【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1を構成する湾曲積層材ブロック1Aを示す。湾曲積層材ブロック1Aは、単一層で構成される内層材2と、同じく単一層で構成され、内層材2の最外表裏面にそれぞれ接着されて外層を形成する一対の外層材3とを備える。なお、内層材2及び外層材3は単一層に限らず、複数層で構成してもよい。
【0012】
内層材2及び外層材3は、
図2に示すような初期状態(曲げ加工前の状態)で平板形状の内層材20及び外層材30を所定の態様で重ね合わせ、曲げ方向L1に一体的に曲げて上側に凸(下側に凹)、あるいは下側に凸(上側に凹)となるようにブロック全体が湾曲形状を呈するものである。
【0013】
内層材20及び外層材30は、同じ大きさの長方形の板材(集成材の集合物)で形成されている。
図2には、板材の繊維方向が長手方向、すなわち曲げ方向L1となるように設定された外層材30が例示され、板材の繊維方向が幅方向、すなわち曲げ方向L1と直交する直交方向L2となるように設定された内層材20が例示されている。ただし、内層材20及び外層材30において、繊維方向は適宜変更可能である。なお、一般的な内層材20及び外層材30の外形寸法を一例として挙げれば、幅900mm×長さ1200mm×厚み30mmである。また、「同じ大きさ」とは、内層材20と外層材30とが完全に一致する場合に限らず、幅と長さについては0〜100mm程度、厚みについては0〜10mm程度の寸法差がある場合を含む意である。
【0014】
内層材20は、例えば
図3に示すような原木Wから製材されたラミナとしての挽き板21や小角材22からなる集成材で構成されている。
図2には、挽き板21と小角材22が幅はぎ(幅方向に接着)により一体化された集成材が例示されている。
【0015】
内層材20の表裏20a,20bには、その厚みに達しない程度の深さを有し、かつ直交方向L2に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠き23が所定の等間隔(30〜70mm程度、好ましくは40〜50mm)で形成されている。内層材切欠き23の幅寸法は、1〜5mm程度、好ましくは2〜4mmに設定されている。内層材切欠き23の深さ寸法tは、内層材20の厚み寸法をTとした場合、0.5T≦t≦0.8T、好ましくは0.6T≦t≦0.7Tに設定されている。したがって、前記一般的な内層材20及び外層材30の外形寸法の一例に当てはめれば、内層材切欠き23の深さ寸法tは、15mm≦t≦24mm、好ましくは18mm≦t≦21mmに設定されることになる。
【0016】
このような内層材切欠き23を設けることにより、板厚な内層材20であっても内層材20を曲げ方向L1に容易に曲げることができる。また、このような内層材切欠き23を内層材20の表裏20a,20bに設けることにより、表裏20a,20bを上下のいずれにした場合でも、曲げ加工のしやすさをほぼ同程度とすることができる。
【0017】
同様に、外層材30は、例えば
図3に示すような原木Wから製材されたラミナとしての挽き板31や小角材32からなる集成材として構成されている。
図2には、挽き板31と小角材32が幅はぎ(幅方向に接合)により一体化されるとともに、縦継ぎ31a,32a(例えばフィンガージョイントにより繊維方向に接合)により一体化された集成材が例示されている。外層材30の厚み寸法は、内層材20の厚み寸法Tとほぼ同じ長さに設定されている。
【0018】
各外層材30の、内層材20と向かい合う内面部30aには、各外層材30の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ直交方向L2に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠き33が所定の等間隔で形成されている。外層材切欠き33間の間隔や幅寸法、深さ寸法は、それぞれ内層材20での間隔や幅寸法、深さ寸法とほぼ同じ長さに設定されている。このような外層材切欠き33を設けることにより、板厚な外層材30であっても外層材30を曲げ方向L1に容易に曲げることができる。
【0019】
次に、
図4のフローチャート及び
図5を参照して湾曲積層材ブロック1Aの製造工程について説明する。なお、
図5において、木目模様は省略してある。
【0020】
まず、各種集成材を用いてほぼ同じ大きさの長方形状の板材を予め複数用意しておく。それら板材のうち内層材20の表裏20a,20bには、直交方向L2に内層材切欠き23(
図2参照)を形成する。一方、内層材20との接着面となる一対の外層材30の内面部30aには、それぞれ直交方向L2に外層材切欠き33を形成する(
図2参照、S11)。内層材切欠き23及び外層材切欠き33は、例えば電動丸鋸や横フライス盤に取り付けたメタルソーによる溝加工等によって形成することができる。
【0021】
次に、内層材20を一対の外層材30により接着剤を介して挟むように積層し、
図5(a)に示されるような平板積層材ブロック10を形成する(S12)。
図5(a)では、内層材20が一対の外層材30に対して、幅方向は揃えたままとしつつ長手方向にのみずらして配置されている。内層材20及び外層材30が同じ大きさであれば、外層材30の長手方向一端から突出した内層材20の部位が第1凸部10a(凸部)として形成される一方、第1凸部10aの形成に伴い外層材30の長手方向他端間に形成された隙間が第1凹部10b(凹部)として形成されることになる。
【0022】
次に、平板積層材ブロック10をプレス装置40内へ搬入する。プレス装置40は、互いに対応した湾曲形状のプレス面を有する固定型41及び可動型42を備える。可動型42は、固定型41に対して上下に移動可能に支持されている。平板積層材ブロック10は、
図5(b)に示されるように固定型41と可動型42間にて所定の押圧力により所定時間保持される(S13)。
【0023】
これにより、平板積層材ブロック10が曲げ方向L1に塑性的に曲げられ、プレス装置40による押圧を解除した後の通常時においても湾曲形状が維持される湾曲積層材ブロック1Aを製造することができる。湾曲積層材ブロック1Aは、湾曲形状の内層材2及び一対の外層材3に加え、その長手方向一端側にて第1凸部1aを有し、長手方向他端側にて第1凹部1bを有する。
【0024】
図6〜
図10に本実施例1に係る別の湾曲積層材ブロック1B〜1Dを示す。なお、以下の説明において、湾曲積層材ブロック1Aと同様の機能を果たす部材、部位については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、
図6〜
図10において、木目模様は省略してある。
【0025】
図6(a),6(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Bは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向後端側(図示右端側)にて第1凹部1bを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、内層材2及び外層材3の長手方向先端(図示左端)が揃えられ、第1凸部1aを有しないように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より小さな(曲げ方向L1の長さが短い)内層材2を重ね合わせることで、内層材2が未充足のため外層材3間に形成された隙間が第1凹部1b(凹部)として形成されることになる。
【0026】
図7(a),7(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Cは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向先端側(図示左端)にて第1凸部1aを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、内層材2及び外層材3の長手方向後端(図示右端)が揃えられ、第1凹部1bを有しないように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より大きな(曲げ方向L1の長さが長い)内層材2を重ね合わせることで、外層材3から外向きに突出した内層材2の部位が第1凸部1a(凸部)として形成されることになる。
【0027】
そして
図8に例示されるように、図示左側から湾曲積層材ブロック1B、湾曲積層材ブロック1A、湾曲積層材ブロック1A、湾曲積層材ブロック1Cをこの順に配置し、隣り合う第1凸部1aと第1凹部1bとを互いに嵌合することで、連結された外層材3同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W1(4個のブロックで一ユニットを構成)を形成することができる。
【0028】
図9(a),9(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Dは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向先端側(図示左端)にて第1凸部1aを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、長手方向後端側(図示右端)にて第1凹部1bの代わりに、第2凸部1cを有するように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より大きな(曲げ方向L1の長さが長い)内層材2を重ね合わせることで、外層材3の長手方向先端側と後端側から外向きに突出した内層材2の部位が、それぞれ第1凸部1a(凸部)、第2凸部1c(凸部)として形成されることになる。
【0029】
そして
図10に例示されるように、図示左側から湾曲積層材ブロック1B、湾曲積層材ブロック1D、湾曲積層材ブロック1Bをこの順に配置し、隣り合う第1凸部1aと第1凹部1b、第2凸部1cと第1凹部1bとを互いに嵌合することで、連結された外層材3同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W2(3個のブロックで一ユニットを構成)を形成することができる。
【実施例2】
【0030】
図11に本実施例2に係る湾曲積層材ブロック11Aを示し、
図12にそれを用いた構造壁W3を示す。なお、
図11及び
図12において、木目模様は省略してある。
【0031】
図11(a)に示されるように、湾曲積層材ブロック11Aは、ほぼ同じ大きさの長方形の板材(集成材の集合物)を曲げ方向L1に一体的に曲げることで湾曲形状に形成された内層材12及び外層材13を有する点で、上記実施例1に係る湾曲積層材ブロック1Aと共通する。ただし、
図11(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック11Aでは、内層材12が一対の外層材13に対して、長手方向の一端側のみならず、幅方向の一端側へもずらして配置されている点で、幅方向は揃えたままとしつつ長手方向にのみずらして配置されている湾曲積層材ブロック1Aと相違する。
【0032】
これにより、湾曲積層材ブロック11Aでは、外層材13の長手方向一端から突出した内層材12の部位により第1凸部11aが形成され、外層材13の幅方向一端から突出した内層材12の部位により第2凸部11cが形成される一方、第1凸部11aの形成に伴い外層材30の長手方向他端間に形成された隙間により第1凹部11bが形成され、外層材13の幅方向他端間に形成された隙間により第2凹部11dが形成されている。
【0033】
そして
図12(a),12(b)に例示されるように、湾曲積層材ブロック11Aを図示左右上下に配置し、隣り合う第1凸部11aと第1凹部11b、第2凸部11cと第2凹部11dとを互いに嵌合することで、2次元的に連結・展開した外層材13同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W3を形成することができる。
(変形例)
【0034】
上記実施例1,2において、初期状態(曲げ加工前の状態)の内層材20の表裏20a,20bには内層材切欠き23が形成されていたが(
図2参照)、これに加えて、例えば
図13(a)に示されるように、内層材溝24を形成してもよい。なお、
図13(a)において、木目模様の一部は省略してある。
【0035】
内層材溝24は、内層材20の幅方向で向かい合う両側面20c(曲げ方向L1に延びる両側面)からそれぞれ所定距離Dだけ内側に入り込んだ位置に、曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたって形成されている。内層材溝24は、内層材切欠き23に比して幅広かつ浅い溝深さを有するように設定されている。具体的に、内層材溝24の幅寸法及び深さ寸法は、いずれも2〜6mm程度、好ましくは3〜5mmに設定されている。
【0036】
同様に、外層材30の内面部30aには外層材切欠き33が形成されていたが(
図2参照)、これに加えて、例えば
図13(b)に示されるように、外層材溝34を形成してもよい。なお、
図13(b)において、木目模様の一部は省略してある。
【0037】
外層材溝34は、内層材20の内層材溝24と対応するよう、外層材30の幅方向で向かい合う両側面30c(曲げ方向L1に延びる両側面)からそれぞれ所定距離Dだけ内側に入り込んだ位置に、曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたって形成されている。外層材溝34は、外層材切欠き33に比して幅広かつ浅い溝深さを有するように設定されている。具体的に、外層材溝34の幅寸法及び深さ寸法は、それぞれ内層材溝24の幅寸法及び深さ寸法とほぼ同じ長さに設定されている。
【0038】
内層材20及び外層材30を接着剤を介して重ね合わせた場合、接着剤は内層材20及び外層材30の中央部から周囲に押し広げられることとなるが、接着剤のうち長手方向(曲げ方向L1)へ流動するものは内層材切欠き23や外層材切欠き33内へ流れ込む一方、幅方向(直交方向L2)へ流動するものは内層材溝24や外層材溝34内へ流れ込むようになる(
図13(c)参照)。このように内層材溝24や外層材溝34を設けることにより、接着剤が湾曲積層材ブロック1Eの外側へ流れ出すことが良好に防止される。
【0039】
以上の説明からも明らかなように、本実施例1の湾曲積層材ブロック1A〜1Eにおいて、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを構成する内層材2には曲げ方向L1と交差する直交方向L2に内層材切欠き23が形成され、外層材3には曲げ方向L1と交差する直交方向L2に外層材切欠き33が形成されている。このため、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを曲げ方向L1へ曲げるとき、所定の曲率に曲げ加工することが極めて容易である。この場合、内層材2単体の表裏20a,20bのいずれにも内層材切欠き23が形成されているので、湾曲積層材ブロック1A〜1Eは上側に凸(下側に凹)、あるいは下側に凸(上側に凹)となるように凹凸いずれの曲げにも対応可能である。
【0040】
また、湾曲積層材ブロック1A〜1Eは、内層材2の端が外層材3の端より外側へ配置した状態とされることで外層材3の端から外向きに突出した内層材2の部位を第1凸部1a(凸部)、第2凸部1c(凸部)としたもの、及び内層材2の端が外層材3の端より内側へ配置した状態とされることで外層材3間に形成された隙間を第1凹部1b(凹部)としたものを備える。したがって、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを予め複数用意しておくことにより、湾曲積層材ブロック1A〜1E同士の第1凸部1aと第1凹部1b、あるいは第2凸部1cと第1凹部1bを嵌合するだけで、構造壁W1,W2を簡易に製造することができる。
【0041】
同様に、湾曲積層材ブロック11Aは、内層材12の端が外層材13の端より外側へ配置した状態とされることで外層材13の端から外向きに突出した内層材12の部位を第1凸部11a(凸部)、第2凸部11c(凸部)としたもの、及び内層材12の端が外層材13の端より内側へ配置した状態とされることで外層材13間に形成された隙間を第1凹部11b(凹部)、第2凹部1d(凹部)としたものを備える。したがって、本実施例2の湾曲積層材ブロック11Aを予め複数用意しておくことにより、湾曲積層材ブロック11A同士の第1凸部11aと第1凹部11b、第2凸部11cと第2凹部11dを嵌合するだけで、構造壁W3を簡易に製造することができる。
【0042】
また、本実施例1,2の湾曲積層材ブロック1A〜1E,11Aの製造方法によれば、固定型41と可動型42とにより平板積層材ブロック10を押圧して曲げ加工するように構成されている。したがって、内層材切欠き23及び外層材切欠き33の形成と相まって、湾曲積層材ブロック1A〜1E,11Aを簡易に製造することができる。
【0043】
また、上記実施例1,2の変形例では、内層材20単体の表裏20a,20b及び外層材30単体の内面部30aであって、曲げ方向L1に延びる両側面20c,30cの各内側近傍には、内層材切欠き23及び外層材切欠き33より幅広かつ浅い溝深さを有し、かつ曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる内層材溝24及び外層材溝34が形成されている。これにより、内層材20及び外層材30を接着剤を介して重ね合わせた場合、接着剤が湾曲積層材ブロック1Eの外側へ流れ出すことを良好に防止できる。なお、内層材溝24及び外層材溝34のうち少なくとも一方は省略することが可能である。
【0044】
その他、本発明は上記実施例1,2及びその変形例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。