特許第5939959号(P5939959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939959
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】アンダーカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20160616BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20160616BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20160616BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B62D21/00 A
   B60K1/04 Z
   H05K9/00 T
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-238049(P2012-238049)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88065(P2014-88065A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591085927
【氏名又は名称】水菱プラスチック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】宮永 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹原 誠
(72)【発明者】
【氏名】越智 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴統
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮治
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−205477(JP,A)
【文献】 特開2000−334769(JP,A)
【文献】 特開平04−135816(JP,A)
【文献】 特開昭62−276896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
B62D 21/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突部を有する樹脂製の板状部と、前記突部が貫通する貫通穴を有し前記板状部の成形時において該板状部に固定される導電性シートとを有する、車体フロアを下方から覆うアンダーカバーの製造方法であって、
前記突部と対応すべく前記貫通穴を位置させて前記導電性シートを成形型内に配し、前記成形型及び前記板状部に設けられた注入点から樹脂を注入して前記板状部及び前記突部と前記導電性シートとを一体成形し、
前記一体成形時において、前記板状部の前記突部を介して前記注入点と対向する前記突部の近傍に、その厚みが他の部位の厚みよりも大きな膨出部を形成し、
前記突部の縦断面に沿った樹脂の流れは、前記突部の外周を迂回した迂回流れより流動が遅く、前記迂回流れが前記導電性シートを押圧した状態で前記突部の縦断面に沿った樹脂が前記導電性シートに流れ込むことを特徴とするアンダーカバーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法において、
前記一体成形時において、前記板状部の前記突部を介して前記膨出部と対向する位置に、厚みが前記他の部位よりも薄い減肉部を形成することを特徴とするアンダーカバーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンダーカバーの製造方法において、
前記一体成形時において、前記板状部の前記突部の周囲に厚みが前記他の部位よりも厚いガイド部を形成することを特徴とするアンダーカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロアに装着された車体下部装備品を覆うアンダーカバー、特に、導電性シートをカバー上面側に重ね一体成形してなるアンダーカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の下面は道路上にある石や縁石等の異物接触から保護する必要があり、フロアやフレーム部材に支持された車体下部装備品が直接車体下面を成す場合、これらをアンダーカバーで覆い保護することが行われている。
特に、電気自動車の場合、フロアの直下に複数のバッテリユニットを収容する扁平箱状の電池パック(電池ユニット)が配設される。この電池パックは枠状フレームや複数のクロスメンバを介して車体下部の左右サイドメンバーに一体結合されている。
このような電池パックやその電池パックの外部配線や、外部配管はそれらの直下の道路上にある石や縁石等の異物接触から保護する必要があり、これらを覆う等の目的でアンダーカバーを設けており、その一例が特許文献1に記載される。
【0003】
このようなアンダーカバーは、車体下部装備品が大きな場合、車体下面に対し前部と後部に2分割された前後アンダーカバーを組み合わせて覆うようにし、これにより、取扱性や成形性を改善している。
更に、このようなアンダーカバーは導電性シートをアンダーカバー上面側に一体成形しており、これにより電池パックの内部の電気部品から外部へ電磁波が放出されることや、電気部品が電磁波の影響を受けることで、誤作動するといった悪影響を除去するアンダーカバーの一例が特許文献2に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−83598号公報
【特許文献2】特開2009−83599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような導電性シートを一体成形したアンダーカバーは、その成形時において次のような問題がある。
例えば、図10(b)に示すように、上下一対の成形型101,102を型組みの上で、注入口をなすゲート103(注入点)側よりアンダーカバー成形用の溶融状態の樹脂104が注入されると、樹脂104がゲート103の周囲より拡散していく。ここで、図11に示すように、成形される導電性シート105付きのアンダーカバー110がその板状部111の一部に上向きの(図10(b)では下向きの)台形状の突部112を突設しているとする。この場合、予め、アンダーカバー110(図11参照)を成形する下型102の型上面fuに載置の導電性シート105は突部112との干渉を避けるため、貫通するシート穴n1が形成されている。
【0006】
この状態で、図10(b)に示すように、ゲート103側より溶融状態の樹脂104が流動してくると、樹脂104の流れにおける下型102の型上面fuの近傍の流れが導電性シート105のシート孔n1の穴端部eより下側に流れ込み、導電性シート105の穴端部e及びその近傍部が下型102の型上面fuより徐々に浮き上がる。
このような現象が起きてしまうと、以後、シート孔n1のゲート103側の領域では、アンダーカバー110(図11)の上面(図10(b)では下側)に導電性シート105が一様に配置されて一体成形されているが、シート孔n1のゲート103と反対側の領域においては、導電性シート105が型上面fuより浮き上がり、結果として、図11のように、突部112のゲート103と反対側の領域では、樹脂104による帯状流れ部feが長く生じてしまう。
【0007】
このように、ゲート103より離れる方向に導電性シート105の浮き上がりによる帯状流れ部feが長く生じると、その部位では、シートの厚さ方向内方(図10(b)では上側)に導電性シート105が移動して埋もれてしまい、表面に導電性シート105を一体成形した他の部分のような適正な成形がなされず、成形不良となり、問題となっている。
【0008】
本発明は以上のような課題を解決するため、導電性シートにシート穴がある場合でも、厚さ方向内方に導電性シートが浮き上がって埋もれてしまうことを防止でき、導電性シート全体をアンダーカバー上面に重ねて一体形成できるアンダーカバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、突部を有する樹脂製の板状部と、前記突部が貫通する貫通穴を有し前記板状部の成形時において該板状部に固定される導電性シートとを有する、車体フロアを下方から覆うアンダーカバーの製造方法であって、前記突部と対応すべく前記貫通穴を位置させて前記導電性シートを成形型内に配し、前記成形型及び前記板状部に設けられた注入点から樹脂を注入して前記板状部及び前記突部と前記導電性シートとを一体成形し、前記一体成形時において、前記板状部の前記突部を介して前記注入点と対向する前記突部の近傍に、その厚みが他の部位の厚みよりも大きな膨出部を形成し、前記突部の縦断面に沿った樹脂の流れは、前記突部の外周を迂回した迂回流れより流動が遅く、前記迂回流れが前記導電性シートを押圧した状態で前記突部の縦断面に沿った樹脂が前記導電性シートに流れ込むことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法において、さらに前記一体成形時において、前記板状部の前記突部を介して前記膨出部と対向する位置に、厚みが前記他の部位よりも薄い減肉部を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のアンダーカバーの製造方法において、さらに前記一体成形時において、前記板状部の前記突部の周囲に厚みが前記他の部位よりも厚いガイド部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、溶融樹脂は突部の左右方向より比較的流動抵抗の少ない膨出部に達し合流部付近で突部が対向する導電性シートのシート穴端部及びそのシート穴近傍部側を下型上面に向けて押圧するので、その後で突部の縦断面に沿った鍵型流路を通過してくる流れはシート穴端部及びそのシート穴近傍部の上側を流れ、シート穴端部及びそのシート穴近傍部の浮き上がりを抑制して導電性シートを上面に一体成形したアンダーカバーを容易に成形できる。
【0015】
また、台状突部の溶融樹脂流路手前の肉厚を減少させることにより、突部縦断面に沿った樹脂の流れを抑制し、鍵型流路の流れを促進させよりシートの浮き上がりを抑制する。
また、突部の左右方向より迂回してくる溶融樹脂が膨出部の左右側方に容易に流れ込むことができ、比較的流動抵抗の少ない膨出部に達し合流部付近で台状突部が対向する導電性シートのシート穴端部及びそのシート穴近傍部側を下型上面に向けて押圧するので、その後で突部の縦断面に沿った鍵型流路を通過してくる流れはシート穴端部及びそのシート穴近傍部の上側を流れ、導電性シートを上面に一体成形したアンダーカバーを容易に成形できる。
【0016】
また、膨出部に達した合流が、シート穴近傍部側を下型上面に向けて押圧するが、膨出量が台状突部より離れるほど低減する形状なので、溶融樹脂が上壁面で方向変換して導電性シートのシート穴端部及びそのシート穴近傍部側を下型上面に向けてより強固に押し付けするよう機能しやすくでき、シート穴端部及びそのシート穴近傍部側が下型上面より浮き上がるのを確実に防止できる。
また、突部を用いてアンダーカバーを井桁を介して車体フロアに容易に取り付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としてのアンダーカバーを備えた車両のフレーム及び電池パックの取付状態の要部切欠平面図である。
図2図1に示すアンダーカバーを備えた車両のフレーム、電池パック及びアンダーカバーの取付状態での要部切欠側面図である。
図3図1に示すアンダーカバーの平面図である。
図4図1に示すアンダーカバーの分割状態での平面図である。
図5図4に示す前アンダーカバーに形成された台形突部の拡大斜視図である。
図6図4に示す前アンダーカバーの適正成形後の拡大平面図である。
図7】本発明の一実施形態としてのアンダーカバーの成形機の概略断面図である。
図8図7中に表示の成形機の台形突部及び膨出部の拡大切欠断面図である。
図9図7中に表示の成形機の台形突部及び膨出部の成形時の溶融樹脂の流れ説明図で(a)は迂回流の、(b)は縦断面に沿う上下屈曲流れの、(c)は薄肉部の絞り作用による流れの各説明図である。
図10図1に示すアンダーカバーの成形機の説明図で、(a)は膨出部の成形機能説明図で、(b)は比較例である従来の成形機の機能説明図である。
図11】従来のアンダーカバーの成形時の成形不良の発生状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態であるアンダーカバーを説明する。
図1は本発明のアンダーカバーを備えた電気自動車(以後単に車両と記す)の後部のフレーム部を平面視で示し、図2は側面視を示した。
フレーム部1は左右一対のサイドメンバー2と、クロスメンバ3と、枠状フレーム4と、複数の枠側クロスメンバ5と、アンダーカバー30(図2参照)を備える。
ここで、クロスメンバ3は左右一対のサイドメンバー2間を互いに一体結合し、前後に複数配備され溶着される。枠側クロスメンバ5は枠状フレーム4を左右一対のサイドメンバー2に一体的に固定する。枠状フレーム4は井桁状を成し、左右一対のサイドメンバー2間に配備され車体下部装備品である電池パックAを支持する。アンダーカバー30は井桁状の枠状フレーム4とその内側下部開口全体を、即ち、車体フロアを下から覆うよう配備される。
【0019】
左右サイドメンバー2は車体全体の主要剛性を確保するよう前後方向Xに延設され、不図示の車室直下部分は前後に平行状態で延びる水平部201を備える。この水平部201の前部側である不図示のエンジンルーム側には車幅方向中央側に互いに傾斜した状態で延びる前縮幅部202が形成され、水平部201の後部側には傾斜部203が不図示のトランクルーム側に向けて傾斜する態様で延出形成されている。
桁状の枠状フレーム4は前後外枠部401と、前後外枠部401を互いに一体結合する左右外枠部402と、左右外枠部402の下面に重なり、しかも左右一対のサイドメンバー2に一体的に締結される枠側クロスメンバ5とを有する。
更に、井桁状の枠状フレーム4は複数の枠側クロスメンバ5を介して左右サイドメンバー2の前縮幅部202、水平部201及び傾斜部203側に重ねられ、ボルト締結される。
【0020】
ここで、前側の3箇所(図1で左側の3箇所)の各枠側クロスメンバ5における各左右端は一対のサイドメンバー2の前縮幅部202及び水平部201に直接ボルト締結されている。
一方、後側の1箇所の枠状フレーム4における左右端は一対のサイドメンバー2の傾斜部203側に縦長ブラケット7を介してボルト締結されている。
このように、左右一対のサイドメンバー2は井桁状の枠状フレーム4及び複数の枠側クロスメンバ5を介して相互に溶着され、これによりフレーム部1は確実に剛性強化されている。
図1〜3に示すように、電池パックAはその外殻部として扁平箱状を成すバッテリケース8を備える。バッテリケース8はその内部空間(バッテリ収納部)を複数のバッテリモジュール収容域811に区分けしている。
【0021】
図2に示すように、バッテリケース8は上下に分割形成された上下半部801,802を一体的に重ねて形成される。上下半部801,802はそれぞれ電気絶縁性を有する樹脂によって一体成形される。
上下半部801,802の材料である樹脂は、例えばポリプロピレンからなる基材を、数mm〜数cm程度の長さの短ガラス繊維によって強化したものである。
【0022】
これら上下半部801,802は互いの重合フランジ部831,832をシール材(不図示)を介して重ね、互いをボルトと埋め込みナット(不図示)の締結処理により水密に固着され、扁平箱状の筐体として形成されている。
なお、各バッテリモジュール収容域811〜815にはそれぞれバッテリモジュールBM(図1の2点鎖線参照)がずれなく支持される。このバッテリモジュールBMの一例はリチウムイオン電池からなる複数個のセルを直列に接続したもので、これらを接続する不図示の電気回路や電気部品とが内部に収容されている。
この不図示のや電気部品の直上位置には、上向き開口12(図2参照)と冷却風導入口171がそれぞれ形成されている。
【0023】
上向き開口12と車体フロア側は不図示の弾性筒体で連結される。
井桁状の枠状フレーム4の下面にアンダーカバー30が締結される。このアンダーカバー30は、取扱性や製造性を改善するため、図3,4に示すように、枠状フレーム4の前部を覆う前アンダーカバー31と後部を覆う後アンダーカバー32とに2分割して形成される。
図4に示すように、前アンダーカバー31は中央の樹脂製の板状部311と、その前及び左右に突き出し形成されたフランジ312と、後端側に突き出し形成された後方延出板部313とで形成される。
ここで、前及び左右に突き出し形成されたフランジ312は枠状フレーム4の前外枠部401(図1参照)及び左右外枠部402の前側域とに密に重ねられ、不図示の締結ボルトで枠状フレーム4側に締結される。
【0024】
ここで、前アンダーカバー31に突き出し形成されたフランジ312は、枠状フレーム4の低壁面に密着される。
次に、図3,4に示すように、後アンダーカバー32は中央の板状壁321と、その後及び左右に突き出し形成されたフランジ322と、前端側に突き出し形成された前延出フランジ323と、で形成される。
ここで、前延出フランジ323は枠側クロスメンバ5(前から3番目)に密着するよう不図示の締結ボルトで締結される。これにより枠側クロスメンバ5に密着する前延出フランジ323の下方に所定幅の通気隙間B(図2参照)を保って前アンダーカバー31側の後方延出板部313と対向配備される。通気隙間Bを設けることで、土砂や埃等をより容易に外部に排出できる。
【0025】
更に、後アンダーカバー32の左右及び後に突き出し形成されたフランジ322、324は枠状フレーム4の後外枠部401及び左右外枠部402の後側域に密に重ねられ、不図示の締結ボルトで枠状フレーム4に締結される。
なお、このような通気隙間Bを排除するような取り付けを行って、構成を簡素化してもよい。
次に、図2に示す前アンダーカバー31及び後アンダーカバー32の各中央の板状部311、321は、それぞれ前より後ろに向けて傾斜する傾斜壁として形成されている。しかも、図3図4に示すように、それら各板状部311、321には外部に向け開口する複数の排出穴316、326が連続形成されている。これら前後のアンダーカバーの排出穴316、326は、傾斜壁である各板状部311、321に達した土砂や埃等を傾斜壁に続く後端側となる位置から容易に外部へと排出できる。
【0026】
次に、前アンダーカバー31には図5に示すように、その一部に周囲より相対的に肉厚を厚くし、上方に向け側面視で台形状を成して台状突部317が左右一対形成される(図3,4参照)。このような突部を成す台状突部317の平らな頂部にはボルト穴(開口穴)318が一対づつ形成される。このボルト穴318に挿通されたボルトにより台状突部317が枠側クロスメンバ5に締結され、確実に台状突部317、即ち、前アンダーカバー31をフレーム側に締結できる。
このような台状突部317は、図4に示すように、前アンダーカバー31の板状部311にのみ形成されている。
ところで、前後アンダーカバー31、32の板状部311,321にはその上側である電池パックAとの対向面に、電池パックA内の電気機器から発生するノイズ電波を除去するための導電性シート50がそれぞれ重ねられ、一体成型されている。
【0027】
ここで、導電性シート50は板状部311,321の上側表面部に重ねられた状態で、一体成型され、板状部311,321の肉厚方向においては内側ではなく表面部に保持された状態で、一体成型される。このように、板状部311,321の上側表面部に導電性シート50が配設されることで、電池パックA内の電気機器から発生するノイズ電波を効率よく吸収し、ノイズ電波による車内電気機器の異常発生を防止している。以下、ここでは、突部である台状突部317のある前アンダーカバー31側を主に説明する。
図6に示すように、前アンダーカバー31の板状部311には上向きに台状突部317が突出し形成されており、この部位との干渉を避けるため、導電性シート50は対向部位に貫通穴であるシート穴nを形成し、台状突部317を貫通するようにしている。この前アンダーカバー31を板状部311の上表面に重ねての成型時には、次のような問題が生じていたが、本発明ではこの問題を回避できている。
即ち、ここで、図7には、前アンダーカバー31の成形機60の上、下型61,62を示した。
【0028】
成形機60は図示しない型締め機構により成型型である下型62に対して上型61を型締め位置h1と型開き位置h2に切り換えできる。下型62には前アンダーカバー31の上向き面と接する型面pf2が、上型61には前アンダーカバー31の下向き面と接する型面pf1が形成される。即ち、ここでは前アンダーカバー31を上下反転して成型する。
このため、上型61、下型62の型締め時において、前アンダーカバー31(下向きの)相当のキャビティーを形成でき、そこに成型型のゲート(注入口)jより溶融した樹脂が充填機63側より注入される。このような成形機60の下型62に台状突部317の上面部621が、上型61に台状突部317の下面部611が形成される。特に、上型61には台状突部317の底部と対向する突部周辺となる位置の直近位置に下向きの膨出部70(図7,8では上下反転している)が形成されている。この図7で、ゲートjが位置する点を注入点とする。
【0029】
この膨出部70は、台状突部317の裏側底部の近傍で上型61のゲートj(注入点)と反対側域であって、導電性シート50のシート穴nの端部e及びその近傍部と対向する部位に板状部311の肉厚幅dをd2に増大させるように形成される。
図9に示すように、台状突部317の近傍に形成された膨出部70はゲートjと反対側部位の上型61に形成される。しかも、膨出部70は、台状突部317の長手方向の幅L1と同等の幅L2(≒L1)で形成される。なお、この膨出部70の長手方向の幅L2は台状突部317の長手方向の幅L1より大きいほうが、見栄えが低下しない範囲で、シート穴端部e及びそのシート穴近傍部側を下型上面fdに向けて押圧する押圧力Ffの発生が容易化され、望ましい。
【0030】
これにより、図9(a)に示すように、台状突部の左右方向より迂回してくる迂回流れf1である溶融樹脂が膨出部70の左右側方に容易に流れ込み、左右の合流部がシート穴端部e及びそのシート穴近傍部を押圧する流れf3(図8参照)となる。
一方、図9(b)に示すように、台状突部317の縦断面に沿った鍵型流路を通過してくる上下屈曲流れf2はf1より流動が遅く、膨出部70の幅方向で中央に流れ込み、膨出部70の上壁に流動する。この際、すでにシート穴端部e及びそのシート穴近傍部が迂回流れf1が反転してきた流れf3により下型上面fdに向けて押圧された状態にある。ここで、膨出部70の左右側方をガイド部d1(図8図9(a)中の2点鎖線参照)として、膨出部70の肉厚幅を増大させるとf2の流れよりもf1の流れをより確実にはやめることができる。更に、ガイド部d1と膨出部70との肉厚幅を等しくすることで成形性も向上する。
更に、図9(C)に示すように、注入点(ゲートj)に対して台状突部317の手前側の肉厚を減少させた減肉部90とすることで台状突部317の縦断面に沿った鍵型の流路を通過してくる上下屈曲流れf2の流れを遅くすることもできる。
【0031】
このようなアンダーカバーの成形機の上、下型61,62を型締めし、充填機63で溶融樹脂を圧入した場合、ゲートjより充填され拡散する溶融樹脂PTは、図9(a)、(b)、図10(a)に示すように流動する。即ち、台状突部317のゲート側対向部に達した流れの内、台状突部317の外周を迂回した迂回流れf1は膨出部70の左右端側に容易に流れ込むことができる。比較的流動抵抗の少ない膨出部70に達した流れは合流部付近で導電性シートのシート穴端部e及びそのシート穴近傍部側を下型上面fdに向けて押圧力Ffで押す流れf3となる。
【0032】
一方、台状突部317のゲート側対向部に達し、台状突部317の縦断面に沿った鍵型の流路を通過してくる上下屈曲流れf2はシート穴端部eに干渉しない位置(台状突部317に近い位置)より膨出部70の中央に上向きに流れ込む。次いで、膨出部70の上壁で方向変換してシート穴端部e及びそのシート穴近傍部の上側に向かう流れf3となる。図8に示すように、膨出部70の上壁は台状突部317より離れるほど上壁(上辺)の膨出量が低減するように形成される。このため溶融樹脂が上壁面で方向変換してシート穴端部e及びそのシート穴近傍部側を下型上面fdに向けてより強固に押圧力Ffを加えるよう機能しやすくできている。これにより、シート穴端部e及びそのシート穴近傍部側が下型上面fdより浮き上がるのを確実に防止できる。更に、注入点(ゲート)に対して台状突部317の手前側の板状部の厚みを減肉して減肉部90を形成することで、台状突部317に至るまでの樹脂の流れf2を絞ることで流動を遅くすることができ、よりシート穴端部e及びそのシート穴近傍部側が下型上面fdより浮き上がるのを防止することができる。
【0033】
このような、台状突部317の外周を迂回した迂回流れf1や台状突部の縦断面に沿った鍵型流路を通過してくる上下屈曲流れf2は、シート穴端部e及びそのシート穴近傍部を下型上面fdに押圧する流れとなる。このため、シート穴端部及びそのシート穴近傍部の浮き上がりを抑制して導電性シート50を上面に一体成形した前アンダーカバー31を容易に成形できる。
上述のところで、前アンダーカバー31は一対の台状突部317を板状部311に形成していたが、その他の複数の突部を突設していてもよい。また、注入口に対して台状突部317の手前側の板状部の厚みを減肉した減肉部を形成してもよい。更に、突部の外周近傍であって、ゲートjの下流側となる部位の上型61側に膨出部をとして台状突部317を説明したが、他の形状の突部であってもよい。
【0034】
上述のところで、導電性シート50を上面に一体成形した前アンダーカバー31の成形について説明したが、後アンダーカバー32は台状突部317膨出部70の無い状態で、同様に成形できる。
このようなアンダーカバー30を用いることで、車体下部装備品である電池パックAから外部へ電磁波が放出されることや、電池パックA内部の電気部品が電磁波の影響を受けることで、誤作動することを確実に防止できる。
【0035】
上述のアンダーカバー30は前後のアンダーカバー31,32を組み合わせて一つのアンカバーを成していたが、単一のアンダーカバーにも本発明を同様に適用でき、同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
4 枠状フレーム(井桁)
30 アンダーカバー
31 前アンダーカバー
32 後アンダーカバー
311,321 板状部
317 台状突部(突部)
50 導電性シート
60 成形機
61 上型
62 下型
70 膨出部
90 減肉部
d1 ガイド部
e シート穴端部
fd 下型上面
f1 迂回流れ
f2 上下屈曲流れ
f3 シート穴近傍部に向かう流れ
j ゲート(注入点)
n シート穴(貫通穴)
A 電池パック(車体下部装備品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11