特許第5939721号(P5939721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939721地盤上の盛土の補強方法、荷重予定地の補強方法、及び、補強構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939721
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】地盤上の盛土の補強方法、荷重予定地の補強方法、及び、補強構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20160609BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20160609BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20160609BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   E02D17/18 Z
   E02D17/18 A
   E02D3/00 101
   E02D27/01 Z
   E02D27/12 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-195564(P2015-195564)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-108929(P2016-108929A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-239817(P2014-239817)
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔試験日〕 平成26年8月13日〜平成26年11月27日 〔試験場所〕 岡三リビック株式会社 札幌倉庫(北海道空知郡南幌町南十線西14番地 晩翠工業団地内) 〔説明会実施日〕 平成26年11月17日 〔説明会実施場所〕 国立大学法人室蘭工業大学(北海道室蘭市水元町27−1)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594157418
【氏名又は名称】株式会社ドーコン
(73)【特許権者】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 啓二
(72)【発明者】
【氏名】松田 圭大
(72)【発明者】
【氏名】林 憲裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聖
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249999(JP,A)
【文献】 特開昭51−015503(JP,A)
【文献】 特開2010−144394(JP,A)
【文献】 特開平11−140859(JP,A)
【文献】 特開2008−045341(JP,A)
【文献】 改訂編集委員会,盛土の調査・設計から施工まで(第1回改訂版),社団法人地盤工学会,2004年 1月30日,第6刷,P.160〜162、図−3.66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18〜 17/20
E02D 1/00〜 3/115
E02D 3/12
E02D 27/00〜 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を地盤上に構築する構築工程を備えており、
前記構築工程が、
前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って、前記補強部材上に盛土を形成する工程と、
前記盛土の荷重によって前記補強部材を、前記幅全体に亘って下方に向かって撓ませる工程とを含んでいることを特徴とする地盤上の盛土の補強方法。
【請求項2】
地中の軟弱層を上下方向に貫通すると共に前記軟弱層より深層の基盤層に達する複数の改良体を、水平方向に並べて形成し、
粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を、前記複数の改良体間をこれらの並んだ方向に関して跨ぐように前記複数の改良体上に形成し、
前記補強部材における前記改良体間に対応する部分のそれぞれを下方に向かって撓ませると共に、撓ませた部分で前記改良体を挟むことで、前記補強部材と前記改良体とを一体化させつつ、前記補強部材に前記補強部材上の盛土を支持させることを特徴とする地盤上の盛土の補強方法。
【請求項3】
前記1又は複数枚のシート部材における少なくともいずれかの端部が、前記1又は複数枚のシート部材における前記端部とは異なる部分と重なりつつ、前記粒状材料の一部と、前記盛土、前記地盤及び前記粒状材料の他の一部のいずれかとに上下から挟持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の補強方法。
【請求項4】
前記1又は複数枚のシート部材の少なくともいずれか1枚のシート部材が、前記一断面において、前記粒状材料を取り囲んでおり、
前記1枚のシート部材における両端部が、前記一断面において、互いに重なりつつ、前記粒状材料と前記盛土に上下から挟持されていることを特徴とする請求項に記載の補強方法。
【請求項5】
前記補強部材を地盤上に構築する構築工程を備えており、
前記構築工程が、
水平方向に関して互いに離隔した前記地盤上の2つの地点のそれぞれに支持部を形成する工程と、
前記2つの地点に形成された前記支持部を水平方向に関して跨ぐように前記シート部材を配置する工程と、
前記シート部材上であって水平方向に関して前記2つの地点に形成された前記支持部同士の間に前記粒状材料を堆積させる工程と、
前記シート部材の端部を前記粒状材料の上方へと巻き上げる工程とを含んでいることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の補強方法。
【請求項6】
長期間の荷重原因となる第1の荷重体を地盤上に形成する予定地を補強する方法であって、
粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を地盤上に配置する工程と、
前記第1の荷重体と異なる第2の荷重体である盛土、前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って前記補強部材上に形成する工程と、
前記第2の荷重体による短期間の荷重によって前記補強部材を前記幅全体に亘って下方に向かって撓ませる工程と、
前記第2の荷重体の少なくとも一部を前記補強部材上から除去する工程とを備えていることを特徴とする荷重予定地の補強方法。
【請求項7】
地中の軟弱層を上下方向に貫通すると共に前記軟弱層より深層の基盤層に達する複数の改良体を、水平方向に並べて形成し、
前記複数の改良体間をこれらの並んだ方向に関して跨ぐように、前記補強部材を前記複数の改良体上に形成し、前記補強部材における前記改良体間に対応する部分のそれぞれを下方に向かって撓ませると共に、撓ませた部分で前記改良体を挟むことで、前記補強部材と前記改良体とを一体化させることを特徴とする請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の補強方法。
【請求項8】
粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する地盤上の補強部材が、前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って形成された前記補強部材上の盛土を、前記幅全体に亘って下方に向かって撓みつつ支持していることを特徴とする補強構造。
【請求項9】
地中の軟弱層を上下方向に貫通すると共に前記軟弱層より深層の基盤層に達する複数の改良体が、水平方向に並んで形成されており、
粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材が、前記複数の改良体間をこれらの並んだ方向に関して跨ぐように前記複数の改良体上に形成されていると共に、前記補強部材上の荷重体を支持しており、
前記補強部材が、
前記改良体間に対応する部分のそれぞれが下方に向かって撓んでいると共に、撓んだ部分で前記改良体を挟むことで、前記改良体と一体化していることを特徴とする補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上の盛土の補強方法、荷重予定地の補強方法、及び、補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤上の盛土の補強方法における一例として、土中に水平に沿ってジオテキスタイルを敷設する方法がある。例えば、特許文献1では、複数本の地盤改良杭が地盤内に埋設されている。これら複数本の地盤改良杭上には、粒度調整砕石にセメントで安定化処理を施したセメント改良礫土が形成されている。そして、セメント改良礫土内にジオテキスタイルが水平に敷設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5318918号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにジオテキスタイルを土中に単に水平に敷設する方法は、従来よく知られている。したがって、特許文献1におけるジオテキスタイルによる補強効果への寄与は、従来知られた範囲とならざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、ジオテキスタイルのようなシート部材による補強効果への寄与を、従来と全く異なる用法によって向上させた、地盤上の盛土の補強方法、荷重予定地の補強方法及び補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における地盤上の盛土の補強方法は、粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を地盤上に構築する構築工程を備えており、前記構築工程が、前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って、前記補強部材上に盛土を形成する工程と、前記盛土の荷重によって前記補強部材を、前記幅全体に亘って下方に向かって撓ませる工程とを含んでいる。
【0007】
本発明の地盤上の盛土の補強方法によると、補強部材として、1枚以上のシート部材によって粒状材料を取り囲ませる。これにより、補強部材全体が厚みを持った一体の部材として盛土を支持できる。よって、補強部材上の盛土の沈下を適切に抑制できる。一方、特許文献1では、粒度調整砕石をセメントで安定化処理することで梁部材を形成することが前提とされている。特許文献1におけるジオテキスタイルは、上記梁部材中に単に水平に敷設されるに過ぎない。つまり、特許文献1は、梁部材の強度を向上するために従来通りの用法でジオテキスタイルを使用したに過ぎず、ジオテキスタイルによる補強効果への寄与はあくまで従来知られた範囲にとどまっている。これに対し、本発明の補強方法は、シート部材が粒状材料全体を巻くことで取り囲む。これによって、補強部材全体を、厚みを持った一体の部材として機能させる。つまり、本発明におけるシート部材の目的は、厚みを持った一体の部材として補強部材を機能させることにあり、粒度調整砕石をセメントで安定化処理することで形成された梁部材を補強するためにジオテキスタイルを使用しているに過ぎない従来技術とは、全く異なる技術思想に基づくものである。このように、本発明は、シート部材による補強効果への寄与を、従来技術と全く異なる用法によって向上させたものである。
【0008】
また、本発明の荷重予定地の補強方法は、長期間の荷重原因となる第1の荷重体を地盤上に形成する予定地を補強する方法であって、粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を地盤上に配置する工程と、前記第1の荷重体と異なる第2の荷重体である盛土を、前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って前記補強部材上に形成する工程と、前記第2の荷重体による短期間の荷重によって前記補強部材を前記幅全体に亘って下方に向かって撓ませる工程と、前記第2の荷重体の少なくとも一部を前記補強部材上から除去する工程とを備えている。
【0009】
本発明の荷重予定地の補強方法によると、第2の荷重体による上方からの荷重で補強部材を撓ませた後で補強部材上に第1の荷重体を形成する。したがって、上方からの荷重に対して補強部材がそれ以上変形しにくい状態になった後に、第1の荷重体が形成される。よって、第1の荷重体が形成後に沈下しにくくなる。また、第1の荷重体とは別の第2の荷重体によって補強部材を撓ませる。したがって、補強部材を撓ませるために適切な荷重をかけられるように、第2の荷重体とその形成方法を適宜選択することができる。なお、本発明において「長期間」及び「短期間」の一対の文言は、互いの間で長短の差があることを示している。つまり、これら一対の文言は、それぞれが何らかの絶対的な長さの期間を示すものではなく、第1の荷重体が荷重を発生させると予想される期間が第2の荷重体が荷重を発生させる期間より長いことを示すに過ぎない。
【0010】
また、本発明の別の観点による地盤上の盛土の補強方法は、地中の軟弱層を上下方向に貫通すると共に前記軟弱層より深層の基盤層に達する複数の改良体を、水平方向に並べて形成し、粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材を、前記複数の改良体間をこれらの並んだ方向に関して跨ぐように前記複数の改良体上に形成し、前記補強部材における前記改良体間に対応する部分のそれぞれを下方に向かって撓ませると共に、撓ませた部分で前記改良体を挟むことで、前記補強部材と前記改良体とを一体化させつつ、前記補強部材に前記補強部材上の盛土を支持させる。これによると、補強部材の上の盛土の荷重を改良体によって基盤層へ伝達できる。また、改良体は基盤層まで到達しているため、改良体の下端が基盤層によって確実に支持されている。したがって、補強部材と改良体が一体となって盛土の荷重を確実に基盤層へ伝達支持する。これらにより、改良体間に残る未改良部における不同沈下が抑制され、改良体のせん断変形や曲げ破壊が抑制されると共に、上記未改良部が側方流動するおそれが低下する。
【0011】
また、本発明の補強構造は、粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する地盤上の補強部材が、前記一断面において前記補強部材の水平方向に関する幅のほぼ全体に亘って形成された前記補強部材上の盛土を、前記幅全体に亘って下方に向かって撓みつつ支持している。
【0012】
本発明の補強構造は、補強部材全体が厚みを持った一体の部材として荷重体を支持する。よって、補強部材上の荷重体の沈下を適切に抑制できる。
【0013】
また、本発明の別の観点による補強構造においては、地中の軟弱層を上下方向に貫通すると共に前記軟弱層より深層の基盤層に達する複数の改良体が、水平方向に並んで形成されており、粗粒材料、砂利及び砕石の少なくともいずれかからなる粒状材料と、1又は複数枚のシート部材とを有する補強部材であって、鉛直方向に沿った一断面において、前記1又は複数枚のシート部材が前記粒状材料全体を巻くことで取り囲んだ構成を有する補強部材が、前記複数の改良体間をこれらの並んだ方向に関して跨ぐように前記複数の改良体上に形成されていると共に、前記補強部材上の荷重体を支持しており、前記補強部材が、前記改良体間に対応する部分のそれぞれが下方に向かって撓んでいると共に、撓んだ部分で前記改良体を挟むことで、前記改良体と一体化している。これによると、補強部材の上の荷重体の荷重を改良体によって基盤層へ伝達できる。また、改良体は基盤層まで到達しているため、改良体の下端が基盤層によって確実に支持されている。したがって、補強部材と改良体が一体となって荷重体の荷重を確実に基盤層へ伝達支持する。これらにより、改良体間に残る未改良部における不同沈下が抑制され、改良体のせん断変形や曲げ破壊が抑制されると共に、上記未改良部が側方流動するおそれが低下する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る補強構造及び盛土の横断面図である。図1図2のI−I線断面図に対応する。
図2図1の補強構造及び盛土の平面図である。
図3図2の補強部材の拡大図である。
図4図1の補強構造の構築方法における構築経過を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る荷重予定地の補強方法における予定地周辺の構造の経過を示す概略図である。
図6】上述の実施形態とは別の実施形態に係る補強構造及び盛土の横断面図である。図6図7のVI−VI線断面図に対応する。
図7図6の補強構造及び盛土の平面図である。
図8図6の補強構造における改良体の上端付近の拡大図である。
図9図6の補強構造の変形例に係る補強構造及び盛土の横断面図である。
図10図3の補強部材の変形例に対応する補強部材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の補強構造に係る一実施形態である補強構造1について図1図3を参照しつつ説明する。以下、図1及び図2中の左右方向に相当する水平方向をA方向とし、図2中の上下方向に相当する水平方向をB方向とする。補強構造1は、地盤G上に形成される盛土2を補強するために構築されている。盛土2は、図2のB方向に直交する断面に関して台形形状を有している(図1参照)。盛土2は、図1及び図2に示すように、水平面に沿った上面2aと2つの斜面2bとを有している。
【0016】
補強構造1は、地盤G上に配置された補強部材10と、A方向に関して補強部材10の両脇のそれぞれに配置されたふとん籠3(支持部)とを有している。ふとん籠3は、直方体の概略形状を有しており、金網等で構成された枠体と枠体内に充填された詰め石とを有している。
【0017】
補強部材10は、ほぼ水平面に沿った平板状の部材である。補強部材10は、図3に示すように、ジオテキスタイル11とジオテキスタイル11に取り囲まれたグラベル12(粒状材料)とを有している。ジオテキスタイル11は、織物、不織布及び編物のいずれかであって、透水性のある、高分子材料からなるシート状の部材である。また、ジオテキスタイル11が、これらの素材のうち少なくとも2つ以上の組み合わせで構成されていてもよい。この他、網状構造又は格子状構造を有するシート状の部材が用いられてもよいし、透水性を有しないシート状の部材に排水用の貫通孔を形成したものが用いられてもよい。例えば、JIS L 0221に規定されたジオシンセティックの範囲内で、様々な種類のシート部材が用いられてよい。ジオテキスタイル11は、B方向に関して複数枚並べられてもよい。またその場合、B方向に隣り合う2枚のジオテキスタイル11同士は、B方向に関する端部において互いに部分的に重ねあわされてもよい。
【0018】
グラベル12は、約10cm以下の径を有する、適宜の粒度分布の砂礫からなる。この他、グラベル12として、再生骨材などを適宜の粒度分布に調整した粗粒材料が用いられてもよいし、砂利や砕石が用いられてもよい。また、このような粗粒材料と砂礫や砂利・砕石を混合したものが用いられてもよい。
【0019】
グラベル12は、図3の断面において、全周に亘ってジオテキスタイル11に取り囲まれている。ジオテキスタイル11は、図3に示すように、A方向に関するグラベル12の両端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。ジオテキスタイル11の一方の端部11a及び他方の端部11bは、図3に示すように、上下方向に重なり合っている。端部11a及び11bが重なり合った部分は、A方向に関して補強部材10の中央付近であって、グラベル12より上方に配置されている。このような配置により、端部11a及び11bは、その上方の盛土2と下方のグラベル12に挟持されている。したがって、端部11a及び11bは、盛土2の荷重によって互いに密着している。これによって、端部11a及び11bが互いに対してA方向にずれるのが抑制されている。なお、本実施形態における「端部」とは、一端から任意の範囲で連続する部分を示す。
【0020】
以上のように構成されていることにより、補強部材10は、ジオテキスタイル11とグラベル12の全体が一体となることで、厚みを持った板状の部材を形成している。さらに補強部材10は、図3に示すように、全体的に下方に向かって凸に撓んでいる。ジオテキスタイル11は、上載荷重により引っ張り歪みが発生し、もって、緊張状態となっている。これにより、補強部材10は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になっている。なお、図3以外の図においては、補強部材10の撓みの図示は省略されている場合がある。
【0021】
補強構造1の構築方法について、図4を参照しつつ説明する。本構築方法は、本発明における地盤上の盛土の補強方法に係る一実施形態である。まず、地盤上に2個のふとん籠3を、図4(a)に示すように、互いにA方向に関して距離を隔てた2地点に配置する。次に、図4(b)に示すように、一方のふとん籠3から他方のふとん籠3までの範囲を跨ぐようにふとん籠3と地盤Gの上にジオテキスタイル11を設置する。次に、図4(c)に示すように、ジオテキスタイル11上の領域であってふとん籠3上の領域同士の間にグラベル12を堆積させる。次に、ジオテキスタイル11の両端部11a及び11bを図4(c)のC方向及びD方向に折り畳む。これによって、ジオテキスタイル11でグラベル12を巻き上げると共に、両端部11a及び11bを上下に重ね合わせる。グラベル12は、図4(d)に示すようにジオテキスタイル11に取り囲まれる。本実施形態では、ジオテキスタイル11でグラベル12を巻き上げた後、ジオテキスタイル11のA方向の両端部上にふとん籠3をさらに配置する。このふとん籠3がなくてもよい。なお、本実施形態において「巻き上げ」とは、下方から上方に向かって巻き返す動作を示す。
【0022】
グラベル12が敷き詰められる間、ジオテキスタイル11のA方向の両端部はふとん籠3に支持されている。これによって、グラベル12は、敷き詰めの作業中にA方向に関して外側に崩れるのが抑制されている。なお、ふとん籠3の代わりに、ジオテキスタイル11を支持可能なその他の構成が用いられてもよい。例えば、土嚢やコンクリートブロックなどが用いられてもよいし、土塊によって山状の保持部が形成されてもよい。
【0023】
次に、図4(e)に示すように、ジオテキスタイル11上に盛土2を形成する。盛土2が形成されると、その荷重によって、ジオテキスタイル11及びグラベル12が一体となって下方に向かって凸に撓む。この変形によって、ジオテキスタイル11は、緊張状態になる。時間の経過に伴って変形が進むと、ジオテキスタイル11の緊張の程度は強くなっていく。したがって、ジオテキスタイル11及びグラベル12の全体が、時間の経過に伴って変形しにくくなっていく。そして、一定期間の経過後、ジオテキスタイル11及びグラベル12は、それ以上変形しない状態に達する。
【0024】
以上説明した本実施形態に係る補強構造1によると、補強部材10全体が一体の板状の部材として盛土2を支持する。よって、補強部材10上の盛土2の沈下を適切に抑制できる。本発明者が行った実験では、A方向に関して盛土2の中心位置(図1の二点鎖線の位置)における、補強部材10を設置してから約1か月後の沈下量が、補強部材10を設けない場合と比べて2/3から半分程度まで抑制された。なお、本実験は、軟弱地盤(泥炭層)上に補強部材10と盛土2を形成することで行われたものである。
【0025】
また、本実施形態の補強部材10は、下方に向かって凸に撓んだ状態で盛土2を支持している。補強部材10を撓ませると、ジオテキスタイル11は緊張状態になる。したがって、補強部材10は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になる。これにより、補強部材10は、盛土2の沈下をより適切に抑制できる。
【0026】
また、ジオテキスタイル11によりせん断に対する強度が増大するため、盛土2のすべり破壊に対して高い耐性を有する。また、盛土2と地盤の間に補強部材10が存在する。よって、地盤下に地下水位が存在する場合、盛土2が沈下しても、盛土2より先に補強部材10が地下水位に到達する。このため、盛土2の下部が地下水位以下に没することによる盛土2の軟弱化が抑制される。この観点では、盛土2の沈下量が予測可能である場合、沈下量より補強部材10の厚みを大きく設定することが好ましい。これにより、盛土2が地下水位以下に没することを確実に阻止できる。また、盛土2の法尻にふとん籠3が設けられているので、水はけがよい。このため、盛土2の法尻が湿潤状態になることによる不安定化が抑制される。
【0027】
以下、本発明の荷重予定地の補強方法に係る一実施形態について、図5を参照しつつ説明する。本実施形態に係る補強方法は、長期間の荷重原因となる荷重体102(第1の荷重体)が形成される荷重予定地を補強する方法である。荷重予定地としては、建築物の建築予定地などが考えられる。この場合、荷重体102は建築物である。本補強方法において、荷重予定地に盛土2(第2の荷重体)を形成するまでの工程は、図4(a)〜図4(d)に示される上述の方法における工程と同様である。これによって、図5(a)に示すように、補強部材10と盛土2を荷重予定地に構築すると共に、一定期間、この状態を保持する。補強部材10は盛土2の荷重によって下方に向かって凸に撓む。その後、盛土2を補強部材10からすべて除去し、図5(b)に示すように、補強部材10上に荷重体102を形成する。なお、盛土2の一部が除去され、これによって形成された空き領域に荷重体102が形成されてもよい。
【0028】
盛土2の荷重によって補強部材10を撓ませる期間は、荷重体102が荷重を発生させると予想される期間(つまり、荷重体102が補強部材10上に存在すると予想される期間)より短くなると想定される。例えば、荷重体102が建築物である場合、荷重体102が荷重を発生させると予想される期間は数十年となる。これに対し、補強部材10上に盛土2を形成しておく期間は数週間から数か月である。
【0029】
仮に、補強部材10を地盤上に構築した後、すぐにその上に荷重体102を形成すると、荷重体102による荷重で補強部材10が下方に向かって大きく撓むおそれがある。補強部材10が大きく撓むと、荷重体102が大きく沈下したり傾いたりする(不同沈下)。これに対し、本補強方法によると、あらかじめ盛土2によって補強部材10を撓ませる。このため、補強部材10が上方からの荷重に対してそれ以上変形しにくい状態になる。そして、その後に補強部材10上に荷重体102を形成するので、荷重体102が不同沈下を発生させにくくなる。また、盛土2は、例えば建築物と比べ、短期間で形成しやすく、除去しやすい。盛土2の代わりに土嚢やコンクリートブロックが用いられてもよい。このように、本補強方法によると、補強部材10をあらかじめ撓ませるために適切な荷重方法を選択できる。
【0030】
以下、上述の補強構造1とは別の実施形態に係る補強構造20について、図6図8を参照しつつ説明する。なお、本補強構造20が上述の荷重予定地の補強方法における補強構造として用いられてもよい。以下の説明において、補強構造1と同じ構成には同じ符号を付すと共に、その説明を適宜省略する。補強構造20は、図6に示すように、基盤層G2上に積層した軟弱層G1上に盛土2を形成する場合に用いられる。補強構造20は、図6及び図7に示すように、地盤内に構築された複数の改良体4と、地盤上に配置された補強部材10と、A方向に関して補強部材10の両脇のそれぞれに配置されたふとん籠3とを有している。改良体4は、セメント等を用いた固結工法によって形成されている。改良体4は、いずれも軟弱層G1を上下に貫通しており、軟弱層G1より深層にある基盤層G2に到達している。改良体4の最下部は、軟弱層G1と基盤層G2の境界αを超え、基盤層G2中にまで貫入されている。これにより、改良体4が基盤層G2に確実に支持されている。改良体4は、水平方向に配列されている。改良体4同士の間には、地盤G1における未改良の部分である未改良部Hが存在する。
【0031】
補強部材10は、複数の改良体4上に形成されており、改良体4の間の未改良部Hを水平方向に跨ぐように延びている。補強部材10は、未改良部Hを跨ぐ架橋部分10aが図8に示すように撓んでいる。この撓みにより、補強部材10の下面10bが未改良部Hに向かって下方に凸に突出する。これに対し、補強部材10の上面10cは、下面10bに比べて平坦に近い。改良体4の最上部は、下方に向かって撓んだ架橋部分10aの突出部分に左右から挟まれるため、改良体4と補強部材10が一体化する。また、各架橋部分10aが撓んだ状態にあるため、上方からの荷重に対し、補強部材10が各架橋部分10aにおいてこれ以上変形しにくい状態となる。このため、補強部材10が各架橋部分10aにおいて盛土2の荷重を支持しやすく、盛土2の沈下をより適切に抑制できる。
【0032】
補強構造20の構築方法は、改良体4を構築した後にその上に補強部材10を構築することと、各架橋部分10aを下方に撓ませること以外においては、上述の補強構造10の構築方法と同様である。
【0033】
以上のように、補強構造20においては、補強部材10を改良体4上に配置することにより、補強部材10の上の盛土2の荷重を改良体4によって基盤層へ伝達できる。また、改良体4の最下部は基盤層G2まで到達し、さらに基盤層G2中にまで貫入されているため、改良体4の最下部が基盤層G2によって支持される。これにより、盛土2の荷重を基盤層G2へ伝達させることができる。さらに、上記の通り、補強部材10において、未改良部Hの上方の各架橋部分10aが下方へと凸に撓んでいる。これにより、補強部材10と改良体4が一体化する。したがって、補強部材10と改良体4が全体で盛土2の荷重を基盤層へ伝達しやすく、且つ、各架橋部分10aにおいて盛土2の沈下を抑制する。これらにより、未改良部Hにおける不同沈下が抑制され、改良体4のせん断変形や曲げ破壊が抑制されると共に、未改良部Hが側方流動するおそれが低下する。特に、改良体4の改良率が比較的低い場合でもこれらの問題が生じにくいことが確認されている。一実施例では、改良率が10%程度であっても、盛土2の荷重に対して未改良部Hに側方への大きな変形は生じず、改良体4のせん断変形や曲げ破壊を抑制できることが確認されている。
【0034】
補強構造20の変形例に係る補強構造30について説明する。補強構造30においては、図9に示すように、地盤G1の表層に形成された掘削部内に補強部材10が構築されている。このため、掘削部の内側面によって補強部材10が側方から支持されるので、ふとん籠3の設置が不要になる。補強構造30においても、補強部材10が複数の改良体4上に構築されている。また、補強部材10上に盛土2が形成されている。補強構造30の構築方法は、掘削部を形成すること、掘削部内に補強部材10を形成すること、及び、ふとん籠3を設置しないこと以外において、補強構造20の構築方法と同様である。
【0035】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0036】
例えば、上述の実施形態における補強部材10の代わりに、図10に示す補強部材110〜140のいずれかが用いられてもよい。図10(a)に示す補強部材110は、ジオテキスタイルなどからなるシート部材111及び112と、これらのシート部材に取り囲まれたグラベル12とを備えている。シート部材112は、A方向に関するグラベル12の両端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。この巻き返しに関して、上下方向の違いはない。このため、シート部材112は、A方向に関するグラベル12の両端において、グラベル12の上方からその下方へと巻き返されていると言い換えることができる。図10(b)〜図10(d)の補強部材120〜140においても同様である。
【0037】
シート部材112の両端部112a及び112bは、グラベル12の上方に配置されている。そのさらに上方に、シート部材111が、両端部112a及び112bの両方をA方向に跨るように配置されている。シート部材111の両端部111a及び111bはシート部材112の両端部112a及び112bに重なっている。互いに重なった両端部111a及び112aは、上方の盛土2と下方のグラベル12に上下から挟持されている。互いに重なった両端部111b及び112bも、上方の盛土2と下方のグラベル12に上下から挟持されている。よって、これらの端部は、盛土2の荷重によって互いに密着している。
【0038】
以上のように構成されていることにより、補強部材110は、シート部材111及び112とグラベル12の全体が一体となることで、厚みを持った板状の部材を形成している。さらに補強部材110は、全体的に下方に向かって凸に撓んでいる。これにより、補強部材110は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になっている。なお、図10(a)において、補強部材110の撓みの図示は省略されている。図10(b)〜図10(d)の補強部材120〜140においても同様である。
【0039】
シート部材111及び112のうち、補強部材110の全体を一体に保持する機能を果たすのは、主に、グラベル12の周囲の半ば以上を取り囲んだシート部材112である。これに比べ、グラベル12の周囲においてシート部材112より小さい範囲に沿ったシート部材111は、補強部材110の全体を一体に保持する機能への寄与が小さい。このため、シート部材111は、シート部材112より強度が低く構成されていても、補強部材110の機能に支障を与えにくい。したがって、シート部材111は、シート部材112より強度が低い素材や構造を有していてもよい。また、シート部材112単独でも補強部材110全体を一体に保持できる場合には、シート部材111の役割は、主に、上方の盛土2がグラベル12側に侵入するのを遮断することであってもよい。
【0040】
図10(b)に示す補強部材120は、ジオテキスタイルなどからなるシート部材113及び114と、これらのシート部材に取り囲まれたグラベル12とを備えている。シート部材113は、A方向に関するグラベル12の一端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。シート部材114は、A方向に関するグラベル12の他端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。シート部材113の端部113aとシート部材114の端部114aとは、グラベル12の上方において上下に重なっていると共に、盛土2とグラベル12に上下から挟持されている。シート部材113の端部113bとシート部材114の端部114bとは、グラベル12の下方において上下に重なっていると共に、地盤とグラベル12に上下から挟持されている。したがって、これらの端部は、盛土2やグラベル12自体の荷重によって互いに密着している。
【0041】
以上のように構成されていることにより、補強部材120は、シート部材113及び114とグラベル12の全体が一体となることで、厚みを持った板状の部材を形成している。さらに補強部材120は、全体的に下方に向かって凸に撓んでいる。これにより、補強部材120は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になっている。
【0042】
図10(c)に示す補強部材130は、ジオテキスタイルなどからなるシート部材115〜118と、これらのシート部材に取り囲まれたグラベル12とを備えている。シート部材115は、A方向に関するグラベル12の一端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。シート部材116は、A方向に関するグラベル12の他端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。シート部材117は、グラベル12の上方であって、グラベル12とシート部材115及び116との間に、ほぼA方向に沿って延びるように配置されている。シート部材118は、グラベル12の下方であって、グラベル12とシート部材115及び116との間に、ほぼA方向に沿って延びるように配置されている。
【0043】
シート部材115の端部115aとシート部材117の端部117aとは、グラベル12の上方において上下に重なっていると共に、盛土2とグラベル12に上下から挟持されている。シート部材116の端部116aとシート部材117の端部117bとは、グラベル12の上方において上下に重なっていると共に、盛土2とグラベル12に上下から挟持されている。シート部材115の端部115bとシート部材118の端部118aとは、グラベル12の下方において上下に重なっていると共に、地盤とグラベル12に上下から挟持されている。シート部材116の端部116bとシート部材118の端部118bとは、グラベル12の下方において上下に重なっていると共に、地盤とグラベル12に上下から挟持されている。したがって、これらの端部は、盛土2やグラベル12自体の荷重によって互いに密着している。
【0044】
以上のように構成されていることにより、補強部材130は、シート部材115〜118とグラベル12の全体が一体となることで、厚みを持った板状の部材を形成している。さらに補強部材130は、全体的に下方に向かって凸に撓んでいる。これにより、補強部材130は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になっている。
【0045】
図10(d)に示す補強部材140は、ジオテキスタイルなどからなるシート部材121及び122と、これらのシート部材に取り囲まれたグラベル12とを備えている。補強部材140は、シート部材121及び122によってグラベル12が上下に2層に区分けされた層構造を有している。シート部材121は、2層のうちの上層を規定している。シート部材121は、グラベル12上層のA方向に関する両端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。シート部材122は、2層のうちの下層を規定している。シート部材122は、グラベル12下層のA方向に関する両端において、グラベル12の下方からその上方へと巻き返されている。
【0046】
シート部材121の端部121aとシート部材122の端部122aとは、A方向に関するグラベル12の一端付近において、互いに重なり合いつつグラベル12の2層に上下から挟持されている。シート部材121の端部121bとシート部材122の端部122bとは、A方向に関するグラベル12の他端付近において、互いに重なり合いつつグラベル12の2層に上下から挟持されている。したがって、これらの端部は、盛土2やグラベル12自体の荷重によって互いに密着している。なお、グラベル12の2層のうちの一方が本発明における「粒状材料の一部」に対応し、グラベル12の2層のうちの他方が本発明における「粒状材料の他の一部」に対応する。
【0047】
以上のように構成されていることにより、補強部材140は、シート部材121及び122とグラベル12の全体が一体となることで、厚みを持った板状の部材を形成している。補強部材140は、補強部材10及び110〜130のいずれとも異なり、多層構造を有している。これにより、補強部材140は、上方からの荷重に対して比較的高い強度を有している。さらに補強部材140は、全体的に下方に向かって凸に撓んでいる。これにより、補強部材140は、上方からの荷重に対し、それ以上変形しにくい状態になっている。
【0048】
その他、上述の実施形態や変形例におけるジオテキスタイル11やシート部材111〜120などのシート部材は、複数枚の短いシートが連結材などによって連結されることで、一枚の長いシートとして構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 補強構造
3 ふとん籠
11 ジオテキスタイル
12 グラベル
102 荷重体
10,110-140 補強部材
11,111-118,121,122 シート部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10