(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939922
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】小型古紙再生装置における抄紙装置
(51)【国際特許分類】
D21F 1/00 20060101AFI20160609BHJP
D21F 1/08 20060101ALI20160609BHJP
D21C 5/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
D21F1/00
D21F1/08
D21C5/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-167075(P2012-167075)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25170(P2014-25170A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】中本 義範
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−67406(JP,A)
【文献】
特開2011−38199(JP,A)
【文献】
特開2012−67396(JP,A)
【文献】
特開平5−9381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00〜D21J7/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプ製造工程と古紙パルプを抄紙する抄紙工程を有する小型古紙再生装置において使用する抄紙装置であって、濃度調整された古紙パルプ懸濁液を貯留する抄紙槽と、巻回した無端帯状のベルトに古紙パルプ懸濁液を吸引・吸着しながら搬送する抄紙ドラムからなり、抄紙槽の上部に内部から水を供給する供給部材を設け、抄紙槽内の古紙パルプ懸濁液に供給部材から水を供給することにより、古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維の浮上を抑制することを特徴とする小型古紙再生装置における抄紙装置。
【請求項2】
抄紙槽内に設けたオーバーフロー槽の上部に内部から水を供給する供給部材を設け、オーバーフロー槽の底面及び側面に付着したパルプ繊維に水を供給して洗浄することを特徴とする請求項1に記載の小型古紙再生装置における抄紙装置。
【請求項3】
供給部材から供給する水が小型古紙再生装置内で回収した白水であることを特徴とする請求項1に記載の小型古紙再生装置における抄紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型古紙再生装置における抄紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古新聞紙や文章の細断屑のリサイクルは、ごみを減量化し、焼却や埋立てなどの廃棄物処理による環境負荷を低減することができ、資源の有効利用につながる。また、パルプの需要は今後世界的に高まることが予想されているが、植林などを進めてもパルプの供給には限りがある。森林資源への過度な需要圧力を緩和するためにも、資源としての古紙の役割はますます重要になっている。
【0003】
古新聞紙や文章の細断屑の再利用方法として、新聞紙や文章の細断屑をリサイクル専門業者に引き取ってもらい再利用することが考えられるが、費用や手間がかかり現状としては、焼却ごみとして廃棄することが多い。
【0004】
特許文献1には、古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙を廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する什器サイズの小型古紙再生装置が開示されている。小型古紙再装置とは、少なくとも古紙再生パルプ製造部と再生紙を製造・調整する抄紙部を一体的に備えたものである。
【0005】
尚、古紙パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙装置のパルプ供給部は、抄き枠体内に供給されたパルプ懸濁液をオーバーフロー手段により規定される水位まで滞留させ、無端帯状ベルトの走行動作との協同作用により無端帯状ベルト上面に均一拡散して供給している。オーバーフローしたパルプ懸濁液は、抄き枠体内の回収路に流下回収されるとともに、回収口からパルプ供給槽へ回収されて再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−031544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1において、オーバーフローしたパルプ懸濁液は回収路から回収口を通りパルプ供給槽へ回収されるが、オーバーフローした多量の古紙パルプ懸濁液を回収し、再度抄き枠体内に供給するため抄紙の効率がよくない。また、古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維が、回収路や回収口に付着し残存する可能性が高いため、装置に不具合が生じかねない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
古紙パルプ製造工程と古紙パルプを抄紙する抄紙工程を有する小型古紙再生装置において、オーバーフロー手段からなる抄紙装置の抄紙効率が良く、回収路にパルプ繊維の残存が少ない抄紙装置を開発・提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、抄紙槽内の上部に供給部材を設け、抄紙時に供給部材から抄紙槽内の古紙パルプ懸濁液に水を供給することにより、古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維の浮上が抑制される。パルプ繊維は、貯留槽からオーバーフロー槽へ移送が抑制され、貯留部に滞留して抄紙ドラムにより効率よく抄紙される。よって、所定量を抄紙する際に抄紙槽内に供給する古紙パルプ懸濁液の量を最小限にすることが可能となる。
【0010】
さらに、オーバーフロー槽の上部に供給部材を設けることで、パルプ繊維がオーバーフロー槽の底面及び側面に付着して残存した場合でも、供給部材から供給される水により洗い流されるため、パルプ繊維の残存を防ぎ、回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施例を示し、抄紙装置の概略図である。
【
図2】この発明の一実施例を示し、抄紙槽の概略図である。
【
図3】この発明の一実施例を示し、供給部材の下面図である。
【
図4】この発明の一実施例を示し、抄紙ドラムの側面図である。
【
図5】本発明の古紙再生装置における抄紙ドラムのa−a断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、古紙のリサイクルと資源環境の保護はもとより、情報漏洩防止のため、事業所等の古紙発生場所にて、処理、再生を行い、例えば、トイレットペーパー等の再生紙を製造することのできる小型古紙再生装置である。
図1に例示するように抄紙装置(1)は、濃度調整された古紙パルプを貯留する抄紙槽(2)と、巻回した無端帯状の抄紙ベルト(5)に古紙パルプ懸濁液を吸引・吸着しながら搬送する抄紙ドラム(3)からなる。
【0013】
本発明である抄紙装置(1)の一実施例を
図1に基づいて説明すると、前工程で所定濃度に調整された古紙パルプ懸濁液は、供給ポンプ(7)により抄紙槽(2)の古紙パルプ懸濁液供給口(9)に供給され、供給と同時に、抄紙ポンプ(8)が稼働し、抄紙ポンプ(8)の吸引によりパルプ繊維が、抄紙ドラム(3)に巻回された抄紙ベルト(5)に吸引・吸着して湿紙となる。抄紙ベルト(5)に吸引・吸着した湿紙は、抄紙ドラム(3)と回動部(4)の回転によりベルト搬送され、乗継ベルト(6)に転移し、さらに乾燥部を移動する乾燥ベルト(図示していない)へ転移し、乾燥ベルトで搬送されながら乾燥部で乾燥され、巻取部で再生紙として回収される。
【0014】
少なくとも抄紙槽(2)は、
図2に例示するように、上部が開口してあり、濃度調整された古紙パルプを流入する古紙パルプ懸濁液供給口(9)、古紙パルプ懸濁液を抄紙槽(2)外に流出する回収口(12)、抄紙槽(2)の上部に古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維の浮上を防ぐ水を内部から供給する供給部材(13)、抄紙槽(2)内に設けたオーバーフロー槽(11)の上部にオーバーフロー槽の底面及び側面に付着したパルプ繊維を洗浄する水を内部から供給する供給部材(14)からなる。
【0015】
また、抄紙槽(2)は、仕切板(11)を介して、古紙パルプ懸濁液供給口(9)のある流入槽(10A)、古紙パルプ懸濁液を貯留する貯留槽(10B)、貯留槽(10B)にある古紙パルプ懸濁液が仕切板(11)を越えてオーバーフローすることにより貯留槽(10B)内の水位を一定に保つオーバーフロー槽(11)に分けられる。流入槽(10A)は、古紙パルプ懸濁液供給口(9)から流入してきた古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維を均一に貯留することを目的として設けられている。流入槽(10A)の古紙パルプ懸濁液は、仕切板(11)を越えてオーバーフローすることにより貯留槽(10B)に送られる。
【0016】
供給部材(13)、(14)は、
図3に例示するように、管状の管部材(15)からなり、管内を流れる水(小型古紙再生装置内で回収された白水が好ましい)を抄紙槽(2)内の古紙パルプ懸濁液へ供給する供給口(16)を設けている。
図3では、円形の供給口(16)を複数形成しているが、パルプ繊維の浮上抑制、又は、オーバーフロー槽(11)の洗浄が可能であれば、供給口(16)は単数でもよく、どのような形状でも構わない。供給部材(13)、(14)の供給口(16)は、真下を向いているのが好ましい。
【0017】
また、管部材(15)の片側端部は、管状の固定部材(17)を係合している。固定部材(17)は、抄紙槽(2)の壁面に固定されてあり、固定部材(17)を介して抄紙槽(2)内外に水の供給が可能となる。管部材(15)の反対側端部は、抄紙槽(2)壁面に固定するように構成されている。
【0018】
供給部材(13)は、
図1、2に例示するように抄紙槽(2)内の貯留槽(10B)上部に設けられており、抄紙時に貯留部(10)の古紙パルプ懸濁液へ水を供給する。古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維は、供給部材(13)から供給された水により押圧されて浮上を抑制されるため、貯留槽(10B)からオーバーフロー槽(10C)へ移送しにくくなり、貯留槽(10B)に滞留して効率よく抄紙ドラム(3)の吸引により抄紙ベルト(5)に抄紙される。以上のことから、所定量を抄紙する際に抄紙槽(2)内に供給する古紙パルプ懸濁液の量を最小限にすることが可能となり、抄紙効率が上がる。
【0019】
供給部材(14)は、古紙パルプ懸濁液中のパルプ繊維がオーバーフロー槽(10C)の底面及び側面に付着した場合でも、供給部材(14)から供給される水により洗い流されるため、オーバーフロー槽(10C)内を洗浄することができる。オーバーフロー槽(10C)の壁面の洗浄は、供給部材(14)から直接水を供給してもよいし、回収口(12)の経路にあるバルブ(図示していない)を閉じた状態でオーバーフロー槽(10C)内に水を貯留させ、前記バルブを開けて貯留した水を回収路から回収することにより洗浄してもよい。以上のことから、パルプ繊維の残存を防ぐことが可能となり、パルプ繊維を回収することができる。
【0020】
少なくとも抄紙ドラム(3)は、
図4、5に例示するように、円形の側版(18)、ドーナツ状の固定板(19)、寸切りボルト(20)、ナット(21)、吸引口(22)を設けた管状シャフト(23)、ベアリング(24)から構成されている。抄紙ドラム(3)には、抄紙ベルト(5)を巻回している。
図5では、管状シャフト(23)に設けた吸引口(22)を複数形成しているが、古紙パルプを抄紙ベルト(5)上に均一に吸引できればどのような形状でも構わない。吸引口(22)は常に真下を向いているのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、小型古紙再生装置における抄紙装置(1)の技術を確立し、その確立された技術に基づいて装置を実施・販売することにより、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0022】
1 抄紙装置
2 抄紙槽
3 抄紙ドラム
4 回動部
5 抄紙ベルト
6 乗継ベルト
7 供給ポンプ
8 抄紙ポンプ
9 古紙パルプ懸濁液供給口
10A 流入槽
10B 貯留槽
10C オーバーフロー槽
11 仕切板
12 回収口
13 供給部材
14 供給部材
15 管部材
16 供給口
17 固定部材
18 側板
19 固定板
20 寸切ボルト
21 ナット
22 吸引口
23 管状シャフト
24 ベアリング