特許第5939622号(P5939622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939622
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】土留壁
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/04 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   E02D5/04
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-67379(P2012-67379)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199746(P2013-199746A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083507
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174230
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 尚文
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】南 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】安岡 博之
(72)【発明者】
【氏名】木村 育正
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏征
(72)【発明者】
【氏名】永尾 直也
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−140233(JP,U)
【文献】 特開2004−197358(JP,A)
【文献】 特開2000−303465(JP,A)
【文献】 実開昭53−165733(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3013067(JP,U)
【文献】 実公昭37−024809(JP,Y1)
【文献】 特開昭55−068918(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0179160(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0115336(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02423389(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/02−5/08
E02D 5/24−5/28
E02D 17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板と、鋼矢板の長手方向に補剛用部材を添わせて構成された組合せ鋼矢板とによって構築される土留壁において、
前記補剛用部材は少なくとも鋼矢板1枚以上の間隔を有して設置され、前記補剛用部材と補剛用部材の間に補剛用部材に接触しないように鋼矢板に当接するように梁部材が配設された土留壁。
【請求項2】
梁部材を、2本の前記補剛用部材のスパンより短く設定し、連続して圧入された鋼矢板の施工延長方向と略平行方向で、かつその両端部を前記補剛用部材に接触しないように配置したことを特徴とする請求項1記載の土留壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸や擁壁あるいは地下構造物を構築する際などに築造される土留壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に地下構造物を構築する際、構造物を設置する位置に構造物を囲むように土留壁を築造し、土留壁前面の土砂を排出して構造物を築造する。その際に用いる土留壁の構造には、鋼矢板や鋼管矢板が広く用いられている。
土留壁には、土圧や水圧が作用するが、地盤条件や使用条件によってそれら圧力の大きさは異なる。しかし鋼矢板等はサイズ毎に剛性が一定であるため、場合によっては土圧や水圧より土留壁の剛性の方が過大となり、結果として土留壁の築造が不経済となることがある。
【0003】
そこで、特許文献1記載の発明のように、鋼矢板の長手方向に形鋼を添わせた組合せ鋼矢板で土留壁を構成し、この形鋼に当接して腹起し(梁部材)を設置した土留壁が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−247050号公報
【0005】
特許文献1の発明によれば、土留壁に作用する土圧や水圧に応じて適当な剛性となるように鋼矢板と形鋼の組み合わせを設定することができるので、経済的な土留壁を構築することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明は、腹起こし(5)が鋼矢板(2)に接していないため、形鋼(3)の設置を鋼矢板毎にせず形鋼と形鋼のスパンを大きくすると、形鋼(3)の設置されていない鋼矢板(2)は土圧や水圧によって連続壁(1)内側への横方向への変形モードが大きくなり、連続壁(1)周りの地表面沈下などが生じ、土留めや止水を目的とした壁構造としての機能が維持できなくなる恐れがある。
【0007】
したがって、土留壁に作用する土圧や水圧に応じた最適な剛性の構造とはならず、組合せ鋼矢板の選定の幅に制約を受けるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の土留壁の課題を解決するもので、鋼矢板と組合せ鋼矢板と梁部材を組み合わせることにより、土圧や水圧に応じた最適な剛性の構造の土留壁を構築でき、土留壁の材料費や施工費を低減する経済的な土留壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、鋼矢板と、鋼矢板の長手方向に補剛用部材を添わせて構成された組合せ鋼矢板とによって構築される土留壁において、前記補剛用部材は少なくとも鋼矢板1枚以上の間隔を有して設置され、前記補剛用部材と補剛用部材の間に補剛用部材に接触しないように鋼矢板に当接するように梁部材が配設された土留壁である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、梁部材を、2本の前記補剛用部材のスパンより短く設定し、連続して圧入された鋼矢板の施工延長方向と略平行方向で、かつその両端部を前記補剛用部材に接触しないように配置した土留壁である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の土留壁によれば、土圧や水圧に応じた最適な剛性の構造の土留壁を構築できるため、土留壁の材料費や施工費の低減をはかることができる。
また、従来の控え式鋼矢板壁構造とは異なり、鋼矢板の施工延長上に補剛用部材を沿わせた組合せ鋼矢板を配置する構造となっている。
従来の控え工であれば、控え杭を離散的に配置するためには、バイブロハンマー工法などを用いる必要があったが、本発明では、鋼矢板を先行打設して、鋼矢板から反力を取ることで圧入工法により鋼管を施工することが可能となる。また、タイ材により控え工に作用する力を伝達する必要もなく、背面側のスペースを省略した上で変位を低減する壁体が構築できる。
さらに梁部材は、補剛用部材に接触しないように配設されているため、梁部材を短くすることができ材料費の低減が図れると共に施工が容易となり、かつ梁部材と補剛用部材との接点の局部応力発生が防止できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の土留壁の実施形態1の平面図
図2】本発明の土留壁の実施形態1の側面図
図3】本発明の土留壁の実施形態2の梁部材の設置例を示す平面図
図4】本発明の土留壁の実施形態3の梁部材の設置例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態1の土留壁を図1及び図2に基づいて説明する。
土留壁1は、複数のハット形鋼矢板3を連続して地中に圧入し、鋼矢板3の山部3bと谷部3aとが繰り返した略波状に形成された壁体2によって構築されている。前記壁体2の一部の鋼矢板3の谷部3aに、補剛用部材である鋼管杭4を鋼矢板3の長手方向に添わせて構成した組合せ鋼矢板5を配設してなる。
【0015】
前記鋼管杭4は、前記連続して圧入された鋼矢板の一部の鋼矢板3の谷部3aに一定のスパンSを有して離散的に設けられている。
【0016】
前記鋼管杭4が設けられていない鋼矢板3に、壁体2の横方向の変形を抑えるためにH形鋼よりなる梁部材6を鋼管杭4,4の間に配置する。
この梁部材6は、2本の鋼管杭4,4のスパンSより短く設定し、前記鋼管杭4と直交する方向(水平方向)で、かつその両端部を前記鋼管杭4に当接するように配置したものである。
また、図2に示すように、この梁部材6は、壁体2の横方向の変形に応じて掘削深さHに対し、任意の間隔h1、h2、・・hnを有して必要とされる段数を入れることができる。
【0017】
上記のように構成した実施形態1によれば、鋼管杭4と梁部材6の作用によって、土留壁1の外側(図1上方)よりかかる土圧や水圧に対し十分な強度を有するため、壁体2の内側への変形を抑えると共に土留壁として十分な効果を発揮できる。
【0018】
さらに鋼管杭4を利用して容易に梁部材6が設置できると共に、鋼矢板3の土留壁2内側への横方向の変位を抑制できるので鋼管杭4のスパンSを大きくすることができる。
また、作用する土圧や水圧に応じた強度に過不足ない剛性の土留壁1を自由に構築できるため、鋼材数量の適正化が図れ無駄な材料の削減等コストが低減でき経済的である。
【0019】
前記実施形態1では、鋼矢板3としてハット形鋼矢板を使用したが、これに限定されずU形鋼矢板やZ形鋼矢板等も用いることもできる。ただし、ハット形鋼矢板は、U形鋼矢板やZ形鋼矢板に比べて施工性に優れ、工費縮減、工期短縮を図ることができる。また、ハット形鋼矢板は継手部分で長手方向のズレが発生せず断面性能が効率的かつ明確で、鋼矢板で構築した壁体の凹凸数に対する継手の箇所数もU形鋼矢板やZ形鋼矢板などの各種鋼矢板の中で最小となるため、鋼管と鋼矢板を組み合せた壁体をより安定的な構造とし、施工の管理や精度の確保を容易にする効果が期待できる。このため、鋼矢板壁を構築するためにはハット形鋼矢板を用いることが好ましい。
鋼管杭4の代わりにH形鋼やI形鋼等も適用可能である。ただし、鋼管を用いれば、地中内に回転貫入させることが可能であり、施工性が向上する。
また、梁部材6に用いる材料はH形鋼などの鋼材のほか、コンクリート柱材や木材等でも良く、さらに梁部材6と鋼管杭4の固定は溶接のほかボルト接合等も適用できる。
【0020】
組合せ鋼矢板5の構築方法としては、予め鋼矢板3と鋼管杭4を一体に接合して構成することもできるが、それらを別々に地中に打設した後両者を接合しても良い。前者の施工ではバイブロハンマーを用いて打設すればよく、後者の場合は杭圧入引抜機を利用した施工ができる。
別々に施工するのであれば、鋼矢板を先行打設して、その鋼矢板から反力を取って、補剛用部材を圧入することもできる。
【0021】
図3は本発明の実施形態2の平面図である。
本実施形態では、梁部材6を、2本の鋼管杭4,4のスパンSより短く設定し、前記鋼管杭4と直交する方向(水平方向)で、かつその両端部を前記鋼管杭4に接触しないように配置し、土留壁1の内側における鋼矢板3の表面に固定したものであり、その両端部が鋼管杭4,4と接触しておらず、前記実施形態1と同様の作用、効果に加え、材料の使用量の低減が図れると共に、施工が容易となり、かつ梁部材6と鋼管杭4との接点から生じる局部応力の発生が防止できるのである。
また、前記鋼管杭4と梁部材6の端部との距離Dは、壁体2の強度を保ち変形を防止するために、鋼矢板1枚分の幅より小さくすることが望ましい。
【0022】
図4は本発明の実施形態3の平面図である。
本実施形態では、梁部材6を鋼管杭4,4の間に配置された状態で鋼矢板3の表面外側に固定したものであり、その両端部が鋼管杭4,4と接触しておらず、前記実施形態2と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0023】
1 土留壁
2 壁体
3 鋼矢板
4 鋼管杭(補剛用部材)
5 組合せ鋼矢板
6 梁部材
図1
図2
図3
図4