(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939852
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】アナログ電子時計
(51)【国際特許分類】
G04C 10/00 20060101AFI20160609BHJP
G04C 3/14 20060101ALI20160609BHJP
G04G 19/08 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
G04C10/00 A
G04C3/14 Q
G04G1/00 310S
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-65985(P2012-65985)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195375(P2013-195375A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】見谷 真
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 考太郎
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−230987(JP,A)
【文献】
国際公開第98/39693(WO,A1)
【文献】
特開平5−40183(JP,A)
【文献】
特開昭63−182591(JP,A)
【文献】
特開昭58−28685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00−99/00
G04G 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子、発振回路、分周回路、定電圧回路、モーター、モーター駆動パルスを出力する出力制御回路、電池を備え、
前記定電圧回路と前記出力制御回路は前記電池から電源供給され、
前記発振回路と前記分周回路は前記定電圧回路の発生する定電圧が電源供給され、
前記定電圧は第一定電圧と第二定電圧に切替が可能であり、
前記第一定電圧は電池電圧よりも絶対値が小さい電圧であり、
前記第二定電圧は前記第一定電圧よりも絶対値が大きく、かつ、前記電池電圧よりも絶対値が小さい電圧であり、
通常発振時には、前記定電圧は第一定電圧であり、
前記モーター駆動パルス出力時は、前記定電圧を前記第二定電圧に切替える、
ことを特徴とするアナログ電子時計。
【請求項2】
前記定電圧は、前記モーター駆動パルスの出力開始時間よりも前に前記第一定電圧から前記第二定電圧に切替える、
ことを特徴とする請求項1記載のアナログ電子時計。
【請求項3】
前記定電圧は、前記モーター駆動パルスの出力終了時間よりも後に前記第二定電圧から前記第一定電圧に切替える、
ことを特徴とする請求項1または2記載のアナログ電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ電子時計に関し、特に、モーター駆動時の発振回路の安定動作に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計等に使用される水晶発振回路を用いたアナログ電子時計は一般に、
図6に示すように、水晶振動子60、半導体装置61、モーター62、電池63で構成される。さらに、半導体装置61は外付けの水晶振動子60との組み合わせで安定した周波数での発振を可能とする発振回路611、発振回路611から得られる基準クロック信号を所望の周波数のクロック信号に分周する分周回路612、発振回路611と分周回路612を駆動する定電圧回路610、モーター62を動作させるための出力制御回路613から構成される。
【0003】
図7に動作時のノードの波形を示す。
図7はVDDを接地電圧とした負電源の場合を示している。電池63やモーター62には抵抗成分があるため、モーターパルス出力時に、モーター負荷電流と電池内部抵抗の積で決まる電圧分ΔVSSだけ、電池電圧VSSが降下する。モーター回転が終了しモーター負荷が開放されると、電池電圧は元の電圧に復帰するが、次のモーター回転時に同様に電圧降下が発生し、以降、定期的に電圧降下を繰り返す。この電圧降下ΔVSSにより、発振回路611と分周回路612を駆動する定電圧回路610の出力電圧VREGにも過渡的な電圧降下ΔVREGが発生する。出力電圧VREGは発振回路611と分周回路612の消費電流を少なくするため、発振回路611の発振停止電圧VDOSにできるだけ近づけて設定される。出力電圧VREGが電圧降下ΔVREGにより発振停止電圧VDOSを絶対値で下回ると発振が不安定になり、最悪の場合、発振が停止してしまう。
【0004】
この問題に対し、電池電圧の変動を緩やか(200μs以上)にし、モーター等価抵抗RLと電池内部抵抗RBの比:RL/RBを2以上にすることで、
図8に示すように、電池電圧降下時の変動が緩やかになり、出力電圧VREGの変動量を緩和できる。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−182591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電池電圧の変動の緩やかさについては電池自体の容量と内部抵抗RBの時定数で決まるため、時定数200μs以下の電池は使用することができない。また、モーター等価抵抗RLと電池内部抵抗RBの比:RL/RBを2以上にしなければならないため、使用するモーターと電池の組み合わせが制限されてしまう。さらに、上記定量値(電池変動時200μs、RL/RB≧2)は実測結果に基づくものとされているが、発振回路の設計値の違いや、半導体製造条件の違い等で、上記定量値を見直す必要があることも考えられ、一概に定量値を決めることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用するモーターや電池の組み合わせを制限することなく、モーター負荷時の電池電圧変動が発生しても安定した発振が得られる水晶発振回路を提供するもので、基準クロック信号を発生させる発振回路、前記基準クロック信号を任意の周波数のクロック信号に分周する分周回路、前記任意の周波数のクロック信号を組み合わせて外付けのモーターを駆動するためのモーターパルスを生成する出力制御回路、定電圧を出力する定電圧回路を備え、前記定電圧回路と前記出力制御回路は外付けの電池から電源供給され、前記発振回路と前記分周回路は前記定電圧から電源供給され、前記定電圧は第一定電圧と第二定電圧に切替が可能であり、前記第一定電圧は電池電圧よりも絶対値が小さい電圧であり、前記第二定電圧は電池電圧以下かつ前記第一定電圧よりも絶対値が大きい電圧であり、通常発振時には、前記定電圧は第一定電圧であり、前記モーターパルスを出力する直前から出力直後までの期間、前記定電圧を前記第二定電圧に切替える水晶発振回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、モーター回転時のモーター負荷がかかった状態でも安定した発振が得られ、さらに電池とモーターの組み合わせを制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】従来の発明の水晶発振回路のブロック図である。
【
図7】従来の発明の水晶発振回路の動作説明図である。
【
図8】従来の発明の水晶発振回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るアナログ電子時計回路のブロック図である。水晶10、半導体装置11、モーター12、電池13で構成される。さらに、半導体装置11は発振回路111、発振回路111から得られる基準クロック信号を所望の周波数のクロック信号に分周する分周回路112、発振回路111と分周回路112を駆動する定電圧回路110、モーター12を動作させるための出力制御回路113から構成される。また、出力制御回路113はモーター12を動作させるモーターパルスを出力するとともに、モーターパルス出力期間前後に定電圧回路110の出力電圧VREGの電圧値を切り替えるための制御信号φ1を定電圧回路110へ出力する。
【0011】
次に、動作について説明をする。
図2は動作に関わるノードの波形であり、VDDを接地電圧とした負電源の場合を示している。
時間t<t1の期間はモーターを駆動せず、内部で計時動作を行なっている通常動作期間である。このとき、電池電圧VSSはVSS1であり、定電圧回路110の出力電圧VREGはVREG1である。発振回路111と分周回路112の低消費電流化のためVREG1は発振回路111の発振停止電圧VDOSよりもわずかに絶対値の大きい電圧値に設定される(|VREG1|>|VDOS|)。
【0012】
t1<t<t2の期間は、モーターパルスを出力する直前の期間である。t1のタイミングで制御信号φ1がLowレベルからHighレベルとなることで、VREGをVREG2に切り替える。VREG2はVREG1よりも絶対値が大きく、VSS1よりも絶対値の小さい電圧である(|VSS1|>|VREG2|>|VREG1|)。
【0013】
t2<t<t3の期間はモーターパルスを出力する期間である。モーターパルスを出力することで、モーター12の負荷電流と電池13の内部抵抗の積で決まる電圧降下ΔVSSが発生し、VSSはVSS2に降下する(|VSS2|=|VSS1|−|ΔVSS|)。VSSのVSS1からVSS2への急峻な変化により、定電圧回路110の応答が遅れ、VREGに過渡的に電圧降下ΔVREGが発生する。VREG2は|VREG2|−|ΔVREG|>|VDOS|を満たすように設定することで、ΔVREGが発生しても発振回路111の安定した発振の継続が保証される。
【0014】
t3<t<t4の期間はモーターパルス出力直後の期間である。t4のタイミングで制御信号φ1がHighレベルからLowレベルとなることで、VREGをVREG2からVREG1へ切り替える。これにより、発振回路111と分周回路112は次のモーターパルス出力に伴う出力電圧VREGの切り替えまで低消費で動作する。
以降、継続的にモーターパルスを出力するタイミングで一連の前記動作を繰り返す。
【0015】
t1<t<t4の期間で一時的にVREGをVREG1からVREG2へ切り替えた。この影響で、t1<t<t4の期間で発振回路111と分周回路112の動作電流が増え、発振周波数もわずかではあるが変化する。しかし、例えばモーターパルス出力する周期が1s、VREG2に切り替える期間は数msであるため、その影響は1/100〜1/1000へ軽減され、ほとんど無視することができる。
図2ではt1<t<t2の期間を設けて動作説明を行なったが、t1<t<t2の期間は省略し、t2のタイミングでVREGをVREG1からVREG2へ切り替えてもよい。さらに、t3<t<t4の期間を設けて動作説明を行なったが、t3<t<t4の期間は省略し、t3のタイミングでVREGをVREG2からVREG1へ切り替えてもよい。
【0016】
図3に本実施形態の定電圧回路110の構成例を示す。制御信号φ1Xは制御信号φ1の反転信号である。制御信号φ1がLowレベルの時は、トランジスタN36とP36で構成されるスイッチがONとなり、トランジスタN34はショートされる。VREGはトランジスタP31のゲート−ソース間電圧とトランジスタN33のゲート−ソース間電圧の和で決まるVREG1となる。一方、φ1制御信号がHighレベルの時は、トランジスタN36とP36で構成されるスイッチがOFFとなり、トランジスタN34はショートされない。VREGはトランジスタP31のゲート−ソース間電圧とトランジスタN33のゲート−ソース間電圧とN34のゲート−ソース間電圧の和で決まるVREG2となる。
【0017】
なお、アナログ電子時計では、発振回路111を発振起動させる1つの手段として、発振回路111に低消費で発振継続するためのVREGよりも絶対値の大きい発振開始電圧VBUPを印加する方法がある。VBUP発生回路を備えている場合は、VBUPをVREG2として用いることもできる。この場合、より回路を単純化できる。
また、定電圧回路110の出力電圧VREGの第二の出力電圧VREG2をVSS電圧とすることができる。この場合の動作に関わるノードの波形を
図4に示す。
【0018】
図5に本実施の形態の定電圧回路110の構成例を示す。制御信号φ1Xは制御信号φ1の反転信号である。制御信号φ1がLowレベルの時は、トランジスタN55とP56で構成されるスイッチがONとなり、トランジスタP57はOFFとなる。VREGはトランジスタP31のゲート−ソース間電圧とトランジスタN33のゲート−ソース間電圧の和で決まるVREG1となる。
【0019】
一方、φ1制御信号がHighレベルの時は、トランジスタN55とP56で構成されるスイッチがOFFとなり、トランジスタP57はONとなり、トランジスタN54はフルオンすることで、VREG2はVSSとなる。
【符号の説明】
【0020】
10 水晶
11 半導体装置
12 モーター
13 電池
110 定電圧回路
111 発振回路
112 分周回路
113 出力制御回路
30、50 電流源