(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939593
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブスポンジ状構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 31/02 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
C01B31/02 101F
C01B31/02 101Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-225878(P2014-225878)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-17030(P2016-17030A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】201410320675.4
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100200528
【弁理士】
【氏名又は名称】水村 香穂里
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲シュ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 佳平
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−541489(JP,A)
【文献】
特表2010−508432(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0092877(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ原料を提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブ原料をカーボンナノチューブアレイから直接にこそぎ取って取得する第一ステップと、
前記カーボンナノチューブ原料を有機溶剤に入れ、超音波震動によって綿毛構造体を形成する第二ステップと、
前記綿毛構造体を水洗いする第三ステップと、
真空の環境で水洗いした前記綿毛構造体を冷凍して乾燥させ、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を取得する第四ステップと、
前記カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積して、カーボンナノチューブスポンジ状構造体を取得する第五ステップと、
含むことを特徴とするカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法。
【請求項2】
カーボンナノチューブネット構造体及び炭素層からなるカーボンナノチューブスポンジ状構造体であって、
前記カーボンナノチューブネット構造体は相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブを含み、
相互に絡み合う前記複数のカーボンナノチューブの間には複数の穴が形成され、
前記炭素層は各カーボンナノチューブの表面を均一に被覆し、交差し、且つ隣接する二つカーボンナノチューブを連接させ、
前記炭素層と前記カーボンナノチューブネット構造体との質量比は0.01:1〜2:1であることを特徴とするカーボンナノチューブスポンジ状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブスポンジ状構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は1991年に飯島澄男によって発見され、21世紀における重要な新素材の1つとして期待されている。また、カーボンナノチューブは機械・電気・熱特性に優れていることから、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、エネルギー、複合材料等、広範囲な分野での応用も期待されている。しかし、一本のカーボンナノチューブはナノスケールの大きさであり、微視的な構造体であるため利用し難い。従って、現在、複数のカーボンナノチューブを原材料として、巨視的な大きい寸法のカーボンナノチューブ構造体の形成が注目されている。
【0003】
現在、巨視的な大きい寸法のカーボンナノチューブ構造体は、主にカーボンナノチューブスポンジ状構造体である。カーボンナノチューブスポンジ状構造体は、複数の穴を有し、質量も軽いため、吸着及び濾過の分野に応用されている。しかし、CVD法によって形成するカーボンナノチューブスポンジ状構造体は弾性がなく、圧縮しても完全に元の形状に戻ることができず、しかも、機械性能に優れていないので応用が制限されている。また、従来のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は複雑であり、且つコストも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101458975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、前記課題を解決するために、本発明は、圧縮しても完全に元の形状に戻ることができ、且つ優れた機械性能を有するカーボンナノチューブスポンジ状構造体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は、カーボンナノチューブ原料を提供する第一ステップであって、カーボンナノチューブ原料をカーボンナノチューブアレイから直接にこそぎ取って取得する第一ステップと、カーボンナノチューブ原料を有機溶剤に入れ、超音波震動によって綿毛構造体を形成する第二ステップと、綿毛構造体を水洗いする第三ステップと、真空の環境で水洗いした綿毛構造体を冷凍して乾燥させ、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を取得する第四ステップと、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積し、カーボンナノチューブスポンジ状構造体を取得する第五ステップと、含む。
【0007】
本発明のカーボンナノチューブスポンジ状構造体は、カーボンナノチューブネット構造体及び炭素層からなるカーボンナノチューブスポンジ状構造体であって、カーボンナノチューブネット構造体は相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブを含み、相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブの間には複数の穴が形成され、炭素層は各カーボンナノチューブの表面を均一に被覆し、交差し、且つ隣接する二つカーボンナノチューブ102を連接させ、炭素層とカーボンナノチューブネット構造体との質量比は0.01:1〜8:1である。
【発明の効果】
【0008】
従来の技術と比べて、本発明のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は以下の利点を有する。すなわち、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は、簡単な超音波分散、冷凍乾燥及び炭素堆積の工程を含み、カーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮しても完全に元の形状に戻すことができ、また、優れた機械性能を有するカーボンナノチューブスポンジ状構造体を形成できる。従って、本発明のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は技術的に簡単であり、コストが低く、工業的に広く応用できる。
【0009】
また、従来の技術と比べて、本発明のカーボンナノチューブスポンジ状構造体は以下の利点を有する。第一に、カーボンナノチューブネット構造体は相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブを含み、炭素層は交差し、且つ隣接する二つのカーボンナノチューブを連接させる。これにより、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は圧縮しても完全に元の形状に戻ることができ、且つ優れた機械性能を有する。第二に、炭素層とカーボンナノチューブネット構造体との質量比は小さく、炭素層がカーボンナノチューブネット構造体における穴に充填されないので、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は大きい比表面積を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法を示す流れ図である。
【
図2】本発明に係るカーボンナノチューブスポンジ状構造体を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1において取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
【
図4】比較例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
【
図5】比較例2で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
【
図6】比較例3で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
【
図7】本発明の実施例1において取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を圧縮した後の写真である。
【
図8】本発明の実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を圧縮した後の圧力放出曲線図及び収縮曲線図である。
【
図9】本発明の実施例1において取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮した後の写真である。
【
図10】本発明の実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮した後の圧力放出曲線図及び収縮曲線図である。
【
図11】本発明の実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図12】本発明の実施例2のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図13】本発明の実施例3のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0012】
図1を参照すると、本実施形態はカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法を提供する。本実施のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は、カーボンナノチューブ原料を提供するステップであって、このカーボンナノチューブ原料をカーボンナノチューブアレイから直接にこそぎ取って取得するステップ(S1)と、カーボンナノチューブ原料を有機溶剤に入れ、超音波震動によって綿毛構造体を形成するステップ(S2)と、綿毛構造体を水洗いするステップ(S3)と、真空の環境で水洗いした綿毛構造体を冷凍して乾燥させ、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を取得するステップ(S4)と、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積し、カーボンナノチューブスポンジ状構造体を取得するステップ(S5)と、含む。
【0013】
ステップ(S1)において、カーボンナノチューブ原料は複数のカーボンナノチューブからなる。該複数のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ或いは多層カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブの直径は20nm〜30nmである。カーボンナノチューブの長さは200μm〜400μmであるが、好ましくは、カーボンナノチューブの長さは300μm〜400μm。また、カーボンナノチューブの表面は純粋で、基本的に不純物を含まず、何れの化学修飾も行われていないことが好ましい。逆に、表面が純粋ではなく、不純物を含むカーボンナノチューブ、或いは化学修飾が行われたカーボンナノチューブであると、カーボンナノチューブ同士の間の作用力が破壊される。
【0014】
カーボンナノチューブ原料の製造方法は以下である。まず、基板にカーボンナノチューブアレイを成長させる。次いで、ブレード或いは他の工具によって、カーボンナノチューブアレイを基板から直接にこそぎ取って、カーボンナノチューブ原料を取得する。カーボンナノチューブ原料をカーボンナノチューブアレイから直接に取得するので、カーボンナノチューブ原料を採用して形成されるカーボンナノチューブスポンジ状構造体は優れた強度を有する。前記カーボンナノチューブアレイは化学気相堆積法(CVD法)により成長される。次に、カーボンナノチューブアレイの成長工程について詳しく説明する。まず、基材を提供する。該基材は、P型又はN型のシリコン基材、又は表面に酸化物が形成されたシリコン基材が利用される。本実施形態において、厚さが4インチのシリコン基材を提供する。次に、基材の表面に触媒層を堆積させる。該触媒層は、Fe、Co、Ni又はそれらの合金である。次に、触媒層が堆積された基材を、700〜900℃、空気の雰囲気において30〜90分間アニーリングする。最後に、基材を反応装置内に置いて、保護ガスを導入すると同時に基材を500〜700℃に加熱して、5〜30分間カーボンを含むガスを導入する。これにより、高さが200〜400μmの超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)が成長される。超配列カーボンナノチューブアレイは、相互に平行に基材に垂直に成長する複数のカーボンナノチューブからなる。前記の方法により、超配列カーボンナノチューブアレイにアモルファス炭素又は触媒剤である金属粒子などの不純物が残らず、純粋なカーボンナノチューブアレイが得られる。本実施形態において、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブが比較的長く、その長さは300μm以上である。また、ブレードなどの工具を利用して、カーボンナノチューブをシリコンからこそぎ取った後、一部のカーボンナノチューブは相互に絡み合っている。
【0015】
ステップ(S2)において、有機溶剤は、好ましくは、カーボンナノチューブを良好に浸すことができる有機溶剤であり、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール、二塩化エチレン或いはクロロホルムである。カーボンナノチューブ原料と有機溶剤との比率は必要に応じて選択できる。
【0016】
超音波震動の仕事率は300W〜1500Wであり、好ましくは、500W〜1200Wである。また、超音波震動の時間は10分間〜60分間である。超音波震動した後、カーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブは有機溶剤に均一に分布し、綿毛構造体を形成する。カーボンナノチューブ原料は、超配列カーボンナノチューブアレイから直接にこそぎ取って取得するので、超音波震動を行なっても、カーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブは大きい比表面積を持ち、カーボンナノチューブの間に大きい分子間力があるので、カーボンナノチューブは相互に分離せず、相互に吸着して絡み合い、綿毛構造体を維持する。綿毛構造体は複数の穴を有する。カーボンナノチューブは、良好に有機溶剤に浸されるので、カーボンナノチューブは有機溶剤に均一に分布する。
【0017】
ステップ(S3)において、有機溶剤の凝固点は−100℃より低いので、後の冷凍乾燥の工程に対して不利である。従って、綿毛構造体を水洗いして、綿毛構造体における穴に水を充填することによって、後の冷凍乾燥工程を有利にする。
【0018】
ステップ(S4)において、真空の環境で水洗いした綿毛構造体を冷凍して乾燥させる方法は、以下の段階を含む。まず、綿毛構造体を冷凍乾燥装置に置いてこの装置内を真空にした後、−40℃以下まで急激に冷却する。次いで、温度を各段階に分けて徐々に室温まで戻す。各段階の温度に達する際、綿毛構造体を1〜10時間乾燥させる。真空の環境で水洗いした綿毛構造体を冷凍して乾燥させるため、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体が崩れることを防止でき、ふっくらとしたカーボンナノチューブスポンジ状構造体を形成することができる。カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の密度は0.5mg/cm
3〜100mg/cm
3であるが、この密度は制御することができる。
【0019】
ステップ(S5)において、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する方法は制限されない。例えば、化学気相堆積法或いは電気化学堆積法である。ここでは、化学気相堆積法を以下に説明する。カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を反応装置に放置して、メタン或いはエチンなどの炭素源気体を導入して、さらにアルゴンなどの保護気体を導入して、保護気体の条件の下、温度を700℃〜1200℃まで加熱して、炭素源気体を分解させ、炭素層を形成する。カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する時間は1分間〜240分間である。カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する時間が長いほど、各カーボンナノチューブの表面に堆積する炭素層は厚い。炭素層の厚さは2nm〜100nmである。炭素層は結晶炭素、非結晶炭素及びこれらの混合物の何れか一種である。
【0020】
図2を参照すると、本実施形態で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体は、カーボンナノチューブネット構造体10及び炭素層12からなる多孔質の構造体である。カーボンナノチューブネット構造体10は相互に絡み合っている複数のカーボンナノチューブ102を含む。好ましくは、カーボンナノチューブネット構造体10は相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブ102からなる。相互に絡み合う複数のカーボンナノチューブ102の間には複数の穴が形成されている。カーボンナノチューブネット構造体10の比表面積は、200m
2/gより大きい。炭素層12は連続した構造体であり、カーボンナノチューブ102を被覆し、交差し、且つ隣接する二つカーボンナノチューブ102を連接させて、カーボンナノチューブ102を固定する。炭素層12の質量比がカーボンナノチューブネット構造体10に比べて小さ過ぎる場合、炭素層12は、各カーボンナノチューブ102の表面を均一に被覆することが難しく、また、カーボンナノチューブ102を固定することも難しい。炭素層12の質量比がカーボンナノチューブネット構造体10に比べて大き過ぎる場合、炭素層12がカーボンナノチューブネット構造体10における穴を塞ぎ易くなり、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の応用を制限してしまう。炭素層12が、各カーボンナノチューブ102の表面を均一に被覆し、カーボンナノチューブ102を固定し、また、カーボンナノチューブネット構造体10における穴を塞ぎないことを保証できるため、炭素層12とカーボンナノチューブネット構造体10との質量比は0.01:1〜8:1である。好ましくは、炭素層12とカーボンナノチューブネット構造体10との質量比は0.05:1〜2:1である。炭素層12の厚さは2nm〜100nmである。炭素層は結晶炭素、非結晶炭素及びこれらの混合物の何れか一種である。
【0021】
カーボンナノチューブスポンジ状構造体は優れた機械性能及び大きい比表面積を有し、油汚染処理及び水汚染処理などの分野に応用できる。また、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は優れた機械性能も有するため、圧縮しても元の形状に戻すことができるので、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は、複数の穴を有する綿毛構造体を維持できる。従って、不純物及び汚染物を吸着でき、且つ再利用でき、コストも低い。更に、カーボンナノチューブスポンジ状構造体はリチウムイオン電池にも応用できる。すなわち、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は優れた機械性能を有し、且つ圧縮しても元の形状に戻すことができるので、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は複数の穴を有する綿毛構造体を維持でき、均一に触媒粒を吸着でき、リチウムイオン電池の効率を高めることができる。
【0022】
(実施例1)
実施例1ではカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法を提供する。本実施例のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法において、まず、超配列カーボンナノチューブアレイを提供する。超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの直径は20nmであり、その長さは300μmである。次いで、200mgの超配列カーボンナノチューブアレイをこそぎ取って、400mlのエタノールに入れ、仕事率が500Wである超音波震動を30分間行って、綿毛構造体を形成する。形成された綿毛構造体を水洗いした後、冷凍乾燥装置に置いて、−60℃まで急激に冷却した後、この装置を約30paまで真空にする。この際、温度は−25℃まで上昇する。次いで、2時間乾燥させたら、−20℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、−15℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、−10℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、−5℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、0℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、5℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、10℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させたら、15℃まで上昇させ、さらに2時間乾燥させる。その後、真空システムをオフにして、冷凍乾燥装置の入気口を開けば、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を得ることができる。取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を反応装置において、エチン(流速5sccm)及びアルゴンを導入して、温度を800℃まで加熱し、エチンを分解させ、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する。堆積時間は15分間である。取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体において、炭素層の質量パーセントは約10%である。
【0023】
(実施例2)
実施例2のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する時間が40分間であり、取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体において、炭素層の質量パーセントは約40%である。
【0024】
(実施例3)
実施例3のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に炭素を堆積する時間が45分間であり、取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体において、炭素層の質量パーセントは約70%である。
【0025】
(比較例1)
比較例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、カーボンナノチューブ原料として天奈科技有限公司の研究に基づき成長させたカーボンナノチューブ(製品号FLoTube 9000)を用いたことである。比較例1のカーボンナノチューブ原料は粉末状を呈する。この粉末状のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブが乱雑に分散し、さらに、一部のカーボンナノチューブが相互に接触している。比較例1のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブの長さは10μmであり、その直径は11nmである。
【0026】
(比較例2)
比較例2のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、カーボンナノチューブ原料として中国科学院成都有機所の研究に基づき成長させたカーボンナノチューブ(製品号TNNF−6)を用いたことである。比較例2のカーボンナノチューブ原料も粉末状を呈する。この粉末状のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブが乱雑に分散し、さらに、一部のカーボンナノチューブが相互に接触している。比較例2のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブの長さは5μm〜20μmであり、その直径は10nm〜20nmである。
【0027】
(比較例3)
比較例3のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法は実施例1のカーボンナノチューブスポンジ状構造体の製造方法と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、カーボンナノチューブ原料としてシンセンナノメートル港有限公司の研究に基づき成長させたカーボンナノチューブ(製品号L−MWNT−1020)を用いたことである。比較例3のカーボンナノチューブ原料も粉末状を呈する。この粉末状のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブが乱雑に分散し、さらに、一部のカーボンナノチューブが相互に接触している。比較例3のカーボンナノチューブ原料におけるカーボンナノチューブの長さは5μm〜15μmであり、その直径は10nm〜20nmである。
【0028】
図3は実施例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
図3に示すように、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は崩れておらず、自立構造体を形成している。
【0029】
図4〜
図6は、比較例1〜比較例3で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の写真である。
図4〜
図6に示すように、カーボンナノチューブスポンジ状構造体は崩れている。つまり、比較例1〜比較例3で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体に更に炭素を堆積しても自立構造体を形成するのは難しい。
【0030】
図7は実施例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を圧縮した後の写真である。
図8は実施例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を圧縮した後での、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体の圧力放出曲線図及び収縮曲線図である。
図7に示すように、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の予備体を圧縮した後、元の形状には基本的に戻らない。
【0031】
図9は実施例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮した後の写真である。
図10は実施例1で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮した後での、カーボンナノチューブスポンジ状構造体の圧力放出曲線図及び収縮曲線図である。
図9に示すように、カーボンナノチューブスポンジ状構造体を圧縮した後、元の形状に基本的に戻ることができる。
【0032】
図11〜
図13までは、実施例1〜実施例3で取得したカーボンナノチューブスポンジ状構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
図11〜
図13に示すように、カーボンナノチューブスポンジ状構造体において、炭素層は各カーボンナノチューブの表面を均一に被覆し、交差し、且つ隣接する二つカーボンナノチューブ102を連接させる。また、炭素を堆積する時間が長くなるほど、炭素層の厚さは増加する。
【符号の説明】
【0033】
10 カーボンナノチューブネット構造体
12 炭素層
102 カーボンナノチューブ