(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939909
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】スプリンクラ消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/60 20060101AFI20160609BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
A62C35/60
A62D1/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-151980(P2012-151980)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-14401(P2014-14401A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞志
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−000558(JP,A)
【文献】
特開昭54−016897(JP,A)
【文献】
米国特許第04226727(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/00−68
A62D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護領域に設けられるスプリンクラヘッドと、
該スプリンクラヘッドが接続されたスプリンクラ配管と、
二次側が該スプリンクラ配管の一端と接続され、消火用水と揺変剤を混合し、チキソトロピー性を有する消火剤を調整すると共に該消火剤を該スプリンクラ配管に供給する混合器と、
該スプリンクラ配管に該消火剤を圧送すると共にゲル状の該消火剤をゾル状にする加圧手段と、を備え、
常時において、ゲル状の該消火剤が該スプリンクラ配管のみに充填されており、
該スプリンクラヘッドが破損し解放された際に、水損事故を未然に防止できると共に該スプリンクラ配管内の該消火剤を事前に抜くことなく該スプリンクラヘッドを交換することができることを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、前記配管内を移動して前記スプリンクラヘッドから均等に散布されると共に、
該スプリンクラヘッドから散布されて静止するとゲル状となり、散布された位置で留まることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、より詳細にはチキソトロピー性を有する消火剤を使用するスプリンクラ消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火用水を火源又はその周囲に散布することにより、火災を抑制若しくは消火すると共に、火源の周囲を濡らすことによって延焼防止を図る消火設備がある。しかし、水は比較的粘度が低いため、物体に掛かっても重力により直ぐに下方に流れてしまい、該物体に留まる水分はその表面の極僅かであり、継続的に放水をしないと、十分な延焼防止効果を得ることは困難であった。
【0003】
そこで、吸水性ポリマー等を消火用水に添加することでハイドロゲル化し、消火剤の粘性を高め、物体に付着し易くすることによって、延焼防止効果を向上させた消火剤が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−167357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、火災時に、従来の消火剤をスプリンクラヘッドによって散布しようとすると、粘度が高すぎて、所定の散水半径に均等に散布することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、所定の散水半径に均等に散布することができ、且つ、延焼防止効果を向上させた消火剤を用いたスプリンクラ消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、防護領域に設けられ
るスプリンクラヘッドと、
該スプリンクラヘッドが接続されたスプリンクラ配管と、二次側が該スプリンクラ配管の一端と接続され、消火用水と揺変剤を混合し、チキソトロピー性を有する消火剤を調整すると共に該消火剤を該スプリンクラ配管に供給する混合器と、該
スプリンクラ配管に
該消火剤を圧送する
と共に
ゲル状の該消火剤をゾル状にする加圧手段と
、を備え
、常時において、ゲル状の該消火剤が該スプリンクラ配管のみに充填されており、該スプリンクラヘッドが破損し解放された際に、水損事故を未然に防止できると共に該スプリンクラ配管内の該消火剤を事前に抜くことなく該スプリンクラヘッドを交換することができることを特徴とするスプリンクラ消火設備である。
【0008】
又、本発明は
、前記加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、前記配管内を移動して前記スプリンクラヘッドから均等に散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されて静止するとゲル状となり、散布された位置で留まることを特徴とするスプリンクラ消火設備である
。
【発明の効果】
【0009】
消火剤がチキソトロピー性を有することによって、スプリンクラヘッドから散布される時には低粘度となり、水と同等に噴霧可能となると共に物体に付着後には高粘度となり、物体上に留まり流れ落ちない。そのため、所定の散水半径に均等に散布することができると共に延焼防止効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態を示す図であり、湿式スプリンクラ消火設備の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、湿式スプリンクラ消火設備を例に
図1に基づき説明する。先ず、湿式スプリンクラ消火設備1の構成について説明する。
【0012】
湿式スプリンクラ消火設備1は、スプリンクラヘッド2及び加圧手段としてのポンプ3、薬剤タンク4及び消火用水タンク5を備える。スプリンクラヘッド2は、常時は閉鎖されていると共に防護領域S内に設けられスプリンクラ配管7に接続されている。スプリンクラ配管7は一端が混合器8に接続され、他端が末端試験弁9に接続されている。
【0013】
消火用水タンク5は、消火用水Wを貯留するためのタンクであり、ポンプ3によって連通される2つの配管6a,6bからなる消火用水配管6を介して混合器8と接続されている。
【0014】
薬剤タンク4には、消火用水Wにチキソトロピー性(揺変性)を与える物質(以下、揺変剤Tという)が貯蔵される。又、薬剤タンク4は、薬剤配管10を介して混合器8に接続されている。ここで、チキソトロピー性とは、「単に掻き混ぜたり振り混ぜたりすることによってゲルが流動性のゾルに変わり、これを放置しておくとふたたびゲルにもどる性質」をいう(岩波理化学辞典第4版、岩波書店発行、より引用)。
【0015】
揺変剤Tとしては、スメクタイト、ベントナイト及びモンモリロナイト等のコロイド性含水ケイ酸塩を含有する鉱物や当該ケイ酸塩からなる合成無機高分子化合物等が挙げられる。
【0016】
混合器8は、薬剤配管10を介して供給された揺変剤Tと消火用水配管6を介して供給された消火用水Wとを混合し、チキソトロピー性を有する消火剤Eを調整し、消火剤Eをスプリンクラ配管7に供給するために設けられる。
【0017】
消火用水Wと揺変剤Tの混合割合は、求められる消火剤Eの性能に応じて適宜調整されるが、少なくとも、ポンプ3によって加圧され、消火剤Eがゾル状となった際には、その粘度(以下、ゾル状態における消火剤Eの粘度を粘度η
sという)が、スプリンクラ配管7内を移動してスプリンクラヘッド2から均等に散布ができる程度に低粘度となり、スプリンクラヘッド2から散布されて静止し、消火剤Eがゲル状となった際には、その粘度(以下、ゲル状態における消火剤Eの粘度を粘度η
gという)が、散布された位置で留まることができる程度に高粘度となる混合割合で調整される。
【0018】
ポンプ3は、消火用水タンク5に貯留された消火用水Wを混合器8に供給すると共にゲル状の消火剤Eをゾル状にする加圧手段として設けられる。ポンプ3は、防護領域S内に設けられた火災感知器12と接続された防災盤11によって制御される。
【0019】
次に、湿式スプリンクラ消火設備1の動作について説明する。湿式スプリンクラ消火設備1は、常時においてもスプリンクラ配管7に消火剤Eが充填されている。この時、消火剤Eは静止しており、ゲル状となっている。
【0020】
この際、消火剤Eの粘度η
gをより高粘度とし、流動性が殆どなくなる程度に、消火用水Wと揺変剤Tとの混合割合を調整することで、スプリンクラヘッド2が外力等で破損し開放された際に、スプリンクラヘッド2から漏れ難くなるため、水損事故を未然に防ぐことが可能となる。又、スプリンクラヘッド2を交換する際にも、スプリンクラ配管7内の消火剤Eを事前に抜く必要がなくなり、より容易に交換することができる様になる。
【0021】
防護領域S内で火災が発生すると、その熱等によって、スプリンクラヘッド2が開放されると共に火災感知器12が防護領域S内の火災を感知し、火災信号を防災盤11に送信する。防災盤11は、火災信号を受信すると、ポンプ3に起動信号を送信する。ポンプ3は、起動信号を受信すると起動し、消火用水タンク5に貯留されている消火用水Wを混合器8へと供給する。
【0022】
又、ポンプ3の起動により、スプリンクラ配管7に予め充填されていた消火剤Eには、その圧力によって剪断応力が加わり、ゲル状態からゾル状態へと変化し、開放されたスプリンクラヘッド2から放出され、防護領域Sへと散布される。
【0023】
混合器8に消火用水Wが供給されると、薬剤タンク4内の揺変剤Tが混合器8へと供給され、ゾル状の消火剤Eが調整される。そして、消火剤Eはゾル状のまま、スプリンクラ配管7へと供給され、スプリンクラヘッド2から防護領域Sへと散布される。この際、消火剤Eは、粘度η
s又はそれに近い比較的低い粘度の状態で放出され、所定の散水半径で均等に散布される。尚、本実施形態では、消火剤Eの粘度η
s≒η
w(水の粘度)となっているので、消火剤Eは水と同等に散布される。
【0024】
その後、空中を移動する消火剤Eは、ポンプ3の圧力による剪断応力から解放されるので、徐々にゲル化、即ち、その粘度が粘度η
gに向かって徐々に増加していき、ゲル状の消火剤Eが消火対象物体の表面に付着する。そして、ゲル状の消火剤Eは当該物体から流れ落ちずに当該物体上に留まる。揺変剤Tが上記ケイ酸塩を含有するものである場合は、消火用水Wが蒸発した後も、耐火性の高いケイ酸塩成分が当該物体の表面に残存するため、当該物体の再着火を防止することが可能となる。
【0025】
以上、本発明を上記実施形態で説明したが、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、常時は、スプリンクラ配管7に消火剤E(消火用水W)が充填(充水)されていない、乾式のスプリンクラ消火設備に対しても適用が可能である。
【0026】
又、混合器8を設けずに、予め、消火用水Wと揺変剤Tとを混合し、消火剤Eを調整しておき、消火用水Wの替わりにゾル状態の消火剤Eを直接供給する様にしてもよい。これにより、例えば、パッケージタイプの消火設備に用いられる薬剤タンクが破損した場合でも、水が漏れ難いという効果が得られる。そして、スプリンクラヘッド2等の数は適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 湿式スプリンクラ消火設備 2 スプリンクラヘッド 3 ポンプ
4 薬剤タンク 5 消火用水タンク 6 消火用水配管
7 スプリンクラ配管 8 混合器 9 末端試験弁
10 薬剤配管 11 防災盤 12 火災感知器
E 消火剤 S 防護領域 T 揺変剤
W 消火用水