特許第5939809号(P5939809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939809
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】車両用ドアの止水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20160609BHJP
   H02G 3/34 20060101ALI20160609BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H02G3/22
   H02G3/34
   B60R16/02 622
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-12772(P2012-12772)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-153586(P2013-153586A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
(72)【発明者】
【氏名】義村 克也
(72)【発明者】
【氏名】角田 充規
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 英雄
(72)【発明者】
【氏名】畑中 洋一
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−247152(JP,A)
【文献】 特開2002−178853(JP,A)
【文献】 特開2009−051442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H02G 3/30 − 3/34
B60R 16/02 − 16/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアパネルに装着されたグロメットと、
前記グロメットをまたいで車両用ドアに装着されるウェザーストリップと、
前記ウェザーストリップを、前記ウェザーストリップの内部から前記車両用ドアに、前記グロメットの外縁外側部分の位置を押し当てるように固定するウェザーストリップ固定用クランプと、
を有し、
前記ウェザーストリップ固定用クランプは、前記ウェザーストリップと前記車両用ドアを連通する軸部と前記軸部の一端に設けられ前記車両用ドアに係止する係止部と、前記軸部の他端に設けられ前記ウェザーストリップの外側を押し当てる板状体の頂部とを有し、
前記頂部は、前記軸部から所定距離離れた位置に所定角折れ曲がって形成され前記グロメットの外縁外側部分に対応する位置で前記ウェザーストリップを押し当てる第1の押し当て部と、前記軸部を挟んで前記第1の押し当て部と反対側の所定の位置で所定角折れ曲がって形成され前記ウェザーストリップを押し当てる第2の押し当て部と、を備え
前記第1の押し当て部と前記第2の押し当て部は、互いに平行な直線状に形成されている
ことを特徴とする車両用ドアの止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアにグロメットが装着された止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のドアに配索されるドアハーネスの止水(防水)構造については、車体とヒンジ結合されるドアフレームの端面(側板)に貫通孔やグロメット用の凹部が設けられ、ドアハーネスに取り付けたグロメットを貫通孔に装着してドアから車体へとドアハーネスが配索されている。そして、防水構造の向上及び作業性向上のため各種の技術が提案されている。
【0003】
例えば、図2(a)の断面構造に示すように、グロメット110(グロメットベース部120)の上を跨いでウェザーストリップ190を装着する自動車ドアに関して、ドアフレーム(ドアパネル)150とグロメット110との境界に段差部分ができ、比較的大きな隙間S1が発生することがある。この対策のために、図1のグロメット装着構造1及び図2(b)の断面構造に示すように、ウェザーストリップ190の下側のグロメット110の厚さを簿肉化した箔肉部(簿肉リップ)128を設ける構造が採用されていた。箔肉部128の肉厚tとして、例えば、t=0.3mm程度まで薄くする必要があった。
【0004】
しかしながら、簿肉化された簿肉部128は、強度が非常に低く、グロメット110の輸送時に他の部品や電線と接触し亀裂等が発生する懸念があった。その対策のため、製品の損傷防止等の観点から保護カバーを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、グロメット周囲を取り囲む形状の保護カバーを取り付けることで、簿肉部の損傷を防止していた。
【0005】
また、ウェザーストリップを装着した際に生じる隙間をシール材で埋めるようにした技術や(例えば、特許文献2参照。)、ウェザーストリップをグロメットの配置用凹部に沿って装着し、その上からウェザーストリップを押しつぶすようにしてグロメットを配置用凹部に装着する技術もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−168130号公報
【特許文献2】特開2002−154334号公報
【特許文献3】特開2002−178853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、保護カバーを用いると、グロメット取り付け後には、保護カバーが不要となり、保護カバーを廃止可能な技術が求められていた。また、図2のように、簿肉部128が0.3mm程度まで薄くなると、グロメット成型時に発生するバリの厚さと簿肉部128の厚さが同程度になり、バリ取り作業に相当な慎重さが求められていた。このため、作業効率を向上させることが難しく、改善が求められていた。シール材の充填についても、シール材の取り扱いや充填作業の効率の観点から別の技術が用いられていた。
【0008】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、車両用ドアの止水構造であって、車両用ドアパネルに装着されたグロメットと、前記グロメットをまたいで車両用ドアに装着されるウェザーストリップと、前記ウェザーストリップを、前記ウェザーストリップの内部から前記車両用ドアに、前記グロメットの外縁外側部分の位置を押し当てるように固定するウェザーストリップ固定用クランプと、を有し、 前記ウェザーストリップ固定用クランプは、前記ウェザーストリップと前記車両用ドアを連通する軸部と前記軸部の一端に設けられ前記車両用ドアに係止する係止部と、前記軸部の他端に設けられ前記ウェザーストリップの外側を押し当てる板状体の頂部とを有し、前記頂部は、前記軸部から所定距離離れた位置に所定角折れ曲がって形成され前記グロメットの外縁外側部分に対応する位置で前記ウェザーストリップを押し当てる第1の押し当て部と、前記軸部を挟んで前記第1の押し当て部と反対側の所定の位置で所定角折れ曲がって形成され前記ウェザーストリップを押し当てる第2の押し当て部と、を備え、前記第1の押し当て部と前記第2の押し当て部は、互いに平行な直線状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グロメットをドアパネルに装着した際に、グロメット、ウェザーストリップ及びドアパネルの間に生じる隙間の発生を防止しつつ、グロメットの外縁部分を簿肉不要とする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術に係る、車両用ドアへのグロメット装着構造を模式的に示した斜視図である。
図2】従来技術に係る、グロメットが装着された部分の断面構造を模式的に示した図である。
図3】実施形態に係る、車両用ドアへのグロメット装着構造を模式的に示した斜視図である。
図4】実施形態に係る、グロメットが装着された部分の断面構造を模式的に示した図である。
図5】実施形態に係る、図4の領域Cを拡大して示した断面図である。
図6】実施形態に係る、ウェザーストリップ・押し当て用クランプ部の斜視図である。
図7】実施形態の変形例に係る、ウェザーストリップ・押し当て用クランプ部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図3は本実施形態に係る車両用ドアへのグロメット装着構造1を模式的に示した斜視図であり、ウェザーストリップ90は破線で示している。また、図4はグロメット10がグロメット用凹部52に装着された部分の断面図(図3のA−A断面)を模式的に示した図である。
【0014】
図示のように、本実施形態のグロメット装着構造1では、ドアパネル50の側板部分A2にグロメット10が装着されている。具体的には、ドアパネル50の側板部分A2にグロメット用凹部52が形成されており、そのグロメット用凹部52に非貫通タイプのグロメット10が挿入され固定されている。さらに、グロメット10を跨ぐように、ウェザーストリップ90がドアパネル50(内板部分A1)に固定される。固定には二つのウェザーストリップ押し当て用クランプ70が用いられる。
【0015】
グロメット10は、ワイヤーハーネスをドアパネル表面部から車体側へ導出する機能を有し、グロメットベース部20と、ジャバラ部40と、を備えて構成されている。このグロメット10は、内板部分A1と側板部分A2に亘って形成されるグロメット用凹部52に装着される非貫通タイプである。
【0016】
ジャバラ部40はグロメットベース部20の外面部22に取り付けられた蛇腹状の筒状体であって、グロメットベース部20に設けられた貫通孔に連通している。ワイヤーハーネスがジャバラ部40を介してドアパネル表面部から車体側へと導出する。
【0017】
また、グロメットベース部20の外観形状は、略矩形形状(台形を倒した形状)となっており、図示左側の上下のコーナーはラウンドしている。図示の右側側面部分29は、ちょうど車両パネルの内板部分A1に勘合して略同一平面になるように形成されている。
【0018】
さらに、グロメットベース部20の内面部24には、止水リップ23が内板部分A1側を除く三方の外縁に沿って形成されている。
【0019】
グロメットベース部20は、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)等の弾性体からなるアウター26と、アウター26に内装された樹脂等のインナー60とを備えている。アウター26の外縁部分であってウェザーストリップ90が跨いで装着される領域であるリップ部28は、グロメット10がグロメット用凹部52に装着されるときに、ドアパネル50の平面部分(凹状になっていない側板部分A2)に当接して配置される。
【0020】
また、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70による固定がなされることで、リップ部28の厚さは、0.8mmとなっており、従来の0.3mm程度と比較して肉厚になっている。その結果、グロメット10の輸送時等において保護カバーが不要となったり、アウター26のバリ取り作業が簡素化できたりする。
【0021】
なお、インナー60は、図示のように、インナー本体部62と、インナー本体部62と一体に成形されアウター26の外側に延出するボディー・クランプ部64とを備えている。ボディー・クランプ部64は、アウター26の内面部24から、つまりグロメットベース部20の裏側から垂直に突出している。ボディー・クランプ部64は、グロメット10がグロメット用凹部52に装着・固定されるときに、グロメット用凹部52に形成された所定の係止用孔に挿入され装着される。
【0022】
ウェザーストリップ90の底面部92には、O形状等の切り欠き部94が形成され、樹脂製のウェザーストリップ押し当て用クランプ70をウェザーストリップ90の内部96に挿入し、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70による固定が可能になっている。なお、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70をウェザーストリップ90の内部96に挿入するための切り欠き等の形状は、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70の形状及び挿入作業等を考慮して適宜設定される。例えば、O形状等の切り欠き部94は、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70の頂部74が挿入できる大きさまで所定の治具等で拡張可能に形成されており、適正に挿入されるとクランプ首元(軸部72aの頂部74近傍部分)が締め付け固定される。
【0023】
そして、ウェザーストリップ90がグロメット10を跨いで装着されるときに、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70が、ウェザーストリップ90を内部96からドアパネル50に固定する。
【0024】
図6のウェザーストリップ押し当て用クランプ70の斜視図に示すように、ウェザーストリップ押し当て用クランプ70は、係止部72と、頂部74とを備えて構成されている。係止部72は、円柱状の軸部72aと、その軸部72aの先端部分に設けられた係止片72bとから構成され、切り欠き部94を通ってクランプ係止孔58に係止する。
【0025】
頂部74は、板状体であり、ウェザーストリップ90の底面部92を内部側からドアパネル50に押し当てる。そのための構造として、頂部74は、係止部72の軸部72aに対して所定距離オフセットしたグロメット10側の位置に形成される第1の押し当て部76と、その反対側に形成される第2の押し当て部78とを備える。
【0026】
第1の押し当て部76と第2の押し当て部78とは、頂部74の端部において、下方向に所定角度折れ曲がって形成されることで、その折れ曲がった部分の先端で、ウェザーストリップ90の内部から底面部92を押し当てる。
【0027】
第1の押し当て部76は、グロメットベース部20のリップ部28の外縁外側の位置に対応する領域の底面部92をドアパネル50に押し当てる。したがって、第1の押し当て部76は、リップ部28の外縁形状に対応した形状となっており、ここでは、底面部92を押し当てる部分が直線状になっている。なお、第1の押し当て部76のオフセット量は、頂部74の厚さ(強度)と押しつける力を考慮して設定される。
【0028】
第2の押し当て部78は、第1の押し当て部76による押し当て構造を有効に機能させるために設けられた構造である。つまり、第1の押し当て部76がウェザーストリップ90の底面部92をドアパネル50へ押し当てる際に作用する反発力で、第1の押し当て部76が押し返されないようにするストッパーとしての機能を果たす。したがって、第1の押し当て部76の軸部72aからのオフセット量は、頂部74の厚さを考慮した上で、ストッパーとしての機能を果たすに十分な距離に設定される。一般には、第1の押し当て部76におけるオフセット量と同程度が好ましい。
【0029】
このような構造を採用することで、ウェザーストリップ90(底面部92)とドアパネル50とグロメット10(リップ部28)とに囲まれて形成される三角隙間、例えば図2(a)で示したような隙間を、第1の押し当て部76が押し潰し、図5の領域S3に示すように図2(b)と同様に実質的に隙間は発生しない。また、グロメットベース部20の外縁部分(リップ部28)を簿肉化しなくとも隙間が発生しないため従来と比較して肉厚にすることができ、保護カバーなしであっても輸送等における亀裂等の損傷を防止することができる。また、リップ部28に対してバリ厚みが相対的に薄くなることから、バリ取りの作業を簡素化、効率化することができる。
【0030】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0031】
例えば、図7に示す変形例に係るウェザーストリップ押し当て用クランプ70aの斜視図のように、頂部74aが上面視で略T字状に形成されてもよい。つまり、変形例のウェザーストリップ押し当て用クランプ70aは、横方向に棒状に形成される第1の押し当て部76aと、第1の押し当て部76aに対して垂直にかつ軸部72aを跨ぐように形成された棒状のバランス部79とを備える。そして、バランス部79の端部が第2の押し当て部78aとして機能する。このようなウェザーストリップ押し当て用クランプ70aであっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0032】
1 グロメット装着構造
10 グロメット
20 グロメットベース部
22 外面部
23 止水リップ
24 内面部
26 アウター
28 リップ部
40 ジャバラ部
50 ドアパネル
52 グロメット用凹部
58 クランプ係止孔
60 インナー
64 ボディー・クランプ部
70、70a ウェザーストリップ押し当て用クランプ
72 係止部
72a 軸部
72b 係止片
74、74a 頂部
76、76a 第1の押し当て部
78、78a 第2の押し当て部
79 バランス部
90 ウェザーストリップ
92 底面部
94 切り欠き部
A1 内板部分
A2 側板部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7