(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光照射手段は、略赤色の光を出射する赤色光源と、略青色の光を出射する青色光源と、略緑色の光を出射する緑色光源と、それらの光源から出射される光の光量を各光源別に調整する光量調整手段と、を有することにより、略赤色、略青色及び略緑色の内の一色の色の光を選択的に照射可能に構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のひび割れ検知装置。
【背景技術】
【0002】
何らかの構造物(例えば、トンネルや堤防やダム等のコンクリート構造物)の表面に生じたひび割れや段差等(以下、単に“ひび割れ”とする)が安全性等に影響を及ぼす場合がある。例えば、トンネルや道路の壁面にひび割れが生じると、やがて表面部分が剥落して交通事故や交通障害の原因になりかねないし、堤防やダム等にひび割れが生じると、水による浸食を助長して強度低下を引き起こしてしまうおそれもある。
【0003】
そのようなひび割れの有無を作業者が目視でチェックすることも考えられるが、作業が大変で、コストも嵩んでしまうという問題があった。
【0004】
そこで、構造物の表面をデジタルカメラで撮影し、ひび割れが生じているかどうかを自動的に確認する装置として種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
図4は、ひび割れ検知装置の従来構造の一例を示す模式図であり、符号102は、被検体である構造物を示し、符号102aは、該構造物102の表面に生じた欠陥部分を示し、符号103は、該構造物102の表面に光を照射する光照射手段を示し、符号104は、該構造物102の表面を撮影する撮影手段を示す。また、符号105は、撮影手段104により撮影された画像の二値化処理を行う二値化処理部を示し、符号106は、該二値化処理した画像データからひび割れを検知するひび割れ検知部を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、目視によるチェックや上述のような装置では、構造物の表面が汚れている場合にはひび割れの有無を正確に検知できないおそれがあった。例えば、道路トンネルの壁面などは、自動車(ガソリン車やディーゼル車)が出す排気ガスによるススの付着により黒く汚れていることが多く、ひび割れの部分もひび割れしていない部分もススの付着により黒くなってしまい、画像や目視によるひび割れ検知が困難になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできるひび割れ検知装置及びひび割れ検知方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
図1に例示するものであって、略赤色の光、略青色の光、及び略緑色の光の内の
一つの光を被検体(2)に照射し得る光照射手段(3)と、
該光照射手段(3)により光が照射されている状態の被検体(2)を撮影する撮影手段(4)と、
該撮影手段(4)により得られた画像の各画素についてRGB値(r,g,b)から彩度(S)を演算する彩度演算手段(5)と、
該彩度演算手段(5)が演算した彩度(S)
がどの範囲に分布するかに基づき、前記被検体(2)の表面におけるひび割れ(2a)の有無を判別するひび割れ判別手段(6)と、を備えたことを特徴とするひび割れ検知装置(1)に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、
図3(a) に例示するように、前記光照射手段が、略赤色の光を出射する赤色光源(13R)と、略青色の光を出射する青色光源(13B)と、略緑色の光を出射する緑色光源(13G)と、それらの光源(13R,13B,13G)から出射される光の光量を各光源別に調整する光量調整手段(13C)と、を有することにより、略赤色、略青色及び略緑色の
内の一色の色の光を選択的に照射可能に構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項
3に係る発明は、略赤色の光、略青色の光、及び略緑色の光の
内の一つの光を光照射手段(3)により被検体(2)に照射する工程と、
前記光が照射されている状態の被検体(2)を撮影手段(4)により撮影する工程と、
該撮影手段(4)により得られた画像の各画素についてRGB値(r,g,b)から彩度(S)を演算する工程と、
該演算された彩度(S)
がどの範囲に分布するかに基づき、前記被検体(2)の表面におけるひび割れ(2a)の有無を判別する工程と、を備えたことを特徴とするひび割れ検知方法に関する。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び
3に係る発明によれば、被検体の表面が汚れていて ひび割れを容易に視認できないような場合であっても、ひび割れの有無を正確に検知できる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、被検体表面の汚れの状況に応じて照明光の色を適宜切り替えることができ、ひび割れの有無を正確に検知することができる。例えば、被検体がススなどで汚れていなくてひび割れが容易に視認できるようであれば赤色光源、青色光源及び緑色光源の全てを点灯して白色光を作り出してひび割れ検知を行えば良く、被検体の表面がススなどで汚れていてひび割れが容易に視認できないようであれば、赤色光源、青色光源又は緑色光源のいずれかを点灯してひび割れ検知を行えば良い。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1乃至
図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明に係るひび割れ検知装置は、
図1に符号1で例示するものであって、
・ 略赤色の光、略青色の光、及び略緑色の光の内の少なくとも一つ(一色)の光を被検体2に照射し得る光照射手段3と、
・ 該光照射手段3により光が照射されている状態の被検体2を撮影する撮影手段4と、
・ 該撮影手段4により得られた画像の各画素P
1,P
2,…についてRGB値r,g,bから彩度Sを演算する彩度演算手段5と、
・ 該彩度演算手段5が演算した彩度Sに基づき、前記被検体2の表面におけるひび割れの有無を判別するひび割れ判別手段6と、
を備えている。
【0020】
ここで、本発明者らが行った実験結果を
図2(a) (b) に示す。
【0021】
被検体としては、ひび割れが生じていて該ひび割れが視認できるコンクリートブロックを使用し、該コンクリートブロックの撮影は昼間ではなく夜間に行った。撮影に際しては、まず、該コンクリートブロック(ひび割れを含む部分)に対向する位置に撮影手段(デジタルカメラ)4と光照射手段3とを三脚等(不図示)で固定し、該ひび割れを含む部分の撮影を行った。該撮影により得た画像(以下、“第1画像”とする)にはひび割れが写っていた。次に、該ひび割れを含む部分に黒色塗料をスプレー(噴霧器)で吹き付けてひび割れが容易に視認できないようにし、白色光を照射して撮影手段4による撮影を行った(以下、該撮影により得た画像を“第2画像”とする)。さらに、該ひび割れを含む部分を赤色光のみで照射して撮影手段4による撮影を行った(以下、該撮影により得た画像を“第3画像”とする)。なお、前記1画像を撮影してから前記第3画像を撮影するまでは前記撮影手段4を動かさないようにした。したがって、前記第2及び第3画像においてはひび割れは視認できにくいものの、前記第1画像においてひび割れが写っている位置(画素)と同じ位置(画素)にひび割れが存在していることとなる。
【0022】
前記第1画像ではひび割れが視認できるので、ひび割れが写っている画素(以下、“ひび割れ内画素”とする)はどの画素で、ひび割れが写っていない画素(以下、“ひび割れ外画素”とする)はどの画素かの区別ができる。前記第1画像と前記第2画像と前記第3画像とは、撮影手段4を動かさないで撮影したものであるため、それらの画像においてはひび割れ内画素とひび割れ外画素とは一致している。そこで、前記第2画像において、全ての画素(つまり、ひび割れ内画素とひび割れ外画素)を抽出し、各画素のRGB値から彩度を演算し、ひび割れ内画素の彩度の分布とひび割れ外画素の彩度の分布とを調べた。
図2(a) に符号E
1で示す棒線群(実線の棒線群)はひび割れ内画素の彩度の分布を示しており、ひび割れが存在する画素の彩度は2〜6の範囲に分布していることが分かった。また、
図2(a)
に符号E
2で示す棒線群(破線の棒線群)はひび割れ外画素の彩度の分布を示しており、ひび割れが存在しない画素の彩度は5〜11の範囲に分布していることが分かった。つまり、白色光を照射して撮影した場合は、符号E
1で示す棒線群(実線の棒線群)と符号E
2で示す棒線群(破線の棒線群)とが接近しているので、ひび割れが存在している画素か否かの区別をすることが困難であることが理解できる。
【0023】
次に、第3画像(つまり、赤色光を照射して得た画像)についても同様の処理を行った。すなわち、該第3画像において、全ての画素(つまり、ひび割れ内画素とひび割れ外画素)を抽出し、各画素のRGB値から彩度を演算し、ひび割れ内画素の彩度の分布とひび割れ外画素の彩度の分布とを調べた。
図2(b) に符号E
1で示す棒線群(実線の棒線群)はひび割れ内画素の彩度の分布を示しており、ひび割れが存在する画素の彩度は7〜13の範囲に分布していることが分かった。また、
図2(b)
に符号E
2で示す棒線群(破線の棒線群)はひび割れ外画素の彩度の分布を示しており、ひび割れが存在しない画素の彩度は37〜42の範囲に分布していることが分かった。つまり、赤色光を照射して撮影した場合は、符号E
1で示す棒線群(実線の棒線群)と符号E
2で示す棒線群(破線の棒線群)とが接近せずに離れているので、ひび割れが存在している画素か否かの区別をすることが容易であることが分かった。なお、本発明者らは、青色光を照射して同様の実験を行い、さらに緑色光を照射して同様の実験を行ったが、赤色光を使った場合がひび割れの検知が最も容易であり、緑色光→青色光→白色光の順にひび割れ検知が困難になる(つまり、符号E
1で示す棒線群(実線の棒線群)と符号E
2で示す棒線群(破線の棒線群)とが接近してしまう)ことを突き止めた。
【0024】
以上に述べた実験からも理解できるように、本発明によれば、被検体2の表面が汚れていて ひび割れを容易に視認できないような場合であっても、ひび割れの有無を正確に検知できる。
【0025】
ここで、前記光照射手段3としては、
・ 略赤色の光を出射する赤色光源(例えば、赤色ランプや赤色LED等)3R
・ 略青色の光を出射する青色光源(例えば、青色ランプや赤色LED等)3B
・ 略緑色の光を出射する緑色光源(例えば、緑色ランプや赤色LED等)3G
の内の少なくとも一つの光源を備えたものを挙げることができる。その場合、該光照射手段を、
図3(a) に符号13で例示するように、
・ 略赤色の光を出射する赤色光源13Rと、
・ 略青色の光を出射する青色光源13Bと
・ 略緑色の光を出射する緑色光源13Gと、
・ それらの光源13R,…から出射される光の光量を各光源別に調整する光量調整手段13Cと、
により構成し、
・ 略赤色、略青色及び略緑色の少なくとも一色の色の光と、
・ 略赤色、略青色及び略緑色が混色されてなる略白色の光
とを選択的に照射可能に構成しても良い。そのように構成した場合は、被検体2表面の汚れの状況に応じて照明光の色を適宜切り替えることができ、ひび割れの有無を正確に検知することができる。例えば、被検体2がススなどで汚れていなくてひび割れが容易に視認できるようであれば赤色光源13R、青色光源13B及び緑色光源13Gの全てを点灯して白色光を作り出してひび割れ検知を行えば良く、被検体2の表面がススなどで汚れていてひび割れが容易に視認できないようであれば、赤色光源13R、青色光源13B又は緑色光源13Gのいずれかを点灯してひび割れ検知を行えば良い。また、赤色光源13R、青色光源13B及び緑色光源13Gの全てを点灯させる場合、該赤色光源13Rや該青色光源13Bの光量を前記光量調整手段13Cにて調整することにより 光(つまり、略赤色の光と略青色の光と略緑色の光とが混ぜられた光)の色温度を変化させて、ひび割れの検知の精度を高めることも可能となる。なお、前記光量調整手段13Cとしては、
・ 各光源13R,…への電流量を調整する手段や、
・ 各光源13R,…から出射される光を遮蔽する手段(例えば、スリットなど)、
などを挙げることができる。
【0026】
また、該光照射手段を、
図3(b) に例示するように、
・ 略赤色の光を出射する赤色光源23R、略青色の光を出射する青色光源23B、及び略緑色の光を出射する緑色光源23Gの内の少なくとも一つの光源と、
・ 略白色の光を出射する白色光源(例えば、白色ハロゲンランプや白色LED等)23Wと、
・ それらの光源23R,…から出射される光の光量を各光源別に調整する光量調整手段23Cと、
により構成し、
・ 被検体2の表面がスス等で汚れていてひび割れを容易に視認できないような場合は、赤色光源23R、青色光源23B又は緑色光源23Gのいずれか一つを点灯させて略赤色か略青色か略緑色の光を照射し、
・ 被検体2の表面がスス等で汚れていなくてひび割れを容易に視認できるような場合は、白色光源23Wを点灯させて略白色の光を照射する、
ようにすると良い。この場合、前記白色光源23Wには、赤色光源23R、青色光源23B及び緑色光源23Gより色温度が高い光源(つまり、赤色光源23R、青色光源23B及び緑色光源23Gを点灯させて作り出した白色光よりも色温度が高くなる光源)を用いると良い。そのようにした場合には、白色光を使った場合のひび割れの検知の精度を高めることができる。また、
図3(b) に示すように、赤色光源23Rと青色光源23Bと緑色光源23Gと白色光源23Wとを設けた場合には、全ての光源23R,…を点灯させれば輝度の高い白色光を得ることができ、ひび割れの検知を容易にできる。
【0027】
さらに、前記光照射手段を、
図3(b) に例示するように、
・ 略赤色の光を出射する赤色光源23Rと、
・ 略青色の光を出射する青色光源23Bと、
・ 略緑色の光を出射する緑色光源23Gと、
・ 略白色の光を出射する光源であって、前記赤色光源23Rや前記青色光源23Bや前記緑色光源23Gよりも色温度が高い白色光源23Wと、
により構成しても良い。そのように構成した場合には、前記赤色光源23R、前記青色光源23B、前記緑色光源23G及び前記白色光源23Wの全ての光源を点灯させると、該白色光源23Wからは色温度が高い白色光(つまり、前記赤色光源23R、前記青色光源23B及び前記緑色光源23Gからの光よりも色温度が高い白色光)が被検体2に照射され、前記赤色光源23R、前記青色光源23B及び前記緑色光源23Gによると 色温度が低い白色光(つまり、前記白色光源23Wからの白色光よりも色温度が低い白色光)が被検体2に照射されることとなる。そして、このように色温度が異なる2種類の白色光を被検体2に照射することにより、ひび割れの検知精度を高めることができる。
【0028】
さらに、前記光照射手段を、
・ 略白色の光を出射する白色光源と、
・ 該白色光源の光路上に配置されて前記略白色の光を略赤色か略青色か略緑色のいずれかの色の光に変更するフィルター部(カラーフィルター)と、
により構成しても良い。
【0029】
なお、前記撮影手段4としては、公知のデジタルカメラを挙げることができる。
【0030】
一方、前記彩度演算手段5では、公知の変換式によりRGB値r,g,bを彩度Sに変換するようにすると良い。公知の変換式としては、例えば、下式(RGB空間をHSL空間に変換するための変換式)を挙げることができる。すなわち、
【数1】
【0031】
ところで、
図2(b) に示す例では、彩度Sが 大体5〜15の範囲にあればひび割れであると判断することができるが、そのような範囲Srangeを予め計測しておいて、その範囲Srangeを基準データ記憶手段7に記憶させておく。そして、前記ひび割れ判別手段6は前記彩度演算手段5にて求めた彩度S(各画素の彩度S)が前記範囲内にあるかどうかを比較し、範囲内にあれば「ひび割れである」との判定結果Cを画素のアドレスApと共に出力し、範囲外であれば「ひび割れでない」との判定結果Cを画素のアドレスApと共に出力するようにすると良い。
【0032】
また、本発明に係るひび割れ検知装置1には、
・ 「ひび割れである」との判定結果Cと、
・ その画素のアドレスApと、
に基づき、
図1に符号Dで示すような画像(例えば、ひび割れの場所や形状を黒く塗りつぶしたドット等で示す画像)を表示するひび割れ表示手段8を設けておいても良い。
【0033】
一方、本発明に係るひび割れ検知方法は、
・ 略赤色の光、略青色の光、及び略緑色の光の少なくとも一つ(一色)の光を光照射手段3により被検体2に照射する工程と、
・ 前記光が照射されている状態の被検体2を撮影手段4により撮影する工程と、
・ 該撮影手段4により得られた画像の各画素についてRGB値r,g,bから彩度Sを演算する工程と、
・ 該演算された彩度Sに基づき、前記被検体2の表面におけるひび割れの有無を判別する工程と、
を備えている。