された。250℃及び275℃でそれぞれ形成されたインジウム酸化物の膜からは、炭素が検出されなかった。
【0056】
[第2の実施の形態]
(Me
2In(CH
2)
3NMe
2を用いた原子層蒸着法によるインジウム酸化物の膜の形成)
【0057】
常温で液体であるMe
2In(CH
2)
3NMe
2の気体とH
2O気体を基材に接触させた。この実施の形態において、シリコン基材とシリコン酸化膜が形成されたシリコン基材をそれぞれ使い、両基材で原子層蒸着気体の供給周期当たり膜の成長速度は同一であった。前記基材の温度を100℃〜275℃で維持した。Me
2In(CH
2)
3NMe
2は常温で気化させた。通常的な時間分割原子層蒸着装置を用いて、基材が置かれた空間にEt
2InN(TMS)
2気体、不活性気体、H
2O気体、不活性気体を次第にそれぞれ1秒、10秒、1秒、10秒ずつ繰り返して供給した。不活性気体として、N
2、Ar、Heの気体、またはこれらの混合気体など、当業界で知られたものを使うことができる。この実施の形態において、前記不活性気体としてAr気体を用いた。前記基材温度275℃では、Me
2In(CH
2)
3NMe
2の供給量を増やしても、原子層蒸着気体の供給周期当たり膜の成長(growth−per−cycle、GPC)が0.059nm/cycleで一定に現われた。前記基材温度225℃以下ではインジウム酸化物の膜が殆ど形成されなかった(GPC<0.01nm/cycle)。前記275℃の温度で加熱された前記シリコン酸化膜の上に形成されたインジウム酸化物の膜のホール効果を測定した結果、比抵抗は9.2×10
−5Ω・cm、ホール移動度は0.35cm
2/V・sec、キャリア濃度は1.7×10
23に現われた。
【0058】
[第3の実施の形態]
(Et
2InN(TMS)
2を用いた原子層蒸着法によるIGZO膜の形成)
【0059】
基材にEt
2InN(TMS)
2気体、トリメチルガリウム(trimethylgallium、TMG)気体、ジエチル亜鉛(diethylzinc、DEZ)気体、H
2O気体を相互に接触させる。前記基材の温度は、常温〜500℃以下、より望ましくは50℃〜200℃以下、さらに望ましくは50℃〜150℃で維持する。Et
2InN(TMS)
2気体、不活性気体、H
2O気体、不活性気体を次第に接触させる第1の気体供給周期と;TMG気体、不活性気体、H
2O気体、不活性気体を次第に接触させる第2の気体供給周期と;DEZ気体、不活性気体、H
2O気体、不活性気体を次第に接触させる第3の気体供給周期の手順と比率を調節して成長させるIGZO膜で金属の比率を調節することができる。例えば、第1の気体供給周期−第2の気体供給周期−第3の気体供給周期のスーパーサイクルを繰り返して形成したIGZO膜より、第1の気体供給周期−第2の気体供給周期−第1の気体供給周期−第3の気体供給周期のスーパーサイクルを繰り返して形成したIGZO膜のIn含量が更に高い。前記基材は、ガラス、シリコン、または高分子など、当業界で知られたものであれば何でも使うことができる。前記不活性気体としては、N
2、Ar、Heの気体、またはこれらの混合気体など、当業界で知られたものを使うことができる。H
2O気体の代わりに、H
2O
2気体、酸素(O
2)気体、オゾン(O
3)気体を、酸化物を形成するための酸素原料として使うこともできる。
【0060】
[第4の実施の形態]
(Et
2InN(TMS)
2を用いた化学蒸着法によるインジウム酸化物の膜の形成)
【0061】
基材にEt
2InN(TMS)
2気体とH
2O気体を同時に供給して、基材にインジウム酸化物の膜を形成する。前記基材は、温度を常温〜500℃以下、より望ましくは50℃〜200℃以下、さらに望ましくは50℃〜150℃で維持することができる。基材の温度を設定した後、基材が置かれた化学蒸着装置で運搬気体を用いてEt
2InN(TMS)
2気体を供給し、またこれと同時にH
2O気体を供給した。運搬気体としては、N
2、Ar、Heの気体、またはこれらの混合気体など、当業界で知られたものを使うことができる。基材は、ガラス、シリコンなど、当業界で知られたものは何でも使うことができる。不活性気体としては、N
2、Ar、Heの気体、またはこれらの混合気体など、当業界で知られたものを使うことができる。H
2O気体の代わりに、H
2O
2気体、酸素(O
2)気体、オゾン(O
3)気体を、酸化物を形成するための酸素原料として使うこともできる。
【0062】
前述の本願の説明は例示のためのものであり、本願が属する技術分野の通常の知識を持った者は、本願の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに、他の具体的な形態に容易に変形することができるということが理解できるだろう。よって、以上で記述した実施の形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。例えば、単一型に説明されている各構成要素は分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態に実施されることができる。
【0063】
本願の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって現れ、特許請求の範囲の意味及び範囲、及びその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈すべきである。