(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体に固定される駆動用コイルと、前記駆動用コイルに対向するように前記固定体に固定される駆動用磁石と、前記可動体と前記固定体とを繋ぐバネ部材と、前記駆動用磁石よりも被写体側で前記可動体に固定され前記駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって前記光軸方向における前記可動体の基準位置に向かって前記可動体を付勢する環状の磁性部材とを備え、
前記可動体の被写体側には、前記磁性部材を搭載するための搭載面が前記レンズを囲むように形成されるとともに、前記搭載面の内周側から被写体側に向かって立ち上る内壁部と、前記搭載面の外周側から被写体側に向かって立ち上る複数の外壁部とが形成され、
前記レンズの周方向において、複数の前記外壁部の間に隙間が形成されているレンズ駆動装置の調整方法であって、
前記基準位置にある前記可動体を始動させるのに必要な前記駆動用コイルの電流を始動電流とすると、
前記内壁部と前記外壁部との間であって、かつ、前記搭載面と前記磁性部材との間に接着剤を塗布するとともに、前記接着剤の厚みによって前記光軸方向における前記磁性部材の位置を調整することで前記始動電流を調整することを特徴とするレンズ駆動装置の調整方法。
前記バネ部材は、前記可動体の被写体側に固定される可動体固定部と、前記固定体に固定される固定体固定部と、前記可動体固定部と前記固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、
前記外壁部の被写体側の端面は、前記可動体固定部が固定されるバネ固定面となっていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ駆動装置の調整方法。
前記光軸方向における前記内壁部および前記外壁部の高さは、前記磁性部材の厚みよりも高くなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズ駆動装置の調整方法。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置として、レンズを保持して光軸方向へ移動する移動体と、移動体を光軸方向へ移動可能に保持する支持体と、移動体を光軸方向へ駆動するための駆動用コイルおよび駆動用磁石とを備えるレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置では、移動体に駆動用コイルが取り付けられ、支持体に駆動用磁石が取り付けられている。また、このレンズ駆動装置では、光軸方向における移動体の両端側に配置される板バネによって、移動体と支持体とが繋がれている。
【0003】
また、特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置では、光軸方向における移動体の両端側に配置される板バネのうち、被写体側に配置される板バネは、移動体に固定される円環状の第1固定部と、支持体に固定される第2固定部と、第1固定部と第2固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備えている。この板バネは、その腕部が撓んだ状態で、移動体および支持体に固定されており、この板バネの付勢力によって、移動体は、光軸方向における移動体の基準位置に向かって付勢されている。
【0004】
特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、板バネの第1固定部と、移動体の、第1固定部が固定される部分との間に円環状の磁性部材が配置されている。このレンズ駆動装置では、この磁性部材と、支持体に固定される駆動用磁石との間に、磁気的な吸引力が作用しており、被写体側に配置される板バネの付勢力に加え、この磁気的吸引力によっても、光軸方向における移動体の基準位置に向かって移動体が付勢されている。
【0005】
また、特許文献2に記載のレンズ駆動装置では、移動体の被写体側に円形の磁性片保持穴が形成されている。この磁性片保持穴は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となる移動体の四隅に形成されており、4個の磁性片保持穴のそれぞれには、球状に形成される磁性片が収容されている。このレンズ駆動装置では、この磁性片と、支持体に固定される駆動用磁石との間に、磁気的な吸引力が作用しており、被写体側に配置される板バネの付勢力に加え、この磁気的吸引力によっても、光軸方向における移動体の基準位置に向かって移動体が付勢されている。なお、このレンズ駆動装置では、磁性片保持穴に収容される磁性片の数を変えたり、磁性片保持穴に収容される磁性片の大きさを変えたりして、磁性片と駆動用磁石との間の磁気的吸引力を調整することで、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力を調整することが可能になっており、その結果、基準位置にある移動体を始動させるのに必要な駆動用コイルの電流(始動電流)を調整することが可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置では、被写体側に配置される板バネの付勢力と、磁性部材または磁性片と駆動用磁石との間の磁気的吸引力とによって、光軸方向における移動体の基準位置に向かって移動体が付勢されている。そのため、このレンズ駆動装置では、被写体側に配置される板バネのバネ特性や駆動用磁石の磁力等がばらついて、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力がばらつくと、始動電流がばらついて、レンズ駆動装置の特性がばらつく。
【0008】
この場合、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、磁性部材の厚みや幅を調整することで、磁性部材と駆動用磁石との間の磁気的吸引力を調整することが可能であるため、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力のばらつきを抑制して、始動電流のばらつきを抑制することが可能である。しかしながら、この場合には、厚みや幅の異なる複数種類の磁性部材を準備する必要があるため、部品の管理が煩雑になり、また、複数種類の磁性部材のうちの何種類かの磁性部材が使用されずに在庫として残るおそれもある。
【0009】
一方、特許文献2に記載のレンズ駆動装置では、被写体側に配置される板バネのバネ特性等がばらついて、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力がばらついた場合に、磁性片保持穴に収容される磁性片の数や大きさを変えることで、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力のばらつきを抑制して、始動電流のばらつきを抑制することが可能である。しかしながら、このレンズ駆動装置でも、大きさの異なる複数種類の磁性片を準備する必要があるため、部品の管理が煩雑になり、また、複数種類の磁性片のうちの何種類かの磁性片が使用されずに在庫として残るおそれもある。
【0010】
ここで、特許文献2に記載のレンズ駆動装置では、大きさの異なる複数種類の磁性片を準備しなくても、磁性片保持穴に収容される磁性片の位置を調整して、磁性片と駆動用磁石との距離を調整することで、磁性片と駆動用磁石との間の磁気的吸引力を調整して、基準位置に向かう方向への移動体の付勢力のばらつきを抑制することが可能であり、その結果、始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。しかしながら、このレンズ駆動装置では、移動体の四隅のそれぞれに配置される磁性片の位置を調整する必要があるため、その調整作業が煩雑になる。
【0011】
そこで、本発明の課題は、可動体と固定体とを繋ぐバネ部材のバネ特性等がばらついても、使用される部品の在庫管理を簡素化しつつ、容易な調整で始動電流のばらつきを抑制することが可能なレンズ駆動装
置の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置
の調整方法は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体に固定される駆動用コイルと、駆動用コイルに対向するように固定体に固定される駆動用磁石と、可動体と固定体とを繋ぐバネ部材と、駆動用磁石よりも被写体側で可動体に固定され駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって光軸方向における可動体の基準位置に向かって可動体を付勢する環状の磁性部材とを備え、可動体の被写体側には、磁性部材を搭載するための搭載面がレンズを囲むように形成されるとともに、搭載面の内周側から被写体側に向かって立ち上る内壁部と、搭載面の外周側から被写体側に向かって立ち上る複数の外壁部とが形成され、レンズの周方向において、複数の外壁部の間に隙間が形成されている
レンズ駆動装置の調整方法であって、基準位置にある可動体を始動させるのに必要な駆動用コイルの電流を始動電流とすると、内壁部と外壁部との間であって、かつ、搭載面と磁性部材との間に接着剤を塗布するとともに、接着剤の厚みによって光軸方向における磁性部材の位置を調整することで始動電流を調整することを特徴とする。
【0013】
本発明のレンズ駆動装置は、駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって光軸方向における可動体の基準位置に向かって可動体を付勢する環状の磁性部材を備えている。また、本発明では、可動体の被写体側に、磁性部材を搭載するための搭載面がレンズを囲むように形成されるとともに、搭載面の内周側から被写体側に向かって立ち上る内壁部と、搭載面の外周側から被写体側に向かって立ち上る複数の外壁部とが形成されている。そのため、本発明では、バネ部材のバネ特性等がばらついても、内壁部と外壁部との間で、光軸方向における磁性部材の位置を調整して、磁性部材と駆動用磁石との距離を調整することで、磁性部材と駆動用磁石との間の磁気的吸引力を調整して、基準位置に向かう方向への可動体の付勢力のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本発明では、厚みや幅の異なる複数種類の磁性部材を準備しなくても、始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。すなわち、本発明では、レンズ駆動装置に使用される部品の在庫管理を簡素化しつつ、始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。
【0014】
また、本発明では、環状に形成される1個の磁性部材の光軸方向における位置を調整すれば良いため、磁性部材の位置調整が容易になり、その結果、始動電流のばらつきの調整が容易になる。すなわち、本発明では、バネ部材のバネ特性等がばらついても、容易な調整で始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。また、本発明では、レンズの周方向において複数の外壁部の間に隙間が形成されているため、隙間を利用してピンセット等で環状の磁性部材を摘みながら磁性部材の位置調整を行うことが可能になる。したがって、本発明では、磁性部材の位置調整時に磁性部材を移動させやすくなり、その結果、磁性部材の位置調整がより容易になる。
また、本発明では、内壁部と外壁部との間であって、かつ、搭載面と磁性部材との間に接着剤を塗布するとともに、接着剤の厚みによって光軸方向における磁性部材の位置を調整するため、光軸方向における磁性部材の位置を調整するための部材を設ける必要がなくなる。したがって、レンズ駆動装置の部品点数の増加を防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、レンズ駆動装置は、光軸方向から見たときの形状が略矩形状となるように形成され、駆動用磁石は、略平板状に形成されるとともに、光軸方向から見たときのレンズ駆動装置の四辺のそれぞれに沿うように配置され、可動体には、4個の外壁部が形成され、4個の外壁部は、レンズ駆動装置の四隅のそれぞれに配置されていることが好ましい。このように構成すると、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置の四隅に外壁部が配置されるため、光軸方向に直交する方向において、レンズ駆動装置を小型化することが可能になる。
【0016】
本発明において、バネ部材は、可動体の被写体側に固定される可動体固定部と、固定体に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、外壁部の被写体側の端面は、可動体固定部が固定されるバネ固定面となっていることが好ましい。このように構成すると、可動体固定部を固定するための構成を別途、可動体に設ける必要がなくなる。したがって、可動体の構成を簡素化することが可能になる。
【0017】
本発明において、光軸方向における内壁部および外壁部の高さは、磁性部材の厚みよりも高くなっていることが好ましい。このように構成すると、光軸方向における磁性部材の位置の調整幅を大きくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のレンズ駆動装置
の調整方法では、バネ部材のバネ特性等がばらついても、使用される部品の在庫管理を簡素化しつつ、容易な調整で始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。また、本発明のレンズ駆動装置の調整方法では
、レンズ駆動装置の部品点数の増加を防止することが可能にな
る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(レンズ駆動装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。
図2は、
図1のE−E断面の断面図である。
図3は、
図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
図4は、
図3に示す板バネ5の平面図である。なお、以下の説明では、
図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0024】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、
図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0025】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0026】
レンズ駆動装置1は、
図1、
図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。また、レンズ駆動装置1は、
図2、
図3に示すように、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6を備えている。すなわち、可動体2は、板バネ5、6を介して固定体3に移動可能に保持されている。本形態では、板バネ5が可動体2の上端側に配置され、板バネ6が可動体2の下端側に配置されている。
【0027】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の側面の上端側部分を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の側面の下端側部分およびレンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11と、板バネ5の一部が固定されるスペーサ12とを備えている。スリーブ8の上端側には、軟磁性材料で形成された円環状の磁性部材13が固定されている。ベース部材11には、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル20へ電流を供給するための一対の給電端子14が固定されている。なお、
図3では、レンズホルダ7の図示を省略している。
【0028】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7の内周側には、複数のレンズが固定されている。スリーブ8は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略筒状に形成されている。具体的には、スリーブ8は、光軸方向から見たときの内周面の形状が略円形状となり、光軸方向から見たときの外周面の形状が略正方形状となる略筒状に形成されている。このスリーブ8は、その内周側でレンズホルダ7を保持している。スリーブ8の下端には、ベース部材11に形成される後述の基準面11bに当接して、光軸方向における可動体2の基準位置を決める突起部8aが下方向へ突出するように形成されている。突起部8aは、光軸Lを略中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。スリーブ8のより具体的な構成については後述する。
【0029】
カバー部材10は、磁性を有する金属材料で形成されている。また、カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。上側に配置される底部10aの中心には、貫通孔10cが形成されている。このカバー部材10は、可動体2および駆動機構4の外周側を覆っている。
【0030】
ベース部材11は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形となるブロック状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に取り付けられている。ベース部材11の中心には、貫通孔11aが形成されている。また、ベース部材11の上面には、光軸方向における可動体2の基準位置を決めるための基準面11bが、光軸方向に直交する平面状に形成されている。基準面11bは、光軸Lを略中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。本形態では、スリーブ8の突起部8aの下端面が基準面11bに当接しているときに、可動体2は、光軸方向の基準位置にある。
【0031】
スペーサ12は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略正方形の扁平なブロック状に形成されている。また、スペーサ12は、枠状に形成されており、その中心には、貫通孔が形成されている。このスペーサ12は、カバー部材10の底部10aの下面に固定されている。スペーサ12の四隅のそれぞれの下面側には、板バネ5を構成する後述の固定体固定部5bが接着固定されている。
【0032】
板バネ5は、金属材料によって板状に形成されている。この板バネ5は、
図4に示すように、スリーブ8の上端側に固定される可動体固定部5aと、スペーサ12に固定される4個の固定体固定部5bと、可動体固定部5aと固定体固定部5bとを繋ぐ4本の腕部5cとを備えている。可動体固定部5aは、円環状に形成されている。固定体固定部5bは、略長方形状に形成されており、可動体固定部5aよりも外周側に配置されている。また、4個の固定体固定部5bのそれぞれは、レンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置されている。腕部5cは、板バネ5の所望のバネ特性を得ることができるように略1/4円弧状に形成されている。本形態の板バネ5は、可動体2と固定体3とを繋ぐバネ部材である。
【0033】
板バネ5は、その厚み方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8およびスペーサ12に固定されている。固定体固定部5bは、可動体2の可動範囲において、可動体固定部5aよりも下側に配置されており、板バネ5は、腕部5cが常時、撓んでいる状態で、スリーブ8およびスペーサ12に固定されている。そのため、可動体2は、板バネ5の付勢力によって、常時、下方向へ付勢されている。すなわち、可動体2は、板バネ5の付勢力によって、スリーブ8の突起部8aの下端面がベース部材11の基準面11bに当接する可動体2の光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。
【0034】
板バネ6は、互いに電気的に分離された2個のバネ片15によって構成されている。バネ片15は、導電性を有する金属材料によって板状に形成されている。バネ片15は、スリーブ8の下端側に固定される可動体固定部と、ベース部材11に固定される2個の固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ2本の腕部とを備えている。バネ片15には、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル20の端部が電気的に接続されている。バネ片15は、その厚み方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。また、バネ片15は、後述の駆動用コイル20に電流が供給されていないときに、バネ片15による可動体2の付勢力が生じないように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。
【0035】
給電端子14は、導電性を有する金属材料によって形成されている。2個の給電端子14のうちの一方の給電端子14には、2個のバネ片15の一方が電気的に接続され、他方の給電端子14には、他方のバネ片15が電気的に接続されている。給電端子14は、ベース部材11に固定されている。
【0036】
駆動機構4は、スリーブ8の外周側に巻回される駆動用コイル20と、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置される駆動用磁石21とを備えている。駆動用コイル20は、スリーブ8の外周面に巻回されており、スリーブ8に固定されている。駆動用磁石21は、略矩形の平板状に形成されている。この駆動用磁石21は、前後方向または左右方向において駆動用コイル20の外周面と対向するようにカバー部材10の筒部10bの内側面に固定されている。すなわち、駆動用磁石21は、上下方向から見たときのレンズ駆動装置1の四辺のそれぞれに沿うように配置されている。本形態のカバー部材10は、磁気回路を形成するためのヨークの機能を果たしている。
【0037】
(スリーブの構成および磁性部材の配置等)
図5は、
図3に示すスリーブ8の斜視図である。
図6は、
図5に示すスリーブ8の平面図である。
図7は、
図2のF部の拡大図である。
【0038】
スリーブ8の外周側には、径方向の外側へ突出する鍔部8bが形成されている。鍔部8bは、スリーブ8の上端側および下端側の2箇所に形成されている。2個の鍔部8b間には、駆動用コイル20が巻回されている。スリーブ8の上端側には、磁性部材13を搭載するための搭載面8cが形成されている。搭載面8cは、レンズを囲むように略円環状に形成されている。この搭載面8cは、光軸方向に略直交する平面状に形成されている。また、搭載面8cは、上端側に形成される鍔部8bの上面よりも上側に形成されている。また、搭載面8cは、可動体2の可動範囲において、常に、駆動用磁石21よりも上側に配置されている。
【0039】
また、スリーブ8の上端側には、搭載面8cの内周側から上側に向かって立ち上る内壁部8dが形成されている。内壁部8dは、光軸Lを軸中心とする略円筒状に形成されている。内壁部8dの内周面は、スリーブ8の内周面の一部を構成している。なお、内壁部8dの前後方向の両端側と左右方向の一端側には、内壁部8dの上端から下側に向かって略矩形状に切り欠かれた切欠部8eが形成されている。
【0040】
さらに、スリーブ8の上端側には、搭載面8cの外周側から上側に向かって立ち上る複数の外壁部8fが形成されている。本形態では、4個の外壁部8fがスリーブ8の上端側に形成されている。外壁部8fは、光軸Lを曲率中心とする略円弧状の曲面状に形成されており、4個の外壁部8fは、光軸Lを中心にして略90°ピッチで形成されている。すなわち、レンズの周方向(スリーブ8の周方向)において、4個の外壁部8fの間には、隙間Sが形成されている。また、4個の外壁部8fは、光軸方向から見たときの外周面の形状が略正方形状となるスリーブ8の四隅のそれぞれに形成されており、レンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置されている。外壁部8fの上端面は、
図7に示すように、板バネ5の可動体固定部5aが接着固定されるバネ固定面8gとなっている。
【0041】
上下方向における内壁部8dの高さは、外壁部8fの高さよりも高くなっている。また、上下方向における内壁部8dおよび外壁部8fの高さは、磁性部材13の厚みよりも高くなっている。また、レンズの径方向(スリーブ8の径方向)における内壁部8dの外周面と外壁部8fの内周面との距離は、磁性部材13の幅よりも広くなっている。
【0042】
磁性部材13は、搭載面8cに直接、あるいは、後述の接着剤24を介して固定されている。また、上述のように、搭載面8cは、可動体2の可動範囲において、常に、駆動用磁石21よりも上側に配置されている。すなわち、磁性部材13は、駆動用磁石21よりも上側でスリーブ8に固定されている。そのため、磁性部材13と駆動用磁石21との間に生じる磁気的吸引力によって、可動体2は、常時、下方向へ付勢されている。すなわち、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力によって、可動体2は、スリーブ8の突起部8aの下端面がベース部材11の基準面11bに当接する可動体2の光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。また、上述のように、板バネ5の付勢力によっても、可動体2は、光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。すなわち、可動体2は、板バネ5の付勢力と、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力とによって、光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。
【0043】
本形態では、板バネ5のバネ特性、駆動用磁石21の磁力あるいはスリーブ8の寸法等にばらつきが生じて、光軸方向の基準位置に向かう可動体2の付勢力がばらついても、この付勢力を調整して、この付勢力のばらつきを抑制するため、レンズ駆動装置1の組立時に、光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整して、磁性部材13と駆動用磁石21との距離を調整することで、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を調整している。具体的には、レンズ駆動装置1の組立時に、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤24(
図7(B)参照)の厚みによって、光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整している。
【0044】
同じ生産ロットで生産された板バネ5のバネ特性はある程度、安定していると推定され、同じ生産ロッドで生産された駆動用磁石21の磁力はある程度、安定していると推定され、また、同じ生産ロッドで生産されたスリーブ8の寸法はある程度、安定していると推定される。そのため、本形態では、同じロッドで生産された板バネ5等が用いられる数個のレンズ駆動装置1の可動体2の付勢力を測定して、接着剤24の厚みを決定するとともに、可動体2の付勢力が測定されたレンズ駆動装置1の板バネ5等と生産ロッドが同じ板バネ5等が用いられるレンズ駆動装置1では、決定された厚みの接着剤24が内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される。
【0045】
たとえば、レンズ駆動装置1の組立時に測定された可動体2の付勢力が小さい場合には、磁性部材13と駆動用磁石21との距離を短くして、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を強くするため、
図7(A)に示すように、磁性部材13と搭載面8cとの間に接着剤24を塗布しない。すなわち、この場合には、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤24の厚みを0にする。一方、レンズ駆動装置1の組立時に測定された可動体2の付勢力が大きい場合には、磁性部材13と駆動用磁石21との距離を長くして、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を弱くするため、
図7(B)に示すように、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に所定の厚みの接着剤24を塗布する。
【0046】
なお、レンズ駆動装置1の組立時において、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に接着剤24が塗布される場合には、塗布された接着剤24が硬化した後に磁性部材13が接着剤24の上面に搭載される。また、その後、内壁部8dと外壁部8fとの間に接着剤が塗布されて磁性部材13がスリーブ8に固定される。また、レンズ駆動装置1の組立時において、磁性部材13と搭載面8cとの間に接着剤24が塗布されない場合には、磁性部材13が搭載面8cに搭載された後、内壁部8dと外壁部8fとの間に接着剤が塗布されて磁性部材13がスリーブ8に固定される。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、スリーブ8の上端側に、磁性部材13を搭載するための搭載面8cと、搭載面8cの内周側から上側に向かって立ち上る内壁部8dと、搭載面8cの外周側から上側に向かって立ち上る複数の外壁部8fとが形成されている。また、本形態では、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤24の厚みによって、光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整して、磁性部材13と駆動用磁石21との距離を調整することで、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を調整して、光軸方向の基準位置に向かう可動体2の付勢力のばらつきを抑制している。したがって、本形態では、板バネ5のバネ特性等がばらついても、1種類の磁性部材13を用いて、レンズ駆動装置1の始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。すなわち、本形態では、厚みや幅の異なる複数種類の磁性部材13を準備しなくても、レンズ駆動装置1の始動電流のばらつきを抑制することが可能になり、その結果、レンズ駆動装置1に使用される部品の在庫管理を簡素化しつつ、始動電流のばらつきを抑制することが可能になる。
【0048】
また、本形態では、円環状に形成される1個の磁性部材13の光軸方向における位置を調整すれば良いため、磁性部材13の位置調整が容易になる。したがって、本形態では、板バネ5のバネ特性等がばらついても、始動電流のばらつきの調整が容易になる。また、本形態では、スリーブ8の周方向において、4個の外壁部8fの間に隙間Sが形成されているため、隙間Sを利用してピンセット等で円環状の磁性部材13を摘みながら磁性部材13の位置調整を行うことが可能になる。したがって、本形態では、磁性部材13の位置調整時に磁性部材13を移動させやすくなる。また、4個の外壁部8fの間に隙間Sが形成されているため、隙間Sを利用して、内壁部8dと外壁部8fとの間に接着剤24を塗布しやすくなる。その結果、本形態では、磁性部材13の位置調整がより容易になる。
【0049】
本形態では、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されるレンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに4個の外壁部8fが配置されている。すなわち、本形態では、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置1の四隅に外壁部8fが配置されている。そのため、本形態では、前後左右方向において、レンズ駆動装置1を小型化することが可能になる。
【0050】
本形態では、外壁部8fの上端面は、板バネ5の可動体固定部5aが固定されるバネ固定面8gとなっている。そのため、本形態では、可動体固定部5aを固定するための構成を別途、スリーブ8に設ける必要がない。したがって、本形態では、スリーブ8の構成を簡素化することが可能になる。
【0051】
本形態では、上下方向における内壁部8dおよび外壁部8fの高さは、磁性部材13の厚みよりも高くなっている。そのため、本形態では、光軸方向における磁性部材13の位置の調整幅を大きくすることが可能になる。また、本形態では、内壁部8dと外壁部8fとによって、内壁部8dと外壁部8fとの間に塗布される接着剤24の流出を防止することが可能になる。
【0052】
本形態では、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤24の厚みによって光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整している。そのため、本形態では、光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整するための部材を設ける必要がない。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1の部品点数の増加を防止することができる。
【0053】
なお、本形態では、4個の外壁部8fの間に隙間Sが形成されているため、外壁部8fが円筒状に形成されている場合と比較して、磁性部材13と駆動用磁石21との距離を近づけることが可能になる。したがって、本形態では、磁性部材13と駆動用磁石21との磁気的吸引力を高めることが可能になる。また、本形態では、4個の外壁部8fは光軸Lを中心にして略90°ピッチで形成されており、4個の外壁部8fの間に形成される隙間Sも光軸Lを中心にして略90°ピッチで形成されているため、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力の、レンズの周方向(スリーブ8の周方向)におけるバランスが良い。したがって、本形態では、光軸方向の基準位置に向かって付勢される可動体2をより安定させることが可能になる。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0055】
上述した形態では、磁性部材13は、円環状に形成されている。この他にもたとえば、磁性部材13は、四角環状に形成されても良いし、四角環状以外の多角環状に形成されても良い。また、上述した形態では、搭載面8cは、レンズを囲むように略円環状に形成されているが、搭載面8cは、たとえば、光軸Lを曲率中心とする略円弧状の複数の平面であって、レンズを囲むように配置される複数の平面によって構成されても良い。また、上述した形態では、外壁部8fの上端面は、板バネ5の可動体固定部5aが固定されるバネ固定面8gとなっているが、可動体固定部5aが固定されるバネ固定面が別途、スリーブ8に形成されても良い。
【0056】
上述した形態では、スリーブ8の上端側に4個の外壁部8fが形成されているが、スリーブ8の上端側に形成される外壁部8fの数は、2個または3個であっても良いし、5個以上であっても良い。また、上述した形態では、板バネ5は、4本の腕部5cを備えているが、板バネ5が備える腕部5cの数は、2本または3本であっても良いし、5本以上であっても良い。
【0057】
上述した形態では、内壁部8dと外壁部8fとの間であって、かつ、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤24の厚みによって光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整している。この他にもたとえば、搭載面8cと磁性部材13との間に非磁性材料からなる平板状の調整部材を配置するとともに、この調整部材の枚数によって光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整しても良い。この場合には、調整部材は、たとえば、円環状等の環状に形成される。また、この場合には、接着剤24によって光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整する場合と比較して、磁性部材13の位置調整を精度良く行うことが可能になる。なお、この場合であっても、1種類の調整部材の枚数によって光軸方向における磁性部材13の固定位置を調整すれば、調整部材の管理が煩雑になるといった問題等は生じない。
【0058】
上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良い。また、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略六角形状等の多角形状となるように形成されても良いし、略円形状や略楕円形状となるように形成されても良い。