(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939718
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】映像投影システム及び映像投影方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20160609BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20160609BHJP
G03B 21/00 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
H04N5/74 A
!G03B21/00 D
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-148375(P2014-148375)
(22)【出願日】2014年7月20日
(65)【公開番号】特開2016-24331(P2016-24331A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501064767
【氏名又は名称】公益財団法人日本科学技術振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】100074550
【弁理士】
【氏名又は名称】林 實
(72)【発明者】
【氏名】糸屋 覚
【審査官】
角田 光法
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−234007(JP,A)
【文献】
特開2013−080149(JP,A)
【文献】
特開2002−148713(JP,A)
【文献】
特開2013−254131(JP,A)
【文献】
特開2006−003409(JP,A)
【文献】
特開平05−019346(JP,A)
【文献】
特開2000−352763(JP,A)
【文献】
特開平07−219041(JP,A)
【文献】
特開2007−011144(JP,A)
【文献】
特開2002−207188(JP,A)
【文献】
特開2004−309528(JP,A)
【文献】
特開2008−288714(JP,A)
【文献】
特開平08−171344(JP,A)
【文献】
特開2005−227480(JP,A)
【文献】
特開2008−015502(JP,A)
【文献】
特開2008−311898(JP,A)
【文献】
特開2007−201890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00−21/10
21/134−21/30
G09B23/00−29/14
H04N5/66−5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像素子に表示された映像をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射するプロジェクタを備える映像投射システムであって、
前記リレーレンズと前記投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置したことを特徴とする映像投射システム。
【請求項2】
映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズとによって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した共役像を該投射レンズを介してスクリーンに投射するプロジェクタを備える映像投射システムであって、
前記リレーレンズと前記投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置したことを特徴とする映像投射システム。
【請求項3】
映像素子に表示された映像をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射する複数のプロジェクタを備える映像投射システムであって、
前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする映像投射システム。
【請求項4】
映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズとによって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した共役像を該投射レンズを介してスクリーンに投射する複数のプロジェクタを備える映像投射システムであって、
前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする映像投射システム。
【請求項5】
前記絞り板の主光軸上における前記共役像の一次結像位置からずらして配置するずらし量を可変とする調整機構を設けたことを特徴とする請求項1から4何れかに記載の映像投射システム。
【請求項6】
前記絞り板が透過する開口形状が固定された投射窓を有することを特徴とする請求項1から5何れかに記載の映像投射システム。
【請求項7】
前記絞り板を投射窓形状の異なる絞り板に交換自在なアタッチメントを設けたことを特徴とする請求項1から6何れかに記載の映像投射システム。
【請求項8】
前記絞り板の投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させる投射窓可変部を設けたことを特徴とする請求項1から5何れかに記載の映像投射システム。
【請求項9】
映像素子に表示された映像をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射するプロジェクタの映像投射方法であって、
前記リレーレンズと前記投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置して投射することを特徴とする映像投射方法。
【請求項10】
映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズとによって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した共役像を投射レンズを介してスクリーンに投射するプロジェクタを用いた映像投射方法であって、
前記リレーレンズと前記投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置して投射することを特徴とする映像投射方法。
【請求項11】
映像素子に表示された映像をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射する複数のプロジェクタを用いた映像投射方法であって、
前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと前記投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする映像投射方法。
【請求項12】
映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズとによって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した共役像を該投射レンズを介してスクリーンに投射する複数のプロジェクタを用いた映像投射方法であって、
前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする映像投射方法。
【請求項13】
前記絞り板の主光軸上における前記共役像の一次結像位置からずらして配置するずらし量を可変とする調整機構を設けたことを特徴とする請求項9から12何れかに記載の映像投射方法。
【請求項14】
前記絞り板が透過する開口形状が固定された投射窓を有することを特徴とする請求項9から13何れかに記載の映像投射方法。
【請求項15】
前記絞り板を投射窓形状の異なる絞り板に交換自在なアタッチメントを設け、該アタッチメントにより絞り板を交換することを特徴とする請求項9から14何れかに記載の映像投射方法。
【請求項16】
前記絞り板の投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させる投射窓可変部を設け、該投射窓可変部を用いて投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させることを特徴とする請求項9から13何れかに記載の映像投射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタから被投影対象物に投影する映像領域を決定する絞り板端部のスクリーン上での像をデフォーカスすることができる映像投影システム及び映像投影方法に係り、特に、複数のプロジェクタからの複数映像をスクリーンに投影して1つの映像として形成する際の複数映像の重畳部分をグラデーションすることができる映像投影システム及び映像投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプラネタリウムにおいては、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDLP(登録商標:Digital Light Processing)等の反射型液晶デバイスを用いたプロジェクタを複数用い、これら複数のプロジェクタからドーム形状のスクリーン全体に星座等の映像を投影する際に拡大投映された複数映像の重畳部分の輝度を連続的に低下させ、複数台のプロジェクタの重畳部分の明るさを重畳部分以外と同様の明るさにする技術が採用されている。この重畳部分の明るさを重畳部分以外と同様の明るさにする技術が記載された文献としては下記の特許文献1及び特許文献2が挙げられ、この特許文献1には、プロジェクタの投射レンズの外側(投射側)に所定形状の光を透過する投影窓を開口した遮光マスクを配置することによって、周縁部分の光を遮光しドームスクリーンに投影された映像の周縁部をぼんやりと暗くマスキングする技術が記載され、特許文献2には、ビデオ画像投映機を用いて画像を投映するに際し、画像の周辺部の輝度を連続的に低下するよう、投映レンズの主点位置から投射側にはずれた位置に周縁部が凸凹形状の投射窓を有する絞り板を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−288714号公報
【特許文献2】特開平8−171344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1及び特許文献2に記載された技術は、投射レンズの外側(投射側)に投影窓を開口した遮光マスクを配置することによって、投影映像の周縁部をぼんやりと暗くマスキングすることができるものの、プロジェクタの外側に遮光マスクを配置しなければならず、装置全体が大きくなると共に複数のプロジェクタの重畳部分をグラデーションするための調整が煩雑であるという課題があった。
【0005】
また、近年に於いては建築物や車両等の三次元物体に映像を投射するプロジェクションマッピングが実用化されており、三次元物体に映像を投射する際に周縁部が明瞭の場合は投影部分と非投影部分の重畳線が明瞭になるのを防ぐために周縁部をグラデーションする必要があったが、従来技術によるプロジェクタにおいても投影窓を開口した遮光マスクを投射側に配置しなければならず、装置全体が大きくなると共に三次元物体に対してはレンズからの距離が変化して投射サイズが変化するため調整が煩雑であると共に、対象物の形状に応じて遮光マスクを交換しなければならず、遮光マスク交換作業が煩雑であるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題しようとするものであり、装置全体を大きくすることなく容易に映像領域を決定する絞り板端部のスクリーン上での像をデフォーカスすることができる映像投影システム及び映像投影方法を提供することと、更に、複数プロジェクタからの複数映像をスクリーンに投影して1つの映像として形成する際の複数映像の重畳部分をグラデーションすることができる映像投影システム及び映像投影方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的達成するために請求項1記載の発明は、映像素子に表示された映像
をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射するプロジェクタを備える映像投射システムであって、前記リレーレンズと
前記投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置したことを特徴とする。なお、本出願書面に記載する光軸と主光線が平行とは、社会通念上の意味で、平行と同一視できる程度のものを含む。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズと
によって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと
投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した
共役像を投射レンズを介してスクリーンに投射するプロジェクタを備える映像投射システムであって、前記リレーレンズと
前記投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、映像素子に表示された映像
をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射する複数のプロジェクタを備える映像投射システムであって、前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズと
によって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと
投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した
共役像を投射レンズを介してスクリーンに投射する複数のプロジェクタを備える映像投射システムであって、前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記請求項1から4何れかに記載の映像投射システムにおいて、前記絞り板の主光軸上における前記共役像の一次結像位置からずらして配置するずらし量を可変とする調整機構を設けたことを特徴とし、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5何れかに記載の映像投射システムにおいて、前記絞り板が透過する開口形状が固定された投射窓を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、前記請求項1から6何れかに記載の映像投射システムにおいて、前記絞り板を投射窓形状の異なる絞り板に交換自在なアタッチメントを設けたことを特徴とし、請求項8記載の発明は、前記請求項1から5何れかに記載の映像投射システムにおいて、前記絞り板の投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させる投射窓可変部を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項9記載の発明は、映像素子に表示された映像
をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射するプロジェクタの映像投射方法であって、前記リレーレンズと
前記投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置して投射することを特徴とする。
【0014】
また、請求項10記載の発明は、映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズと
によって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと
投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した
共役像を投射レンズを介してスクリーンに投射するプロジェクタを備える映像投射方法であって、前記リレーレンズと
前記投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置して投射することを特徴とする。
【0015】
また、請求項11記載の発明は、映像素子に表示された映像
をリレーレンズに入射し、該リレーレンズから出射される映像を共役像として一次結像位置に結像する光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を用い、前記共役像を投射レンズによってスクリーンに投射する複数のプロジェクタを用いた映像投射方法であって、前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする。
【0016】
また、請求項12記載の発明は、映像を表示する映像素子と、該映像素子に表示された三原色の映像を合成する合成プリズムと、該合成プリズムから映像を入射して一次共役像位置に結像させるために出射するリレーレンズと
によって光軸と主光線が平行なテレセントリック光学系を構成し、該リレーレンズから出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板を該リレーレンズと
投射レンズとの間に配置し、該リレーレンズから出射した
共役像を投射レンズを介してスクリーンに投射する複数のプロジェクタを備える映像投射方法であって、前記複数のプロジェクタそれぞれのリレーレンズと投射レンズ間の主光軸上に、前記絞り板を、前記共役像の一次結像位置からずらして配置し、複数のプロジェクタからスクリーンに投射映像の周縁部が重畳する映像を投射することを特徴とする。
【0017】
また、請求項13記載の発明は、請求項9から12何れかに記載の映像投射方法において、前記絞り板の主光軸上における前記共役像の一次結像位置からずらして配置するずらし量を可変とする調整機構を設けたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項14に記載した発明は、請求項9から13何れかに記載の映像投射方法において、前記絞り板が透過する開口形状が固定された投射窓を有することを特徴とし、請求項15記載の発明は、請求項9から13何れかに記載の映像投射方法において、前記絞り板を投射窓形状の異なる絞り板に交換自在なアタッチメントを設け、該アタッチメントにより絞り板を交換することを特徴とし、請求項16記載の発明は、請求項9から13何れかに記載の映像投射方法において、前記絞り板の投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させる投射窓可変部を設け、該投射窓可変部を用いて投射窓の形状を機械的又は電気的に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による映像投射システム及び映像投射方法は、プロジェクタの共役像を透過する投射窓を形成する絞り板を主光軸上における前記共役像の一次結像位置からずらして配置したことによって、スクリーンへ投射した投射映像の周縁部をグラデーションすることができ、プロジェクションマッピングにおける三次元物体へ投射する映像の周縁部をグラデーションすることができ、複数のプロジェクタから映像を投射するプラネタリユウムにおける複数映像の重畳部分をグラデーションすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による投射レンズを用いたプロジェクタ構成を示す図。
【
図2】本発明原理を説明するためのプロジェクタ構成を示す図。
【
図3】本発明原理を説明するための絞り板配置と一次共役像位置を一致させた例を示す図。
【
図4】本実施形態の対象となるプラネタリウム投射技術を説明するための図。
【
図5】本実施形態による映像投射システムの全体構成を示す図。
【
図6】本実施形態によるプロジェクタの構成を示す図。
【
図7】本実施形態による2台プロジェクタからの投射を説明するための図。
【
図8】本発明の他の実施形態によるプロジェクタの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による映像投射システム及び映像投射方法の一実施形態を図面を参照して詳細に説明するものであるが、まず、本発明の対象となるプラネタリウムにおける星座等の投射に用いられるプロジェクタの使用例を
図4を参照して説明する。
このプラネタリウムにおけるプロジェクタを使用した投射は、
図4(a)に示す如く、半円球状の内部空間を有するドームスクリーン16のほぼ中央位置に2台のプロジェクタ100を配置し、個々のプロジェクタ100がドームスクリーン16に対して両映像間の隙間がないように一部が重畳する投射映像30a及び30bを投射するため、
図4(b)に示す如く、2つの投射映像が重畳した映像重畳エリア30zが生成され、
図4(c)に示す如く、この映像重畳エリア30zに投射される2つのプロジェクタ100からの投射映像は重畳した際に他のエリアとの明るさと同等になるブレンディングエリア30cを形成する必要がある。
【0022】
本実施形態による映像投射システムのハードウェア構成は、
図5に示す如く、映像が投射されるスクリーン16と、該スクリーン16に映像を投射する2台のプロジェクタ100と、この2台のプロジェクタ100を用いて任意の映像を投射させる映像再生機器42及び43と、該映像再生機器42及び43を制御するシステム制御機器41とから構成され、システム制御機器41の制御によって2台のプロジェクタ100から投射される映像を1つの映像としてスクリーン16に投射されるように構成される。
【0023】
本実施形態によるプロジェクタ100は、
図6に示す如く、
図5に示した映像再生機器42又は43から提供される映像信号に基づいて映像51を表示する映像素子10と、該映像素子10に表示された三原色の映像51を合成する合成プリズム11と、該合成プリズム11から映像51を入射瞳52(有効口径)に入射して一次共役像位置20に結像させるために出射瞳53(有効口径)から出射するリレーレンズ12と、該リレーレンズ12から出射される映像の周縁部を減光するための投射窓を開口した絞り板13と、該絞り板13を通過した映像を入射瞳55(有効口径)に入射してスクリーン16に投射させる投射レンズ14によってテレセントリック光学系を形成し、特に本実施形態によるプロジェクタ100は、前記絞り板13をリレーレンズ12からリレーレンズ焦点面54である一次共役像位置20から投射レンズ14寄りにずらして配置することによって、映像領域を決定する絞り板端部のスクリーン上での像をデフォーカスし、スクリーン16に投射する映像周縁部をグラデーションして投射するように構成され、この原理を次に説明する。
尚、実際のプロジェクタにおいては主光軸に沿って絞り板13の位置を調整可能な調整機構を設けることによって、色々なサイズのドームスクリーンの大きさに合わせて調整可能とすることが望ましい。また、本出願で記載するテレセントリック光学系とは、レンズの片側又は両側において光軸と主光線が真に平行である光学系であり、リレーレンズ等が複数レンズ群を組み合わせて構成されることから光軸と主光線が真に平行でなくともほぼ平行と社会通念上の意味において同一視できる程度の光学系をいい、前記リレーレンズ12は、物体側及び像側共にテレセントリックであり、投射レンズは物体側のみテレセントリックである。
【0024】
まず、絞り板13の配置と一次共役像位置20を一致させたプロジェクタは、
図3に示す如く、映像素子10上の画素AからCに注目したとき、これら画素AからCは合成プリズム11及びリレーレンズ12を通して一次共役像位置20上に焦点が合った状態で倒立して合焦点結像され、この一次共役像位置20に映像を扇状に開口した絞り板13を通してスクリーン16上に焦点が合った状態の画素AからCが投射され、この投射映像の周縁部は投射されている部分と投射されていない部分とが絞り板13によって明瞭に区別される。前記絞り板13は、リレーレンズ12から出射される映像の周縁部を遮光し、スクリーン16上において周縁部のみを減光するように作用する。
【0025】
これに対して絞り板13を一次共役像位置に対してずらしたプロジェクタは、
図1に示す如く、映像素子10上の画素AからCに注目したとき、画素B’は合成プリズム11及びリレーレンズ12を通して一次共役像位置20上に焦点が合った状態で結像され、投射レンズ14を通して画素B’’として焦点が合った状態で投射されるものの、画素A’及びC’は絞り板13によって焦点がボケた状態であるデフォーカスされた像と成り、このデフォーカスされた像が画素A’’及びC’’として投射され、結果的に映像周縁部においてはグラデーション化された像となる。
【0026】
この原理の理解を容易にするため
図2を参照して説明する。
図2に示すプロジェクタは、映像を表示する映像素子10と、該映像素子10に表示された映像を偏光する合成プリズム11と、該合成プリズム11から映像を入射して一次共役像位置20に結像させるために出射するリレーレンズ12と、該リレーレンズ12から出射される映像の周縁部を減光するための任意形状に投射窓を開口した絞り板13と、該絞り板13を通過した映像を入射してスクリーン16に投射させる投影レンズ14とを備え、映像素子10に表示した縦太矢印(映像)を一次共役像位置20に倒立して結像し、この縦太矢印(映像)を投影レンズ14がスクリーン16上に正立した縦太矢印(映像)が合焦点した状態で投射するように調整される。
【0027】
ここで、本実施形態の如く一次共役像位置20と投影レンズ14との間に所定形状に開口された絞り板13を配置した場合、絞り板13を通過した周縁部の点eの映像は距離Aが短縮されるために合焦点位置が点fで示す位置になり、スクリーン16に投射される絞り板13の開放端部はピントがボケたデフォーカス状態となり、このデフォーカス状態の像を投影レンズ14によって投射するためスクリーン16上の映像周縁部はグラデーションされた映像となる。即ち、絞り板13の配置を一次共役像位置20からずらすことにより本実施形態によるプロジェクタは、映像領域を決定する絞り板13端部のスクリーン上での像をデフォーカスすることができる。
【0028】
このように本実施形態においては、絞り板13を用いて映像周縁部における投影レンズ14の主点oと物面までの距離Aを短縮することによってスクリーン16上に投射される映像周縁部のピントをぼかして投射することができ、
図1に示したプロジェクタにおいても同様に距離Aを短縮することによってスクリーン16上に投射される絞り板開放端部のピントをボカして投射することができる。また、本実施形態によるプロジェクタは、絞り板13の位置を変化させた場合、テレセントリック光学系を用いているためスクリーン16上の映像サイズはあまり変化せずに周縁部のグラデーション状態のみが変化する。
【0029】
さて、このように構成された映像投射システムは、2台のプロジェクタを用いる場合、
図7に示す如く、映像素子10aと合成プリズム11aとリレーレンズ12aと投射レンズ14aによってテレセントリック光学系を形成し、該リレーレンズ12aと投射レンズ14a間の一次共役像位置20から投射レンズ14a寄りに絞り板13aを配置したプロジェクタ100aと、映像素子10bと合成プリズム11bとリレーレンズ12bと投射レンズ14bによってレンズの片側において光軸と主光線が平行となるテレセントリック光学系を形成し、該リレーレンズ12bと投射レンズ14b間の一次共役像位置20から投射レンズ14b寄りに絞り板13bを配置したプロジェクタ100bとを並設し、両プロジェクタ100a及び100bからスクリーン16に投射映像の周縁部が重畳する映像を投射するように構成されている。
【0030】
この映像投射システムは、プロジェクタ100aからの投射映像とプロジェクタ100bからの投射映像の周縁部が重畳する映像重畳エリア30zを形成し、この映像重畳エリア30zにおいては図中右側に図示する如く両プロジェクタ100a及び100bからの投射映像の周縁部をグラデーション化(ピントが徐々にボケると共に徐々に明度が低下する状態)することによって、プロジェクタ100a及び100bにおける投射映像は両プロジェクタからの投射映像が合成されるため図中右端に示す如く他の領域と同様な明度と成り、複数映像の重畳部分をグラデーションすることができる。本実施形態における映像重畳エリア30zは、両プロジェクタ100a及び100b共に同一領域が重畳するように設定し、同一領域の設定量は一次共役像位置20と絞り板との距離Lによって設定することができ、更に、絞り板13の位置を変化させてもスクリーン16上の映像サイズは変化せずに周縁部のグラデーション状態のみが変化するため、複数のプロジェクタからの投影映像の位置調整等を容易に行うことができる。
【0031】
本実施形態による映像投射システムのプロジェクタは、前述の実施形態に記載した構造に限られるものではなく、三原色のDMD(デジタルマイクロミラー装置:Digital Micromirror Device)素子を用いても良く、例えば、
図8に示す如く、プリズム82と色分解合成プリズム81とTIR(内部全反射)プリズム83から85とリレーレンズ12とを配置してテレセントリック光学系を形成し、このテレセントリック光学系のプリズム82にDMD素子80g、TIRプリズム84にDMD素子80r、色分解合成プリズム81にDMD素子80bを配置して各々の素子から3原色の映像を表示させ、ミラー86からの入射光を各DMD素子に反射させてリレーレンズ12に入射させ、リレーレンズ12の一次共役像位置20から離れた位置に絞り板13を配置することによって、スクリーン16上に投射レンズ14から投射される映像の周縁部をグラデーション化して投射することができる。
【0032】
また、本発明による映像投射システム及び方法は、前述の実施形態に限られるものではなく、例えば次に述べる形態とすることもできる。
(1)前記実施形態においては一次共役像位置から投射レンズ寄りに絞り板を配置した例を説明したが、一次共役像位置からリレーレンズ寄りに配置することや、テレセントリック光学系における光軸と主光線が平行とみなせる部分(例えば、映像素子と合成プリズムの間)に配置しても良い。
【0033】
(2)前記実施形態においては定型の投射窓を開口した絞り板を用いる例を説明したが、この絞り板はスクリーン形状や大きさに応じて投射窓形状の異なるものに交換するアタッチメントを設けても良く、更に、外部からの制御によって投射窓形状を機械的又は電気的に変化させる投射窓可変部を設けても良く、この機械的に変化させる投射窓可変部とは、例えば、カメラの絞りのような任意形状の複数の薄板の組み合わせ状態を変化させる機構が考えられ、電気的に変化させる投射窓可変部とは、例えば、電気的印加により液晶分子の向きを変えて光透過率を増減させる液晶素子板を絞り板とすることや、電気的印加により反射率が変化する多数のマイクロミラーを配置した光スイッチであるDLP(Digital Light Processing)素子を平行光の反射板として用いることが考えられる。
【0034】
(3)前記実施形態においては2台のプロジェクタを用いるプラネタリウムの投射装置として使用する例を説明したが、例えば、3台以上の複数のプロジェクタを用いるプラネタリウムの投射装置として使用すること、三次元物体に映像を投射するプロジェクションマッピングにおいて、三次元物体に映像を投射する主光軸上に絞り板を配置し、三次元物体への投射映像の周縁部をグラデーション化することによって、厳密な位置合わせを要しないようにすること、マッピング対象の三次元物体の形状に合わせて投射窓形状を機械的又は電気的に変化させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
10、10a、10b 映像素子、11、11a、11b 合成プリズム、
12、12a、12b リレーレンズ、13、13a、13b 絞り板
14、14a、14b 投射レンズ、16 スクリーン、
20 一次共役像位置、30a 投射映像、30c ブレンディングエリア、
30z 映像重畳エリア、42 映像再生機器、51 映像、52 入射瞳、
53 出射瞳、55 入射瞳、80b、80g、80r DMD素子、
81 色分解合成プリズム、82、83、84 TIRプリズム、
86 ミラー、100、100a、100b プロジェクタ