特許第5939794号(P5939794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939794
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】芳香性飛翔害虫忌避材
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/18 20060101AFI20160609BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20160609BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20160609BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20160609BHJP
   A01N 31/02 20060101ALN20160609BHJP
   A01N 31/04 20060101ALN20160609BHJP
   A01N 35/02 20060101ALN20160609BHJP
   A01N 35/04 20060101ALN20160609BHJP
   A01N 35/06 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   A01N25/18 102A
   A01P17/00
   A01N37/02
   A01N37/36
   !A01N31/02
   !A01N31/04
   !A01N35/02
   !A01N35/04
   !A01N35/06
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-287503(P2011-287503)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136524(P2013-136524A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】三木悠記子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−150525(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/107814(WO,A1)
【文献】 特開2011−144154(JP,A)
【文献】 特開平06−183904(JP,A)
【文献】 特表2009−530421(JP,A)
【文献】 特開平11−199405(JP,A)
【文献】 米国特許第06605292(US,B1)
【文献】 特開2012−136461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体香料剤透過性フィルムを通して、飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤からなる液体香料剤を揮散させる芳香性飛翔害虫忌避材において、
前記揮散助剤が、
パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合物であり、かつ、
前記パラフィン系炭化水素が、
炭素数12から14のノルマルパラフィン系炭化水素であり、
前記グリコールエーテルが、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのいずれか一つであることを特徴とする芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項2】
前記パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの重量混合比が、
1:3から1:5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項3】
前記飛翔害虫忌避香料が、
エステル基を有する分子量が140から210の範囲にある化合物群のうちの一つ、又は二つ以上からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項4】
前記飛翔害虫忌避性香料が、
酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、ヘキサン酸アリル、酢酸スチラリル、酢酸フェニルエチル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、酢酸リナリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸2−ターシャリーブチルシクロヘキシル、酢酸4−ターシャリーブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、フルーテートのうちの一つ、または二つ以上からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項5】
前記飛翔害虫忌避性香料が、
飛翔害虫の生育、運動および生存に対して阻害となる活性を有する香料群から選ばれた一種、または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項6】
前記飛翔害虫の生育、運動および生存に対して阻害となる活性が、
飛翔害虫への空間忌避活性、接触忌避活性、飛翔阻害活性、行動撹乱活性、殺成虫活性、殺幼虫活性のうちの一種、又は二種以上の混合活性であることを特徴とする請求項5に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項7】
前記液体香料剤を、該液体香料剤が非透過な素材からなり、その一部が開放した形状の容器に収め、且つ、その容器の開放部に蓋材として液体香料剤透過性フィルムを貼り付け、このフィルムを通して該液体香料剤を揮散させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項8】
前記蓋材が、
液体香料剤透過性フィルムと液体香料剤非透過性フィルムとを剥離可能なように積層成形したものであり、使用前に、外層に位置する液体香料剤非透過性フィルムのみを剥離して取り除き、液体香料剤透過性フィルムを露出させることにより使用を開始することを特徴とする請求項7に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項9】
前記液体香料剤透過性フィルムが、
ポリエチレン素材からなるフィルムであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項10】
前記液体香料剤透過性フィルムが、
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【請求項11】
前記液体香料剤に、その視認性を高めるために着色剤を添加して着色したことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔害虫に対する液体式芳香性忌避材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蚊類、ユスリカ類やハエ類等の飛翔害虫を一定の空間から忌避して快適な生活活動空間を確保するため、主に居間、食堂、台所、玄関、トイレ、ベランダ等の生活活動空間用として、様々な飛翔害虫忌避剤、虫除け剤が提案、実用化されている。
前記の目的で、容器に入れた液体に吸液芯を挿入して香料や揮散性防虫、忌避剤を吸い上げて上部の揮散体から揮散させる型のもの(例えば、特開2005−170914)や、香料等をゲル状に固化させて、その表面から揮散させるもの(例えば、特開2006−213640)、或いはビーズ状の薬剤吸収体に薬液を保持させ、その表面から揮散させる形態のもの(例えば、特開2011−50684)等が実用化されている。
しかしながら、これらの製品では一般に製品サイズが大型で嵩張っており、重く、このような製品を設置する場所で邪魔になることが問題となっていた。 又、転倒時の液漏れ、揮散成分の減少に伴う内容物の劣化、粒状揮散体の経時劣化、使用開始後、中期、終期における揮散速度の低下、揮散終点の不明瞭さ等の問題があった。
【0003】
一方、最近の消費者ニーズの多様化に伴い、無臭の殺虫、忌避剤を用いた従来の虫除け剤よりも、若干の香りを有する防虫剤を使用して処理空間への賦香を積極的に行う傾向もみられるようになった。
このような状況を背景として、蚊やハエ等の飛翔害虫忌避効果と芳香性を兼ね備える天然産の精油由来成分や香料成分を、飛翔害虫忌避成分として用いる提案がなされている。
例えば特開平5−208902号公報に見られる、β−フェニルエチルアルコール、ジヒドロジャスモン酸メチルを有効成分とする蚊忌避剤や、特開2002−173407号公報に見られる、オレンジ油、カシア油、グレープフルーツ油等の天然精油を有効成分とする飛翔昆虫忌避剤や、特開2003−138290号公報に見られる、イソメントン、リナロール、ゲラニオール、シトラール及びシトロネロールからなる混合物を蚊忌避効果の有効成分とする蚊忌避剤や、特開2006−104075号公報に見られるラベンダーを水蒸気蒸留することにより得られる水蒸気蒸留水を用いた飛翔昆虫忌避剤などである。
【0004】
しかしながら、これらについても、飛翔害虫忌避に関する効果は十分とは言えず、飛翔害虫忌避効果と芳香性を兼ね備える天然産の精油由来成分や香料成分を有効成分とする飛翔害虫忌避剤の開発に当たっては、有効成分の選抜、他の剤や溶剤との組み合わせと共に、揮散効率の高い剤型の検討が不可欠な状況であった。
剤型としては薬剤の減りが容易に確認できる点で、液体タイプのものが使用者にとって使い勝手が優れている。このことから、コンパクトで、倒してもこぼれない剤型でありながら、防除空間への薬剤の揮散が適切な速度で可能であり、空間防除効果が早く現れ、持続する液体タイプの飛翔害虫忌避材の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−170914号公報
【特許文献2】特開2006−213640号公報
【特許文献3】特開2011−50684号公報
【特許文献4】特開平5−208902号公報
【特許文献5】特開2002−173407号公報
【特許文献6】特開2003−138290号公報
【特許文献7】特開2006−104075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然又は合成の香料成分を有効成分とする液体タイプの芳香性飛翔害虫忌避材に関し、高い防虫忌避効果を発揮する一方で、人やペットに対する安全性にも優れ、しかも、ほのかな芳香性が効果の立ち上がりを知らしめると共に、コンパクトで且つ倒しても液漏れが生じない構造であり、更には消費者に対して、使用末期における薬剤の取替え時期もわかりやすい、蚊やハエ、ユスリカ等に対する飛翔害虫忌避材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明では、蚊、ハエ、ユスリカ等の飛翔害虫に対して空間忌避効果のある天然又は合成香料成分を、液体香料剤透過性フィルムを通して適度な揮散速度で揮散させるために、防虫効果のある香料成分の種類を検討し、次いでその揮散速度等を調整するための揮散助剤の組み合わせを鋭意検討した。
検討の結果、飛翔害虫忌避効果のある香料成分単独ではなく、香料成分と相溶性のある、適当な揮散助剤の添加が必要であることがわかった。しかし、その組み合わせは極めて多種多様であったが、詳細な検討を繰り返した結果、ある特定の飛翔害虫忌避性香料成分と、ある特定の揮散助剤を組み合わせた液体香料剤は、適度な揮散速度を持って液体香料剤透過性フィルムを通して揮散することがわかった。そしてこの方式による液体香料剤の揮散は、飛翔害虫に優れた空間忌避効果を発揮するとともに、経時的な薬液の減少が明瞭に目視でき、さらには薬液の揮散後も容器内に残渣による汚れが液体容器内に残らず良好であることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に改良を重ねることにより、完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、以下の構成の芳香性飛翔害虫忌避材である。
(1)液体香料剤透過性フィルムを通して、飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤からなる液体香料剤を揮散させる芳香性飛翔害虫忌避材において、
前記揮散助剤が、
パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合物であり、かつ、
前記パラフィン系炭化水素が、
炭素数12から14のノルマルパラフィン系炭化水素であり、
前記グリコールエーテルが、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのいずれか一つであることを特徴とする芳香性飛翔害虫忌避材。
(2)前記パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの重量混合比が、
1:3から1:5の範囲であることを特徴とする(1)に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(3)前記飛翔害虫忌避香料が、
エステル基を有する分子量が140から210の範囲にある化合物群のうちの一つ、又は二つ以上からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(4)前記飛翔害虫忌避性香料が、
酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、ヘキサン酸アリル、酢酸スチラリル、酢酸フェニルエチル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、酢酸リナリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸2−ターシャリーブチルシクロヘキシル、酢酸4−ターシャリーブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、フルーテートのうちの一つ、または二つ以上からなることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(5)前記飛翔害虫忌避性香料が、
飛翔害虫の生育、運動および生存に対して阻害となる活性を有する香料群から選ばれた一種、または二種以上の混合物であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(6)前記飛翔害虫の生育、運動および生存に対して阻害となる活性が、
飛翔害虫への空間忌避活性、接触忌避活性、飛翔阻害活性、行動撹乱活性、殺成虫活性、殺幼虫活性のうちの一種、又は二種以上の混合活性であることを特徴とする(5)に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(7)前記液体香料剤を、該液体香料剤が非透過な素材からなり、その一部が開放した形状の容器に収め、且つ、その容器の開放部に蓋材として液体香料剤透過性フィルムを貼り付け、このフィルムを通して該液体香料剤を揮散させることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(8)前記蓋材が、
液体香料剤透過性フィルムと液体香料剤非透過性フィルムとを剥離可能なように積層成形したものであり、使用前に、外層に位置する液体香料剤非透過性フィルムのみを剥離して取り除き、液体香料剤透過性フィルムを露出させることにより使用を開始することを特徴とする(7)に記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(9)前記液体香料剤透過性フィルムが、
ポリエチレン素材からなるフィルムであることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(10)前記液体香料剤透過性フィルムが、
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムであることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
(11)前記液体香料剤に、その視認性を高めるために着色剤を添加して着色したことを特徴とする(1)から(10)のいずれかに記載の芳香性飛翔害虫忌避材。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、天然産の植物精油由来成分又は合成香料成分を有効成分とする液体タイプの芳香性飛翔害虫忌避材であって、高い空間忌避効果を発揮する一方で、人やペットに対する安全性にも優れている。しかも、ほのかな芳香性が効果の立ち上がりを知らしめると共に使用感を高め、薬液中の飛翔害虫忌避性香料成分と溶剤とがバランスよく揮散していくことから、使用後も容器内に残渣による汚れが残らず、使用末期における薬剤の取替え時期もわかりやすいので、その実用性は極めて高いといえる。加えて、液剤は薬剤非透過性の容器と薬剤揮散性を有するフィルムとによって密封されているので、運搬や使用時の転倒等に起因する液漏れの恐れが全く無い。 本発明による芳香性飛翔害虫忌避材では、その薬剤揮散速度は使用時の初期から中期、終期まで大きな変化が無く、安定した飛翔害虫の空間忌避効果を実現できる。 揮散速度は液剤を収納した容器に設けられた薬剤揮散フィルムを貼付した開放部の大きさや数によって、目的とする防除空間の広さも勘案して定めることが出来る。又、製剤全体を軽量コンパクトに仕上げることが可能となった為、使用時に邪魔になることが無くなった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の基本構成を示す、液体香料剤を含む容器の断面図である。
図2】本発明の基本構成を示す、液体香料剤を含む容器の外観図である。
図3】本発明の一般的な実施形態例としてのゴミ箱での使用例である。
図4】本発明の外容器の構成例を示す外観図である。
図5】本発明の外容器を用い、立てかけて使用する際の使用例を示す外観図である。
図6】本発明の外容器を用い、吊り下げて使用する際の使用例を示す外観図である。
図7】飛翔害虫忌避香料基礎効力試験に用いた試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体式芳香性飛翔害虫忌避材の一般的な形態としては、図1に示したように、飛翔害虫忌避香料成分と揮散助剤からなる液体香料剤6を適当な容器1に入れ、開放した容器の一部に貼り付けた液体香料剤透過性フィルム2から、液体香料剤6が揮散するように構成される。
【0012】
従来から昆虫、ダニ等の害虫類に多様な活性を示す天然又は合成香料成分は多く知られてきた。
例えば、アルコール系香料ではシンナミルアルコール、リナロール、テルピネオール、シトロネロール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、アルデヒド系香料ではベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、ヘリオトロピン、バニリン、シトラール、シトロネラール、デカナール、エーテル系香料ではイソアネトール、dl−ローズオキサイド、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、リナロールオキサイド、エステル系香料ではプロピオン酸プロピル、酢酸イソアミル、酢酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸メチル、酢酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、ヘキサン酸アリル、酢酸スチラリル、酢酸フェニルエチル、ヘプタン酸アリル、酢酸アニシル、オクタン酸アリル、 イソアミルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、酢酸リナリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸2−ターシャリーブチルシクロヘキシル、酢酸4−ターシャリーブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸フェニルエチル、ケトン系香料としてはラズベリーケトン、カロン、βイオノン、αダマスコン、カシュメラン、イソ・イー・スーパー等が知られている。
中でも、本発明に用いられる飛翔害虫忌避性香料成分としては、天然香料成分、合成香料成分、天然精油の中から選ばれ、蚊類、ハエ、ブヨ類、ユスリカ類等の飛翔害虫に対して防虫・忌避効果があるものを用いる事ができる。本発明でいう防虫・忌避効果とは、殺幼虫、殺成虫活性はもちろんのこと、飛翔害虫の生育ステージにおいて、致命的な作用を与えるかあるいは、死に至らずとも、生育や空間での飛翔に対して忌避・阻害効果をもたらし、防除空間への飛翔害虫類の接近、侵入を防止することができるすべての効果を包含する。 具体的には飛翔害虫への空間忌避及び接触忌避活性、飛翔阻害活性、行動撹乱活性、産卵抑制活性、卵孵化抑制活性、殺卵活性、殺幼虫活性、幼虫摂食阻害活性、幼虫羽化阻害活性、幼虫忌避活性、成虫忌避活性、殺成虫活性、成虫交尾撹乱活性等をあげることができる。
【0013】
飛翔害虫忌避性香料成分としては、上記の多くの香料成分の中から、具体的には
テルピネオール、シトロネラール、シトラール、ノナナール、デカナール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ボルネオール、デカノール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、デヒドロリナロール、エチルリナロール、ジヒドロミルセノール、ロジノール、メントール、p−メンタン−3,8−ジオール、チモール、エバノール、メンタン、カンフェン、ピネン、リモネン、β―ヨノン、セドリルメチルエーテル、アネトール、イソアネトール、シンナミルアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、安息香酸メチル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸ベンジル、ヘプタン酸エチル、酢酸フェニルエチル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサンイソ酸ブチル、酢酸シンナミル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸2−ターシャリーブチルシクロヘキシル(ベルドックス)、酢酸4−ターシャリーブチルシクロヘキシル(ベルテネックス)、フルーテート、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸アリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸シトロネリル、蟻酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、酢酸リナリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ネリル、メチルサリシレート、イソブチルオキシ酢酸アリル、n−アミルオキシ酢酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル(アリルアミルグリコレート)、イソヘキシルオキシ酢酸アリル、3−エチルアミルオキシ酢酸アリル、シクロペンチルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル(シクロガルバネート)、フェノキシ酢酸アリル、オクタン酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、クエン酸トリエチル、シス−ジャスモン、カロン、カシュメラン、イソ・イー・スーパー、αダマスコン、δダマスコン、カルボン、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油などから選ばれた1種又は2種以上を配合することができる。
【0014】
更に、これらの中では、エステル基を有する分子量が140から210の範囲にある化合物が好ましく、酢酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、ヘキサン酸アリル、酢酸スチラリル、酢酸フェニルエチル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸アリル、イソアミルオキシ酢酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸2−ターシャリーブチルシクロヘキシル、酢酸4−ターシャリーブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、フルーテートから選ばれた1種又は2種以上を配合するのがより好ましく、特に蚊、ハエ、ブヨ、ユスリカ等の飛翔害虫に対して優れた飛翔害虫忌避活性と芳香付与性を発揮する。
【0015】
本発明において、前述の飛翔害虫忌避性香料成分とともに用いられる揮散助剤としては、
水のほか、エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール、
プロピレングリコールのようなグリコール、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテルのようなエチレングリコールエーテル、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのようなプロピレングリコールエーテル、
さらにエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなジアルキルグリコールエーテル、
各種炭素数のノルマルパラフィン系炭化水素やイソパラフィン系炭化水素もしくは芳香族炭化水素や、界面活性剤、可溶化剤、分散剤が適宜用いられる。
【0016】
本発明においては、これらの中でも、パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合物が本発明においては好適である。
パラフィン系炭化水素は炭素数12から14のノルマルパラフィン系炭化水素がより好適である。炭素数11以下の物では、自身の揮散が早すぎて本芳香性飛翔害虫忌避材用途では不適である。また炭素数15以上ではワックス化していくので本用途では使用できない。
また、グリコールエーテルではプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが好適であるが、中でもプロピレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
【0017】
パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合比率に関しては、
パラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合比が1:3から1:5の範囲であることが好ましい。グリコールエーテルの比率がこれより低ければ揮散が早すぎたり、保管中にフィルムに滲出したりすることがあり、逆にグリコールエーテルの比率がこれより高ければ揮散性が低く、残渣として残ってしまうことになる。
【0018】
揮散助剤は自身の揮散の際に飛翔害虫忌避性香料成分も牽引して揮散する役目を持つと予想され、揮散助剤の比率が低いと揮散効率は改善されない。飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤との配合比は本発明においては揮散助剤の比率が高いことが望ましく、飛翔害虫忌避性香料:揮散助剤は重量比で2:3から2:5、なかでも1:2がより好ましい。
【0019】
本発明の芳香性飛翔害虫忌避材は、飛翔害虫に対する忌避効果と人やペットに対する安全性に支障を来たさない限りにおいて、各種消臭剤成分や、香調の調整のために他の芳香成分、香料成分を配合してもよい。例えば、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加して、リラックス効果を付与することができる。
また、常温揮散性のピレスロイド系殺虫成分、例えば、エムペントリン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート[トランスフルトリン]、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート[プロフルトリン]、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート[メトフルトリン]などを添加すれば防虫・忌避効果の向上を図ることが可能となる。
【0020】
その他、本発明の芳香性飛翔害虫忌避材に添加できる成分としては、
消臭剤として、揮発性のヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油やピルビン酸エチル、ピルビン酸フェニルエチル等のピルビン酸エステルなどが、
防黴剤としては、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、オルソフェニールフェノールなどが、
抗菌剤としては、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0021】
本発明において用いられる液体香料剤透過性フィルム2とは、本部材を通して、液体香料剤6を放散させることができるフィルムである。本液体香料剤透過性フィルム2としては、耐薬品性があり、液体香料剤を液体として滲出させることなく、気体として容器外へ揮散透過するものであれば特に限定されない。
一例としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン樹脂フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムといったポリエチレン素材からなるフィルムや、ポリプロピレン、エチレン−酢酸共重合樹脂フィルム等が挙げられる。中でも本発明においては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルムが最も好ましい。
【0022】
また、本発明では、使用前に液体香料剤が揮散するのを防止するために、容器の蓋材5としての素材が、上記液体香料剤透過性フィルム2の外気と接触する面である表面を、取り除き可能なガスバリア性の液体香料剤非透過性フィルム3で覆った多層体フィルムであることが望ましい。
具体的には、蓋材5が、液体香料剤透過性フィルム2と液体香料剤非透過性フィルム3とが接着層4を介した積層体であり、外層に位置する液体香料剤非透過性フィルム3を、接着層4と共に剥離、取り除くことにより、液体香料剤透過性フィルム2を露出させ、使用開始することができる。
この液体香料剤非透過性フィルム3部材については、使用する液体香料剤の種類に応じて適宜選択されるが、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アルミ箔等が例示される。上記液体香料剤非透過性フィルム3は、1種の部材からなる単層のフィルムであってもよく、また2種以上の素材を積層したフィルムであってもよい。
【0023】
なお、上記のように、液体香料剤透過性フィルム2を取り除き可能な液体香料剤非透過性フィルム3で覆わない場合には、本発明の芳香性飛翔害虫忌避材は、使用前に液体香料剤が揮散するのを防止するために、容器1全体を、液体香料剤非透過性部材からなる包装体に密閉した状態で収容しておくことが望ましい。
【0024】
容器1としてはプラスチック製の物を用いるのが実用上適当である。このプラスチックの材質として、液体香料剤が透過しない素材であることが必要であり、耐内容物性を考慮して、基材にポリエチレンフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドなどが使用できる。 この際、透明性あるいは半透明性の材質であれば、薬液の揮散による減少がわかり易く好ましい。
容器1の形状は液体が収納でき、一部に開放部を有する形状であればよく、真空成形法や圧空成形法などの熱成形法や、インジェクション成形法など公知慣用の成形方法で作成される。
この容器1本体の開放部周辺には平坦な面やフランジ部7を設け、液体香料剤透過性フィルム2を接着剤や、あるいは超音波溶着などにより熱シールして、容器内に液体香料剤を封じることができる。この際、液体自体の減りを確認できるように、吸液性の含浸体等に担持させることなく、液体香料剤を液体のまま容器に添加することが望ましい。
容器1本体の大きさは芳香性飛翔害虫忌避材として使用する防除空間の大きさに従って設計することが出来る。 又、容器1に設けた開放部9(薬剤揮散性フィルムを貼り付ける窓部)の大きさも、求める揮散速度と薬剤による空間忌避効果の持続時間の長さを考慮して設計することが出来る。
【0025】
本発明の芳香性飛翔害虫忌避材では、
容器1に収納した、飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤からなる液体香料剤6を、液体香料剤透過性フィルム2を介して揮散させることが最小限の構成である。
この場合、図1図2に示したような容器の底面に粘着シールやマジックテープ(登録商標)など取り付け、そのまま壁や、網戸、図3のようにゴミ箱10の蓋の裏などに貼り付けて使用できる。また容器のリブに吊り下げ用の穴8を開け、壁のフックなどに吊り下げて使用することもできる。
あるいは別形態として、容器をさらに通気性の外容器11に収納し使用することで、設置性やインテリア性の向上が期待できる。
具体的な一例として、図4のように、容器1が納まるサイズの開口部15を有する所定の厚みのある枠部材14同士で、容器1を挟み込むような構造の外容器11を示すことができる。
枠部材14同士は別々の部材でもヒンジ部を設けた一体成形の物でもよい。枠部材14
に容器1を収め、開いた本を閉じるようにして枠部材14同士を合わせることで外容器11の形態となる。この外容器11を、図5のように別途設けたスタンド1により床や机上に立てかけて使用したり、図6のように、外容器11の上部に吊り下げ部12を設けて、ドア取手13等に吊り下げて使用することを可能にするなど、外容器11の形態としては自由な設計が可能である。

【0026】
液体香料剤6は、薬液の減り具合が観察しやすいように、必要に応じて染料で着色することができる。染料は、本発明で使用する飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤に溶けるものであれば特に限定されず、橙色403号のようなアゾ染料、緑色202号のようなアントラキノン染料、その他、タール色素、インジゴ系色素等が提示できる。
【0027】
本願発明の対象害虫には、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカなどの蚊類、イエバエ、ヒメイエバエ、センチニクバエ、ケブカクロバエ、キイロショウジョウバエ、ノミバエ等のハエ類、オオチョウバエ、ホシチョウバエ等のチョウバエ類、セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ類、イガ、コイガ、ノシメマダラメイガ等の蛾類などの飛翔昆虫が挙げられる。また、使用場面としても一般家庭、倉庫、畜鶏舎、工場、飲食店、キャンプ、バーベキュー等多様な場面に使用が可能である。
【0028】
次に具体的な実施等を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験例1:飛翔害虫忌避香料基礎効力試験)
【0029】
図7で示したような試験装置を作製した。
直径10cmのろ紙に表1記載の各種香料成分を0.5g含浸させ、供試ろ紙1とした。内径10cm長さ100cmのアクリル樹脂製円筒1を横置させ、その両端から15cmの部分にガーゼを張りフィルター1とし、さらに円筒の両端から中央部にプラスチック板による可動式仕切り20を設けた。片端A側の筒壁1の一部に供試昆虫を入れる為の穴部2をあけ、そこからアカイエカ雌成虫25匹を円筒内部へ放し、穴部2を閉じた。片端Aとガーゼフィルター1との間に供試ろ紙1を設置してから、円筒1中央部の仕切り20を取り除き、仕切り位置から片端Bの方向への供試昆虫の移動数を経時的に観察した。
そして観察後に、移動率(移動虫数/供試虫数)、50%移動時間(供試虫の半数が移動した時間)および90%移動時間(供試虫の90%が移動した時間)を算出した。
算出した各項目の総合評価を表1に示す。
総合評価は以下の基準で示した。
◎:90%移動時間が10分以下のもの。
○:90%移動時間が20分以下のもの。
△:90%移動時間が30分以下のもの。
×:90%移動時間が30分より長いのもの。
【0030】
【表1】
【0031】
試験の結果より、各種香料成分のうち、飛翔害虫忌避性香料として効果の認められたものを選抜して、フィルム透過性の試験を行った。
(試験例2:フィルム透過性揮散試験)
【0032】
5×15cmのサイズのポリエチレンフィルム(厚さ70&micro;m)の長辺を二つ折りにして、長辺二方をヒートシールした後、表1記載の香料成分を1.5g(約2ml)分注し、さらに残りの一方もシールして香料入り簡易フィルム容器を作製した。
この香料入り簡易フィルム容器を25℃恒温室にて吊り下げて設置し、30日目まで定期的に重量の減少を測定し、初期との差から揮散率を求めた。
15日および30日目での揮散率と総合評価を表2に示す。
(総合評価は◎:30日目で揮散率が75%を上回るもの。○:30日目で揮散率が30〜75%のもの。△:30日目で揮散率が10〜30%のもの。×:30日目で揮散率が10%未満のもの。で示した。)
【0033】
【表2】
【0034】
試験の結果、アルコール系、エーテル系、ケトン系の香料に比べて、エステル系の香料の揮散が比較的良好な傾向にあった。 ただし香料成分のみでは揮散速度が緩慢なことから、芳香性飛翔害虫忌避材として実用性を高めるために、揮散を促進する揮散助剤の検討を行った。
(試験例3: 飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤の組合せ: 実施例1〜実施例6)
【0035】
試験例2で比較的良好であった飛翔害虫忌避性香料のうちから選んで調合して作製した表3記載の飛翔害虫忌避性香料と揮散助剤と色素を、表4に示す処方で混ぜ合わせ、各種液体香料剤を作成した。この液体香料剤の薬液を、所定の容器(ポリエチレンでラミレートしたPET樹脂シートを、縦×横×厚みが50×50×8mmであり、開放部周囲に8mmのフランジを有するようトレー状に真空成形したもの)に10g分注し、フランジ部分を含む開放部を、蓋材フィルムで覆いヒートシールした。
蓋材フィルムは、液体香料剤透過性フィルム(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム:厚さ70&micro;m)と非透過性フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムとアルミニウムフィルムとポリプロピレンフィルム)とを接着層として溶融樹脂のポリエチレン層を介して張り合わせて積層成形したものである。使用前に蓋材を容器から剥がすと、液体香料剤非透過性フィルムのみが剥離され、容器側に残った液体香料剤透過性フィルムが外気に露呈し、容器内の液体香料剤が揮散を始める。この液体香料剤非透過性フィルム剥離させた容器を、25℃恒温室にて静置し、60日目まで定期的に重量の減少を測定し、初期重量との差から液体香料剤の揮散率を測定した。 また蓋材フィルムを含む容器の安定性を見るために、蓋材における液体香料剤非透過性フィルムを剥離しない状態での容器も、同条件である25℃恒温室にて60日目まで静置した。 20日、40日、60日目での各揮散率と総合評価を表5に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】



【0039】
この試験の結果、飛翔害虫忌避性香料と、揮散助剤としてのパラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合物からなる処方である実施例1から6において、使用開始から60日目まで安定した揮散が認められた。その中においても、パラフィン系溶剤:グリコールエーテルの比が1:3から1:5の範囲にある実施例2、4,5,6が有効であった。この範囲外であって、グリコールエーテルの比率が小さいと揮散速度が速すぎる傾向にあり、グリコールエーテルの比率が大きいと揮散速度が遅すぎる傾向にあった。また、実施例2と6を比較して、着色剤にて薬液に着色を施すと、薬液の揮散による減少がわかり易く有効であった。
本発明では揮散助剤としてのパラフィン系炭化水素とグリコールエーテルの混合物であることが重要であり、揮散助剤としてパラフィン系炭化水素だけ(比較例2)では初期から揮散しすぎる傾向にあり、特に試験前のサンプル保管中に、蓋材における透過性フィルムと非透過性フィルムが剥離してしまう問題が生じた。また、グリコールエーテルだけ(比較例3)では揮散が遅く、良好な結果は得られなかった。またグリコールエーテルの代わりにアルコール系を用いた場合では、揮散助剤(ソルフィット)のみが残ってしまい、望ましい揮散は得られなかった(比較例1)。
【実施例】
【0040】
先の試験例3での実施例2に用いられた物と同一の薬液、容器、フィルムからなる芳香性飛翔害虫忌避材1個を、周囲に開放部を有するポリプロピレン製外容器(65×65×15mm)に納めた。本芳香性飛翔害虫忌避材を、家庭用トイレ(広さ約1畳)の窓際に設置し、使用したところ、約2ヶ月にわたり、蚊、ユスリカ、チョウバエ等の飛翔害虫の侵入を認めず、トイレ空間に適した芳香効果も付与されて極めて実用的であった。
【0041】
先の試験例3での実施例3に用いられた物と同一の薬液、容器、フィルムからなる芳香性飛翔害虫忌避材1個を、吊り下げ部が付属したポリプロピレン製外容器(80×65×15mm)に納めた。この外容器を玄関ドアの内側に吊るして2ヶ月間使用した。その結果、その間、蚊、ユスリカ、チョウバエ等の飛翔害虫の侵入を認めず、芳香効果も付与されて極めて実用的であった。また、2ヶ月後の時点で着色された薬液によって認められる残量は僅かで、終点表示機能を有することが認められた。また薬液の残量以外には容器内に色素や油分残渣の汚れは認められず極めて実用的であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、飛翔害虫の忌避剤だけでなく、その他の各種害虫忌避分野においても広く利用可能であり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 容器
2 液体香料剤透過性フィルム
3 液体香料剤非透過性フィルム
4 接着層
5 蓋材
6 液体香料剤
7 フランジ部
11 外容器
12 吊り下げ部
枠部材
16 スタンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7