(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939787
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】締固め治具及び地盤の締固め方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/026 20060101AFI20160609BHJP
E02D 27/26 20060101ALI20160609BHJP
E02D 27/28 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
E02D3/026
E02D27/26
E02D27/28
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-279473(P2011-279473)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129988(P2013-129988A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505181550
【氏名又は名称】株式会社新生工務
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(74)【代理人】
【識別番号】100188411
【弁理士】
【氏名又は名称】阪下 典子
(72)【発明者】
【氏名】神農 一求
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−344407(JP,A)
【文献】
特開2008−231799(JP,A)
【文献】
実開昭57−008802(JP,U)
【文献】
特開2003−342909(JP,A)
【文献】
実開平07−029004(JP,U)
【文献】
実開平06−060607(JP,U)
【文献】
特開平11−158860(JP,A)
【文献】
特開2002−045792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00 − 3/115
E02D 27/26 −27/28
E01C 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を締め固める締固め機に備える締固め治具であって、
前記締固め機を押圧させるための押圧装置に取り付ける取付部と、
前記押圧装置で押圧する転圧部と、
前記取付部と前記転圧部とを連結するための連結部と、を備え、
前記転圧部は、該転圧部の中央に開口部を有するよう螺旋状に構成され、前記地盤から突出した杭の周辺に配置され、かつ、前記杭と干渉しないよう配置される、
締固め治具。
【請求項2】
地盤を締め固める締固め機に備える締固め治具であって、
前記締固め機を押圧させるための押圧装置に取り付ける取付部と、
前記押圧装置で押圧する転圧部と、
前記取付部と前記転圧部とを連結するための連結部と、を備え、
前記転圧部は、前記地盤から突出した杭の周辺に配置され、かつ、前記杭と干渉しないよう配置され、前記連結部ごとに、複数の該転圧部が備えられる、
締固め治具。
【請求項3】
前記連結部は長手方向に0.4〜1.5mの長さを有する、請求項1又は2に記載の締固め治具。
【請求項4】
前記転圧部は、その底面に該転圧部の回転により前記地盤を締め固める回転転圧部を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の締固め治具。
【請求項5】
前記転圧部の外周に、前記地盤の側壁の崩落を防止する崩落防止部を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の締固め治具。
【請求項6】
前記転圧部の開口部に沿って、消音緩衝部を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の締固め治具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の締固め治具を備えた締固め機。
【請求項8】
請求項7に記載の締固め機を用いた地盤の締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の締固め治具及び当該締固め治具を用いた地盤の締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤改良として、例えば、布基礎に合わせて溝を掘り、砕石を敷いて転圧する工法が行われている。そして一般に、この転圧は、タンピング・ランマーやプレート・ランマーを用いて、転圧したい範囲を移動させることにより行っている。
しかし、従来の転圧板は四角形状であるため、鋼管杭周辺の改良範囲を円形に転圧することが困難であり、更には、当該四角形状の転圧板を移動させながら転圧した地盤は転圧ムラが生じるという課題もあった。
本件発明に関連する従来技術を開示する特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4053353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上述の鋼管杭が多数打ち込まれた地盤において、より効率良く転圧すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、当該杭と干渉することなく、当該杭の周辺地盤を転圧可能に配置された転圧部を備える締固め治具に想到した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地盤を締め固める締固め機に備える締固め治具であって、
前記締固め機を押圧させるための押圧装置に取り付ける取付部と、
前記押圧装置で押圧する転圧部と、
前記取付部と前記転圧部とを連結するための連結部と、を備え、
前記転圧部は、前記地盤から突出した杭の周辺に配置され、かつ、前記杭と干渉しないよう配置される、
締固め治具。
【0006】
このように規定される第1の局面の締固め治具によれば、地盤から突出した杭と干渉することなく、当該杭の周辺地盤を締め固めることが可能となる。当該締固め治具を備えた締固め機によれば、杭の周囲を移動させることなく、杭周囲の地盤の締め固めが可能となるため、効率よく締め固めを行うことができる。
上記連結部は長手方向に0.4〜1.5mの長さを有することとできる(第2の局面)。
上記転圧部は平面部を有する略円形平板からなり、該円形平板の中央に円形状の開口部を備えている構成としても良い(第3の局面)。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態の締固め治具1の斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の他の実施の形態の締固め治具11、21、31、41の斜視図である。
【
図3】
図3は本発明の他の実施の形態の締固め治具51の斜視図である。
【
図4】
図4は本発明の他の実施の形態の締固め治具61の斜視図である。
【
図5】
図5は本発明の実施の形態の締固め治具1を備えた締固め機を効果的に利用可能な杭の補強方法を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は本発明の実施の形態の締固め治具1を用いた地盤の締固め方法を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は本発明の他の実施の形態の締固め治具81の(A)斜視図、(B)底面図、(C)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態の締固め治具について説明する。
図1に、この発明の実施の形態の締固め治具1の概略構成を示す。
図1に示すように、この締固め治具1は、取付部3、転圧部5及び連結部7を備えている。
取付部3は、締固め治具の上面に設けられ、当該締固め治具を、締固め機を押圧させるための押圧装置に取り付けるために備えられる。当該取付部3は、押圧装置に取り付けることが可能なよう構成されていれば良く、例えば、ネジ止めにより取り付けることとできる。この発明の締固め治具は、当該取付部3を備えることにより、既存のランマーやバックホー等の施工機に取り付けることができ、また、適宜締固め治具を取替えて利用することができる。取付部3は、特にタンピングランマーに取付可能であり、後述の取付部33(
図2(C)参照)は、特にプレートコンパクターランマーに取付可能である。
【0009】
転圧部5は、締固め治具の底面に設けられ、押圧装置で押圧して転圧部5に接触する地盤を締め固める。この発明の締固め治具は、杭が突出した地盤を締め固めるために用いられる。したがって、当該締固め治具と杭とが干渉しないように、すなわち、転圧部5と杭が干渉することのないよう、杭周辺に転圧部が配置される構成を採用することが好ましい。このような転圧部として、
図1に示す転圧部5のように略円形平板からなり、杭に干渉しないよう当該円形平板の中央に円形状の開口部を有するドーナツ形状とすることができる。また、
図2(A)に示すように、切り欠きを設けた螺旋状の転圧部13としても良い。転圧部13を用いた場合もまた、杭と干渉することなく、締固め機の移動を抑えて、杭周辺の地盤を締め固めることが可能である。更には、
図2(B)に示すように、杭と干渉することのないよう転圧部23を複数配置することとしても良い。転圧部23を用いた場合にも、所望の効果が得られる。当該複数の転圧部23は、後述する連結部7ごとに備えることができる。
なお、上記押圧装置は、締固め機を押圧させる、すなわち、地盤に対して略垂直方向に力を加え、それとともに、振動及び/又は回転させることができる。この場合、転圧部5は、その力を受けて転圧部5の下面に当接する地盤あるいは補強層を締め固めることができる。
【0010】
連結部7は、上記取付部3と転圧部5とを連結して、押圧装置からの押圧を転圧部5に伝える。連結部7の長さは、地盤表面から突出した杭と締固め治具1、すなわち、取付部3とが干渉しないよう構成するために、長手方向に0.4〜1.5mの長さを有することが好ましい。連結部7は、転圧部5に押圧を伝えることができれば、その形状等に特に制限はないが、例えば、
図1に示すように板状部材としても良いし、
図2(C)に示す連結部35のように棒状部材で構成することとしても良い。棒状部材は強度向上を図る点から中実であっても良く、軽量化を図る点から中空であっても良い。また、連結部7、35の材質は、上記押圧に耐えうる材質であれば、特に制限されず、例えば鉄鋼とすることができる。更には、連結部7と取付部3、連結部7と転圧部5とは、例えば溶接により強固に接合されていることが好ましい。更には、
図2(D)に示す連結部45のように筒状部材で構成することとしても良い。筒状部材底面の直径は、転圧部5の開口部の直径以上であれば、転圧部5の直径と同等であっても良く、それ以下であっても良い。また、連結部45と取付部43とは、上述のように溶接により接合することができる。
【0011】
図3に、他の実施の形態の締固め治具51の概略構成を示す。
図3において、
図1及び
図2と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図3に示すのは、締固め時に地盤の側壁の崩壊を防止可能な締固め治具51である。すなわち、
図1に示す締固め治具1において、崩落防止部53を更に備える。
崩落防止部53は、転圧部5の上部外周に筒状部材として備えられる。崩落防止部53の材質は、地盤の側壁の崩落を防止できるに耐える強度を備えていれば良く、例えば鉄鋼を用いることとできる。また、崩落防止部53の高さについても、特に制限はなく、地盤から突出した杭の長さや、杭の打たれた地盤に設けられた空間部の深さによって適宜設計すれば良い。
この締固め治具51において、連結部は、転圧部5及び崩落防止部53と接合可能なよう台形形状の連結部55として設計することが好ましい。
【0012】
図4に、他の実施の形態の締固め治具61の概略構成を示す。
図4において、
図1、
図2及び
図3と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図4に示すのは、締固め時の騒音を低減可能な締固め治具61である。すなわち、
図1に示す締固め治具1において、消音緩衝部63を更に備える。
消音緩衝部63は、転圧部5に設けられた開口部に沿って備えられる。消音緩衝部63の材質は、杭との接触により騒音を生じない材質であれば特に限定されず、例えばゴムを用いることとできる。また、消音緩衝部63の厚みとしては、杭と干渉しない厚みに設計することとできる。消音緩衝効果の点からは、厚い方がより好ましい。
【0013】
図5を用いて、この発明の締固め治具1を備えた締固め機を効果的に利用可能な杭の補強方法について説明する。
図5(A)に示すのは、杭71と地盤73である。
まず、杭71を建物(図示せず)の基礎としての地盤73に埋設する(
図5(B)参照)。
次に、杭71の杭頭72の周縁領域の土を除去して空間部75を形成して杭72を露出させる(
図5(C)参照)。空間部75は杭71を軸心とする直径150〜1500mm、深さは150〜1500mmの円筒形である。空間部75の底面77は略水平面となっている。
更に、
図5(D)に示すように、形成された空間部75の底面77に砕石78を敷設し、補強層79を形成する。補強層79の厚さは50〜1500mmである。砕石78は密に敷設され、補強層79の上面は略水平となっている。砕石78を敷設する際には砕石78に押圧力を加えることが好ましい。例えば、空間部75への砕石78の投入を複数回に分散し、砕石78を投入するごとにこれを押し固めることが好ましい。このように押し固める作業を複数回に分けることにより、補強層をより強固なものにすることができることはもとより、空間部75に充分な開口広さを確保できないときや床下等の狭い作業空間において、補強層に対して一度に大きな力を与えられることが困難な場合であっても、補強層を充分に押し固めることができる。その結果、補強層の周囲地盤が強化され、杭の埋設状態もより安定することとなる。
補強層79の杭71に対向する面は杭71の外周面と当接している。その後、空間部75を埋め直し、施工を完了する。空間部75の全体を砕石78で充填し、補強層としても良い。
【0014】
図6を用いて、この発明の締固め治具1を備えた締固め機を利用した、杭周辺地盤の締固め方法を説明する。
上述したようにこの発明の工法において、空間部75の底面の地盤が締め固めの対象となる。
図6に示すように、打設された杭71の杭頭72が地盤73に設けられた空間部75の中央に突出して存在している。締固め治具は、当該杭の長さ、太さ、及び地盤にも受けられた空間部75の底面形状を考慮して選択される。すなわち、杭71が転圧部5と干渉しないよう充分な開口部が設けられ、空間部75に敷設された砕石と底面地盤を締め固めることが可能な直径を備えた転圧部5と、杭頭72が取付部3と干渉しないよう充分な長さを有する連結部7とから構成される締固め治具1が選択される。また、締固め治具は、その取付部3を介して締固め機本体に取り付けられて締固め機80を構成する。そして、締固め機80の押圧装置から転圧部5への押圧により、空間部75の砕石と底面地盤を締め固める。
【0015】
図7に、他の実施の形態の締固め治具81の概略構成を示す。
図7において、
図1、
図2、
図3及び
図4と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図7に示すのは、転圧部を押圧、回転させることにより、より効果的に地盤を締め固めることが可能な締固め治具81である。すなわち、
図1に示す締固め治具1において、回転転圧部87を更に備え、取付部3及び連結部7に代えて取付部83及び連結部85を備えている。
回転転圧部87は、転圧部5の底面に備えられる。回転転圧部87は、転圧部5の回転により、より地盤を強固に締め固められるよう備えられていれば良く、例えば、該転圧部5から突出して備えることとできる。このように回転転圧部87を備えることにより、押圧装置による力は、転圧部5の下面から突出した回転転圧部87に集中するため強固に締め固めることができる。そして、さらに当該回転転圧部87を回転させるため、転圧部5の下面全面を均等に締め固めることが可能となる。回転転圧部87は、例えば、鋼管の半円筒としても良く、転圧部の一部として、転圧部5に溶接により接合することができる。このように、回転転圧部87を備えることにより、一定の押圧力と回転とを併せて利用することができ、より効果的に地盤を締め固めることが可能となる。
なお、強固に地盤を締め固めるために、回転転圧部87を備えた転圧部5を更に振動させることとしても良い。
【0016】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0017】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0018】
1 11 21 31 41 51 61 81 締固め治具
3 33 43 83 取付部
5 13 23 転圧部
7 35 45 55 85 連結部
53 崩落防止部
63 消音緩衝部