【実施例】
【0023】
図2は、電圧調整装置300(負荷時タップ切替変圧器LRTや自動電圧調整器SVR)が設置された配電系統100(フィーダ)の一例を示した図である。但しここでは、電圧調整装置300として自動電圧調整器SVRを配置した例を示しているが、これは負荷時タップ切替変圧器LRTとしてもよい。
【0024】
この図で示される典型的な配電系統100は、ノード(母線)120およびそれらを接続する配電線路140、ノード120に接続される負荷150や太陽光発電装置130、配電線路に設置されるセンサ170、配電用変電所110などで構成される。
【0025】
ここで、配電用変電所110のある図示左側をフィーダの送出し側、右側をフィーダの末端側と呼ぶこととする。自動電圧調整器300は、線路140に直列に設置され、線路電圧を調整する電圧調整装置である。
【0026】
自動電圧調整器SVRは、配電用変電所における負荷時タップ切替変圧器(LRT:Load Ratio Control Transformer)であってもよいが、例えば自動電圧調整器300に例示されるように、単巻変圧器とタップチェンジャで構成される変圧器305と、制御部分を備える。
【0027】
図2の自動電圧調整器SVRの制御部分は、配電線路の電気量を測定するセンサ170、変圧器のタップを制御するタップ制御装置310で構成される。本発明に係る変圧器305と、制御部分の具体的な回路構成例を
図1に示す。
【0028】
本発明では、従来からのタップ制御装置310に太陽光発電出力把握装置340を追加し、太陽光発電出力の情報を元に、線路電圧降下補償回路(LDC)330によってタップ値を制御する。ここで、線路電圧降下補償装置LDC(Line Drop Compensator)は、系統の電圧低下を補償するように負荷時タップ切替変圧器LRTや、自動電圧調整器SVR二次側電圧を決定する制御装置である。線路電圧降下補償回路(LDC)330は、タップ制御装置310と太陽光発電出力把握装置340の情報を元に作動する。
【0029】
図1を用いてまず従来のタップ制御の考え方を説明し、その後に本発明により追加された太陽光発電出力把握装置340との関わりについて説明する。
図1には、自動電圧調整器300の主回路である単巻変圧器303、タップチェンジャ302と、制御装置であるタップ制御装置310が記載されている。
【0030】
タップ制御装置310は、計測部320、線路電圧降下補償回路(LDC)330、太陽光発電出力把握部340、データベース350を備え、単巻変圧器303の二次側電圧を所定値に制御すべくタップチェンジャ302を操作している。
【0031】
タップ制御装置310の計測部320には、配電線路の二次側電流Isvr1を測定するセンサCT、および二次側電圧Vsvr1を測定するセンサPTが接続される。
【0032】
線路電圧降下補償回路(LDC)330では、計測部320で測定された二次側電圧Vsvr1などから、仮想点(例えば線路末端)の電圧Vsvrを算出し、これが所定の制限値を逸脱していることを検出し、この状態が所定の計測時間以上継続していることをもって、切替制御を実行する。なお、
図1の線路電圧降下補償回路(LDC)330において、仮想点の電圧VsvrはSVR二次電圧推定部において求められる。この仮想点電圧を以下単に二次側電圧と呼称することにする。
【0033】
さらに本発明の線路電圧降下補償回路(LDC)330では、太陽光発電出力把握部340からの出力をもとに電圧上昇変化量ΔVpvu、電圧下降変化量ΔVpvlを電圧補正部において算出するが、この部分の機能については(3)(4)式を用いて後述する。
【0034】
また線路電圧降下補償回路(LDC)330は、タップ操作制御部を備え、SVR二次電圧推定部からの出力Vsvrと、電圧補正部からの出力(電圧上昇変化量ΔVpvu、電圧下降変化量ΔVpvl)によりタップ操作を実行ずる。
【0035】
タップ制御装置310における上記の切替制御については、従来から種々の方式が提案されている。本発明ではこの方式に限定されるものではないが、例えば以下のように行うことができる。
【0036】
タップ切替の典型的な一例では、線路電圧降下補償回路(LDC)330は、計測部320で測定された二次側電流Isvr1、二次側電圧Vsvr1から、有効電力Psvr、無効電力Qsvr、力率cosθを計算する。
【0037】
また線路電圧降下補償回路(LDC)330は、データベース350からパラメータ(R、X、Vref)を読み込み、(1)式の実行に使用する。タップ制御装置310における(1)式の実行により、タップ動作判定基準値Vsが計算される。
[数1]
Vs=Vref+R・Ir+X・Ii (1)
ここで、R、X、Vrefは、予め設定されたパラメータであり、IrとIiは、計測した通過電流Isvr1と力率cosθから求めた通過電流の実部と、通過電流の虚部である。そして、Rは自動電圧調整器SVRの通過電流の実部Irに対する係数、Xは自動電圧調整器SVRの通過電流の虚部Iiに対する係数、Vrefは基準電圧である。
【0038】
自動電圧調整器SVRの二次側電圧は、有効電力Psvrあるいは無効電力Qsvrによって変動するが、(1)式はその変動の大きさを基準値Vsとして計算したものである。基準値Vsは、自動電圧調整器SVRの二次側の配電線路各所における電圧(二次側電圧)のうち、当該配電線路の負荷重心点の電圧を算出したものということができる。
【0039】
またこの値は負荷状況(有効無効電力変動、あるいは有効無効電流変動)を反映した可変の値である。二次側電圧は、単巻変圧器303のタップチェンジャ302のタップ位置が同じであっても、有効電力Psvrあるいは無効電力Qsvrによって変動する。(1)式で定まる範囲を逸脱するときには、タップ位置を修正する必要がある。
【0040】
このため、(1)式で求めた基準値Vsに対して自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、所定の制限値εを超えるという条件を満たす時間をタップ制御装置内に設けられたタイマで積算し、その値がTsvrを超えた場合にタップへ切換え指令が出される。
【0041】
例えば、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが、この基準値Vsより一定値ε以上小さい状態で一定時間(例えば、Tsvr秒)経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を上げ方向に変更し、二次側電圧を上昇させる。逆に、自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrがこの基準値Vsより一定値ε以上大きい状態で一定時間経過すると、自動電圧調整器SVRのタップ302を下げ方向に変更し、二次側電圧を下降させる。
【0042】
図3に、タップによって電圧を下げる場合の電圧経過グラフを示す。
図3は横軸に時間t、縦軸に二次側電圧Vsvrを示しており、二次側電圧Vsvrが時間の経過と共に増加していったとする。そして、時刻t1で自動電圧調整器SVRの二次側電圧Vsvrが基準値プラス一定値(Vs+ε)を超えたとする。
【0043】
この場合に、自動電圧調整器SVRのタップ制御装置310は、所定の設定時間Tsvr秒経過しても二次側電圧Vsvrが基準値プラス一定値(Vs+ε)を超えた状態が継続していることを確認する。タップ制御装置310は、所定の設定時間Tsvr秒経過し他時刻t2においてタップ動作させる。
【0044】
これにより、(b)の点線波形のように自動電圧調整器SVR二次側電圧Vsvrは、基準値プラス一定値(Vs+ε)以下まで下降する。ここで、一定値εは不感帯を設けるための定数であり、(a)は、タップ動作させない場合を示している。
【0045】
このように、線路電圧降下補償回路(LDC)330は、自動電圧調整器SVRの通過電流情報と線路電圧降下補償回路LDCに設定されたパラメータを元に、二次側電圧Vsvrの制御を行う。なお、自動電圧調整器SVRの詳細な構成は、非特許文献1にも詳しく記載されている。
【0046】
本発明では、通常の自動電圧調整器SVRのタップ制御装置のタップ動作判定基準値Vsと、自動電圧調整器SVRより末端側に設置された太陽光発電装置130の発電設備容量合計値と、発電量現在値の合計値に応じて、タップ制御動作の判定を行う。
【0047】
図1に示すように、タップ制御装置310は、線路電圧降下補償回路(LDC)330、計測部320、太陽光発電出力把握装置340、データベース350で構成される。
【0048】
データベース350には、各種パラメータ(LDCパラメータ)として、(1)式で用いるVref、R、X以外に、不感帯ε、タイマ時定数Tsvr、太陽光発電感度係数Rs、太陽光発電出力最大値Ipvmaxが記憶されている。
【0049】
太陽光発電出力把握装置340は、自動電圧調整器SVRより末端側に設置された太陽光発電装置130による発電出力の合計値である太陽光発電出力電流Ipvを求めている。
【0050】
線路電圧降下補償回路(LDC)330は、データベース350内の各種パラメータと、太陽光発電出力把握装置340の太陽光発電出力電流Ipvに応じて、自動電圧調整器SVRのタップ制御動作判定を行う。
【0051】
以下本発明装置の動作説明に入る前に、自動電圧調整器SVRのタップ制御動作に太陽光発電出力の要素を反映させるときの考え方について、
図4と
図5により説明しておく。まず
図4は横軸に時間、縦軸に自動電圧調整器SVRの二次側電圧と、太陽光発電出力電流Ipv(日射量)を表示している。二次側電圧は、基準電圧Vrefに一定値εを増減した範囲(Vref+εないしVref−ε)内に入るように自動電圧調整器SVRのタップ位置が定められる。
【0052】
例えば、
図4に示すように、天候快晴により太陽光発電量Ipvが大きいときに、自動電圧調整器SVRが不感帯幅(Vref±ε)の中で低めに電圧を調整していたとする。この場合従来手法であれば、天候曇天となり太陽光発電Ipvが減少したとすると、このタップ位置の場合には、二次側電圧が不感帯下限(Vref−ε)を逸脱することになる。
【0053】
この不感帯下限逸脱状態では、自動電圧調整器SVRのタップ値の変更が必要な状態であり、二次側電圧が適正に維持できないこととなる。また、タップ変更回数の増加につながることになる。
【0054】
これに対し本発明では、天候曇天となることを考慮したタップ位置としておく。具体的には
図5に示すように、現時点では天候快晴により太陽光発電出力Ipvが大きい状態であるが、以後は現在以上の晴天となることはなく、むしろ天候曇天となると考えられる。このことは、二次電圧が低下する傾向であることから、仮に低下しても二次側電圧が不感帯下限(Vref−ε)を逸脱しないタップ位置とするのがよい。つまり、自動電圧調整器SVRのタップを不感帯幅(Vref±ε)の中で高め電圧となるように変更しておけばよい。
【0055】
これにより、太陽光発電出力の変化にかかわらず、自動電圧調整器SVRはタップ変更が必要でない状態を保つことができる。また、電圧の適正維持が可能となるとともに、タップ動作回数の増加も回避することができる。
【0056】
図5の説明から明らかなように、本発明の基本概念においては以下のように操作することを提案する。
【0057】
例えば、現時点では天候が曇りであれば今後は快晴に転じることを想定し、快晴となったときの電圧変化幅(上昇方向)を推定する。そこで自動電圧調整器SVRとしては、この電圧変化幅の電圧上昇が生じたとしても系統の電圧規定範囲の上限を超えないように現時点の自動電圧調整器SVRのタップを低めに調整しておく。
【0058】
逆に現時点では天候が快晴であれば今後は曇りに転じることを想定し、曇りになったときの電圧変化幅(低下方向)を推定する。そこで自動電圧調整器SVRとしては、この電圧変化幅の電圧低下が生じたとしても系統の電圧規定範囲の下限を超えないように現時点の自動電圧調整器SVRのタップを高めに調整しておく。
【0059】
以上述べたタップ制御を実現するためのタップ制御動作判定の概要は次のとおりである。まず、自動電圧調整器SVRの制御対象エリア内の太陽光発電出力は、日射計の測定値などで推定できるものと仮定する。この条件で、太陽光発電出力が最大限変化した場合に自動電圧調整器SVRの制御対象エリア内に発生する電圧変化を考える。本発明では、その変化によって生じる電圧変動幅が、系統の電圧規定範囲内に入るように、現時点の自動電圧調整器SVRのタップを調整しておく。
【0060】
ところで、太陽光発電出力の出力電力の変化は、大半は有効電力の変化である。またそれによってもたらされる電圧変化は、フィーダの抵抗成分に大きく依存すると考えられる。そこで、太陽光発電の出力電流変化によって発生する系統内の電圧変化量ΔVpvを、太陽光発電の出力電流変化量ΔIpvと、感度係数Rsによって(2)式のように近似的に求めることができる。
[数2]
ΔVpv = Rs × ΔIpv (2)
ここで、太陽光発電の出力電流Ipvが、日射計の出力からの推定等によって把握できるとすると、現状から太陽光発電の出力が最大および最小となった場合のフィーダの電圧上昇変化量ΔVpvu、電圧下降変化量ΔVpvlは、(3)(4)式のように近似的に計算できる。
[数3]
ΔVpvu = Rs×(Ipvmax−Ipv) (3)
[数4]
ΔVpvl = Rs×Ipv (4)
ここで、Ipvmaxは自動電圧調整器SVRの末端側に設置される太陽光発電装置の最大出力電流の合計値を表す。これらの電圧変化量のイメージを
図6に示す。
図6の横軸には配電線路の距離、縦軸には電圧を示している。電圧は一般には変電所から遠ざかるほど低下する。P1は自動電圧調整器SVRの設置点であり、タップ調整により電圧回復する。
図6で実線L1が現在の天候と、タップ位置を反映した二次側電圧の現在の状態である。
【0061】
P2は例えば(1)式の仮想点の二次側電圧であり、この電圧について現状から太陽光発電の出力が最大(Ppvmax)および最小(Ppv=0)となった場合のフィーダの電圧上昇変化量ΔVpvu((3)式)、電圧下降変化量ΔVpvl((4)式)が点線L2、L3で示されている。
【0062】
図6において、太陽光発電出力が最大および最小となった場合を想定した2つの値L2、L3(バンド幅)が不感帯の上下限値内に存在するかどうかで、自動電圧調整器SVRのタップ制御判定を行う方式を考える。
【0063】
現状の系統状態に対し、太陽光発電出力が仮に最大、最小に急変した場合の電圧変化量を(3)(4)式で算出し、それを用いて自動電圧調整器SVRのタップ制御判定を行う。ここで、(3)(4)式の感度係数Rsは整定パラメータとするか、または潮流計算等で算出すればよい。整定パラメータとした場合は、フィーダ幹線のインピーダンスの値に等しく決定すればよい。
【0064】
以上の考えに基づく自動電圧調整器SVRのタップ切換え処理フローを、
図7に示し、以下、ステップS1〜ステップS9までの各ステップの処理概要を説明する。
【0065】
最初のステップS1では、タップ制御に使用するSVR二次側電圧Vsvr、通過電流I、通過電流力率cosθ、太陽光発電出力電流I太陽光発電を読み込み、取得する。
【0066】
ステップS2では、タップ動作判定基準値Vs、電圧上昇変化量ΔVpvu、電圧下降変化量ΔVpvlを、(1)、(3)、(4)式に従って計算する。なおこれらの式の実行に当たって使用するパラメータなどは適宜データベース350を参照する。
【0067】
次のステップS3では、電圧変化量が不感帯の上下限値を逸脱していることを判定する。
図7の右側の列では下限値側の逸脱を、左側の列では上限値側の逸脱を判定する。このうち、ステップS3aでは、不感帯の上限逸脱判定を(5)式によって行う。
[数5]
Vs+ ΔVpvu > Vsvr +ε (5)
なお、 式(5)が満たされなければステップS1に戻り、次の処理時刻の新たな入力をもとに上記処理を繰り返し実行する。
【0068】
(5)式が成立(不感帯の上限逸脱)するときには、ステップS4aへ移り、タイマτ1のカウントを増やす。続いてステップS5aでは、タイマτ1のカウント値を逸脱確認時間Tsvrの設定値と比較する。カウント値が設定時間を超過しているとき、ステップS6aへ移る。
【0069】
ステップS6aでは、自動電圧調整器SVRのタップを、二次側電圧が下がる方向へ変更する。
【0070】
他方、ステップS3bでは不感帯の下限逸脱判定を式(6)によって行う
[数6]
Vs − ΔVpvl < Vsvr −ε (6)
なお、式(6)が満たされなければステップS1に戻り、次の処理時刻の新たな入力をもとに上記処理を繰り返し実行する。
【0071】
(6)式が成立(不感帯の下限逸脱)するときには、ステップS4bへ移り、タイマτ2のカウントを増やす。続いてステップS5bでは、タイマτ2のカウント値を逸脱確認時間Tsvrの設定値と比較する。カウント値が設定時間を超過しているとき、ステップS6bへ移る。
【0072】
ステップS6bでは、自動電圧調整器SVRのタップを、二次側電圧が上がる方向へ変更する。
【0073】
ステップS7は、タップ変更処理後に行われ、タイマτ1およびτ2の値を0に設定し、リセットして、S1へ戻る。
【0074】
次に、
図8および
図9を用いて、従来手法による自動電圧調整器SVRの制御動作例と、本発明による制御動作例を示す。
【0075】
図8は従来手法による自動電圧調整器SVRの制御動作例を示す。縦軸には電圧、横軸には時間経過を示している。この図では、(1)式で求められたタップ動作判定基準値Vsが、太陽光発電量の変化によって、時点t1で不感帯上限を逸脱し、45秒後の時点t2にタップ動作によって自動電圧調整器SVRの二次側電圧が低下し、これに伴ってタップ動作判定基準値Vsも低下している様子を示している。また、時点t3で今度は不感帯下限を逸脱し、45秒後の時刻t4にタップ動作によってタップ動作判定基準値Vsが上昇している様子を示している。
【0076】
図9は本発明による自動電圧調整器SVRの制御動作例を示す。
図9の場合にも
図8と同様に、(1)式で求められたタップ動作判定基準値Vsが太陽光発電量の変化によって増大していく事例を想定している。但し本発明の場合には、タップ動作判定基準値Vsに(3)式で求められたΔVpvuを加えた合成値を用いて上下限の制限値逸脱を判定する。
【0077】
図では一点鎖線がタップ動作判定基準値Vsに(3)式で求められたΔVpvuを加えた合成値の推移を示している。この図で明らかなように、合成電圧(Vs+ΔVpvu)がタップ動作判定基準値Vsに先だって上限値に近づく。そして、時刻t5で(Vs+ΔVpvu)が不感帯上限を逸脱する。本発明では、合成電圧(Vs+ΔVpvu)の逸脱継続を監視しており、45秒後のt6にタップ動作によって自動電圧調整器SVRの二次側電圧が低下する。これに伴ってタップ動作判定基準値Vsも低下している。
【0078】
また、図では二点鎖線がタップ動作判定基準値Vsから(4)式で求められたΔVpv1を減算した合成値の推移を示している。この図で明らかなように、合成電圧(Vs−ΔVpv1)がタップ動作判定基準値Vsに先だって下限値に近づく。そして、時刻t7で(Vs−ΔVpvu)が不感帯下限を逸脱する。本発明では、合成電圧(Vs−ΔVpvu)の逸脱継続を監視しており、45秒後のt8にタップ動作によって自動電圧調整器SVRの二次側電圧が上昇する。これに伴ってタップ動作判定基準値Vsも上昇している。
【0079】
この場合、実際の状態の電圧を表すVsは、不感帯上下限範囲内に滞在している。これは、従来手法にくらべて、より電圧が適正範囲に維持されていることを示すものである。
【0080】
次に
図10および
図11を用いて、従来手法による自動電圧調整器SVRの制御動作例と、本発明による制御動作波形例を示す。
【0081】
図10は従来手法による自動電圧調整器SVRの制御動作波形例を示す。同図上は時間経過に対するフィーダ末端の電圧値を、同図下は時間経過に対する自動電圧調整器SVRのタップ番号の移動の変遷を示す。時間経過としては1時間単位に9時から17時までの日中を示している。この図によれば、フィーダ末端の電圧値は日照条件の変動による太陽光発電出力の変動により頻繁に変動していることがわかる
この操作事例では、フィーダ末端の電圧を約6300ボルトから6900ボルトの範囲に制御すべく自動電圧調整器SVRのタップがタップ番号4から8の範囲で変動制御されている。然しながら、自動電圧調整器SVRのタップ操作では太陽光発電出力の早い変動に追従することができず、例えば10時前後、12時前後に上限値を逸脱している期間があることがわかる。
【0082】
図11は、
図10と同じ条件下での本発明による自動電圧調整器SVRの制御動作波形例を示す。
図11の波形を
図10と比較すると、まずタップはタップ番号3から8の範囲で変動制御されている。かつ、より頻繁に操作されている。特に、10時前後、12時前後の上限値を逸脱している期間で比較すると、逸脱の事前のタイミングで早めにタップ位置を下げる操作が実行されていることがわかる。これにより、上限の逸脱が阻止されていることが見て取れる。
【0083】
図12は、本発明のタップ操作を決定する要素間の関係を示すであり、この図を用いて本発明の日射量に応じたタップ操作の意義について説明する。
図12は
図9の一部を拡大して示したものであり、A点が現在電圧である。ここに示すようにタップ操作を決定する要素は、上下限制限値、タップ動作判定基準値Vs、日射量で定まる電圧変動(上昇、下降)量ΔVpvである。
【0084】
このうち上下限制限値は
図10、
図11にも示したように一定値である。タップ動作判定基準値Vsは、(1)式に示すように負荷状況(有効無効電力変動、あるいは有効無効電流変動)を反映した可変の値である。但し、ここではタップ動作判定基準値Vsを固定として検討する。
【0085】
日射量で定まる電圧変動(上昇、下降)量ΔVpvは、(3)(4)式でそれぞれ求められたものである。
図12は、タップ動作判定基準値VsがA点で固定としたときに、晴天(
図12左)と曇天(
図12右)のときの電圧変動上昇量ΔVpvuと電圧変動下降量ΔVpv1を示したものである。曇天では電圧変動上昇量ΔVpvu側に大きく反映され、晴天では電圧変動下降量ΔVpv1側に大きく反映される。
【0086】
しかるに制限値との比較は、タップ動作判定基準値Vsと電圧変動(上昇、下降)量ΔVpvとの合成値に対して実行されている。このことから、タップ動作判定基準値Vsが負荷状況を反映して高電圧側に変動したときには、曇天では上限に達しやすい状況となる。速めにタップ下げ操作が実行されて、二次側電圧を下げておくこととなる。これにより、天候快晴に急変しても二次側電圧の上限逸脱を阻止できる。
【0087】
逆にタップ動作判定基準値Vsが負荷状況を反映して低電圧側に変動したときには、晴天では下限に達しやすい状況となる。速めにタップ上げ操作が実行されて、二次側電圧を上げておくこととなる。これにより、天候曇天に急変しても二次側電圧の下限逸脱を阻止できる。
【0088】
本発明による以上のような制御により、電圧逸脱の可能性を小さくでき、また早い周期の電圧変動を抑制するために必要となる他の高速応答可能な電圧制御機器の必要容量を削減できる。
【0089】
また、本発明では、自動電圧調整器SVRが日射計を備えるなどすれば、自端の計測情報のみから制御可能な構成も可能であり、自動電圧調整器SVRのパラメータ変更やタップ制御に、配電系統の他の地点と情報伝達を行うための通信設備を必要としない効果がある。
【0090】
以上のように、系統の太陽光発電の状態に応じて、自動電圧調整器SVRのタップ変更制御を行うことで電圧維持を効率的に行うこと可能となる。