特許第5939727号(P5939727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939727湾曲積層材ブロック及びその製造方法、並びに湾曲積層材ブロックを用いた構造壁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5939727
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】湾曲積層材ブロック及びその製造方法、並びに湾曲積層材ブロックを用いた構造壁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   B27M3/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-68048(P2016-68048)
(22)【出願日】2016年3月30日
【審査請求日】2016年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148818
【氏名又は名称】株式会社太平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161975
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】溝口 祥司
(72)【発明者】
【氏名】若尾 誠
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−198005(JP,U)
【文献】 特開昭54−67008(JP,A)
【文献】 実開昭63−77707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視にて四角形状をなす単一層又は複数層で構成される内層材、及び前記内層材の最外表裏面にそれぞれ積層接着されて外層を形成する一対の外層材が湾曲形状をなす湾曲積層材ブロックを構成し、
前記内層材単体の表裏には、その内層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠きが所定間隔で形成され、
前記外層材単体の、前記内層材と向かい合う内面部には、その外層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠きが所定間隔で形成され、
前記湾曲積層材ブロックは、前記内層材の端が前記外層材の端より外側へ配置した状態とされることで前記外層材の端から外向きに突出した前記内層材の部位を凸部としたもの、及び前記内層材の端が前記外層材の端より内側へ配置した状態とされることで前記外層材間に形成された隙間を凹部としたものを備え、
前記湾曲積層材ブロック同士の前記凸部と前記凹部とが互いに嵌合可能とされていることを特徴とする湾曲積層材ブロック。
【請求項2】
前記外層材と、その外層材と同じ大きさの前記内層材とがずらされて重ね合った状態とされることで、前記外層材から外向きに突出した前記内層材の部位を前記凸部として有する一方、前記凸部の形成に伴い前記外層材間に形成された隙間を前記凹部として有する請求項1に記載の湾曲積層材ブロック。
【請求項3】
前記外層材と、その外層材より大きな前記内層材とが重ね合った状態とされることで、前記外層材から外向きに突出した前記内層材の部位を前記凸部として有するもの、又は前記外層材と、その外層材より小さな前記内層材とが重ね合わせた状態とされることで、前記外層材間に形成された隙間を前記凹部として有するものを含む請求項1に記載の湾曲積層材ブロック。
【請求項4】
前記内層材単体の表裏又は前記外層材単体の内面部であって、前記曲げ方向に延びる両側面の内側近傍には、前記内層材切欠き及び前記外層材切欠きより幅広かつ浅い溝深さを有し、かつ前記曲げ方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる内層材溝又は外層材溝が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の湾曲積層材ブロック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された前記湾曲積層材ブロック同士の前記凸部と前記凹部とを嵌合することで、連結された前記外層材同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁が形成されることを特徴とする構造壁の製造方法。
【請求項6】
平面視にて四角形状をなす単一層又は複数層の内層材、及び前記内層材の最外表裏面にそれぞれ積層接着されて外層を形成する一対の外層材が湾曲形状をなす湾曲積層材ブロックの製造方法であって、
前記内層材単体の表裏に、その内層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠きを所定間隔で形成する内層材切欠き形成工程と、
前記外層材単体の、前記内層材と向かい合う内面部に、その外層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠きを所定間隔で形成する外層材切欠き形成工程と、
前記内層材切欠きを有する内層材と前記外層材切欠きを有する外層材とを、前記内層材の端を前記外層材の端より外側へ配置することで前記外層材の端から外向きに突出した前記内層材の部位を凸部として形成し、前記内層材の端を前記外層材の端より内側へ配置することで前記外層材間に形成された隙間を凹部として形成する平板積層材ブロック形成工程と、
形成された平板積層材ブロックを固定型上に載置し、その平板積層材ブロックを可動型により押圧して所定の湾曲形状に曲げ加工する平板積層材ブロック曲げ工程と、
を含むことを特徴とする湾曲積層材ブロックの製造方法。
【請求項7】
前記平板積層材ブロック形成工程は、前記外層材と同じ大きさの前記内層材をずらして重ね合わせることで、前記外層材から外向きに突出した前記内層材の部位を前記凸部として形成する一方、前記凸部の形成に伴い前記外層材間に形成された隙間を前記凹部として形成する請求項6に記載の湾曲積層材ブロックの製造方法。
【請求項8】
前記平板積層材ブロック形成工程は、前記外層材より大きな前記内層材を重ね合わせることで、前記外層材から外向きに突出した前記内層材の部位を前記凸部として形成し、前記外層材より小さな前記内層材を重ね合わせることで、前記外層材間に形成された隙間を前記凹部として形成する請求項6に記載の湾曲積層材ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲積層材ブロック及びその製造方法、並びに湾曲積層材ブロックを用いた構造壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面層及び内層をそれぞれ集成材により形成した木質ブロックが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この木質ブロックでは、表面層に対し内層をずらして重ね合わせることにより、側面突起や上面突起を形成する一方、側面溝や下面溝を形成するようにしている。そして、木質ブロック同士の側面突起と側面溝とを嵌合し、また上面突起と下面溝とを嵌合することで、木質ブロック同士を左右上下に連結して垂直な構造壁を形成することができる。
また、挽材からなる芯材の表面及び裏面にそれぞれ表板、裏板としての単板を接着積層した合板において、芯材の表裏面に木理方向と平行する数個の切込み溝を木理方向の全長にわたって形成したものが知られている(例えば、下記特許文献2参照)。切込み溝は、合板における木理方向の反りや捩れを防止するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−302810号公報
【特許文献2】実開昭54−10986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には、個々の木質ブロックを曲げ加工して用いるという技術思想については何も開示されていない。特に上記特許文献1に記載の木質ブロックは、表面層及び内層の少なくとも1層の木質繊維の方向を重力負担方向に配置することを特徴とするものであるから、個々の木質ブロックをその長手方向に曲げると、木質繊維に沿って割れが発生しやすいという問題があった。この場合、上記特許文献2に記載の切込み溝は、合板における木理方向の反りや捩れを防止するためのものであるから、上記特許文献1に記載の木質ブロックの曲げを容易化するために、上記特許文献2に記載の切込み溝を用いる発想に至ることは当業者にとって決して容易とは言えない。
【0005】
本発明の課題は、曲げても割れが発生しにくい湾曲積層材ブロック及びその製造方法、並びに湾曲積層材ブロックを用いた構造壁の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の湾曲積層材ブロックは、
平面視にて四角形状をなす単一層又は複数層で構成される内層材、及び前記内層材の最外表裏面にそれぞれ積層接着されて外層を形成する一対の外層材が湾曲形状をなす湾曲積層材ブロックを構成し、
前記内層材単体の表裏には、その内層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠きが所定間隔で形成され、
前記外層材単体の、前記内層材と向かい合う内面部には、その外層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠きが所定間隔で形成され、
前記湾曲積層材ブロックは、前記内層材の端が前記外層材の端より外側へ配置されることで前記外層材の端から外向きに突出した前記内層材の部位により凸部が形成されるもの、及び前記内層材の端が前記外層材の端より内側へ配置されることで前記外層材間に形成された隙間により凹部が形成されるものを備え、
前記湾曲積層材ブロック同士の前記凸部と前記凹部とが互いに嵌合可能とされていることを特徴とする。
また、本発明の湾曲積層材ブロックの製造方法は、
平面視にて四角形状をなす単一層又は複数層の内層材、及び前記内層材の最外表裏面にそれぞれ積層接着されて外層を形成する一対の外層材が湾曲形状をなす湾曲積層材ブロックの製造方法であって、
前記内層材単体の表裏に、その内層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠きを所定間隔で形成する内層材切欠き形成工程と、
前記外層材単体の、前記内層材と向かい合う内面部に、その外層材単体の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向と交差する方向に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠きを所定間隔で形成する外層材切欠き形成工程と、
前記内層材切欠きを有する内層材と前記外層材切欠きを有する外層材とを、前記内層材の端が前記外層材の端より外側へ配置されるようにして前記外層材の端から外向きに突出した前記内層材の部位を凸部とするもの、及び前記内層材の端が前記外層材の端より内側へ配置されるようにして前記外層材間に形成された隙間を凹部とするものを備える平板状の積層材ブロックを形成する平板積層材ブロック形成工程と、
形成された平板積層材ブロックを固定型上に載置し、その平板積層材ブロックを可動型により押圧して所定の湾曲形状に曲げ加工する平板積層材ブロック曲げ工程と、を含むことを特徴とする。
ここで、「内層材」及び「外層材」は、挽き板や小角材を繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さや幅、長さの方向に接着接合して所定の板状に形成した集成材の他、単板積層材(繊維方向が直交する単板を用いた場合を含む)等を含む意である。そして、「湾曲積層材ブロック」は、そのような「内層材」及び「外層材」が積層接着されて構造壁の一要素としてのブロックとして機能するものである。この構造壁は、建築物の壁として機能する部位のみならず、天井や床として機能する部位を含む意である。
【0007】
本発明の湾曲積層材ブロックにおいて、湾曲積層材ブロックを構成する内層材には曲げ方向と交差する方向に内層材切欠きが形成され、外層材には曲げ方向と交差する方向に外層材切欠きが形成されている。このため、湾曲積層材ブロックを曲げ方向へ曲げるとき、所定の曲率に曲げ加工することが極めて容易である。この場合、内層材単体の表裏のいずれにも内層材切欠きが形成されているので、湾曲積層材ブロックは上側に凸(下側に凹)、あるいは下側に凸(上側に凹)となるように凹凸いずれの曲げにも対応可能である。また、湾曲積層材ブロックは、内層材の端が外層材の端より外側へ配置した状態とされることで外層材の端から外向きに突出した内層材の部位を凸部としたもの、及び内層材の端が外層材の端より内側へ配置した状態とされることで外層材間に形成された隙間を凹部としたものを備える。したがって、湾曲積層材ブロックを予め複数用意しておくことにより、湾曲積層材ブロック同士の凸部と凹部を嵌合するだけで、構造壁を簡易に製造することが可能である。
【0008】
また、本発明の湾曲積層材ブロックの製造方法によれば、固定型と可動型とにより平板積層材ブロックを押圧して曲げ加工するように構成されている。したがって、上記内層材切欠き及び外層材切欠きの形成と相まって、湾曲積層材ブロックを簡易に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例1に係る湾曲積層材ブロックの一例を示す模式図。
図2図1の湾曲積層材ブロックを形成する前の、初期状態での内層材及び外層材の一例を示す模式図。
図3図2の内層材及び外層材を形成するための集成材を構成する挽き板や小角材を示す模式図。
図4】湾曲積層材ブロックの製造工程を示すフローチャート。
図5】(a)は固定型と可動型間に平板積層材ブロックを搬入する工程を示す説明図。(b)は平板積層材ブロックを押圧して曲げ加工する工程を示す説明図。
図6】(a)は本実施例1に係る別の湾曲積層材ブロックの一例を示す正面図。(b)は(a)の平面図。
図7】(a)は本実施例1に係る別の湾曲積層材ブロックの一例を示す正面図。(b)は(a)の平面図。
図8図1図6及び図7の湾曲積層材ブロックにより形成された構造壁の一例を示す模式図。
図9】(a)は本実施例1に係る別の湾曲積層材ブロックの一例を示す正面図。(b)は(a)の平面図。
図10図6及び図9の湾曲積層材ブロックにより形成された構造壁の一例を示す模式図。
図11】(a)は本実施例2に係る湾曲積層材ブロックの一例を示す正面図。(b)は(a)の平面図。
図12図11の湾曲積層材ブロックにより形成された構造壁の一例を示す模式図。
図13】(a)は本実施例1,2の変形例に係る内層材(初期状態)の一例を示す模式図。(b)は本実施例1,2の変形例に係る外層材(初期状態)の一例を示す模式図。(c)は(a)と(b)を重ね合わせた状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1を構成する湾曲積層材ブロック1Aを示す。湾曲積層材ブロック1Aは、単一層で構成される内層材2と、同じく単一層で構成され、内層材2の最外表裏面にそれぞれ接着されて外層を形成する一対の外層材3とを備える。なお、内層材2及び外層材3は単一層に限らず、複数層で構成してもよい。
【0012】
内層材2及び外層材3は、図2に示すような初期状態(曲げ加工前の状態)で平板形状の内層材20及び外層材30を所定の態様で重ね合わせ、曲げ方向L1に一体的に曲げて上側に凸(下側に凹)、あるいは下側に凸(上側に凹)となるようにブロック全体が湾曲形状を呈するものである。
【0013】
内層材20及び外層材30は、同じ大きさの長方形の板材(集成材の集合物)で形成されている。図2には、板材の繊維方向が長手方向、すなわち曲げ方向L1となるように設定された外層材30が例示され、板材の繊維方向が幅方向、すなわち曲げ方向L1と直交する直交方向L2となるように設定された内層材20が例示されている。ただし、内層材20及び外層材30において、繊維方向は適宜変更可能である。なお、一般的な内層材20及び外層材30の外形寸法を一例として挙げれば、幅900mm×長さ1200mm×厚み30mmである。また、「同じ大きさ」とは、内層材20と外層材30とが完全に一致する場合に限らず、幅と長さについては0〜100mm程度、厚みについては0〜10mm程度の寸法差がある場合を含む意である。
【0014】
内層材20は、例えば図3に示すような原木Wから製材されたラミナとしての挽き板21や小角材22からなる集成材で構成されている。図2には、挽き板21と小角材22が幅はぎ(幅方向に接着)により一体化された集成材が例示されている。
【0015】
内層材20の表裏20a,20bには、その厚みに達しない程度の深さを有し、かつ直交方向L2に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠き23が所定の等間隔(30〜70mm程度、好ましくは40〜50mm)で形成されている。内層材切欠き23の幅寸法は、1〜5mm程度、好ましくは2〜4mmに設定されている。内層材切欠き23の深さ寸法tは、内層材20の厚み寸法をTとした場合、0.5T≦t≦0.8T、好ましくは0.6T≦t≦0.7Tに設定されている。したがって、前記一般的な内層材20及び外層材30の外形寸法の一例に当てはめれば、内層材切欠き23の深さ寸法tは、15mm≦t≦24mm、好ましくは18mm≦t≦21mmに設定されることになる。
【0016】
このような内層材切欠き23を設けることにより、板厚な内層材20であっても内層材20を曲げ方向L1に容易に曲げることができる。また、このような内層材切欠き23を内層材20の表裏20a,20bに設けることにより、表裏20a,20bを上下のいずれにした場合でも、曲げ加工のしやすさをほぼ同程度とすることができる。
【0017】
同様に、外層材30は、例えば図3に示すような原木Wから製材されたラミナとしての挽き板31や小角材32からなる集成材として構成されている。図2には、挽き板31と小角材32が幅はぎ(幅方向に接合)により一体化されるとともに、縦継ぎ31a,32a(例えばフィンガージョイントにより繊維方向に接合)により一体化された集成材が例示されている。外層材30の厚み寸法は、内層材20の厚み寸法Tとほぼ同じ長さに設定されている。
【0018】
各外層材30の、内層材20と向かい合う内面部30aには、各外層材30の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ直交方向L2に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の外層材切欠き33が所定の等間隔で形成されている。外層材切欠き33間の間隔や幅寸法、深さ寸法は、それぞれ内層材20での間隔や幅寸法、深さ寸法とほぼ同じ長さに設定されている。このような外層材切欠き33を設けることにより、板厚な外層材30であっても外層材30を曲げ方向L1に容易に曲げることができる。
【0019】
次に、図4のフローチャート及び図5を参照して湾曲積層材ブロック1Aの製造工程について説明する。なお、図5において、木目模様は省略してある。
【0020】
まず、各種集成材を用いてほぼ同じ大きさの長方形状の板材を予め複数用意しておく。それら板材のうち内層材20の表裏20a,20bには、直交方向L2に内層材切欠き23(図2参照)を形成する。一方、内層材20との接着面となる一対の外層材30の内面部30aには、それぞれ直交方向L2に外層材切欠き33を形成する(図2参照、S11)。内層材切欠き23及び外層材切欠き33は、例えば電動丸鋸や横フライス盤に取り付けたメタルソーによる溝加工等によって形成することができる。
【0021】
次に、内層材20を一対の外層材30により接着剤を介して挟むように積層し、図5(a)に示されるような平板積層材ブロック10を形成する(S12)。図5(a)では、内層材20が一対の外層材30に対して、幅方向は揃えたままとしつつ長手方向にのみずらして配置されている。内層材20及び外層材30が同じ大きさであれば、外層材30の長手方向一端から突出した内層材20の部位が第1凸部10a(凸部)として形成される一方、第1凸部10aの形成に伴い外層材30の長手方向他端間に形成された隙間が第1凹部10b(凹部)として形成されることになる。
【0022】
次に、平板積層材ブロック10をプレス装置40内へ搬入する。プレス装置40は、互いに対応した湾曲形状のプレス面を有する固定型41及び可動型42を備える。可動型42は、固定型41に対して上下に移動可能に支持されている。平板積層材ブロック10は、図5(b)に示されるように固定型41と可動型42間にて所定の押圧力により所定時間保持される(S13)。
【0023】
これにより、平板積層材ブロック10が曲げ方向L1に塑性的に曲げられ、プレス装置40による押圧を解除した後の通常時においても湾曲形状が維持される湾曲積層材ブロック1Aを製造することができる。湾曲積層材ブロック1Aは、湾曲形状の内層材2及び一対の外層材3に加え、その長手方向一端側にて第1凸部1aを有し、長手方向他端側にて第1凹部1bを有する。
【0024】
図6図10に本実施例1に係る別の湾曲積層材ブロック1B〜1Dを示す。なお、以下の説明において、湾曲積層材ブロック1Aと同様の機能を果たす部材、部位については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、図6図10において、木目模様は省略してある。
【0025】
図6(a),6(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Bは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向後端側(図示右端側)にて第1凹部1bを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、内層材2及び外層材3の長手方向先端(図示左端)が揃えられ、第1凸部1aを有しないように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より小さな(曲げ方向L1の長さが短い)内層材2を重ね合わせることで、内層材2が未充足のため外層材3間に形成された隙間が第1凹部1b(凹部)として形成されることになる。
【0026】
図7(a),7(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Cは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向先端側(図示左端)にて第1凸部1aを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、内層材2及び外層材3の長手方向後端(図示右端)が揃えられ、第1凹部1bを有しないように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より大きな(曲げ方向L1の長さが長い)内層材2を重ね合わせることで、外層材3から外向きに突出した内層材2の部位が第1凸部1a(凸部)として形成されることになる。
【0027】
そして図8に例示されるように、図示左側から湾曲積層材ブロック1B、湾曲積層材ブロック1A、湾曲積層材ブロック1A、湾曲積層材ブロック1Cをこの順に配置し、隣り合う第1凸部1aと第1凹部1bとを互いに嵌合することで、連結された外層材3同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W1(4個のブロックで一ユニットを構成)を形成することができる。
【0028】
図9(a),9(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック1Dは、湾曲形状の内層材2及び外層材3を有し、かつ長手方向先端側(図示左端)にて第1凸部1aを有する点で湾曲積層材ブロック1Aと共通するが、長手方向後端側(図示右端)にて第1凹部1bの代わりに、第2凸部1cを有するように構成されている点で湾曲積層材ブロック1Aと相違する。この場合、外層材3より大きな(曲げ方向L1の長さが長い)内層材2を重ね合わせることで、外層材3の長手方向先端側と後端側から外向きに突出した内層材2の部位が、それぞれ第1凸部1a(凸部)、第2凸部1c(凸部)として形成されることになる。
【0029】
そして図10に例示されるように、図示左側から湾曲積層材ブロック1B、湾曲積層材ブロック1D、湾曲積層材ブロック1Bをこの順に配置し、隣り合う第1凸部1aと第1凹部1b、第2凸部1cと第1凹部1bとを互いに嵌合することで、連結された外層材3同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W2(3個のブロックで一ユニットを構成)を形成することができる。
【実施例2】
【0030】
図11に本実施例2に係る湾曲積層材ブロック11Aを示し、図12にそれを用いた構造壁W3を示す。なお、図11及び図12において、木目模様は省略してある。
【0031】
図11(a)に示されるように、湾曲積層材ブロック11Aは、ほぼ同じ大きさの長方形の板材(集成材の集合物)を曲げ方向L1に一体的に曲げることで湾曲形状に形成された内層材12及び外層材13を有する点で、上記実施例1に係る湾曲積層材ブロック1Aと共通する。ただし、図11(b)に示されるように、湾曲積層材ブロック11Aでは、内層材12が一対の外層材13に対して、長手方向の一端側のみならず、幅方向の一端側へもずらして配置されている点で、幅方向は揃えたままとしつつ長手方向にのみずらして配置されている湾曲積層材ブロック1Aと相違する。
【0032】
これにより、湾曲積層材ブロック11Aでは、外層材13の長手方向一端から突出した内層材12の部位により第1凸部11aが形成され、外層材13の幅方向一端から突出した内層材12の部位により第2凸部11cが形成される一方、第1凸部11aの形成に伴い外層材30の長手方向他端間に形成された隙間により第1凹部11bが形成され、外層材13の幅方向他端間に形成された隙間により第2凹部11dが形成されている。
【0033】
そして図12(a),12(b)に例示されるように、湾曲積層材ブロック11Aを図示左右上下に配置し、隣り合う第1凸部11aと第1凹部11b、第2凸部11cと第2凹部11dとを互いに嵌合することで、2次元的に連結・展開した外層材13同士によって連続した湾曲面を呈する構造壁W3を形成することができる。
(変形例)
【0034】
上記実施例1,2において、初期状態(曲げ加工前の状態)の内層材20の表裏20a,20bには内層材切欠き23が形成されていたが(図2参照)、これに加えて、例えば図13(a)に示されるように、内層材溝24を形成してもよい。なお、図13(a)において、木目模様の一部は省略してある。
【0035】
内層材溝24は、内層材20の幅方向で向かい合う両側面20c(曲げ方向L1に延びる両側面)からそれぞれ所定距離Dだけ内側に入り込んだ位置に、曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたって形成されている。内層材溝24は、内層材切欠き23に比して幅広かつ浅い溝深さを有するように設定されている。具体的に、内層材溝24の幅寸法及び深さ寸法は、いずれも2〜6mm程度、好ましくは3〜5mmに設定されている。
【0036】
同様に、外層材30の内面部30aには外層材切欠き33が形成されていたが(図2参照)、これに加えて、例えば図13(b)に示されるように、外層材溝34を形成してもよい。なお、図13(b)において、木目模様の一部は省略してある。
【0037】
外層材溝34は、内層材20の内層材溝24と対応するよう、外層材30の幅方向で向かい合う両側面30c(曲げ方向L1に延びる両側面)からそれぞれ所定距離Dだけ内側に入り込んだ位置に、曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたって形成されている。外層材溝34は、外層材切欠き33に比して幅広かつ浅い溝深さを有するように設定されている。具体的に、外層材溝34の幅寸法及び深さ寸法は、それぞれ内層材溝24の幅寸法及び深さ寸法とほぼ同じ長さに設定されている。
【0038】
内層材20及び外層材30を接着剤を介して重ね合わせた場合、接着剤は内層材20及び外層材30の中央部から周囲に押し広げられることとなるが、接着剤のうち長手方向(曲げ方向L1)へ流動するものは内層材切欠き23や外層材切欠き33内へ流れ込む一方、幅方向(直交方向L2)へ流動するものは内層材溝24や外層材溝34内へ流れ込むようになる(図13(c)参照)。このように内層材溝24や外層材溝34を設けることにより、接着剤が湾曲積層材ブロック1Eの外側へ流れ出すことが良好に防止される。
【0039】
以上の説明からも明らかなように、本実施例1の湾曲積層材ブロック1A〜1Eにおいて、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを構成する内層材2には曲げ方向L1と交差する直交方向L2に内層材切欠き23が形成され、外層材3には曲げ方向L1と交差する直交方向L2に外層材切欠き33が形成されている。このため、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを曲げ方向L1へ曲げるとき、所定の曲率に曲げ加工することが極めて容易である。この場合、内層材2単体の表裏20a,20bのいずれにも内層材切欠き23が形成されているので、湾曲積層材ブロック1A〜1Eは上側に凸(下側に凹)、あるいは下側に凸(上側に凹)となるように凹凸いずれの曲げにも対応可能である。
【0040】
また、湾曲積層材ブロック1A〜1Eは、内層材2の端が外層材3の端より外側へ配置した状態とされることで外層材3の端から外向きに突出した内層材2の部位を第1凸部1a(凸部)、第2凸部1c(凸部)としたもの、及び内層材2の端が外層材3の端より内側へ配置した状態とされることで外層材3間に形成された隙間を第1凹部1b(凹部)としたものを備える。したがって、湾曲積層材ブロック1A〜1Eを予め複数用意しておくことにより、湾曲積層材ブロック1A〜1E同士の第1凸部1aと第1凹部1b、あるいは第2凸部1cと第1凹部1bを嵌合するだけで、構造壁W1,W2を簡易に製造することができる。
【0041】
同様に、湾曲積層材ブロック11Aは、内層材12の端が外層材13の端より外側へ配置した状態とされることで外層材13の端から外向きに突出した内層材12の部位を第1凸部11a(凸部)、第2凸部11c(凸部)としたもの、及び内層材12の端が外層材13の端より内側へ配置した状態とされることで外層材13間に形成された隙間を第1凹部11b(凹部)、第2凹部1d(凹部)としたものを備える。したがって、本実施例2の湾曲積層材ブロック11Aを予め複数用意しておくことにより、湾曲積層材ブロック11A同士の第1凸部11aと第1凹部11b、第2凸部11cと第2凹部11dを嵌合するだけで、構造壁W3を簡易に製造することができる。
【0042】
また、本実施例1,2の湾曲積層材ブロック1A〜1E,11Aの製造方法によれば、固定型41と可動型42とにより平板積層材ブロック10を押圧して曲げ加工するように構成されている。したがって、内層材切欠き23及び外層材切欠き33の形成と相まって、湾曲積層材ブロック1A〜1E,11Aを簡易に製造することができる。
【0043】
また、上記実施例1,2の変形例では、内層材20単体の表裏20a,20b及び外層材30単体の内面部30aであって、曲げ方向L1に延びる両側面20c,30cの各内側近傍には、内層材切欠き23及び外層材切欠き33より幅広かつ浅い溝深さを有し、かつ曲げ方向L1に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる内層材溝24及び外層材溝34が形成されている。これにより、内層材20及び外層材30を接着剤を介して重ね合わせた場合、接着剤が湾曲積層材ブロック1Eの外側へ流れ出すことを良好に防止できる。なお、内層材溝24及び外層材溝34のうち少なくとも一方は省略することが可能である。
【0044】
その他、本発明は上記実施例1,2及びその変形例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1A〜1E,11A 湾曲積層材ブロック
1a,11a 第1凸部(凸部)
1c,11c 第2凸部(凸部)
1b,11b 第1凹部(凹部)
11d 第2凹部(凹部)
10 平板積層材ブロック
2,12 内層材(湾曲形状)
3,13 外層材(湾曲形状)
20 内層材(平板形状)
20a,20b 表裏
20c,30c 両側面
23 内層材切欠き
24 内層材溝
30 外層材(平板形状)
30a 内面部
33 外層材切欠き
34 外層材溝
40 プレス装置
41 固定型
42 可動型
L1 曲げ方向
L2 直交方向
W1〜W3 構造壁
【要約】
【課題】曲げても割れが発生しにくい湾曲積層材ブロック及びその製造方法、並びに湾曲積層材ブロックを用いた構造壁の製造方法を提供する。
【解決手段】
湾曲積層材ブロック1Aは、平面視にて四角形状をなす内層材2及び一対の外層材3を備える。内層材2の表裏20a,20b及び外層材3の内面部30aには、それぞれ各板材の厚みに達しない程度の深さを有し、かつ曲げ方向L1と交差する方向L2に一方の端面から他方の端面までの全長にわたる複数の内層材切欠き23、外層材切欠き33が等間隔で形成される。内層材2の端が外層材3の端より外側へ配置されることで外層材3の端から外向きに突出した内層材2の部位が第1凸部1a(凸部)とされる。内層材2の端が外層材3の端より内側へ配置されることで外層材3間に形成された隙間が第1凹部1b(凹部)とされる。湾曲積層材ブロック1A同士の第1凸部1aと第1凹部1bとが互いに嵌合可能とされる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13