特許第5939971号(P5939971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5939971-排ガス浄化装置および排ガス浄化方法 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939971
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置および排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20160616BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20160616BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20160616BHJP
   F01N 3/029 20060101ALI20160616BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01J23/63 A
   B01J23/46 AZAB
   F01N3/029
   F01N3/08 G
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-268422(P2012-268422)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-146726(P2013-146726A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-277654(P2011-277654)
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩文
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−166854(JP,A)
【文献】 特開2006−326433(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/124357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34
B01J 21/00−38/74
F01N 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
WPI
Science Direct
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、
前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を空気過剰率が0.99〜1.00の範囲に調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置の排ガス浄化装置であって、
Pt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒Aと、PtおよびIrを少なくとも含む触媒Bとが、ガスエンジン装置の排ガス流路における上流側から、触媒A、触媒Bの順で直列に配置されている排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記ガスエンジン装置は、排ガス温度が400℃以上600℃未満の低温域となる運転動作が可能である請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒Aと触媒Bの体積比(触媒Aの体積:触媒Bの体積)が、1:3〜1:1である請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、
前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を空気過剰率が0.99〜1.00の範囲に調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置からの排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、
前記ガスエンジン装置からの排ガスを、まずPt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒Aに接触させ、次いでPtおよびIrを少なくとも含む触媒Bに接触させる排ガス浄化方法。
【請求項5】
前記ガスエンジン装置からの排ガスを、前記触媒Aに400℃以上600℃未満の低温域で接触させる請求項4に記載の排ガス浄化方法。
【請求項6】
前記排ガスの接触する前記触媒Aと触媒Bの体積比(触媒Aの体積:触媒Bの体積)が、1:3〜1:1である請求項4または5に記載の排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置に用いられる排ガス浄化装置および排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の内燃機関の排ガス中には、窒素酸化物や一酸化炭素、さらには炭化水素が含まれる。これらの成分は大気中にそのまま放出すると環境等の観点から問題があるので、三元触媒を用いて排ガスから上記3成分を除去する排ガス浄化方法(三元触媒法)が広く普及している。
【0003】
三元触媒法とは、排ガスの空燃比を制御して排ガス中の酸化性成分と還元性成分とを釣り合わせた上で、白金やロジウムを含む触媒(三元触媒)に排ガスを通じて、窒素酸化物、一酸化炭素、および炭化水素の同時除去を図るものである。
【0004】
三元触媒を用いた排ガスの浄化方法は、ガソリン自動車の排ガス浄化に適用され、自動車排ガスからの窒素酸化物低減に多大な効果をもたらした。三元触媒法をガソリン自動車排ガスに適用した場合、空燃比(空気過剰率)λ=1.000およびその近辺では、窒素酸化物、一酸化炭素、および炭化水素のいずれの成分も良好に除去できる。
【0005】
しかし三元触媒を用いた排ガス浄化方法では、ガスエンジン装置におけるλ=1.000よりもリーン(燃料希薄すなわち酸素過剰)側の空燃比では、一酸化炭素や炭化水素の浄化率は高く維持されるが、窒素酸化物の除去率が低下する傾向が知られている。一方、λ=1.000よりもリッチ(燃料過剰すなわち酸素不足)側の空燃比では、窒素酸化物の浄化率は高いが、一酸化炭素や炭化水素の浄化率は低下する傾向が知られている。リーンおよびリッチ側に傾いた空燃比で浄化性能が低下するのは、酸化性成分と還元性成分のバランスが崩れるためと考えられる。
【0006】
三元触媒の使用目安となる、前記3種のガス成分をバランスよく除去できる空燃比の範囲を、一般的に「ウインドウ」と呼ぶ。
ガスエンジンの排ガスのように、排ガス中の炭化水素が主としてメタンである場合には、このウインドウ領域が非常に狭く、ガソリン排ガスと同種の触媒や使用条件では高い浄化率が得られないことも知られており、特にリーン側でもメタンの浄化率が低くなる特徴がある。これは、メタンが炭化水素の中で最も安定性の高い炭化水素で、反応性に乏しいことに起因していると考えられている。そこで、このような炭化水素に占めるメタンの割合の高い排ガスに対しても高い浄化率が得られるメタン主成分ガスの燃焼排ガス用三元触媒が開発されている(特許文献1、2)。
【0007】
しかし、近年、エンジンのエネルギー変換効率が向上した結果、排ガスの温度が低温化する傾向にあり、従来の三元触媒では低温で十分な性能を得るには多量の触媒を要する懸念が生じつつあり、より低い温度でも使用できる高活性の三元触媒が求められている。
そのような状況に鑑みて、単斜晶の酸化ジルコニウムを主成分とする無機酸化物にイリジウムおよび白金を担持して構成され、理論空燃比でメタン含有ガス中のメタンを還元力として利用可能な三元触媒も提案されており、低温域における性能の向上やリーン側でも高いメタン酸化活性が得られることが示されている(特許文献3)。
【0008】
単斜晶の酸化ジルコニウムを主成分とする無機酸化物にイリジウムおよび白金を担持した触媒は、酸素過剰(リーン)雰囲気におけるメタン酸化活性が高いことも知られている(特許文献4)。またガスエンジン排ガスの処理に際して、イリジウムおよび白金を担持した触媒を用いて希薄燃焼状態と理論空燃比状態を切り替えながら運転する方法(特許文献5)も知られている。
【0009】
また、ガスエンジンの排気浄化装置として、複数の触媒を組み合わせたものも知られている。たとえば、特許文献6には、過剰量の酸素を含む燃焼排ガスの浄化方法において、メタンの存在下に窒素酸化物を分解する第一の触媒とメタンを酸化する第二の触媒とを用いることを特徴とする燃焼排ガスの浄化方法;およびこの燃焼排ガスの浄化方法を実施するための装置が提案されている。特許文献7には、メタン含有排ガスの浄化方法において、メタン酸化触媒とNOx吸蔵還元型触媒とを使用することを特徴とするメタン含有排ガスの浄化方法が提案されている。特許文献8には、排気系に炭化水素酸化触媒およびNOx吸蔵還元触媒が直列に介装されており、内燃機関に近い側にNOx吸蔵還元触媒が配置されていることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置が開示されている。
【0010】
しかし、上述の触媒を用いた場合であっても、理論空燃比において三元触媒反応により除去された窒素酸化物のうち、どの程度が窒素に変換されるかは不明であり、低温域におけるメタン浄化活性の向上とNOx浄化活性(副反応であるアンモニアや亜酸化窒素生成の抑制)の両立については検討されていない。なお、副反応で生成することが確認されているアンモニアや亜酸化窒素は、前者は強い臭気があること、後者は地球温暖化係数が極めて高いことから、いずれもその生成は好ましくないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−23592号公報
【特許文献2】特開平7−313878公報
【特許文献3】特開2006−181569号公報
【特許文献4】国際公開公報WO2002/040152号
【特許文献5】特開2006−299912号公報
【特許文献6】特開2000−176250号公報
【特許文献7】特開2001−190931号公報
【特許文献8】特開2002−349254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような状況に鑑みて、本発明者らが鋭意研究を進める中、Pt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒Aと、PtおよびIrを少なくとも含む触媒Bとを比較検討した場合に、触媒Aは、低温においてメタン浄化率が低下する傾向があるものの、NOx浄化率に優れ、触媒Bは、低温におけるメタン浄化率に優れているものの、NOx浄化の際にアンモニアを生成し易い傾向にあることが判明し、いずれの触媒を用いたとしても満足のできる結果を得ることができなかった。
【0013】
すなわち、触媒Aを用いる場合も触媒Bを用いる場合も、単独で用いた場合には、限られた環境下のみでしか高い排ガス浄化性能を得ることができず、運転条件(負荷)が幅広く、排ガスの組成、温度が変動するガスエンジン装置においては、副反応を抑制した状態で排ガス中に含まれるメタン成分NOx成分をともに浄化する充分な能力を発揮し得ないのである。この状況は、先述の各特許文献に記載の触媒に関していずれにも当てはまる。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置の排ガス浄化に関して、より低い温度でも高い浄化性能を得るとともに、アンモニアや亜酸化窒素のような好ましくない副生物の生成を抑制する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、上記触媒Aと触媒Bとを組み合わせて用いることにより、双方の触媒が持つ特徴を生かしつつ、不十分な性能を克服できることをあらたに見出し、本発明を完成するに至った。この組み合わせについては、一見、根本的な解決に至らないと思われるものの、ガスエンジン特有の運転状況にうまく当てはまり、触媒A,B双方の機能を補完し、効率よく機能させることができるものである。
【0016】
〔構成1〕
上記課題を解決するための排ガス浄化装置の特徴構成は、
メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気燃焼させるガスエンジンと、
前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を空気過剰率が0.99〜1.00の範囲に調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置の排ガス浄化装置であって、
Pt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒Aと、PtおよびIrを少なくとも含む触媒Bとが、ガスエンジン装置の排ガス流路における上流側から、触媒A、触媒Bの順で直列に配置されている点にある。
【0017】
〔作用効果1〕
触媒によるNOx浄化の反応機構は明らかになっていないが、一般に、NOxのアンモニアへの還元反応と、アンモニアとNOxとの窒素生成反応とが同時に進行することによりNOxが窒素に変換されると考えられている。この観点によると、NOxのアンモニアへの還元反応が迅速に進み、窒素生成反応に必要なNOxが十分量残っていないと、窒素生成反応が十分に進行せずアンモニアの発生につながるものと考えられる。この現象に基づき、触媒Aは、低温においてメタン浄化率が低下する傾向があるものの、NOx浄化率に優れ、触媒Bは、低温におけるメタン浄化率に優れているものの、NOx浄化の際にアンモニアを生成し易い傾向にあると考えられる。
【0018】
そこで、触媒Bに供給される排ガス中のNOxを触媒Aで処理しておけば、アンモニアの発生を抑制することができる。しかし、触媒Aでは低温活性が充分ではないため、一見、低温において触媒Aにおいて処理しきれないNOxが触媒Bに供給され、アンモニアが生成されるおそれがあると考えられる。しかし、低温の排ガスが生成するガスエンジンの運転状況を考慮すれば、触媒Aと触媒Bとを正しく組み合わせることによって、互いに機能を補完しあい、良好に排ガスを浄化できるのである。すなわち、各触媒は以下のように働く。
【0019】
(1)前記ガスエンジンのストイキ燃焼で低温運転時には、
ガスエンジンからCO、H2があまり発生せず、NOxの処理を行うに際して、触媒Aおよび触媒Bともにアンモニアを発生させることなくNOxの浄化処理が行える。そのため、低温における活性が十分でない触媒Aで処理しきれない排ガス成分は、触媒Bで処理され、排ガスは全体として良好に処理される。
【0020】
(2)前記ガスエンジンのストイキ燃焼で高温運転時には、
触媒Aの活性が充分高い。したがって、NOxの処理を触媒Aでほぼ完了することができるので、触媒BにおいてNOxからアンモニアを生成する反応は進行せず、かつ、メタンも両触媒で良好に処理されるので、排ガスは全体として良好に処理される。
【0021】
(3)前記ガスエンジンのリッチ燃焼で低温運転時には、
ガスエンジンからCO、H2が多量に発生する。このような条件では、触媒B単独では多量のアンモニアが発生することになるが、先に触媒Aで処理することによって、NOxの一定割合がすでに浄化されていることと、これに応じてCO、H2濃度も低減されていることから、触媒B上でのアンモニアの生成は抑制される。また、低温における活性が十分でない触媒Aで処理しきれない排ガス成分は、触媒Bで処理される。従って、アンモニアの生成を抑制しつつ高いNOx浄化率が得られる。
【0022】
(4)前記ガスエンジンのリッチ燃焼で高温運転時には、
触媒Aの活性が充分高い。したがって、NOxの処理を触媒Aでほぼ完了することができるので、触媒BにおいてNOxからアンモニアを生成する反応は進行しない。従って、アンモニアの生成を抑制しつつ高いNOx浄化率が得られる。
【0023】
(5)前記ガスエンジンのリーン燃焼で低温運転時には、
アンモニア生成の原因となるCO、H2の発生は少ないので、NOxからのアンモニア生成は進行しない。排ガス中の主な浄化対象成分となるメタンは、メタン浄化性能の高い触媒Bで主に処理される。
【0024】
(6)前記ガスエンジンのリーン燃焼で高温運転時には、
アンモニア生成の原因となるCO、H2の発生は少ないので、NOxからのアンモニア生成は進行しない。排ガス中の主な浄化対象成分となるメタンは、触媒Aで一部が処理された後、さらにメタン浄化性能の高い触媒Bで処理される。このため高いメタン浄化率が得られる。
【0025】
〔構成2〕
また、上記構成において、前記ガスエンジン装置は、排ガス温度が400℃以上600℃未満の低温域となる運転動作が可能であってもよい。
【0026】
〔作用効果2〕
すなわち、前記ガスエンジン装置は、排ガス温度が400℃以上600℃未満の低温域となる運転動作が可能である場合、特に触媒Aのみでは排ガスの浄化能力が不十分となりがちな領域であるので、前述の触媒A,Bの組み合わせを採用すれば特に高い効果が期待できることになる。
【0027】
なお、前記触媒A、Bの組み合わせによる高い効率が期待される温度域としては、400℃以上600℃未満の温度域をいわゆる低温域として取り扱うことができるが、特に好ましくは400℃以上550℃未満、さらに好ましくは400℃以上450℃未満とすることにより特に優れた効果を発揮させることができる。
【0028】
〔構成3〕
また、上記構成において、前記触媒Aと触媒Bの体積比(触媒Aの体積:触媒Bの体積)が、1:3〜1:1であってもよい。
【0029】
〔作用効果3〕
すなわち、前記触媒Aと触媒Bの体積比を1:3〜1:1にすることにより、後述する各種の測定結果から明らかなように、特に低温域において、ストイキ点付近におけるNOx浄化率およびリーン側での炭化水素浄化率の向上を図ることができる。
【0030】
〔構成4〜6〕
上記課題を解決するための排ガス浄化方法の特徴構成は、
メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、
前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を空気過剰率が0.99〜1.00の範囲に調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置からの排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、
前記ガスエンジン装置からの排ガスを、まずPt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒Aに接触させ、次いでPtおよびIrを少なくとも含む触媒Bに接触させる点にある。
【0031】
また上記構成において、前記ガスエンジン装置からの排ガスを、前記触媒Aに400℃以上600℃未満の低温域で接触させてもよく、さらに、前記排ガスの接触する触媒Aと触媒Bの体積比(触媒Aの体積:触媒Bの体積)を1:3〜1:1にしてもよい。
【0032】
〔作用効果4〜6〕
すなわち、触媒Aおよび触媒Bを、この順で用いることにより、ガスエンジンの排ガスを幅広い運転条件のいずれにおいても除去対象成分を効率よく浄化する事ができるようになった。
【0033】
なお、この排気浄化装置に用いる触媒のうち、触媒Aについては、そのPt、Rh,Ceの担持量が、触媒1リットルあたり、それぞれ2g以上、0.2g以上、5g以上であること、触媒Bについては、そのPt、Irの担持量が、触媒1リットルあたり、それぞれ3g以上、1.5g以上であることが望ましく、この範囲であれば、充分な触媒活性を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の方法により、メタンを主成分とする燃料ガスと酸素含有ガスとを含む混合気を燃焼させるガスエンジンと、前記燃料ガスと前記酸素含有ガスとの混合比を調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段とを備えたガスエンジン装置の排ガス浄化を行うことで、従来よりも低い温度、たとえば450℃程度であっても高い窒素酸化物、一酸化炭素および炭化水素の浄化性能が得られるとともに、アンモニアや亜酸化窒素のような好ましくない副生物の生成も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明のメタン除去装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
触媒Aは、三元触媒として一般的な主活性金属であるPtとRhとを含有し、さらに助触媒であるCeを含有する。触媒Aの形状は、粒状やペレット状でもよく、コージェライトやステンレス箔などの耐火性のハニカム基材上に触媒成分をコートしたモノリス形状でもよいが、圧力損失が低く、触媒を安定して保持できる点では、耐火性のハニカム基材上に触媒成分をコートしたモノリス形状が好ましい。触媒AにおけるPt、RhおよびCeの担持量は、触媒体積との見合いで適宜決定できるが、触媒1リットルあたり、それぞれ2g以上、0.2g以上、5g以上であることが望ましい。このような触媒は、特許文献1ないし2に開示される方法によって調製することができる。
【0037】
触媒Bは、PtおよびIrを少なくとも含む触媒である。これらを担持する担体としては、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、アルミナ、セリア−ジルコニアなどの耐火性無機酸化物が使用できるが、単斜晶のジルコニアを主成分とすることが好ましい。触媒Bについても、粒状やペレット状でもモノリス形状でもよいが、触媒Aと同様の理由で、耐火性のハニカム基材上に触媒成分をコートしたモノリス形状が好ましい。触媒BにおけるPt、Irの担持量は、触媒1リットルあたり、それぞれ3g以上、1.5g以上であることが好ましい。このような触媒は、特許文献3ないし5に開示される方法によって調製することができる。
【0038】
触媒の使用量は、少なすぎる場合には、有効な浄化性能が得られないが、多すぎても経済的に不利となるので、触媒AおよびBのそれぞれについて、ガス時間当たり空間速度(GHSV)で1,000〜200,000h-1となる量を使用することが好ましく、20,000〜100,000h-1程度とすることがより好ましい。触媒Aと触媒Bの体積比は、(触媒Aの体積):(触媒Bの体積)として、1:20〜10:1程度の範囲とすることが好ましく、1:4〜2:1程度とするのがより好ましく、さらに好ましくは、1:3〜1:1(触媒A≦触媒B)である。
【0039】
本触媒の排ガス浄化装置は、ガスエンジンの排気が、まず触媒Aに、次いで触媒Bに接触するように構成されている。触媒Aおよび触媒Bを別個の容器に充填して、ガスエンジンの排気口を触媒Aを充填した容器の入口に接続し、その出口を触媒Bを充填した容器の入口に接続しても良いが、触媒Aおよび触媒Bを同一の容器に充填しても何ら差し支えないので、一つの容器に触媒Aおよび触媒Bを充填し、触媒A側から排ガスを流入させるように構成する(図1)ことが経済的に有利である。ただし、この際に粒状あるいはペレット状の触媒を用いる場合には、両触媒が混合しないようにする必要があり、隔壁等を設けることが望ましい。
【0040】
本触媒の排ガス浄化方法では、上記の排ガス浄化装置にガスエンジンの排ガスを流通することにより、該ガスエンジン排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素および炭化水素を浄化する。
【0041】
排ガスの温度(反応による発熱や外部への放熱により多少の変化はあるが、通常は触媒温度にほぼ一致する)は、余りに低すぎると触媒性能が低下して、浄化率が低下する一方、余りに高すぎても、耐久性が低下するため、400℃〜600℃程度が好ましく、400〜550℃程度とするのがより好ましい。さらには、400℃〜450℃において最も好ましい。
【0042】
排ガスの空燃比(空気過剰率)λは、リッチ側では一酸化炭素および炭化水素の浄化率が低下し、リーン側では窒素酸化物の浄化率が低下するので、λが0.99〜1.00の範囲、より好ましくは、0.995〜1.000の範囲となるようにガスエンジンの空燃比を制御する。ただし、本発明の触媒には酸素吸蔵作用があるため、時間的にλが変動することは許容される。λが1〜5秒間の平均値において上記の範囲内にあれば、浄化性能は確保することができ、空燃比を正弦波ないし矩形波状に変動させてもよい。
【0043】
メタンを主成分とする燃料ガスは、一般には天然ガス系の都市ガスを用いることが多いが、バイオマスのメタン発酵により得られるガス(バイオガス)などであっても良い。
酸素含有ガスは、一般には空気であるが、ガスエンジンの運転に支障のない範囲で、酸素濃度を高めたり、不活性ガスや燃焼排ガスを添加したりして酸素濃度を低くしたガスであっても良い。
【0044】
本願の排ガス浄化装置の構成例を図1に示す。
【0045】
排ガス浄化装置1の適用されるガスエンジン装置は、メタンを主成分とする燃料ガス4と酸素含有ガス5とを含む混合気を燃焼させるガスエンジン2と、前記燃料ガスと前記酸素含有ガス5との混合比を調整して前記ガスエンジンに導入する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段3とを備え、前記ガスエンジンの排ガス路に排ガス浄化装置1が適用される。
【0046】
混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段3は、前記排ガス浄化装置1の上流側および必要に応じて下流側に酸素センサ31,32を設けるとともにガスエンジン2の入り口側にスロットル33と、燃料ガス4を供給する燃料弁34を備え、スロットル33を、燃料ガスを酸素含有ガス5と混合して、ガスエンジン2に供給自在に配置するとともに、前記酸素センサ31、32からの出力を基に、演算装置35により燃料弁34およびスロットル33を開閉制御して空燃比を適切に制御可能に構成されている。
【0047】
前記排ガス浄化装置1において、Pt、RhおよびCeを少なくとも含む触媒A(11)と、PtおよびIrを少なくとも含む触媒B(12)とが、同一のケーシング内においてガスエンジン装置の排ガス流路における上流側から、触媒A(11)、触媒B(12)の順で直列に配置されている。
【0048】
本発明が適用されるガスエンジン装置は、発電用途(一例としてコージェネレーション装置)や空調用途(一例としてガスエンジンヒートポンプ装置)等に用いられ、その用途には制約はない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(比較例1)
特許文献1(特開平5−23592号公報)に開示される方法に従って、コージェライトハニカム(6.45平方センチあたりのセル数 210セル)に、Pt、Rh,Ceをそれぞれ3、0.3および45g(ハニカム触媒1リットルあたり)担持する触媒Aを調製した。
【0051】
すなわち、γ−アルミナを主成分とする活性アルミナ粉末(BET比表面積190m2
/g)1000gに、硝酸セリウム水溶液1000ml(セリウムとして28gを含有)を加えてよく撹拌し150℃で乾燥した後、空気中で、600℃で2時間焼成した。このセリウム含有活性アルミナ1000gに対し、酸化セリウム700g、およびアルミナゾル(ベーマイト10重量%+硝酸10重量%)2400gを加えて、ボールミル中で混合粉砕し、この液にコージェライト製モノリス担体(見かけの体積1680ml)を浸漬し、目詰まりを飛ばす目的でエアブローした後乾燥させ、さらに浸漬・エアブロー・乾燥を2回繰り返した後、700℃で2時間焼成し、ハニカム担体上にウォシュコート層を形成した。このハニカム担体に、ジニトロジアンミン白金の硝酸水溶液と硝酸ロジウム水溶液の混合溶液に浸漬し、エアブロー、乾燥する工程を繰り返し、Ptをハニカム担体の見かけの体積に対して3g/L程度、Rhを0.3g/L程度含むように担持した後、焼成して、触媒を得た。
【0052】
上記の触媒Aを、直径12mm×長さ24mmに切り出し、石英反応管に充填し、触媒層温度を550,500,475,450,425,400℃に変えて、それぞれの温度で表1に示す組成のガスを毎分1.675リットル(0℃、1気圧の標準状態に換算した体積、以下同様)流通して、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)および炭化水素(CH4)の浄化率と窒素収率を測定した(初期の性能)。なお、浄化率はいずれも、1
00×(1−(出口濃度)/(入口濃度))(%)で定義され、NOxについては一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)の合計濃度を用いている。また、窒素収率は、20
0×(出口の窒素濃度)/(入口のNOx濃度)で求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
引き続いて、触媒層温度を400℃に保ち、表2に示すガスを毎分1.29リットルの流量で18時間流通する模擬劣化処理を行った。これは触媒を被毒して活性を低下させる硫黄化合物を付着させるとともに、起動停止時などに発生する酸素濃度が高い状態における劣化を模擬したものである。
【0055】
【表2】
【0056】
模擬劣化処理に引き続いて、触媒層温度を400,425,450,475,500,550℃に変えて、それぞれの温度で表3に示す組成のガスを毎分1.675リットルの流量で流通して、浄化率と窒素収率を測定した(劣化処理後の性能)。
【0057】
【表3】
【0058】
模擬劣化処理の前(初期)および後(劣化処理後)の浄化率と、NOx浄化率から窒素収率を差し引いた値を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
本触媒では、初期においてはλが0.99以下の条件で窒素収率が低下し、アンモニアや亜酸化窒素の生成(NOx浄化率−窒素収率により示される)が増加するが、劣化処理後には、λ=0.985〜1.005のリッチからリーン領域に及ぶ幅広い範囲で、アンモニアや亜酸化窒素は、ほとんど生成しないことが明らかである。
【0061】
ただし、本触媒では、λ=0.9995におけるNOx浄化率は、初期活性について見ると、500℃では100%であるが、450、425,400℃で、それぞれ88%、70%、22%となっている。これに対して、劣化処理後の活性について見ると、500℃では88%であるが、450、425,400℃で、それぞれ64%、18%、13%となり、いずれの場合でも、温度の低下に伴い顕著に低下する。
【0062】
また、λ=1.005における炭化水素の浄化率も、初期活性について見ると、550℃では93%であるが、450、425,400℃で、それぞれ36%、23%、12%となっている。これに対して、劣化処理後の活性について見ると、550℃では95%であるが、450、425,400℃で、それぞれ35%、26%、15%となり、温度の低下に伴い顕著に低下する。
【0063】
また、400℃における模擬劣化処理の際の炭化水素浄化率は、処理開始1,5,10,18時間後について、それぞれ24,19,15,12%と、低い値にとどまった。
【0064】
以上の結果から、触媒Aでは、アンモニアや亜酸化窒素の生成は少ないものの、低温活性は十分ではないことが明らかである。
【0065】
(比較例2)
特許文献5(特開2006−299912号公報)に開示される方法に従って、コージェライトハニカム(6.45平方センチあたりのセル数210セル)に、酸化ジルコニウムを担体として、Pt、Irをそれぞれ5.0および7.5g(ハニカム触媒1リットルあたり)担持する触媒Bを調製した。
【0066】
すなわち、酸化ジルコニウム(東ソー(株)製、TZ−0、比表面積15m2/g)1
5g、ジルコニアゾル(日産化学工業(株)製、NZS−30A:酸化ジルコニウムとして31重量%含有)30g、水45mlをボールミルで混合してスラリーを調製した。このスラリーに、1平方インチ当たり210の貫通口を有するコージェライトハニカムを浸漬して引き上げ、乾燥する工程を繰り返して酸化ジルコニウムでコーティングした。次いで、空気中800℃で4時間焼成し、コージェライトハニカム1リットル当たり280gの酸化ジルコニウムを担持した焼成酸化ジルコニウムコートハニカムを得た。この焼成酸化ジルコニウムコートハニカムを、塩化イリジウム酸(H2IrCl6)と塩化白金酸(H2PtCl6)とを混合した混合水溶液に含浸し、さらにドライヤで乾燥した後、空気中550℃で4時間焼成して、コージェライトハニカム1リットル当たり5gの白金及び7.5gのイリジウムを担持した排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
上記の触媒Bについて、触媒Aと同様に直径12mm×長さ24mmに切り出し、比較例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
本触媒では、初期においてはλが0.995以下の条件で窒素収率が低下し、アンモニアや亜酸化窒素の生成(NOx浄化率−窒素収率により示される)が増加する。さらに、劣化処理後でも、アンモニアや亜酸化窒素は、λ=0.99以下のリッチ領域においては生成することが明らかとなった。
【0068】
【表5】
【0069】
一方で、本触媒では、λ=0.9995におけるNOx浄化率は、初期活性について見ると、500℃では100%であるが、450、425,400℃でも、それぞれ100%、98%、76%となり、また劣化処理後の活性について見ても、500℃では100%であり、450、425,400℃でも、それぞれ93%、84%、76%と、温度低下による活性低下は小さい。
【0070】
また、λ=1.005における炭化水素の浄化率も、初期活性について見ると、550℃では100%であるが、450、425,400℃でも、それぞれ93%、82%、61%となり、また劣化処理後の活性について見ても、550℃では100%であり、450、425,400℃でも、それぞれ94%、87%、71%となり、450℃以下の比較的低い温度でも高活性を維持する。
【0071】
また、400℃における模擬劣化処理の際の炭化水素浄化率は、処理開始1,5,10,18時間後について、それぞれ65,70,71,72%と、高い値を維持した。
以上の結果から、触媒Bでは、低温活性は極めて高いものの、比較的多量のアンモニアや亜酸化窒素を生成することが明らかである。
【0072】
(実施例1)
比較例1で用いた触媒Aと比較例2で用いた触媒Bをそれぞれ、直径12mm×長さ12mmに切り出し、触媒Aがガス流れに対して上流側となるように石英反応管に充填し、比較例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
本実施例では、NOx浄化率−窒素収率により示されるように、アンモニアや亜酸化窒素の生成は、比較例1と同程度に抑制されている。
【0075】
その一方で、低温活性は高く、λ=0.9995におけるNOx浄化率は、初期活性について見ると、500℃では100%であり、450、425,400℃でも、それぞれ98%、91%、65%となり、また劣化処理後の活性について見ても、500℃では99%、450、425,400℃でも、それぞれ80%、68%、20%と、比較例2には劣るものの、比較例1と比べると格段に高い。
【0076】
また、λ=1.005における炭化水素の浄化率も、初期活性について見ると、550℃では99%であるが、450、425,400℃でも、それぞれ77%、58%、38%となり、また劣化処理後の活性について見ても、550℃では99%であり、450、425,400℃でも、それぞれ81%、67%、43%となり、450℃以下の比較的低い温度でも高活性を維持する。
【0077】
また、400℃における模擬劣化処理の際の炭化水素浄化率は、処理開始1,5,10,18時間後について、それぞれ44,45,45,46%と、高い値を維持した。
【0078】
以上の結果から、実施例の方法に従うと、アンモニアや亜酸化窒素を生成することなく、比較的高い低温活性を得ることができる。
【0079】
(比較例3)
直径12mm×長さ12mmに切り出した触媒Aと触媒Bを用いて、触媒Bがガス流れに対して上流側となるように石英反応管に充填した他は、実施例と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
比較例3では、アンモニアや亜酸化窒素の生成は、比較例1よりはむしろ比較例2に近く、特にλ=0.985では顕著な生成が見られる。
【0082】
一方、低温活性については、実施例と顕著な差異はない。また、400℃における模擬劣化処理の際の炭化水素浄化率は、処理開始1,5,10,18時間後について、それぞれ43,43,44,45%と、この点でも実施例との差異はほとんど見られなかった。
以上の結果から、触媒Aと触媒Bの順序は、低温活性への影響は小さいものの、アンモニアや亜酸化窒素の副生を抑える点では極めて重要であることが示された。
【0083】
(比較例4)
比較例1の触媒Aを、直径8mm×長さ50mmに切り出し、石英反応管に充填し、触媒層温度を525,500,475,450,425,400℃に変えて、それぞれの温度で表1に示す組成のガスを毎分1.675リットル流通して、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)および炭化水素(CH4)の浄化率と窒素収率を測定した(初期の性能)。
引き続いて、触媒層温度を400℃に保ち、表2に示すガスを毎分1.29リットルの流量で18時間流通する模擬劣化処理を行ったのち、触媒層温度を400,425,450,475,500,525℃に変えて、それぞれの温度で表3に示す組成のガスを毎分1.675リットルの流量で流通して、浄化率と窒素収率を測定した(劣化処理後の性能)。結果を表8に示す。
【0084】
【表8】
【0085】
比較例4の結果は、比較例1の結果と類似しているが、触媒体積がやや比較例4の方が小さいことと、触媒形状(断面積と長さ)の違いにより反応ガスの線速度が異なることから、若干の差異を生じたものとも考えられる。
【0086】
(比較例5)
比較例2の触媒Bを、直径8mm×長さ50mmに切り出し、石英反応管に充填して、比較例4と同様の評価を行った。結果を表9に示す。
【0087】
【表9】
【0088】
比較例5の結果も、比較例2の結果と類似しているが、触媒体積がやや比較例5の方が小さいことと、触媒形状(断面積と長さ)の違いにより反応ガスの線速度が異なることから、若干の差異を生じたものとも考えられる。
【0089】
(実施例2)
比較例1で用いた触媒Aを直径8mm×長さ12mmに切り出し、比較例2で用いた触媒Bを直径8mm×長さ37mmに切り出し、両触媒を触媒Aがガス流れに対して上流側となるように石英反応管に充填して、比較例4と同様の評価を行った。結果を表10に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
本実施例では、NOx浄化率−窒素収率により示されるように、アンモニアや亜酸化窒素の生成は、比較例4と同程度に抑制されている。
【0092】
その一方で、低温活性は高く、λ=0.9995におけるNOx浄化率は、初期活性について見ると、500℃では100%であり、450、425,400℃でも、それぞれ100%、100%、94%となり、また劣化処理後の活性について見ても、500℃では100%、450、425℃でも、それぞれ100%、89%と、比較例5には劣るものの、比較例4と比べると格段に高い。
【0093】
また、λ=1.005における炭化水素の浄化率も、初期活性について見ると、500℃では99%であるが、450、425,400℃でも、それぞれ83%、61%、39%となり、また劣化処理後の活性について見ても、500℃では99%であり、450、425,400℃でも、それぞれ86%、72%、47%となり、450℃以下の比較的低い温度でも高活性を維持する。
【0094】
(実施例3)
比較例1で用いた触媒Aを直径8mm×長さ24mmに切り出し、比較例2で用いた触媒Bを直径8mm×長さ24mmに切り出し、両触媒を触媒Aがガス流れに対して上流側となるように石英反応管に充填して、比較例4と同様の評価を行った。結果を表11に示す。
【0095】
【表11】
【0096】
本実施例でも、NOx浄化率−窒素収率の値により示されるように、アンモニアや亜酸化窒素の生成は、比較例4と同程度に抑制されている。また、ストイキ点付近における低温活性(例えば、λ=0.9995におけるNOx浄化率)およびリーン側での炭化水素浄化率では、比較例4よりも優れている。
【0097】
(実施例4)
比較例1で用いた触媒Aを直径8mm×長さ37mmに切り出し、比較例2で用いた触媒Bを直径8mm×長さ12mmに切り出し、両触媒を触媒Aがガス流れに対して上流側となるように石英反応管に充填して、比較例4と同様の評価を行った。結果を表12に示す。
【0098】
【表12】
【0099】
本実施例でも、NOx浄化率−窒素収率の値により示されるように、アンモニアや亜酸化窒素の生成は、比較例4と同程度に抑制されている。また、ストイキ点付近における低温活性(例えば、λ=0.9995におけるNOx浄化率)およびリーン側での炭化水素浄化率では、比較例4よりも優れている。
【0100】
以上、実施例1〜4の結果を比較検討すると、いずれもNOx浄化率−窒素収率では大きな差が無いことが解る。
しかし、ストイキ点付近における低温活性(例えば、λ=0.9995におけるNOx浄化率)およびリーン側での炭化水素浄化率に着目すると、実施例1〜3の方が実施例4よりも優れている。
つまり、触媒Aと触媒Bの体積比(触媒Aの体積:触媒Bの体積)を比較検討すると、実施例1と実施例3は1:1、実施例2は約1:3、実施例4は約3:1であり、これらの結果を考慮し、さらに、触媒Aの比率が大きくなり過ぎると、リーン側での炭化水素浄化率が低下し、触媒Aの比率が小さくなり過ぎると、アンモニアの生成が抑制できなくなることを勘案すると、触媒Aと触媒Bの体積比は、1:3〜1:1(触媒A≦触媒B)程度が好ましいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の排ガス浄化装置をガスエンジンの排ガス浄化装置として用いることにより、低温でも高い窒素酸化物や炭化水素の浄化性能が得られるとともに、環境上問題となるアンモニアや亜酸化窒素の副生を抑制することができる。従って、天然ガスを燃料とするガスエンジンシステムの排ガス浄化に用いることで、排ガス処理コストの低減に資することはもちろん、地球環境の改善にも資するところ大である。
【符号の説明】
【0102】
1:排ガス浄化装置
11:触媒A
12:触媒B
2:ガスエンジン
3:空燃比制御装置
31:空燃比センサ
32:空燃比センサ
33:スロットル
34:燃料弁
35:演算装置
4:燃料ガス
5:酸素含有ガス
図1