(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939598
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】異なる周波数キャリアを用いたミリ波通信リンク適応
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20160609BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20160609BHJP
【FI】
H04L1/00 E
H04W28/18 110
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-19131(P2015-19131)
(22)【出願日】2015年2月3日
(62)【分割の表示】特願2011-134478(P2011-134478)の分割
【原出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2015-111912(P2015-111912A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 光司
(72)【発明者】
【氏名】中野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】甲田 泰照
【審査官】
谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−079724(JP,A)
【文献】
特開2010−252060(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/008820(WO,A1)
【文献】
特開平01−297924(JP,A)
【文献】
特開平09−307531(JP,A)
【文献】
特開昭63−302637(JP,A)
【文献】
特開2001−053790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04W 28/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの通信リンクの状態に適応するために、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを送信機に向かって通知する、受信機であって、
送信機から送信ビット列を受信する、高周波数キャリア受信器(RF)と、
その送信ビット列のうちから、プリアンブルを検出する、プリアンブル検出器と、
検出されたプリアンブルが完全であることを起点として、その検出されたプリアンブルに続くペイロードの範囲内について、復号にあたってのビットエラー訂正によって修正されたビット数の累計を取得する、エラー訂正復号器と、
プリアンブルの検出が完全かどうか、及び修正されたビット数の累計が所定の閾値を超えているかどうかを判断する、受信状態検出器と、
検出されたプリアンブルが完全でない、あるいは修正されたビット数の累計が所定の閾値を超えていると判断された場合には、相対的に低い周波数キャリアとして1つの通信リンクと並行して用意されている別の通信リンクにおいて、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを送信機に向かって通知する、低周波数キャリア送信器とを有する、受信機。
【請求項2】
請求項1に記載の受信機との関係において動作する送信機であって、
受信機から通知されている、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを受信する、低周波数キャリア受信器と、
受信機に向かって送信ビット列のうちの前記ペイロードの送信を維持したままでその途中において、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを実行する、送信パラメータ変更器とを有する、送信機。
【請求項3】
送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストが、送信パラメータの強化についてのリクエストを含む、請求項1に記載の受信機。
【請求項4】
送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストが、送信パラメータの弱化についてのリクエストを含む、請求項1に記載の受信機。
【請求項5】
送信機との間の1つの通信リンクの状態に適応するために、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを送信機に向かって通知する受信機と、その受信機との関係において動作する送信機との組合せであって、
受信機側の構成として、
送信機から送信ビット列を受信する、高周波数キャリア受信器(RF)と、
その送信ビット列のうちから、プリアンブルを検出する、プリアンブル検出器と、
検出されたプリアンブルが完全であることを起点として、その検出されたプリアンブルに続くペイロードの範囲内について、復号にあたってのビットエラー訂正によって修正されたビット数の累計を取得する、エラー訂正復号器と、
プリアンブルの検出が完全かどうか、及び修正されたビット数の累計が所定の閾値を超えているかどうかを判断する、受信状態検出器と、
検出されたプリアンブルが完全でない、あるいは修正されたビット数の累計が所定の閾値を超えていると判断された場合には、相対的に低い周波数キャリアとして1つの通信リンクと並行して用意されている別の通信リンクにおいて、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを送信機に向かって通知する、低周波数キャリア送信器と、
送信機側の構成として、
受信機から通知されている、送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを受信する、低周波数キャリア受信器と、
送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストを実行する、送信パラメータ変更器と、
受信機に向かって送信ビット列のうちの前記ペイロードの送信を維持したままでその途中において、変更された送信ビット列に動的に変更して送信する、高周波数キャリア送信器(RF)とを有する、送信機と受信機との組合せ構成。
【請求項6】
送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストが、送信パラメータの強化についてのリクエストを含む、請求項5に記載の、送信機と受信機との組合せ構成。
【請求項7】
送信ビット列の送信パラメータの変更のリクエストが、送信パラメータの弱化についてのリクエストを含む、請求項5に記載の、送信機と受信機との組合せ構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信リンクの制御に関するものであり、異なる周波数キャリアを用いて
通信リンクの状態を動的に適応させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
より高い情報伝送を目指すため、60GHz帯のミリ波をキャリアとして用いる通信方
式が脚光を浴びつつある。情報の伝送はフレームと呼ばれる単位で行われるが、フレーム
の時間長さが同一である場合、高い周波数キャリアのほうが、低い周波数キャリアに比べ
て、より多くの情報伝送がなされる。
【0003】
高い周波数キャリアを用いて情報を伝送する場合、低い周波数キャリアに比べて短時間
あたりの情報伝送量が増える一方、通信路におけるノイズの影響もうけやすく、一旦ノイ
ズが増えて通信リンクの状態が悪化して通信が困難となってしまった場合には、失われて
しまう単位時間当たりの情報量は非常に大きくなる。
【0004】
そのため、通信路のリンクの状態を受信側で検出し、その結果を迅速に送信機にフィー
ドバックして、リンクの状態に適応した情報伝送を行うことが望ましい。しかし従来技術
では、ある一つだけのキャリアを用いて情報の送受信を行うため、ノイズ環境等の影響が
送受信の両リンクの状態を悪化させてしまい、一旦送信不能な通信リンクの状態になって
しまうと、送受信ともに情報のやり取りが出来なくなってしまう。
【0005】
さらに、送信ビット列で構成されるフレームは、送信を途中で停止することは想定され
ておらず、フレームの送信の途中でリンクの状態が悪化した場合であっても、そのフレー
ムの送信の完了を待った後にリンクの状態に関するフィードバックを行う必要があり、迅
速なフィードバックが出来ていなかった。
【0006】
特許文献1は、一つもしくは複数のパケットを送受信し、その「パケット毎」に誤り率
などをもとめ、再送要求を行う、一般的な手法を記載する。しかし、長いパケット(ジャ
ンボフレーム)の送信の途中で動的に送信機のパワーやアッテネータといったパラメータ
を変更して、パケットの送信の途中で通信品質を改善することが出来ない。
【0007】
特許文献2は、初期情報、追加情報という異なった2つの情報を、高速な回線で初期情
報を、低速な回線で追加情報を、それぞれ送信するシステムに関する。ここで、追加情報
とは、初期情報の送信で正しく遅れなかった情報であり、再送が必要な情報のことを指す
ものと考えられる。
【0008】
この特許文献2の目指すところは、再送が即時に必要で無いアプリケーションの場合は
、再送は低速な回線で行うようにして、高速な回線の占有率をさげようというものである
。しかし、長いパケット(ジャンボフレーム)の途中で動的に送信機のパワーやアッテネ
ータといったパラメータを変更して、リンクの状態の改善をパケットの途中で行い通信品
質を改善するというアプローチではない。
【0009】
特許文献3では、MIMOを用いた送受信機において、マルチパスの影響を測定し、そ
れによってシンボル速度や変調の多値を変更するシステムが紹介されているが、送受信機
は対向して、かつ、互いに同等の通信が出来ることが前提となっている。
【0010】
シンボル速度や変調の多値の決定は、通信開始の前段階(初期)に、高いシンボル速度
で試行し、マルチパスの影響が大きい場合下げていく方法がまず述べられている。その補
足として、「このプロセスは、通信の前に行うこともできるが、データ通信の途中でもビ
ット誤り率、フレーム誤り率、パケット誤り率、再送要求率(再送率)などを監視し、こ
れらの数値が十分低くなるように適宜シンボル速度を低くすることもできる。」との記載
がある。
【0011】
しかし、送信機のシンボル速度が変わった場合、受信機がそのシンボル速度が変わった
ことを認識して正常に変更後のシンボル速度で受信できるように適応することを、即座に
行うことは難しい。ここでは、長いパケット(ジャンボフレーム)の途中で動的に送信機
のパワーやアッテネータといったパラメータを変更して、パケットの途中で通信品質を改
善することは触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−274758号公報
【特許文献2】特開2003−9253号公報
【特許文献3】特開2009−260993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、迅速な通信リンク適応を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
異なる2つの周波数キャリアを用いて、迅速な通信リンク適応を実現する。
【0015】
高い周波数キャリアのリンク状態に関する情報を、並行して用意されている別の低い周
波数キャリアを用いて、高い周波数キャリアで送信中のフレームの途中であっても適時通
信リンクの状態をフィードバックする。
【0016】
ミリ波のペイロードの長いデータフレーム(ジャンボフレーム)を送信している途中(
送信している最中)に、別チャネルにおいて、通信リンクの状態に関する情報を(送信機
側に)フィードバックして制御する。
【0017】
フィードバック制御にあたっては、ペイロードについて修正されたビット数の累計が、
所定の閾値を超えているかどうかを判断する。
【0018】
フィードバック制御にあたっては、送信ビット列の送信パラメータ(送信機のRFおよ
びベースバンドの送信に関わる)の変更のリクエストを通知する。
【0019】
フィードバック制御する送信パラメータの内容としては、フレーム(送信ビット列)の
送信の最中に、または、直後(次)のフレームからパラメータの変更が送信フレームに影
響を及ぼすもの、を挙げることができる。
【0020】
フレーム(送信ビット列)の送信の最中でも変更が可能なパラメータとしては、RFのパ
ワーアンプ、 アッテネータ、ベースバンドのALC、を挙げることができる。
【0021】
直後(次)のフレーム(送信ビット列)の送信から変更すべきパラメータとしては、
ベースバンドの変調、拡散(スプレッディング)、を挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うことで、迅速な通信リンク適応を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明が適用される受信機と送信機とを含む全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ミリ波で情報を転送中に、受信器の受信状態検出器によって通信リンクの状態が変化したことを検出した際に、Wifi送信器で受信状態変化の情報を送信する様子を示す模式図である。
【
図3】
図3は、受信機の受信状態検出器における、通信リンクの状態の検出方法のフローチャートを示す図である。
【
図4】
図4は、送信機の送信パラメータ変更器における、処理フローチャートを示した図である。
【
図5】
図5は、送信機側での通信品質の強化を行う場合の処理のフローチャートを示した図である。
【
図6】
図6は、送信機側での通信品質の弱化を行う場合の処理のフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以降の説明では、異なる2つの周波数キャリアの具体的な例として、高周波数キャリア
として60GHzのミリ波を、低周波数キャリア(相対的に低い周波数キャリア)として
は2.4GHz/5GHzの Wifiを、具体例として用いている。しかし、本発明の
技術的思想の適用範囲は、ミリ波、Wifiという特定の組合せや、特定の周波数(帯)
だけに限定されるものではないことに注意されたい。
【0025】
図1は、本発明が適用される受信機と送信機とを含む全体構成を示す図である。
【0026】
送信したい送信ビット列が送信機100へ入力される。送信機100の内部は3つの機
能ブロックが存在し、ビット列をミリ波で送信するためのミリ波送信器120と、本発明
の特徴であるリンクに関する情報をWifi経由で受け取るWifi受信器160、およ
び、送信パラメータ変更器180で構成される。
【0027】
ミリ波送信機120は、送信ビット列の信号処理をデジタルで行うベースバンド130
と、ベースバンドで処理された送信ビット列を実際にミリ波で伝送するRF140とで構
成される。
【0028】
ベースバンド130の機能として、エラー訂正符号器132や、送信ビットを拡散させ
てロバスト性を向上させる拡散器134、送信の変調を行う変調器136、および、送信
の際の出力レベルを調整するALC(Automatic Level Controller)138といった機能
で構成される。
【0029】
RF140は、ベースバンドからの出力レベルを調整するアッテネータ142や、増幅回
路であるパワーアンプ144の機能を持つ。
【0030】
送信パラメータ変更器180は、これらベースバンド130とRF140内部の信号処
理のパラメータを制御し、RF140で実際に送信される信号を調整する。
【0031】
一方、受信機200も同様に3つの機能ブロックが存在する。1つ目は、ミリ波受信機
220であり、ミリ波によって伝送された情報から、送信されてきたビット列を受信ビッ
ト列として取り出す。2つ目はWifi送信器260であり、次に述べる受信状態検出器
280によって検知したリンクの状態に関する情報をWifi経由で伝送する。3つ目は
受信状態検出器280であり、ベースバンド230の受信の結果得られる情報から、リン
クの状態を検出し、その情報をWifi経由で伝送する。
【0032】
ベースバンド230は、ミリ波のフレームの開始部分であるプリアンブルを検出するプ
リアンブル検出器238や、受信したデータ列のエラー訂正符号の復号器232を持つ。
ベースバンド230は、その他にも、拡散器234や、復調器236、を含む。
【0033】
図2は、ミリ波で情報を転送中に、受信器の受信状態検出器によって通信リンクの状態
が変化したことを検出した際に、Wifi送信器で受信状態変化の情報を送信する様子を
示す模式図である。
【0034】
図2の横軸は時間である。
図2の一番上の、「送信機から受信機へ(ミリ波)」で示さ
れるものはミリ波のフレームであり、送信機によって送信ビットが送り出されている様子
を示す。フレームは、プリアンブル、ヘッダ、ペイロードで構成される。
【0035】
図2の中段にある受信状態検出器は、受信機200の受信状態検出器280が観測した
リンクの状態に関する指標として、縦軸は通信リンクの状態を示す。図の例では、時間の
経過とともにミリ波のリンクの状態が悪化している状態を想定している。通信リンクの状
態が悪化を検出すると、その情報に関してWifiを用いて受信機200から送信機10
0に向かって通知する。
【0036】
通信リンクの状態の悪化を検出するにあたっては、修正されたビット数の累計を取得し
て所定の閾値を超えているかどうかで判断することができる。手順の詳細は後述する。
【0037】
図2の最下段の「受信機から送信器へ(Wifi)」は、その通信リンクの状態に関す
るWifiのフレームである。図の一番上のフレームの後半に示されるように、リンク状
態の情報を受け取った後、送信機の送信パラメータを動的に変更している。このように、
ミリ波において現在送信中であっても、ミリ波の通信リンクの状態に関する情報をWif
i経由で送ることによって、ミリ波のフレームの転送中に変化するリンクの状態に応じて
動的に送信パラメータを変更することを可能とする。
【0038】
図3は、受信機の受信状態検出器における、通信リンクの状態の検出方法のフローチャ
ートを示す図である。
【0039】
受信機200のミリ波受信器220に含まれるベースバンド230は、ミリ波のフレー
ムの開始部分であるプリアンブルを検出するプリアンブル検出器238や、受信したデー
タ列のエラー訂正符号の復号器232を持つ(
図1)。
【0040】
前者のプリアンブル検出器238では、無線上でプリアンブルが送られているか否かを
判定するために、受信した情報がプリアンブルとどの程度近いかを計算しており、その類
似度を数値の情報として得ることができる。この数値を用いることで、プリアンブルが完
全に検出されているか、もしくは、おそらくプリアンブルであろうといった不完全の判定
が可能となる。
【0041】
300でミリ波の受信を開始して、310でプリアンブルの検出状態を取得する。
【0042】
320でプリアンブルの検出が完全かどうかを判定する。完全に検出されている場合は
、ミリ波のリンクが十分良好であると判定可能であるが、おそらくプリアンブルであろう
といった不完全の判定の場合は、リンクの状態が不良であると判定される。具体的には、
プリアンブルの判定機の出力する数値に閾値をもうけ、完全であるか、不完全であるかを
判定する。
【0043】
もし不完全であれば、それはリンクの状態が悪いということであるので、Wifi経由
で送信機100側にリンクの状態が悪化しており送信パラメータの強化要求を通知する(
330)。ここで強化要求とは、具体的には伝送に用いるミリ波の振幅を大きくしたり、
変調やスプレッディングを変更することによる情報ビットの拡散割合を増やすことを意味
する。
【0044】
検出されたプリアンブルが起点となり、その検出されたプリアンブルに続くペイロード
の範囲内において、以下の処理を行うことができる。
【0045】
次に、受信したデータ列はエラー訂正符号によって保護されている。送信中のエラーが
エラー訂正可能な範囲内の場合、エラー訂正符号の復号器232によって送信中のエラー
が修正され、同時に、何ビットのエラーを修正したかの情報を得ることができる(340
)。
【0046】
350で、この修正ビット数の累計が所定の閾値を超えている(多い)場合には、通信
リンクの状態が悪い(または、時間の経過とともに悪化している)と判断し、Wifi経
由で送信機側に、通信リンクの状態悪化のため送信パラメータの強化要求を通知する(3
30)。
【0047】
次に、360で、修正ビット数の累計が閾値を超えない(少ない)場合、これは通信リ
ンクの状態が十分に良い(または、時間の経過とともに良くなっている)と考えられる。
通信リンクの状態が十分に良い場合は、送信器側のパラメータを変更して、例えば送信の
際の出力を下げて無駄に大きな出力をさせないといった制御も可能である。
【0048】
そこで、360で、修正ビット数の累計が閾値を超えない場合には、Wifi経由で送
信機側に通信リンクの状態が必要十分であるとして送信パラメータの弱化要求を通知する
(370)。ここで弱化要求とは、具体的には伝送に用いるミリ波の振幅を小さくしたり
、変調やスプレッディングを変更することによる情報ビットの拡散割合を減らすことを意
味する。
【0049】
アッテネータ、パワーアンプ、ALCは、ミリ波フレームを送信している途中(最中)
に変更可能なパラメータである。
【0050】
一方、変調・スプレッドは、フレームの開始時点で決定し、フレーム全体で一定である
必要がある性質のパラメータであるため、フレームの途中では変更できないが、本発明の
手法を応用することで、現時点のフレームが終了し次第、次のフレームから、変調・スプ
レッドを変更したフレームで送信することが可能となる。
【0051】
なお、実際のシステム構成においては、これらの弱化要求、強化要求は、両方とも行う
構成でも良いし、どちらか一方だけでも良い。
【0052】
図4は、送信機の送信パラメータ変更器における、処理フローチャートを示した図であ
る。
【0053】
ミリ波送信開始(400)後、Wifi経由で送られてくる受信側で観測したリンク状
態に関する情報に応じて、送信パラメータの変更を行う。具体的には、410でWifi
からリンクの状態が悪いため強化要求があった場合、420で送信パラメータは通信品質
を強化するように変更を行う。 430でWifiからの要求がリンクの状態がよいため
弱化要求であれば、440で送信パラメータは通信品質を弱化するように変更を行う。
【0054】
図5は、送信機側での通信品質の強化を行う場合の処理のフローチャートを示した図で
ある。
【0055】
図5の例では、送信パラメータとして4種類がある場合について示す。なお、これら4
つのパラメータすべてが必須ではなく、一部のパラメータだけであっても良い。
【0056】
図5の例では、送信パラメータとしてアッテネータ、パワーアンプ、ALC,変調/ス
プレッディングを想定する。強化要求があった場合はリンクの状態が悪化しているため、
ミリ波の出力を強化するようにパラメータの変更を行う。アッテネータでの減衰がなされ
ているのであれば、その減衰を弱めて信号を強化する。アッテネータがすでに減衰してい
ないのであれば、次のパラメータであるパワーアンプに関して変更し、増幅が可能であれ
ば、増幅をおこなう。パワーアンプの増幅が限界に達していれば、ALCのレベルを上げ
、ALCが限界に達していれば、変調方式やスプレッディングといったパラメータの変更
を行う。
【0057】
図6は、送信機側での通信品質の弱化を行う場合の処理のフローチャートを示した図で
ある。
【0058】
弱化要求は、強化要求とは逆の処理となる。送信パラメータを変更することでミリ波の
出力を弱めるよう制御を行う。
【0059】
本発明の方法は、受信機あるいは送信機またはそれらの組合せの構成において実行する
ことができる。または、それら単数または複数のコンピュータに実行させるプログラムと
しても実施することができる。