(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記実効値演算部は、順次、時系列で隣接する前記交流電圧デジタル信号の2つの瞬時値の2乗を加算して1/2を乗じ、予め定める所定時間の間における平均の平方根を演算して実効値を得る、
請求項1または請求項2に記載のデジタル制御電源装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態(第1の実施形態ないし第3の実施形態)のデジタル制御電源装置は、商用電源からの正弦波電力を整流する整流回路と、整流回路に入力側が接続され力率を改善するとともに、出力側から負荷に対して直流電力を供給する力率改善回路と、力率改善回路を制御する制御部と、を備え、制御部は、商用電源から供給される交流電圧を交流電圧デジタル信号に変換する第1のアナログ・デジタル変換器と、予め定める所定時間の間における交流電圧デジタル信号の瞬時値の2乗平均の平方根を演算して実効値を得る実効値演算部と、実効値を更新し保持するデータ保持部と、実効値演算部における実効値の演算の開始およびデータ保持部における実効値の更新を管理する演算実行管理部と、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている実効値で除して基準正弦波を得る基準正弦波発生部と、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求める演算をして基準電流信号を得る絶対値変換部と、整流回路から力率改善回路に供給される整流電流を整流電流デジタル信号に変換する第2のアナログ・デジタル変換器と、整流電流デジタル信号と基準電流信号との誤差である電流誤差信号を求める演算をする電流誤差演算部と、電流誤差信号に応じ力率改善回路を制御するための制御信号を発生する力率改善制御信号発生部と、を具備する。
【0013】
本発明の第2の実施形態のデジタル制御電源装置は、第1の実施形態のデジタル制御電源装置に加えて以下の構成部を有する。演算実行管理部は、交流電圧デジタル信号を入力し、該交流電圧デジタル信号が正値の第1の閾値と負値の第2の閾値との間にあるときに零値であることを判定する第1の判定器と、隣接する2つのサンプリング点における交流電圧デジタル信号の差分を順次求め交流電圧微分デジタル信号を得る差分器と、交流電圧微分デジタル信号が正値の第3の閾値と負値の第4の閾値との間にあるときに零値であることを判定する第2の判定器と、交流電圧デジタル信号および交流電圧微分デジタル信号がいずれも零値であるときに停電フラグを出力する交流ライン状態判定部と、を具備し、停電フラグが出力されたときに、実効値演算部における前実効値の演算をクリアして停止し、データ保持部における実効値の更新を停止する。
【0014】
本発明の第3の実施形態のデジタル制御電源装置は、第1の実施形態のデジタル制御電源装置に加えて以下の構成部を有する。演算実行管理部は、交流電圧デジタル信号を入力し、該交流電圧デジタル信号が正値の第1の閾値と負値の第2の閾値との間にあり零値であることを判定する第1の判定器と、隣接する2つのサンプリング点における交流電圧デジタル信号の差分を順次求め交流電圧微分デジタル信号を得る差分器と、交流電圧微分デジタル信号が正値の第3の閾値と負値の第4の閾値との間にあるときに零値であることを判定する第2の判定器と、交流電圧デジタル信号および交流電圧微分デジタル信号が2つ共に零値のとき以外を通電状態であると判定する通電状態判定部と、を具備し、交流電圧デジタル信号が零値であることを判定するとともに、通電状態であると判定したときに、実効値演算部における実効値の演算の開始をし、通電状態であると判定するとともに、実効値の演算の開始から予め定める所定時間が経過したことを判定したときに、実効値の更新と保持をする。
【0015】
本発明の実施形態の変形例の一例のデジタル制御電源装置は、商用電源からの正弦波電力を整流する整流回路と、整流回路に入力側が接続され力率を改善するとともに、出力側から負荷に対して直流電力を供給する力率改善回路と、力率改善回路を制御する制御部と、を備え、制御部は、商用電源から供給される交流電圧を交流電圧デジタル信号に変換する第1のアナログ・デジタル変換器と、半周期の間における交流電圧デジタル信号の瞬時値を平均して平均値を得る平均値演算部と、平均値を更新し保持するデータ保持部と、平均値演算部における平均値の演算の開始およびデータ保持部における平均値の更新を管理する演算実行管理部と、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている平均値で除して基準正弦波を得る基準正弦波発生部と、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求める演算をして基準電流信号を得る絶対値変換部と、整流回路から力率改善回路に供給される整流電流を整流電流デジタル信号に変換する第2のアナログ・デジタル変換器と、整流電流デジタル信号と基準電流信号との誤差である電流誤差信号を求める演算をする電流誤差演算部と、電流誤差信号に応じ力率改善回路を制御するための制御信号を発生する力率改善制御信号発生部と、を具備する。
【0016】
実施形態のデジタル制御電源装置において、力率改善回路の直流出力電圧を直流出力電圧デジタル信号に変換する第3のアナログ・デジタル変換器を有し、直流出力電圧デジタル信号と基準電圧信号との誤差である電圧誤差信号を求め、電圧誤差信号と基準正弦波を乗算し、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求めるようにしてもよい。
【0017】
本発明の実施形態のデジタル制御電源装置における制御方法は、商用電源からの正弦波電力を整流する整流回路と、整流回路に入力側が接続され力率を改善するとともに、出力側から負荷に対して直流電力を供給する力率改善回路と、力率改善回路を制御する制御部と、を備えるデジタル制御電源装置における制御方法であって、制御部が、商用電源から供給される交流電圧を交流電圧デジタル信号に変換し、予め定める所定時間の間における交流電圧デジタル信号の瞬時値の2乗平均の平方根を演算して実効値を得、実効値を更新し保持し、実効値の演算の開始および実効値の更新を管理し、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている実効値で除して基準正弦波を得、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求める演算をして基準電流信号を得、整流回路から力率改善回路に供給される整流電流を整流電流デジタル信号に変換し、整流電流デジタル信号と基準電流信号との誤差である電流誤差信号を求める演算をし、電流誤差信号に応じ力率改善回路を制御するための制御信号を発生する。
【0018】
実施形態のデジタル制御電源装置における制御方法において、力率改善回路の直流出力電圧を直流出力電圧デジタル信号に変換し、直流出力電圧デジタル信号と基準電圧信号との誤差である電圧誤差信号を求め、電圧誤差信号と基準正弦波を乗算し、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求めるようにしてもよい。
【0019】
図1は実施形態のデジタル制御電源装置10の各ブロックを模式的に示す図である。
図1を参照して実施形態のデジタル制御電源装置10の説明をする。
【0020】
デジタル制御電源装置10は、ダイオードブリッジ40を備える。また、ダイオードブリッジ40の出力側に接続され、力率を改善する力率改善回路(Power Factor Correction:PFC)20を備える。また、力率改善回路20を制御するデジタル制御部30を備える。
【0021】
デジタル制御電源装置10のダイオードブリッジ40の入力側は、商用電力系統である商用電源50に接続される。デジタル制御電源装置10の力率改善回路20の出力側は、負荷60に接続される。
【0022】
商用電源50から供給される交流電力の電圧波形は正弦波である。交流電力はダイオードブリッジ40の入力側に入力されて全波整流される。ダイオードブリッジ40の出力側から得られる全波整流された後の電圧の波形は、負電圧側が正電圧側に折り返された全波整流波形となる。
【0023】
全波整流された電力は力率改善回路20に入力される。力率改善回路20は、力率を1に近づける回路である。力率が1の状態においては力率改善回路20の入力側に印加される電圧V
INの波形と力率改善回路20の入力側から流れ込む電流I
INの波形とは相似するものとなる。力率1の状態では、商用電源50からデジタル制御電源装置10に無効電力が供給されることがないので商用電源50における無用な電力損失の発生を防止できる、また商用電源50から供給される正弦波の電圧波形を歪ませることもない。よって、デジタル制御電源装置10は力率改善回路20を備えることによって、力率を1に近づけるようにしている。
【0024】
力率改善回路20として、昇圧型のDC-DCコンバータを用いることは周知技術である。そして、昇圧型のDC-DCコンバータを用いることによって、力率改善回路20は、力率を1にするように制御される。力率の制御は、デジタル制御部30が力率改善回路20を制御することによっておこなわれる。
【0025】
また、力率改善回路20から出力される直流電力は負荷60に供給される。力率改善回路20から負荷60に流れる電流I
OUTに変動が生じて場合でも。負荷60に供給される電圧V
OUTは予め定めた一定の電圧となるように制御される。電圧V
OUTを一定にする制御は、デジタル制御部30が力率改善回路20を制御することによっておこなわれる。力率改善回路20についての詳細およびデジタル制御部30がおこなう制御の詳細は後述する。
【0026】
デジタル制御部30は、実施形態のデジタル制御電源装置10においては、デジタル・シグナル・プロセッサ(Digital Signal Processor : DSP)によって構成されている。
図1に示すデジタル制御部30の内容は、デジタル・シグナル・プロセッサによっておこなわれる処理を模式的にブロック図で示すものである。実際には、デジタル・シグナル・プロセッサは、ステップ・バイ・ステップの処理をおこない、所定時間ごとのタイマ割込処理によって一連の処理をおこなう。タイマ割込処理は、デジタル制御電源装置10のデジタル制御部30が構成するデジタル制御系の制御特性の安定化を図るための周知技術である。
【0027】
デジタル・シグナル・プロセッサは、内部に複数個のレジスタ(図示せず)、ラム(RAM)(図示せず)、ロム(ROM)(図示せず)、PWM部(パルス幅変調部: Pulse Width Modulator)314を有している。また、タイマ割込処理のためのタイマ割込信号(
図3のタイマ割込信号)を発生させるためのタイマ割込カウンタ(図示せず)を有している。タイマ割込信号はデジタル・シグナル・プロセッサのマスタクロックをタイマ割込カウンタによって分周したものであり、タイマ割込カウンタのカウンタ値をソフトウエアで設定することによって、タイマ割込信号の1周期の時間T
Sが任意に設定できる。デジタル・シグナル・プロセッサの1ステップの時間に比べてタイマ割込信号の1周期の時間T
Sを長く設定し1回の割込で多数のステップ・バイ・ステップの処理ができるようにしている。
【0028】
デジタル・シグナル・プロセッサにおける一連の処理の内容(制御プログラム)はロムに記憶されている。割込の発生によってデジタル・シグナル・プロセッサのプログラムカウンタによって指定されるアドレスに記憶されたロムの内容を解読してタイマ割込処理は開始し、プログラムカウンタの値を順次インクリメントしてステップ・バイ・ステップの多数の処理を1回の割込処理(1サイクルの処理)においておこなう。そして1サイクルの処理が終了すると次の割込を待つ。
【0029】
デジタル制御部30は、実施形態のデジタル制御電源装置10においては、デジタル・シグナル・プロセッサによって制御処理がおこなわれるが、デジタル制御部30に示された各処理のブロックをデジタルハードウエアで構成しても同様の処理が可能である。例えば、デジタル・シグナル・プロセッサの処理内容である実効値演算302はデジタルハードウエアで形成する実効値演算部に置き換えても良い。
【0030】
以下同様に、デジタル・シグナル・プロセッサによっておこなわれる各処理は、デジタルハードウエアで形成するようにしても良い。瞬停検出303はデジタルハードウエアで形成する瞬停検出部に置き換えても良い。データ保持304はデジタルハードウエアで形成するデータ保持部に置き換えても良い。正弦関数演算305はデジタルハードウエアで形成する正弦関数演算部に置き換えても良い。基準電圧307はデジタルハードウエアで形成する基準電圧部に置き換えても良い。電圧誤差演算308はデジタルハードウエアで形成する電圧誤差演算部に置き換えても良い。乗算309はデジタルハードウエアで形成する乗算部に置き換えても良い。絶対値変換311はデジタルハードウエアで形成する絶対値変換部に置き換えても良い。電流誤差演算313はデジタルハードウエアで形成する電流誤差演算部に置き換えても良い。なお、デジタル・シグナル・プロセッサと各部の機能を発揮させるプログラムによって、上述した、各ハードウエア部が混然一体となってデジタル・シグナル・プロセッサの内部に構成されていると捉えることもできる。
【0031】
また、デジタル制御部30は、アナログ信号をデジタル信号に変換するインターフェイスとしてA/D変換器(アナログ・デジタル変換器)を備える。サンプルホールド部301、サンプルホールド部306、サンプルホールド部312は、デジタルハードウエアで形成するA/D変換器(アナログ・デジタル変換器)である。サンプルホールド部301はダイオードブリッジ40の入力側に接続される。サンプルホールド部306は力率改善回路20の出力側に接続される。サンプルホールド部312は力率改善回路20の内部に設けられたインダクタ(
図2を参照)の電流I
Lを検出する。図示はしないが、各サンプルホールド部の前段に、サンプルホールド部の入力電圧仕様に合致し信号のレベルを適正なものとするための分圧器、および絶縁をするためのフォトカプラーを設けるようにしても良い。さらに、各サンプルホールド部の前段に、サンプルホールドによって生じる折り返し雑音を排除するためのローパスフィルタを設けるようにしてもよい。
【0032】
図2は実施形態の力率改善回路20の回路図である。力率改善回路20は、力率改善回路20の一方の入力端子に一方の端子が接続されるインダクタ201を備える。また、インダクタ201の他方の端子に一方の端子(ドレイン)が接続されるスイッチング素子202を備える。スイッチング素子202の他方の端子(ソース)は力率改善回路20の他方の入力端子に接続される。実施形態では、スイッチング素子202は金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)で形成されている。また、インダクタ201の他方の端子とスイッチング素子202の一方の端子との接続点に一方の端子(アノード)が接続されるダイオード203を備える。また、ダイオード203の他方の端子(カソード)に一方の端子が接続されるコンデンサ204を備える。コンデンサ204の他方の端子は、スイッチング素子202の他方の端子(ソース)と力率改善回路20の他方の入力端子との接続点に接続される。コンデンサ204の両端から力率改善回路20の2つの出力端子が引き出される。
【0033】
力率改善回路20の2つの入力端子はダイオードブリッジ40に接続されている。また、力率改善回路20の2つの出力端子は負荷60に接続可能とされている。スイッチング素子202の制御端子(ゲート)にはデジタル制御部30から出力されるPWM信号が入力される。電流I
INすなわちインダクタ201に流れる電流I
Lは電流検出器205によって検出されデジタル制御部30に対して電流I
Lとして送出される。
【0034】
図2に示す力率改善回路20は公知の昇圧コンバータと同じ構成を有している。電圧V
INは全波整流電圧波形を有している。ここで、入力の電流I
INを全波整流電圧波形と相似形とすることができれば、力率を1とすることができる。一方、電圧V
OUTは直流電圧波形を有している。コンデンサ204の容量は、平滑コンデンサとして全波整流電圧波形を平滑するに十分に大きな値となるように設定する。このように設定して電圧V
OUTの波形を直流電圧波形とすることができる。
【0035】
ここで、
図1、
図2を参照して、実施形態において、正弦関数演算305において正弦波を規格化し、これにより基準電流信号(
図1の絶対値変換311から出力されるIref)も規格化する意味について極めて簡単に説明をする。
【0036】
基準電流信号Irefは、電流I
Lを検出してPWM信号を出力する負帰還制御系の基準(目標値)となる信号である。基準電流信号Irefとサンプルホールド部312から得られる電流I
Lとが等しくなるように制御系は働く。ここで、基準電流信号Irefは、電圧V
ACと相似の信号であるので、電圧V
ACと電流I
Lとは相似形となり、結果として、電圧V
ACと電流I
INとは相似形となる(
図2を参照)。つまり、力率を1に近づけるように制御系は作用する。
【0037】
電圧V
OUTはサンプルホールド部306(第3のA/D変換器)を介して直流電圧デジタル信号(図示せず)として、電圧誤差演算308に入力される。また、基準電圧307からの基準電圧信号Vrefが電圧誤差演算308に入力される。電圧誤差演算308において、基準電圧信号Vrefと離散時間のデジタル値である電圧V
OUT(τ
n)(図示せず)との電圧誤差が演算される。乗算309において、この電圧誤差と、正弦関数演算305からの正規化された正弦波とが乗算される。基準電圧信号Vrefと電圧V
OUT(τ
n)は、いずれも直流電圧であるので、電圧誤差も直流電圧となる。よって、乗算309から出力される信号は正規化された正弦波(基準正弦波)に比例した信号となる。この乗算の結果が、絶対値変換311に入力されて、基準電流信号Irefとして出力される。よって、制御系は電圧V
OUTを基準電圧信号Vrefと等しくするように制御する。
【0038】
例えば、商用電源50として商用電力系統が使用される場合には、世界においては、実効値が100Vから240Vの範囲において各国ごとに電圧仕様が異なっている。所謂、ワールドワイド仕様の電源装置においては、100Vから240Vの実効値の範囲のすべての電力系統に接続できなければならない。このためには、制御系においては、商用電源50の電圧V
ACの実効値が100Vから240Vの範囲で大きく変化する場合においても、電流I
INと電圧V
OUTとを制御するに際して、安定性が高く、かつ、高精度に制御をおこなわなければならない。
【0039】
ここで、商用電源50の電圧V
ACの電圧値が大きく変化する場合において、電圧V
ACの電圧値に依存して、基準電流信号Irefが変化すると、制御系の安定性が損なわれ、高精度の制御が困難となることは周知事実である。よって、本実施形態においては、正弦波を規格化し、これにより基準電流信号も規格化した電源装置を提供するものである。
【0040】
(実施形態の要部)
図3はデジタル制御部30がおこなう、サンプルホールド部301における処理、実効値演算302、瞬停検出(瞬間停電検出)303、データ保持304、正弦関数演算305の処理を模式的に示す図である。これらの各部は実施形態の要部である。
図3を参照して実施形態の要部について以下に説明をする。
【0041】
図3にはデジタル制御部30でおこなうデジタル処理の第1の実施形態から第3の実施形態が併せて記載されている。第1実施形態を基本として、第1実施形態では解決できない課題を解決するための実施形態が第2の実施形態および第3の実施形態である。第2の実施形態および第3の実施形態においては、第1の実施形態の基本的な構成部に加えて追加の構成部をその各々が有している。
【0042】
図3に示す実施形態の要部において、基本となる部分は、サンプルホールド部301における処理、実効値演算302データ保持304、正弦関数演算305の処理である。第1の実施形態は、この部分のみを有する場合における実施形態である。
【0043】
瞬停検出303は、
図3においては、2つの実施形態が記載されている。
【0044】
第2の実施形態は、瞬停検出303(
図1を参照)においては、瞬停検出演算ブロック(
図3を参照)から出力される停電フラグ(
図3を参照)を用い、内部値リセット(
図3を参照)と演算停止実効値保持(
図3を参照)とをおこない、実効値演算ブロック1と実効値演算ブロック2を制御するものである。また、第2の実施形態においては、データ保持(
図1を参照)304は、瞬停検出303と連動するように第1の実施形態におけるものを変形している。
【0045】
第3の実施形態は、瞬停検出303(
図1を参照)においては、実効値演算ブロック演算開始条件(
図3を参照)に示す条件を満たすときに、実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を出力して、実効値演算ブロック1と実効値演算ブロック2を制御するものである。また、第3の実施形態においては、実効値演算302(
図1を参照)およびデータ保持304(
図1を参照)を実効値演算開始フラグによって実行管理するように第1の実施形態におけるものを変形している。
【0046】
「第1の実施形態」
第1の実施形態は、瞬停が発生した場合においても商用電源50からの交流の電圧V
ACが供給され続けている場合と同じ演算を実施形態の主要部において続行し続ける実施形態である。交流の電圧V
ACが供給され続けている状態において、瞬間停電(瞬停)が発生したときにおいても、実施形態の基本部におけるデジタル処理の内容には変化がない。
【0047】
(実効値演算と正弦波データの発生)
図3は、デジタル制御部30がおこなう、サンプルホールド部301における処理、実効値演算302、データ保持304、正弦関数演算305の処理(
図1を参照)を模式的に示す。この部分の処理が目的とするところは、商用電源50からの電圧の実効値が100Vから240Vの範囲で変化したとしても、一定の振幅を有しながら、交流の電圧V
ACの波形と同じ波形を有する正弦波データを発生させることである。
【0048】
デジタル制御部30がおこなう処理は、時間が離散的な時間離散値系におけるデジタル信号を処理するデジタル処理である。デジタル制御部30がおこなうデジタル処理の内容を説明するに先立ち、まず、時間連続系におけるアナログ信号である商用電源50からの交流の電圧V
ACについて説明をする。交流の電圧V
ACは(数1)示す正弦関数であらわされる。V
mは電圧V
ACの振幅最大値、ωは角速度、tは時刻である。電圧V
AC(t)は電圧V
ACが時間関数であることをあらわす。
【0049】
【数1】
【0050】
電圧V
AC(t)の実効値(Root Mean Square Value)V
ACEは、(数2)で示す演算によって定義される。(数2)に示す実効値V
ACEは、電圧V
AC(t)の瞬時値の2乗平均の平方根であらわされる。
【0051】
【数2】
【0052】
ここで、電圧V
AC(t)は商用電源50の半周期ごとに極性が反転する正弦波であるので、電圧V
AC(t)の実効値V
ACEは、(数3)に示す演算によっても求めることができる。
【0053】
【数3】
【0054】
電圧V
mと実効値V
ACEの関係は(数4)であらわされることが知られている。
【0055】
【数4】
【0056】
(数2)では、2乗積分の時間は、時間T、(数3)では2乗積分の時間は、時間T/2としたが、(数5)に示すように、2乗積分の始期は、任意の時刻t、積分の終期は時刻(t+T
C)までとしてもよい。ここで、時間T
Cは、時間T/2、時間T、時間3/2T、・・・等のT/2の整数倍の種々の時間である。
【0057】
【数5】
【0058】
図3を参照して、第1の実施形態について、より詳細に説明をする。
【0059】
A/D変換(
図3の符号SH1)は、サンプルホールド部301(
図1を参照)における処理に対応する。A/D変換は、アナログ信号をデジタル信号に変換するとともに、連続時間信号を離散時間信号に変換する。アナログ信号の電圧V
AC(t)は、A/D変換後は、(数6)に示すV
AC(τ
n)であらわされる。
【0060】
【数6】
【0061】
V
AC(τ
n)は、現実には、タイマ割込ごとにデジタル・シグナル・プロセッサの内部に取り込まれ、処理されるデジタル値に過ぎない。しかしながら、アナログの電圧とそのデジタル値は1対1に対応しているので、交流電圧デジタル信号と称し、簡単に電圧V
AC(τ
n)と表記する。ここで、τ
nは離散時間化された時刻である。予め定めるタイマ割込信号(
図3を参照)の周期である時間T
sごとにサンプリング数nの値がインクリメントされる。(数6)に示すように、τ
n=n×T
Sで表されるτ
nの添え字nは、サンプリング時刻τ
nが最初のサンプリング時刻であるサンプリング時刻τ
0からn回目のタイマ割込信号が発生する(n×T
S)時間経過後のサンプリング時刻であることを示すものである。なお、nは、サンプリング時間T
s毎に(n=n+1)の演算によってインクリメントされ続ける数である。ここで、商用電源50の1周期の時間Tにおけるサンプリングの個数(タイマ割込の回数)はT/T
sであり、商用電源50の半周期である時間T/2におけるサンプリング個数は(T/2)/T
sである。
【0062】
実効値演算ブロック1(
図3を参照)の処理は、実効値演算302(
図3を参照)における処理に対応する。実効値演算ブロック1(
図3を参照)では、(数7)に示す演算をおこなう。時間連続系における(数5)の演算に対応する離散時間系における演算が(数7)に示す演算である。τ
n-1は、時刻τの1サンプリング前の時刻(1個前のタイマ割込信号の発生の時刻)である。
【0063】
【数7】
【0064】
(数7)の第1項は、現在のサンプリング時刻τ
nにおける電圧V
AC(τ
n)の値の2乗値であるV
AC2(τ
n)と現在のサンプリング時刻の1個前のサンプリング時刻τ
n-1における電圧V
AC(τ
n-1)の値の2乗値であるV
AC2(τ
n-1)とを加算して1/2としている。すなわち、順次、時系列で隣接する2つの瞬時値の2乗を加算して1/2を乗じている。この演算は、時間離散系において生じる2乗演算の誤差を修正するためのものである。すなわち、サンプリング時刻τ
n-1とサンプリング時刻τ
nとの中間の時刻の仮想的な電圧V
AC (τ
n-0.5)の値を直線近似によって求め、この仮想的な電圧V
AC (τ
n-0.5)の値の2乗値を(数7)の第1項で演算している。勿論、Y(τ
n)= V
AC2(τ
n)+ Y(τ
n-1)とする、一般的な演算をすることもできるが、演算精度をより向上するために(数7)の演算をおこなっている。
【0065】
(数7)の第2項は、第1項の演算結果をサンプリング時刻τ
n-1まで順次加算したものである。この離散時間系における加算は、連続時間系における積分に対応するものである。(数7)におけるY(τ
n)、V
AC2(τ
n)のτ
nの添え字nはn番目のサンプリング時刻における値を示すものである。また、数7におけるY(τ
n-1)のτ
n-1の添え字
n-1はn-1番目のサンプリング数における値である。
【0066】
レジスタ(Z
-1)をクリアするタイミングは実効値演算ブロック1(
図3を参照)に記載のカウンタ機能(以下、カウンタと省略する)によって設定される。カウンタはタイマ割込信号をカウントする。また、タイマ割込信号はA/D変換のサンプリングのクロックとしても用いられる。カウンタのカウント値niは、1、2、3、・・・・nc、とインクリメントする。ncの次は1に戻り再びインクリメントをする。カウンタのカウント値niは、(数8)に示すように表記される。上述したように、カウント値niはncまでしかインクリメントせず、カウント値niはncよりも大きな値となることはない。すなわち、上述したサンプリング数nは、サンプリング時間T
s毎に限界なくインクリメントする数であるのに対して、カウンタ値niは1からncまでの範囲で繰り返す数である。しかしながら、カウント値niとサンプリング数nとは、いずれも、タイマ割込信号が発生する毎に変化する点は共通する。
【0067】
【数8】
【0068】
ここで、(数8)に示すカウント値niの最大の値であるncに応じ(数7)に示す時間積分の演算をおこなう時間((数5)の時間T
Cに対応する離散時間)を設定できる。nc=(T/2)/T
sである場合には、時間積分の演算をおこなう時間をT/2(商用電源50の電圧V
AC(τ
n)の半周期の時間)に設定できる。また、nc=T/T
sであるる場合には、時間をT(電圧V
AC(τ
n)の1周期の時間)に設定できる。ncの値は、nc=m×(T/2)/T
sとすることが望ましい。ここで、mは正整数である。このようにncの値を設定すれば、2乗積分期間が商用電源50の半周期である時間T/2の整数倍となり、実効値を求める演算における演算値のばらつきは理論的には生じない。ncの値をより大きくすれば、演算によって得られる実効値の精度は向上するが、実効値の検出の即応性は劣る。ncの値をより小さくすれば、逆に、実効値の精度は低下するが、実効値の検出の即応性は優れる。よって、より望ましくはnc=(T/2)/T
sであり、このように設定する場合において、実効値の精度と検出の即応性とのバランスが最も良好である。
【0069】
カウンタの最大カウント値を上述したように設定して、カウンタのカウント値がncのときにY(τ
n)をサンプルホールド(
図3の符号SH2を参照)している。そして、次の周期にレジスタに蓄えられた値Y(τ
n)、Y(τ
n-1)をクリアし0にするとともにカウンタのカウント値niを1にリセットする。
【0070】
なお、商用電源50から供給される電力の周期とタイマ割込信号の周期とは整数関係にはない、つまり、両者は同期していない。電圧V
AC(τ
n)の1周期の時間Tとタイマ割込信号の1周期の時間T
sとの比T/T
sが大きくなるように定めて、同期していないことから生じる実効値の演算誤差を小さくしている。
【0071】
実効値演算ブロック2において、(数7)の演算結果として求められた2乗積分値Y(τ
n)をサンプリング数ncで割り平方根演算をして実効値V
ACEを(数9)に示すようにして得る。(数5)に示す時間T
Cは、離散時間系ではnc×T
sである。(数5)に従えば、(数9)に示すncは、本来はnc×T
sであるが、サンプリング時間T
sは一定の値であるので係数T
sを省略して(数9)で表した。このようにしても、商用電圧の異なりによって制御特性が大きく変化することを防止するという実施形態の目的を達成することができる。
【0072】
【数9】
【0073】
(数10)は実効値に√2(2の平方根)を掛けて算出する、電圧V
AC(τ
n)の最大電圧である電圧V
mを示すものである。
【0074】
【数10】
【0075】
Y(τ
n)をホールドした後に、(数11)に示すように、Y(τ
n)と(1/nc)とを掛け、Y(τ
n)×(1/nc)の積の平方根得て、さらに、√2を掛けて、商用電源50の電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値であるV
mを検出している。そして、電圧V
AC(τ
n)をV
mで除して、すなわち、電圧V
AC(τ
n)を実効値V
ACEと√2との積で除して、正弦波データを得ている。
【0076】
【数11】
【0077】
この正弦波データは、商用電源50からの電圧V
AC(τ
n)の実効値100Vから240Vの範囲で変化してその結果、振幅最大値であるV
mがどのように変化をしても、常に一定の振幅を有するものである。
【0078】
図4は第1の実施形態の処理を説明するための模式図である。
図5は第1の実施形態の処理を説明するための別の模式図である。
図3、
図4、
図5を参照して以下に、第1の実施形態の処理を具体的に説明する。
【0079】
図4、
図5の各波形は、実際には時間T
Sごとに得られるデジタルデータを視覚的に分かり易く説明するための模式図である。各波形は連続的に、かつ、アナログ的に記載されている。また、図に記載された各波形の振幅は、紙面のスペースの都合により模式的であり正確な大きさの振幅では描かれていない。また、説明を簡単にするために、カウンタ(
図3を参照)がリセットされる時刻と通電中における電圧V
AC(τ
n)が0Vとなる時刻とが一致するとして説明をする。
図4、
図5におけるように、カウンタがリセットされる時刻と通電中におけるAC電圧が0Vとなる時刻とが一致する状態が常時生じる訳ではないが、実施形態のデジタル制御電源装置の動作説明の一般性は失われない。
【0080】
図4、
図5の横軸は、任意のサンプリング時刻τからの時間経過を示す。
図4、
図5の最上段の波形図は、AC電圧(
図3のV
AC(τ
n)が対応)を示す。
図4、
図5の上から2段目の波形図は、実効値(
図3の実効値が対応)を示す。
図4、
図5の上から3段目の波形図は、正弦波(
図3の正弦波データが対応)を示す。
図4、
図5の最下段の波形図は、基準電流信号(
図1の絶対値変換311から出力されるIrefが対応)を示す。
【0081】
図4を参照して以下説明をする。
【0082】
図4のAC電圧について説明をする。
【0083】
AC電圧は、時刻τ+Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの間の時間ではAC電圧は0V(ボルト)となっている。そして、時刻τ+2Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0084】
図4の実効値について説明をする。
【0085】
瞬停が発生していないときの実効値は100Vである。実効値演算において、例えば、nc=(T/2)/T
sとした場合には演算結果は上述したように交流半サイクル時間遅れて出力する。したがって、時刻τ+Tにおいて瞬停が生じた後も、一定時間(
図4では時間T/2)の間は交流半サイクル前の演算結果が出力される。この一定時間の長さは、実効値演算ブロック1のカウンタ(
図3を参照)がリセットされる時刻と瞬停発生時刻との時間差によって異なりが生じる。また、瞬停の結果を反映した(数7)の演算結果の値は、瞬停の発生時刻におけるAC電圧の位相によって異なるものとなる。
【0086】
図4においては、上述したようにカウンタ(
図3を参照)がリセットされる時刻と通電中におけるAC電圧が0Vとなる時刻とが一致するとして説明をするとともに、瞬停が発生する時刻と終了する時刻とが、AC電圧が0Vとなる時刻と一致しているとして説明を簡単なものとする。
【0087】
第1の実施形態においては、実効値演算ブロック1(
図3を参照)においては、瞬停の発生の有無に関係なく演算は間断なくおこなわれ、実効値演算ブロック2(
図3を参照)において演算の結果が保持され出力されているときにも、実効値演算ブロック1においては積分演算((数7)で示す加算演算を積分演算と称する)が常時おこなわれ続ける。また、第1の実施形態においては、実効値演算ブロック2においては瞬停の発生の有無に関係なく、実効値の更新と保持が常時おこなわれ続ける。
【0088】
図4においては、説明を分かり易くするために、(数7)に示す演算開始のタイミングと瞬停発生が同時である場合について説明する。実効値演算に必要となる交流デジタル信号の積算期間は、商用電源50の半周期の時間であるT/2となるように、nc=(T/2)/T
sに設定した。
【0089】
時刻τから時刻τ+T/2までの間は時刻τより前の信号を用いて演算した実効値が保持される。そして時刻τから時刻τ+T/2までの間に、この期間の実効値演算を行い、その演算結果が時刻τ+T/2以降で実効値として反映される。時刻τから時刻τ+T/2までの間において瞬停は発生していないので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0090】
時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間は時刻τから時刻τ+T/2までの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。また時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間において瞬停は発生していないので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0091】
時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでの間は時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。また時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。このとき瞬停が発生であり、AC電圧は0Vであるので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)は0となり、商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は0Vとなる。
【0092】
時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでの間は時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでの間における実効値の演算結果である0Vが出力される。時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。瞬停が発生中のAC電圧は0Vであるので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)は0となり、商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は0Vとなる。
【0093】
時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでの間は時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでの間における実効値の演算結果である0Vが出力される。時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τ+2Tにおいて瞬停は解消しているので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0094】
時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでの間は時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。以後は前記したように実効値の演算と保持および反映を交流半サイクル毎に実行し続けることで、演算によって得られた実効値である100Vが出力される。
【0095】
図4の正弦波について説明をする。
【0096】
正弦波(正弦波データ、
図3を参照)は、電圧V
AC(τ
n)を実効値V
ACEと√2との積で除して得ている((数11)を参照)。
【0097】
時刻τから時刻τ+Tまでは、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値である(数10)に示すV
mは約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。
【0098】
時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでは、√2×演算により求めた実効値V
ACEの値は約141Vであり、電圧V
AC(τ
n)は0Vである。よって、瞬停が生じている期間である時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでにおける正弦波の振幅は0である。
【0099】
時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでは、実効値演算ブロック2が出力するV
mである、√2×実効値V
ACEの値は0Vであり、電圧V
AC(τ
n)は0Vである。ここで、(数11)の演算において、分子が0である場合には、分母の値には無関係に電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)の演算結果は0とする演算の定義をしておく。よって、瞬停が生じている期間である時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでにおける正弦波の振幅は0である。
【0100】
時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでは、実効値演算ブロック2が出力するV
mである、√2×実効値V
ACEの値は0Vであり、電圧V
AC(τ
n)は、瞬停が解消されて所定の電圧が発生している。よって、瞬停が解消された期間である時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでにおける正弦波の振幅は無限大である。実際には、デジタル処理においては、無限大は設定リミット値に置きかえられる。なお、
図4においては、設定リミット値は模式的に描かれ、実際の振幅の大きさよりも小さく描かれている。
【0101】
時刻τ+5/2T以降は、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値は約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。
【0102】
図4の基準電流信号について説明をする。
【0103】
基準電流信号は、正弦関数演算305(
図1を参照)によって得られた
図4に示す正弦波と電圧誤差演算308(
図1を参照)によって得られた電圧誤差とを乗算309(
図1を参照)して、絶対値変換311(
図1を参照)から得られるIrefに対応する。ここで、電圧誤差は一定値であるとして、基準電流信号は表示されている。基準電流信号は、絶対値変換をおこなっているので、負極性の側は正極性に反転されている点を除き、
図4の正弦波と相似形である。
【0104】
基準電流信号が正極性とされている理由は、力率改善回路20から出力される電流I
Lが正極性の信号であるからである。つまり、基準電流信号に反映される電圧V
AC(τ
n)の絶対値と電流I
Lに反映される電流I
INとが相似形となるように制御をするために基準電流信号は正極性とされている。
【0105】
時刻τから時刻τ+Tまでは、基準電流信号は正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでにおける瞬停が生じている期間の基準電流信号の振幅は0である。時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでにおける基準電流信号の振幅は設定リミット値である。時刻τ+5/2T以降は、基準電流信号は正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0106】
図5を参照して以下説明をする。
【0107】
図5は、
図4に示すと同様に、実効値演算ブロック1および実効値演算ブロック2における、実効値演算と正弦波の発生の処理を常時おこなう場合の模式的波形図である。
【0108】
図5のAC電圧について説明をする。
【0109】
AC電圧は、時刻τ+5/4Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの間の時間ではAC電圧は0Vとなっている。そして、時刻τ+9/4Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0110】
図5の実効値について説明をする。
【0111】
図5においては、説明を分かり易くするために、カウンタ(
図3を参照)がリセットされる時刻と通電中におけるAC電圧が0Vとなる時刻とが一致するとともに、瞬停が発生する時刻と終了する時刻とが、AC電圧が振幅最大値の約141Vとなる時刻に一致している。
【0112】
時刻τから時刻τ+T/2までの間は時刻τより前の信号を用いて演算した実効値の演算結果が保持される。時刻τから時刻τ+T/2までの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τから時刻τ+T/2までの間において瞬停は発生していないので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0113】
時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間は時刻τから時刻τ+ T/2までの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。また時刻τ+T/2から時刻τ+Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τから時刻τ+T/2までの間において瞬停は発生していないので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0114】
時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでの間は時刻τ+ T/2から時刻τ+ Tまでの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。時刻τ+Tから時刻τ+3/2Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。瞬停が時刻τ+5/4T/において発生し、時刻τ+9/4T/までのAC電圧は0Vであるので、(数7)に示す演算は以下のようになる。時刻τ+Tから時刻τ+5/4Tまでの1/4周期においては時間とともにY(τ
n)の値が増加する。一方、時刻τ+5/4Tから時刻τ+3/2Tまでの1/4周期においてはY(τ
n)の値は増加することがない。そして、商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで2乗積分値Y(τ
n)を除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は50Vとなる。
【0115】
時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでの間は時刻τ+ Tから時刻τ+3/2Tまでの間における実効値の演算結果である50Vが出力される。時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。瞬停が発生中のAC電圧は0Vであるので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は0Vとなる。
【0116】
時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでの間は時刻τ+ 3/2Tから時刻τ+ 2Tまでの間における実効値の演算結果である0Vが出力される。時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τ+9/4Tにおいて瞬停は解消しているので、(数7)に示す演算は以下のようになる。時刻τ+2Tから時刻τ+9/4Tまでの1/4周期においてはY(τ
n)の値は増加することがない。一方、時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでの1/4周期においては時間とともにY(τ
n)の値が増加する。そして、商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで2乗積分値Y(τ
n)を除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は50Vとなる。
【0117】
時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでの間は時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまでの間における実効値の演算結果である50Vが出力される。時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでの間に、この期間の実効値演算がおこなわれる。時刻τ+9/4Tにおいて瞬停は解消しているので、(数7)に示す演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0118】
時刻τ+3Tから時刻τ+7/2Tまでの間は時刻τ+7/2Tから時刻τ+4Tまでの間における実効値の演算結果である100Vが出力される。同様にして時刻τ+7/2Tから時刻τ+4Tまでの間は8回目の演算で得られる2乗積分値Y(τ
n)を商用電源50の半周期の時間T/2に対応する数ncで除算して、平方根を求めて得られる実効値の値は100Vとなる。
【0119】
図5の正弦波について説明をする。
【0120】
正弦波(正弦波データ、
図3を参照)は、電圧V
AC(τ
n)を実効値V
ACEと√2との積で除して得ている((数11)を参照)。
【0121】
時刻τから時刻τ+5/4Tまでは、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値は約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。
【0122】
時刻τ+5/4Tから時刻τ+3/2Tまでは、√2×実効値V
ACEの値は約141Vであり、電圧V
AC(τ
n)は0Vである。よって、瞬停が生じている期間である時刻τ+5/4Tから時刻τ+3/2Tまでにおける正弦波の振幅は0である。
【0123】
時刻τ+3/2Tから時刻τ+2Tまでは、実効値演算ブロック2が出力するV
mである、√2×実効値V
ACEの値は約71Vであり、電圧V
AC(τ
n)は0Vである。よって、瞬停が生じている期間である時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでにおける正弦波の振幅は0である。
【0124】
時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでは、実効値演算ブロック2が出力するV
mである、√2×実効値V
ACEの値は0Vであり、電圧V
AC(τ
n)は、瞬停が解消されて所定の電圧が発生している。よって、瞬停が解消された期間である時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでにおける正弦波の振幅は無限大である。実際には、デジタル処理においては、無限大は設定リミット値に置きかえられる。なお、
図5においては、設定リミット値は模式的に描かれ、実際の振幅の大きさよりも小さく描かれている。
【0125】
時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでは、実効値演算ブロック2が出力するV
mである、√2×実効値V
ACEの値は約71Vであり、電圧V
AC(τ
n)は、瞬停が解消されて所定の電圧が発生している。よって、時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでにおける正弦波の振幅は2である。なお、
図5においては、正弦波の実際の振幅の大きさよりも小さく描かれている。
【0126】
時刻τ+3T以降は、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値は約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。
【0127】
図5の基準電流信号について説明をする。
【0128】
時刻τから時刻τ+5/4Tまでは、基準電流信号は正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでにおける瞬停が生じている期間の基準電流信号の振幅は0である。時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでにおける基準電流信号の振幅は設定リミット値である。時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでにおける基準電流信号の振幅は、時刻τから時刻τ+5/4Tまでにおけるものの2倍である。時刻τ+3Tから時刻τ+4Tまでにおける基準電流信号の振幅は、時刻τから時刻τ+5/4Tまでと同様のレベルであり、同様に正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0129】
図4では、AC電圧の最小電圧である0Vのときに瞬停が発生するとして説明をし、
図5では、AC電圧の最大電圧である141Vのときに瞬停が発生するとして説明をした。しかしながら、AC電圧が任意の電圧のときに瞬停が発生した場合にも同様にして(数7)を用いることによって、実効値の演算が可能である。また、AC電圧と積分演算区間との位相関係が任意であっても、実効値演算の期間を周期Tの半分であるT/2の整数倍に選べば、正確な実効値の演算が可能である。そして、このようにして得られた実効値を用いて、正弦波、基準電流信号の各波形を求めることができる。
【0130】
また、上述の説明では、実効値を求めた後に、√2を乗算して正弦波の振幅の最大値を求め、電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅を1に規格化している。しかしながら、要は基準電流信号が商用電源50の電圧によらず一定であれば、制御系を安定化し、高精度化するという目的を達することができる。よって、電圧V
AC(τ
n)/実効値V
ACEとして、単に電圧V
AC(τ
n)を実効値で除するだけで得られる正弦波を正弦波データとして用いることによっても、その目的を達することができる。
【0131】
(第1の実施形態の要約)
第1の実施形態のデジタル制御電源装置では、デジタル制御電源装置として機能するデジタル制御電源装置10は、商用電源50からの正弦波電力を整流する整流回路として機能するダイオードブリッジ40と、整流回路に入力側が接続され力率を改善するとともに、出力側から負荷に対して電力を供給する力率改善回路として機能する力率改善回路20と、力率改善回路を制御する制御部として機能するデジタル制御部30と、を備える。なお、後述する第2の実施形態および第3の実施形態においても同様の基本構成を備える。
【0132】
また、制御部として機能するデジタル制御部30は、商用電源50から供給される交流のアナログの電圧V
AC(t)をデジタル値であらわされる電圧V
AC(τ
n)に変換する第1のアナログ・デジタル変換器として機能するサンプルホールド部301と、予め定める所定時間の間における交流電圧デジタル信号(電圧V
AC(τ
n))の瞬時値の2乗平均の平方根を演算して実効値(電圧V
ACE)を得る実効値演算部として機能する実効値演算302と、実効値を更新し保持するデータ保持部として機能するデータ保持304と、実効値演算部における実効値の演算の開始およびデータ保持部における実効値の更新を管理する演算実行管理部として機能するカウンタ(
図3のカウント値をカウントするカウンタを参照)と、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている実効値で除して基準正弦波(
図3の正弦波データ)を得る基準正弦波発生部として機能する正弦関数演算305と、を備える。なお、後述する第2の実施形態および第3の実施形態においても同様の基本構成を備える。
【0133】
また、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求める演算をして基準電流信号(Iref)を得る絶対値変換部として機能する絶対値変換311と、整流回路から力率改善回路に供給される整流電流(電流I
L(t))を整流電流デジタル信号(電流I
L(τ
n)、図示せず)に変換する第2のアナログ・デジタル変換器として機能するサンプルホールド部312と、整流電流デジタル信号と基準電流信号との誤差である電流誤差信号を求める演算をする電流誤差演算部として機能する電流誤差演算313と、電流誤差信号に応じ力率改善回路を制御するための制御信号であるパルス幅変調信号(PWM)を発生する力率改善制御信号発生部として機能するパルス幅変調信号発生部(PWM部314)と、を具備する。なお、後述する第2の実施形態および第3の実施形態においても同様の基本構成を備える。
【0134】
ここで、デジタル・シグナル・プロセッサで構成されるデジタル制御部30は制御部の1実施形態である。また、交流のアナログの電圧V
AC(t)をデジタル値である電圧V
AC(τ
n)に変換するサンプルホールド部301は第1のアナログ・デジタル変換器の1実施形態である。また、実効値演算302は、予め定める所定時間の間における交流電圧デジタル信号の瞬時値の2乗平均の平方根を演算して実効値を得る実効値演算部の1実施形態である。また、データ保持304は、実効値を更新し保持するデータ保持部の1実施形態である。
【0135】
また、実効値演算ブロック1のカウンタは、実効値演算部における実効値の演算の開始およびデータ保持部における実効値の更新を管理する演算実行管理部の1実施形態である。
【0136】
また、正弦関数演算305(さらに詳細には、実効値演算ブロック2および除算(
図3を参照))は、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている実効値で除して基準正弦波を得る基準正弦波発生部の1実施形態である。正弦波データ(
図3を参照)は、基準正弦波の1実施形態であり、実施形態では、交流電圧デジタル信号をデータ保持部に保持されている実効値で除して、さらに√2で除して基準正弦波を得ている。また、絶対値変換311は、基準正弦波に比例する信号の絶対値を求める演算をして基準電流信号を得る絶対値変換部の1実施形態である。サンプルホールド部312は、整流回路から力率改善回路に供給される整流電流を整流電流デジタル信号に変換する第2のアナログ・デジタル変換器の1実施形態である。実施形態では、電流I
IN(整流電流)と電流I
L(インダクタに流れる電流)とは同一である(
図2を参照)。
【0137】
また、電流誤差演算313は、整流電流デジタル信号と基準電流信号との誤差である電流誤差信号を求める演算をする電流誤差演算部の1実施形態である。また、PWM部314は、電流誤差信号に応じ力率改善回路を制御するための制御信号を発生する力率改善制御信号発生部の1実施形態である。
【0138】
第1の実施形態によれば、デジタル制御電源装置は、商用電源からの正弦波電力を整流する整流回路と、整流回路に入力側が接続され力率を改善するとともに、出力側から負荷に対して電力を供給する力率改善回路と、力率改善回路を制御する制御部と、を備えることによって、力率を1に近づけるように改善することができる。そして、制御部は、力率改善回路の目標値である基準電流信号として商用電源の電圧の異なりによらず規格化した振幅の信号を供給するので、商用電源の電圧の広範囲な異なりに対応でき、良好なる力率改善特性を有するデジタル制御電源装置を提供することができる。
【0139】
また、第1の実施形態のみならず、第2の実施形態および第3の実施形態においても以下の構成を採用するようにしてもよい。
【0140】
実効値演算部は、予め定める所定時間(nc×T
S)の間における電圧V
AC(τ
n)の瞬時値の2乗平均の平方根を演算して実効値を得るのみならず、次のようにしてもよい。すなわち、上述した(数7)に示すように、順次、時系列で隣接する交流電圧デジタル信号の2つの瞬時値の2乗を加算して1/2を乗じ、(数9)に示すように、予め定める所定時間(nc×T
S)の間における平均の平方根を演算して実効値を得るようにしてもよい。(数7)に示す演算によって通常の2乗平均の平方根を得る演算よりもさらに演算精度を向上することができる。
【0141】
また、予め定める所定時間(nc×T
S)は、電圧V
AC(τ
n)の繰り返し周期の半分の時間であるT/2としてもよい。このように、設定することによって、電圧V
AC(τ
n)と演算の始期との位相関係によらず、各実効値演算のステップにおける2乗平均の平方根の演算結果は等しいものとなり、短い演算時間によって良好なる演算精度を得ることができる。
【0142】
また、力率改善回路20の出力側から負荷60に対して供給される直流の電圧V
OUTをデジタル信号(電圧V
OUT(τ
n)、図示せず)に変換する第3のアナログ・デジタル変換器として機能するサンプルホールド部306を設けるようにしてもよい。また、直流の電圧V
OUTの目標値である基準電圧信号Vrefを発生する基準電圧307と、電圧V
OUTを変換したデジタル信号(電圧V
OUT(τ
n))と基準電圧信号Vrefとの誤差である電圧誤差信号を演算する電圧誤差演算308を設けるようにしてもよい。また、電圧誤差信号と基準正弦波とを乗算する乗算309をおこない、基準正弦波に比例する信号を得るようにしてもよい。このようにすることによって、力率改善回路20は、力率を改善するとともに、定電圧回路としても機能する。
【0143】
また、力率改善回路20は、力率を改善するとともに、定電圧回路としても機能するものに限られるものではない。図示しないが、実施形態の変形例の力率改善回路においては、力率を改善する機能だけを有するものとしてもよい。そして、この力率改善回路の出力側に定電圧回路を付加するようにしてもよい。このような構成によれば、力率改善回路に付加される定電圧回路の直流出力電圧は、商用交流電源から得られる最大電圧よりも高く設定するのみならず、商用交流電源から得られる最大電圧よりも低く設定することもできる。
【0144】
具体的な変形例の力率改善回路の回路構成の一例について、
図1を参照して説明をする。
図1に示す電圧誤差演算308からの出力に替え予め定める所定の定数を出力するようにして、乗算309において正弦関数演算305と所定の定数とを乗算する。そして、図示しない定電圧回路を力率改善回路20と負荷60との間に挿入する。力率改善回路20の出力電圧は定電圧化されていないので変動する。定電圧回路は、力率改善回路20から出力される電圧を負荷60が要求する電圧に応じて昇圧し、または、降圧する。このような定電圧回路は周知技術である。力率改善回路から出力される電圧の変化範囲は、負荷60が消費する電力の変動が大きい場合には大きなものとなるので、適宜に制限するのがより望ましい。具体的には、例えば、力率改善回路20から出力される電圧を第1のコンパレータと第2のコンパレータで検出する。そして、デジタル制御部30は力率改善回路20から出力される電圧が、第1のコンパレータと第2のコンパレータによって検出される間の電圧範囲となるように乗算309に入力される所定の定数を適宜変更する。
【0145】
このような構成によれば、
図1に示すサンプルホールド部306に替え図示しない第1のコンパレータと第2のコンパレータとを用いることにより回路の簡略化を図ることができるとともに、力率改善回路20と負荷60との間に挿入する定電圧回路によって商用の交流電源から得られる電圧に拘束されない任意の電圧を負荷に供給することが容易となる。
【0146】
また、上述した実効値を求める演算をおこなう理由は、商用電源50の交流の電圧V
ACの電圧変化が生じた場合でも一定振幅の正弦波を得るためである。よって、交流の電圧V
ACの波形に歪がない場合には、直接に実効値を求める演算に替え平均値を求める演算を媒介として演算を簡略化することができる。すなわち、(数7)における2乗の演算をおこなうことなく単に加算演算をおこない平均値を求め、平均値に所定係数を掛けて実効値を求めることができる。ここで実効値V
ACEは、(数4)に示すように、V
ACE=V
m/√2で表され、平均値V
AVは、V
AV=V
m(2/π)で表される。V
ACE/V
AV=(π/2)/√2となる比例関係がある。よって、実効値演算302(
図1を参照)において、平均値V
AVを求める演算をおこない、平均値V
AVに(π/2)/√2を掛けて実効値を求めるようにしてもよい。さらには、実効値に替え平均値を直接に用いるようにしても、商用電源50の交流の電圧V
ACの電圧変化が生じた場合でも一定振幅の正弦波を得るという目的を達することができる。
【0147】
(第1の実施形態の課題)
図3、
図4、
図5を参照した上述の説明によって、以下の課題が明らかになった。
【0148】
第1の課題は、第1の実施形態のデジタル制御電源装置においては、瞬停から回復した直後において、正弦波および基準電流信号が設定リミット値まで大きくなることである(
図4の時刻τ+2Tから時刻τ+5/2Tまで、
図5の時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでを参照)。
【0149】
第2の課題は、第1の実施形態のデジタル制御電源装置においては、(数7)に示す演算は、その積算期間中に瞬停の発生によってAC電圧が0Vとなる場合でも連続的におこなわれることによって、積算値が小さくなり、演算によって得られる実効値の値が小さくなることである。その結果、正弦波および基準電流信号が設定リミット値となることが解消された後においても、正弦波および基準電流信号が大きくなってしまう(
図5の時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでを参照)。
【0150】
このような2つの課題を解決する1つの手段が、第2実施形態の、停電フラグ(
図3を参照)を用いておこなう実効値演算ブロック1および実効値演算ブロック2の制御である。また、このような2つの課題を解決する別の手段が、第3実施形態の、実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を用いておこなう実効値演算ブロック1および実効値演算ブロック2の制御である。
【0151】
停電フラグを用いる処理と、実効値演算開始フラグを用いる処理を採用することによって上述した2つの課題を同時に解決することができる。なお、
図3においては、停電フラグと実効値演算開始フラグの両方を備えるものが記載されている。
【0152】
「第2の実施形態」
(瞬停検出演算の処理)
図6は、瞬停検出演算ブロックでおこなわれる瞬間停電検出(瞬停検出と省略する)の原理を示す図である。
【0153】
図6(A)は瞬停が発生しないときの、電圧V
AC(τ
n)の波形(AC電圧波形)、AC電圧のゼロ点検出の波形(AC電圧ゼロ点検出)、AC電圧を微分した波形(AC電圧微分波形)、AC電圧微分のゼロ点検出(AC電圧微分ゼロ点検出)、の各波形を示すものである。
図6(B)は瞬停が発生するときの、AC電圧波形、AC電圧ゼロ点検出、AC電圧微分波形、AC電圧微分ゼロ点検出、の各波形を示すものである。
図6に示す処理は、実際にはデジタル制御部30におけるデジタル信号の処理としておこなわれ、
図6はデジタル処理の内容を模式的に示す模式図である。
【0154】
図3と
図6とを参照して、以下に瞬停検出の原理の説明をする。瞬停検出は、瞬停検出303(
図1を参照)およびACライン状態判定(
図3を参照)に対応する。
【0155】
まず、
図6(A)を参照して説明をする。電圧V
AC(τ
n)が、第1の閾値電圧V
Hと第2の閾値電圧V
Lの範囲であるときにAC電圧ゼロ点を検出する。AC電圧のゼロ点は商用電源50の半周期ごとに発生する。電圧V
AC(τ
n)の微分波形が、第3の閾値電圧V
H-diffと第4の閾値電圧V
L-diffの範囲であるときにAC電圧微分ゼロ点を検出する。ここで、アナログの電圧V
AC(t)の微分は(数12)であらわされる。
【0156】
【数12】
【0157】
AC電圧ゼロ点は商用電源50の半周期ごとに発生し、AC電圧微分ゼロ点も商用電源50の半周期ごとに発生する。電圧V
AC(t)はsin関数、電圧V
AC(t)の微分はcos関数であるので、AC電圧ゼロ点とAC電圧微分ゼロ点とは、1/4周期位相がずれている。瞬停が発生しないときは、AC電圧ゼロ点とAC電圧微分ゼロ点とは欠けることなく規則正しく交互に発生する。
【0158】
次に、
図6(B)を参照して説明をする。電圧V
AC(t)が、瞬停を生じたときには、AC電圧波形はゼロ値となる。そして電圧V
AC(t)が、第1の閾値電圧V
Hと第2の閾値電圧V
Lの範囲となりAC電圧ゼロ点を検出する。また、電圧V
AC(t)が、瞬停を生じたときには、電圧V
AC(t)の微分波形が、第3の閾値電圧V
H-diffと第4の閾値電圧V
L-diffの範囲となりAC電圧微分ゼロ点を検出する。
【0159】
図3の瞬停検出演算ブロックを参照して、ACライン状態判定について説明をする。真偽判定AはAC電圧ゼロ点(AC電圧が0V付近となる点)が発生したか否かを判定し、AC電圧ゼロ点が発生するときを真、AC電圧ゼロ点が発生しないときを偽とする。真偽判定BはAC電圧微分ゼロ点(AC電圧微分値が0V付近となる点)が発生したか否かを判定し、AC電圧微分ゼロ点が発生するときを真、AC電圧微分ゼロ点が発生しないときを偽とする。
【0160】
ここで、AC電圧ゼロ点、AC電圧微分ゼロ点は理想的には、AC電圧が零値(0V)、AC電圧微分が零値(0V)となる点であるが、現実には零値を検出することが困難である。その理由は、瞬停検出演算ブロックにおいては、離散時間処理をおこなっているので、AC電圧が零値となるAC電圧ゼロ点を検出できない場合もあり得る。また、ノイズの影響を排除する必要もある。そこで、デジタル値である電圧V
AC(τ
n)が(数13)の範囲である場合に電圧ゼロ点、すなわち、電圧が零値であると判定している(
図3の真偽判定A、
図6を参照)。
【0161】
【数13】
【0162】
AC電圧微分については、離散系であるので、(数14)に示すように、微分演算にかえて差分演算をおこなっている。
【0163】
【数14】
【0164】
差分は一般的には、前進差分と後退差分を含み、隣接するサンプリング点における電圧V
AC(τ
n)の差を得ることによって求められる。第2の実施形態においては、nサンプリング目の電圧V
AC(τ
n)から(n-1)サンプリング目の電圧V
AC(τ
n-1)を差し引いた差分Δx(τ
n)を求めて、離散時間における差分演算をおこなっている。真偽判定Bの前段に設けられた減算器とレジスタ(Z
-1)が差分器として機能する。レジスタ(Z
-1)の入力側の電圧V
AC(τ
n)とレジスタ(Z
-1)の出力側の電圧V
AC(τ
n-1)を減算器の入力側に入力して減算器の出力側から差分Δx(τ
n)を得ている。
【0165】
また、AC電圧微分ゼロ点を検出できない場合もあり得る。また、ノイズの影響を排除する必要もある。そこで、差分器によって順次求める差分Δx(τ
n)が(数15)の範囲である場合に電圧微分ゼロ点、すなわち、差分Δx(τ
n)が零値であると判定している(
図3の真偽判定B、
図6を参照)。
【0166】
【数15】
【0167】
ACライン状態判定は、真偽判定Aと、真偽判定Bとを組み合わせておこなう。
【0168】
瞬停が生じることなく通電しているときには、真偽判定Aの結果が真である状態と、真偽判定Bの結果が真である状態とは、1/4周期、位相がずれている(
図6(A)を参照)。したがって、
図3の瞬停検出演算ブロックのACライン状態判定の表に示すように、瞬停が生じることなく通電しているときには、真偽判定Aの結果が偽、かつ、真偽判定Bの結果が偽の状態、真偽判定Aの結果が偽、かつ、真偽判定Bの結果が真の状態、真偽判定Aの結果が真、かつ、真偽判定Bの結果が偽の状態、の3状態が存在する。
【0169】
一方、瞬停が生じているときには、真偽判定Aの結果が真、かつ、真偽判定Bの結果が真の状態となる(
図6(B)を参照)。デジタル制御部30は、このときは、瞬停、より広くは停電であると判断をする。具体的には、停電フラグは、AC電圧ゼロ点検出(
図6(B)を参照)がハイレベルであり、かつ、AC電圧微分ゼロ点検出(
図6(B)を参照)がハイレベルであるときに出力される。つまり、停電フラグは、
図3に示すACライン状態判定において、真偽判定Aの結果が真であり、かつ、真偽判定Bの結果が真であるときに出力される。ここで、停電フラグのハイレベル/ローレベルのいずれを瞬停が生じている時間に対応させるかは任意に定め得るものである。以下の説明では、瞬停が生じている時間は停電フラグがハイレベルとなり、瞬停が生じていない通電している時間は停電フラグがローレベルとなるとする。
【0170】
(停電フラグを用いる処理の内容)
停電フラグ(
図3を参照)を用いる実効値演算ブロック1においておこなわれる内部値リセット(
図3を参照)の処理および実効値演算ブロック2においておこなわれる演算停止実効値保持(
図3を参照)の処理の内容について説明する。
【0171】
瞬停が生じ、停電フラグがハイレベルとなっている間は、実効値演算ブロック1において、カウンタのカウンタ値および積算値がリセットされ続ける。このような処理の目的とするところは、積算期間中に瞬停の発生によってAC電圧が0Vとなる場合、(数7)に示す積算値が小さくなることによって実効値の値が小さくなる事態の発生を防止することである。すなわち、瞬停が解消するまでは(数7)に示す積算値をリセットし続け、瞬停が解消した後、予め定めた所定時間が経過し、かつAC電圧がゼロ点となる時点まで(数7)に示す演算を実行することで、積算値を実効値の演算可能な値まで蓄積させ、実効値演算を開始するようにするものである。このようにして、第2の課題を解決することができる。
【0172】
瞬停が生じ、停電フラグがハイレベルとなっている間は、実効値演算ブロック2のサンプルホールド(SH2)においては、サンプルホールド動作を停止させ、サンプルホールド値が更新されることはない。また同様に1/ncの演算および平方根演算も実行しない。結果として、瞬停が生じている間は、瞬停が生じる直前の実効値が保持され続ける。このような処理の目的とするところは、瞬停から回復した直後において、基準電流信号が設定リミット値まで大きくなることを防止することである。すなわち、瞬停が解消するまでは、実効値として瞬停が発生する直前の値を採用することによって実効値が0となることを防止するものである。これによって正弦波、基準電流値が、
図4、
図5に示すように設定リミット値まで達することを防止する。このようにして、第1の課題を解決することができる。
【0173】
図7は第2の実施形態の処理を説明するための模式図である。
図8は第2の実施形態の処理を説明するための別の模式図である。
【0174】
以下、
図7、
図8を参照して、停電フラグを用いる処理について具体的に説明をする。
【0175】
図7、
図8の横軸は、任意のサンプリング時刻τからの時間経過を示す。
図7、
図8の最上段の波形図は、AC電圧(
図3のV
AC(τ
n)が対応)を示す。
図7、
図8の上から2段目の波形図は、停電フラグ(
図3を参照)を示す。
図7、
図8の上から3段目の波形図は、実効値(
図3の実効値が対応)を示す。
図7、
図8の上から4段目の波形図は、正弦波(
図3の正弦波データが対応)を示す。
図7、
図8の最下段の波形図は、基準電流信号(
図1の絶対値変換311から出力されるIrefが対応)を示す。
【0176】
図7は
図4に対応し、
図8は
図5に対応する図である。しかしながら、
図7、
図8に示す各波形は、停電フラグを用いる処理を採用した場合の図である点において、
図4、
図5におけるものと相違する。
【0177】
図7を参照して説明をする。
【0178】
図7のAC電圧について説明をする。
【0179】
AC電圧は、時刻τ+Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの間の時間ではAC電圧は0V(ボルト)となっている。そして、時刻τ+2Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0180】
図7の停電フラグについて説明をする。
【0181】
停電フラグは、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの間、ハイレベルとして出力される。
【0182】
図7の実効値について説明をする。
【0183】
瞬停が発生していないときの実効値は100Vである。実効値演算においては、上述したように交流半サイクル前の演算結果を出力する。したがって、時刻τから時刻τ+Tにおいて瞬停が生じるまでは、実効値として100Vの電圧が出力される。
【0184】
時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの瞬停が生じ、停電フラグがハイレベルとなっている間は、1/ncの演算および平方根演算は停止し、サンプルホールド(保持)された実効値を更新することはない。その結果、瞬停が生じている間は、瞬停が生じる直前の実効値が保持され続ける。よって、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの間の実効値として100Vが出力される。
【0185】
時刻τ+2Tにおいて停電フラグがローレベルに変化すると、それまで実効値演算ブロック1において、リセットされ続けていたカウンタ値のインクリメントが再開する。また、(数7)に示す2乗積分値であるY(τ
n)のリセットも同時に解除されるため、値が増加し始める。そして予め定めた所定時間が経過し、かつAC電圧がゼロとなる時刻τ+5/2Tにおいて、実効値演算ブロック2が実効値演算ブロック1の積算値およびカウンタ値を保持し、それらの値から実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持することで、実効値である100Vが出力される。このとき、実効値演算ブロック1の積算値およびカウンタ値は実効値演算ブロック2においてデータ保持が終了した後にリセットされ、再び積算およびカウント動作を始める。
【0186】
ここで、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまでの停電フラグがハイレベルとなっている間は、保持された実効値が更新されることはない。また、停電フラグがローレベルに変化した直後である時刻τ+2Tから実効値演算が終了するまでの間も保持された実効値が更新されることはない。そして、時刻τ+5/2Tにおいて実効値演算が終了してはじめて保持されている前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持する。停電フラグがローレベルに変化した直後である時刻τ+2Tから実効値演算ブロック1は、商用電源50の半周期の間、2乗積分をおこなうため、時刻τ+5/2Tにおいて前の実効値を更新し新たな実効値を保持し、実効値は100Vである。
【0187】
時刻τ+5/2Tから時刻τ+4Tまでの間は、(数7)に示す演算によって得られた100Vが出力される。
【0188】
図7の正弦波について説明をする。
【0189】
時刻τから時刻τ+4Tまで、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値は約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/(√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。すなわち、第1の課題は解決されている。停電フラグがローレベルとなる時刻τ+2Tにおいて、たまたま、AC電圧が0Vから復帰する位相関係であるので、
図4においては顕在化していないが、第2の課題についても解決されている。
【0190】
図7の基準電流信号について説明をする。
【0191】
時刻τから時刻τ+4Tまで、正弦波の最大振幅は1に規格化されるのであるから、基準電流信号は規格化された正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0192】
図8を参照して以下説明をする。
【0193】
図8のAC電圧について説明をする。
【0194】
AC電圧は、時刻τ+5/4Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの間の時間ではAC電圧は0V(ボルト)となっている。そして、時刻τ+9/4Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0195】
図8の停電フラグについて説明をする。
【0196】
停電フラグは、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの間、ハイレベルとして出力される。
【0197】
図8の実効値について説明をする。
【0198】
瞬停が発生していないときの実効値は100Vである。実効値演算においては、
図3を参照して上述したように交流半サイクル前の演算結果を出力する。したがって、時刻τから時刻τ+5/4Tにおいて瞬停が生じるまでは、実効値として100Vの電圧が出力される。
【0199】
時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの瞬停が生じ、その結果として停電フラグがハイレベルとなっている間は、1/ncの演算および平方根演算は停止し、保持された実効値が更新されることはない。その結果、瞬停が生じている間は、瞬停が生じる直前の実効値が保持され続ける。よって、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの間の実効値として100Vが出力される。
【0200】
時刻τ+9/4Tにおいて停電フラグがローレベルに変化すると、それまで実効値演算ブロック1において、リセットされ続けていたカウンタ値のインクリメントが再開する。また、(数7)に示す2乗積分値であるY(τ
n)のリセットも同時に解除されるため、値が増加し始める。そして予め定めた所定時間が経過し、かつAC電圧がゼロとなる時刻τ+3Tにおいて、実効値演算ブロック2が実効値演算ブロック1の積算値およびカウンタ値を保持し、それらの値から実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持することで、実効値である100Vが出力される。このとき、実効値演算ブロック1の積算値およびカウンタ値は実効値演算ブロック2においてデータ保持が終了した後にリセットされ、再び積算およびカウント動作を始める。
【0201】
ここで、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの停電フラグがハイレベルとなっている間は、保持された実効値が更新されることはない。また、停電フラグがローレベルに変化した直後である時刻τ+9/4Tから実効値演算が終了するまでの間も保持された実効値が更新されることはない。そして、実効値演算が終了し、保持されている実効値が、時刻τ+3Tにおいて更新され新たな実効値が出力かつ保持される。停電フラグがローレベルに変化した直後である時刻τ+9/4Tから実効値演算ブロック1は、2乗積分演算を開始し、予め定めた所定時刻が経過し、かつAC電圧がゼロとなる時刻τ+3Tにおいて演算値演算ブロック2が実効値を演算する。このとき、2乗積分演算は時刻τ+9/4Tから時刻τ+3Tまでの期間で行われるが、交流半サイクル以上の積分を行うため、時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでの積分による誤差を非常に小さく抑える事ができ、時刻τ+3Tにおいて演算される実効値の値はほぼ100Vとなる。よって前の実効値を更新し新たな実効値を保持し、実効値は100Vである。
【0202】
時刻τ+3Tから時刻τ+4Tまでの間は、(数7)に示す演算によって得られた100Vが出力される。
【0203】
図8の正弦波について説明をする。
【0204】
時刻τから時刻τ+4Tまで、実効値V
ACEと√2との積として得られる、電圧V
AC(τ
n)の振幅最大値は約141Vであるので、電圧V
AC(τ
n)/√2×実効値V
ACE)として得られる正弦波の最大振幅は1に規格化される。ここで、
図5に示すように、時刻τ+9/4Tから時刻τ+5/2Tまでの間において正弦波が設定リミットに達することもなく、時刻τ+5/2Tから時刻τ+3Tまでの間において正弦波の振幅が1以上となることもない。すなわち、第1の課題、第2の課題のいずれも解決されている。
【0205】
図8の基準電流信号について説明をする。
【0206】
時刻τから時刻τ+4Tまで、正弦波の最大振幅は1に規格化されるのであるから、基準電流信号は規格化された正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0207】
(第2の実施形態の要約)
第2の実施形態は、上述した第1実施形態の基本的構成部を備えている。さらに、第2の実施形態の演算実行管理部は、実効値演算ブロック1のカウンタに加えて、以下の構成部を有している。
【0208】
電圧V
AC(τ
n)が(数13)に示すように第1の閾値と第2の閾値の範囲である場合に電圧V
AC(τ
n)が零値であると判定する第1の判定器として機能する真偽判定Aを有している。また、隣接する2つのサンプリング点におけるデジタル値である電圧V
AC(τ
n)、電圧V
AC(τ
n-1)、の差分Δx(τ
n)を順次求める差分器として機能する減算器とレジスタ(Z
-1)とを有している。また、差分Δx(τ
n)が(数15)に示すように第3の閾値と第4の閾値の範囲である場合に電圧微分ゼロ点、すなわち、差分Δx(τ
n)が零値であると判定する第2の判定器として機能する真偽判定Bを有している。また、デジタル値である電圧V
AC(τ
n)および差分Δx(τ
n)がいずれも零値であるときに停電フラグを出力する交流ライン状態判定部として機能するACライン状態判定を有している。
【0209】
そして、停電フラグが出力されたときに、実効値演算部として機能する実行演算ブロック1における積算値およびカウンタ値をリセットし続ける。また、停電フラグが出力されたときに、データ保持部としても機能する実効値演算ブロック2における実効値の更新を停止する。
【0210】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果をすべて有する。商用電源の電圧の広範囲な異なりに対応でき、良好なる力率改善特性を有するデジタル制御電源装置を提供することができるという効果を当然有する。
【0211】
さらに、第2の実施形態に特有の以下の効果を有する。商用電源からの電力の供給が瞬停によって絶たれた場合においても、停電フラグの作用によって、瞬間停電が発生する直前の実効値を出力し続ける。よって、力率改善回路20が瞬停によって不安定動作に陥ることがなく、特性の劣化を生じることなく、高精度の制御特性が維持できる。
【0212】
「第3の実施形態」
(実効値演算開始フラグを用いる処理の内容)
実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を用いる実効値演算ブロック1においておこなわれる内部値リセット(
図3を参照)の処理および実効値演算ブロック2においておこなわれる処理の内容について説明する。
【0213】
実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を用いる実効値演算ブロック1における2乗積分の演算データの処理と、実効値演算ブロック2おける実効値演算および演算結果データ保持の処理の原理について説明する。第3の実施形態の原理は、要するに、電圧V
AC(τ
n)が0Vとなる時刻において、実効値演算ブロック2が実効値演算を実行した後、実効値演算ブロック1におけるカウンタおよび積算値をリセットし、カウンタのカウント値を1として再計算できるようにすることである。このようにすると2乗積分演算の区間を電圧V
AC(τ
n)が0Vとなる時刻で区切るため、電圧V
AC(τ
n)の2乗積分の期間を正確に商用電源50の半周期の整数倍に設定することが可能となり、設定周期によって実効値の演算結果が変動する事態は生じない。よって、商用電源50の半周期毎に正確な実効値の演算が可能となる。
【0214】
実効値演算ブロック演算開始条件(
図3を参照)に示す、第1の条件(
図3の[1]を参照)と第2の条件(
図3の[2]を参照)と第3の条件(
図3の[3]を参照)とが同時に成立する場合に実効値演算開始フラグがハイレベルとなる。
【0215】
第1の条件は、真偽判定Aにおける結果が真である場合、すなわち、電圧V
AC(τ
n)が(数13)に示す範囲にある場合である。(数13)に示す範囲にあるということは、電圧V
AC(τ
n)が0V付近にあるということである。
【0216】
第2の条件は、通電状態である。通電状態とは、ACライン状態判定(
図3を参照)の結果が通電であることである。すなわち、真偽判定Aが偽、かつ、真偽判定Bが偽の場合、真偽判定Aが偽、かつ、真偽判定Bが真の場合、真偽判定Aが真、かつ、真偽判定Bが偽の場合である。つまり、停電フラグが出力されない状態である。
【0217】
第3の条件は、実効値演算ブロック1におけるカウンタのカウンタ値ncが、(数16)で示すカウント値を発生している場合である。
【0218】
【数16】
【0219】
第1の条件と第2の条件と第3の条件を同時に満たすことは、2乗積分期間および積算値が、実効値を正確に演算するための条件が全て満足したことを意味している。即ち実効値演算を開始する条件である。
【0220】
第1の条件と第2の条件と第3の条件とを同時に満たしたときに、実効値演算開始フラグを出力する。実効値演算開始フラグを出力すると、実効値演算ブロック2は、実効値演算ブロック1が2乗積算値および積算回数をリセットする前に、各値を保持し、それらの値を用いて実効値演算を行った後、前の実効値を新たな実効値に更新し保持する処理をおこなう
【0221】
ここで、(数16)は、カウンタ値ncの値が(数16)に示す値よりも大きい場合に、前の実効値を更新し新たな実効値を保持する処理をおこなうことができるという条件を設定する式である。この条件を設けることで、実効値演算ブロック2は交流電圧の半周期に対応する積算回数よりも少ない状態で実効値演算を行わなくなり、上記条件が無い場合に生じる、AC電圧がゼロボルト付近のとき実効値演算ブロック2が複数回連続で演算してしまう問題を回避する。さらに、予め定めた所定時間以上の期間で積算演算ができ、停電復帰直後やAC周波数の変動などAC電圧の状態変化に対し、影響を受けにくい実効値演算を実現する。例えば、(数16)に示すncの値を交流半サイクルにおけるカウンタ値の8割に設定した場合、積算演算を開始した後に交流半サイクル期間の8割以上の時間が経過し、かつAC電圧が0となるまでの間、即ち交流半サイクル期間の積算値を用いて実効値演算が行われる。ここで、0.8という値は、交流半サイクル期間の8割ほど積算演算を行うことで実効値の演算精度が保てる値として設定している。0.8以上の数に任意に値を変更することで、演算精度の向上を図ることができる。また、積算期間を交流半サイクルの整数倍に設定することもできる。
【0222】
図9は第3の実施形態の処理を説明するための模式図である。
図10は第3の実施形態の処理を説明するための別の模式図である。
【0223】
以下、
図9、
図10を参照して、実効値演算開始フラグを用いる処理について具体的に説明をする。
【0224】
図9、
図10の横軸は、任意のサンプリング時刻τからの時間経過を示す。
図9、
図10の最上段の波形図は、AC電圧(
図3のV
AC(τ
n)が対応)を示す。
図9、
図10の上から2段目の波形図は、実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を示す。
図9、
図10の上から3段目の波形図は、実効値(
図3の実効値が対応)を示す。
図9、
図10の上から4段目の波形図は、正弦波(
図3の正弦波データが対応)を示す。
図9、
図10の最下段の波形図は、基準電流信号(
図1の絶対値変換311から出力されるIrefが対応)を示す。
【0225】
図9は
図4に対応し、
図10は
図5に対応する図である。しかしながら、
図9、
図10に示す各波形は、実効値演算開始フラグを用いる処理を採用した場合の図である点において、
図4、
図5におけるものと相違する。
【0226】
図9を参照して説明をする。
【0227】
図9のAC電圧について説明をする。
【0228】
AC電圧は、時刻τ+Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+Tを含む時刻から時刻τ+2Tの直前までの間の時間ではAC電圧は0V(ボルト)となっている。そして、時刻τ+2Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0229】
図9の実効値演算開始フラグについて説明をする。
【0230】
図9に示す実効値演算開始フラグは、第3の条件における、ncの値がnc≧0.8×(T/2)/T
Sに設定されている場合を示すものである。第1の条件、第2の条件、第3の条件が同時に成立すること、すなわち、AC電圧がゼロとなり、かつ2乗積分の全期間に渡り通電し、積算期間が交流半サイクル期間の8割以上を満足していることが、前の実効値を新たな実効値に更新し保持する処理の条件である。
図9において、図中に記された実効値演算開始フラグによって実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持することを意味する。また、同時に2乗積算値およびカウンタ値のリセットも意味する。
【0231】
実効値演算開始フラグは、第1の条件、第2の条件、第3の条件を同時に満たす場合に、ハイレベルとして出力される。実効値演算開始フラグが発生する時刻は、時刻τ、時刻τ+T/2、時刻τ+5/2T、時刻τ+3T、時刻τ+7/2T、時刻τ+4Tである。
【0232】
図9の実効値について説明をする。
【0233】
実効値演算においては、交流半サイクル前の演算結果を出力する。また、実効値演算のための積算期間において停電が生じた場合、実効値演算開始フラグが発生せず実効値の更新はなされず、それ以前の通電状態において保持されている実効値が保持され続ける。そして、実効値演算ブロック1における2乗積算値およびカウンタ値がリセットされ続ける。よって、実効値演算開始フラグが発生する、時刻τ、時刻τ+T/2、時刻τ+5/2T、時刻τ+3T、時刻τ+7/2T、時刻τ+4T、において、実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新し保持するとともに、2乗積算値およびカウンタ値のリセットが実行される。なお、時刻τ+Tから時刻τ+2Tまで停電が生じているため、時刻τ+2Tにて実効値演算は実行されないが、2乗積分演算は開始する。
【0234】
よって、時刻τから時刻τ+4Tまでの間において実効値として100Vが出力される。
【0235】
図9の正弦波について説明をする。
【0236】
時刻τから時刻τ+4Tまでの間において実効値として100Vが出力されるので、瞬間停電が発生する期間以外では正弦波の振幅は1に規格化される。
【0237】
図9の基準電流信号について説明をする。
【0238】
時刻τから時刻τ+4Tまで、正弦波の最大振幅は1に規格化されるのであるから、基準電流信号は規格化された正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0239】
図10を参照して以下説明をする。
【0240】
図10のAC電圧について説明をする。
【0241】
AC電圧は、時刻τ+5/4Tにおいて、瞬停が生じて、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまでの間の時間ではAC電圧は0V(ボルト)となっている。そして、時刻τ+9/4Tを過ぎると瞬停(瞬間停電)は解消している。
【0242】
実効値演算開始フラグについて説明をする。
【0243】
図10に示す実効値演算開始フラグは、第3の条件における、カウンタ値ncがnc≧0.8×(T/2)/T
Sに設定されている場合を示すものである。ここで、第1の条件、第2の条件、第3の条件が同時に成立すること、すなわち、AC電圧がゼロとなり、かつ2乗積分の全期間に渡り通電し、積算期間が交流半サイクル期間の8割以上を満足していることが、実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持するとともに、2乗積算値およびカウンタ値をリセットする処理の条件である。実効値演算開始フラグが発生する時刻は、時刻τ、時刻τ+T/2、時刻τ+T、時刻τ+3T、時刻τ+7/2T、時刻τ+4Tである。
【0244】
図10の実効値について説明をする。
【0245】
実効値演算においては、交流半サイクル前の演算結果を出力する。また、実効値演算のための積算期間において停電が生じた場合、実効値の更新はなされず、それ以前の通電状態において保持されている実効値が保持され続ける。また、実効値演算ブロック1における2乗積分の積算値および積算回数がリセットされ続ける。一方、実効値演算開始フラグが発生する、時刻τ、時刻τ+T/2、時刻τ+T、時刻τ+3T、時刻τ+7/2T、時刻τ+4T、において、実効値を演算し、前の実効値を新たな実効値に更新かつ保持するとともに2乗積算値およびカウンタ値のリセットが実行される。なお、時刻τ+5/4Tから時刻τ+9/4Tまで停電が生じ、AC電圧が時刻τ+9/4Tから復帰するとともに2乗積分演算が再開されるが、時刻τ+5/2Tの時点で積算期間が交流半サイクルの8割に達していないため、実効値演算は実行されない。この場合、時刻τ+9/4Tから時刻τ+3Tまで積算を実行し、時刻τ+3Tにおいて当該区間の実効値を演算する。
【0246】
よって、時刻τから時刻τ+4Tまでの間において実効値として100Vが出力される。
【0247】
図10の正弦波について説明をする。
【0248】
時刻τから時刻τ+4Tまでの間において実効値として100Vが出力されるので、瞬間停電が発生する期間以外では正弦波の振幅は1に規格化される。
【0249】
図10の基準電流信号について説明をする。
【0250】
時刻τから時刻τ+4Tまで、正弦波の最大振幅は1に規格化されるのであるから、基準電流信号は規格化された正弦波を折り返した信号と相似する正極性の信号となる。
【0251】
(第3の実施形態の要約)
第3の実施形態は、上述した第1実施形態の基本的構成部を備えている。さらに、第3の実施形態の演算実行管理部は、実効値演算ブロック1のカウンタに加えて、以下の構成部を有している。
【0252】
電圧V
AC(τ
n)が(数13)に示すように第1の閾値と第2の閾値の範囲である場合に電圧V
AC(τ
n)が零値であると判定する第1の判定器として機能する真偽判定Aを有している。また、隣接する2つのサンプリング点におけるデジタルちである電圧V
AC(τ
n)、電圧V
AC(τ
n-1)、の差分Δx(τ
n)を順次求める差分器として機能する減算器とレジスタ(Z
-1)とを有している。また、差分Δx(τ
n)が(数15)に示すように第3の閾値と第4の閾値の範囲である場合に電圧微分ゼロ点、すなわち、差分Δx(τ
n)が零値であると判定する第2の判定器として機能する真偽判定Bを有している。また、デジタル値である電圧V
AC(τ
n)または差分Δx(τ
n)のいずれかが零値ではないときに通電状態であると判定する通電状態判定部として機能する実効値演算ブロック演算開始条件([2]状態:通電、
図3を参照)の設定部を有している。
【0253】
そして、電圧V
AC(τ
n)が零値であることを判定するとともに、通電状態であると判定したときに、実効値演算部として機能する実効値演算302における実効値の演算の開始をする。そして、実効値の演算の開始から予め定める所定時間(例えば、0.8×(T/2))が経過したと判定(
図3の実効値演算ブロック演算開始条件の[3])するとともに、実効値の演算の開始から予め定める所定時間までの全期間において通電状態であったと判定するときに、実効値の更新をする。
【0254】
ここで、電圧V
AC(τ
n)が零値であることを判定するとともに、通電状態であり、かつ実効値演算期間が予め定める所定の時間経過していると判定したときに、実効値演算開始フラグ(
図3を参照)を出力する。上記の実効値演算開始フラグが出力されると、実効値の演算を行うとともに、積分値および積算回数のリセットを実行し、演算初期状態に戻る。実効値の演算の開始から予め定める所定時間までの全期間において通電状態であったとの判定は、真偽判定Aの結果のみを判定し、実効値の演算の開始から予め定める所定時間までの間に1回も真とならなかったことを事後に知り判断の基準としてもよく、真偽判定Aおよび真偽判定Bの両方から瞬停が発生しなかったことを事後に知り判断の基準としてもよい。
【0255】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態の効果をすべて有する。商用電源の電圧の広範囲な異なりに対応でき、良好なる力率改善特性を有するデジタル制御電源装置を提供することができるという効果を当然有する。
【0256】
さらに、第3の実施形態に特有の以下の効果を有する。商用電源からの電力の供給が瞬停によって絶たれた場合においても、実効値演算開始フラグの作用によって、瞬停発生直前の実効値を出力し続ける。よって、力率改善回路20が瞬停によって不安定動作に陥ることがなく、特性の劣化を生じることなく、高精度の特性が維持できる。
【0257】
(実施形態の変形例)
交流の電圧V
ACの平均値V
AVを求めるに際して、上述したように実効値を求める演算をおこなうことなく、直接に平均値を求める演算をおこなう場合には、(数3)に替え、(数17)を用いる。ここで、積分の時間は電圧V
ACの半周期である。
【0258】
【数17】
【0259】
また、離散電圧V
AC(τ
n)のから平均値を求める演算は、(数7)に替え、(数18)を用いる。ここで、加算の回数は連続電圧V
ACの半周期に対応する回数である。
【0260】
【数18】
【0261】
(数17)に示す平均値V
AVと交流の電圧V
ACの最大値V
mとの関係は上述したように、V
AV=V
m(2/π)で表される。よって、(数19)が成立する。
【0262】
【数19】
【0263】
図3においては実効値を用いる場合について説明している。しかしながら、実効値に替えて平均値を用いる場合には
図3における実効値演算ブロック1においては、(数7)に替え、(数18)に示す演算をおこなう。そしてこの演算をおこなう部分を平均値演算部と称し、
図3における実効値演算ブロック1を平均値値演算ブロック1(図示せず)と読み替える。また、
図3における実効値演算ブロック2においては、平方根演算をおこなわない。さらに、√2を掛ける演算に替えて、(数19)に基づき(π/2)を掛ける演算をおこなう。そして
図3における実効値演算ブロック2を平均値値演算ブロック2(図示せず)と読み替える。他のブロックにおける処理内容は同様のものとできる。
【0264】
また、実施形態の電源装置が用いられる種々の電子機器、例えば、サーバ等の情報通信機器において、電源装置で検出した種々の信号を用いることができる。例えば、停電フラグ(
図3を参照)を停電フラグ出力端子(図示しない)から出力し、実効値(
図3を参照)を実効値出力端子(図示しない)から出力し、正弦波データ(
図3を参照)を正弦波データ出力端子(図示しない)から出力し、さらに、上述したように平均値演算をおこない、平均値値演算ブロック1および平均値値演算ブロック2において演算した平均値を平均値出力端子(図示しない)から出力するようにしてもよい。
【0265】
また、実施形態の電源装置から出力される停電フラグ、実効値、正弦波データ、平均値の一つ、または、これらの信号を組み合わせ、種々の電子機器で用いるようにしてもよい。種々の電子機器における制御に用いるに際して、これらの情報を有線で送出するのみならず、無線装置を用いて無線信号によって送出するようにしてもよい。すなわち、有線、無線によって、デジタル制御電源装置は、基準正弦波発生部から出力される基準正弦波を該デジタル制御電源装置の外部に出力するようにしてもよい。また、デジタル制御電源装置は、交流ライン状態判定部から出力される停電フラグを該デジタル制御電源装置の外部に出力するようにしてもよい。また、デジタル制御電源装置は、実効値演算部から出力される実効値を該デジタル制御電源装置の外部に出力するようにしてもよい。また、デジタル制御電源装置は、平均値演算部から出力される平均値を該デジタル制御電源装置の外部に出力するようにしてもよい。
【0266】
また、上述したこれらの実施形態の各部を組み合わせ、新たな実施形態とすることができる。
【0267】
図11ないし
図28は、デジタル・シグナル・プロセッサにおける処理の概略フローチャートを示す。フローチャートの各処理の内容は、
図1、
図3に示す模式図におけるブロック分けと完全に一致していないが、上述したブロック図の内容にあらわされるものと同様の処理を全体としておこなっている。
【0268】
図11は第1の実施形態に対応するステップST110からステップST120までのメインフローチャートである。
図12はステップST110の初期値設定処理のフローチャートである。
図13はステップST111のサンプルホールド処理のフローチャートである。
図14はステップST112の実効値演算処理のフローチャートである。
図15はステップST113のデータ保持演算処理のフローチャートである。
図16はステップST114の正弦関数演算処理のフローチャートである。
図17はステップST115の電圧誤差演算処理のフローチャートである。
図18はステップST116の乗算処理のフローチャートである。
図19はステップST117の絶対値変換処理のフローチャートである。
図20はステップST118の電流誤差演算処理のフローチャートである。
図21はステップST119のPWM処理のフローチャートである。
図22はステップST120の変数処理のフローチャートである。
【0269】
図23、
図24、
図25のフローチャートは、第2の実施形態における処理を説明するものである。
図11ないし
図22の基本となるフローチャートにおいて、第2の実施形態においては、第1の実施形態におけるステップST112の部分がステップST212に、ステップST113の部分がステップST213に、ステップST120の部分がステップST220に置き換えられる。
【0270】
図23はステップST212の実効値演算処理のフローチャートである。また、
図24はステップST213のデータ保持演算処理のフローチャートである。また、
図25はステップST220の変数処理のフローチャートである。
図14のステップST112の実効値演算処理が、
図23のステップST212の実効値演算処理に置き換えられる。
図15のステップST113のデータ保持演算処理が、
図24のステップST213のデータ保持演算処理に置き換えられる。
図22のステップST120の変数処理が、
図25のステップST220の変数処理に置き換えられる。
【0271】
第3の実施形態においては、第1の実施形態におけるステップST112の部分がステップST312に、ステップST113の部分がステップST313に、ステップST120の部分がステップST320に置き換えられる。
【0272】
図26はステップST312の実効値演算処理のフローチャートである。また、
図27はステップST313のデータ保持演算処理のフローチャートである。また、
図28はステップST320の変数処理のフローチャートである。
図14のステップST112の実効値演算処理が、
図26のステップST312の実効値演算処理に置き換えられる。
図15のステップST113のデータ保持演算処理が、
図27のステップST313のデータ保持演算処理に置き換えられる。
図22のステップST120の変数処理が、
図28のステップST320の変数処理に置き換えられる。
【0273】
なお、上述した第1の実施形態ないし第3の実施形態の各々の実施形態の一部、または全部を組み合わせて新たな実施形態として実施可能である。