(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939779
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】骨固定装置および多軸骨固定装置の旋回角度を調節するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/68 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
A61B17/58 310
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-268930(P2011-268930)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2012-125569(P2012-125569A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】10194787.7
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/422,538
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート・マティス
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヘーグレ
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−515552(JP,A)
【文献】
特表2007−516808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68 ― 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定装置であって、
骨または脊椎に固定されるよう構成される、ヘッド(3)およびシャフト(2)を有する骨固定要素(1)と、
前記骨固定要素を安定化要素(100)に結合するための受入部(4)とを含み、前記受入部は、
上端部(4a)および底端部(4b)と、前記上端部から前記底端部へと延在するとともに穴軸(C)を有する穴(9)と、
前記安定化要素を受け入れるための凹部(10)とを有し、前記凹部は前記穴(9)と連通し、前記骨固定装置はさらに、
前記穴(9)の中に配されるとともに前記穴軸の周りを回転可能であるシート部材(5)を含み、前記シート部材は、前記ヘッドを旋回可能に保持するためのシートを形成し、
前記シート部材は、前記穴軸(C)に対する一方の側に対して、他方の側と比較して前記骨固定要素のより大きな旋回角度を可能にするよう構成され、前記骨固定装置はさらに、
前記ヘッドに圧力をかけるよう前記ヘッドに接触する圧力部材(6)を含み、前記圧力部材(6)は前記シート部材の角度調整を可能にするよう前記シート部材(5)に接続され、
前記圧力部材(6)は、回転力を前記シート部材(5)に伝達するよう前記シート部材に接続される、骨固定装置。
【請求項2】
前記圧力部材(6)は前記シート部材(5)に対して軸方向に移動可能である、請求項1に記載の骨固定装置。
【請求項3】
前記シート部材(5)は、前記受入部(4)において停止部(13)に当接する、請求項1または2に記載の骨固定装置。
【請求項4】
前記シート部材(5)は少なくとも部分的に球状の内面(16a)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項5】
前記シート部材(5)は前記底端部(4b)にて、少なくとも部分的に前記受入部(4)から突出する、請求項1から4のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項6】
前記シート部材は、拡大された旋回角度を一方の側に対して与えるよう傾斜した下側縁部(16c)を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項7】
前記圧力部材(6)および前記シート部材(5)は形状嵌合接続を介して接続され、前記圧力部材(6)が前記シート部材(5)に対して軸方向に摺動可能であり、かつ、前記圧力部材(6)から前記シート部材(5)に回転力を伝達可能なように、前記圧力部材(6)の内表面および前記シート部材(5)の外表面が互いに係合する、請求項1から6のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項8】
前記シート部材(5)は、前記圧力部材(6)にて対応する突出部(21)または凹部と係合する少なくとも1つの軸方向凹部(18)または突出部を含む、請求項5に記載の骨固定装置。
【請求項9】
前記圧力部材は、ドライバとの係合のための係合部分(22)を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項10】
前記係合部分は、圧力部材において、前記ヘッド(3)から離れる側に設けられる、請求項9に記載の骨固定装置。
【請求項11】
前記シート部材(5)は円筒部(15)を有し、前記圧力部材(6)は円筒部を有し、これらの円筒部は互いに対して軸方向に移動可能であるが回転方向には固定される、請求項1から10のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項12】
前記圧力部材(6)は第1の圧力部材であり、第2の圧力部材(7)が前記受入部において前記第1の圧力部材の上に設けられ、前記第2の圧力部材(7)は前記安定化要素(100)をガイドするための凹部(23)を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項13】
前記ヘッドが前記シート部材(5)にロックされる状態において、前記第2の圧力部材は前記シート部材に触れることなく前記第1の圧力部材(6)を押す、請求項12に記載の骨固定装置。
【請求項14】
前記第2の圧力部材は前記第1の圧力部材(6)に対して回転可能である、請求項12または13に記載の骨固定装置。
【請求項15】
前記第2の圧力部材(7)は、前記受入部(4)において回転しないように固定される、請求項12に記載の骨固定装置。
【請求項16】
前記安定化要素のための前記凹部(10)はU字型である、請求項1から15のいずれか1項に記載の骨固定装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置の旋回角度を調節するための方法であって、
前記シート部材または前記受入部(4)を支持装置(30)において支持するステップと、
拡大された旋回角度の向きを調節するよう前記シート部材(5)に対して前記受入部(4)を回転させるステップとを含む、方法。
【請求項18】
前記シート部材(5)は前記支持装置(30)において形状嵌合の態様で凹部(32a)内に支持され、前記圧力部材(6)が前記シート部材(5)に対して軸方向に摺動可能であり、かつ、前記圧力部材(6)から前記シート部材(5)に回転力を伝達可能なように、前記圧力部材(6)の内表面および前記シート部材(5)の外表面が互いに係合する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨固定装置に関する。この骨固定装置は、骨または脊椎における固定のための骨固定要素と、骨固定要素を脊柱ロッドといった安定化要素に結合するための受入部とを含み、骨固定要素は受入部内で旋回可能であり、かつ拡大された旋回角度で少なくとも一方の側へ旋回可能である。
【背景技術】
【0002】
このタイプの骨固定装置は、US6,736,820に記載される。当該骨固定装置は、骨ねじと受入部とを含む。受入部は、開口している第1の穴と、ロッドを受け入れるための実質的にU字型の断面と、第1の穴とは反対側の端部上の第2の穴と、ヘッドのためのシートとを有する。ねじ部材が拡大された角度で少なくとも一方の側に対して旋回され得るように、第2の穴の自由端と境界を接する縁部は、非対称的な構造となっている。修正された実施例では、ヘッドのためのシートとして、球状の底部を有する挿入片が設けられる。これは、拡大された旋回角度の向きの変更を可能にする。
【0003】
US2005/0154391A1は、骨固定部および受入部材を有する骨固定アセンブリを記載する。受入部材は、第1の穴軸を規定する第1の穴を有する第1のセクションと、第2の穴軸を規定する第2の穴を有するとともに骨固定部の少なくとも一部を受け入れるようサイズ決めされる第2のセクションとを有する。第2の穴軸は第1の穴軸と交差する。第2のセクションは第1の穴軸の周りを回転可能である。ある実施例では、第2のセクションは第1のセクションの内部に収容される。
【0004】
第2のセクションが第1のセクションに対して回転可能であるので、隣接した椎骨の近接近による干渉を回避するよう互いに整列状態から離れるように骨固定部を旋回することが可能である。
【0005】
他の多軸骨固定部がUS2007/0118123A1に記載される。この骨固定部ではロック要素が設けられる。このロック要素は、ねじまたはフックのような固定部材が、当該固定部材を固定ヘッド内に圧縮ロックする前に、大きな角度で骨固定部の中心軸の周りを多軸的に回転することを可能にするよう形状決めおよび構成される。
【0006】
上述した骨固定装置では、ねじ部材が部分的または完全に骨の中にねじ込まれると、ねじが拡大された旋回角度を有する位置を調節することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US6,736,820B2
【特許文献2】US2005/0154391A1
【特許文献3】US2007/0118123A1
【特許文献4】US2008/0177260A1
【特許文献5】US2010/0145394A1
【特許文献6】US2010/0152787A1
【特許文献7】US2010/0204735A1
【特許文献8】US2010/0298891A1
【特許文献9】US2007/0270842A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、骨固定要素の拡大された旋回角度の方向の調節を促進する骨固定装置の改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の骨固定装置によって解決される。さらなる発展例が従属項において与えられる。
【0010】
この骨固定装置は、旋回方向が任意の所望の方向に調節されるように、受入部の上端部から挿入されるドライバにより、ねじのヘッドを保持するシート部材を回転することを可能にする。ドライバの向き、たとえばドライバのハンドルの向きは、シート部材の向きを正確に示すものとして用いられ得る。したがって、手術の間、拡大された旋回角度の方向を調節することが可能である。
【0011】
シート部材を固定する単一の支持ブロックを用い、次いで受入部をシート部材に対して回転させることにより、シート部材の向きを事前に調節することもさらに可能である。
【0012】
シート部材におけるヘッドのロックは、上方からヘッドにかけられる圧力によって行われ、次いで当該ヘッドはシートに対して押し当てられる。したがって、ヘッドのロックは安全かつ予測可能な態様で行われる。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面により実施例の記載から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ある実施例に従った、脊柱ロッドを有する骨固定装置の分解斜視図を示す図である。
【
図2】ロッドおよび固定ねじなしで組付状態にある
図1の骨固定装置を示す図である。
【
図3】ロッド軸に対して垂直に取られた、
図1の骨固定装置の断面図を示す図である。
【
図4】ロッド軸に沿った、
図1の骨固定装置の断面図を示す図である。
【
図5】骨固定装置のシート部材の斜視図を示す図である。
【
図7】
図6における線A−Aに沿った、シート部材の断面図を示す図である。
【
図8】骨固定装置の第1の圧力部材の斜視図を示す図である。
【
図9】
図8の第1の圧力部材の上面図を示す図である。
【
図10】
図8の第1の圧力部材の側面図を示す図である。
【
図11】
図10の線B−Bに沿った、第1の圧力部材の断面図を示す図である。
【
図12】骨固定装置の第2の圧力部材を下から見た斜視図を示す図である。
【
図14】
図13の線C−Cに沿った、第2の圧力部材の断面図を示す図である。
【
図15】骨固定要素、シート部材、および第1の圧力部材の断面図を示す図である。
【
図16】骨固定要素、シート部材、および第1の圧力部材を含むアセンブリの斜視図を示す図である。
【
図17a)】第1の実施例に従った骨固定装置の使用のステップを示す図である。
【
図17b)】第1の実施例に従った骨固定装置の使用のステップを示す図である。
【
図17c)】第1の実施例に従った骨固定装置の使用のステップを示す図である。
【
図18a)】方法の第1の例に従って、受入部に対してシート部材を調節するステップを示す図である。
【
図18b)】方法の第1の例に従って、受入部に対してシート部材を調節するステップを示す図である。
【
図18c)】方法の第1の例に従って、受入部に対してシート部材を調節するステップを示す図である。
【
図19】受入部に対してシート部材を調節するための支持ブロックの上面図を示す図である。
【
図20】ロッド軸に沿った、骨固定装置が挿入された状態である支持ブロックの断面図を示す図である。
【
図21】挿入ツールとともに骨固定装置の斜視図を示す図である。
【
図23】骨固定装置と、挿入ツールについての別の例の部分との斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および
図2に示されるように、ある実施例に従った骨固定装置は、ねじ山付シャフト2およびヘッド3を有する骨ねじの形態にある骨固定要素1を含む。ヘッド3は典型的には、球状に形状決めされ、ドライバとの係合のための凹部3aを有する。ヘッド3は、骨固定要素1を安定化ロッド100に結合する受入部4内に保持される。受入部4では、骨固定要素1のヘッド3のためにシートを提供するシート部材5と、圧力を骨固定要素のヘッド3上にかけるための第1の圧力部材6および第2の圧力部材7とが配される。さらに、固定ねじ8の形態にある固定要素は、ロッド100を受入部4内に固定するために設けられる。骨固定装置が組み付けられるが骨固定要素の角度位置がまだ固定されていないときは、骨固定要素1は、受入部4内のシート部材5の位置に依存して、
図2の矢印によって示されるように無制限の数の方向に拡大された旋回角度で旋回し得る。
【0016】
図1〜
図4を参照して、受入部4を説明する。受入部4は上端部4aおよび底端部4bと、中心軸Cと、上端部4aから底端部4bに延在する同軸穴9とを有する。上端部4aに隣接して、実質的にU字型の凹部10が設けられる。凹部10は、ロッド100を受け入れるためのチャネルを形成する。凹部10により、2つの自由な脚部11a、11bが形成される。これらの脚部11a、11bには、固定ねじ8と協働する雌ねじ12が設けられる。底端部4bの近傍の穴9の下部では、シート部材5が底端部4bにて開口部14を通って外れるのを防止するために、環状縁部の形態にある停止部13が設けられる。なお、穴9は図面に示す穴の特定の形状に限定されず、異なる直径を有する異なる部分を有し得る。
【0017】
シート部材5を
図5から
図7に詳細に示す。シート部材5は中空の円筒状の第1の部分15を含む。第1の部分15の内径は、球状に形状決めされたヘッド3の最大部直径よりも若干大きく、その外径は穴9の内径よりも若干小さい。そのため、シート部材5は穴9内に挿入可能である。第1の部分15の軸方向の長さは、ヘッド3がシート部分16内に存在しているとき、第1の部分15がヘッド3の上方に突出するような長さである。第1の部分15に隣接して、シート部材5は中空の第2の部分16を含む。第2の部分16は、球状に形状決めされたヘッド3のためにシートを提供するための球状に形状決めされた内面16aを有する。第2の部分16の外面16bも球状に形状決めされており、第1の中空の円筒部15の外径よりも小さい外径を有する。
【0018】
特に
図7において分かり得るように、第2の部分16はシリンダ軸Zを含む面に対して非対称的である。これは、下側縁部16cが角度αで中空の円筒状の第1の部分15に対して傾斜することで達成される。これにより、ねじ要素1は、シート16aに存在する場合、シリンダ軸Zに対して一方の側に、反対側と比較してより大きな角度で旋回し得る。なお、ねじ要素の旋回角度が一方の側に対して約10°となり得るとともに、反対側に対して約40°〜約50°となり得るように部材5がサイズ決めされ得る。同時に、旋回角度の大きさは、ヘッドがシート部材において適切な支持を有する範囲に限定される。第2の部分16は示される構成に限定されない。たとえば、中空の球状に形状決めされた部分における切欠により非対称を作り出し、これによりシャンクが当該切欠を通ってのみ旋回し得る。内面16aは、球状に形状決めされた表面であるように示される。しかしながら内面16aは、たとえばヘッド3からの落下を防止するようサイズ決めされた任意の先細り形状のような他の形状を有し得る。
【0019】
シート部材5は、第1の部分15の内壁上に複数の同軸凹部18をさらに含む。同軸凹部18は、第1の部分15の自由端に対して開口し、第1の部分15の下側端部から距離を開けて終端する。凹部18は、第1の圧力要素6上の対応する突出部とのフォームロック係合(form locking engagement)のために設けられる。凹部18の数および形状は、図に示される凹部の数および形状に限定されない。たとえば、第1の圧力要素6とシート部材5との間のフォームロック接続には凹部が1つだけ必要である。
【0020】
特に
図3および
図4において分かり得るように、シート部材5は、受入部4内に挿入されて穴9に沿って下方向に動かされると、受入部の環状縁部13上に当接する。シート部材の第2の部分16の少なくとも一部は、受入部の下側の開口部14から延在する。シート部材5は、受入部4内で回転可能である。そのため、傾斜した縁部16cは、U字型の凹部10に対して任意の位置を取り得る。その結果、固定要素1の拡大された旋回角度を有する位置が、U字型の凹部10に対して、したがってロッド軸Lに対して任意の向きを取り得る。
【0021】
ここで、
図8〜
図11を参照して第1の圧力部材6を具体的に説明する。第1の圧力部材6は、実質的に中空の円筒部19を有する。円筒部19の外径は、
図3および
図4において分かり得るように、第1の圧力部材6がシート部材5の第1の部分15内に挿入され得るとともにシート部材に対して軸方向に移動可能であるように、シート部材の第1の中空の円筒部15の内径よりも若干小さいだけである。第1の圧力部材6は、ヘッド3に面する側上に凹部20を有する。凹部20はこの実施例では、第1の圧力部材6が圧力をヘッド3にかけ得るようにヘッド3の直径に適合された内径を有する球状に形状決めされた凹部である。第1の圧力部材6は、挿入されると、ヘッド3上に載る。第1の圧力部材6は、
図3および
図4において分かり得るように、シート部材5の上方に突出する軸方向の長さを有する。円筒部19の外面では、同軸に延在する複数の突出部21が設けられる。これらの突出部21は、シート部材5の凹部18と係合して、第1の圧力部材とシート部材との間のフォームロック接続を形成する。シート部材要素での凹部18はさらに、第1の圧力部材の軸方向の移動のためのガイドを形成する。それぞれシート部材の内面および第1の圧力部材の外面における複数の凹部および突出部の代わりに、第1の圧力部材からシート部材への回転力の伝達を可能にする、シート部材と第1の圧力部材との間の任意の他の接続が考えられ得る。突出部21は、上端部から距離を開けて終端し、シート部材5の対応する凹部18との係合を促進するよう面取り部21aを含み得る。
【0022】
第1の圧力
部材は、凹部20とは反対の端部上において、ドライバとの係合のための係合構造22を含む。この示される実施例では、係合構造22は六角形の凹部である。
【0023】
図12〜
図14を参照して、第2の圧力部材7を説明する。第2の圧力要素7は実質的に円筒状であり、ヘッド3とは反対側上に円筒状に形状決めされた凹部23を含む。凹部23は、ロッド100を内部でガイドするようサイズ決めされる。凹部23により、2つの脚部24a、24bが形成される。第2の圧力部材は、凹部23とは反対側上に同軸の凹部25を含む。凹部25は、第2の圧力部材が第1の圧力部材の円筒部19上に載り得るようにサイズ決めされる。第2の圧力部材7はさらに、第1の圧力部材にドライバで到達可能となるよう浅い同軸の穴26を含む。脚部24a、24bの外壁上には、2つの同軸の凹部27a、27bが形成される。凹部27a、27bは、上側に対して開口し、底側に対して閉じている。これにより第2の圧力部材7は、たとえば
図3に示されるように受入部に設けられるピン28a、28bによって、回転するのが防止されるとともに受入部4の上端部4aを通って外れるのが防止される。
【0024】
第2の圧力
部材は、挿入されると、シート部材5と第2の圧力
部材7との間にギャップ29が存在するような態様で、第1の圧力
部材に当接する。そのため、第2の圧力
部材7はシート部材5を押さない。
【0025】
図15および
図16に示されるように、第1の圧力
部材6とシート部材5との間のフォームロック接続は、シート部材5が第1の圧力
部材6とともに回転するように、凹部22にて第1の圧力
部材をシート部材5に係合させるドライバがかける回転力を伝達することを可能にする。第1の圧力部材6とシート部材5との間のフォームロック接続
(すなわち形状嵌合接続)は、第1の圧力部材がシート部材に対して軸方向に摺動し得るような接続であるので、第2の圧力
部材が第1の圧力
部材に圧力をかけてヘッド3をシート部材5に押し付け得る。
【0026】
骨固定装置は全体または一部が生体適合性材料から形成される。この生体適合性材料は、チタン、ステンレススチールのような生体適合性の金属、ニチノールなどの生体適合性の合金、またはたとえば医療グレードのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような生体適合性のプラスチック材料である。骨固定装置の部分は、すべて同じ材料からなり得るか、または異なる材料からなり得る。
【0027】
骨固定装置の使用のステップを
図17a)−
図17c)に示す。骨固定装置は、シート部材5、骨固定要素1、第1の圧力
部材6、および第2の圧力
部材7が受入部4に挿入され、たとえばピン28a、28bにより、落下しないように固定されるとともに、第2の圧力
部材7が回転しないように固定されるような態様で事前に組み付けられてもよい。この状態において、第2の圧力
部材要の円筒状に形状決めされた凹部23は、受入部のU字型の凹部12に対して整列される。シート部材は受入部の環状縁部13上に当接する。事前に組み付けられた状態では、ヘッド3がシート部材5内で自由に旋回し得る。次のステップでは、骨固定要素1は骨部分または脊椎にねじ込まれる。通常、複数の骨固定要素が用いられ、ロッド100を介して接続される。ロッド100の挿入前に、ヘッド3に対して受入部を旋回することにより、受入部は整列される。拡大された旋回角度を有する所望の方向に鑑みてシート部材5の位置を調節するよう、第1の圧力
部材6はドライバを用いて回転される。シート部材5は、第1の圧力部材6に強固に接続されているので、第1の圧力部材6とともに回転する。次いで、
図17b)に示されるように、ロッドが挿入される。次に、
図17c)に示されるように、固定ねじ8が、受入部の脚部同士の間にねじ込まれ、第1の圧力
部材を押す第2の圧力
部材7をロッド100が押すように締められる。これによりシート部材5にヘッドをロックする。同時に、シート部材が環状縁部13に対して押され、これによりその回転位置に固定される。
【0028】
実施例の修正例が考えられる。たとえば、第2の圧力
部材を省略し、ロッドで第1の圧力
部材上を直接的に押すことも可能である。さらなる修正例では、第2の圧力
部材はロッドの上を延在する脚部を有し、固定要素8は、第2の圧力
部材に作用する外ねじと、ロッドに作用する内ねじとを有する二部分固定要素である。さらなる修正例では、骨釘、他のタイプの骨ねじ、カニューレねじなどといった、すべての種類の骨固定部が骨固定要素のために用いられ得る。骨固定要素のヘッドおよびシャフトは、互いに接続可能な別個の部分であってもよい。
【0029】
図18〜
図20は、シート部材5の回転位置を調節するためのツールおよび方法の例を示す。支持ブロック30が設けられる。支持ブロック30は、上面30aから支持ブロック30内へと延在する長手方向の穴31を含む。上面30aにおいて、支持ブロック内へと延在する凹部32が形成される。凹部32は、シート部材5の第2の部分16の外面16bに対応する内面32を有する。したがって、凹部32は非対称的であり、シート部材5の下部16の形状に適合される。
図19および
図20に示されるように、事前に組み付けられる骨固定装置がねじ山付シャフト2により穴31の中に挿入されると、シート部材の第2の部分16は凹部32内に存在することとなり、フォームロック接続によって、その中で回転するのが防止される。
【0030】
骨固定装置が穴31の中に完全に挿入されると、ねじ要素1と第2の圧力
部材7を含む受入部とはシート部材5および第1の圧力
部材6に対して回転可能となる。したがって受入部は、シート部材5が所望の向きを有するように、シート部材および第1の圧力
部材に対して回転され得る。2つの例が
図18bおよび
図18cに示される。
【0031】
支持ブロックを用いる調節は、実際の手術が行われる前になされ得るとともに、シート部材5の事前の方向付けのために機能し得る。シート部材のこの向きを保持するために、
図21および
図22に示される、ねじ部材を骨の中に挿入するための挿入ツールが用いられ得る。挿入ツール50は、一端にハンドル52を有する第1の部分51と、他端に先端部53と、先端部に隣接する、受入部4の脚部上にて雌ねじ12と協働する雄ねじ山部54とを有する。このツールはさらに、受入部のU字型の凹部10を係合させる2つのサイドフランジ55a、55bを有する第2の部分55を有する。第1の部分51は、第2の部分55に対して回転可能である。このツールが骨固定装置に係合すると、第2の部分55はU字型の凹部との係合を通じて受入部を保持し、先端部53は、ねじ山部54が脚部同士の間にねじ込まれると、ねじヘッドを押す。シート部材の向きはこれにより、初荷重によって固定され、シャフトは挿入ツールにより骨の中に挿入され得る。
【0032】
代替的な方法では、骨固定装置は、
図23に示されるツール60により骨の中に挿入され得る。ツール60は、たとえばトルクス(登録商標)ドライブといった簡易なドライブ部61を端部に有する。この場合、シート部材の回転方位は、挿入の間、維持されない。シャフトの挿入の後、第1の圧力
部材における凹部22との係合のために別個のドライバが、上端部からシート部材の回転位置を調節するよう用いられる。当該ドライブには、シート部材の位置を示すものとして機能するよう可視マークが設けられ得る。
【符号の説明】
【0033】
1 骨固定要素、2 ねじ山付シャフト、3 ヘッド、4 受入部、4a 上端部、4b 底端部、5 シート部材、6 圧力部材、9 穴、10 凹部、100 安定化ロッド、C 穴軸。