(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気絶縁コーティングが、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択されるセラミックである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示では、電子部品への使用に適する接着剤組成物、及びこのような組成物を調製し、使用する方法が提供される。概括すると、当該組成物は、炭素系粒子を含み、これらの炭素系粒子に電気絶縁コーティングが施される。このようなコーティングは、粒子が機器内で使用されている機器を、これらの粒子の導電性に起因して起こり得る短絡が生じないように保護する、または接着剤(例えば、個々のコーティング済み粒子、またはこのような粒子から成る個々のコーティング済みグループ)の一部が剥がれないように保護する。これらの炭素系粒子は、接着性を組成物に付与する1種類以上のバインダ材内に分散させることができる。炭素系材料は、これらの材料が金属材料よりも熱伝導率が高く、重量が軽く(すなわち、密度が低く)、酸化及び溶融に対する耐性が高いという理由により使用される。
【0011】
本明細書において表記されるように、「carbon−based particles(炭素系粒子)」という用語は、少なくとも約50重量%の炭素により構成される粒子を指す。他の実施形態では、これらの炭素系粒子は、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%の炭素を含む、または少なくとも約95重量%もの炭素を含む。これらの炭素系粒子は、少なくとも500W/m
*Kの熱伝導率を有することができ、他の実施形態では、少なくとも約1000W/m
*K、少なくとも約2000W/m
*K、少なくとも約4500W/m
*Kの熱伝導率を有する、または少なくとも約6000W/m
*Kもの熱伝導率を有することができる。これらの炭素粒子の電気抵抗は、約100Ω
*cm未満、約50Ω
*cm未満、約30Ω
*cm未満、約1Ω
*cm未満とすることができる、または約0.1Ω
*cm未満とすることもできる。
【0012】
接着剤中に使用される炭素系粒子の素材は、例えば炭素繊維、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、及びこれらの組み合わせを含む多種多様な材料とすることができる。特定の実施形態では、これらの粒子は、例えばCytec Industries Inc.社(コネティカット州スタンフォード)から入手することができるThermalGraph(登録商標)DKD fibersのような炭素繊維である。これらの炭素系粒子は、プレートレット、ファイバ、球、フレーク、チューブ、ロッド、及びダイヤモンドを含む多種多様な形状を採ることができるが、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、いずれの形状を使用してもよい。一般的に、例えばファイバ、ロッド、及びプレートレットのような異方性材料が、これらの材料が、高い熱伝導率を低有含有率(すなわち、材料の容積が相対的に小さい状態)で実現するので好ましい。電気絶縁炭素系材料を使用することができるが、これらの材料は、これらの材料が通常、熱伝導率が低いので好適性に劣る。特定の実施形態では、炭素系材料は黒鉛炭素 であり、他の実施形態では、ダイヤモンド(天然ダイヤモンドまたは合成ダイヤモンド)である。幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブが接着剤組成物中に使用される。
【0013】
これらの炭素系粒子の粒子サイズは、接着剤の所望の特性(接着力、熱伝導率、粘度など)に依存して変化させることができ、この技術分野の当業者であれば、概略決定することができる。幾つかの実施形態では、これらの粒子の最大寸法は、平均で約1mm未満であり、平均で約500μm未満、約250μm未満、約100μm未満とすることができる、または約1μm未満とすることもできる。繊維粒子を使用する実施形態では、これらの繊維は、平均で約100nm未満(例えば、約50nm未満、または約5nm〜20nm)の直径とすることができ、平均で約500μm未満(例えば、約300μm未満、または約200μm〜約300μm)の長さとすることができる。炭素ロッドを利用する場合、これらのロッドは、平均で約100nm未満(例えば、約50nm未満、または約5nm〜約50nm)の直径とすることができ、平均で約5μm未満(例えば、約3μm未満、または約500nm〜約2μm)の長さとすることができる。プレートレットを使用する場合、これらのプレートの最大幅は、約100μm未満(例えば、約50μm未満、または約10μm〜約40μm)とすることができ、これらのプレートの厚さは、約50nm未満(例えば、約20nm未満、または約5nm〜約40nm)とすることができる。一般的に、上に列挙したサイズ以外の粒子サイズは、限定されず、本開示に基づいて用いることができる。
【0014】
これらの炭素系粒子には、電気絶縁コーティングを施すことができる。当該コーティングは、各粒子の一部を被覆するか、または粒子の表面全体を被覆することができ、これらには限定されないが、粒子のうちの幾つかの粒子を、または粒子の全てを被覆することができる。本開示を行なうために、「電気絶縁コーティング」とは、炭素系粒子の導電率を低下させて、コーティング前の炭素系粒子の導電率よりも小さくするようなコーティング、異なる表現をすると、電気抵抗を増大させて、コーティング前の炭素系粒子の電気抵抗よりも大きくするようなコーティングである。電気抵抗は、例えば以下の実施例2において説明される検査方法によって測定することができる。コーティング後の炭素系粒子の電気抵抗は、少なくとも約50Ω
*cmとすることができ、他の実施形態では、少なくとも約100Ω
*cm、少なくとも約1000Ω
*cm、少なくとも約1x10
5Ω
*cmである、または少なくとも約1x10
8Ω
*cmにもなる。コーティング済み粒子の熱伝導率は、少なくとも約50W/m
*K、少なくとも約300W/m
*K、少なくとも約500W/m
*K、少なくとも約2000W/m
*K、少なくとも約4500W/m
*Kとすることができる、または少なくとも約6000W/m
*Kとすることもできる。
【0015】
適切なコーティング材料は、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの組み合わせのようなセラミックスを含む。セラミック材料は、例えば炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素とすることができ、幾つかの実施形態では、窒化ホウ素である。一般的に、炭素系粒子の熱伝導率を低下させないコーティング材料を選択する必要がある、すなわち、コーティング材料は、熱絶縁性を示さないようにする必要がある。
【0016】
電気絶縁コーティングは、炭素系粒子の上に、コーティングを堆積させるいずれかの既知の方法により堆積させることができ、特定の実施形態では、化学気相堆積法によって堆積させる。化学気相堆積法(CVD)は、当業者に広く知られており、例えば、プラズマ支援CVD(PECVD)、大気圧CVD(APCVD)、低圧CVDまたは減圧CVD(LPCVD)、超高真空CVD(UHVCVD)、原子層堆積法(ALD)、及び噴霧型CVD(AACVD)のような多数のCVD法を利用することができる。組成物は、例えばスパッタリングを含む、CVD以外の方法によって塗布することができる。ゾルゲルプロセスを含む液相法を、本開示の範囲から逸脱しない範囲で利用することもできる。
【0017】
一般的に、CVD法では、前駆体化合物を高温で、コーティングが施されることになる基板表面に、または基板表面の近傍に導入する(通常、継続的に)。前駆体化合物は、反応することによりコーティングを基板表面に堆積させる。コーティングは、化合物が基板の上を高温で通過することがなくなるまで厚さ方向に成長する。使用のために選択されるこれらの前駆体化合物は、コーティングの所望の組成によって異なり、この技術分野の当業者であれば、これらの前駆体化合物の概要を決定することができる。例えば、窒化ホウ素コーティングが望ましい場合、例えばボラジン(B
3N
3H
6)のような、ホウ素及び窒素を共に含有する化合物を使用することができる。別の構成として、ホウ素を含有する第1化合物、及び窒素を含有する第2化合物に、炭素系粒子を接触させることができる。ホウ素化合物は、例えば三塩化ホウ素(BCl
3)、ジボラン(B
2H
6)、及び一般化学式B
xH
yで表わされる全ての化合物を含む。特定の実施形態では、xは1〜10であり、yは1〜15である。化学式B
xH
yで表わされる化合物の例として、BH
3,B
2H
4,B
2H
6,B
3H
8,B
4H
10,B
5H
9,B
5H
11,B
6H
10,B
6H
12,B
8H
12,B
9H
15,及びB
10H
14を挙げることができる。窒素化合物は、例えばN
2,NH
3,及びヒドラジン(N
2H
4)を含む。
【0018】
同様に、窒化ケイ素コーティングが望ましい場合、ホウ素化合物及び窒素化合物を前駆体化合物として使用することができる。適切なケイ素化合物は、例えば四塩化ケイ素、シラン、及びハロシラン(例えば、トリクロロシラン)を含む。
【0019】
炭素系粒子の全表面(または、前駆体化合物に曝される全表面)にコーティングを施すことができる、または別の構成として、一部分にのみコーティングを施すことができる。一般的に、出来る限り多くの粒子にコーティングを施すことにより、これらの粒子が確実に、十分な電気絶縁物を含有するようにすることが望ましい。コーティングの厚さを変化させて、接着剤組成物の十分な電気抵抗を確保し、確実に、熱伝導率が所望値以下に低下することがないようにする。一般的に、電気絶縁コーティングは、少なくとも約10nmの厚さとすることができ、他の実施形態では、少なくとも約100nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、または少なくとも約100μmとすることができる。幾つかの実施形態では、コーティングの厚さは、約10nm〜約10μm、または約100nm〜約1μmである。
【0020】
電気絶縁コーティングは、堆積法、堆積させる材料、基材として使用される炭素系粒子、所望のコーティング厚さなどによって異なるが、多種多様な温度及び圧力で施すことができる。種々の実施形態では、コーティングは、約450℃〜約1000℃、好ましくは約500℃〜約900℃、または更に好ましくは約600℃〜約800℃の温度で施される。
【0021】
幾つかの実施形態では、コーティングは、例えば略大気圧未満、約10
4Pa未満、約250Pa未満、約1Pa未満、約10
−3Pa未満のような低圧で施される、または約10
−6Pa未満のような低圧でも施される。コーティングは、大気圧で施すことができる、または少なくとも約2x10
5Paのような大気圧以上の圧力で施すこともできる。
【0022】
接着剤組成物はバインダを含むことができる。一般的に、バインダは、構造的完全性を接着剤に付与するように作用し、接着力を付与して、表面及び/又は部品を接着させる。一般的に、いずれの接着剤材料を用いてもよく、特定の実施形態では、バインダは、エポキシ類、ポリウレタン類、アクリル類、及びこれらの組み合わせから選択される。1つの適切な接着剤は、Aptek Laboratories, Inc.(カリフォルニア州バレンシア)から入手することができるDIS−A−PASTE 2310である。
【0023】
接着剤組成物は、電気絶縁コーティング済み繊維系粒子をバインダに添加し、混合することにより調製することができる。特定の実施形態では、高せん断混合を用いて、組成物を完全に混合する必要がある。繊維系粒子を添加する前に、または添加した後に、1種類以上の添加剤を添加し、混合することができる。適切な添加剤は、水可溶性化合物、界面活性剤、抗真菌剤、UV保護化合物、消泡化合物、及び触媒を含む。一般的に、接着剤組成物は、ペーストの形態であるか、または混合後かつ硬化前の高粘度液の形態である。
【0024】
接着剤組成物は、少なくとも約10重量%のコーティング済み炭素系粒子を、組成物の残りがバインダまたは添加剤である状態で含むことができる。他の実施形態では、当該組成物は、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%のコーティング済み炭素系粒子を含むことができる、または少なくとも約95%ものコーティング済み炭素系粒子を含むことができる。一般的に、本明細書において説明される接着剤組成物の成分の含有率は、特に断らない限り、全組成物に対する重量含有率として列挙される。
【0025】
コーティング済み炭素系粒子を、バインダに混入させてコーティング前の粒子と混合することにより、コストを最小に抑えることができる。コーティング前の粒子を使用することにより、導電率を、導電率の上昇がコーティング前の粒子の添加量に比例するように上昇させることができる。しかしながら、一般的に、コーティング前の炭素系粒子は、目標とする導電率閾値、または所望の導電率閾値に相当する量を超える量で混入させてはならない。接着剤組成物は、本開示に従ってコーティングされる少なくとも約25重量%の炭素系粒子を含むことができ、他の実施形態では、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%の炭素系粒子を含むことができる、または電気絶縁コーティングが施された少なくとも約99重量%もの炭素系粒子を含むことができる。幾つかの実施形態では、コーティング済み炭素系粒子のみが、接着剤組成物中に使用される。
【0026】
接着剤組成物が調製されると、当該接着剤組成物をターゲット面に塗布することができ、部品または他の表面に接着剤を接触させることができる。硬化すると、当該部品が当該ターゲット面に取り付けられる。一般的に、硬化時間は、バインダによって異なるが、少なくとも約5秒、少なくとも約30秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約5時間、またはそれよりも更に長い時間とすることができる。
【0027】
特定の実施形態では、第2バインダ材を混合物に添加して、接着剤組成物が硬化し始めるようにする。例えば、コーティング済み炭素系粒子を第1バインダと混合させて、ペースト組成物を生成することができ、使用の直前に、第2バインダを混合物に添加して、これらのバインダを反応させると混合物が硬化し始める。
【0028】
接着剤組成物は、電子機器内で使用することができ、従来使用されてきた接着剤に置き換わり得る。接着剤組成物を使用して、電子部品(例えば、集積回路、チップ、抵抗体、サーマルチップストラップなど)を基板(例えば、誘電体層)に取り付けることができる、または種々の層を機器内に取り付けることができる(例えば、多層PCBにおけるように)。接着剤は、熱伝達経路を電子部品と当該部品のヒートシンクとの間のような箇所に設けるのが望ましい用途において使用することができる。接着剤組成物は、航空産業または衛星産業において、軽量、高耐久性、及び短絡保護というこれらの産業に固有の性質のために使用される電子機器の内部で使用することができる。本開示の接着剤組成物が電気機器に使用される場合に関して概要説明してきたが、他の使用が、本開示の範囲内で考えられる。
【実施例】
【0029】
実施例1:電気絶縁性炭素繊維の調製
石英チューブに炭素繊維(Cytec Industries Inc./コネティカット州スタンフォード)製のThermalGraph(登録商標)DKD)(0.50g)を詰め、石英チューブをアルミナボートに載せた。チューブ及びボートをチューブ炉に入れた。アルゴンガス管を石英チューブの一方の端部に接続した。アルゴン管をボラジンバブラー(及びバブラーバイパス)に接続して、ボラジンをガス流に、石英チューブに加える前に添加した。石英チューブの他方の端部から排気を、オイルバブラー及びヒュームフードに導いた。
【0030】
石英チューブを排気し、石英チューブにアルゴンガスを3回再充填した。アルゴン(100ml/分)をチューブに流して炭素繊維を通過させた。炉温度を700℃まで上昇させ、ボラジンバブラーを通過して気泡となったアルゴンガス(100ml/分)を、チューブを通るように15分間に亘って供給した。15分後、バブラーを迂回させ、チューブ炉を室温まで冷却することができた。
図1から分かるように、炭素繊維を窒化ホウ素でコーティングした。炭素繊維の端部を
図2に示す。窒化ホウ素コーティングは、図の右側の相対的に暗い組織(すなわち、窒化ホウ素の結晶)として図示されている。当該コーティングは、炭素繊維の上の1つの連続層を形成する。窒化ホウ素によって表面炭素原子を変位させるか、または窒化ホウ素のコーティングを表面炭素原子に施した。コーティング済み炭素繊維を、エネルギー分散分光法(EDAX)により分析した結果を
図3に示す。
図3から分かるように、コーティング済み繊維は、ホウ素、窒素、及び炭素を含有していたが、この事実から、当該繊維が窒化ホウ素でコーティングされていたことが一層明らかになる。ボラジンは、分解して窒化ホウ素となることが分かる。観測される少量の酸素は、アルミニウムチューブから、または酸化されている少量の材料から混入している可能性がある。
【0031】
実施例2:コーティング済み炭素繊維の電気絶縁品質の確認
実施例1のコーティング済み炭素繊維(20mg)にFTIRペレットプレスで圧力をかけて7mmのペレットとした。コーティング前の炭素繊維(20mg)にも圧力をかけて7mmのペレットとした。これらのペレットを透明プラスチックテープに取り付け、各ペレットの導電率を、4点プローブを使用して検査した。未処理の炭素ペレットは、285Ωの電気抵抗を有し、実施例1のコーティング済みペレットは、1.75x10
6Ωというずっと大きい電気抵抗を有していた。
【0032】
実施例3:コーティングを堆積させる温度を高くすることによる影響の確認
実施例1を繰り返し、かつ炉を700℃ではなく1000℃に加熱した。
図4から分かるように、結晶が繊維の表面に形成された。これらの結晶によって、不均一なコーティングがこれらの繊維の上に形成された。EDAX分析から、これらの結晶が、ホウ素及び窒素から成り、繊維の露出部分が炭素であったことが確認された。
【0033】
実施例4:5重量%の電気絶縁性炭素繊維を含有する接着剤の調製及び電気抵抗検査
実施例1の電気絶縁性炭素繊維を調製して、エポキシ樹脂系の熱伝導性接着剤とした。30分遅硬化型エポキシ(部品番号SY−SS;Super Glue Corporation(カリフォルニア州ランチョクーカモンガ)を樹脂系として使用した。エポキシは、樹脂及び硬化剤を含有する2成分調製剤である。実施例1の樹脂(0.982g)及びコーティング済み炭素繊維(0.103g)を手でへらを動かして一括混合した。流動性の良い黒色液体が得られるまで、硬化剤(0.984g)を、樹脂及び炭素繊維の懸濁液に、へらを動かして混入させた。この混合物から、5重量%の充填接着剤が調製されたが、この調製は通常、炭素充填熱伝導性接着剤に対して行なわれる。充填接着剤を、スライドガラスにフィルムとして、0.040インチ(1mm)のギャップドローダウンバーを使用して適用し、48時間に亘って硬化させることができた。硬化フィルムは黒色であり、均一に見え、0.034インチ(0.86mm)の高さであった。電気抵抗を、4点プローブステーションを用いて測定し、開回路と等価である(計測器で測定することができる最大抵抗は1GΩであるので、エポキシの電気抵抗は少なくとも10
9Ω
*cmである)ことが判明したが、これは、接着剤が電気絶縁性を呈することを示している。
【0034】
実施例5:10重量%の電気絶縁性炭素繊維を含有する接着剤の調製及び電気抵抗検査
接着剤を調製し、実施例4の方法に従って検査したが、この場合、樹脂(0.271g)、コーティング済み炭素繊維(0.060g)及び硬化剤(0.276g)を異なる量とした。この混合物から10重量%の充填接着剤が調製されたが、この調製も通常、炭素充填熱伝導性接着剤に対して行なわれる。硬化フィルムは黒色であり、均一に見え、0.031インチ(0.79mm)の高さであった。この電気抵抗は、接着剤の電気抵抗が少なくとも10
9Ω
*cmの開回路になっていることも判明した。
【0035】
実施例6:10重量%の非絶縁性炭素繊維を含有する接着剤の調製及び電気抵抗検査
未処理の炭素繊維(Cytec Industries Inc./コネティカット州スタンフォード)製のThermalGraph(登録商標)DKD)を接着剤に混入し、実施例4の方法に従って検査した。接着剤に、樹脂(0.620g)、コーティング前の炭素繊維(0.137g)、及び硬化剤(0.616g)を含有させることにより、コーティング前の10重量%の炭素繊維を含有する接着剤を調製した。硬化フィルムは黒色であり、均一に見え、0.025インチ(0.64mm)の高さであった。電気抵抗を測定したところ、17x10
6Ω
*cmであったが、この値は、コーティング済み炭素繊維を含有する接着剤よりも大幅に小さい。
【0036】
実施例7:プラズマを発生させた状態における電気絶縁性炭素繊維の調製
石英チューブに炭素繊維(Cytec Industries Inc./コネティカット州スタンフォード)製のThermalGraph(登録商標)DKD)(0.50g)を詰め、石英チューブをアルミナボートに載せた。チューブ及びボートをチューブ炉に入れた。電気接続用継手内のアルゴンガス管を石英チューブの一方の端部に接続した。2本のスチールワイヤを電気バイパスから、セラミックジャケットの内部のチューブ炉内に延出させた。ワイヤの両先端部を、セラミックジャケットの端部で露出させ、これらの先端部を使用してプラズマを衝突させた。これらのワイヤを1500V,0.5Aの電源に接続した。アルゴン管をボラジンバブラー(及び、バブラーバイパス)に接続してボラジンをガス流に、石英チューブに加える前に添加した。石英チューブの他方の端部から排気を、オイルバブラー及びヒュームフードに導いた。
【0037】
石英チューブを排気し、石英チューブにアルゴンガスを3回再充填した。アルゴン(100ml/分)をチューブに流して炭素繊維を通過させた。炉温度を700℃まで上昇させ、1500Vをこれらのワイヤに、プラズマが発生するまで印加した。次に、アルゴンガス(100ml/分)を、ボラジンバブラーを通過させて気泡とし、チューブを通るように15分間に亘って供給した。15分後、バブラーを迂回させ、チューブ炉を室温まで冷却することができた。炭素繊維が、白色−黄色コーティングされて炉から出て来たが、当該コーティングは、窒化ホウ素として、EDAXを使用して、走査型電子顕微鏡(SEM)で同定された。
【0038】
記載の本説明では、種々の実施例を用いて、最良の形態を含む種々の実施形態を開示することにより、この技術分野の当業者が、これらの実施形態を、いかなる組成物、デバイス、またはシステムを作製及び使用することによっても、関連するいかなる方法を実行することによっても実施することができるようにしている。特許可能な範囲は、請求項により規定され、この技術分野の当業者が想起する他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、これらの請求項が、これらの請求項の文言とは異ならない構造要素を有する場合に、またはこれらの請求項が、これらの請求項の文言とは実質的に異ならない等価な構造要素を含む場合に、これらの請求項の範囲に包含されるべきである。種々の変更を上記組成物及び方法に関して、本開示の範囲から逸脱しない範囲で加えることができるので、上の説明に含まれ、かつ添付の図に示される全ての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味に解釈されてはならないと考えられる。
【0039】
本開示、または好適な実施形態の構成要素が紹介されているとき、これらの要素のうちの1つ以上の要素が存在することが意図されている。「備える」、「含む」、及び「有する」という用語は、包括的な意味を持つものとして用いられ、列挙される要素以外に更に別の要素が存在し得ることを意味する。