特許第5939988号(P5939988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939988
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】張力を用いた三尖弁の修復
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
【請求項の数】28
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2012-549463(P2012-549463)
(86)(22)【出願日】2011年1月20日
(65)【公表番号】特表2013-517830(P2013-517830A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】IL2011000064
(87)【国際公開番号】WO2011089601
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2014年1月17日
(31)【優先権主張番号】12/692,061
(32)【優先日】2010年1月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512189347
【氏名又は名称】4テック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】マイサノ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ファネルメン、ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】ペレヴァロヴ、ヴェレリー
(72)【発明者】
【氏名】ホフ、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アルフィエリ、オッタヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】トビス、イダン
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−520651(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/039400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61F 2/24
A61F 2/82 ― 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、当該装置は、
ステントを有し、
環状ループを有し、
遠位端を有する長手部材を有し、該遠位端は、前記環状ループに連結されており、かつ、
組織固定具を有し、該組織固定具は、前記環状ループが該組織固定具の中央の長手方向軸を中心として位置するように、かつ、前記環状ループと前記長手部材と前記ステントとに対して回転し得るように、前記環状ループに連結されている、
前記装置。
【請求項2】
前記装置が、チューブをさらに備え、該チューブは、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさを有し、かつ該チューブの回転によって前記組織固定具が回転するように、前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記組織固定具には通路が形成されており、かつ、前記チューブは細長の連結具を備え、該細長の連結具は最初に前記通路に通してあり、それにより前記チューブが前記組織固定具に連結されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記チューブが前記組織固定具に取り外し可能に連結されている場合、前記チューブの長手部分は前記長手部材と並んで配置され、かつ該チューブのいかなる部分も前記長手部材の周囲に配置されない、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、アダプタホルダをさらに備え、前記アダプタホルダは、前記チューブに連結されており、かつ径方向に広がる性向を有するアームを画定する形状を有し、かつ前記アームが径方向に圧縮されているときに前記チューブを前記固定具に連結するものである、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブをさらに備え、前記チューブが、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されており、かつ該オーバーチューブは、前記アームを包囲する位置に置かれたときに前記アームを径方向に圧縮するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置がアダプタをさらに備え、前記アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有し、かつ、前記チューブが、前記アームが径方向に圧縮されると、前記アダプタホルダを介して前記アダプタに取り外し可能に連結され、それにより前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記装置がさらにアダプタを備え、前記アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有し、かつ、前記チューブが、前記アダプタに取り外し可能に連結され、それにより前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブをさらに備え、前記チューブは、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、アダプタをさらに備え、該アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有する、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記ステントが、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材を備える、請求項1−9のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記ステントが、1以上の細長部材を備え、かつ、2以上のリングを備え、該2以上のリングが、該1以上の細長部材によって互いに連結され、かつ、該ステントのその他の部材によっては互いに連結されていない、請求項1−9のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記環状ループが、閉じたリングを定める形状となっている、請求項1−9のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記長手部材が、可撓性を有するものである、請求項1−9のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
装置であって、当該装置は、
ステントを有し、該ステントは、圧縮状態および拡張状態をとるように構成されており、かつ、該ステントは、
1以上の細長部材を有し、かつ
2以上のリングを有し、該2以上のリングは、前記1以上の細長部材によって互いに連結されており、該ステントの他の部材では互いに連結されておらず、かつ、該ステントが拡張状態にあるとき、前記細長部材に対して略垂直な各々の平面を画定しており、
当該装置は、
環状ループを有し、
遠位端と近位端とを持った長手部材を有し、前記近位端は前記ステントに連結されており、かつ、前記遠位端は前記環状ループに連結されており、かつ、
組織固定具を有し、該組織固定具は、
前記環状ループが該組織固定具の中央の長手方向軸を中心として位置するように、かつ、前記環状ループと前記長手部材と前記ステントとに対して回転し得るように、前記環状ループに連結されており、かつ、
前記長手部材の前記遠位端に前記環状ループを介して連結されている、
前記装置。
【請求項16】
前記ステントが厳密に2個のリングを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ステントが厳密に1つの細長部材を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記細長部材が互いに連結された2以上のワイヤを備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記細長部材のうちの1つが、少なくとも部分的に前記長手部材の延長である、請求項15−18のいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記各リングが、前記ステントが拡張状態にあるとき、外径が10から35mmの間である、請求項15−18のいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
張力装置を備える装置であって、該張力装置は、
径方向に拡張可能な固定具を有し、該径方向に拡張可能な固定具には開口が画定されており、
環状ループを有し、
長手部材を有し、該長手部材は、遠位端と近位端を持ち、前記遠位端は前記環状ループに連結されており、かつ、前記径方向に拡張可能な固定具の前記開口を貫通して前記径方向に拡張可能な固定具とスライド可能に連結されており、かつ、
組織固定具を有し、該組織固定具は、前記長手部材の前記遠位端に前記環状ループを介して連結されており、該環状ループは該組織固定具の中央の長手方向軸を中心として位置しており、かつ、該組織固定具は、前記環状ループと前記長手部材と前記径方向に拡張可能な固定具とに対して回転し得るようになっており、
前記径方向に拡張可能な固定具および前記長手部材は、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材にロック可能であるように構成されており、それにより、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して、前記長手部材の近位端に向かう少なくとも近位方向に移動するのが防止される、
前記装置。
【請求項22】
前記長手部材の少なくとも一部が、ラチェット歯を画定する形状を有し、該ラチェット歯は、前記径方向に拡張可能な固定具と係合し、それによって前記径方向に拡張可能な固定具の前記長手部材に対する近位方向の移動が防止される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して移動しないように、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に圧着されるように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記径方向に拡張可能な固定具が、径方向に拡張すると厳密に1つの平面に概ね収まるように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記径方向に拡張可能な固定具が、径方向に拡張すると、花弁および羽からなる群から選択される少なくとも一つの形状を画定するような形状を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記装置が、前記径方向に拡張可能な固定具が径方向に圧縮した状態で前記張力装置を内部に最初に収納する配置チューブをさらに備える、請求項21−25のいずれか1項記載の装置。
【請求項27】
前記組織固定具が、螺旋形の組織固定具を有してなる、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記組織固定具が、螺旋形の組織固定具を有してなる、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本出願の譲受人に譲渡された、「Tricuspid valve repair using tension」を発明の名称とする、2010年1月22日に出願された、米国出願第12/692,061号を基に優先権を主張し、かつ、その一部継続出願であり、その出願は参照することにより本書に組み込まれる。
【0002】
出願の分野
本発明の幾つかの応用例は、概して、弁の修復に関する。特に、本発明の幾つかの応用例は、患者の三尖弁の修復に関する。
【背景技術】
【0003】
出願の背景
三尖弁輪の拡張、弁輪形状、肺高血圧、左心室不全または右心室不全、右心室形状、および、弁尖拘束など、幾つかの病態生理学的な異常に、機能性三尖弁逆流(FTR)は支配される。FTRの治療の選択肢は主に外科手術である。中度から重度の三尖弁逆流の現在の患者数は、米国内で160万人と推定されている。このうち、年間8千人のみが三尖弁手術をうけているが、それらのほとんどは、左の心臓弁の手術を伴うものである。
【発明の概要】
【0004】
発明の要旨
本発明の幾つかの応用例において、張力を利用して患者の三尖弁を修復するための装置および方法が提供される。典型的には、この三尖弁を修復するための装置および方法は、患者の心臓の、三尖弁の形状を改めること、および/または、右心房の壁の形状を改めることによって三尖弁の逆流の減少を容易にするものである。本発明の幾つかの応用例において、第1の組織係合具が患者の三尖弁の上流にある組織の第1の部分にインプラントされる。それから第2の組織係合具が患者の三尖弁の上流にある組織の第2の部分にインプラントされる。典型的には、第1および第2の組織係合具の両方をインプラントした後、その第1および第2の組織係合具を接続している長手部材を引くことにより、または、組織係合具のうちのいずれか一方を引くことにより、三尖弁の弁尖間の距離が調整される。代替的または付加的に、長手部材は、第2の組織係合具をインプラントする前に調整される。幾つかの応用例では、長手部材は調整機構に少なくとも一部が連結され、調整機構の動作に応答して長手部材が引っ張られまたは緩められる。
【0005】
本発明の幾つかの応用例において、三尖弁の二尖化を達成するための装置および方法が提供される。そのような応用例では、典型的には、前尖と中隔尖が互いに引き寄せられて接合が強められる。
【0006】
幾つかの応用例では、第1の組織係合具は、下大静脈の一部にて拡張する第1のステントを含む。第2の組織係合具は、上大静脈の一部にて拡張する第2のステントを含む。この第1と第2のステント間の距離は、長手部材を引っ張ることにより(任意に、三尖弁の逆流を監視しながら)調整される。長手部材を引くとこれに応答して、右心房の形状が改められ、それによって、三尖弁の弁尖が互いに引き寄せられる。
【0007】
他の応用例では、第1の組織係合具は、上大静脈または下大静脈のいずれかにインプラントされるステントを含み、第2の組織係合具は、患者の心臓組織の部分を穿刺し、心臓組織の部分において少なくとも部分的にインプラントされる組織固定具を含む。幾つかの応用例では、第2の組織係合具が複数個(例えば、2個または3個)提供され、心臓弁の近傍にある心臓組織のそれぞれの部分においてインプラントされる。幾つかの応用例では、長手部材は、(a)第1の組織係合具に直接的に連結され、(b)第2の組織係合具のうちの1つに直接的に連結され、および(c)他の2つの第2の組織係合具に長手第二部材によって間接的に連結される。
【0008】
本発明のさらに他の応用例では、第1および第2の組織係合具の両方はそれぞれの第1および第2の組織固定具を含む。各組織固定具は、患者の心臓組織のそれぞれの部分を穿刺し、心臓組織のそれぞれの部分において少なくとも一部にインプラントされる。張力部品が第1と第2の組織固定具を繋げており、第1および第2の組織固定具のインプラント後、張力部品を引っ張るまたは緩めることにより張力部品が調整される。
【0009】
本発明の幾つかの応用例では、回転ツールが提供され、回転ツールにより組織固定具を回転させて組織内に進み入れる。この回転ツールは回転チューブを含む。回転チューブの遠位端は固定具の近位連結ヘッドと取り外し可能に係合するように構成されており、回転チューブを回転させて固定具を回転させる。幾つかの応用例では、そのツールは細長の連結具をさらに備える。この細長の連結具は例えば、糸、ケーブル、またはワイヤを含みうる。固定具には、その近位連結ヘッドなどに、自身を貫通する通路が形成されている。細長の連結具は、最初、その通路を通って、その両端が近位方向に伸びるように、配設される。このように配設されている時、細長の連結具によってツールは固定具に連結されている。固定具をツールから切り離すためには、細長の連結具がもはやその通路を貫通しなくなるまで、細長の連結具の一方の端を引く。
【0010】
本発明の幾つかの応用例では、三尖弁の修復システムは、張力装置と配置チューブを備える。この張力装置は、組織固定具、径方向に拡張可能な固定具、および組織と径方向に拡張可能な固定具とを接続する少なくとも1つの可撓性のある長手部材を備える。径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張した状態で、心腔の壁に接して留まり、心臓の壁にある孔を通らないように構成されている。例えば、径方向に拡張した状態で、径方向に拡張可能な固定具は、花または蝶などの形状としてもよく、この場合、複数の花弁または羽の形状にしてもよい。典型的には、径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張した状態で、厳密に1つの平面内に概ね収まるように構成される。
【0011】
径方向に拡張可能な固定具には開口が設けられており、長手部材はそれを貫通するため、径方向に拡張可能な固定具は長手部材にスライド可能に連結されている。径方向に拡張可能な固定具と長手部材とは、径方向に拡張可能な固定具が長手部材にロック可能であるように構成されており、それにより、長手部材に対する径方向に拡張可能な固定具の、長手部材の近位端に向かう少なくとも近位方向の移動が防止される。例えば、長手部材の少なくとも一部をラチェット歯を画定する形状としてもよい。ラチェット歯は径方向に拡張可能な固定具を係合し、これにより、径方向に拡張可能な固定具の、長手部材に対する近位方向の移動が防止される。代替的または付加的に、径方向に拡張可能な固定具は、長手部材に圧着されるように構成されてもよく、これにより、長手部材に対する径方向に拡張可能な固定具の移動が防止される。
【0012】
三尖弁修復処置の際、配置チューブを左心房に進入させる。心房中隔に孔が作られる。配置チューブはその孔を通って左心房から進入し、配置チューブの遠位端が右心房内に置かれる。組織固定具を配置チューブの遠位端から展開して、三尖弁近傍にある心臓組織の部分に固定する。配置チューブを左心房内へ引き抜き、それによって径方向に拡張可能な固定具を左心房内の中隔の近くで解放する。径方向に拡張可能な固定具を中隔の左心房側に保持しつつ、長手部材を近位方向に引っ張る。径方向に拡張可能な固定具が長手部材に対してロックされ、径方向に拡張可能な固定具の、長手部材に対して少なくとも近位方向の動きが妨げられる。これに応答して、三尖弁の弁尖間の距離が調整され弁を通る逆流を減少および除去する。それにより、弁は修復される。幾つかの応用例では、長手部材を引いて固定具間の距離を調整するのと併せて、三尖弁の逆流の程度を監視する。
【0013】
幾つかの応用例では、前述のステントは、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材を備える。代替的または付加的に、幾つかの応用例では、ステントの1つ以上は、1以上の細長部材と、2以上のリングを備えうる。リングは、典型的には、1以上の細長部材によって互いに連結され、ステントのそれ以外の部材によっては互いに連結されない。典型的には、リングはそれぞれ、ステントが広げられた状態にあるときには、細長部材に対して概ね垂直な平面を画定する。長手部材はステントを組織固定具に接続する。
【0014】
幾つかの応用例では、前述の組織固定具のうちの少なくとも1つは、概ね傘に類似の方法で径方向に拡縮するように構成されている。固定具は、径方向に縮小された状態で組織内に挿入され、径方向に拡張された状態に移行して、組織内に固定される。固定具は、遠位組織穿孔先端具を備える。この遠位組織穿孔先端具は支柱の遠位端に取り付けられる。さらに固定具は複数のリブを備える。このリブは、支柱と関節をなすことができるように、遠位先端具近くの固定具に連結される。またさらに固定具はランナーを備える。このランナーは、支柱に沿ってスライド可能なように、支柱に連結される。複数のストレッチャがランナーおよび各リブと関節をなすことができるように、ランナーおよび各リブに連結される。
【0015】
それゆえに、本発明の幾つかの応用例に従う方法が提供され、該方法は、
患者の心臓弁近傍にある組織の第1の部分に少なくとも第1の組織係合具をインプラントする工程、
前記患者の心臓の心房と接している血管の部分に少なくとも第2の組織係合具をインプラントする工程、および
前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整することにより、前記弁の少なくとも第1の弁尖を前記弁の少なくとも第2の弁尖へ向けて引き寄せる工程
を備える。
【0016】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1と第2の組織係合具を接続する長手部材を引っ張る工程を含む。
【0017】
本発明の幾つかの応用例において、前記第1の組織係合具をインプラントする工程は、前記弁の弁輪の組織の前記第1の部分に前記第1の組織係合具をインプラントする工程を含み、前記方法はさらに、
前記弁輪の組織の第2の部分に、長手第二部材により第4の組織係合具と接続された第3の組織係合具をインプラントする工程、および
前記長手第二部材が前記長手部材と両者の接合点で係合するように、前記弁輪の組織の第3の部分に、前記第4の組織係合具をインプラントする工程
を備える。
【0018】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1の組織係合具および前記第2の組織係合具からなる群から選択される1以上の係合具に張力を付加する工程を含む。
【0019】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整するのと併せて、前記心臓弁の逆流の程度を監視する工程を備える。
【0020】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1の組織係合具を前記血管の部分へ向けて引っ張る工程を含む。
【0021】
本発明の幾つかの応用例において、前記心臓弁は三尖弁を含み、かつ前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整する工程は、前記心臓の三尖弁の二尖弁化を達成する工程を含む。
【0022】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管の部分と前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1と第2の組織係合具を接続する長手部材の部分に連結された調整機構を作動させる工程を含む。
【0023】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管の部分に前記第2の組織係合具をインプラントする工程は、前記血管の部分においてステントを広げる工程を含む。
【0024】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントは、1以上の細長部材で互いに連結され、該ステントの他の部材では互いに連結されない、2以上のリングを含み、かつ
前記第2の組織係合具をインプラントする工程は、前記リングによって前記ステントが前記血管の壁に固定されるように前記リングを広げる工程を含む。
【0025】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、
前記心臓の組織の第2の部分に、長手部材の遠位端にその近位端が接続された第3の組織係合具をインプラントする工程、および
前記長手部材の近位端部を前記ステントに係合させる工程
を備える。
【0026】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記第3の組織係合具に張力を付加する工程を備える。
【0027】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管は、上大静脈および下大静脈からなる血管の群から選択される。
【0028】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分に前記第1の組織係合具をインプラントする工程は、組織の前記第1の部分を穿刺することおよび圧搾すること、ならびに、組織の前記第1の部分内に前記第1の組織係合具の少なくとも一部を進めることからなる群から選択される1以上の行為を実行することによって組織の前記第1の部分に係合させる工程を含む。
【0029】
本発明の幾つかの応用例において、
前記心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分は、前記患者の前記血管の部分の反対にある組織の部分を含み、
組織の前記第1の部分に係合させる工程は、前記患者の前記血管の部分の反対にある前記組織の部分に係合させる工程を含み、かつ
前記弁の第1の弁尖を前記弁の第2の弁尖に向けて引き寄せる工程は、前記患者の前記血管の部分と前記患者の前記血管の部分の反対にある前記組織の部分との間の距離を調整する工程を含む。
【0030】
本発明の幾つかの応用例において、前記心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分は、前記弁の弁輪の組織の部分を含み、かつ前記組織の前記第1の部分に係合させる工程は、前記弁の弁輪の前記組織の部分に係合させる工程を含む。
【0031】
本発明の幾つかの応用例において、前記弁の弁輪の前記組織の部分は、弁の前尖の中央部と弁の後尖の中央部の間にある組織の部分を含む。
【0032】
本発明の幾つかの応用例において、前記心臓弁近傍にある組織の前記第1の部分は、前記弁の弁輪の上方の前記心臓の前記心房の壁の組織の部分を含み、かつ前記組織の前記第1の部分に係合させる工程は、前記心房の壁の前記組織の部分に係合させる工程を含む。
【0033】
本発明の幾つかの応用例に従って更に方法が提供され、該方法は、
患者の三尖弁の上流にある組織の第1の部分に少なくとも第1の組織係合具をインプラントする工程、
前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の第2の部分に少なくとも第2の組織係合具をインプラントする工程、および
前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第1の部分と前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第2の部分との間の距離を調整することにより、前記患者の心臓の右心房の壁の形状を改める工程
を備える。
【0034】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の第3の部分に少なくとも第3の組織係合具をインプラントする工程をさらに備え、かつ
前記右心房の壁の形状を改める工程は、前記三尖弁の上流にある組織の、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分の間のそれぞれの距離を調整することにより、前記壁の形状を改める工程を含む。
【0035】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第1の部分と前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第2の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1の組織係合具と前記第2の組織係合具との間の距離を調整する工程を含む。
【0036】
本発明の幾つかの応用例において、組織の前記第1の部分は、前記右心房の壁の第1の部分を含み、かつ
前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第1の部分に前記第1の組織係合部をインプラントする工程は、前記右心房の壁の前記第1の部分に前記第1の組織係合具をインプラントする工程を含む。
【0037】
本発明の幾つかの応用例において、組織の前記第2の部分は、前記右心房の壁の第2の部分を含み、かつ
前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第2の部分に前記第2の組織係合具をインプラントする工程は、前記右心房の壁の前記第2の部分に前記第2の組織係合具をインプラントする工程を含む。
【0038】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記右心房の壁の第3の部分に少なくとも第3の組織係合具をインプラントする工程をさらに備え、かつ
前記右心房の壁の形状を改める工程は、前記右心房の壁の、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分の間のそれぞれの距離を調整することにより、前記壁の形状を改める工程を含む。
【0039】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記右心房の壁の形状を改めるのと併せて、前記三尖弁の逆流の程度を監視する工程を備える。
【0040】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第1の部分と前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第2の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1と第2の組織係合具を接続する長手部材を引っ張る工程を含む。
【0041】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第1の部分と前記患者の前記三尖弁の上流にある組織の前記第2の部分との間の距離を調整する工程は、前記第1と第2の組織係合具を接続する長手部材の部分に連結された調整機構を作動させる工程を含む。
【0042】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の心臓の右心房の壁の形状を改める工程は、前記患者の前記三尖弁の少なくとも第1の弁尖と前記患者の前記三尖弁の少なくとも第2の弁尖を互いに引き寄せる工程を含む。
【0043】
本発明の幾つかの応用例において、
前記第1の組織係合具をインプラントする工程は、長手部材が連結された前記第1の組織係合具をインプラントする工程を含み、
前記第2の組織係合具には通路が形成されており、かつ前記第2の組織係合具をインプラントする工程は、前記長手部材を前記通路に通した状態で前記第2の組織係合具をインプラントする工程を含み、かつ
前記距離を調整する工程は、前記長手部材を近位方向に引っ張り、前記第1組織係合具と第2組織係合具とを接近させる工程を含む。
【0044】
本発明の幾つかの応用例において、前記長手部材を引っ張る工程は、前記第1組織係合具と第2組織係合具とが合体するまで前記長手部材を引っ張る工程を含む。
【0045】
さらに、本発明の幾つかの応用例に従う方法が提供され、該方法は、
患者の下大静脈の壁の組織の部分に少なくとも第1の組織係合具の少なくとも一部を係合させる工程、
前記患者の上大静脈の壁の組織の部分に少なくとも第2の組織係合具の少なくとも一部を係合させる工程、
前記患者の下大静脈の壁の前記組織の部分および前記患者の上大静脈の壁の前記組織の部分からなる群から選択される組織の1以上の部分に張力を付加することにより、心臓弁の少なくとも第1の弁尖を前記弁の少なくとも第2の弁尖に向けて引き寄せる工程、および
前記張力を付加するのと併せて、前記患者の心臓弁の逆流の程度を監視する工程
を備える。
【0046】
本発明の幾つかの応用例において、前記張力を付加する工程は、前記少なくとも第1の組織係合具の係合と、前記少なくとも第2の組織係合具の係合の後で前記張力を付加する工程を含む。
【0047】
本発明の幾つかの応用例において、前記張力を付加する工程は、前記患者の下大静脈の壁の前記組織の部分と、前記患者の上大静脈の壁の前記組織の部分との間の距離を調整する工程を含む。
【0048】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の下大静脈の壁の前記組織の部分と前記患者の上大静脈の壁の前記組織の部分との間の距離を調整する工程は、前記張力の付加により、前記第1の組織係合具と前記第2の組織係合具の間の距離を調整する工程を含む。
【0049】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の下大静脈の壁の前記組織の部分に前記少なくとも第1の組織係合具の前記一部を係合させる工程は、前記下大静脈内で第1のステントを広げ、該第1のステントの少なくとも一部を前記下大静脈の壁の前記部分と接触させる工程を含む。
【0050】
本発明の幾つかの応用例において、前記患者の上大静脈の壁の前記組織の部分に前記少なくとも第2の組織係合具の前記一部を係合させる工程は、前記下大静脈内で第2のステントを広げ、該第1のステントの少なくとも一部を前記下大静脈の壁の前記部分と接触させる工程を含む。
【0051】
本発明の幾つかの応用例において、前記張力を付加する工程は、前記患者の心房の壁の形状を改める工程を含む。
【0052】
本発明の幾つかの応用例において、前記張力を付加する工程は、前記少なくとも第1の組織係合具と前記少なくとも第2の組織係合具を接続する長手部材を引っ張る工程を含む。
【0053】
本発明の幾つかの応用例において、前記張力を付加する工程は、前記第1の組織係合具と第2の組織係合具を接続する張力部品の一部に連結された調整機構を作動させる工程を含む。
【0054】
またさらに、本発明の幾つかの応用例に従う装置が提供され、該装置は、
ステント、
遠位端を有する長手部材であって、該遠位端に、該長手部材から横に伸びる環状ループを備える長手部材、および
前記環状ループ、前記長手部材、および前記ステントに対して回転し得るように、前記環状ループに連結された組織固定具
を備える。
【0055】
本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、チューブをさらに備え、該チューブは、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさを有し、かつ該チューブの回転によって前記組織固定具が回転するように、前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている。本発明の幾つかの応用例において、前記組織固定具には通路が形成されており、かつ、前記チューブは細長の連結具を備え、該細長の連結具は最初に前記通路に通してあり、それにより前記チューブが前記組織固定具に連結されている。本発明の幾つかの応用例において、前記チューブが前記組織固定具に取り外し可能に連結されている場合、前記チューブの長手部分は前記長手部材と並んで配置され、かつ該チューブのいかなる部分も前記長手部材の周囲に配置されない。本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、アダプタホルダをさらに備え、前記アダプタホルダは、前記チューブに連結されており、かつ径方向に広がる性向を有するアームを画定する形状を有し、かつ前記アームが径方向に圧縮されているときに前記チューブを前記固定具に連結するものである。本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブをさらに備え、前記チューブは、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されており、かつ該オーバーチューブは、前記アームを包囲する位置に置かれたときに前記アームを径方向に圧縮するように構成されている。本発明の幾つかの応用例において、前記装置はアダプタをさらに備え、前記アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有し、かつ、前記チューブは、前記アームが径方向に圧縮されると、前記アダプタホルダを介して前記アダプタに取り外し可能に連結され、それにより前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている。
【0056】
本発明の幾つかの応用例において、前記装置はさらにアダプタを備え、前記アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有し、かつ、前記チューブは、前記アダプタに取り外し可能に連結され、それにより前記組織固定具に取り外し可能に連結されるように構成されている。
【0057】
本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブをさらに備え、前記チューブは、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されている。
【0058】
前述した本発明の応用例の何れも、前記装置は、アダプタをさらに備えてもよく、該アダプタは、前記環状ループを貫通する円筒部を画定する形状を有し、かつ前記組織固定具の近位部に固定的に連結された遠位部を有する。
【0059】
前述した本発明の応用例の何れも、前記ステントは、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材を備えてもよい。
【0060】
前述した本発明の応用例の何れも、前記ステントは、1以上の細長部材と、該1以上の細長部材によって互いに連結され、該ステントのその他の部材によっては互いに連結されていない2以上のリングを備えてもよい。
【0061】
本発明の幾つかの応用例に従って更に方法が提供され、該方法は、
(a)ステント、(b)遠位端を有する長手部材であって、該遠位端に、該長手部材から横に伸びる環状ループを備える長手部材、および(c)前記環状ループに連結された組織固定具を提供する工程、
前記ステントを患者の血管内に置く工程、
前記環状ループ、前記長手部材、および前記ステントに対して前記組織固定具を回転させて、前記患者の心臓弁近傍の組織に前記組織固定具を連結する工程、および
前記組織に前記組織固定具を連結した後、前記ステントが拡張してインプラント部位の前記血管内にインプラントされるように前記ステントを配置する工程
を備える。
【0062】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記組織に前記組織固定具を連結した後であって、前記ステントを配置する前に、前記組織固定具をインプラント部位に向けて引っ張る工程をさらに備える。
【0063】
本発明の幾つかの応用例において、前記血管は、上大静脈および下大静脈からなる血管の群から選択される。
【0064】
本発明の幾つかの応用例において、前記回転させる工程は、前記ステントにより画定される管腔を貫通し、かつ前記組織固定具に取り外し可能に連結されたチューブを用いて前記組織固定具を回転させる工程を含む。本発明の幾つかの応用例において、チューブを用いて前記組織固定具を回転させる工程は、前記チューブの長手部分を前記長手部材と並べて配置し、かつ前記チューブのいかなる部分も前記長手部材の周囲に配置されないようにする工程を含む。本発明の幾つかの応用例において、前記回転させる工程は、前記アダプタホルダに連結されたチューブを用いて前記固定具を回転させる工程を含み、前記アダプタホルダは、径方向に広がる性向を有するアームを画定する形状を有し、かつ前記アームが径方向に圧縮されると前記組織固定具に前記チューブを連結するものである。本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブを提供する工程をさらに備え、前記チューブは、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されており、かつ、該オーバーチューブは、前記アームを包囲する位置に置かれると前記アームを径方向に圧縮するように構成されている。
【0065】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記ステントにより画定される管腔を貫通する大きさの運搬ツールオーバーチューブを提供する工程をさらに備え、かつ、前記チューブは、該運搬ツールオーバーチューブを貫通するように構成されている。
【0066】
さらに付加的に、本発明の幾つかの応用例に従う装置が提供され、該装置は、
圧縮状態および拡張状態をとるように構成されたステントであって、
1以上の細長部材と、
該1以上の細長部材によって互いに連結されており、該ステントの他の部材では互いに連結されていない2以上のリングであって、該ステントが拡張状態にあるとき、前記細長部材に対して略垂直な各々の平面を画定する2以上のリング
を備えたステント、
遠位端と、前記ステントに連結された近位端を有する長手部材、および
前記長手部材の前記遠位端に連結された組織固定具
を備える。
【0067】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントは厳密に2個のリングを備える。
【0068】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントは厳密に1つの細長部材を備える。
【0069】
前述の本発明の応用例の何れも、前記細長部材は互いに連結された2以上のワイヤを備えてもよい。
【0070】
前述の本発明の応用例の何れも、前記細長部材のうちの1つは、少なくとも部分的に前記長手部材の延長であってもよい。
【0071】
前述の本発明の応用例の何れも、前記各リングは、前記ステントが拡張状態にあるとき、外径が10から35mmの間であってもよい。
【0072】
また、本発明の幾つかの応用例に従う方法が提供され、該方法は、
(a)(i)1以上の細長部材と、(ii)該1以上の細長部材によって互いに連結されており、該ステントの他の部材では互いに連結されていない2以上のリングを含むステント、(b)遠位端と、前記ステントに連結された近位端を有する長手部材、および(c)前記長手部材の前記遠位端に連結された組織固定具を提供する工程、
前記ステントを圧縮状態で患者の血管内に置く工程、
前記組織固定具を前記患者の心臓弁近傍の組織に連結する工程、および
前記リングのそれぞれが前記細長部材に対して略垂直な平面を画定し、前記ステントを前記血管の壁に固定するように、前記ステントを拡張状態に移す工程
を備える。
【0073】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントを提供する工程は、厳密に2個のリングを含む前記ステントを提供する工程を含む。
【0074】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントを提供する工程は、厳密に1つの細長部材を含む前記ステントを提供する工程を含む。
【0075】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントを提供する工程は、前記細長部材のうちの1つが、少なくとも部分的に前記長手部材の延長である前記ステントを提供する工程を含む。
【0076】
本発明の幾つかの応用例において、前記ステントを血管内に置く工程は、上大静脈および下大静脈からなる血管の群から選択される血管に前記ステントを置く工程を含む。
【0077】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記ステントを血管内に置くのと併せて、前記心臓弁の逆流の程度を監視する工程をさらに備える。
【0078】
本発明の幾つかの応用例に従って、張力装置を備える装置が更に提供され、該張力装置は、
開口を画定する、径方向に拡張可能な固定具、
遠位端と近位端を有し、前記径方向に拡張可能な固定具の前記開口を貫通して前記径方向に拡張可能な固定具とスライド可能に連結された長手部材、および
前記長手部材の前記遠位端に連結された組織固定具
を備え、前記径方向に拡張可能な固定具および前記長手部材は、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材にロック可能であるように構成されており、それにより、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して、前記長手部材の近位端に向かう少なくとも近位方向に移動するのが防止される。
【0079】
本発明の幾つかの応用例において、前記長手部材の少なくとも一部は、ラチェット歯を画定する形状を有し、該ラチェット歯は、前記径方向に拡張可能な固定具と係合し、それによって前記径方向に拡張可能な固定具の前記長手部材に対する近位方向の移動が防止される。
【0080】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して移動しないように、前記径方向に拡張可能な固定具は前記長手部材に圧着されるように構成されている。
【0081】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張すると厳密に1つの平面に概ね収まるように構成されている。
【0082】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張すると、花弁および羽からなる群から選択される少なくとも一つの形状を画定するような形状を有する。
【0083】
前述の本発明の応用例の何れも、前記装置は、前記径方向に拡張可能な固定具が径方向に圧縮した状態で前記張力装置を内部に最初に収納する配置チューブをさらに備えてもよい。
【0084】
またさらに本発明の幾つかの応用例に従う方法が提供され、該方法は、
(a)長手部材、(b)該長手部材にスライド可能に連結された、径方向に拡張される固定具、および(c)前記長手部材の遠位端に連結された組織固定具、を含む張力装置を、最初に配置チューブ内に収納して提供する工程、
前記配置チューブを患者の左心房内に進入させる工程、
心房中隔に孔を設ける工程、
該孔を通して左心房から前記配置チューブを進入させ、前記配置チューブの遠位端を右心房内に配置させる工程、
前記配置チューブの遠位端から前記組織固定具を配置して、該組織固定具を三尖弁近傍にある心臓組織の部分に固定する工程、
前記配置チューブを前記左心房内へ引き抜き、それによって前記径方向に拡張可能な固定具を左心房内の前記中隔の近くで解放する工程、および
前記径方向に拡張可能な固定具を前記中隔の左心房側に保持しつつ、前記長手部材を近位方向に引っ張り、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して少なくとも近位方向に移動しないように前記径方向に拡張可能な固定具を前記長手部材にロックする工程
を備える。
【0085】
本発明の幾つかの応用例において、前記長手部材の少なくとも一部は、前記径方向に拡張可能な固定具と係合するラチェット歯を画定するような形状を有し、かつ前記径方向に拡張可能な固定具を前記長手部材にロックする工程は、前記ラチェット歯を用いて、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して近位方向に移動するのを防ぐ工程を含む。
【0086】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具を前記長手部材に対してロックする工程は、前記径方向に拡張可能な固定具が前記長手部材に対して移動しないように、前記径方向に拡張可能な固定具を前記長手部材に圧着する工程を含む。
【0087】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張すると厳密に1つの平面に概ね収まるように構成されている。
【0088】
本発明の幾つかの応用例において、前記径方向に拡張可能な固定具は、径方向に拡張すると、花弁および羽からなる群から選択される少なくとも一つの形状を画定するような形状を有するように構成されている。
【0089】
本発明の幾つかの応用例において、前記方法は、前記長手部材を引っ張るのと併せて、前記三尖弁の逆流の程度を監視する工程をさらに備える。
【0090】
本発明の幾つかの応用例に従って、組織固定具を備えた装置が提供され、該組織固定具は、径方向に縮小された状態および径方向に拡張された状態をとるように構成されており、かつ該組織固定具は、
遠位組織穿孔先端具を有し、その最大外径が1.8mm以下である支柱、
前記支柱と関節をなすことができるように、前記遠位先端具近くで前記組織固定具に連結された複数のリブ、
前記支柱に沿ってスライド可能なように、前記支柱に連結されたランナー、および
前記ランナーおよび前記リブの各一つと関節をなすことができるように、前記ランナーおよび前記リブの各一つに連結された複数のストレッチャ
を含む。
【0091】
本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、前記組織連結具を最初に径方向に縮小された状態で収納するカテーテルをさらに備える。本発明の幾つかの応用例において、前記装置は、前記カテーテル内に収納されたインナーチューブをさらに備え、かつ前記ランナーの近位端は前記インナーチューブに最初は取り外し可能に連結されている。
【0092】
前述の本発明の応用例の何れも、前記ランナーの近位端の外面がねじ切り加工されてもよい。
【0093】
前述の本発明の応用例の何れも、前記組織固定具は少なくとも部分的に記憶形状合金を備えてもよい。
【0094】
図面とあわせて把握される本発明の応用例の以下の詳細な説明から、本発明はより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1A図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1B図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1C図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1D図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1E図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1F図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図1G図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、ステント、組織固定具、および、前記ステントと前記組織固定具とを連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図2A図2A−Bは、本発明の幾つかの応用例に従う、第1および第2のステント、第1および第2の組織固定具、および、第1および第2の張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図2B図2A−Bは、本発明の幾つかの応用例に従う、第1および第2のステント、第1および第2の組織固定具、および、第1および第2の張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図3A図3A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、1つのステント、第1および第2の組織固定具、および、第1および第2の張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図3B図3A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、1つのステント、第1および第2の組織固定具、および、第1および第2の張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図3C図3A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、1つのステント、第1および第2の組織固定具、および、第1および第2の張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図4A図4A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、第1および第2のステント、および第一、および、前記第1および第2のステントを連結する張力部品を備える三尖弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図4B図4A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、第1および第2のステント、および第一、および、前記第1および第2のステントを連結する張力部品を備える三尖弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図4C図4A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、第1および第2のステント、および第一、および、前記第1および第2のステントを連結する張力部品を備える三尖弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図5A図5A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、2つまたは3つの組織固定具、および、該組織固定具を連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図5B図5A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、2つまたは3つの組織固定具、および、該組織固定具を連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図5C図5A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、2つまたは3つの組織固定具、および、該組織固定具を連結する張力部品を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図6図6は、下大静脈における第1の固定システム、弁にインプラントされる第1の組織固定具、および、乳頭筋にインプラントされる第2の組織固定具を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置の概略図である。
図7A図7A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、螺旋形の組織固定具の運搬システムの概略図である。
図7B図7A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、螺旋形の組織固定具の運搬システムの概略図である。
図7C図7A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、螺旋形の組織固定具の運搬システムの概略図である。
図7D図7A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、螺旋形の組織固定具の運搬システムの概略図である。
図8-1】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図8-2】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図8-3】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図9-1】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図9-2】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図9-3】図8A−Eおよび9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、それぞれ上大静脈アプローチおよび下大静脈アプローチを用いた、三尖弁修復用システムの概略図である。
図10図10A−Bは、本発明の応用例に従う、回転ツールの概略図である。
図11図11A−Bは、本発明の幾つかの応用例に従う、他の三尖弁修復システムの概略図である。
図12-1】図12A−Dは、本発明のそれぞれの応用例に従う、図11A−Bのシステムの張力装置を配置する手順の例を示す概略図である。
図12-2】図12A−Dは、本発明のそれぞれの応用例に従う、図11A−Bのシステムの張力装置を配置する手順の例を示す概略図である。
図13図13A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、組織固定具の概略図である。
図14A図14A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、互いに直接結合されるように構成された2つの組織固定具を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置と、その配置手順の例を示す概略図である。
図14B図14A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、互いに直接結合されるように構成された2つの組織固定具を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置と、その配置手順の例を示す概略図である。
図14C図14A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、互いに直接結合されるように構成された2つの組織固定具を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置と、その配置手順の例を示す概略図である。
図14D図14A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、互いに直接結合されるように構成された2つの組織固定具を備える心臓弁の逆流を減少させるための装置と、その配置手順の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
出願の詳細な説明
図1A−Gを参照する。図1A−Gは、本発明の幾つかの応用例に従う、患者の心臓2の三尖弁4を修復するための、第1の組織係合具60aと第2の組織係合具60bを備えるシステム20の概略図である。第1の組織係合具60aは、心臓組織の少なくとも一部である第1のインプラント部位30にインプラントされるように設計された組織固定具40を含む。注意すべきは、組織固定具40は、限定ではなく例示のために、螺旋形の組織固定具を含んでおり、組織固定具40は、以下に限定されないが、図13A−Eを参照して後述する組織固定具を含め、心臓組織を穿刺または把持するあらゆる組織固定具を含みうるということである。第2の組織係合具60bは、血管(例えば上大静脈10(図1E−Gに示されるようなもの)または下大静脈8(図1A−Dに示されるようなもの))の部分において第2のインプラント部位52にインプラントされるように設計されたステント50を含む。第1と第2の組織係合具60a、60bは可撓性のある長手部材42によって互いに連結されている。通常、第1のインプラント部位30と第2のインプラント部位52との間の距離は、長手部材42を引いて張力を付加しまたは緩めること、および/または、第1および第2の組織係合具60a、60bの少なくとも一方に張力を付加することによって調整される。これに応答して、三尖弁4の弁尖間の距離が調整されて弁4を通る逆流が減少または除去され、それによって、弁4は修復される。幾つかの応用例では、長手部材42は、後述のように、第2の組織係合具60bを操作することによって引っ張られ、または緩められる。
【0097】
幾つかの応用例では、第1および第2の組織係合具60a、60bと長手部材42は、同じ材料(例えばニチノール)から、一体品から作られる。つまり、第1および第2の組織係合具60a、60bと長手部材42は、一つの連続したインプラントユニットを構成する。幾つかの応用例では、少なくとも第2の組織係合具60bと長手部材42が一体品から作られる。
【0098】
他の応用例では、長手部材42は、可撓性のある、および/または、超弾性の材料、例えば、ニチノール、ポリエステル、ステンレス鋼、コバルト・クロム、PTFE、または、ePTFEを含む。本発明の幾つかの応用例において、長手部材42は、編組ポリエステル縫合糸(例えば、Ticron)を含む。本発明の他の応用例では、長手部材42は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆される。本発明の幾つかの応用例では、長手部材42は、ロープ構造状に絡み合わされた複数のワイヤを含む。幾つかの応用例では、長手部材42の少なくとも一部は張力バネ、および/または、複数のコイルを含む。
【0099】
幾つかの応用例では、第2の組織係合具60bはステント50を含む。ステント50は、下大静脈8(図1A−Dに示されるようなもの)または上大静脈10(図1E−Gに示されるようなもの)(つまり、患者の心臓2の右心房6と直に接する血管)の部分に向けて進み、そこで拡張可能である。第2の組織係合具60bは、第2のインプラント部位52にインプラントされる。図のように、第1のインプラント部位30は、三尖弁4の弁輪の部分を含む。インプラント部位30は通常、(1)弁輪と前尖14の間の接合部の中央と、(2)弁輪と後尖16の間の接合部の中央との間(例えば、弁輪と前尖14の間の接合部の中央と、前尖と後尖の間の継ぎ目との間)にある弁4の弁輪の部分を含む。つまり、固定具40は、前尖14と後尖16の間にある継ぎ目に近接する三尖弁の弁輪の繊維質の組織に連結される(例えば、螺着される)。インプラント部位30は、通常、弁4の壁在側に近接する。そのような応用例では、第1および第2のインプラント部位30、52を互いに引き寄せることにより、弁4を締め上げ、三尖弁4の二尖化をなし得る。それによって、前尖14と中隔尖12の間のより強い接合を達成し得る。
【0100】
幾つかの応用例では、第1のインプラント部位30は、通常、弁4の弁輪の近傍の、心臓2の右心房6を構成する壁の組織の部分を含んでもよい。他の応用例では、図6で後述するように、第1のインプラント部位30は、心臓2の右心室の壁の部分、弁4の弁輪の心室の部分、または、心臓2の右心室の乳頭筋の部分を含んでもよい。第1のインプラント部位30は、通常、第2のインプラント部位52から離れた(例えば、概ね反対の)位置にある。そのため、長手部材42の調整に従って、第1および第2インプラント部位30、52が互いに引き寄せられると、弁4の少なくとも第1および第2の弁尖、例えば、3つの弁尖の全てが、互いに引き寄せられる。第1のインプラント部位30が弁輪の組織の部分を含む応用例では、インプラント部位30、52間の距離の調整によって、弁4の弁輪の形状が改められ(つまり、構成が変わり)、それによって、弁4の弁尖が互いに引き寄せられる。第1のインプラント部位30が心房6を画する壁の部分の組織を含む応用例では、インプラント部位30、52間の距離の調整によって、心房6の壁の形状が改められ(つまり、構成が変わり)、それによって、弁4の弁尖が互いに引き寄せられる。
【0101】
図1Aおよび図1Eは、図のとおり、カテーテルの遠位端23が心房6内に置かれるまで、カテーテル22を患者の心房6に向けて進めたところを示している。この処置は、通常、蛍光透視法、経食道エコー、および/または、心エコー法などの画像化の助けを借りて行われる。幾つかの応用例では、この処置は、患者の右心房6内に半剛体の案内ワイヤを進入させることにより開始される。案内ワイヤに沿って続いてカテーテル22が右心房内に進むように案内ワイヤは案内をする。カテーテル22の遠位端23が右心室6に入ると、案内ワイヤは患者の体内から引き出される。カテーテル22は、所定の患者に適したサイズのものが選択され得るが、通常、14〜20Fのシースを含む。カテーテル22は、通常は所定の患者に対して決められる適切な起点を用いて、右心房6内に血管系を通って入る。例えば、
・カテーテル22は、患者の大腿静脈に導入され、下大静脈8を通り、右心房6内に入ってもよい。
・カテーテル22は、尺側皮静脈に導入され、鎖骨下静脈を通り、上大静脈10を通り、右心房6内に入ってもよい。
・カテーテル22は、外頸静脈に導入され、鎖骨下静脈を通り、上大静脈10を通り、右心房6内に入ってもよい。
【0102】
図1Aに示されるように、カテーテル22は、通常は所定の患者に対して決められる適切な起点を用いて、右心房6内に患者の下大静脈8を通って進入する。代替的に、図1Eに示されるように、カテーテル22は、通常は所定の患者に対して決められる適切な起点を用いて、右心房6内に患者の上大静脈10を通って進入する。
【0103】
カテーテル22の遠位端23が心房6内に置かれると、固定具配置チューブ24が、カテーテル22の中からカテーテル22の遠位端23を越えて、第1のインプラント部位30へ向けて伸びる。固定具配置チューブ24は、組織固定具40と長手部材42の遠位端を保持する。幾つかの応用例では、チューブ24は、カテーテル技術において知られているように、操縦可能である。一方で、他の応用例では、別体の操縦部品が固定具配置チューブ24に連結されてもよい。画像化による案内の援助の下で、固定具配置チューブ24は、その遠位端が第1のインプラント部位30にある心臓2の心臓組織と接触するまで、第1のインプラント部位30に向けて進められる。固定具配置チューブ24は、第1の組織係合具60aが第1のインプラント部位30に着くまでの非外傷性の前進を容易にする。固定具配置チューブ24が用いられる応用例では、ステント50は、チューブ24の一部内に圧縮収納されている。
【0104】
固定具操作ツール(図の明確化のための図示せず)は、固定具配置チューブ24内にスライド可能に収納され、チューブ24内を遠位方向に摺動することで、第1の組織係合具60aの組織固定具40を遠位方向に押し、チューブ24内から組織固定具40を露出させる(図1Bおよび図1E参照)。本発明の幾つかの応用例では、固定具操作ツールは、固定具40に可逆的に連結されており、心臓組織への固定具40のインプラントを容易にする。図のように、固定具40が螺旋形の組織固定具を含む応用例では、手術をする医者が固定具操作ツールを、患者の体外の部位から回転させて、固定具40を回転させ、心臓組織に固定具40の少なくとも一部をねじ込む。
【0105】
代替的に、システム20は固定具操作ツールとは独立に設けられ、固定具配置チューブ24は心臓組織における固定具40のインプラントを容易にする。図のように、固定具40が螺旋形の組織固定具を含む応用例では、手術をする医者が固定具配置チューブ24を、患者の体外の部位から回転させて、固定具40を回転させ、心臓組織に固定具40の少なくとも一部をねじ込む。
【0106】
注意すべきは、本発明の幾つかの応用例では、心臓組織の部分を握って圧搾するが、心臓組織に孔を開けない、クリップ、ジョー、または、クランプが固定具40に含まれるということである。
【0107】
固定具40を第1のインプラント部位30にインプラントした後、固定具配置チューブ24をカテーテル22内に後退させ、長手部材42を露出させる(図1Cおよび図1F参照)。続いて、長手部材42をぴんと引っ張り、後述のように、三尖弁4の修復を行う。
【0108】
幾つかの応用例では、後述のように、固定具40とカテーテル22の遠位端23との間にある長手部材42の部分を引っ張る前に、長手部材42への引っ張り力の付与を容易にする機構が適所に固定される。この適所への固定によって、長手部材42に張力が付加されている間、システム20に基準力が与えられるため、長手部材42を引っ張っている間に、ステント50がカテーテル22内から引き出されることは確実にない。幾つかの応用例では、カテーテル22の遠位端23は、長手部材42に対して適所に固定される。カテーテル22を適所に固定することによって、長手部材42が引っ張られている間カテーテル22が安定する。これによって、遠位端23は適所に停留し、長手部材42を調整している間、インプラント部位30に向けて遠位に摺動することはない。本発明の幾つかの応用例では、カテーテル22の近位部および/またはカテーテル22に連結される近位ハンドル部は、その導入場所の適所に(例えば、テープや絆創膏などによって)固定される。代替的または付加的に、カテーテル22の遠位部には膨張導管に連結された膨張部品が備えられる。膨張導管は、カテーテル22の遠位端部から患者の体外の部位までカテーテル22に沿って伸びている。長手部材42の調整の前に、膨張部品は膨らまされ、カテーテル22が進入する血管系の組織と接触し、それによってカテーテル22は適所に固定される。通常、膨張部品は環状の膨張部品を含み、環状の膨張部品は、膨むと密閉具として機能し、カテーテル22の遠位端を適所に保持する。
【0109】
長手部材42の引っ張りを容易にする機構を固定した後、医者は、長手部材42を引っ張って、第1と第2のインプラント部位30、52を互いに引き寄せる。
【0110】
幾つかの応用例では、カテーテル22は、長手部材42の近位部に直接連結されることにより、長手部材42の近位部に可逆的に連結される。および/または、カテーテル22は、第2の組織係合具60bに可逆的に連結される。例えば、径方向に拡張しようとするステント50の性向によってカテーテル22の内壁に対しステント50が径方向の力を適用することにより、カテーテル22がステント50に可逆的に連結されてもよい。第1の組織係合具60aをインプラントした後、カテーテル22(またはその中に収納されている部品)は、近位に引っ張られ、長手部材42に張力を付加する。そのような応用例では、長手部材42は張力部品として機能する。幾つかの応用例では、カテーテル22は長手部材42を引っ張るために第2の組織係合具60bを引く。他の応用例では、カテーテル22は長手部材42を直接引く。さらに他の応用例では、図7A−Dを参照して後述するように、引っ張り機構が長手部材42を引く。
【0111】
長手部材42を引くことにより、固定具40とカテーテル22の遠位端23との間の長手部材42の部分がぴんと引っ張られる。付加的に、長手部材42は、第1と第2のインプラント部位30、52の間の距離を調整するために引っ張られまたは緩められうる。長手部材42が引っ張られるとこれに応答して、三尖弁4の少なくとも前尖と中隔尖が互いに引き寄せられる。弁輪および/または心房6の壁の形状が、長手部材42が引っ張られたことにより、第1の組織係合具60aの位置に応じて、改められるからである。幾つかの応用例では、カテーテル22で長手部材42を引っ張っている間、三尖弁4の逆流の程度を監視する。長手部材42は逆流が減少するか止まるまで引っ張られる。
【0112】
医者が弁4の逆流が減少または停止し弁4の修復が完了したと判断したら、医者は、カテーテル22を、その中に収納している第2の組織係合具60bから、および/または、長手部材42から切り離し、カテーテル22を後退させ、第2の組織係合具60b(つまり、ステント50)を露出させる。カテーテル22を心房6に向けて進めている間、ステント50は、カテーテル22の遠位部内に圧縮された状態で収納されている。カテーテル22の最初の後退に従ってステント50が出されると、ステント50は拡張して下大静脈8の壁と接触が可能になる。図1Fは、ステント50が部分的に出され、部分的に拡張されたところを示している。図1D図1Gは、ステントが完全に出され、完全に拡張されたところを示している。拡張に応答して、ステント50は、第2のインプラント部位52にインプラントされ、固定具40にかかる長手部材42の張力を維持し、それによって固定具40が連結された心臓組織の部分にかかる張力を維持する。
【0113】
図1E−Gを参照する。注意すべきは、前述のように、カテーテル22は上大静脈10を経由して入れられてもよいということである。そのような応用例では、第1のインプラント部位30は、弁4の弁輪の領域、または、上大静脈10に対向する心房6を画する壁の部分を含みうる。
【0114】
図1A−Gを再度参照する。幾つかの応用例では、第1および第2の組織係合具60a、60bをインプラントした後、第1と第2の組織係合具60a、60bの間の距離は、図5A−Bまたは5Cを参照して後述するように、調整機構によって調整される。そのような応用例では、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長手部材42の長さは、図5A−Bまたは図5Cに示されるように、調整機構150によって調整されうる。調整機構150は、通常、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長手部材42の距離を短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、調整機構150は、長手部材42に恒久的に連結されてもよく(図示せず)、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長さを短くするために、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42の一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42の一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42の一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、調整ツール144は、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長さを短くするために、調整部品(例えば、長手部材42の一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42の一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。いずれの応用例においても、調整機構150で第1と第2の組織係合具60a、60b間の距離を調整している間、三尖弁4の逆流のレベルを監視するようにしてもよい。
【0115】
幾つかの応用例では、図1Dに示されるように、ステント50は、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材からなり、該超弾性金属製の支材の配置によって、比較的に小径(一般に8mm以下)のカテーテル内に収納できるように、ステント50を縮めることができ、また、大静脈組織に対して径方向の力を維持して摩擦で大静脈の壁にステント50を固定できるように、大静脈内でかなりの大径(一般に20mm以上)に展開させることができる。代替的または付加的に、幾つかの応用例では、図1F−Gに示されるように、ステント50は、2個以上のリング62からなる。このリング62は、上大静脈または下大静脈内で広がるように構成されており、摩擦でステント50を大静脈の壁に固定する。一般に、前記リングは、大静脈の壁を押し、大静脈の壁に小さなくぼみを作れる大きさを有する。また、前記リングは、ステントの疲労とステントの破砕のリスクを軽減しうる。一般に、前記リングは、カテーテル22から解放されると自ら広がるように構成されており、例えば、ニチノールなどの記憶形状合金を備えてもよい。幾つかの応用例では、前記リングは、円形などの楕円形であり、または他の形状を有している。
【0116】
リング62は1以上の細長部材64(例えば、厳密に1つの細長部材64(図の通り)、または、2つから4つの細長部材64(この構成は図示せず))によって互いに連結される。一般に、細長部材64以外のステント50の他の部材で前記リングを連結しない。一般に、細長部材64の各々は1以上のワイヤからなり、複数のワイヤからなる応用例では、該ワイヤは一般に、撚るなどにより(図の通り)、互いにきつく連結され、一本の細長部材64を構成している。任意に、細長部材64のうちの1つは、少なくとも部分的に、長手部材42の延長となっている(例えば、細長部材64のワイヤの1つを長手部材42の延長にする)。幾つかの応用例では、リング62と細長部材64、および任意に、長手部材42は、図1Gに示されるように、一体品から作られる。幾つかの応用例では、ステント50は、厳密に2個のリング(図の通り)を備え、他の応用例では、ステント50は、3個以上のリング62(例えば、3個から5個のリング(この構成は図示せず))を備える。
【0117】
一般に、ステント50が拡張した状態で、リング62の作る各平面は細長部材64に対して概ね垂直であり、リングが上静脈または下大静脈内にあるときにリングが大静脈の軸に対して概ね垂直となり、リングは大静脈の壁と良好に接触する。
【0118】
一般に、リング62の大きさは、患者に固有の解剖学的構造に従って決められ、拡張時、前記リングは、名目上の大静脈の径よりも10〜25%大きい。例えば、20mmの大静脈を有する患者では、外科医は、外径が22〜25mmの大きさのリングを使用し得る。幾つかの応用例では、リング62の各々は、ステント50が拡張状態にあるとき、少なくとも10mm、35mm以下、および/または10〜35mmの間の外径を有する。一般に、ステントが拡張した状態で、長手方向に最も離れた位置にある2個のリング62間の距離は、少なくとも10mm、40mm以下、および/または、10〜40mmの間である(ステント50が厳密に2個のリングを備えている応用例では、この距離は、その2個のリングの間の距離である)。ステント50が厳密に2個のリングを備えている応用例では、細長部材64の長さは、前述の距離に等しい。
【0119】
図1A−Dおよび図1E−Fを参照して説明したもの等の幾つかの応用例では、長手部材42の長さは、少なくとも10mm、40mm以下、および/または、10〜40mmの間である。
【0120】
図1Dには、下大静脈8に配置されるステント50の構成が示されているが、その代わりとして、上大静脈10に配置してもよい(この配置は図示せず)。また、図1F−Gには、上大静脈10に配置されるステント50の構成が示されているが、その代わりとして、下大静脈8に配置してもよい(この配置は図示せず)。図1F−Gに示されるステント50の構成は、図2A−B、図3A−B、図4A−C、図6および/または図7A−Dを参照して後述されるものを含め、本明細書に記載のステントの構成の何れにも使用されうる。
【0121】
図7A−Dを参照する。図7A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、固定具40をインプラントする運搬ツールシステム200の概略図である。この運搬ツールシステム200は、例えば、図1A−G、図2A−B、図3A−C、図5A−C、図6図8A−E、図9A−E、図11A−B、図12A−Eおよび/または図14A−Dを参照して本明細書で説明された応用例と組み合わせて、固定具を回転させインプラントするために使用され得る。長手部材はステント50に固定されているものとして図7A−Dに示されているが、これは必ずしもそうではない。このように、ツールシステム200は、図3C図5A−C、図11A−B、図12A−Eおよび/または図14A−Dを参照して本明細書で説明されたものなど、ステント50を利用しない応用例と組み合わせても使用されうる。
【0122】
図1A−Gおよび図7A−Dを参照する。注意すべきは、固定具40は、運搬ツールシステム200を用いてインプラントされ得るということである。図7Aは運搬ツールシステム200の構成部品の分解図であり、ステント50、長手部材42および固定具40に対する空間的配置構成を示している。そのような応用例において、長手部材42の遠位端に環状ループ216が設けられ、そこを貫通して固定具40の一部は長手部材42の遠位端に連結される。幾つかのそのような応用例では、ステント50、長手部材42、および固定具40は、前述のように、一体品からは作られない。むしろ、ステント50、長手部材42および環状ループ216だけは通常一体品から作られ、固定具40は環状ループ216を介して長手部材42に連結される。代替的に、前述のように、ステント50が設けられない応用例などでは、長手部材42はステント50に連結されない。
【0123】
システム200は一般に、アダプタ218を備えている。幾つかの応用例では、アダプタ218は、環状近位部と、遠位端220を有する遠位円筒部とを画定する形状を有する。システム200の製造の際、アダプタ218の円筒部の遠位端220を、長手部材42の遠位端にある環状ループ218に通すことにより、アダプタ218を長手部材42の遠位端に連結する。その後、図7Bに示されるように、アダプタ218の遠位端220を、固定具40の管腔の近位部に溶着、またはその他の方法で固定的に連結する。このような方式で固定具40を環状ループ216およびアダプタ218に連結することにより、固定具40は、運搬システム200の長手方向中心軸周りに、環状ループ216内で自由に、回転することができる。つまり、運搬ツールシステム200は、後述のように、長手部材42およびステント50(有れば)を回転させることなく、固定具40を回転させる。
【0124】
運搬ツールシステム200は、遠位端を有する運搬ツールオーバーチューブ202を備える。ステント50が設けられている応用例では、運搬ツールオーバーチューブ202は、カテーテル22内に収納され、オーバーチューブ202の遠位部はステント50の管腔を部分的に通過し、オーバーチューブ202の遠位端204は組織固定具40に向かって伸びる。組織固定具40とステント50をそれぞれのインプラント部位へ向けて運搬する際、運搬ツールシステム200は、図7Bに示されるような構成を呈する。しかし、注意すべきは、ステント50の管腔を貫通して伸びるオーバーチューブ202の一部の周りでステント50は圧縮されるものであり(図の明確化のため図示せず)、カテーテル22(図の明確化のため図示せず)は、システム200を包囲する(それによってステント50を圧縮する)ということである。
【0125】
図7Aを再度参照する。オーバーチューブ202は、トルク伝達/固定具引張チューブ208を収納し、チューブ208のオーバーチューブ202へのスライド可能な連結を容易にする。トルク伝達/固定具引張チューブ208の遠位端は、マニピュレータ206に接続される。マニピュレータ206はカップリング210を画するように形成され、カップリング210によってマニピュレータ206はアダプタ218に連結され、それによって、固定具40に連結される。固定具40を回転させるために、トルク伝達/固定具引張チューブ208を回転させる。トルク伝達/固定具引張チューブ208を回転させると、マニピュレータ206が回転し、固定具40は患者の心臓組織に螺着される。アダプタ218が回転するとき、アダプタ218の円筒部は、環状ループ216内で自由に回転する。このようなアダプタ218(およびそれにより固定具40)の環状ループ216(およびそれにより長手部材42)に対する連結方式によって、医者は、長手部材42とステント50(有れば)を回転させることなく固定具40を回転させてインプラントすることができる。
【0126】
固定具40を回転させた後、トルク伝達/固定具引張チューブ208が医者によって引っ張られ、固定具40を引き、それによって、固定具40がインプラントされている第1のインプラント部位30にある心臓組織の部分を引く。チューブ208は一般に、患者の体外のハンドル部にある機械部品(例えば、ノブ)に、その近位端で連結されている。医者は、チューブ208の近位端に連結された機械部品を動かすことによってチューブ208を引く。チューブ208を引くことにより(およびそれにより固定具40を引き、さらに、第1のインプラント部位30の心臓組織を引くことにより)第1のインプラント部位を第2のインプラント部位52に向けて引き寄せ、それにより、少なくとも前尖14を中隔尖12へ引き寄せ、弁尖の接合を達成し、弁4を通る逆流を減少させる。
【0127】
ステント50が設けられる幾つかの応用例では、固定具40を引っ張った後、ステント50を第2のインプラント部位52に配置する。このとき、カテーテル22をチューブ202に沿って若干引き戻すことにより、長手部材42をピンと引っ張り、確実に張力が第1のインプラント部位30で長手部材42に沿って維持されるようにする。そうして、医者が、トルク伝達/固定具引張チューブ208を保持しつつ、ステント50の周囲の、(1)カテーテル22、または(2)シース(つまり、カテーテル22内にあってステント50を包囲するもの)のどちらかを近位に後退させることにより、(1)カテーテル22または(2)カテーテル22内のシースのどちらかの中からステント50を展開させして、ステント50を配置する。
【0128】
注意すべきは、ステント50は、少なくともその一部の配置後(例えば、ステント50の1/2までのまたは1/3までの配置の後)に、回収が可能であるということである。そのような応用例において、ステント50の少なくとも遠位部を配置するために、ステント50の周囲からカテーテル22を最初に近位へ後退させた後でも、カテーテル22は遠位に前進が可能であり、少なくとも部分的に配置されていたステントを圧縮して後退させカテーテル22の遠位端部内へ戻す。代替的に、カテーテル22は、第2のインプラント部位52へステントを運搬する間、ステント50を圧縮するシースを収納する。カテーテル22の最初の近位への後退の際、ステント50を包囲するシースも、カテーテル22の後退に連動して後退する。ステント50の少なくとも遠位部を配置するためにステント50の少なくとも一部を配置した後、シースは遠位に前進可能であり(カテーテル22が適所に留まっている限り)、少なくとも部分的に配置されたステントを圧縮して後退させシースの遠位端部内に戻す。シースは、その後、カテーテル22内に後退する。ステント50の少なくとも一部が配置された後でもステント50の回収が可能な本発明の応用例では、固定具40を第1のインプラント部位30から離し、所定の患者の必要に応じて、インプラントシステム全体を体内から取り出し、または、心臓内で再配置することができる。
【0129】
ステント50が回収可能な応用例では、ステント50を回収するために(つまり、アダプタ218から、およびそれにより固定具40から、マニピュレータ206を切り離す前に)、医者は、トルク伝達/固定具引張チューブ208を保持しつつ、ステント50の周囲の(1)カテーテル22または(2)カテーテル22内にあるシースのどちらかを遠位に前進させることにより、(1)カテーテル22または(2)カテーテル22内のシースのどちらかの内側でステント50を圧縮する。その後、トルク伝達/固定具引張チューブ208を回転させて、組織から固定具40を離し、所定の患者の必要に応じて、インプラントシステム全体を体内から取り出し、または、心臓内で再配置することができる。
【0130】
図7A−Dを再度参照する。図7C−Dは、アダプタ218と固定具40からトルク伝達/固定具引張チューブ208とマニピュレータ206を切り離し解放するところを示している。この解放は一般に、前述のように、ステント50(有れば)の配置の後に行われる。図7Aに示されるように、システム200は、解放可能なアダプタホルダ212を備え、該アダプタホルダ212は、径方向に広がる性向を有するアーム214を画定する形状を有する。ホルダ212は、図7Cに示されるように、マニピュレータ206を包囲する。固定具40をインプラント部位30に向けて運搬し、続けて、固定具40を回転させてインプラント部位30の組織内に固定具40をねじ込んでいる間、オーバーチューブ202の遠位端204は環状ループ216に隣接した位置にあり、オーバーチューブ202の遠位端部によってホルダ212のアーム214は包囲され圧縮されている(図7Bに示されるように)。トルク伝達/固定具引張チューブ208で固定具40を引っ張った後、オーバーチューブ202を少し後退させるとホルダ212のアーム214が露出する。それに応答して、アーム214が径方向に広がり(図7C)、ホルダ212からアダプタ218が(そして固定具40が)解放される。
【0131】
図7Dに示されるように、医者がチューブ208を後退させてアーム214を押し倒してオーバーチューブ202の遠位端部内に引き寄せ収納している間、オーバーチューブ202は適所に保持されている。その後、オーバーチューブ202をカテーテル22内で近位に摺動させると、固定具40、固定具40に連結されたアダプタ218、環状ループ216、長手部材42、およびステント50(有れば)を残してオーバーチューブ202は後退する。カテーテル22は、オーバーチューブ202とオーバーチューブ202内に収納されている部品を収納し、患者の体内から引き出される。
【0132】
図7A−Dを参照して前述されたもの等の幾つかの応用例では、長手部材42は、少なくとも10mm、40mm以下、および/または10〜40mmの間の長さを有する。
【0133】
図1A−Gを再度参照する。注意すべきは、必要な変更を加えて、上大静脈10を通して、カテーテル22および組織係合具60a、60bを進めることによって、前述のように、組織係合具60a、60bをそれぞれインプラント部位30、50にインプラントしてもよいということである。
【0134】
図2A−Bは、第1および第2のステント50a、50b、第1および第2の長手部材42a、42bおよび第1および第2の組織固定具40a、40bを備える、三尖弁4を修復するためのシステム100を示す。第1の組織固定具40aは第1の組織係合具60aを画定する。第1のステント50aは第2の組織係合具60bを画定する。第2の組織固定具40bは第3の組織係合具60cを画定する。第2のステント50bは第4の組織係合具60dを画定する。本発明の幾つかの応用例では、図1A−Gを参照して前述したような第1の組織係合具60aと第2の組織係合具60bをインプラントした後で、第3および第4の組織係合具60c、60dをインプラントする。前述した通り、第1のインプラント部位30は、図の通り、前尖14と後尖16の間の継ぎ目の近傍にある組織の部分を含む。第1のインプラント部位30は、(1)弁輪と前尖14の間の接合部の中央と、(2)弁輪と後尖16の間の接合部の中央、の間にある組織の部分を含み得る。
【0135】
第1および第2の組織係合具60a、60bをインプラントした後、カテーテル22を患者の体内から取り出す。患者の体の外で、カテーテル22には、第3および第4の組織係合具60c、dが装填しなおされる。その後、カテーテル22を患者の体内に再導入して右心房6に向けて前進させ、図2Aに示されるように、カテーテル22の遠位端23を第1のステント50aに貫通させて心房6に向わせる。注意すべきは、長手部材42aの近位端部は第2の組織係合具60bに連結されており、カテーテル22内にはないということである。
【0136】
続いて、第2の組織固定具40b(つまり、前述のような組織固定具40aに類似した固定具)を、第3のインプラント部位32にある心臓組織の第2の部分にインプラントする。第3のインプラント部位32は、三尖弁4の近傍の心臓組織の部分(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第2の部分)を含む。第3のインプラント部位32は、図の通り、(1)弁輪と前尖14の間の接合部の中央と、(2)弁輪と後尖16の間の接合部の中央、の間にある組織の部分を含む。幾つかの応用例では、第3のインプラント部位32は、右心房6を構成する壁の第2の部分を含みうる。他の応用例では、第3のインプラント部位32は、右心室の心臓組織の部分、例えば、右心室を画する壁の部分、弁4の弁輪の心室の部分、または右心室の乳頭筋の部分、を含みうる。
【0137】
第3の組織係合具60cをインプラントした後、カテーテル22を後退させ、インプラント部位30への張力の付加に関して図1C−Dを参照して前述した方法で、第3の組織係合具60cに張力を付加する。付加的に、張力は、第3および第4の組織係合具60c、60dに連結された第2の長手部材42bに、例えば、図1Cを参照して前述した第1の長手部材42aを引っ張る方法で、付加される。本明細書に記載のように、第3のインプラント部位32の組織を第2のインプラント部位52に向けて引っ張っている間、および第2の長手部材42bを引っ張っている間、弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。
【0138】
代替的に、第2のインプラント部位52に向けて第1および第3のインプラント部位30、32の組織を引くと、それに応答して、前尖14が中隔尖12に向けて引き寄せられ、二尖化が達成される。また、その引っ張りに応答して、第1および第3のインプラント部位30、32の間の組織の部分が締め上げられる。
【0139】
図2Bを参照する。医者が弁4の逆流が減少しまたは止まり、弁4が修復されたと判断したら、カテーテル22を、第4の組織係合具60dから、および/または、第2の長手部材42bから切り離し、医者はカテーテル22を後退させることにより、第4の組織係合具60d、つまり、第2のステント50bを、図の通り、露出させる。カテーテル22を心房6に向けて前進させている間、第2のステント50bは、カテーテル22の遠位部内に圧縮された状態で収納されている。カテーテル22の最初の後退に従って第2のステント50bが外に出されると、第2のステント50bは、図の通り、第1のステント50aの管腔内で拡張でき、下大静脈8の壁と接触する。拡張に応答して、第2のステント50bは、第2のインプラント部位52にインプラントされ、第2の組織固定具40bにかかる第2の長手部材42bの張力を維持し、それによって固定具40bが連結された心臓組織の部分にかかる張力を維持する。
【0140】
注意すべきことは、第2のステント50bは、限定ではなく例示のために、第1のステント50aの管腔内にインプラントされているが、本発明の幾つかの応用例では、第1および第2のステント50a、50bは第2のインプラント部位52に同軸上にインプラントされてもよいということである。
【0141】
注意すべきことは、第3および第4の組織係合具60c、60dおよび第2の長手部材42bは一般に同じ材料(例えばニチノール)から、一体品から作られるということである。つまり、第3および第4の組織係合具60c、60dおよび第2の長手部材42bは一般に一つの連続したインプラントユニットを構成する。
【0142】
図3A−Cを参照する。図3A−Cは、三尖弁4を修復するためのシステム110の概略図である。このシステム110は、本発明の幾つかの応用例に従う、第1、第2および第3の組織係合具60a、60b、60c、ならびに、第1および第2の長手部材42a、42bを備える。システム110は、図2A−Bを用いて前述されたシステム100に類似するが、システム110には第2のステント50bがなく、図3B−Cに示されるように、第2の長手部材42bの近位端部112は、1以上の係合具114(例えば、図の通り、フックやさかとげ)を画定するような形状を有する。第3の組織係合具60cをインプラントし、続いて、第2の長手部材42bを引っ張った後、カテーテル22を用いて容易に、ステント50の支材に係合具114を連結させうる(図3Cは、図3Bの第2の長手部材42bの近位部とステント50の拡大図である)。係合具114をステント50に連結させると、長手部材42に付加された張力が維持され、それによって、第3の組織係合具60cにかかる張力を維持し、三尖弁4の改造状態を維持する。
【0143】
注意すべきは、第3の組織係合具60c、第2の長手部材42b、および係合具114ならびに第2の長手部材42bの近位端部112は一般に同じ材料(例えばニチノール)から一体品から作られるということである。つまり、第3の組織係合具60c、第2の長手部材42b、および係合具114ならびに第2の長手部材42bの近位端部112は、通常、一つの連続したインプラントユニットを構成する。
【0144】
図2A−Bおよび図3A−Cを参照する。幾つかの応用例では、前述のように、組織係合具をそれぞれのインプラント部位にインプラントした後、第1および第2の長手部材42a、42bの各々の長さが調整機構によって調整される(図5A−Bまたは図5Cを参照して後述する)。調整機構150は、一般に、第1および第2の長手部材42a、42bの各々の長さを短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、各調整機構150は、第1および第2の長手部材42a、42bのうちの一つにそれぞれ恒久的に連結されてもよく(図示せず)、その場合の各機構150は、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42a、42bの各一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42a、42bの各一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42a、42bの各一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、調整ツール144は、調整部品(例えば、長手部材42a、42bの各一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42a、42bの各一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。いずれの応用例でも、第1および第2の長手部材42a、42bの各長さを調整している間、弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。
【0145】
図4A−Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、それぞれ上大静脈10と下大静脈にインプラントされる第1および第2のステント130、132を備える、三尖弁4の修復システム120を示す。カテーテル122は、図4Aに示されるように、患者の血管系を通して進入し、カテーテル122の遠位端124を上大静脈10に向けて前進する。カテーテル122は適切な導入場所から押し入れられる。例えば、カテーテル122は、患者の大腿静脈から導入され、下大静脈8を通り、上大静脈10に向かうようにしてもよい。カテーテル122を上大静脈10および下大静脈8へ向けて前進させている間、ステント130、132は、圧縮された状態でカテーテル122の遠位部内に収納される。
【0146】
図4Bにおいて、第1のステント130はカテーテル122内から出されて拡張し上大静脈10の壁の組織と接触している。上大静脈の壁のこの部分は、本発明のそのような応用例において、第1のインプラント部位30となる。付加的に、第1のステント部材130は、本発明のそのような応用例において、第1の組織係合具60aとなる。注意すべきは、ステント130がインプラントされる上大静脈10の部分は弁4の近傍にある組織の部分であるということである。
【0147】
その後、カテーテル122を後退させ、長手部材42を引っ張って張力を付加する。長手部材42は、カテーテル122によって直接的に引っ張られる、および/または、カテーテル122内に収納されているステント部材132を引くことにより間接的に引っ張られる。幾つかの応用例では、引っ張っている間、三尖弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。なぜならば、引っ張りに応答して、心房6の壁の形状が改められ、三尖弁4の弁尖が互いに引き寄せられ、弁4の逆流が減少し除去されるからである。
【0148】
医者が弁4の逆流が減少または停止し、弁4が修復されたと判断したら、医者は、カテーテル122を、その中に収納している第2のステント132から、および/または、長手部材42から、切り離し、カテーテル122を後退させ、第2の組織係合具60b(つまり、図の通り、第2のステント部材132)を露出させる。カテーテル122の最初の後退に従って、第2のステント部材132が外に出されると、図4Cに示されるように、第2のステント部材132は拡張し、下大静脈8の壁に接触する。拡張に応答して、第2のステント部材132は第2のインプラント部位52にインプラントされ、第1のステント部材130にかかる長手部材42の張力を維持し、それによって、心房6の壁の、および三尖弁4の弁尖の、改められた形状を維持する。
【0149】
図4A−Cを再度参照する。幾つかの応用例では、第1および第2の組織係合具60a、60b(つまり、それぞれ、第1および第2のステント130、132)の配置の後、第1と第2の組織係合具60a、60b間の距離が、図5A−Bまたは図5Cを参照して後述するように、調整機構によって調整される。そのような応用例では、第1と第2のステント130、132間の長手部材42の長さは、図5A−Bまたは図5Cに示されるように、調整機構150により調整され得る。調整機構150は、一般に、第1と第2のステント130、132間の長手部材42の距離を短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、第1と第2のステント130、132の間の長さを短くするために、調整機構150は、長手部材42に恒久的に連結されてもよく(図示せず)、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42の一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42の一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42の一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、第1と第2のステント130、132間の長さを短くするために、調整ツール144は調整部品(例えば、長手部材42の一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42の一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。いずれの応用例においても、調整機構150で第1と第2の組織係合具60a、60b間の距離を調整している間、弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。
【0150】
注意すべきは、第1および第2のステント130、132および長手部材42は一般に同じ材料(例えばニチノール)から一体品から作られるということである。つまり、第1および第2のステント130、132および長手部材42は、通常、一つの連続したインプラントユニットを構成する。
【0151】
図4A−Cを再度参照する。注意すべきは、カテーテル122の遠位端124は、図4Aに示されるように、上大静脈に最初に向かうのではなくて、下大静脈に最初に向かうように前進してもよいということである。そのような実施形態において、カテーテル122は、外頸静脈に導入され、鎖骨下静脈を通り、上大静脈10を通り、下大静脈8に向かう。代替的に、カテーテル122は、尺側皮静脈に導入され、鎖骨下静脈を通り、上大静脈10を通り、下大静脈8に向かう。注意すべきは、あらゆる適切な導入場所が患者の血管系内にカテーテル122を導入するのに利用され得るということである。
【0152】
図4A−Cをさらに参照する。幾つかの応用例では、ステント130および/またはステント132の一方または両方は、図1Dを用いて前述したように、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材を含む。代替的にまたは付加的に、幾つかの応用例では、ステント130および/またはステント132の一方または両方は、図1E−Gを用いて前述したように構成された2以上のリング62を含む。
【0153】
図5A−Bを参照する。図5A−Bは、本発明の幾つかの応用例に従う、長手部材42によって互いに連結された第1および第2の組織固定具40a、40bを備える三尖弁4の修復システム140の概略図である。そのような応用例では、第1の組織固定具40aは第1の組織係合具60aを定め、第2の組織固定具40bは第2の組織係合具60bを定める。組織固定具40a、40bは、患者の心臓組織を、穿刺、圧搾、または、係合するのに適切なあらゆる固定具を含み得る。限定ではなく例示の目的で示されるように、組織固定具40aおよび40bは螺旋形の組織固定具を含み、この螺旋形の組織固定具は、心臓組織を穿刺してねじ状に固定される。注意すべきは、第1および第2の組織係合具60a、60b(つまり、第1および第2の組織固定具40aおよび40b)と長手部材42は、同じ材料(例えば、ニチノール)から一体品から作られるということである。つまり、第1および第2の組織係合具60a、60bと長手部材42は、一つの連続したインプラントユニットを構成する。
【0154】
カテーテル142は、図1Aを参照してカテーテル22について前述したような方法で、患者の血管系を通して押し入れられる。カテーテル142は第1のインプラント部位30に向けて前進し、心臓組織への第1の組織固定具40aのインプラントを容易にする。図の通り、第1のインプラント部位30は、限定ではなくて例示のために、弁4の壁在側にある弁4の弁輪の組織の第1の部分を含む。幾つかの応用例では、第1のインプラント部位30は、心臓2の心房6の壁の第1の部分を含みうる。限定ではなくて例示の目的で示されるように、第1のインプラント部位30は、前尖14と後尖16の間の継ぎ目にある弁輪の組織の部分を含む。注意すべきは、弁4の弁輪の近傍でそれに沿った適切な場所であればどこでも第1のインプラント部位30にしうるということである。
【0155】
カテーテル142は、その後、第2のインプラント部位52に向けて前進し、心臓組織への第2の組織固定具40bのインプラントを容易にする。幾つかの応用例では、カテーテル142が第2のインプラント部位に向かって前進しているとき、長手部材42は引っ張られ、弁4の弁尖同士を引き寄せる一方で、弁4の逆流の程度が監視される。図の通り、第2のインプラント部位52は、限定ではなく例示のために、弁4の中隔側にある弁4の弁輪の組織の第2の部分を含む。幾つかの応用例では、第2のインプラント部位52は、心臓2の心房6の壁の第2の部分を含みうる。限定ではなく例示の目的で示されるように、第2のインプラント部位52は、中隔尖12の中央の下の弁輪の組織の部分を含む。注意すべきは、第1のインプラント部位30は、弁4の弁輪の近傍でそれに沿ったあらゆる適所に、例えば、後尖16と中隔尖12の間の継ぎ目に、インプラントしうるということである。
【0156】
そのような応用例では、長手部材42に張力を付加することによって、前尖14と中隔尖12は互いに引き寄せられ、弁4の二尖化が達成される。幾つかの応用例では、機構150で調整している間、回収可能なステントを下大静脈8に配置し、調整機構150で調整中のシステム140を安定させるようにしてもよい。さらに注意すべきは、必要な変更を加えて、上大静脈10を通して心房6に向けて、組織係合具60a、60bおよびカテーテル142を前進させてもよいということである。
【0157】
本発明の幾つかの応用例では、システム140は、カテーテル142内にスライド可能に収納された、1以上の固定具操作ツール(図の明確化のための図示せず)を備える。固定具操作ツールは、カテーテル142内を遠位方向にスライドし、組織固定具40a、40bを遠位方向に押し、組織固定具40a、40bをカテーテル142内から外に出す。本発明の幾つかの応用例では、固定具操作ツールは、固定具40a、40bに可逆的に連結可能であり、心臓組織への固定具40a、40bのインプラントを容易にする。図のように、固定具40a、40bがそれぞれ螺旋形の組織固定具を含む応用例では、手術をする医者が固定具操作ツールを、患者の体外の部位から回転させて、固定具40a、40bを回転させ、心臓組織に各固定具40a、40bの少なくとも遠位端部をねじ込む。
【0158】
図5A−Bを再度参照する。注意すべきは、第1および第2のインプラント部位30、52は、限定ではなく例示のために、弁4の上流にある心臓組織を含むが、第1および第2のインプラント部位のいずれかまたは両方は、弁4の下流にある心臓組織を含んでもよいということである。
【0159】
一般に、第1および第2の組織固定具40a、40bのインプラントの後、第1と第2の組織固定具40a、40b間に設けられた長手部材42の長さを調整機構150で調整する。調整機構150は、一般に、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長手部材42の距離を短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、調整機構150は、長手部材42に恒久的に連結されてもよく(図5B参照)、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長さを短くするために、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42の一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42の一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42の一部を変形させるものである。
【0160】
他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、第1と第2の組織係合具60a、60b間の長さを短くするために、調整ツール144は、調整部品(例えば、長手部材42の一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42の一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。
【0161】
いずれの応用例においても、調整機構150で第1と第2の組織係合具60a、60b間の距離を調整している間、弁4の逆流のレベルを監視するようにしてもよい。
【0162】
第1と第2のインプラント部位30、52間の距離が調整された後、調整ツール144とカテーテル142が長手部材42から切り離され、患者の体内から取り出される。
【0163】
図5Cを参照する。図5Cは、本発明の幾つかの応用例に従う、システム140の他の構成の概略図である。このシステム140の構成は、図5A−Bを参照して前述した構成に概ね類似しているが、第1および第2の組織係合具60a、60bに追加して、システムは第3の組織係合具60c(つまり第3の組織固定具)を備えている。第3の組織係合具60cは、図5A−Bを参照して前述した技術を用いるなどして、第3のインプラント部位32にインプラントされる。幾つかの応用例では、第3のインプラント部位32は、心房6の壁の第3の部分を含みうる。限定ではなく例示の目的で、第3のインプラント部位は、弁尖の中央など、弁の3つの弁尖の弁輪の組織の部分を含みうる。
【0164】
組織係合具60a、60b、60cは、長手部材42a、42b、42cにそれぞれ連結される。長手部材は調整機構150によって互いに連結される。幾つかの応用例では、調整機構150は、その周りに長手部材の一部を巻き取るスプールと、スプールが一つの方向にのみ回転するようにするラチェット部品を含む。スプールが回転してその周りに長手部材を巻き取ると、それによって長手部材の有効長さが短くなり、それらに張力が付加され、図5A−Bを参照して前述したように、弁尖は互いに引き寄せられる。その結果、右心房の壁の形状が改められ得る。
【0165】
図6を参照する。図6は、本発明の幾つかの応用例に従う、弁4の弁輪の部分にインプラントされる第1の組織係合具60aと、患者の右心室の乳頭筋72の部分にインプラントされる第3の組織係合具60cを備える三尖弁4の修復システム700の概略図である。注意すべきは、限定ではなく例示のために、第3のインプラント部位32は乳頭筋72を含み、かつ、第3のインプラント部位32は、右心室の壁の部分のあらゆる部分(例えば、弁4の心室の表面にある弁輪の組織の部分、弁4の近傍にある心室の壁の部分、心臓2の心尖の近傍にある組織の部分、その他心室の壁の適切な部分)を含んでもよいことである。
【0166】
図2A−Bおよび図6を参照する。図6の、第1、第2および第3の組織係合具60a、60b、60cは、図2A−Bを参照して前述した方法で心臓組織にインプラントされるが、第3の組織係合具60cをインプラントするために、カテーテル22は弁4の弁尖を通過して右心室内に進入し、心室の組織に第3の組織係合具60cはインプラントされるという点が異なっている。図6において、第3の組織係合具60cの連結後、図2Bにおいて前述したように、第2のステント50bが下大静脈8にある第2のインプラント部位52に配置される。
【0167】
図3A−Bおよび図6を参照する。注意すべきは、幾つかの応用例では、第2の長手部材42bは、その近位端で1以上のさかとげ114に連結されている(つまり、図の通り、第2のステント50に接続されていない)ということである。さかとげ114で、第2の長手部材42bを、第1の長手部材42aと接続されているステント50に連結させることができ、それによって、第3のインプラント部位32にかかる張力を維持でき、少なくとも前尖14と中隔尖12の接合を維持することができる。
【0168】
図6を再度参照する。幾つかの応用例において、心臓2の心室の組織の部分に少なくとも1つの組織係合具60をそのように適用することにより、弁4と心臓2の心室の壁の部分の独立した調整が容易になる。つまり、幾つかの応用例では、その機能を改良するために右心室の形状調整が達成される。
【0169】
幾つかの応用例では、第1、第2、第3および第4の組織係合具60a、60b、60c、60d(つまり、第1および第2の固定具40a、40bならびに第1および第2のステント50a、50b)の配置の後、図5A−Bまたは図5Cを参照して後述されるように、(1)第1と第2の組織係合具60a、60b間の距離が第1の調整機構によって調整可能であり、(2)第3と第4の組織係合具60c、60d間の距離が第2の調整機構によって調整可能である。そのような応用例において、(1)第1と第2の組織係合具60a、60bの間の第1の長手部材42aの長さが第1の調整機構150によって調整され得(図5A−Bまたは図5C参照)、(2)第3および第4の組織係合具60c、60dの間の第2の長手部材42bの長さが第2の調整機構150によって調整され得る(図5A−Bまたは図5C参照)。調整機構150はそれぞれ一般に、各長手部材42a、42bの距離を短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、調整機構150は、それぞれの長手部材42a、42bに恒久的に連結されてもよく(図示せず)、それぞれの組織係合具60間の長さを短くするために、それぞれが調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備えている。スプールはその周りに長手部材42a、42bの一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42a、42bの各一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42a、42bの各一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150はそれぞれ、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、調整ツール144は、調整部品(例えば、長手部材42a、42bの各一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42a、42bの各一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。いずれの応用例においても、(1)第1と第2のインプラント部位30、52の間の距離を調整している間、および(2)第3および第2のインプラント部位32、52の間の距離をしている間、弁4の逆流のレベルを監視してもよく、また右心室の形状の調整を監視する。
【0170】
図8A−Eおよび図9A−Eを参照する。図8A−Eおよび図9A−Eは、本発明のそれぞれの応用例に従う、三尖弁4の修復システム800の概略図である。おそらく図8Eおよび図9Eに最も良く示されているように、システム800は、第1、第2、第3および第4の組織係合具60a、60b、60c、60dを備えている。システム800は、図3A−Bを参照して前述したシステム110に幾つかの点で類似している。しかし、システム800は一般に、長手部材42を厳密に1つのみ備えている点で異なっている。一般に、長手部材42は第1の組織係合具60aに直接的に連結され、長手第二部材802によって組織係合具60c、60dに間接的に連結される。一般に長手第二部材802の一方の端は、組織係合具60cに連結され、他方の端は、組織係合具60dに連結される。幾つかの応用例では、図の通り、長手部材42は、長手第二部材802に固定されず、長手第二部材802が、例えば、長手部材42に引っ掛けられたり、輪状に渡されたりして、図8C−Eおよび図9C−Eを参照して後述するように、長手第二部材を配置している間、長手第二部材802は長手部材42に接合部804で係合している。代替的に、リングを設けて長手第二部材を長手部材に連結してもよい(構成は図示せず)。
【0171】
図8A−Eは、上大静脈10を経由して心房6内に組織係合具60a、60c、60dを進入させ、組織係合具60bを上大静脈に配置する、上大静脈アプローチを示している。図9A−Eは、下大静脈8を経由して心房6内に組織係合具60a、60c、60dを進入させ、組織係合具60bを下大静脈に配置する、下大静脈アプローチを示している。一般に、組織係合具60a、60c、60dのうちの1つは、中隔尖の基部の尾状の部分の三尖弁4の中隔側に配置される。組織係合具60a、60c、60dのうちの他の2つは、弁の壁在側、概ね、前尖の中央と、前尖と後尖の間の継ぎ目に配置され、壁在側全体を3つの等しい空間に分割する。幾つかの応用例では、さらに他の組織係合具が弁の壁在側に配置される(構成は図示せず)。
【0172】
図8Aおよび図9Aに示されるように、固定具配置チューブ24が心房6内に、例えば、図1Aを参照して前述した技術を用いて、配置される。第1の組織係合具60aは第1のインプラント部位30に、本明細書に記載の固定技術を用いるなどして配置される。第1のインプラント部位30は、三尖弁4の近傍にある心臓組織の部分を含む(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第1の部分)。例えば、図8Aのアプローチにおいて、第1のインプラント部位30は、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央に位置する、弁の弁輪の壁在側(例えば前尖14)にあってもよい。図9Aのアプローチにおいて、第1のインプラント部位30は、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央に位置する、弁輪の壁在側(例えば後尖16)にあってもよい。代替的に、一般に望ましくはないが、第1のインプラント部位30はほぼ弁の継ぎ目にあってもよい。
【0173】
図8Bおよび図9Bに示されるように、固定具配置チューブ24の遠位端は、第3のインプラント部位32に向けて進む。第3の組織係合具60cは第3のインプラント部位32に、本明細書で説明された固定技術を用いるなどして、配置される。第3のインプラント部位32は、三尖弁4の近傍にある心臓組織の部分(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第2の部分)を含む。例えば、図8Bのアプローチにおいて、第3のインプラント部位32は、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央に位置する、弁の弁輪の壁在側(例えば後尖16)にあってもよい。図9Bのアプローチにおいて、第3のインプラント部位32は、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央に位置する、弁の弁輪の壁在側(例えば前尖14)にあってもよい。代替的に、一般に望ましくはないが、第3のインプラント部位32はほぼ弁の継ぎ目にあってもよい。
【0174】
図8Cおよび図9Cに示されるように、固定具配置チューブ24の遠位端は、第4のインプラント部位34に向けて進む。前述のように、長手第二部材802が組織係合具60c、60d間に渡されている。第4の組織係合具60dが第4のインプラント部位34へ運ばれている間、長手第二部材802は、長手部材42に例えば、引っ掛けられたり、または輪状に渡されたりして、長手部材42と接合部804で係合している。第4の組織係合具60dは第4のインプラント部位34に、本明細書に記載の固定技術を用いるなどして、配置される。第4のインプラント部位34は、三尖弁4の近傍にある心臓組織の部分(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第2の部分)を含む。例えば、図8Cおよび図9Cのアプローチにおいて、第4のインプラント部位34は、弁の弁輪の中隔側(例えば、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央に位置する、中隔尖12の基部の尾状の部分)にあってもよい。代替的に、一般に望ましくはないが、第4のインプラント部位34はほぼ弁の継ぎ目にあってもよい。
【0175】
図8Dおよび図9Dに示されるように、固定具配置チューブ24は大静脈内に引き戻される。第2の組織係合具60b(ステント50)は、長手部材42を引き、長手部材42は、第1の組織係合具60aを直接的に引き、組織係合具60c、60dを長手第二部材802を介して間接的に引く。それに応答して、三尖弁4の弁尖間の距離が調整され、弁4を通る逆流が減少し除去され、弁4は修復される。幾つかの応用例では、長手部材42を引っ張っている間、三尖弁4の逆流の程度を監視する。長手部材42は、逆流が減少し止まるまで引っ張られる。医者が弁4の逆流が減少または停止し弁が修復されたと判断すると、前述のように、第2の組織係合具60b(例えば、ステント50)が大静脈にある固定具配置チューブ24から展開され、それによって図8Eおよび図9Eに示されるように、組織係合具を第2のインプラント部位52にインプラントする。
【0176】
幾つかの応用例では、ステント50は、図1Dを参照して前述したように、複数の互いに接続された超弾性金属製の支材からなる。代替的にまたは付加的に、幾つかの応用例では、図1E−Gを参照して前述した構成のように、ステント50は、2個以上のリング62を含む。
【0177】
幾つかの応用例では、前述のように、組織係合具をそれぞれのインプラント部位にインプラントした後、図5A−Bまたは図5Cを参照して前述したように、長手部材42の長さが調整機構によって調整される。調整機構150は、一般に、長手部材42の長さを短くする機械部品を含む。幾つかの応用例では、調整機構150は、長手部材42に恒久的に連結されてもよく、機構150は、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42の一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42の一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42の一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、調整ツール144は、調整部品(例えば、長手部材42の一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42の一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。いずれの応用例においても、長手部材42の長さを調整している間、三尖弁4の逆流のレベルを監視するようにしてもよい。
【0178】
図10A−Bを参照する。図10A−Bは、本発明の応用例に従う回転ツール900の概略図である。ツール900は、組織固定具を回転させて固定具を組織内に押し入れるために使用され得る。ツール900は、例えば、図1A−G、図2A−B、図3A−C、図5A−C、図6図8A−E、図9A−E、図11A−B、図12A−D、および/または図14A−Dを参照して本明細書に記載の応用例と組み合わせて固定具を回転させインプラントするために使用されてもよい。ツール900は、図7A−Dを参照して上記に記載の、運搬ツールシステム200と幾つかの点について類似しており、システム200の各種特徴部を任意に実装することができ、および/またはシステム200に類似の方法で利用することができる。
【0179】
ツール900は、固定具40の近位連結ヘッド906に取り外し可能に係合されるように構成される遠位端904を有する回転チューブ902を備える。回転チューブ902の回転によって固定具は回転する。例えば、遠位端904は、雌型連結部材(例えば、六角形または四角形であり得る)を画するように形成されてもよく、近位連結ヘッド906は、雄型連結部材(例えば、六角形または四角形であり得る)を画するように形成されてもよい。いくつかの応用例では、回転チューブ902は、例えば、ステンレス鋼などの金属を含みうる、編組または織物材料を含む。
【0180】
幾つかの応用例では、図7A−Dを参照して前述したように、長手部材42の遠位端には環状ループ216があり、固定具40の一部は環状ループ216を通って長手部材42の遠位端と連結される。このような固定具40の環状ループ216に対する連結方式によって、固定具40は、回転ツール900の長手方向中心軸周りに、環状ループ216内で自由に、回転することができる。つまり、回転ツール900は、長手部材42およびステント50(有れば、図7A−Dに記載のものなど)を回転させることなく、固定具40を回転させる。
【0181】
幾つかの応用例では、ツール900は、細長の連結具910をさらに備える。該細長の連結具910は、例えば、糸、ケーブル、またはワイヤを含みうる。固定具40(その近位連結ヘッド906など)は、自身を貫通する通路912を画するように形成されている。細長の連結具910は、最初の配置では、通路912を貫通して、その両端914を近位方向に伸ばしている。この状態にあるとき、細長の連結具はツールを固定具に連結している。ツールと固定具の連結を解除するときには、両端914のうちのいずれか一方を引き、細長の連結具を通路912から出す。
【0182】
図11A−Bおよび図12A−Dを参照する。これらは、本発明の幾つかの応用例の、三尖弁4を修復するためのシステム950の概略図である。システム950は一般に、張力装置952および配置チューブ954を備えている。幾つかの応用例では、チューブ954は、カテーテル技術において知られているように、操縦可能である。しかし、他の応用例では、別体の操縦部品をチューブ954に連結するようにしてもよい。図11A−Bは張力装置952を有するシステム950を示しており、それぞれ、配置チューブ954から部分的に展開された張力装置952、および配置チューブ954から完全に展開された張力装置952を示している。図12A−Bおよび図12C−Dは、張力装置952を配置するための2つの例示的な手順を示している。
【0183】
図11A−Bに示されるように、張力装置952は、第1の遠位組織係合具60aおよび第2の近位組織係合具60b、ならびに少なくとも一つの可撓性のある長手部材42を備えている。長手部材42は前記2つの組織係合具を接続する。第1の組織係合具は、例示の目的で、螺旋形の組織固定具を含むように示されている、組織固定具40を含む。固定具40は、以下に限定されず、図13A−Eを参照して後述される組織固定具を含め、心臓の組織を穿刺または把持するあらゆる組織固定具を含み得る。第2の組織係合具60bは、径方向に圧縮された状態と径方向に拡張された状態とを取るように構成された径方向拡張可能固定具956を備える。図11Bに示されるように、径方向に拡張された状態では、固定具956は、心室の壁に留まり、心臓壁の孔を通過しないように構成されている。例えば、径方向に拡張された状態で、固定具956は、花または蝶のような形状であってもよく、従って複数の花弁または羽を画定するような形状を有してもよい。一般に、固定具956は、径方向に拡張された状態でちょうど1つの平面内に概ね収まるように構成される。
【0184】
長手部材42は、固定具956が形成する開口を通過するため、固定具956は長手部材42にスライド可能に連結される。一般に、第1組織係合具60aと第2組織係合具60bの間の距離は、固定具956の開口を通過して長手部材42を引くことによって調整される。固定具956の開口は、一般に、固定具956の径方向中央に設けられる。
【0185】
一度所望の距離が得られると、少なくとも近位方向(遠位組織係合具60aから離れる方向)へ固定具956が長手部材42に対して動かないように、固定具956は長手部材42にロックされその距離は保たれる。幾つかの応用例では、図12C−Dを参照して後述される展開などのため、長手部材42の少なくとも一部はラチェット歯958を画定するような形状を有し、ラチェット歯958が固定具956を係合することにより、長手部材42に対して固定具956は遠位方向に(第1の遠位組織係合具60aに向かって)移動することはできるが、近位方向に(遠位組織係合具60aから離れる方向に)移動することはできない。他の応用例では、図12C−Dを参照して後述される展開などのため、長手部材42の構成を固定具956を貫通して双方向に動くようにし、固定具956の構成を、所望の距離が得られた後で、長手部材42を適所でクリンプするようにし、それにより、固定具956が長手部材42にロックされるようにする。さらに他の応用例では、図12A−Bを参照して後述される展開などのため、長手部材42は、図12Bに示されるように、固定具956に固定される。
【0186】
幾つかの応用例では、第1の組織係合具60aと長手部材42は、同じ材料(例えばニチノール)から一体品から作られる。一般に、第2の組織係合具60bは二つの部品からなり、ニチノールなどの形状記憶合金を含んでもよい。
【0187】
図12A−Bを再度参照する。図12A−Bは、上大静脈10(図の通り)、または下大静脈8(このアプローチは図示せず)などの大静脈を通して張力装置を配置させる手順を示している。張力装置952は最初は配置チューブ954内に位置している。幾つかの応用例では、図12Aに示されるように、インプラント処置の際、配置チューブ954は右心房6内に進入する。
【0188】
図12Aに示されるように、第1の遠位組織係合具60aは、第1のインプラント部位30に、例えば、本明細書に記載の固定技術を用いるなどして、配置される。第1のインプラント部位30は、三尖弁4近傍の心臓組織の部分(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第1の部分)を含む。例えば、第1のインプラント部位30は、弁輪の壁在側に(例えば、後尖16に)あり、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央にあってもよい。代替的に、第1のインプラント部位30は、弁の継ぎ目近くにあってもよい。
【0189】
装置の導入の前に、孔が、心房中隔362に、標準の経中隔用(transeptal)の針/キットなどの別体の穿孔ツールを一般に用いて、設けられる。配置チューブ954を孔の右心房側まで(または、任意に、孔を少し貫通するまで)進め、第2の近位組織係合具60bを中隔362近くの左心房内に進める(図12B参照)。一般に、第2の組織係合具60bの固定具956は配置チューブから解放されると自動的に広がる。
【0190】
第1と第2のインプラント部位30、52の間の距離が、長手部材42を近位方向に(大静脈に向けて)引っ張るなどして、調整される。距離を小さくすれば、張力が高まり、ロック機構962を用いるなどして、張力は維持される。(例えば、ロック機構のボタンを押し、固定具40の側から長手部材を引くことにより、長手部材42に張力が付与されるようにしてもよい。ボタンが押されていないときにはバネがボタンをロック位置に保持し得る。)これに応答して、三尖弁4の弁尖間の距離が調整され、弁4を通る逆流を減少または除去し、弁4は修復される。任意に、距離を調整している間、弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。配置チューブ954は左心房と患者の体内から引き出される。
【0191】
代替的に、幾つかの応用例では、長手部材42の長さは、図5A−Bまたは図5Cを参照して前述したように、調整機構によって調整される。調整機構150は一般に、長手部材42の長さを短くする機械部品を備えている。幾つかの応用例では、調整機構150は、長手部材42に恒久的に連結されてもよく、その場合の機構150は、調整部品(例えば、スプール、クリンピングビーズ、ラチェット部品、または変形部品)を備える。スプールはその周りに長手部材42の一部を巻き取るものであり、クリンピングビーズは長手部材42の一部を縮れさせて短くするものであり、変形部品は、長手部材42の一部を変形させるものである。他の応用例では、調整機構150は、図5Aに示されるように、調整ツール144のみを備える。そのような応用例では、調整ツール144は、調整部品(例えば、長手部材42の一部を縮れさせて短くするクリンピングビーズ、または、長手部材42の一部を変形させる変形部品)を備えてもよい。
【0192】
代替的に、第2の近位組織係合具60bは、第1の遠位組織係合具60aの以前に配置される。
【0193】
図12C−Dを再度参照する。図12C−Dは、左心房960を経由して張力装置を配置する手順を示している。張力装置952は最初は配置チューブ954内に収納されている。第1の遠位組織係合具60aをチューブ954の遠位端959の近くにし、第2の近位組織係合具60bをチューブ内のより近位側に(遠位端から遠い方に)して収納されている。幾つかの応用例では、図12Cに示されるように、インプラント処置の際、配置チューブ954は左心室960内に入れられる。例えば、チューブは、図に示されるように、大動脈と左心室を通って左心房に進入させてもよい(大動脈には、例えば、大腿動脈または鎖骨下動脈からアクセスし得る)。代替的に、チューブは、その技術分野において公知の、左心室を経由する経心尖アプローチを用いて左心房に入れてもよい。
【0194】
装置の導入の前に、孔が、心房中隔362に、標準の経中隔用(transeptal)の針/キットなどの別体の穿孔ツールを一般に用いて、設けられる。配置チューブ954は孔を通って、その遠位端959が右心房6内に入るまで進入する(図12C参照)。
【0195】
図12Cに示されるように、第1遠位組織係合具60aは、第1のインプラント部位30に、本明細書に記載の固定技術を用いるなどして、配置される。第1のインプラント部位30は、三尖弁4近傍の心臓組織の部分(例えば、図の通り、三尖弁4の弁輪の組織の第1の部分)を含む。例えば、第1のインプラント部位30は、弁の2つの継ぎ目の間のほぼ中央の、弁輪の壁在側に(例えば、後尖16に)あってもよい。代替的に、第1のインプラント部位30は、ほぼ弁の継ぎ目にあってもよい。
【0196】
配置チューブ954は近位に引かれ左心房960内に出される。それによって第2の近位組織係合具60bは中隔362近くの左心房で解放される(図12D参照)。一般に、第2の組織係合具60bの固定具956は、配置チューブから解放されると自動的に拡張する。第2の組織係合具60bの固定具956は、配置チューブ954の遠位端959を用いるなどして、中隔362に予め設けられた孔の周りの中隔362の左心房側に接して第2のインプラント部位52において保持される。第1と第2のインプラント部位30、52間の距離は、長手部材42を近位方向に(左心房960に向けて)引くことにより調整される。この間に、配置チューブ954の遠位端959を用いるなどして固定具956を中隔の左心房側に接して保持する。図11A−Bを参照して前述したように、距離を小さくすれば、張力が高まり、維持される。これに応答して、三尖弁4の弁尖間の距離が調整され、弁4を通る逆流を減少または除去し、弁4は修復される。任意に、距離を調整している間、弁4の逆流の程度を監視するようにしてもよい。配置チューブ954は左心房および患者の体内から引き出される。
【0197】
図13A−Eを参照する。図13A−Eは、本発明の各応用例に従う、組織固定具40の概略図である。これらの1以上の固定具は、図1A−G、図2A−B、図3A−C、図5A−C、図6図8A−E、図9A−E、図10A−B、図11A−B、図12A−D、および/または図14A−Dを参照して前述した応用例における固定具40として用いうる。
【0198】
図13Aに示される構成において、固定具40は、螺旋形の組織連結具970を含む。この組織連結具970には連結ヘッド906が取り付けられている。任意に、連結ヘッド906などの固定具40は通路912を形成している。この通路912は、例えば、図10A−Bを参照して前述した技術で用いられる。幾つかの応用例では、組織連結具970の長さL1は、少なくとも5mm、30mm以下、および/または、5から30mmの間であり、例えば10mmである。
【0199】
図13Bに示される構成において、固定具40は、遠位組織穿孔先端具972を含む。この先端具972には複数のアーム974が取り付けられている。アーム974は、先端具972からそれぞれ概ね遠位方向および径方向に外側に向けて広がっている。アームは、組織内に完全に挿入され、それによって、固定具を組織に連結するのを助ける。幾つかの応用例では、固定具40の最大幅W1は少なくとも6.5mm、39mm以下、および/または6.5から39mmの間であり、例えば13mmである。幾つかの応用例では、固定具40の長さL2は、固定具の軸に沿ってアーム974の先端から固定具の先端具972の先端までの測定で、少なくとも5mm、30mm以下、および/または、5から30mmの間であり、例えば10mmである。幾つかの応用例では、先端具972の最大外径D1は、少なくとも1mm、6mm以下、および/または、1から6mmの間であり、例えば2mmである。
【0200】
図13Cおよび図13Dに示される構成において、固定具40は、概して(傘の布は無いが)傘に似た方法で径方向に拡縮するように構成されている。固定具は、径方向に縮小された(閉じられた)状態で組織内に挿入され、組織内に固定具を固定するために、径方向に拡張された(開かれた)状態に、自動的にまたは外科医によって、移行する。幾つかの応用例では、図13Cに示されるように、固定具は定常状態で径方向に広がった状態を呈するように構成される。これを配置の際には径方向に縮めた状態に保持する。解放すれば径方向に拡張された状態に移行する。他の応用例では、図13Dに示されるように、固定具は定常状態で径方向に縮められた状態を呈するように構成される。これをそのまま配置する。医者は、組織に挿入した後で能動的に径方向に拡張された状態に移行させる。
【0201】
固定具40は、遠位組織穿孔先端具972を含む。この遠位組織穿孔先端具972は、支柱976(一般にチューブを含む)の遠位端に取り付けられる。さらに、固定具は、複数のリブ978(例えば、3つまたは4つ)を含む。このリブ978と支柱976とが関節をなすように、リブ978は遠位先端具972近くで固定具に連結される。それにより、リブ978と支柱976の間の角度は変化する。またさらに、固定具は、ランナー980(一般に、チューブを含む)を含む。ランナー980は、支柱976にスライド可能に連結され、支柱に沿ってスライドできる。ランナー980と各リブ978は複数のストレッチャ982によって連結される。ストレッチャは、ランナーと各リブに関節式に連結される。各ストレッチャは、1以上の細長部品を含んでよく、例示の目的で、2つの細長部品を含む各ストレッチャが示されている。一般に、リブ978の先端984(つまり、固定具に連結されていない端)は鈍角である。
【0202】
幾つかの応用例では、図13Cに示される構成のように、固定具は少なくとも部分的に記憶形状合金(例えば、ニチノール)からなり、固定具の自然な定常状態は、径方向に拡張した(開いた)状態である。固定具は、カテーテル内で縮められており、配置されるまで径方向に縮小された(閉じられた)状態を維持する。組織内に配置されると、カテーテルが引き戻され、固定具が開く(つまり、自動的に径方向に拡張した状態に移行する)。
【0203】
幾つかの応用例では、固定具の後退を可能とするために(固定具が、不適切な位置に配置された場合、または他の理由で除去が必要な場合など)、ランナー980の近位端(つまり、先端具972より遠い方の端)は、カテーテル内のインナーチューブに取り外し可能に連結される。例えば、ランナー980の近位端の外側表面と、インナーチューブの遠位端近くの内側表面をねじ切り加工しておいて取り外し可能に連結してもよい。こうすれば、インナーチューブをランナーに対して回転させる(組織はランナーがつられて回転するのを防ぐ)などにより、ランナー980が外されない限り、ランナーはインナーチューブに連結された状態に留まる。固定具を後退させるには、ランナーを外さずにインナーチューブに連結したまま、支柱976を遠位方向に押す。支柱976がランナー980に対して移動すると、固定具は径方向に縮小された(閉じた)状態に戻る。このようにして固定具はカテーテル内に引き戻され(元の位置に収納され)、別の位置に再度配置できる。外科医は、固定具の位置を最終的に決めたのちインナーチューブを回して固定具を切り離す。
【0204】
幾つかの応用例では、図13Dに示される構成において、固定具40は、チューブをさらに備える。このチューブは、支柱976の周囲で、ランナー980の近位側(つまり、先端具972より遠い方)に設けられる。このチューブによりランナー980を遠位側に(先端具へ向けて)押し、傘を開く。
【0205】
幾つかの応用例では、固定具40の最大幅W2は、径方向に拡張された状態で、少なくとも6.5mm、39mm以下であり、および/または、6.5から39mmの間であり、例えば13mmである。幾つかの応用例では、固定具40の長さL3は、固定具の軸に沿ってリブ978の先端984から固定具の先端具972の先端までの測定で、固定具が径方向に拡張された状態で、少なくとも5mm、30mm以下であり、および/または、5から30mmの間であり、例えば10mmである。幾つかの応用例では、先端具972の最大外径D2は、少なくとも0.4mm、2.4mm以下であり、および/または、0.4から2.4mmの間であり、例えば0.8mmである。幾つかの応用例では、支柱976の最大外径D3は、少なくとも0.3mm、1.8mm以下であり、および/または、0.3から1.8mmの間であり、例えば0.6mmである。幾つかの応用例では、各リブ978の長さは、少なくとも6mm、20mm以下であり、および/または、6から20mmの間であり、例えば10mmである。
【0206】
図13Eに示される構成において、固定具40は、さか目のとげ状になっている。例えば、固定具は、概ね平坦であってよく、1以上のさかとげ990が形成されている。このさかとげ990は一般に固定具の両側から伸びている。さかとげによって固定具は組織に連結される。幾つかの応用例では、固定具40の最大幅W3は、さかとげ990を除外して、少なくとも0.85mm、5.1mm以下であり、および/または、0.85から5.1mmの間であり、例えば1.7mmである。幾つかの応用例では、固定具40の最大幅W4は、さかとげ990を含めて、少なくとも1.25mm、7.5mm以下であり、および/または、1.25から7.5mmの間であり、例えば2.5mmである。幾つかの応用例では、固定具40の長さL4は、固定具の軸に沿ってとげ部の遠位端から固定具の近位先端までの測定で、少なくとも5mm、30mm以下であり、および/または、5から30mmの間であり、例えば9.5mmである。幾つかの応用例では、固定具40の最大厚Tは、少なくとも0.1mm、0.6mm以下であり、および/または、0.1から0.6mmの間であり、例えば0.2mmである。
【0207】
図14A−Dを参照する。図14A−Dは、本発明の幾つかの応用例に従う、三尖弁4などの心臓弁の逆流を減少させるシステム1000、および例示的な配置手順の概略図である。システム1000は、第1の組織係合具60aおよび第2の組織係合具60bを備える。それらはそれぞれ、第1の組織固定具40aおよび第2の組織固定具40bを含む。注意すべきは、組織固定具40aおよび40bは、限定ではなく例示のために、螺旋形の組織固定具を含み、以下に限定されるわけではないが、後述するように改良された、図13A−Eを参照して後述する組織固定具を含め、心臓組織を穿刺または把持するあらゆる組織固定具を含み得るということである。第1の組織固定具40aと第2の組織固定具40bは、インプラント処置の際、互いに直接的に結合するように構成されている。例えば、組織固定具のうちの一方(例えば、第1の組織固定具40a)は、雄型連結具1002を備えてもよく、他方(例えば、第2の組織固定具40b)は、雌型連結具1004を備えてもよい(図14D参照)。
【0208】
図14Aは、カテーテル22を心房6に向けて、カテーテルの遠位端が心房6内に至るまで前進させた状態を示している。処置のこの部分は、図1Aおよび図1Eを参照して前述された技術を用いて行われ得る。図ではカテーテルは上大静脈10を通って進入しているが、下大静脈8を通って導入してもよい。カテーテル22の遠位端が心房6内に至ると、固定具配置チューブ24は、カテーテル22から第1のインプラント部位30に向けて伸ばされる。固定具配置チューブ24は、第1の組織固定具40aと、少なくとも長手部材1010(ワイヤなど)の一部を保持している。長手部材1010は一般に取り外し可能に固定具に連結されている。幾つかの応用例では、チューブ24は、カテーテル技術において知られているように、操縦可能である。しかし、他の応用例では、別体の操縦部品を固定具配置チューブ24に連結するようにしてもよい。画像化による案内を助けにして、固定具配置チューブ24の遠位端が心臓2の心臓組織の第1のインプラント部位30に達するまで、固定具配置チューブ24を第1のインプラント部位30に向けて前進させる。固定具配置チューブ24は、第1のインプラント部位30に向かう第1の組織係合具60aの非外傷性の前進を容易にする。
【0209】
第1のインプラント部位30は、一般に弁の弁輪にある。例えば、第1のインプラント部位30は、図の通り、中隔尖12の基部と冠状静脈洞の間の領域にある弁輪にあってもよい。代替的に、例えば、第1のインプラント部位30は、前尖と後尖の継ぎ目の領域にある弁輪にあってもよい。固定具40aは、図1Bおよび図1Eを参照して前述された技術を用いるなどして、心臓組織に取り付けられる。長手部材1010は、一般に雄型連結具1010から伸びるように、固定具40aに一般に取り外し可能に連結される(図14A参照)。
【0210】
固定具配置チューブ24を心房から引き出すと(図14B参照)、第1の組織固定具40aは弁輪にインプラントされた状態で固定される。
【0211】
第2の組織固定具40bは、長手部材の近位端(図示せず)を、固定具40bによって画された通路1012に通すことにより、長手部材1010を通されている。幾つかの応用例では、通路1012の一部は、雌型連結具1004を画するように形成されている。第2の固定具40bは、固定具配置チューブ24(または、固定具配置チューブ24と同様の他の固定具配置チューブ)に装填されており、該チューブの遠位端が第1のインプラント部位52の心臓2の心臓組織と接触するまで、第2のインプラント部位52に向けて前進する。
【0212】
第2のインプラント部位52は一般に弁の弁輪にある。例えば、第2のインプラント部位52は、図の通り、前尖と後尖の継ぎ目の領域にある弁輪にあってもよい。代替的に、例えば、第2のインプラント部位52は、中隔尖12の基部と冠状静脈洞の間の領域にある弁輪にあってもよい。図14Cに示されるように、第2の固定具40bは、図1Bおよび図1Eを参照して前述された技術を用いるなどして、心臓組織に取り付けられる。
【0213】
張力が長手部材1010に付与される。図14Cの部分拡大図において、矢印1014で概略的に示されるように、長手部材を近位方向に引っ張ることにより、張力が付与される。この張力によって、第1の固定具40aと第2の固定具40bが近づけられ(図14Dの部分拡大図「A」参照)、合体する(図14Dの部分拡大図「B」参照)。固定具の合体によって、第1の固定具40aの雄型連結具1002と第2の固定具40bの雌型連結具1004が係合し、固定具を互いに直接的に結合する(つまり、ロックされる)。固定具同士を引き寄せると、固定具に連結されている弁輪の部分も共に引き寄せられ、二尖化が達成される。例えば、図14Dに示されるように、中隔尖12と後尖16が互いに引き寄せられる。一般に、図14Dの部分拡大図「B」に示されるように、長手部材1010は第1の固定具40aから切り離される。切り離しは、固定具から長手部材の螺着を外すなど、またはその他の分離技術を用いて行われる。代替的に、長手部材は、第1の固定具に連結されたままで、心房内で切断される。
【0214】
図1A−G、図2A−B、図3A−C、図4A−C、図5A−C、図6図7A−D、図8A−E、図9A−E、図10A−B、図11A−B、図12A−D、図13A−E、および、図14A−Dを参照する。注意すべきは、三尖弁4を修復するための本明細書に記載の装置および方法は、患者の他の心臓弁、例えば、僧帽弁、肺動脈弁、または大動脈弁の何れの修復にも適用されうるということである。そのような応用例では、第2のインプラント部位52は、患者の左心房と接触している血管(例えば、肺静脈)の部分、患者の心臓の、左心房の壁の部分、僧帽弁の弁輪の部分、または、左心室の部分を含み得、第1のインプラント部位30は、患者の心臓の、左心房の壁の部分、僧帽弁の弁輪の部分、または、左心室の部分を含み得る。
【0215】
図1A−G、図2A−B、図3A−C、図4A−C、図5A−C、図6図7A−D、図8A−E、図9A−E、図10A−B、図11A−B、図12A−D、図13A−E、および、図14A−Dを再度参照する。注意すべきは、所定の患者の必要に応じて、組織係合具60は適切な数であれば何個でも、心臓組織にインプラントされ、および/または、心臓組織を把持しうるということである。一般に、1以上の組織係合具60が、心臓組織(例えば、弁輪の組織、心臓弁に隣接する心房の壁の組織、または、心臓弁に隣接する心室の壁の組織)にインプラントされる。その心臓組織は、前尖の中央と後尖の中央との間にある弁の近傍、例えば、前尖の中央と後尖の中央との間の継ぎ目にある。幾つかの応用例では、インプラント部位30、52を共に引くと前尖14が中隔尖12に向けて引っ張られ、三尖弁4の二尖化が達成される。注意すべきは、しかしながら、組織係合具60は、弁4の弁輪のあらゆる部分の近傍にある組織の部分にインプラントされうるということである。
【0216】
また、図1A−G、図2A−B、図3A−C、図4A−C、および、図5A−C、図6図7A−D、図8A−E、図9A−E、図10A−B、図11A−B、図12A−D、図13A−E、ならびに、図14A−Dを再度参照する。注意すべきは、組織係合具60の各インプラント部位間の距離の調整は、組織係合具60の最初のインプラントおよび弁の修復、ならびに/または、心臓壁形状の調整の後に、調整機構150によって容易になしうるということである。
【0217】
幾つかの応用例では、本明細書に記載の技術は、本特許出願の背景技術の欄で引用した1以上の文献に記載の技術を組み合わせて実施される。
【0218】
本発明が上記に具体的に示され説明されたものに限定されないことを当業者は理解するであろう。本発明の範囲にはむしろ、以上に記載された各種特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両方、ならびに、前述の説明を読んだ当業者が想起するであろう、先行技術にはないそれらの変形および改良が含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14A
図14B
図14C
図14D