(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939551
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】環境に優しい、多目的の還流式の洗剤
(51)【国際特許分類】
C11D 3/20 20060101AFI20160609BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20160609BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20160609BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20160609BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20160609BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20160609BHJP
C11D 1/78 20060101ALI20160609BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20160609BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
C11D3/20
C11D1/72
C11D1/722
C11D1/12
C11D1/68
C11D1/75
C11D1/78
B08B3/08 Z
C11D17/08
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-505276(P2014-505276)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-516376(P2014-516376A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】US2012033273
(87)【国際公開番号】WO2012142252
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2014年3月11日
(31)【優先権主張番号】13/066,362
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302044247
【氏名又は名称】アメリカン ステリライザー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,シャヒン
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ナンシー イー.
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−183191(JP,A)
【文献】
特開2010−017651(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0168079(US,A1)
【文献】
特開平08−158081(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/027673(WO,A1)
【文献】
特表平11−501867(JP,A)
【文献】
特表2008−511438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−17/08
B08B 3/00− 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的な製造機器の洗浄に使用するための還流式の洗浄組成物であって、該還流式の洗浄組成物は、
a.ノルマルプロピルアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコール n−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコール n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール n−ブチルエーテル、およびそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される少なくとも2つの生物分解性の溶媒の配合物、を含み、
ここで、選択された溶媒の蒸気圧は、0.1乃至7.0の範囲であり(mmHg@25℃)、選択された溶媒の蒸気密度は、2.0乃至6.0の範囲であり(空気=1)、選択された溶媒の沸点は、100℃乃至150℃の範囲であり、選択された溶媒の比熱(j/g/℃)は、0.3乃至2.3の範囲であり、および選択された溶媒の蒸発熱(j/g@BP)は、250.0乃至270.0の範囲であることを特徴とする還流式の洗浄組成物。
【請求項2】
アルコールエトキシレート、EO/POブロックコポリマー、スルフォナート、リン酸エステル、アルカノアート、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、ジプロピオナート、またはそれらの混合物から成る群から選択される界面活性剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の還流式の洗浄組成物。
【請求項3】
汚れた化学的な製造機器を洗浄するための還流式の洗浄組成物であって、該還流式の洗浄組成物は、
a.プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール n−ブチルエーテル、またはそれらの混合物を含む、少なくとも2つの生物分解性の溶媒の配合物;
b.スルフォナート、リン酸エステル、アミンオキシド、EO/POブロックコポリマー、アルキルポリグルコシド、アルキルジプロピオナート、またはそれらの混合物である、界面活性剤;
c.キレート剤;
d.緩衝液;および
e.水を含み、
ここで、選択された溶媒の蒸気圧は、0.1乃至7.0の範囲であり(mmHg@25℃)、選択された溶媒の蒸気密度は、2.0乃至6.0の範囲であり(空気=1)、選択された溶媒の沸点は、100℃乃至150℃の範囲であり、選択された溶媒の比熱(j/g/℃)は、0.3乃至2.3の範囲であり、および選択された溶媒の蒸発熱(j/g@BP)は、250.0乃至270.0の範囲であることを特徴とする還流式の洗浄組成物。
【請求項4】
キレート剤およびアルカノアートの界面活性剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の還流式の洗浄組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を含む、化学薬品製造に関係する洗浄装置に有用な溶剤型洗剤に関する。より具体的には、本発明は、保存する、取り扱う、および使用するのが安全であるという点で環境に優しい、および還流式の溶媒などの多くの洗浄方法において、および定置洗浄(CIP)、取り外し洗浄(COP)および用手洗浄において使用することができる溶剤型洗剤に関する。最も具体的には、本発明は、従来の還流式の化学薬品の欠点のない、効率的で有効な還流式の溶媒を提供する。
【背景技術】
【0002】
(Active Pharmaceutical Ingredients−APIを含む)化学薬品の製造は、一般に、反応器、遠心分離機、容器、タンク、分離カラム、晶析装置、および関係するチューブおよび配管などの、列車における数片の機器に関係する。
製造後、機器は、続く製品の生産での使用前に洗浄されなければならない。設備列(equipment train)の洗浄は、付加的な専門の機器および手順を必要とする定置洗浄(CIP)のシステムを使用するよりもむしろ、典型的に、機器、およびその接続管の全体にわたって溶媒を還流することによって行われる。
【0003】
一般に、従来の還流洗浄方法は、反応容器またはタンクに置かれ、その後加熱される、メタノールまたはアセトンなどの、商品の溶媒(commodity solvents)を利用する。これらの溶媒は、典型的に、生産プロセスの一部であり、それ故、容易に入手可能であり、潜在的な汚染物質として導入されている新しい成分ではない。加熱された溶媒によって作られた蒸気は、タンクの上の空気に取って代わり、配管を通って次の機器へと移動する。オーバーヘッド空間には、蒸気を冷却して液体にするために、コンデンサーが存在する。液体溶媒は、その後、機器および配管から汚れ(soil)または残留物を取り除く水溜へと排水される。還流洗浄に関係する機械的作用がないため、機器が次のバッチ処理(processing batch)の準備ができる前に、洗浄は数回繰り返されなければならないかもしれない。
【0004】
前述の還流式の商品の溶媒および洗浄方法は、欠点がないわけではない。従来の還流式の溶媒洗浄プロセスには、機器が、CIPシステムに典型的な、スプレーボールおよび撹拌または再循環のための追加の機器を使用することなく、依然として有効であることが必要とされる。したがって、洗浄が徹底され完了したという保証はない。完全な汚れの除去を保証するために、さらに繰り返す必要がある。溶媒の再循環および回収に関係するかなりのエネルギーコストに加え、灰化および処理のコストがある。商品の溶媒に関係する可燃性および揮発性に起因する安全性の問題も生じる。
【0005】
それ故、付随する欠点のない、有害な商品の溶媒の代わりとして、還流洗浄のプロセスに使用することができる製剤が必要とされている。有害な商品の溶媒に取って代わって、効果的に、薬剤を含む、化学的な製造機器から汚れを洗浄する能力を増強する溶解、洗浄および湿潤の特性を有する製剤を達成するために、特定の溶媒の水溶性の配合物が組み合わせられ得ることが分かった。このような製剤はまた、蒸気および液相の両方においてよく効く。これらの溶媒の配合物はまた、洗浄を増強し、溶媒のレベルを低下させる、界面活性剤などの他の成分を含有する。保存の理由で、これらの溶媒の配合物または溶媒/界面活性剤の配合物は、非水溶性の濃縮物として、または半水溶性の液体として調製され得、これらすべては、使用前に水でさらに希釈され得る。
【0006】
本発明の製剤のための溶媒の選択は、限定されないが、高い蒸気圧、高い水蒸気密度、中程度の沸点、低い所定の熱および低い蒸発熱などの特性に加え、衛生および安全性および環境の要件を含む、特定の基準に基づく。溶解力および界面活性力(surfactancy)などの溶媒の特性はまた、製剤された配合物にあることが望ましい。これらの基準に基づいて溶媒を選択することで、結果的に、還流洗浄のプロセスの時間、エネルギーおよび有効性に良い影響を与える、従来の商品の還流溶媒以上の、優れた溶解、洗浄および湿潤の特性を有する製剤がもたらされる。
【0007】
機器を製造するための溶剤型洗剤は、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,866,523号は、定置洗浄(C−I−P)でなければならない、容器、大桶、ドラム、タンク、配管および関連する機器から樹脂状物質を取り除くための方法および溶媒を混合した組成物に関する。使用の方法は、とりわけ、撹拌、スプレー、振動、かき混ぜ、ポンプ循環、または物理的接触を含む。開示される製剤は、20−22℃で使用され70℃まで使用される(沸騰はしない)。組成物は、かなり可燃性であり、還流式のシステムでの使用では実行可能ではない、メチルイソアミルケトンを含んでいる。
【0008】
米国特許第5,698,045号は、N−メチル−ピロリドン(NMP)を含有している液体を機器(反応器)に入れ、NMPを加熱して沸騰させることによって、配向される、置くことによって、分解する(dismantling)ことなく、化学プロセス用機器を洗浄するための蒸気方法に関する。洗浄される主要な汚れは、スチレン包含ポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC’s)、ウレタン、エポキシ、ポリアクリル酸、ナイロンおよび炭素の蓄積、および分解する有機物からのタール膜(tarry films)フィルムなどの、ポリマー残留物である。NMPは、単独で使用することができる(すなわち、「純粋」)、あるいは別の溶媒、ガンマブチロラクトンと、またはNMPよりも高い沸点を有する油または溶媒と混合され得る。組成物は、水溶性ではない。
【0009】
米国特許第5,423,919号および第5,259,993号は両方とも、それぞれ、1−15重量%および1−20重量%の量で、1つの成分として、既知の塗膜剥離剤である2−ピロリドンを含む溶媒を含有している浸漬洗浄組成物を開示する。これら2つの特許は、共通してピロリドン成分を有するが、’919の特許はまた、溶媒中にセラミックス微粒子を必要とする。’993の特許は、120°F−140°Fの温度で使用され得る、溶媒の配合物ではない、単一の溶媒の組成物に焦点を当て、起こるために清潔にするために、洗浄のために基質の浸漬が生じる必要がある。
【0010】
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)はまた、「水希釈性」の組成物に関する、米国特許第5,232,515号に開示される洗浄組成物の成分でもある。NMPに加えて、グリコールエーテルエステルおよびC
1−C
8アルコールが含まれる。界面活性剤、防錆剤および促進剤は、任意成分である。沸騰または還流の洗浄操作において、この組成物の使用は言及されていない。
【0011】
米国特許第6,187,719号;第5,679,175号および第5,716,457号は、非水性の「沸騰する(boiling)」組成物に関するが、還流洗浄には関係していない。開示される組成物は、溶剤(solvating agents)と洗浄剤(rinsing agents)の両方を含む。どちらも還流タイプの操作では使用されない。選択される溶剤は、約40mm Hg以下の室温蒸気圧および10以上の溶解力がなければならない。溶剤は、2−ピロリドン、エーテル、アルコールおよびそれらの混合物を含み得る。洗浄剤は、約80−760mm Hgの室温蒸気圧および約0.05−0.15以下のオゾン破壊係数がなければならない。洗浄剤および溶剤は、一緒に混合されないが、むしろ別々に使用される。実際は、これらは、互いに不混和性である必要がある。これらの溶媒和するおよび洗浄する組成物は、プリント回路基盤(ポリ塩化ビフェニル(PCB’s))を洗浄するのに有用であると明示されている。生産工程は、基盤を、第1に沸騰する組成物、すなわち、溶剤へと浸す工程;基盤を、沸騰する溶剤の上の蒸気空間を通って、冷たい液体洗浄剤の容器へと移動させる工程;ボードを、洗浄剤上の蒸気空間を通って移動させる工程;および乾燥させる工程を含む。
【0012】
本明細書に記載される水溶性の本発明の製剤は、以前に当該技術分野で知られていた製剤以上に特有であり、化学的な製造機器の還流洗浄において、商品の溶媒に取って代わるものとして使用することができ、特に、薬剤を製造するのに使用される。製造業者の既存の洗浄プロセスは、機器配置に関して変わらないままであり得る。本発明の製剤は、CIP、COPおよび用手洗浄などの、様々な洗浄方法で使用することができるという点で、多目的であるが、真の利点は、本発明の組成物が、既存の機器ライン(equipment line)を介して単純に還流されるため、さらなる専門的な洗浄の機器または手順(例えばCIPプロセスなど)が必要とされないということである。
【0013】
本発明の製剤は、気相と液相の両方において、および設備列を介する垂直と水平の運動の両方において効果的に効く。本発明の製剤は、結果的に、従来の商品の還流式の溶媒よりも、還流洗浄のプロセスにおいて、より速い清掃時間およびサイクルのより少ない反復につながる。それらはまた、従来の商品の還流式の溶媒よりも取り扱いがより安全で、より環境に優しい。
【0014】
エネルギー必要量もまた、溶剤の再循環、回収、処分および灰化に関して減少される。選択される成分が、生物分解性であり、全体的な環境規制に従っているため、処理費用は完全に省かれ得るか、または最低でも、実質的に縮小され得る。最終的に、本発明の製剤は、取り扱うのが安全で、非可燃性であるため、還流洗浄に使用される従来の商品の溶媒に関係する衛生および安全性の問題は取り除かれる。
【0015】
本発明の製剤のための有用な適用は、化学的な及び製薬の製造機器および研究機器の還流洗浄の他に、製剤が、取り除かれる特定の汚れ/残留物に有効である、他の洗浄の適用も含む。
【0016】
それ故、化学的な又は製薬の製造プロセスにおいて残された、汚れおよび残留物を還流で洗浄するのに従来使用された、商品の溶媒に取って代わるものとして使用され得る、洗浄剤を製剤することが本発明の目的である。
【0017】
本発明のさらなる目的は、それほど使用することができない及び設備列が変わらないままである必要がある、従来の商品の還流式の溶媒とは異なり、CIP、COPまたは用手洗浄のプロセスにおいて使用することができるという点で、多目的である洗浄剤を提供することである。
【0018】
さらに、本発明のさらなる目的は、従来の還流洗浄のプロセスに関係するエネルギーコストおよびプロセスにおける必要とされる反復の数を減少させることである。
【0019】
またさらに、本発明のさらなる目的は、現在用いられている商品の溶媒に関係する衛生および安全性の問題を減少させること、および適用可能な世界的な環境規制の基準および衛生と安全性の要件を満たす生物分解性の製品を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の製剤は、有効であり、メタノールおよびアセトンなどの、従来の還流式の溶媒よりも、速く洗浄する、すなわち、洗浄サイクルがより少ない、効率的な還流式の洗浄組成物である。本発明の製剤はまた、環境に優しく、使用する、取り扱う及び保存するのがより安全であり、処分またはリサイクルのコストがより少ない。
【0021】
本発明の洗浄組成物は、化学的な製造の設備列の還流洗浄に特に有用であり、CIPおよびCOPでの操作で及び用手洗浄でも使用され得る。しかしながら、真の利点は、還流式の溶媒として使用されるそれらの能力によるものであり、(CIPまたはCOPのシステムに必要とされるような)洗浄のためにさらなる機器は必要とされない。
【0022】
本発明の組成物は、化学的な製造機器の洗浄に有用である。本明細書で使用されるように「化学的な製造(chemical manufacturing)」は、基本的な化学薬品だけでなく薬剤、個人用品、天然物およびハーブ製品、食物および食品添加剤も含む。
【0023】
本発明の製剤は、混合された溶媒のみを含む半水溶性の液体;混合された溶媒と界面活性剤を含む半水溶性の液体;または溶媒と界面活性剤の非水溶性の濃縮した配合物を具体化し得る。すべての実施形態は、使用前に水でさらに希釈され得る。ヒドロトロープ、緩衝液、ビルダー、腐食抑制剤、再付着防止剤、洗浄可能な薬剤(rinsability agent)などの他の添加剤も、本発明の製剤の任意成分として含まれ得る。
【0024】
一般に、本発明の還流式の洗浄組成物は、(a)少なくとも2つの溶媒の配合物;(b)随意に、界面活性剤;および(c)随意に、水を含み、ここで、溶媒は、以下の基準:蒸気圧、蒸気密度、沸点、比熱および蒸発熱、に基づいて選択される。他の基準も考慮され得る。選択された成分はまた、環境に優しくなくてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、メタノールおよびアセトンなどの、還流洗浄の操作で使用される従来の商品の溶媒に取って代わるものとして有用な、洗浄製剤に関し、その特徴は、洗浄プロセスがより速く、安全で、コスト効率が良く、環境に優しいことである。本発明の製剤は、混合された溶媒のみを含む半水溶性の液体製剤;混合された溶媒、および洗浄を増強し、溶媒のレベルを低下させる他の添加剤および界面活性剤を含む、半水溶性の液体製剤;または溶媒と界面活性剤の非水溶性の濃縮した配合物を含み得る。すべての場合において、本発明の製剤は、使用前に水で希釈され得る、またはさらに希釈され得る。
【0026】
一般に、本発明の製剤は、商品の溶媒と比較した時に、より優れた溶解力、洗浄および湿潤の特性を有しているはずである。所望の特性を有する効果的な製剤の調製の鍵は、溶媒の選択である。最終的な本発明の製剤の、結果として生じる洗浄および湿潤の特性に重要であると考えられる溶媒の選択基準(特性)は、高い蒸気圧、高い蒸気密度、中程度の沸点(100−150℃)、低い比熱およびより低い蒸発熱などの特性を含む。(水と比較されるような)低粘性および(水よりも低い)低い表面張力などの他の基準が考慮され得る。沸点、蒸気圧および蒸気密度は、選択における重要な基準である。これらの基準にもかかわらず、溶媒(すなわち、溶解力および界面活性力)の全体的な化学作用および安全性および環境の問題は、溶媒の単一の特性または複数の特性よりも優先される。いかなる場合も、混合物が製剤された後は、個々の特性が変わらない溶媒はない。
【0027】
指定された特性を有する溶媒の選択を介して、所望の特性を有する最終的な使用製剤が達成され得る。一般的な説明によると、最終的な使用製剤の蒸気圧は、好ましくは、高く密である。高い蒸気圧は、空間をより速く満たすため、空気の交換時期を減少させる。密な蒸気は、周囲への蒸気損失を減少させ、洗浄を改善する。密な蒸気はまた、微粒子の除去を促進する。
【0028】
製剤成分は、好ましくは、中程度の沸点(100−150℃)を有し、中程度の沸点を有する最終的な使用製剤に寄与する。より暖かい蒸気は、洗浄効率を向上させる。しかし、より高い沸点によって、エネルギーコストが増加し、基板適合性の問題を引き起こすため、高沸点(>150℃)は回避されるべきである。
【0029】
低い比熱を有する溶媒は、より少ないエネルギーの消費で、それらの沸点に達するため、エネルギー消費量が減少される。より低い蒸発熱を有する溶媒も、蒸気を作り上げるのに、それほどエネルギーを必要としない。これらの特性を有する溶媒の配合物は、結果的に、蒸気を作り上げる又はその沸点に達するのにそれほどエネルギーを必要としない、最終的な使用製剤をもたらすため、エネルギーコストを節約できる。
【0030】
さらに、水よりも低い粘度を有する溶媒は、設備列におけるクレバス(crevices)およびベンド(bends)のまわりを容易に動くため、微粒子の除去が促進される。(水より低い)低い表面張力を有する溶媒は、界面活性剤と同じように洗浄する。故に、低い表面張力および低い粘度を有する溶剤を混合することによって、最終的な使用製剤における効率的な洗浄を促進する。
【0031】
選択される溶媒は、低い可燃性、低毒性、低い反応性、基板適合性および生分解性などの、取り扱い、曝露および使用のための衛生および安全性の要件を満たすはずである。
【0032】
最終的に、上述されるように、溶媒の化学作用および配合物中の及び水との適合性は重要である。
【0033】
推奨される選択基準のすべてを満たす単一の溶媒を見つけるのは難しい。溶媒は、すべての基準を満たす必要はないが、むしろ、異なる特性を有する溶媒は、互いに、および界面活性剤などの他の成分と相補的に使用することができる。溶媒は、配合物中の別の溶媒の特性を変更または調節するために使用され得る。溶媒選択での目的は、従来の商品の溶媒よりもより優れた溶解力、洗浄および湿潤の特性を有する最終的な使用の還流製剤を達成することである。その目的は、組み合わせた時に、結果的に所望の洗浄および湿潤の特性を達成する最終的な製剤をもたらす、特定の特性を有する溶媒の選択することによって達成される。特定の個々の溶媒選択の特性は、洗浄条件、温度および濃度(希釈)に依存するため、最終的な配合物中で測定可能ではない。
【0034】
本発明の製剤に有用な溶媒は、それらの特性のいくつかとともに、表1にリストされる。メタノール、NPAおよびアセトンなどの商品溶媒もまた、水とともに、比較のために含まれる。
【0035】
好ましくは、最終的な製剤において広範囲の基準を達成するために、2つ以上の溶媒が混合されるべきである。一例として、蒸着速度は、空気と比較して、どれだけ早く蒸気が表面を去るかの指標である。揮発性溶媒の蒸気(すなわち、低沸点)は、表面から急速に蒸発しすぎ、洗浄のための十分な接触時間を与えない。しかしながら、この特性は、許容可能な蒸着速度を有する製剤を達成するために、異なる沸点を有する溶媒を混合することによって最適化することができる。
【0036】
1つの実施形態において、界面活性剤、キレート剤および他の成分は、洗浄を増強し、必要とされる溶媒の量を減少するために加えられ得る。これらの追加の成分は、それらの低い起泡性および洗浄性の特性(界面活性剤)の他に、生分解性および環境上および安全性の規制への順守にも基づいて選択される。
【0037】
本発明の製剤は、気相(還流のタイプなど)および液相の洗浄の両方に使用することができる。蒸気清浄は、洗浄蒸気の垂直移動によって生じ、一方で、液体洗浄は、洗浄液の水平移動によって生じる。薬剤を含む、化学的な製造では、両方のタイプの洗浄(すなわち、垂直および水平)は、様々な機器を洗浄するために利用され得る。
【0038】
洗浄プロセスにおいて、希釈された洗浄組成物は、反応容器またはタンクに入れられる。希釈された洗浄組成物が加熱されると、不揮発性の成分は、液相に残り、残留物の大多数が残される反応容器の洗浄を助ける。不揮発性の成分(界面活性剤、キレート剤および他の成分)の様々な組み合わせは、液相洗浄を行い増強することができる。その結果、より少ない溶媒で反応容器中の残留物が洗浄され、きれいな、蒸発した溶媒は、反応タンクを除いた(beyond)、パイプ、チューブ、容器、タンクおよび機器へと自由に外へ移動することができる。その後、コンデンサーは、蒸気を冷却して液体を形成し、その液体は、洗浄される他の表面に接触する。凝縮された蒸気は、それが安全に放出され得る反応容器へと戻るように流れる。
【0039】
商品の溶媒よりも優れた溶解力、洗浄および湿潤の特性を有する本発明の製剤を調製する際に、上に議論されるように、いくつかの溶媒選択の基準が考慮された。表1は、本発明の製剤で使用するために選択される溶媒に関する特徴(特性)の他に、水、メタノール、NPAおよびアセトンの比較特性も示す。
【0041】
議論されるように、溶媒の配合物は、本発明の組成物の最終的な特性を最適化するために、所望の選択基準を有して使用される。溶媒は、それらの特性が、個々にまたは混合されると、本発明の製剤の最終的な使用希釈のために所望される特徴に近くなるように選択される。選択される溶媒に基づいて、最終的な製剤の特性が容易に予測され得る。しかしながら、最終的な製剤の特性は、変化し、洗浄条件、温度、および濃度(希釈)に依存するため、すべての特性を測定することは不可能であり得る。最終的な製剤が、水で5−10%まで希釈され得るため、最終的な特性はまた、希釈に使用される任意の水の量に依存する。
【0042】
液体の沸点は、液体の蒸気圧が大気圧と等しい温度である。選択された溶媒の沸点は、約100℃乃至約300℃、好ましくは約120℃乃至約250℃、および最も好ましくは約150℃乃至約220℃の範囲にある。
【0043】
その「使用希釈」における最終的な混合された製剤の沸点は、約90℃乃至約120℃、好ましくは約95℃乃至約110℃、および最も好ましくは約98℃乃至約102℃の範囲にあり、これは、様々な沸点を有する溶媒を混合することによって達成され得る。
【0044】
選択された溶媒の引火点(°F)は、140°F乃至300°F、好ましくは150°F乃至250°F、および最も好ましくは180°F乃至220°Fの範囲にあるはずである。また、溶媒の配合物は、引火点が、製剤の最終的な使用希釈のための好ましい範囲内にあることを保証するために使用され得る。
【0045】
蒸着速度は沸点に対して逆相関を有している、すなわち、沸点がより高くなると、蒸発の速度はより遅くなる。高い蒸着速度を有する溶媒は、容易に蒸気を形成する。>3(BuAc=1)の蒸着速度は速いと考えられ、0.8乃至3.0は中間速度であり、<0.8は、遅い(水=0.3)と考えられる。選択された溶媒は、0.04乃至1.0、好ましくは0.1乃至0.8、および最も好ましくは0.2乃至0.5の範囲の蒸着速度を有する。
【0046】
蒸気圧(mmHg@25℃)は、蒸気を形成する液体の性質である。蒸気圧は、温度とともに非線形的に上昇する。選択された溶媒の蒸気圧(mmHg@25℃)は、0.5乃至4.0mmHg(25℃)の範囲、好ましくは0.8乃至3.8mmHg(25℃)の範囲、および最も好ましくは0.9乃至3.5mmHg(25℃)の範囲にあるはずである。
【0047】
蒸発熱(j/g@BP)は、蒸気を形成するためにその沸点に1グラムの液体に吸収された熱である。より低い蒸発熱を有する溶媒も、蒸気を作り上げるのに、それほどエネルギーを必要としない。選択された溶媒の蒸発熱(j/g@BP)は、100乃至380(j/g@BP)、好ましくは150乃至350(j/g@BP)、および最も好ましくは250乃至320(j/g@BP)の範囲にあるはずである。
【0048】
蒸気密度は、空気(空気=1)と比較した蒸気のモル重量である。蒸気密度は、周囲空気への蒸気の損出を減少させるため、蒸気の洗浄効率を改善する。選択された溶媒の蒸気密度は、3.0乃至9.0、好ましくは4.0乃至8.0、および最も好ましくは5.0乃至6.0の範囲にある。
【0049】
比熱は、液体の温度を1度上げるのに必要なエネルギーである。比熱は、溶媒の固有の化学作用および結合構造に関連する。選択された溶媒の25℃での比熱(j/g/℃)は、0.1乃至2.5の範囲、好ましくは0.15乃至1.8の範囲、および最も好ましくは0.16乃至1.5の範囲にある。
【0050】
溶媒の選択基準値のいくつかが、温度と圧力によって変化し得ることを留意することは重要である。これらの変化は、必ずしも線形(linear)ではない。したがって、表1における基準は、溶媒選択のための一般的な手引きとして見られるべきである。
【0051】
コストは、選択の際の1つの因子であるが、本発明の製剤が、より速い洗浄を達成し、効果的に効かせるためにそれほど製品を必要としないため、原動となる基準ではない。
【0052】
他の基準も考慮され得る。表面張力によって、汚れは、溶媒の配合物中に溶解することが可能である。これらの値は、洗浄の最適化をための水よりもはるかに小さいはずである。選択された溶媒の表面張力(dyne/cm)は、約15と40(dyne/cm)の間の範囲である。選択された溶媒の比重(g/cc)は、典型的に、約0.9乃至約1.0(g/cc)の範囲にある。低粘性を有する溶媒は、流れに抵抗せず、効率的な洗浄のために機器におけるベンドのまわりをより速く動くため、好ましい。好ましい粘度(cps)範囲は、約1.0乃至約3.5(cps)である。
【0053】
前述の基準はすべて、還流式の組成物にとって適切な溶媒を選択するのに有用である。還流洗浄にとって有効且つ効率的となる特性を有するバランスのとれた製剤を作り出すために、様々なカテゴリーの溶媒の配合物(極性プロトン性または極性非プロトン性)および化学作用が利用され得、実際にそれが好ましい。上記の基準のうち、沸点および蒸気密度は、混合された溶媒の還流式の組成物へと製剤する溶媒を選択するのに最も重要である。また、環境配慮と安全要因も重要である。
【0054】
明白なように、多くの潜在的な選択基準の組み合わせが、表1に基づいて作られ得る。しかしながら、本発明の製剤の鍵は、最終的な製剤が、トータルで、商品の溶媒よりも優れた溶解および湿潤の特性を有することである。重要な「最終用途」の特性は、重要な溶媒選択の基準でもある、沸点および蒸気圧である。最終用途の特性は、溶媒選択の基準に依存し、希釈によって予測され得る。あらゆる個々の溶媒の沸点が、混合によって変更され得るが、選択された溶媒はまた、中程度の沸点(100−150℃)を有するはずである。
【0055】
本発明の組成物のための所望の結果は、VOC規制の順守および地表放電(ground discharge)、保存、取り扱いおよび輸送なその安全性の問題への取り組みなどの、環境的恩恵である。第2の目的は、主に、商品の溶媒(メタノールおよびアセトン)と本発明の製剤との間の違いのために達成される、洗浄効率および汎用性である。本発明の製剤は、推奨された基準を有する様々な溶媒の混合を介して増強された還流洗浄を提供する特性を有する。
【0056】
推奨された溶媒が、安全に(高い引火点)商品の溶媒よりも高い温度まで加熱され得るため、改善された洗浄性能が達成される。より高い沸点は、より高い蒸気圧およびより低い蒸着速度をもたらす。エネルギー必要量は、低い比熱、低い蒸発熱および高い蒸気密度を有する溶媒を選択することによって減少される。化合物の化学的分類による又は極性のタイプによるなどの様々な化学作用による溶媒の混合はまた、洗浄プロセスを増強し得る。
【0057】
界面活性剤およびヒドロトロープも、洗浄を増強するために、および必要とされる溶媒の量を減らすために、本発明の製剤に使用され得るため、コストが減少する。有用な界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性および両性の界面活性剤を含み、当業者に周知である。具体的には、有用な界面活性剤は、アルコールエトキシレート、EO/POブロックコポリマー、スルフォナート、リン酸エステル、アルカノアート、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、オクチルジプロピオナート、およびそれらの混合物を含む。本発明の製剤に使用するための界面活性剤を選択するために使用される基準は、溶媒との適合性、安定性、低度から中程度の起泡性、優れた洗浄性、配合物の沸騰温度に抵抗する能力、生分解性(EU648)およびReach規制の順守を含む。界面活性剤は、最終的な製剤の総重量に基づいて、約0乃至約20重量%の範囲の量で、本発明の製剤中に存在し得る。
【0058】
本発明の製剤はまた、ナトリウムメチルグリシンジアセチン酸(MGDA)、アスパラギン酸、グルコン酸ナトリウム、およびエチレンジアミンジスクシナート(EDDS)などの、キレート剤または金属イオン封鎖剤;乳酸エチル、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムなどの、酸性および塩基性の緩衝液;ホウ酸およびリン酸のエステルなどの、腐食抑制剤;ビルダー;およびアクリル酸ポリマーまたはコポリマーなどの、再付着防止剤および洗浄可能な薬剤を含む。
【0059】
本発明の製剤は、半水溶性の溶媒配合物;半水溶性および界面活性の配合物;または非水溶性の溶媒配合物の濃縮物として調製される。すべての例において、本発明の製剤は、水でさらに希釈される。含水量は約90%までの範囲であり得るが、最終的な使用中の還流洗浄の組成物の含水量は、約0乃至約80%の範囲である。
【0060】
本発明の製剤は、種々様々の洗浄の適用および方法に使用され得る。表2は、他の溶媒によって前に洗浄された、熟慮される汚れのタイプを示すが、本発明の製剤が有効である、適用または汚れを決して網羅しているわけではい。
【実施例】
【0062】
実施例1
以下の製剤(それらすべては本発明の範囲内にある)を調製した。多くの成分が複数の製造業者から入手可能であるために、特定成分に関してリストされた商品名は、例示にすぎない。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
【表12】
【0073】
【表13】
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
【表16】
【0077】
【表17】
【0078】
実施例2 − 洗浄評価
セットアップ − 製造環境において還流式のクリーナーの使用をシミュレートするために、還流装置を、十分な水および電源接続部を備えたフード下でセットアップした。各々が様々な本発明の製剤を含む煮沸フラスコを、加熱マントル(heating mantel)を使用して加熱した。ソックスレー(soxhlet)を、上に置き、フラスコに付けた。2”x4”のステンレス鋼のクーポン(coupons)を、表16に確認されるように、乾燥した薬学的な汚れとともに、ソックスレーに入れるか、または金属線によってソックスレー中に懸濁した。冷たい流水に付けられたコンデンサ管は、洗浄製剤から生じた蒸気を凝縮し、凝縮した蒸気を、汚れたクーポンが入れられたソックスレーに集めた。
【0079】
汚れ − 多くの潜在的な汚れにより、わずかな本発明の製剤だけが、洗浄性能のためにスクリーニングされた。対照、メタノールは、比較としてのすべて土に関して使用しななかった。メタノールは、十分に効果があり、大多数の土を完全に取り除くことができるが、付随する欠点を伴うことが想定される。
【0080】
洗浄手順において、本発明の製剤の各々の5重量%の希釈を使用した。この希釈の活性は、100パーセントの洗浄またはウォーターブレークフリー(water break free)(WBF)ウォーターブレークのために最適化されなかった。還流洗浄の時間は20−30分であった。クーポンを、60秒間、環境用の水道水ですすいだ。洗浄の結果は、取り除かれた汚れの割合として、表18に明記される。
【0081】
【表18】
【0082】
上記の評価は、沸点まで加熱した後に、本発明に従って製剤された洗浄洗剤が、溶剤洗浄液揮発成分(溶媒および水)の蒸気をもたらしたことを示した。希釈された洗浄組成物中の主成分が水であったため、洗浄希釈の沸点は、水の沸点(100℃)に近かった。結果は、本発明の製剤が、ほとんどの場合において、商品の溶媒、メタノールと同じ又はそれ以上の効果を有したことを示した。
【0083】
製剤の不揮発性の成分(界面活性剤、キレート剤、緩衝液)は、実際には、大多数の残留物がある反応容器の液相の洗浄に寄与することが予想されるであろう。不揮発性の成分は、他の機器に移動することが予想されるであろう。不揮発性の成分は、すすぎの工程の前に安全に放出され得、施設の設計によって、凝縮した蒸気が反応容器に戻ると、内容物のすべては、廃棄用の水溜へと放出され得る。
【0084】
特許制定法に従って、最良の様式および好ましい実施形態が明記され、本発明の範囲はそれに限定されず、むしろ、付属の請求項の範囲によって限定される。