【実施例】
【0030】
図1から
図4及び
図9には、本発明の好ましい一実施例の時差修正機構(時修正機構)1を備えた本発明の好ましい一実施例のムーブメント2を有する本発明の好ましい一実施例の時差修正時計3が示されている。
【0031】
図9及び
図3等に示したように、時差修正時計3の外装部品の中すなわちケース3a内において文字板3bの背後で裏蓋(図示せず)の手前に収容されたムーブメント2は、香箱やモータの如き回転駆動源によって運針輪列(図示せず)を介して回転される筒車構造体12や分車16や秒車18を有する。筒車構造体12の先端部12aには時針11aが取付けられ、分車16の筒かな14の先端部14aには分針11bが取付けられ、秒車18の先端部には秒針11cが取付けられている。ムーブメント2の巻真30の先端にはりゅうず3cが取付けられている。
【0032】
筒車構造体ないし時車構造体12は、
図3及び
図1に示したように、先端部12aを含む大径の筒部12b及び第一筒歯車部12cを一体的に備えると共に、第一筒歯車部12cに固定された軸部12dと、該軸部12dに係合された第二筒歯車部12eを備える。この例では、軸部12dが外周に歯部12fを備え、第二筒歯車部12eが、円筒状孔部12gの内周で多数の歯部12fの先端に当接すると共に弾性腕部12hの先端の爪部12jが歯部12fに対して躍制動作を行うように弾性的に押付けられている。第二筒歯車部12eは、分針11bや秒針11cを進める通常運針輪列(図示せず)に直接噛合している。
【0033】
大径筒状部12bは、中心パイプ11を回転自在に貫通している。分車16は、筒かな14と二番車15とからなる。二番歯車15bを含む二番車15の二番真15aには、筒かな14が摩擦係合されている。秒車18は、四番真18a及び四番歯車18bを備えた四番車からなる。
【0034】
なお、20は地板、21は下板、22は時修正輪列受である。地板20にA1,A2方向に出し入れ可能に装着された巻真30には、第一時修正伝え車31が装着されている。以下の説明においては、巻真30が一段だけA1方向に引出された巻真一段目B1において時修正ないし時差修正が行われるものと想定する。時修正が行われる巻真30の引き出し位置は一段目の代わりに二段目や三段目等ことなる引出位置であってもよい。巻真30は、中心軸線Cのまわりで、C1,C2方向に回転可能である。
【0035】
時差修正機構1は、第一時修正伝え車31に加えて、巻真側時修正伝え輪列4、時修正複合車構造体5及び筒車側時修正伝え輪列6からなる時修正伝え輪列群7と、時修正躍制レバー70と、時修正躍制解除レバー80と、時修正躍制レバー作動ピン90とを有する。第一時修正伝え車31は巻真30が巻真一段目B1に設定された際には巻真30のC1,C2方向回転に応じて該巻真30と一体的にC1,C2方向に回転される限り、巻真30と一体的に該巻真30に固定されていても、該巻真30の角柱部に嵌る角穴部を備えていてもよい。
【0036】
巻真側時修正伝え輪列4は、この例では、第二時修正伝え車33、第三時修正伝え車35、第四時修正伝え車37及び第五時修正伝え車39からなる。
【0037】
第二時修正伝え車33は、巻真30がA1方向に引出されて一段目位置B1に設定されると、巻真30に装着された第一時修正伝え車31と噛合して、巻真30のC1,C2方向回転に応じて、中心軸線Dのまわりで、D1,D2方向に回転される。第三時修正伝え車35は第二時修正伝え車33に噛合し、中心軸線EのまわりでE1,E2方向に回転可能である。第四時修正伝え車37は中心軸線FのまわりでF1,F2方向に回転可能な同軸の二つの第四時修正伝え歯車部37a,37bからなり一方の歯車部37aで第三時修正伝え車35に噛合している。第五時修正伝え車39は第四時修正伝え車37の歯車部37bに噛合し、中心軸線GのまわりでG1,G2方向に回転可能である。
【0038】
時修正複合車構造体5は、時修正駆動車40と、時修正間欠車50とからなる。時修正駆動車40及び時修正間欠車50は、相互に同軸に配置され、中心軸線HのまわりでH1,H2方向に回転可能である。
【0039】
時修正駆動車40は、
図1〜
図4に加えて
図5の(a)及び(b)に拡大して示したように、円板状本体41の外周縁42に沿って全周に歯43が形成された平歯車部44と、円板状本体41の三箇所に周方向に等間隔に同心円状に形成された係合要素としての円弧状長穴45,45,45とを備える。46は軸受部である。なお、三つの長穴は円弧状であり限り同心円状になくてもよい。円弧状長穴45の数は二つ以下でも四つ以上でもよい。時修正駆動車40は、歯車部44で第五時修正伝え車39に噛合している。
【0040】
時修正間欠車50は、
図1〜
図4に加えて
図6の(a)及び(b)に拡大して示したように、概ね円板状の本体51と、該本体51の外周縁52のうち周方向の複数箇所(この例では5箇所)に等間隔に形成された有歯部53と、該有歯部53,53の間の円弧状すなわち部分円筒状の欠歯部54と、周方向の複数箇所(この例では3箇所)に周方向に等間隔に形成された係合要素としての係合ピンないし係合突起部55を備える。係合突起55の数並びに周方向及び径方向の位置は、時修正駆動車40の円弧状長穴45の数並びに周方向及び径方向の位置と同じである。各有歯部53は少なくとも一つの歯、典型的には、複数(この例では3個)の歯56を備える。各有歯部53の周方向の長さは同一であり、各欠歯部54の周方向の長さも同一である。但し、場合によっては、有歯部53の周方向の長さにバラツキがあってもよい。
【0041】
時修正間欠車50の三つの係合要素としてのピン55,55,55は、時修正駆動車40の三つの係合要素としての円弧状長穴45,45,45に丁度遊嵌される。すなわち、時修正間欠車50の一つのピン55が時修正駆動車40の対応する円弧状長穴45のH1方向端部45aに位置する場合、時修正間欠車50の残りの二つのピン55,55(
図1では図示せず)も時修正駆動車40の対応する円弧状長穴45,45(
図1では図示せず)のH1方向端部45a,45a(
図1では図示せず)に位置する。また、時修正間欠車50の一つのピン55が時修正駆動車40の対応する円弧状長穴45のH2方向端部45bに位置する場合、時修正間欠車50の残りの二つのピン55,55(
図1では図示せず)も時修正駆動車40の対応する円弧状長穴45,45(
図1では図示せず)のH2方向端部45b,45b(
図1では図示せず)に位置する。
【0042】
従って、時修正駆動車40がH1方向に回転されると、時修正駆動車40の円弧状長穴45,45,45はH2方向端部45b,45b,45bで時修正間欠車50のピン55,55,55に当たって時修正間欠車50をH1方向に回す。一方、時修正駆動車40がH2方向に回転されると、時修正駆動車40の円弧状長穴45,45,45はH1方向端部45a,45a,45aで時修正間欠車50のピン55,55,55に当たって時修正間欠車50をH2方向に回す。
【0043】
なお、筒車側時修正伝え輪列6は、この例では、一つの車すなわち第七時修正伝え車28からなる。第七時修正伝え車28は、中心軸線JのまわりでJ1,J2方向に回転可能で、第一筒歯車部12cに噛合し(
図3及び
図4参照)、時修正間欠車50の有歯部53に向き合うと(即ち、時修正間欠車50のうち有歯部53が第七時修正伝え車28の方に向く回転位相になると)、該有歯部53と噛合可能である。なお、第七時修正伝え車28が時修正間欠車50の欠歯部54に向き合うと(即ち、時修正間欠車50のうち欠歯部54が第七時修正伝え車28の方に向く回転位相になると)、時修正間欠車50と第七時修正伝え車28との間における歯の噛合いがなくなるので、時修正間欠車50と第七時修正伝え車28との間における回転の伝達はなくなる。
【0044】
下板21には、一対の案内ピン23,23及びばね受ピン24及びレバーアガキ決めピン25が植設されている。また、時修正躍制レバー作動ピン90が下板21及び時修正輪列受22によってK1,K2に変位可能に支持されている。すなわち、時修正躍制レバー作動ピン90は、大まかには、ピン状軸部91とフランジ状部92とからなり、より詳しくは、両端側に大径部93,94を備えると共に中間に小径部95を備える。時修正躍制レバー作動ピン90は、下板21側の大径部93において該下板21の長穴21a内にK1,K2方向に変位可能に遊嵌され、フランジ状部92において時修正輪列受22の細長い凹部22a内にK1,K2方向に変位可能に遊嵌されている。
【0045】
時修正躍制解除レバー80は、
図1〜
図4に加えて
図8の(a)及び(b)に拡大して示したように、概ね長方形状の本体部81と、ばね受ピン24でK1方向に支えられるばね部82と、時修正躍制レバー作動ピン90をK1方向に押す押圧腕部83とを備える。本体部81は、一対の案内ピン23,23に係合されて本体部81のK1,K2方向の変位を許容する長穴84を備えると共に、先端部85に爪状係合部86を備える。爪状係合部86は、概ね直線状ないし平面状の両側縁の傾斜面部87,87と、中央の円弧状凹部88とを有する。凹部88の曲率半径は、時修正間欠車50の有歯部53の歯先の包絡線の曲率半径と実際上一致する。
【0046】
時修正躍制解除レバー80がK1方向に偏倚されている際には、該レバー80は押圧腕部83で時修正躍制レバー作動ピン90をK1方向に押して、長穴21aのK1方向端部に偏倚させる。このK1方向偏倚位置において、爪状係合部86の両側の傾斜面部87,87は、時修正間欠車50の有歯部53の側縁から離間し、爪状係合部86の凹部88は時修正間欠車50の欠歯部54から離間している。一方、時修正(時差修正)の際には、時修正躍制解除レバー80は、爪状係合部86で時修正間欠車50の有歯部53によって押されてK2方向に偏倚され、時修正躍制レバー作動ピン90がK2方向に後退するのを許容する。
【0047】
時修正躍制レバー70は、
図1〜
図4に加えて
図7の(a)及び(b)に拡大して示したように、概ね長方形状の本体部71と、時修正躍制レバー作動ピン90でK1方向に支えられるばね部72と、該ばね部72の先端部に形成された第七時修正伝え車28の筒車側時修正伝え車躍制爪部としての第七時修正伝え車躍制爪部73とを備える。本体部71は、一対の案内ピン23,23に係合されて本体部71のK1,K2方向の変位を許容する長穴74を備えると共に、先端部75に時修正間欠車50に対して躍制動作をする時修正間欠車躍制爪部76を備える。時修正間欠車躍制爪部76は、概ね直線状ないし平面状の両側縁の傾斜面部77,77と、中央の円弧状凹部78とを有する。凹部78の曲率半径は、時修正間欠車50の有歯部53の歯先の包絡線の曲率半径と実際上一致する。時修正躍制レバー70の爪状係合部76は、両側縁の傾斜面部77,77で時修正間欠車50の有歯部53の側縁に係合して時修正間欠車50の欠歯部54に嵌り込んだり、円弧状凹部78で時修正間欠車50の有歯部53に乗り上げたりする。
【0048】
時修正躍制解除レバー80の爪部86が時修正間欠車50の欠歯部54に嵌り込み該時修正躍制解除レバー80の作用下で時修正躍制レバー作動ピン90がK1方向端部に位置する場合において、時修正躍制レバー70の爪部76が時修正間欠車50の欠歯部54に嵌り込み該時修正間欠車躍制爪部76が時修正間欠車50を規正するK1方向偏倚位置にあるときには、ばね腕部72が本体71に対して後退するようにM1方向に揺動し得るので、第七時修正伝え車躍制爪部73による第七時修正伝え車28の規正が解除される。一方、時修正躍制解除レバー80の爪部86が時修正間欠車50の欠歯部54に嵌り込み該時修正躍制解除レバー80の作用下で時修正躍制レバー作動ピン90がK1方向端部に位置する場合において、時修正躍制レバー70の爪部76が時修正間欠車50の有歯部53に乗り上げて該時修正躍制レバー70の時修正間欠車躍制爪部76が時修正間欠車50の規正を行わないK2方向偏倚位置にあるときには、ばね腕部72が時修正躍制レバー作動ピン90によってK1方向に押されて本体71に対してM2方向に揺動するので、第七時修正伝え車躍制爪部73が第七時修正伝え車28を規正する。さらに、時修正躍制解除レバー80の爪部86が時修正間欠車50の有歯部53に乗り上げて該時修正躍制解除レバー80がK2方向に偏倚した場合において、時修正躍制レバー70の爪部76が時修正間欠車50の有歯部53に乗り上げて該時修正躍制レバー70の時修正間欠車躍制爪部76が時修正間欠車50の規正を行わないK2方向偏倚位置にあるときには、ばね腕部72が本体71に対して後退するようにM1方向に揺動し得るので、第七時修正伝え車躍制爪部73による第七時修正伝え車28の規正が解除される。
【0049】
次に、以上の如く構成された時差修正機構を備えたムーブメントを有する時差修正時計における筒車12と巻真30との間における回転の伝達及び非伝達について、
図1から
図9に加えて、
図10から
図16に基づいて説明する。
【0050】
まず、筒車12の回転が巻真30に与える影響について説明する。
【0051】
図1からわかるように、筒車側時修正伝え車6をなす第七時修正伝え車28が時修正複合車構造体5の時修正間欠車50の欠歯部54に対面していて、第七時修正伝え車28と時修正間欠車50との噛合が実際上解除されている場合、筒車12の回転に伴って第七時修正伝え車28が回転しても、該第七時修正伝え車28の回転は時修正間欠車50に伝達されず、時修正複合車構造体5が回転しないので、巻真側時修正伝え輪列4の車39,37,35,33,31も回転しないから、筒車12の回転は巻真30に影響を及ぼさない。
【0052】
また、時修正間欠車50の回転位相が異なっていて、時修正間欠車50の有歯部53が第七時修正伝え車28に対面する位置にあって、時修正間欠車50の有歯部53の歯56が第七時修正伝え車28の歯と噛合っている場合であっても、筒車12の回転に伴って時修正間欠車50が多少回転するだけで、時修正間欠車50の欠歯部54が第七時修正伝え車28に対面するようになるので、その後は、上記のように、筒車12の回転が巻真30に影響を及ぼさなくなることは同様である。
【0053】
なお、時修正間欠車50が筒車12の回転に応じて回転される僅かな間についていえば、時修正間欠車50の係合ピン55が時修正駆動車40の円弧状長穴45内で採っている位置に応じて、場合によっては、時修正間欠車50の係合ピン55が時修正駆動車40の円弧状長穴45内で移動するだけで時修正間欠車50の回転が時修正駆動車40に伝達されることなく終わることもあり得る。
【0054】
また、場合によっては、原理的には、時修正間欠車50の係合ピン55の回転移動により該係合ピン55が時修正駆動車40の円弧状長穴45の端部45a又は45bを押して時修正駆動車55を多少回転させることもあり得る。そのような場合、時修正駆動車55の多少の回転に従って、巻真側時修正伝え輪列4の車39,37,35,33,31を介して巻真30が僅かに回転される。但し、その後、時修正間欠車50の欠歯部54で回転の伝達が断たれるようになると、巻真30が回転されなくなることは、前述の通りである。
【0055】
より詳しくは、通常は、時修正躍制レバー70が時修正間欠車50の欠歯部54に係合して該時修正間欠車50を規正するので、当該規正状態では、時修正間欠車50の欠歯部54が第七時修正伝え車28に対面する。従って、通常は、筒車12から巻真30に回転が伝達される虞は実際上ない。
【0056】
いずれにしても、時修正間欠車50に欠歯部54があるので、筒車12の回転が巻真30に伝達されるのを最低限に抑え得、通常は、時修正間欠車50の欠歯部54が第七時修正伝え車28に対面するので、筒車12の回転が巻真30に伝達されるのを避け得る。
【0057】
次に、以上の如く構成された時差修正機構を備えたムーブメントを有する時差修正時計において、巻真一段目位置B1において、巻真30をまわして、時修正(時差修正)を行う場合の操作及び動作について、
図1から
図9に加えて、
図10から
図16に基づいて詳しく説明する。
【0058】
巻真一段目位置B1において、巻真30が中心軸線Cのまわりで回転されていない
図1の巻真30の回転位置P0ないし時差修正機構1の状態S0では、時修正躍制解除レバー80は、ばね部82のばね力の作用下で、腕部83によって時修正躍制レバー作動ピン90をガイド孔21a内でK1方向端部に押付け、K1方向偏倚位置Q0を採る。この状態では、腕部83で作動ピン90に係止された時修正躍制解除レバー80の係合爪部86は、その傾斜面部87,87が時修正間欠車50の有歯部53,53の側縁から離間し、且つその先端の円弧状凹部88が時修正間欠車50の欠歯部54から離間している。また、この状態S0では、時修正躍制レバー70の時修正間欠車躍制爪部76は、その傾斜面部77,77が時修正間欠車50の有歯部53,53の側縁に当接し、その先端の円弧状凹部78が有歯部53,53間の欠歯部54に嵌り込んだ規正位置T0を採る。従って、この状態S0では、時修正躍制レバー70の時修正間欠車躍制爪部76によって規正された時修正間欠車50は基準位置R0を採る。また、この状態S0では、筒車側時修正伝え輪列6を構成する第七時修正伝え車28は基準位置R0にある時修正間欠車50の欠歯部54に対面し、両者の間においては回転の伝達はない。
【0059】
この巻真一段目位置B1において、時差修正ないし時修正を行うべく巻真30が中心軸線CのまわりでC1方向に回転されると、巻真側時修正伝え輪列4を介して、時修正複合車構造体5の時修正駆動車40がH1方向に回転される。従って、
図11に示したように、時修正駆動車40は円弧状長穴45のH2方向端部45bで時修正間欠車50のピン55に係合して、時修正間欠車50をH1方向に回し始める。その結果、時修正間欠車50が時修正躍制レバー70の躍制爪部76の上流側に位置する有歯部53の隣接側縁53aで時修正躍制レバー70の躍制爪部76の傾斜面部77を押してK2方向に変位させて時修正躍制レバー70のばね部72を作動ピン90に押付け、更に、ばね部72のばね力に抗してK2方向に変位させ始める。このとき、巻真30は回転位置P1にあり、時差修正機構1は状態S1を採り、時修正間欠車50は僅かに回転した位置R1を採り、時修正躍制レバー70はK2方向に僅かに後退した位置T1を採る。なお、状態S1では、時修正躍制解除レバー80はK1方向偏倚位置Q0に保たれる。
【0060】
巻真30が、中心軸線CのまわりでC1方向に更に回転されて、
図12に示したように、回転位置P2に達すると、巻真側時修正伝え輪列4を介して、時修正複合車構造体5の時修正駆動車40がH1方向に回転され、時修正間欠車50が有歯部53の側縁53aで時修正躍制レバー70の躍制爪部76の隣接傾斜面部77を更に押して時修正躍制レバー70をK2方向に変位させる。その結果、時修正躍制レバー70のばね部72が作動ピン90でM2方向に撓められて、第七時修正伝え車躍制爪部73が筒車側時修正伝え輪列6をなす第七時修正伝え車28の歯部に対する規正位置に近付けられる。このとき、時差修正機構1は状態S2を採り、時修正間欠車50は更に少しだけ回転した位置R2を採り、時修正躍制レバー70はK2方向に僅かに後退した位置T2を採る。なお、状態S2においても、時修正躍制解除レバー80はK1方向偏倚位置Q0に保たれる。
【0061】
巻真30が、中心軸線CのまわりでC1方向に更に回転されて、
図13に示したように、回転位置P3に達すると、巻真側時修正伝え輪列4を介して、時修正複合車構造体5の時修正駆動車40がH1方向に回転され、時修正間欠車50が有歯部53の側縁53aで時修正躍制レバー70の躍制爪部76の隣接傾斜面部77を更に押して時修正躍制レバー70をK2方向に変位させ、時修正間欠車50の有歯部53の先端が、実際上、時修正躍制レバー70の傾斜面部77と円弧状凹部78との境界に達する。その結果、時修正躍制レバー70のばね部72が作動ピン90でM2方向に更に撓められて、第七時修正伝え車躍制爪部73が筒車側時修正伝え輪列6をなす第七時修正伝え車28の歯部に嵌り込む規正位置を採る。このとき、時差修正機構1は状態S3を採り、時修正間欠車50は回転位置R3を採り、時修正躍制レバー70はK2方向に後退した位置T3を採る。時修正躍制レバー70があるが故に、時修正間欠車50が回転位置R3に達すると、時修正間欠車50の下流側の有歯部53が、第七時修正伝え車躍制爪部73によって規正されたばかりの第七時修正伝え車28の歯に、該有歯部53の側縁で、突っ張りの虞なく確実に噛合い始める。筒車側時修正伝え輪列6を構成する第七時修正伝え車28は、実際上まだ回転されておらず、筒車側時修正伝え車躍制爪部としての第七時修正伝え車躍制爪部73は初期位置U0にある。なお、状態S3においても、時修正躍制解除レバー80はK1方向偏倚位置Q0に保たれる。
【0062】
巻真30が、中心軸線CのまわりでC1方向に更に回転されて、
図14に示したように、回転位置P4に達すると、巻真側時修正伝え輪列4を介して、時修正複合車構造体5の時修正駆動車40がH1方向に回転され、時修正間欠車50が有歯部53の側縁53aで時修正躍制解除レバー80の係合爪部86の隣接傾斜面部87に係合してこれを押し、時修正躍制解除レバー80をK2方向に変位させ始める。
図14の状態S4では、時修正間欠車50が回転位置R4に達し、時修正躍制解除レバー80は初期位置Q0から変位を開始する(大まかには、未だ、変位されていない初期位置Q0にある)。なお、時修正間欠車50が回転位置R3から回転位置R4まで回る間に、筒車側時修正伝え輪列6の第七時修正伝え車28をJ1方向に少し回すので、時修正躍制レバー70の第七時修正伝え車躍制爪部73が規正位置から規正解除位置の方に向かう中間位置U1へとM1方向に多少戻される。但し、時修正躍制解除レバー80が、実際上、初期位置(時修正躍制非解除位置)Q0にあるので、第七時修正伝え車躍制爪部73による規正は解除されない。なお、筒車側時修正伝え輪列6の第七時修正伝え車28は筒車12の第一筒歯車部12cに対して減速結合されているので、筒車筒車12の(第一筒歯車部12cと一体的な)軸部12dと(運針輪列(図示せず)に直接噛合した)第二筒歯車部12eとの間における軸部12dの歯部12fの一歯分のN1方向の相対回転は発生せず、不測のクリック感を与える虞もない。状態S4において、時修正躍制レバー70は、円弧状凹部78で時修正間欠車50の有歯部53の先端に当接した状態のままであるので、位置T3に保たれる。
【0063】
巻真30が、中心軸線CのまわりでC1方向に更に回転されて、
図15に示したように、回転位置P5に達すると、巻真側時修正伝え輪列4を介して、時修正複合車構造体5の時修正駆動車40がH1方向に回転され、時修正間欠車50が有歯部53の側縁53aで時修正躍制解除レバー80の係合爪部86の隣接傾斜面部87を更に押して時修正躍制解除レバー80をK2方向に変位させ、該時修正躍制解除レバー80を躍制解除位置Q1に設定する。この躍制解除位置Q1では、時修正間欠車50が有歯部53の歯56の先端が時修正躍制解除レバー80の爪状係合部86の円弧状凹部88に当接するようになる。従って、時修正躍制解除レバー80の腕部83もK2方向に後退するので、時修正躍制レバー作動ピン90も時修正躍制レバー70のばね部72によって押されてK2方向に後退する。その結果、時修正躍制レバー70のばね部72の先端にある第七時修正伝え車躍制爪部73もM1方向に後退して、第七時修正伝え車28に対する規正が完全に解除される。この状態S5では、時修正間欠車50が回転位置R5に達して、時修正躍制レバー70がこのジャンプ位置T4を採り、時修正間欠車50のH1方向回転に応じて、該間欠車50の有歯部53に噛合した第七時修正伝え車28がJ1方向に回転するようになり、該車28のJ1方向回転に従って、筒車12の第一筒歯車部12c及びこれと一体的な軸部12dが第二筒歯車部12eに対してN1方向に相対回転するようになり、時針11aの回転位置の修正(時修正ないし時差修正)が行われ得るようになる。なお、時修正躍制解除レバー80がなくても、時修正間欠車50に加えられるトルクによって第七時修正伝え車28がばね部72及び第七時修正伝え車躍制爪部73からなるジャンパによる規正力に抗して回転され得るけれども、時修正躍制解除レバー80により第七時修正伝え車躍制爪部73を完全に後退させておくことにより当該ジャンパ余分な躍制動作をなくす方が好ましい操作感が得られる(時修正の際のクリック感は、筒車12のところで得られる)。
【0064】
この後は、
図16に示したように、巻真30のC1方向回転に応じて、時修正間欠車50の欠歯部54が第七時修正伝え車28に対面する回転位相になって時修正間欠車50の有歯部53と第七時修正伝え車28との噛合が解除されるまで、巻真30のC1方向回転が巻真側時修正伝え輪列4を介して時修正複合車構造体5に伝達され、さらに、第七時修正伝え車28を介して筒車12の第一筒歯車部12cに伝達されて、時針11aが回させられて、時修正すなわち時差修正が行われる。
【0065】
以上のような動作における時修正間欠車50の回転位置の変化と時修正躍制レバー70の位置と作動ピン90の位置との関係を大まかに示すと、
図10の通りである。
【0066】
以上においては、巻真30がC1方向に回転されて、時針11aが時計回り(進む向き)に時差修正が行われる例について説明したけれども、時修正複合車構造体5すなわち該構造体5を構成する時修正駆動車40及び時修正間欠車50、並びに時修正躍制レバー70の躍制爪部76,73及び時修正躍制解除レバー80の係合爪部86は、回転方向に依存せず対称な形状を有するので、巻真30がC1方向の代わりにC2方向に回転されて、時針11aが反時計回り)遅れる向き)に時差修正が行われる場合についても、全く同様にそのまま当てはまる。すなわち、この時差修正機構ないし時差修正機構1では、時差を進ませる向きでも遅らせる向きでの全く同様に時差修正が行われ得る。
【0067】
なお、以上においては、時修正複合車構造体5を構成する時修正駆動車40が係合要素としての円弧状長穴を備え時修正間欠車50が係合要素としての係合突起(係合ピン)を備える例について説明したけれども、その代わりに、時修正間欠車50が係合要素としての円弧状長穴を備え時修正駆動車40が係合要素としての係合突起(係合ピン)を備えていてもよく、その場合も、時差修正機構(時修正機構)は、当然ながら、全く同様に動作し得る。
【0068】
なお、現時点では請求項に記載の発明の範囲外であるけれども、時修正躍制レバー70が爪部76で時修正間欠車50の有歯部53,53及びその間の欠歯部54に対して躍制動作を行い得る以上、時修正駆動車40と時修正間欠車50とが一体回転されるようになっていてもよい。