(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記(E)有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物が、含窒素化合物、および有機リン化合物から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の粘性水系組成物。
上記(E)有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物が、アンモニウムおよびホスホニウムから選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘性水系組成物。
上記水混和性有機溶剤がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘性水系組
成物。
上記(IV)分散工程における分散条件が、高圧または超高圧ホモジナイザーによる処理であって、処理圧力が30MPa以上であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水系粘性組成物は所定のセルロースナノファイバーを含有する。
【0009】
(A)数平均繊維径
上記セルロースナノファイバーの数平均繊維径は2nm以上500nm以下であるが、好ましくは2nm以上150nm以下であり、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、特に好ましくは2nm以上80nm以下である。上記数平均繊維径が2nm未満であると、セルロースナノファイバーが溶解することにより、十分な増粘性、分散安定性が発現しないおそれがあり、上記数平均繊維径が500nmを超える場合、繊維の表面積が小さく、十分なナノファイバーのネットワーク構造が形成されないために増粘性、分散安定性に劣るのおそれがある。
【0010】
上記セルロースナノファイバーの最大繊維径は、セルロースナノファイバーの分散性の点で、1000nm以下であることが好ましく、特に好ましくは500nm以下である。
上記セルロースナノファイバーの数平均繊維径および最大繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
【0011】
(B)平均アスペクト比
上記セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は50以上1000以下であるが、好ましくは100以上1000以下より好ましくは200以上1000以下である。平均アスペクト比が50未満であると分散安定性が低下するおそれがある。
【0012】
上記セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、例えば以下の方法で測定することが出来る、すなわち、セルロースナノファイバーを親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、セルロースナノファイバーの数平均繊維径、および繊維長を観察した。すなわち、各先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出し、これらの値を用いて平均アスペクト比を下記の式(1)に従い算出した。
【0013】
【数1】
(C)セルロースI型結晶構造
上記セルロースナノファイバーは、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース原料を微細化した繊維である。すなわち、天然セルロースの生合成の過程においては、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成する。
【0014】
上記セルロースナノファイバーを構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0015】
(D)アニオン性官能基
上記セルロースナノファイバーはアニオン性官能基を有する。
【0016】
本発明のアニオン性官能基としては特に制限されないが具体的には、カルボキシル基、ホスホニウム基、スルホニウム基が挙げられるが、これらの内、
セルロースへのアニオン性官能基の導入の容易さという理由からカルボキシル基が好ましい。
【0017】
セルロースにカルボキシルを導入する方法としては、セルロースの水酸基にカルボキシル基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法、セルロースの水酸基を酸化する事によりカルボキル基に変換する方法が挙げられる。
【0018】
上記カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、具体的にはハロゲン化酢酸が挙げられ、ハロゲン化酢酸としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸等が挙げられる。
【0019】
上記カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
【0020】
上記カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されないが、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
【0021】
上記セルロースの水酸基を酸化する方法としては特に制限されないが具体的には、N−オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させる方法が挙げられる。
本発明において、セルロースにカルボキシル基を導入する方法としては、繊維表面の水酸基の選択性に優れており、反応条件も穏やかであることから、セルロースの水酸基を酸化する方法が好ましい。以下、水酸基の酸化によりカルボキシル基が導入されたセルロースを酸化セルロースという。
【0022】
上記酸化セルロースは、天然セルロースを原料とし、水中においてN − オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより該天然セルロースを酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、不純物を除去して水を含浸させた反応物繊維を得る精製工程、および水を含浸させた反応物繊維を溶媒に分散させる分散工程を含む製造方法により得ることができる。
【0023】
本発明のセルロースナノファイバーのセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基、またはカルボキシル基のいずれかとなっていることが好ましい。カルボキシル基の含量(カルボキシル基量)は水への分散性の点から0.5mmol/g以上2.5mmol/g以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.5mmol/g以上2.0mmol/g以下の範囲である。
【0024】
上記酸化セルロースのカルボキシル基量の測定は、例えば、乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5〜1重量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量を求めることができる。
【0025】
【数2】
なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、天然セルロースの酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより行うことができる。
【0026】
上記酸化セルロースは、上記酸化変性後、還元剤により還元させることが好ましい。これにより、アルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部が還元され、水酸基に戻る。なお、カルボキシル基は還元されない。そして、上記還元により、上記セルロースナノファイバーの、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量を、0.3mmol/g以下とすることが好ましく、特に好ましくは0〜0.1mmol/gの範囲、最も好ましくは実質的に0mmol/gである。これにより、セルロースナノファイバーの分子量低下が抑制され、分散安定性を長期間維持することができる。
【0027】
上記酸化セルロースが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)等のN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、上記酸化反応により生じたアルデヒド基およびケトン基が、還元剤により還元されたものであると、上記セルロースナノファイバーを容易に得ることができるようになるため好ましい。また、上記還元剤による還元が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)によるものであると、上記観点からより好ましい。
【0028】
セミカルバジド法による、アルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができる。なお、セミカルバジドは、アルデヒド基やケトン基と反応しシッフ塩基(イミン)を形成するが、カルボキシル基とは反応しないことから、上記測定により、アルデヒド基とケトン基のみを定量できると考えられる。
【0029】
【数3】
上記セルロースナノファイバーは、繊維表面上のセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基、またはカルボキシル基のいずれかとなっている。このセルロースナノファイバー表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されているかどうかは、例えば、
13C−NMRチャートにより確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの
13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりにカルボキシル基等に由来するピーク(178ppmのピークはカルボキシル基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシル基等に酸化されていることを確認することができる。
【0030】
また、上記セルロースナノファバーにおけるアルデヒド基の検出は、例えば、フェーリング試薬により行うこともできる。すなわち、例えば、乾燥させた試料に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セルロースナノファイバー部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断することができ、上澄みが黄色、セルロース繊維部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと判断することができる。
【0031】
(E)有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物
本発明のセルロースナノファイバーは有機概念図における有機性値(以下、単に有機性値ということもある。)が450以下である有機化合物がアニオン性官能基とイオン結合で結合しているものである。
【0032】
上記、有機概念図とは、ここで、有機概念図の詳細は、例えば、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等に記載されている。すなわち、「有機概念図」とは、すべての有機化合物に対し、その炭素領域の共有結合連鎖に起因する「有機性」と、置換基(官能基)に存在する静電性の影響による「無機性」との2因子とを、所定の規定により数値化し、その有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。なお、上記文献には、有機概念図における有機性値の大小は、その有機化合物の分子内のメチレン基を代表とする炭素原子の数で測ることができる旨が記載されており、さらに「基本となる炭素原子1個の有機性値は、その有機化合物の炭素数5〜10付近での炭素1個加わることによる沸点上昇の平均値20℃をとり、20と定める。」と規定されている。
【0033】
上記有機性値は450以下であるが、400以下が好ましく、360以下がより好ましい。上記有機性値が450を超える場合、疎水性が高すぎてセルロース繊維の中和ができないおそれがある。
【0034】
上記有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物は、含窒素化合物、および有機リン化合物から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
【0035】
上記含窒素化合物としては、特に制限されないが、具体的には第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、および第4級アンモニウム等が挙げられる。
【0036】
これらの含窒素化合物の内、好ましくはトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチルオクタデシルアミン等のアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムである。
【0037】
また、上記有機リン化合物としては、特に制限されないが具体的には第4級ホスホニウムが挙げられ、これらの内、好ましくはテトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルホスホニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルホスホニウムヒドロキシド等のホスホニウムが好ましい。
【0038】
これらの内、有機性値が400以下である化合物はジメチルオクタデシルアミンが挙げられ、360以下である化合物はテトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0039】
本発明の粘性水系組成物は水混和性有機溶剤を含有する。
【0040】
本発明の粘性水系組成物は水混和性有機溶媒を含有することによりセルロースナノファイバー間の水素結合が阻害されることにより、軽微な撹拌でも均一に希釈できるようになると推測される。
【0041】
上記水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解する有機溶媒をいい、特に制限されないが具体的には、アルコール類として、モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、およびアセチレンアルコール類等、多価アルコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのエチレンジオール類;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオールなどのプロパンジオール類;2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジールなどのブタンジオール類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールなどのペンタンジオール類;1,2−ヘキサンジオールなどのヘキサンジオール類;1,2,6−トリメチル−1,7−ヘプタンジオール、2,4,6−トリエチル−1,7−ヘプタンジオールなどのヘプタンジオール類;3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのオクタンジオール類;その他、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレンジオール類;グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリメチロールプロパンなどのポリオール類等、グリコール誘導体として例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど、アミンとして例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン、および、その他の極性溶媒として例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン、ジアセトンアルコール、4−ピコリン等が挙げられる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
上記水混和性有機溶剤はセルロースナノファイバーの水酸基と水素結合を形成できることから、アルコール類が好ましい。
【0043】
上記アルコール類としては特に制限されないが具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、多価アルコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのエチレンジオール類;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオールなどのプロパンジオール類;2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジールなどのブタンジオール類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールなどのペンタンジオール類選択される1種または2種以上が挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の粘性水系組成物はセルロースナノファイバーの含有量が、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。含有量が、0.1質量%未満の場合は十分な増粘性、分散安定性が発現しないおそれがあり、20質量%超の場合は増粘性が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがある。
本発明の粘性水系組成物は上記水混和性有機溶剤の含有量が5質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上60質量%以下がより好ましい。含有量が、5質量%未満の場合は希釈が容易となる効果が十分に得られないおそれがあり、80質量%超の場合はセルロース繊維のナノファイバー化が困難となるおそれがある。
【0045】
本発明の粘性水系組成物のセルロースナノファイバーの含有量と水混和性有機溶剤の含有量の比率(以下、含有量比率ということもある)は質量比でセルロースナノファイバー/水混和性有機溶剤=1/1000〜1/2が好ましく、1/100〜1/4がより好ましい。含有量比率が上記範囲内であると希釈が容易となる効果が得られやすいという点で好ましい。
【0046】
本発明の粘性水系組成物の粘度は、上記セルロースナノファイバーの含有量が0.2質量%、BM型粘度計において、ローターの回転数が0.3rpm、液温が20℃の条件で測定した場合、100mPa・s以上であることが好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましい。上記粘度が100mPa・s未満の場合、増粘性、および分散安定性が不十分となるおそれがある。
【0047】
本発明の粘性水系組成物は、(I)セルロースを酸化する酸化工程、(II)酸化セルロース分散体のpHを2以下に調整して精製する精製工程、(III)精製したセルロースを上記有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物で中和する中和工程、(IV)中和したセルロースを水と水混和性有機溶剤の存在下で分散する分散工程、を備えることが好ましく、具体的には以下の各工程により製造することが好ましい。
【0048】
(I)酸化工程
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
【0049】
上記天然セルロースは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。上記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記天然セルロースとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
【0050】
上記反応における天然セルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース濃度は、試薬(天然セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
【0051】
また、上記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。上記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
【0052】
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
【0053】
上記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
【0054】
(II)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。具体的には、各種の酸により反応混合物のpHを約2に調整し、精製水をふりかけながら遠心分離機で固液分離を行い、ケーキ状の酸化セルロースを得る。固液分離は濾液の電気伝導度が5mS/m以下となるまで行う。
【0055】
上記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる酸化セルロースの水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース)濃度としておよそ10重量%〜50重量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50重量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
【0056】
(III)中和工程
つぎに、精製した酸化セルロースを上記有機概念図における有機性値が450以下である有機化合物で中和を行う。具体的には、酸化セルロースの水分散体を水、または水と上記水混和性有機溶媒を加え所定の酸化セルロースの固形分濃度に調整し、有機性値が450以下である有機化合物を添加し攪拌することにより行うことができる。この場合の水分散体のpHは5〜10の範囲(好ましくは6〜8の範囲)であることが好ましい。pHが上記範囲未満であると、酸により反応物繊維同士がからまって、ほぐれにくく、後の分散工程にて高圧分散できないからであり、逆に、pHが上記範囲を超えると、アルカリの作用により粘度が下がるからである。有機性値が450以下である有機化合物は水または水と上記有機溶媒の混合溶媒で希釈して反応物繊維の水分散体に添加しても良い。
【0057】
酸化セルロースの固形分濃度は、酸化セルロースの水分散体が攪拌可能な粘度であれば特に制限はされないが、具体的には0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。酸化セルロースの固形分濃度が上記範囲内であれば、有機性値が450以下である有機化合物を均一に混合することが可能であるため好ましい。上記攪拌時間は有機性値が450以下である有機化合物が反応物繊維の水分散体中に均一に分散できる時間であれば特に制限されない。
(IV)分散工程
上記中和工程にて得られた酸化セルロースの水分散体を、水または水と上記有機溶媒の混合溶媒に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロースナノファイバーの分散体を得ることができる。
【0058】
上記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、経済的に有利に粘性水系組成物を得ることが出来る点で好ましい。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いても差し支えない。
【0059】
本発明のホモジナイザーによる処理条件としては、特に限定されるものではないが、圧力条件としては、30MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、酸化セルロースに予備処理を施すことも可能である。
【0060】
(V)還元工程
本発明の粘性水系組成物の製造において、上記(I)酸化工程後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。 本発明に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH
4、NaBH
3CN、NaBH
4等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBH
4が好ましい。
【0061】
還元剤の量は、酸化セルロースを基準として、0.1〜4質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜3質量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行う。
【0062】
本発明の粘性水系組成物には、他の成分材料として、機能性添加剤を用いることも可能である。上記機能性添加剤としては、例えば、化粧料,医薬品,スプレー製品,塗料等に用いる、油性原料(オイル類等)、無機塩類、有機塩類、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、有機微粒子、無機微粒子、消臭剤、香料、有機溶媒等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。特に、本発明は、上記セルロースナノファイバーの特性により、油性原料が乳化せず、分離してしまうといった課題を克服し得るものであるため、上記油性原料を配合する際に有利である。
【0063】
上記油性原料としては、例えば、メチルポリシロキサン,シリコーンポリエーテルコポリマー等のシリコーンオイル、植物油脂、動物油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0064】
上記油性原料のうち、植物油脂としては、例えば、アボカド油、アーモンド油、オリープ油、ククイナッツ油、グレープシード油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油(オリザオイル)、コメヌカ油(コメ油)、サフラワー油、シアバター(シア脂)、大豆油、茶油(茶実油、茶種子油)、月見草油、ツパキ油、トウモロコシ胚芽油、ナタネ油、パーシック油(杏仁油、桃仁油)、ハトムギ油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油(カスターワックス)、ヒマワリ油(サンフラワー油)、へ一ゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、落花生油(ピーナツ油)、ローズヒップ油等があげられる。
【0065】
また、上記動物油脂としては、例えば、オレンジラフィー油、牛脂、タートル油(アオウミガメ油)、ミンク油、卵黄油、粉末卵黄油(水素添加卵黄油)等があげられる。
【0066】
また、上記ロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、鯨ロウ、セラック、ホホバ油、ミツロウ、サラシミツロウ(白ロウ)、モンタンワックス、ラノリン、ラノリン誘導体、還元ラノリン、硬質ラノリン、吸着精製ラノリン等があげられる。
【0067】
また、上記炭化水素としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、植物性スクワラン、CDスクワラン、セレシン(地ロウ)、固形パラフィン、プリスタン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ワセリン等があげられる。
【0068】
また、上記高級脂肪酸としては、例えば、アラキドン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等があげられる。
【0069】
また、上記高級アルコールとしては、例えば、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、キミルアルコール(グリセリルモノセチルエーテル)、コレステロール(コレステリン)、シトステロール(シトステリン)、ステアリルアルコール、セタノール(セチルアルコール、パルミチルアルコール)、セトステアリルアルコール、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエ一テル)、デシルテトラデカノール、バチルアルコール(グリセリルモノステアリルエーテル)、フィトステロール(フィトステリン)、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール等があげられる。
また、上記エステル類としては、例えば、アセチル化ラノリン(酢酸ラノリン)、イソステアリン酸イソセチル(イソステアリン酸ヘキシルデシル)、イソステアリン酸コレステリル、エルカ酸オクチルドデシル(EOD)、オクタン酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル)、オクタン酸セトステアリル(2−エチルヘキサン酸セトステアリル、イソオクタン酸セトステアリル)、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸イソセチル(ステアリン酸ヘキシルデシル)、ステアリン酸コレステリル、ステアリン酸ブチル、長鎖−αヒドロキシ脂肪酸コレステリル(GLコレステリル)、トリミリスチン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル(IPP、イソプロピルパルミテート)、ヒドロキシステアリン酸コレステロール、ミリスチン酸イソトリデシル(MITD)、ミリスチン酸イソプロピル(lPM、イソプロピルミリステート)、ミリスチン酸オクチルドデシル(MOD)、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸コレステリル、リンゴ酸ジイソステアリル等があげられる。
【0070】
上記無機塩類としては、水に溶解・分散できるものが好ましく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属と、ハロゲン化水素、硫酸、炭酸等からなる塩類があげられ、具体的には、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、(NH4)2SO4、Na2CO3等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記有機塩類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物や、有機アミンと分子中に存在するカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等を中和することにより実質的に水溶性、水分散性を示す物質であるものが好ましい。
【0071】
上記界面活性剤としては、水に溶解・分散できるものが好ましく、例えば、アルキルスルホコハク酸ソーダ,アルキルスルホン酸ソーダ,アルキル硫酸エステル塩等のスルホン酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等のリン酸エステル系界面活性剤、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物,アルキルアリールフェノールのアルキレンオキサイド付加物等の非イオン系界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0072】
上記保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ジプロピレングリコール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0073】
上記有機微粒子としては、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0074】
上記無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、シリカ化合物、カーボンブラック等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0075】
上記防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0076】
上記消臭剤・香料としては、例えば、Dリモネン、デシルアルデヒド、メントン、プレゴン、オイゲノール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メントール、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、植物(例えば、カタバミ、ドクダミ、ツガ、イチョウ、クロマツ、カラマツ、アカマツ、キリ、ヒイラギモクセイ、ライラック、キンモクセイ、フキ、ツワブキ、レンギョウ等)の各器官から水、親水性有機溶剤で抽出された消臭有効成分等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0077】
上記有機溶媒としては、例えば、水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0078】
また、上記機能性添加剤の配合量は、機能性添加剤が目的とする効果を発現するために必要な配合量で用いられる。
【0079】
本発明の粘性水系組成物は、先に述べたように、セルロースナノファイバー、水、水混和性有機溶媒さらに、必要に応じ機能性添加剤を配合し、混合処理等することにより得ることができる。
【0080】
より詳しく述べると、上記混合処理としては、例えば、真空ホモミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー等の各種混練器、各種粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー等を用いた混合処理があげられる。
【0081】
このようにして得られる本発明の粘性水系組成物の粘度は、求める機能により異なるが、使用感、増粘性、分散安定性等の点から、0.01Pa・s以上が好ましく、特に好ましくは0.1〜80Pa・sの範囲である。また、機能性添加剤を配合する場合は、0.01Pa・s以上が好ましく、特に好ましくは0.1〜20Pa・sの範囲である。なお、上記粘度は、例えば、BH型粘度計(No.4ローター)等を用いて測定することができる。
【0082】
このようにして得られる本発明の粘性水系組成物は、例えば、クリーム状、ゲル状、乳液状あるいは液体状の剤型を有する各種製品(化粧料、医薬品、農薬、トイレタリー用品、スプレー製品、塗料等)の増粘剤として好適に用いることができる。具体的には、化粧水、乳液、コールドクリーム、バニシングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、美容液、パック、ファンデーション、サンスクリーン化粧料、サンタン化粧料、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、美白乳液、各種ローション等の皮膚用化粧料、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー、ヘアスタイリング剤(ヘアフォーム,ジェル状整髪料等)、ヘアトリートメント剤(ヘアクリーム,トリートメントローション等)、染毛剤やローションタイプの育毛剤あるいは養毛剤等の毛髪用化粧料、さらにはハンドクリーナーのような洗浄剤、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、自動車用や室内用の芳香剤、脱臭剤、歯磨剤、軟膏、貼布剤、農薬、スプレー製品、塗料等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0083】
つぎに、実施例について比較例とあわせて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り質量基準を意味する。
【0084】
[セルロースナノファイバーの製造]
〔製造例1:セルロース繊維A1(実施例用)の調製〕
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が10mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応中は温度を20℃に保持した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維A1を製造した。
【0085】
〔製造例2:セルロース繊維A2(実施例用)の調製〕
セルロース繊維A1と同様の手法で繊維表面を酸化したセルロース繊維に純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維を得pHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維A2を製造した。
【0086】
〔製造例3:セルロース繊維A3(実施例用)の調製〕
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を6mmol/gとした以外は、セルロース繊維A2の製造に準じて、セルロース繊維A3を製造した。
【0087】
〔製造例4:セルロース繊維A4(実施例用)の調製〕
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を3mmol/gとした以外は、セルロース繊維A2の製造に準じて、セルロース繊維A4を製造した。
【0088】
〔製造例5:セルロース繊維A’1(比較例用)の調製〕
次亜塩素酸ナトリウムの添加量を1mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A’1を製造した。
【0089】
〔製造例6:セルロース繊維A’2(比較例用)の調製〕
原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A’2を製造した。
【0090】
[水系粘性組成物の製造]
〔実施例1〕
上記セルロース繊維A1に純水、水混和性有機溶媒としてメタノールを加えて、終濃度がセルロース繊維濃度2重量%、メタノール濃度20重量%となるように調製した。ここにテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH、有機性値320)を添加し、pHを7に調整した。これを高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、粘性水系組成物を製造した。
【0091】
〔実施例2〜4〕
セルロース繊維A1に替えてセルロース繊維A2、A3、およびA4を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0092】
〔実施例5〜8〕
テトラブチルアンモニウムヒドロキシドに替えてジメチルベンジルアミン(DMBzA、)、ジメチルオクタデシルアミン(DMODA)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(TBPH)を用いた以外は、実施例2と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0093】
〔実施例9、10〕
セルロース繊維濃度が0.3、および10重量%となるように調製した以外は、実施例2と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0094】
〔実施例11〜13〕
添加する水混和性有機溶媒として、メタノールに替えてエタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、ブチレングリコール(BG)を用いた以外は、実施例2と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0095】
〔実施例14〜16〕
添加する水混和性有機溶媒として、メタノールに替えてエタノール(EtOH)を用い、終濃度を5、40、および75重量%とした以外は、実施例2と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0096】
〔比較例1、2〕
セルロース繊維A1に替えてセルロース繊維A´1、A´2を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0097】
〔比較例3〕
テトラブチルアンモニウムヒドロキシドに替えて10%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粘性水系組成物を製造した。
【0098】
〔粘性水系組成物の特性評価〕
上記のようにして得られた実施例1〜16、および比較例1〜3の粘性水系組成物について、下記の基準に従って各特性の評価を行なった。その結果を下記表1に併せて示した。
【0099】
<短幅の方の数平均幅>
セルロースの数平均幅を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、短幅の方の数平均幅を算出した。
【0100】
<平均アスペクト比>
セルロースを親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、セルロースの短幅の方の数平均幅、長幅の方の数平均幅を観察した。すなわち、各先に述べた方法に従い、短幅の方の数平均幅、および長幅の方の数平均幅を算出し、これらの値を用いて平均アスペクト比を下記の式(1)に従い算出した。
【0101】
【数4】
<結晶構造>
X線回折装置(リガク社製、RINT‐Ultima3)を用いて、各セルロース繊維の回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
【0102】
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量V(ml)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量を求めた。
【0103】
【数5】
<カルボニル基量の測定(セミカルバジド法)>
粘性水系組成物を105℃のオーブンにて絶乾した後、約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。ついで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(3)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
【0104】
【数6】
<粘度>
粘性水系組成物に純水を加えて全量が200g、セルロース繊維濃度が0.2重量%となるように調製し、ホモミキサー(プライミクス社製ホモミクサーMARKII 2.5型)で8,000rpmで10分間撹拌した。これを脱気した後、100mlのサンプル瓶に移し、室温で24時間静置した。24時間後、BM型粘度計(0.3rpm、20℃、3min)を用いて粘度を測定した。
【0105】
<易分散性>
粘性水系組成物に純水を加えて全量が200g、セルロース繊維濃度が0.2重量%となるように調製し、ホモミキサー(プライミクス社製ホモミクサーMARKII 2.5型)で8,000rpmで10分間撹拌した。これを脱気した後、100mlのサンプル瓶に移し、室温で24時間静置した。24時間後、BM型粘度計(0.3rpm、20℃、3min)を用いてホモミキサー分散粘度を測定した。
また、粘性水系組成物に純水を加えて全量が200g、セルロース繊維濃度が0.2重量%となるように調製し、プロペラ型撹拌羽根を用いて300rpmで10分間撹拌した。これを脱気した後、100mlのサンプル瓶に移し、室温で24時間静置した。24時間後、BM型粘度計(0.3rpm、20℃、3min)を用いてプロペラ分散粘度を測定した。それぞれの粘度から、下記の式(4)に従い、易分散性を求めた。
【0106】
【数7】
<分散安定性>
粘性水系組成物に純水、酸化チタン(石原産業製タイペークCR−50)を加えて全量が200g、セルロース繊維濃度が0.2重量%、酸化チタン濃度が10重量%となるように調製し、プロペラ型撹拌羽根を用いて300rpmで10分間撹拌した。これを脱気した後、25ml目盛付試験管に25ml移し、室温で1週間静置した。1週間後、下記の式(5)に従い、分散安定性を求めた。
【0107】
【数8】
<経時安定性>
粘性水系組成物を耐熱容器に入れ、50度の恒温槽で4週間静置した。4週間後、粘性水系組成物を取り出し、純水を加えて全量が200g、セルロース繊維濃度が0.2重量%となるように調製し、ホモミキサー(プライミクス社製ホモミクサーMARKII 2.5型)で8,000rpmで10分間撹拌した。これを脱気した後、100mlのサンプル瓶に移し、室温で24時間静置した。24時間後、BM型粘度計(0.3rpm、20℃、3min)を用いて粘度を測定した。
この粘度から、下記の式(6)に従い、経時安定性を求めた。
【0108】
【数9】
【0109】
【表1】
実施例については、いずれも高い易分散性、分散安定性が確認された。加えて、カルボニル基量が0.3mmol/g以下の実施例2〜16においては高い経時安定性が確認された。
【0110】
比較例1に関しては、セルロース繊維の短幅の方の繊維幅、およびアスペクト比が請求の範囲外であり、繊維が太すぎて軽微な希釈では十分に分散できず、粘度、易分散性は低かった。また、微細繊維による分散安定効果も見られず、酸化チタンの分散安定性が低かった。
【0111】
比較例2に関しては、セルロースの結晶構造がなく、水溶性となったために繊維幅、アスペクト比は評価できなかった。得られた粘性水系組成物は粘度、易分散性が低く、酸化チタンの分散安定効果も見られなかった。
【0112】
比較例3に関しては、セルロース繊維の物性は請求の範囲内であったが、ナトリウム塩となっていたことから、繊維の水素結合を阻害できず、易分散性、分散安定性が低かった。
【課題】均一な希釈が容易であり、これにより、一般的な攪拌装置でも十分な増粘性、および分散安定性をもつセルロースナノファイバー水分散体を調製可能な水系粘性組成物およびその製造方法を提供する事。